バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関するワークショップを月に1回開催しています。

第2回バリアフリー推進勉強会 in 関西 開催結果概要

鉄道駅における可動式ホーム柵の設置の現状と課題

開催日
2016年1月27日(水曜日) 14:30〜16:30
開催場所
大阪歴史博物館第一研修室
参加者数
61名
講師
大阪市交通局鉄道事業本部鉄道統括部鉄道バリアフリー企画担当課長 森川 一弘氏
西日本旅客鉄道株式会社鉄道本部駅業務部企画課担当課長 田中 c督氏
コーディネーター
近畿大学名誉教授、関西福祉科学大学客員教授 名誉教授 三星昭宏氏
コメンテーター
大阪大学未来戦略機構 第5部門未来共生イノベーター 石塚裕子氏

講演概要

森川氏

視覚障害者等のホームからの転落防止策として、大きな効果が期待されている鉄道駅における可動式ホーム柵の設置について、地下鉄千日前線や御堂筋線の天王寺駅、心斎橋駅等に設置をしている大阪市交通局、そして、JR東西線の北新地駅、大阪天満宮駅やJR神戸線の六甲道駅等に設置している西日本旅客鉄道株式会社から講師をお迎えし、可動式ホーム柵の設置の取り組みと今後の課題を中心に、ホームでの安全対策についてお話を頂きました。

大阪市交通局からは、近年のホームからの転落件数とその原因についての報告と共に、御堂筋線の天王寺駅、心斎橋駅へのホーム柵の導入の経緯として、ホームからの転落や列車との接触が最も多く、早急に対処する必要がある駅であったという紹介がありました。また、ホームと列車間の段差対策として、千日前線、長堀鶴見緑地線ではホームの端に向かって上り傾斜を付けることで段差幅を軽減し、そして、隙間対策として、建築限界線と車両限界線の間に突起する形で、車両が触れても大丈夫なように、ホーム端に取り付ける櫛状ゴムを開発、設置したとの紹介がありました。

今後の課題として、ホーム柵の設置が進むとホーム柵と車両扉の開閉時間、安全確認に要する時間の累積により、現在よりも運行頻度が落ちる可能性があり、結果として輸送能力の低下とそれに反比例する形で混雑率の増加が懸念されるとの報告がありました。また、車両の更新も一時になされることはないことから、新旧車両の混在による各種形状、性能の違いに起因する様々な課題も残っているとのことでした。

今後は、安全確認に必要な時間や停車時間の詳細な検討、そして、年間を通じた混雑状況、遅れが発生した場合の輸送力への影響度合い等について検証し、将来的にその他の駅への展開も見据えたいとのことでした。

その他ハード面での対策以外に、酒酔いのお客様等にお声掛けし、注意を促したり、視覚障害をお持ちのお客様をサポートする“転落なくし隊”を結成し、転落事故の防止に取り組んでいるとのお話を頂きました。

田中氏

次に西日本旅客鉄道株式会社からは、ホーム可動柵の設置と共にホーム上で行っている様々な安全対策について紹介頂きました。 ホーム可動柵については、運行する列車の車種によってその扉数が異なることから、一般にその設置には課題が多いとされる中、JR東西線では運用する車両を4扉車に統一することで、北新地駅、大阪天満宮駅への可動式ホーム柵の設置を実現したとのお話を頂きました。また、車両の扉数の違いに左右されないホーム可動柵の開発にも取り組まれました。昇降式ホーム柵の実証実験をJRゆめ咲線の桜島駅で2013年度に実施し、さらに2014年12月からJR神戸線六甲道駅で検証を重ねた後に継続運用されています。そして2016年春にはJR京都線高槻駅に昇降式ホーム柵を、学研都市線京橋駅下りホームには可動式ホーム柵を設置する予定との紹介がありました。

西日本旅客鉄道株式会社が運行する山陽新幹線、北陸新幹線におけるホーム可動柵も紹介して頂きました。2015年春に開業した北陸新幹線については、各駅にホーム柵を設置したとのことです。山陽新幹線についても、今後新神戸駅で新開発の大開口型可動式ホーム柵を1開口設置して試行運用する予定で、適切な扉開閉速度や駅係員、乗務員の取扱い等について検証し、新神戸駅の既存の可動式ホーム柵を取り換えた後、山陽新幹線の主要駅への設置を進めたいとのお話がありました。

会場の様子

更に、ホーム可動柵以外のホームの安全対策について紹介をして頂きました。お酒を飲まれたお客様のホーム上から線路への転落事象を分析した結果、「ホーム上を線路に向かってまっすぐ歩いて転落・接触」という割合が6割だったことから、線路に対して平行に設置していたベンチを垂直方向に向きを変えたと紹介して頂きました。その他、ホームにおけるお客様の歩行の乱れや長時間の座込み、線路内への立入りなど、通常と異なる動きを駅構内に設置したカメラの画像から自動検知し、係員が画像を確認し、危険と判断すると駅に連絡してお客様を保護する遠隔セキュリティカメラの紹介がありました。

その他にも、2017年度を目標に、2013年度比でホームにおける鉄道人身傷害事故3割減に向け、様々なホームの安全対策に取り組まれているとのことです。

当日の配布資料及び質疑応答