バリアフリー推進事業

平成22年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 成果報告

研究助成名

介助・介護を必要とする旅行者支援策の充実と支援組織の全国展開に関する基礎的研究 〜全国自治体及び旅行支援事業者を対象とした事例研究〜 (252-5)

研究者名

社団法人北海道開発技術センター 地域政策研究所 原文宏

キーワード

介護保険法・障害者自立支援法・移動支援・旅行支援・制度論

研究内容

(研究目的)
介助・介護を必要とする高齢者や障がい者の旅行機会の創出と、快適な旅行環境の実現を目的とし、全国の自治体を対象とした調査から、「旅行時の居住地外での公的介護サービスの給付」に関する現状を把握することで、自治体毎に異なる制度の均一化に向けた課題と方針の確立を目指す。また、高齢者及び障がい者の旅行支援機能を持つ先進的な事業者等への調査により、現在の業務内容や運営上の課題、今後の展望等についての事例を収集し、支援機関増設や支援センターの設立、そして全国的な連携を検討する際の基礎データを得ることとする。
(研究手順)
【平成22年度】

  1. 介助・介護を必要とする旅行者に対する法制度や既存研究等の収集、整理
  2. ワーキンググループによる調査内容、手法等についての検討・精緻化
  3. 自治体へのアンケート調査(居住地外給付等を調査)
  4. 旅行支援団体へのアンケート調査(旅行支援事業団体を調査)

【平成23年度】

    • 居住地外給付を実施している自治体の抽出、詳細調査
    • 旅行支援団体への補完調査
    • 調査結果及びワーキンググループでの検討に基づき、今後の旅行支援方策のあり方等を提案
    • 研究手順

    (研究成果)

    1. (1)居住地外給付に関する自治体の運営手法に関する調査
      本調査は、北海道、東京都、大阪府、兵庫県、島根県の5都府県、337自治体を対象に実施したが、回答があった自治体の多くが北海道や島根県といった人口の少ない自治体であり、特に約半数が北海道の自治体であることを前提とした調査結果である。
      したがって、調査結果は日本全体の傾向を代表したものではないが、おおまかな傾向を見る上では十分に利用可能であり、このような調査が全国的な規模で実施されたことが、初めてであることを含め、高齢者、障がい者の旅行支援を考える上で貴重な基礎データを収集することができた。
    1. 居住地外利用の要望がある自治体の割合は、全体では障がい者から要望を受けた自治体が約6割、高齢者からは3割で、障がい者からの要望が高い。
    2. 居住地外利用の事由と内容は、高齢者は「遠方の病院」が圧倒的に多く、障がい者は「旅行」、「遠方の病院」の順で、病院よりも旅行のニーズが高い。
    3. 旅行の同伴者は、「親族」、「友人」が中心であるが、このような同伴旅行においても公的介護サービスを受けたい要望はある。
    4. 居住地外給付を認めている自治体では、障がい者の要望を認めている自治体は9割近いが、高齢者は約半分であった。承認された外出事由は高齢者が「遠方の病院」であるのに対し、障がい者は「旅行」「冠婚葬祭」「遠方の病院」とさまざまである。自治体によって承認の是非が大きく異なることから、ある程度、サービスの範囲や適用方法の全国的な統一が必要であるが、そのためには、認めていない自治体の背景や理由を詳細に把握することと、障害者自立支援法の対象とならない高齢者の範囲などを明確にする必要がある。

    (2)  介助・介護を必要とする旅行者支援団体アンケート調査
    介助・介護を必要とする旅行者への支援事業を先進的に実施している9団体の事業内容、組織体制、事業費、運営上の課題等についてのアンケート調査を実施した結果についてまとめと考察を以下に示す。回答いただいた9団体はいずれもNPO法人であり、非営利団体が行っている旅行支援事業の現状である。

      • 旅行支援事業の内容は「観光やバリアフリーの情報提供」「バリアフリー点検」が全ての団体で共通して実施され、特に、情報提供を中心にしている団体が多い。
      • 各団体の構成員の人数は、団体によって大きく異なる。旅行支援事業だけでなく、各地域で介護保険事業や障害者自立支援事業に取り組んでいる団体の構成員数が多く、有資格者も少なくない。そのため、旅行支援事業の従事者は無報酬のボランティアよりも、専門的な知識や経験を持つ人を中心に常勤及び非常勤職員として従事する場合が多い。
      • 各団体の年間総事業費は1億円以上〜100万円未満で、そのうち旅行支援事業が占める割合は1割〜8割と、各団体で大きくばらついている。旅行支援事業の財源は、自治体や民間団体からの助成金、及び別の事業収益からの補填が主となっており、旅行支援事業だけで事業を行っている団体は極めて少ない。
      • 旅行支援事業の運営上の課題として、旅行支援事業を中心とした団体では「事業収益の不足」又は「運営資金の不足」が課題で、補助金や助成金枠の減少と申請に当たっての人材不足を背景として上げている。

 

バリアフリー設備のご紹介

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実績報告

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