バリアフリー推進事業

平成25年度 成果報告

研究助成名

津波災害時における自動車を利用した要援護者支援対策の有用性に関する研究 (42-学8)

研究者名

日本大学大学院 寺崎 康雄

キーワード

@津波災害 A地域防災力 B災害時要援護者 C住民組織 D行政区 E防災対応力

研究内容

(研究目的)
本研究では災害時要援護者の支援システムの整備に向け、千葉県長生郡一宮町を対象地として選定し、地域の社会的防災力の算出、また津波災害による地域の脆弱性を社会的、物理的より捉えることで、災害時要援護者支援対策における基盤となる地域の総合的な防災力評価により、住民組織の今後の取り組むべき課題を浮き彫りにし、それに対する解決策を提示することを目的とした。

(研究手順)

まず始めに、東日本大震災での避難人数・同行者の関係など避難支援活動についての把握を住民アンケートにより行う。次に、一宮町の行政区35地区での津波災害に直面する可能性(災害リスク)の実態を人口密度や年齢構成など社会的要因を考慮した、社会的脆弱性より明らかにする。さらに、把握した災害リスクに対して安全な避難支援活動を実施できるのか行政区の区長に対するアンケート調査を用いて、区の防災活動の実施状況・災害時要援護者対策より評価を行い、区の対応力を明らかにした。最後に算出した区ごとの災害リスク、社会的脆弱性、対応力について地図に示し、総合的に地区の防災力評価を行った。

(研究成果)

 東日本大震災において被験者の世帯属性による分類で把握した避難行動をまとめる。避難行動意識については居住場所が浸水域内か浸水域外かによって意識がわかれた。避難行動時は家族による複数での避難行動が多くとられていることが明らかとなった。またそれは自動車の使用理由にも大きな影響を与えていた。そのため、家族以外の支援を想定し、災害時要援護者に対しての重層的な取り組みが必要である。また、自動車を利用することで災害時においては状況によって有効な手段となると考え、十分な自動車使用のリスクを検討し、安全に避難が行えるような整備が必要である。
 そこで、本研究ではそこから自動車の使用も考慮した災害時要援護者支援対策の検討を目的に、自動車による支援計画作成における現状の基盤となる行政区の防災力評価を行った。
評価するに当たり「防災力」について整理すると、地域に対する「危険度」と「対応力」により捉えられるものと本研究では定義づけた。「危険度」については「住民」の災害に対する脆弱性のことであり、高齢化率、浸水面積人口、自動車台数にて社会的、物理的に算出した。「対応力」については地域での日頃の被害抑止および支援の円滑化などを目的とした防災活動や避難計画により捉え、行政区長の災害に対する意識、地域での災害時要援護者対策の取り組みにより算出した。
調査結果として、まず行政区の危険度について述べる。危険度の評価項目として本研究では、@浸水面積人口A高齢者1人当たりの若者人数B自動車の乗車人数C自治会の加入率の4項目によって点数を与えてその平均値によって評価した。結果を図1に示す。危険から順に浸水率に対して自動車台数・高齢者に対する若者の割合が少ないため、避難が困難であることが予想される。沿岸部では他区に比べて困難である区が集まり、内陸に向けて徐々に危険度が薄まることが見て取れる。このことから沿岸部は内陸部より一層災害時要援護者対策が必要であり、早急に対応するべきである。また危険度とは別に内陸部の区では災害時において避難支援は困難ではないが、発災後、沿岸部の区より避難してきた避難者を受け入れることを考慮した計画が必要であると考えられる。
次に行政区の対応力についての評価項目として@地域活動の実施回数A区での防災訓練の実施B近所同士の関係性C災害時要援護者に対する支援準備体制D災害時要援護者名簿の取り組み状況によって点数を与えてその平均値によって評価した。まとめたものを図2に示す。図を見ると全体的に災害時の対策状況が進んでいる区が少ないことがわかる。また区長に自身の区の危機意識を表したのが図3である。図3の区長の自身の区に対する危機意識と比べてみると危機意識が高くても対策状況は低い区が11地区見られた。行政としては対策を区独自に任せているが、十分な活動ができる組織体制がなく、取り組みを進めることが困難であることが推測できる。
一方、もっとも高い対応力となった矢畑区では一宮町でも数少ない自主防災組織を設立している区であることから、組織で防災対策に取り組むことが他の区でも早急に必要であり、自主防災組織の設立を第一に取り組むべきである。

  1.  

図1 行政区ごとでの危険度の評価結果

図1 行政区ごとでの危険度の評価結果

図2 行政区での災害時に対する支援の対応力

図2 行政区での災害時に対する支援の対応力

図3 区長の自身の区に対する危機意識

図3 区長の自身の区に対する危機意識

バリアフリー設備のご紹介

バリアフリー設備のご紹介

実績報告

成果報告会