交通環境対策事業

カーシェアリングによる環境改善効果を確認
〜主要5事業者の個人・法人加入者へのアンケートにより検証〜

平成25年2月22日

1.調査の目的と概要

当財団は、複数のカーシェアリング事業者の加入者を対象に大規模な調査を行うことにより、カーシェアリングの環境負荷低減効果を検証するとともに、今後の普及促進方策を検討し、報告書を作成しました。

平成24年秋、カーシェアリング主要事業者5社(会員数のシェアは約9割と推定される)の協力を得て、これらの個人加入者、法人加入者それぞれを対象にアンケート調査を実施しました。

表1 配布・回収状況
  配布数 回収数 回収率
個人加入者 5,065 491 9.7%
法人加入者 329 73 22.2%

2.調査結果

〔個人加入者〕
  1. カーシェアリング加入により約3割の世帯が保有車を減らしたため、平均自動車保有台数は0.45台/世帯から0.17台/世帯へと6割強減少しています【図1】。
    カーシェアリング加入前後の世帯における自動車保有台数別構成比
  2. 保有車にレンタカーとカーシェアリングを加えた1世帯あたりの年間自動車総走行距離は、加入前の4,048kmから加入後の2,563kmへと36.7%減少しています【図2】。

    加入前後の世帯における年間自動車走行距離の変化

    自動車保有に変化のなかった世帯や増車した世帯では走行距離が増えますが、減車した世帯の数と走行距離の減少率が大きいため、これら減車した世帯が加入者全体での走行距離の減少をもたらしています【図3】。

    加入前後の車保有変化別自動車走行距離の変化
  3. 自動車総走行距離の減少に加え、利用する車の小型化や燃費向上効果により、1世帯あたりの年間CO2排出量は平均0.34t(率にして44.9%)削減されています【図4】。
    加入前後における車利用による世帯あたり年間CO2排出量
〔法人加入者〕
  1. 加入後の平均自動車保有台数は加入前に比べ微減していますが、自動車総走行距離やCO2排出量については明確な変化は把握できませんでした。
  2. 訪問先の最寄り駅までは鉄道で向かい、そこから訪問先まではカーシェアリングを利用することがあると答えた法人加入者が57.3%ありました。

3.提言:今後の普及促進方策

本調査により、カーシェアリングの環境負荷低減効果や(必要な駐車場スペースの削減による)都市空間創出効果が大きいことが明らかになりましたが、このようなカーシェアリングを普及促進させるための方策として、次の4点を提案します。

(1)環境負荷低減効果の大きい都心部や駅近接地区でのサービス提供拡大
都心部や駅近接地区でのカーシェアリング提供は、郊外での提供よりも加入世帯あたりの環境負荷低減効果が大きくなることが予想されます。しかし、これらの地域では駐車場確保・維持のためのコスト負担が大きいため、公営駐車場などを低料金でカーシェアリングに提供したり、駅近接ビルにおいてカーシェアリングを導入することを条件に駐車場附置義務を緩和したり、道路区域外の駐車場だけでなく路上駐車場(※1)をカーシェアリング用に活用したりして普及促進することが望まれます。

※1 路上駐車場:駐車場整備地区内の道路の路面に一定の区画を限って設置される自動車の駐車のための施設であって一般公共の用に供されるものをいう(駐車場法第二条第一項第一号)。
(2)鉄道との組み合わせ利用を喚起するような郊外部サービス提供の促進
都心部に立地し郊外での事業活動機会も多い法人においては、郊外の鉄道駅でカーシェアリングが提供されれば、鉄道との組み合わせ利用が増えることが予想されます。しかし、郊外では一般にカーシェアリングの事業採算性が乏しいため、サービス提供は進んでいません。そこで、都心の駅周辺部においてカーシェアリングの駐車場確保を優遇する際には、郊外駅周辺での一定割合以上の事業展開を条件とするなど、鉄道との組合せ利用を促進するような優遇策が望まれます。
(3)事業採算性を高める効果が期待される法人需要のさらなる喚起
法人のカーシェアリング加入による環境負荷低減効果は明確ではありませんが、休日利用の多い個人と平日利用中心の法人をバランスよく加入させることにより、車両の平均稼働率の向上を図ることが期待できます。相対的に普及の遅れている法人需要を喚起し、カーシェアリング事業の持続可能性を高めることが望まれます。
(4)環境負荷低減効果の大きいマイカー保有世帯を対象とした加入優遇策の実施
マイカー保有世帯がカーシェアリングに加入すると、保有車を処分し車利用距離を大幅に減らすことが多いため、大きな環境負荷低減効果が期待できます。これらの層の加入を促進するため、自治体・カーシェアリング事業者双方による優遇策が望まれます。