バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関する勉強会を月に1回開催しています。

第34回バリアフリー推進勉強会開催結果概要

2016年リオ大会に係る現地空港の準備状況視察報告

開催日
2016年7月21日(木曜日) 18:00〜20:00
開催場所
エコッツェリア「3×3 Lab Future」サロン
参加者数
66名
講師
全日本空輸株式会社 CS&プロダクト・サービス室CS推進室CS推進部
オリンピック・パラリンピック推進本部 マネージャー 白井 昭彦氏

講演概要

本セミナーの開催趣旨(エコモ財団)

    

(以下、趣旨説明概要)

2016年8月からはじまるリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック大会の開催に向けて、空港では障害者等の利用を想定したハンドリングテストやバリアフリー化の施設整備などが実施されている。そのため、今回はその状況について全日本空輸株式会社(以下、ANA)が現地調査を行ったということで話題提供いただくとともに、ANAが取り組む高齢者、障害者等への接遇・介助の教育をテーマに開催する。

白井昭彦氏「2016年リオ大会に係る現地空港の準備状況視察報告」

(以下、講演概要)

講師 白井さん

日本では、2019年にラグビーのワールドカップ、2020年に東京オリンピック・パラリンピック大会、2021年に大阪でワールドマスターズゲームズが開催されるため、2019年までに海外からの受入の準備を行わなければならない。そのため、ANAでは世界各国の空港の施設整備の状況や航空会社のCA教育などの視察を行い、勉強している。本日は、2015年11月に実施したブラジルの空港の視察について紹介する。

◇ブラジルにおける高齢者、障害者への取組み

ブラジルでは、高齢者や障害者への対応が整っており、ATMやレストランでは常に利用できる環境が整備されている。また、横断歩道で白杖を使用する方を見かけると必ず声をかけるなど、日本とは異なった社会といえる。1980年代以降、障害者に関する様々な法整備が進められ、2013年には航空関係の法律が制定された。ブラジルを出発する航空便に対し、チェックイン、乗降・機内座席への誘導、介助犬の対応等が規定されており、航空会社だけでなく、空港関係者等すべてが対象となっている。違反すれば、高額の罰金も科せられ、そのため、空港関係者に対してはブラジルの運輸省がアクセシビリティに関するガイドブックを作成し、配布している。

◇リオデジャネイロ等の空港の準備状況について

第34回勉強会の様子

リオ市内の空港から選手村・オリンピックパークまでは、関係者専用道路が整備され、国際線のアントニオ・カルロス・ジョビン空港から35分、国内線のサントス・ドゥモン空港から45分となっている。
政府の需要予測では、オリンピックの開会式当日には9万人が到着し、閉会式翌日には9万5千人が出発すると見込んでいる。これは、毎年開催されるリオカーニバルの3万人の3倍、2014年のブラジルワールドカップの4万人の2倍となり、これまで経験したことのない人数に対応しなければならない(ちなみに、日本では成田空港で2005年の5万6千人の出発、2007年の5万8千人の到着が最も多い)。加えて、手荷物もオリンピック開会式当日には18万個が到着し、うち5千個は陸上競技用の槍、棒高跳び用ポール、バイク等のサイズ超過手荷物である。
パラリンピック開会式当日にも9万個が到着し、うち3千5百個は車いすとなっている。手荷物以外にも、競技用馬350頭が到着し、検疫をスムーズに行い、競技場まで輸送しなければならないため、ブラジルではその輸送を軍隊が担当することになっている。
リオデジャネイロやサンパウロの空港は、2014年のワールドカップ開催に合わせて、施設設備のバリアフリー化は進められた。特に、サンパウロのグアリューロス国際空港におけるセキュリティーゾーンでは、配慮の必要な方の優先レーンの設置や車いす使用者等の身体検査を行うため、プライバシーに配慮した小部屋等が設置された。

◇2020年東京オリンピック・パラリンピックの課題について

東京の場合には、夏場となるため、非常に課題が多くなる。過去のオリンピック・パラリンピック大会の開催前に、空港では2年前からハンドリングテスト※が行われている。例えば、多数の車いす使用者がチェックインカウンターに同時に来た場合、視覚障害者が手荷物検査を受ける場合などである。ハンドリングテストは、航空会社だけでなく、空港に発着するバス、タクシー会社も含めて実施された。

(※ハンドリングテストとは、本番を想定した様々な条件や状況等の事前練習を行い、設備や運用などの改修、改善を行うこと)

◇ANAにおける障害者へのサービスの取組み

ANAを利用する障害者等は、年々増加しており、2015年度は17万人となっている。そのうち、車いす使用者が4万人である。そのため、ANAの職員3万6千人に対して、障害の理解から、支援・介助の方法などの実技習得の教育を本格的に開始した。予約の段階からサポートするためのデスクを設け、車いすの手配、補助具の貸出、聴覚障害者向けのテレビ電話やチャットを行っている。空港においても、お手伝いが必要なお客様専用カウンターを設置し、タブレット端末による遠隔手話や音声認識のサービス、樹脂製(非金属)車いすや大型車いすなど4種類の車いすを準備している。
また、近年では、発達障害児や自閉症のある児童の保護者からの要望を受け、航空機を利用するための解説書としての「そらぱすブック」(こども編、保護者編)を作成し、配布している。ANAでは、これまでの「バリアフリーサービス」から、「ユニバーサルサービス」と名称を変更し、誰でも航空機を利用できるような職員教育を実施している。

当日の配布資料及び質疑応答
     
関連リンク
そらぱすブック(こども編)
そらぱすブック(おとな編)