バリアフリー推進事業

平成28年度 成果報告

研究助成名

種々の環境光下での安全色票の識別に関する実験的検討(健常者、色弱者および高齢者)

研究者名

産業技術総合研究所 健康工学研究部門 茂里康

キーワード

LED, 安全色票, JIS Z9101, T型(P型), U型(D型)

研究内容

(研究目的)
 人間は、外部からの情報の8割以上を目から得ている。人間の色覚は、一般色覚者、T型・U型色覚障害者、 および高齢者に大別される。本研究では、我々が安全・安心な生活を営む上で重要な「安全色」を1つの事例と して選び、光との相互作用などについて試験的に調べ選び、光との相互作用などについて被験実験により 体系的に調べた。観察対象および光源として、JIS Z9101(2005年改訂)およびJIS Z9103(2005年改訂)に定義 されているものを使用した。

(研究手順)

 JIS Z9101に定義されている8種類の色票(?日本色彩研究所:半光沢版)を図1のように並べたものを独自に 試作した。背景色として無彩色の3種類の色票を使用した(白、灰、黒)。光源については、JIS Z9103には信号灯 として安全色「赤、黄、緑、青」とのみ定義されているので、図2に示す7種類のLED光源を使用した。

(研究成果)

  1.  被験者は一般色覚者10名、T型(P型)強度色覚者5名、U型(D型)強度色覚者5名、弱度色覚障害者4名、お よび高齢者6名の合計30名の協力を得た。被験者にD65、7種類のLED光源を色票に順次照射し、識別が困難 あるいは不可能な安全色票の有無を番号で回答してもらった。 順応時間は2分とした。この一連のテストを被験者1人について3回行い、 再現性などを調べた。被験者と試作色票との距離は75 cm、1回あたりの 実験時間は約40分であった。総回答数は504通りである。ドミナント波長が 630 nm、525 nmおよび470 nmのLED光を照射した時の試作色票(灰色の 背景色)の画像を図3に示す。
  2.  各色覚者、各照明光について、3種類のいずれかの背景色で「2種類の色票の識別が困難」が2通り以上との 回答割合が10%を超えた場合、高齢者が1通りでも回答割合が10%を超えた場合、および色覚を問わず1通り でも回答割合が40%を超えた場合の色票の組み合わせと光源の波長を抽出した。結果は8(種類の色票)× (研究成果続き) 7種類のカラーLED光源に対いて上記の性質を示す代表的な色票の組み合わせは、(1)「赤-紫」、(2)「赤-黒」、 (3)「橙-黄」、(4)「黄-白」、(5)「青-緑」、および(6)「緑-黒」であった。 これらの26組(78通り)の中から、工事現場、防犯灯やイルミネーションとしてよく利用される波長が630 nm(赤 色)、470 nm(青色)について該当する部分をピックアップしたのが図4の4通りである。
  3. まとめとして、夜間の工事現場などの暗い場所を想定し、JIS Z9101(2005年改訂)、JIS Z9103(2005年改訂)に定義されている8種類の色票を観察対象とし、それにJIS Z9103に信号灯としている色のLED照明及びD65蛍光灯を照射した。そして4通りの色覚特性が異なる人たち(一般色覚者、2タイプの強度の色覚障害者および高齢者)に区別が可能か否かについて差があるかどうかを実験的に調べた。一般色覚者、T型(P型)強度色覚者、およびU型(D型)強度色覚者については理論的検討も行い、実験結果と整合性があることを示した。  今後、改訂される予定(2018年3月刊行予定)のJIS Z9101およびJIS Z9103との差について被験者実験、計算などによって同様の実験を行う計画である。

 

図1   試作した実験用の色票3種

図1 試作した実験用の色票3種

図2   7種類のLED光源の分光スペクトル分布

図2 7種類のLED光源の分光スペクトル分布

図3   試作色票(灰色の背景色)にLED照明光を照射した時の画像:(a) 630 nm、(b) 525 nm

図3 試作色票(灰色の背景色)にLED照明光を照射した時の画像:(a) 630 nm、(b) 525 nm

図4  日常生活と関わりが大きい光源下での色票の誤認率

図4 日常生活と関わりが大きい光源下での色票の誤認率

バリアフリー設備のご紹介

バリアフリー設備のご紹介

実績報告

成果報告会