(目的)
2014年3月「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会」において、ベビーカーの安全な使用とベビーカー利用への理解・配慮を求めるための、「ベビーカー利用にあたってのお願い」及び「ベビーカーマーク」が作成され、5月に普及・啓発のためのキャンペーン活動が行われた。
交通事業者は鉄道、バス車両内に「新しいベビーカーマーク」を掲出し、ベビーカー利用者が安心して利用できる場所を明示し始めている。環境の変化に伴い、ベビーカーの利用実態は前回の調査(2009年)と比較して、利用状況や利用者の意識にどのような変化がみられるのか、また、周囲の意識はどのように変わってきているのかについて明らかにする。また、ベビーカー(モノ)を見直すことにより、より安全で快適なベビーカーの機能付加の提案を行うこととする。
(研究方法)
1)関連研究・文献レビュー、関連事例の調査
2)ベビーカー利用者を対象とした意識調査 (5年前の調査と比較して)
3)ベビーカー利用に関する安全教室の実施
4)ベビーカー利用者の行動調査・分析(ベビーカー走行実験)
5)ベビーカー非利用を対象とした意識調査(H27年度実施予定)
(調査結果)
-
ベビーカー利用者を対象とした意識調査(5年前の調査と比較して)
神戸市内の福祉センターや児童館などで行われている子育てサロンや子育てサークル等でアンケートを実施した。期間は2014年9月〜11月で回収数は182件であった。
@子ども連れでの外出用具
子ども連れでの外出用具としてはベビーカーが最も利用されていた。公共交通機関においても「ベビーカーを使って外出する」割合は前回の調査と比較し、16.6%増加した。
A事故につながるヒヤリ・ハット事例について
事故につながるヒヤリ・ハット事例について前回の調査と比較すると、「ホームと電車の隙間にベビーカーの車輪が落ちた経験」は大幅に増加していた。重大な事故が起こらないようベビーカーの正しい使用方法を周知していかなければならない。
B周囲からの反応、周囲への反応について
ベビーカーを利用している際の周囲からの反応やベビーカー利用者が行っている周囲への対応について前回の調査と比較すると、「子どもが泣いたり、ぐずっていたら嫌な顔をされた経験」、「混雑時などにベビーカーを邪魔そうにされた経験」、「バスなどで子どもを抱いて、ベビーカーを持っていても周囲は知らん顔をしている経験」の項目で、微増がみられた。
Cベビーカー利用時の注意点
ベビーカーの利用時に注意すべき点(下記6項目)について、「常にできている」から「常にできていない」の4段階で評価し回答してもらった。
1)ベビーカーに子どもを乗せる際は、シートベルトの着用をしている。
2)ベビーカーの後ろに荷物は掛けないようにしている。
3)エスカレーターや階段ではベビーカーから子どもを降ろして利用している。
4)公共交通機関などでは、集団での利用は避けるようにしている。
5)バス停や電車のホーム、車内などでベビーカーを止めている間は、ストッパーをかけるようにしている。
6)駆け込み乗車はしないようにしている。
2)と3)の項目については、注意が出来ていない人が多い結果となった。
D「ベビーカーの安全な使用」に関するチラシの認知度
ベビーカーキャンペーンで配布されたチラシについてはベビーカー利用者にあまり周知されていなかった。書かれている内容については、半数以上が「バス車内では、進行方向後ろ向きにベビーカーを固定する。」ということは知らなかったと回答した。
ベビーカー利用に関する安全教室の実施
ベビーカー利用者の意識調査結果をもとに、ベビーカーを安全に利用するための安全教室を実施し、評価を行った。ベビーカー利用時に注意すべき点(前項記述)の2)3)5)おいて、意識改善がみられた。
ベビーカー利用者の行動調査・分析(ベビーカー走行実験)
ベビーカーに子どもを乗せ走行する際、押している人や乗っている子どもに歩道の凹凸や段差などの衝撃がどのように伝わっているのかを明らかにするためベビーカー走行実験を行った。2種類のベビーカーに簡易ドライブレコーダーシステム※(以下DRと記す)を装着し、模擬道路を走行した。DRはベビーカーハンドル部分と、赤ちゃん(人形)の頭の後ろに装着した。走行時におけるベビーカーの加速度の変化、角度の変化の推移から赤ちゃんへの負担、使いやすさなどを比較評価できる可能性を探索した。
(次年度研究計画(予定))
・関連事例の調査
・ベビーカー利用者の行動調査・分析(ベビーカー走行実験 本調査)
・ベビーカー非利用を対象とした意識調査
|