第26回バリアフリー推進勉強会開催結果概要
超高齢化時代の中山間集落とオールド・ニュータウンにおけるモビリティの処方箋 〜パーソナルモビリティの活用〜
- 開催日
- 2015年11月12日(木曜日) 18:00〜20:00
- 開催場所
- TKP市ヶ谷カンファレンスセンター カンファレンスルーム6B
- 参加者数
- 28名
- 講師
- 広島大学大学院国際協力研究科 研究科長 藤原章正氏
講演概要
エコモ財団より今年度当財団が取組んでいる「地方都市等における交通機関のバリアフリー化のあり方に関する実態調査」において、交通不便な東京近郊の公営住宅団地でのヒアリング調査の結果、交通手段がない、団地内の商店街が閉鎖した等により生活がままならない状況になっていることがわかってきたことを報告しました。そこで、今後の超高齢社会の交通不便地域におけるモビリティのあり方や移動手段について考える場を設けた。
(以下、講演概要)

中山間地域の交通政策について。中山間地域の高齢者の交通特性として、@成立しない経済原則、A他者との調整、思いやり、B多様で直列な制約条件がある。地域公共交通として、コミュニティバスや乗合タクシーなどが運行されているが、利用者は増えない。理由として、駅に向かうちょうどよい便がないことや、福祉施設の送迎サービスを利用するようになったことが挙げられる。そのため、生活のため自主的集団移転や居住地再編も行う必要がある。
次に、オールド・ニュータウンの交通政策について。現在、郊外住宅団地では、@まち(施設)の高齢化、A移動機能の限界、Bコミュニティの崩壊等が起こっているため、モビリティを再考する調査分析を行っている。そもそもモビリティの提供主体としては、@自助、A世帯助、B互助、C共同利用、D公助・市場に分類できる。高齢化にともなう運転免許の返納希望調査を行ったところ、2割は返納を検討し、8割は検討していない、手放せないということがわかった。免許返納後の代替手段として「公共交通」「徒歩」以外に「電動アシスト自転車」「電動車いす」などが考えられる。そのため、パーソナルモビリティ(以下、PM)の保有や利用ニーズについてニュータウンでSP調査を実施した。SP調査とは、まず世帯内の高齢者にPMを購入したいかどうか質問、次に世帯内の非高齢者に単独で同じ質問、最後に高齢者と非高齢者を一緒に質問して、話し合って回答してもらうものである。その結果、高齢者が免許を返納した場合、PMを購入してもよいとの回答が増えた。

続いて、PM利用行動について。広島県の郊外団地(高陽ニュータウン)での調査結果では、2週間のうち一度も外出のなかった日数は、利用可能な自動車の有無、性別でおよそ3倍の差があった。また、PMの共同利用サービス利用意向調査でも2割は参加したいとの回答であった。なお、社会実装に向けて山積する技術課題としては、PMが通行可能な道路整備、ITSとの連携、安全性の向上(転倒しない構造)などがあるとまとめられました。