バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関するワークショップを月に1回開催しています。

第12回バリアフリー推進勉強会開催結果概要

障害者にとって差別のない、平等で、住みやすい社会づくりに向けて

開催日
2014年6月3日(火曜日) 18:00〜20:00
開催場所
TKP市ヶ谷カンファレンスセンター カンファレンスルーム6A
参加者数
42名
講師
法政大学 名誉教授 松井亮輔氏

講演概要

講師:中村さん

2006年12月の国連総会で障害者権利条約が採択されたことを受け、日本では権利条約の批准に向けた国内法の整備を行いました。また、地方公共団体では障害者差別禁止等における条例の制定を行っています。そこで、条約、各法律、各条例の主な内容ならびに課題についてお話いただきました。

まず、2014年1月に批准した「障害者権利条約」について。制定過程においては、障害および障害者を定義すべきか否かの議論があったが、対象者が明確でなくなるため、障害の定義を行ったうえで現行の目的になったと解説されました。また、障害に基づく差別に含まれる合理的配慮においては、個々人により要求内容が異なるため、適切な個別対応が重要であると指摘されました。さらに、条約の原則のひとつである「インクルージョン」においては、日本語訳である「包容」が非常にわかりにくいなどの問題点があると指摘されました。

一方、権利条約を批准するため、各種の国内法の整備を行いました。1つめは、2011年8月に改正された「障害者基本法」です。特に障害者の定義においては、表記の議論(障害者、障がい者、障碍者、障害のある人)がありました。これは、国内だけではなく、欧米諸国でも「Persons With Disabilities (Impairments)」「Disabled Persons」との表記の違いがあります。2つめは、2013年6月に制定された「障害者差別解消法」です。2016年4月の施行に向けて、2013年度には内閣府が基本方針を策定し、2014年度には各省庁等が対応要領および対応指針(ガイドライン)の策定を行う予定となっているが遅れています。なお、同法では「障害を理由とする差別」についての定義がないことや独自の紛争解決機関が明示されていないなどの課題が残されていると指摘されました。3つめは、2013年6月に改正された「障害者雇用促進法」です。新たに法定雇用率の算定基礎に精神障害者を加えられ、「差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方」が提示されました。なお、雇用の機会や合理的配慮の確保については、障害者に請求権を認める規定が設けられていないことが課題であると指摘されました。

さらに、地方公共団体では、各種の障害者差別禁止等における条例が制定されています。例えば、2013年10月に施行された鳥取県の「手話言語条例」があります。これは、手話は言語であること明示したものであり、権利条約や障害者基本法でも同様となっております。また、2011年12月制定された八王子市の「障害のある人もない人も共に安心して暮らせる八王子づくり条例」があります。これは、市、市民、事業者等に対して、公共施設利用や商品販売、不動産取引、医療、教育等の具体的な合理的配慮と、紛争解消の調整委員会の設置が明示されています。

第12回ワークショップの様子

今後は、障害者権利条約の目標である「障害者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加」がどの程度実現しているかどうかを把握するため、客観的なデータ収集を行わなくてはなりません。その上で、障害者と障害のない者が享受する教育、医療、労働及び雇用、生活や所得水準、公共交通機関やサービスなどへのアクセスの格差を埋めるための数値目標を設定し、着実に取り組む必要があります。

最後に、これらの問題は、障害者だけではなく、子ども、女性、高齢者、またそれら以外のすべての者の問題であり、誰にとっても住みやすい社会づくり、生きがいのある国づくり、地域づくりを、すべての人が手を取り合って行うべきであるとまとめられました。

当日の配布資料及び質疑応答