バリアフリー推進事業

平成20年度ECOMO交通バリアフリー研究助成 対象事業 成果報告

研究助成名

ベビーカー利用者の視点から見た公共交通機関のバリアフリーに関する研究(248-6)

研究者名

神戸女子大学 西本 由紀子

キーワード

ベビーカー利用者、公共交通機関、行動特性、行動観察調査、アンケート調査

研究内容

研究目的

近年、公共交通機関でのエレベーター設置の増加やベビーカーの軽量化によって、ベビーカー利用者は大幅に増加しつつあるが、それに伴い、ベビーカー利用にまつわる各種の事故やトラブルも増加している。その原因として、段差や階段などの物理的なバリアと、ベビーカー非利用者との意識の違いなどにおける心理的バリアの二つが考えられる。そこで、本研究では、公共交通機関において快適にベビーカーを利用するために、物理的・心理的双方の側面から環境を整備する方策について提案するために、(1)ベビーカー利用者を対象にした公共交通機関におけるベビーカー利用実態と意識調査、(2)ベビーカー非利用者の意識調査、(3)先進事例における事業者のベビーカー利用に関する指針調査を実施した。

研究方法と手順

 

調査成果

1.公共交通機関でのベビーカー利用者に関する調査

公共交通機関の利用時間帯は、ラッシュ時を外した午前10時から午後4時が70%をしめており、1電車車両内でのベビーカーの利用実態としては子どもを乗せたままベビーカーを広げての乗車が80%以上と多い。乗車中の位置及び立着状況は図1に示されるように乗降ドア付近が31%、通常座席付近が29%、優先座席27%となり、車いすスペースの利用はあまり見られない。2バス利用の場合では、一部のノンステップバスには車いす専用スペースと同様にベビーカーを広げたままの設置場所の表示がされるようになってきているが、利用者の70%がベビーカーを折りたたみ乗車していた。3観察調査においては、安全上不安な場面に遭遇した。例えば、乗降時には子どもを乗せたまま、ベビーカーの前輪をあげての乗降が最も多いが、ホームと車両との隙間に車輪が落ちてしまう可能性がある例。同行者がおらず、2人以上の子どもを連れている場合や、子どもにまで目が行き届いていない例などがある。4利用者の望むこととしては、エレベーターやスロープといったハード整理を求める声が最も多いが、子どもがぐずった時などに温かい視線があるだけでよい、といった自分たちの状況の理解を求める声も多かった。

2.公共交通機関でのベビーカー利用に対知る周囲の人の意識調査

ベビーカー利用に対知る周囲の人の意識では、ベビーカーの経験の有無で大きく意見が分かれた。ベビーカー未経験者は、スペースやベビーカーの特性を知らないため、ベビーカーを「邪魔」だと感じていたり、ベビーカー利用者に対するマナー面を指摘する人が多い。また、手助け使用としても、ベビーカー利用者の気持ちがわからないことや、どのタイミングでどう声をかければよいかわからないことが多く、声をかけても断られてしまうなど、ベビーカー利用者とベビーカー非利用者の間での心理的バリアが存在していた。一方、過去にベビーカーを利用していた経験者達は、ベビーカーの特性や使い方と把握しているので、率先してベビーカー利用者を手助けしていることがわかった。

3.公共交通期間内でのベビーカー利用に関する先進事例・事業者の指針

今回先進事例として取り上げた広島電鉄JRT車両内では、車いすと同様ベビーカー設置場所のマークが表示されている。また、車両内に運転手以外の乗務員がいる場合には、ベビーカー利用者への乗降の手助けもしている。横浜市バスは、国内で最初に車両内にベビーカーマークを導入し、車内放送でも、ベビーカーを広げての乗車に協力を求めている。さらに、ベビーカーを非遂げて乗車する際には、必ず乗務員が固定ベルトを使っての設置を補助し、他の乗客が着している場合には関の移動をお願いすることもあるという。一方、類似の方法を導入しているK市バスでは、ベビーカーマークを座席横に貼っているため、乗客が座っていればマークは見えなくなってしまう。そのため、設置スペースがあることを知らないベビーカー利用者が40%以上いた。ベビーカーマークを貼る位置と、事業者側のきめ細かい対応が必要不可欠であることを示していた。

4.まとめ−今後の環境改善のための提案−

以上の調査結果より、今後の環境改善のために、1ハード面の整備としては、ベビーカー利用者がもっと使いやすい設備、例えば、電車の車両では乗降扉付近のイススペースを減らし、そこに跳ね上げ式の椅子を設ける。バスでは、畳んだベビーカーを固定できる場所や置き場を設ける。2ソフト面の整備としては、ベビーカー非利用者や事業者が利用者の立場を理解するための公共交通機関でのベビーカー利用体験や、ベビーカー利用者に対するベビーカー利用時の安全性やマナー講習の実施、を提案したい。

 

研究方法と手順

 

乗車中の位置と立着状況(N=206 一部抜粋)

 

バリアフリー設備のご紹介

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