バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関する勉強会を月に1回開催しています。

第48回バリアフリー推進勉強会開催結果概要

屋内外シームレスなバリアフリーナビゲーションの実現にむけて 〜スマホアプリによる段差等のバリアを回避した経路案内〜

開催日
2018年2月27日(火曜日) 13:30〜17:00
開催場所
障害者スポーツ文化センター「横浜ラポール」ラポール座(視聴覚室)
参加者数
52名
講師
筑波技術大学教授 須田裕之氏、国土交通省総合政策局総務課・企画専門官 原田洋平氏、国土交通省国土政策局国土情報課・課長補佐 井上綾子氏

講演概要

須田裕之氏

(以下、講演概要)

講師 須田さん

近年、社会生活の豊かさ(感性価値)に対する変化や将来に向けた環境等に対する考え方に変化が生じ、多様な利用者(高齢者、障害者、外国人等)の視点を受容するようになっている。そこで、多様な利用者に対して、情報・コミュニケーション支援による橋渡しが重要となっており、“i ”から考えるユニバーサルコミュニケーション社会の確立が必要だと考えている。

これまでの情報サービスは、「いつでも、どこでも、だれでも」のユニバーサル性を求めてきたが、その中で最近はスマートフォンやSNSの普及により「今だけ、ここだけ、あなただけ」のパーソナル性が重要となっている。つまり、リアルタイムおよび特定場所での情報提供、利用者属性に応じた情報内容、利用者が選択できる情報インターフェースが求められている。

総務省では、これまでのICTからIoTの時代の構築を進めている。IoTの実現により、ビッグデータ、オープンデータとしての活用が非常に重要となっている。データは、リアルタイムでの更新や確認、検証されていることがより必要となっている。また、情報公開とは異なり、保有するデータの二次利用を可能とした形でのオープン化、拡散性を高めていくことが必要となる。また、内閣府では、2016年に官民データ活用推進基本法を制定し、データ流通の拡大を図り、超少子高齢社会における諸課題の解決に取り組まれている。個人情報の匿名化や暗号化を必須とする個人情報保護法の改正やサイバーセキュリティ基本法も整備され、パーソナルデータを安全に流通させることが重要となっている。

情報化による新たな地域経済活動の展開として、シェアリングエコノミーやAPIエコノミーという情報マッチングサービスビジネスや連携ビジネスが生成され始めている。、その中で、サービス相互間におけるセキュリティや認証、トラフィック管理などの技術的な課題はまだある。

情報システムは、垂直方向ではなく水平方向に考えられ、それぞれの役割(アプリ、ミドルウェアといわれるプラットフォーム、データ)で分離して考えることができる。特に、データにおいては様々な過程で蓄積をしていき、統合的なデジタルアーカイブとしてオープン化することは利用面からも様々なアプリが連携して使え、新たなサービスが生まれるようになる。

これからは、「ICT」「IoT」「GIS」をベースとして、データとAPIをオープン化することで、システムの階層化・分散化ができ、データベース、プラットフォーム、アプリケーションの分離開発・提供が行える。これによって、ユーザビリティの向上や多様性の確保、経済化・コスト低減、信頼性の確保、自前主義からの脱却が見込まれる。行政等におけるデータ蓄積とその提供のもとで、民間が新たなサービスを生み出すことができる。また、オープン化は、地域社会システムを構築する上でも広域連携を可能とし、観光や災害時などに役に立つ。

本日実施される屋内外ナビゲーションの課題としては、移動時における人と車のナビゲーションの必要性とノード(空港、駅等)とのリンクの役割、データ相互間での連携性、整合性の担保が考えられ、技術的な要素として、空間情報整備、高精度の屋内測位技術、情報収集方法の確立、インターフェース、マルチ通信技術とインフラ整備が挙げられる。

最後に情報サービスとして、多様性の対応、社会モデルの考え方、データ活用と個人情報保護の確立を展開し、地理空間情報をキーとした官民データの活用したユーザ指向の考え方が重要であろうとまとめられました。

原田洋平氏

(以下、講演概要)

講師 原田さん

現在、国土交通省ではスマホなどのICTを活用した高齢者、障害者、ベビーカー利用者など誰もがストレス無く自由に活動できるユニバーサル社会の構築のため、あらゆる人々が自由にかつ自立的に移動できる環境の整備を目指している。そのサービスの提供には、「携帯情報端末」「測位技術」「情報データ」が必要となっている。しかし、「情報データ」のうち、バリアフリーに関するデータや屋内の地図データは、十分に整備されていない状況である。そのため、データ整備の促進に向けて@自治体等が保有・整備するデータのオープン化、A多様な主体の参画によるデータ収集・流通、Bデータ整備・更新の効率化に取り組んでいる。また、これらの取組みは、2020年東京オリパラに向けたショーケースの一環としても位置づけている。

バリアフリーに関するデータは、歩行空間ネットワークデータや施設データを同一のフォーマットでデータ化し、ナビゲーション等のサービスへの活用を可能としている。一方で、2020年に向けて、オープンデータ化として公開するとともに歩行空間ネットワークデータに含まれるバリアフリー情報の可視化、バリアフリーマップ作成ツールの提供も行っている。

井上綾子氏

(以下、講演概要)

講師 井上さん

高精度測位社会プロジェクトとして、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ICTを活用した屋内や地下空間を含めた屋内外シームレスなナビゲーションの実現を目指し取組んでいる。屋内空間特有の課題として、@正確な測位が困難、A共通の電子地図がない、B関係施設が多岐にわたるため調整が困難ということが挙げられる。そこで、国が先導的なモデル事業を行っており、本実証実験はその一環である。

質疑応答の様子

屋内外シームレスなナビゲーションの実証実験においては、はじめに施設管理者である複数の事業者から図面を提供いただき、ひとつのつながった屋内電子地図の作図を行い、GPSの電波が受信できない屋内において、BLEビーコンと歩行者自律航法(PDR)を用いて、測位できる環境を整えた。次に、事前に整備した歩行空間ネットワークデータから最短経路誘導や段差回避誘導を行える仕組みとし、実証用アプリの開発を行った。実証用アプリは、ジャパンスマートナビを活用し、これまで整備した屋内高精度地図と屋外歩行空間ネットワークにドコモ地図ナビを組み合わせて製作した。これを呼び水として、民間アプリの開発促進を期待している。

当日の配布資料及び質疑応答