視覚障がい者のための音サインを用いた屋外歩行誘導の研究(51-5)
北海道科学大学工学部建築学科 講師 福田 菜々
(研究目的) 北海道科学大学敷地内にL字型の歩行路を設営した。2軸(A・B軸)が交わるO地点を中心に、図1に示す6カ所にスピーカーを設置した。実験に用いる音サインは、中心周波数が1kHと4kHzにある2種類の連続的な定常音(水音)と札幌の音響信号機で用いられている断続音(ピヨピヨ)とした。条件は4つを設定した(条件1:AB軸ともに1kHz水音のみ(2軸同種音)、条件2:A軸1kHz水音、B軸4kHz水音(2軸異種音)、条件3:AB軸ともに1kHz水音とし、角の2つは断続音(2軸同種音+角断続)、条件4:A軸1kHz水音、B軸4kHz水音に角の2つは断続音(2軸異種音+角断続))。被験者は16名の視覚障がい者(全盲)である。それぞれの条件開始前には、実験者が歩行路を手引きし、音場を体験させた。実験では左右への曲折を検証するため、各条件を往復させた。 (研究成果)
|
図1 実験歩行路(北海道科学大学敷地内)
写真1 実験時の風景(実験当日は、積雪路面に50cm毎のグリッドを引き、被験者の踵の着地点がわかりやすいようにした。実験者は被験者を追跡しながら足元をビデオカメラで撮影し、その動画を元にCAD図面をおこした。両足の踵の着地点をプロットし、それらの中点を求め、繋ぎ合わせた線(身体の重心があるところ)を歩行軌跡とした(図2参照)。
表1 逸脱数と到達率および偏軌が2mを越えた件数
図2 条件1における全被験者の歩行軌跡 (全体的な傾向としては、スタート地点からやや偏軌しはじめ、曲折後の方が偏軌量は大きくなる。しかし、多くの被験者はスピーカーの位置を概ね捉えており、スピーカー直下の偏軌量は小さい傾向にある。
また、歩行路を逸脱してしまう被験者は、適切なタイミングで曲がり角を発見できず、そのまま通り過ぎてしまう傾向が見られた。この傾向は特に条件1往路と条件3往路で多く見られた。
)
図3 各条件における全体の平均偏軌量(mm)
図4 曲折前後の偏軌量と曲折後の直進性
表2 角を曲がる行動が最もしやすい条件