バリアフリー推進事業

2018年度 成果報告

研究助成名

事業者連携による福祉車両を活用したバリアフリー観光移送に関する研究

研究者名

社会福祉法人みずうみ 公益事業部 岩本 千代

キーワード

事業所間連携、福祉車両の空き時間の有効活用

研究・活動成果

(研究・活動目的)
 障がい者や高齢者など誰にも優しい観光移送を実現するため、社会福祉法人等が所有する既存の福祉車両を有効活用したユニバーサル観光モデルの実現可能性について研究した。  

日中の利用者の少ない時間帯に福祉車両を有効活用できないか。
 特に福祉(介護)サービスが充実している市内の社会福祉法人間の連携により、福祉施設を休憩拠点あるいは福祉車両の乗り継ぎ拠点としてネットワーク化し、観光スポットの広域移送サービスの実現を目指す。

(研究・活動の背景)

 松江市では、エコ×ユニバーサルな観光地づくりを推進している。観光スポットとしては国宝松江城のある市内中心部だけではなく、平成29年12月には島根半島が世界ジオパーク認定された宍道湖・中海エリアから日本海側にも広く分散している。今後も2020年の東京オリンピック、パラリンピックを見据え、ユニバーサル観光の受入れ環境の整備を進めていく予定である。一方、観光エリアが広いため、障がい者や高齢者の観光の際の移動の負担は相当大きく、特に移動中のトイレ休憩なども大きな問題となる。さらに既存の公共交通での移動も困難であり、バリアフリー車両を使った観光移動が可能なモデルを検討する必要がある。

(研究・活動の現状)

  1.  松江市社会福祉協議会において、当研究活動の取り組みについて承諾を得ており、運用テストなど各法人・事業所の協力も得られやすい状況にある。
  2. (研究・活動の内容)
  3. (1)福祉車両の実態把握
    @今回の実証実験に賛同いただける社会福祉法人、事業所を選定。
    A賛同いただいた各法人の所有する福祉車両の運用実態調査を行い、活用可能な車両や運転手の有無、各法人の拠点やサービスエリアなどについてヒアリングや現地調査により把握。
    B現在、先駆的に障がい者の観光コーディネートをしておられる「NPO法人プロジェクトゆうあい」の協力の下、今回の実証実験に協力いただけそうな利用者を紹介いただいた。
    C協力いただける利用者の状態、実際の観光の工程表など事業所間において情報共有し、具体的な支援計画を立案、実施、評価していく。
    D実証実験後、課題を抽出・整理し、今後の実現可能性を探った。

    (2)実証実験の計画・調整・準備
    ・実証実験の計画作成や協力法人・事業者や関係機関との調整、準備を行う。
    ・1回目はシュミレーション、2回目に実証実験。
    ・実証実験前後には調整会議を開催し、協力法人・事業所間での情報共有を図った。

    (3)実証実験

    11月30日(金)14:00〜16:00 振り返り
    ・実証実験後、協力利用者からの感想、協力法人・事業所からの意見等から整理を行い、今後実現可能な効果的な方策を再検討した。

    ○NPO法人プロジェクトゆうあい様(所長川瀬様より)
    ・旅行後、ご利用者様から届いたメールを照会いただく。
    「このたびは、とても楽しいひと時を過ごすことができました。手引きの方ともお会いできて楽しく充実した旅行を過ごせてよかったです。実証実験にも携わることができて、何かお役に立てましたでしょうか?今後は障がい者施設や社会福祉協議会などの公用車でも病院への通院や平日の役所や公共機関への手続き以外でも利用できればとても便利になると思います。例えば、松江に観光に来た人や何か買い物に使いたいという人にはとても助かります。あとは利用の際の手続きをどのようにするかということですね。またお願いすることもあるかと思いますのでよろしくお願いいたします。」

    ○社会福祉法人四ツ葉福祉会様(施設長代理毛利勇二様)
    ・随行させていただいた場面では問題なく進んだと感じています。車内の会話も手引きヘルパーさんが上手に話され、会話が途切れることもなく良い雰囲気で自然な流れとなりました。
    ○社会福祉法人豊心会(副理事長武部幸一郎様)
    ・移動の予定が大きく変わった場合、法人間の車両のリレーやピックアップに必要な場所(駐車場等)について時間がずれてもきちんと確保できるか?また雨の日の対応なども今後の課題であると感じました。

    ○社会福祉法人みずうみ地域密着型サービス事業所あさひ乃苑(副苑長稲田政雄様)
    ・全体を通して大きな問題もなく実施でき、利用者様も「バスを乗り継ぐことになると、バスの乗り降り、支払いの手間など大変なのでとてもよかった。」と仰っていただいた。

    (4)課題整理
    ・今後の事業所間での情報提供、情報共有の方法について
    ・活動中の損害保険や保証問題
    ・利用料金の問題
    ・タクシー運転手の高年齢化や移送手段の絶対数が不足しているという松江市の現状から今後は空き時間を使った福祉車両等を観光のみならず、より身近な透析患者や障がい者、高齢者の通院や外出手段などの有効活用へどうつなげていけるか仕組みづくりが必要である。そのような仕組みづくりを目指すにあたり、今後松江市、運輸局、交通関係各部局などへの綿密な調整、働きかけも必要となる。

    (5)今後のイメージ
    これから「観光バリアフリー移動支援・事業所間連携事務局」を立ち上げ、協力法人・協力事業所を少しずつ増やしていく。また当法人において今年度実証実験を行い、来年度から本格運行となる「グリーンスローモビリティー(電動カート)」やその他、各法人・事業所が保有している地域資源(ex.地域の障がい者用トイレマップやバスマップなど)を情報共有し、それらを有効活用しながら松江市版の観光バリアフリー移動ツアー体制を整備していく。

    日頃から市内の事業所間において連携を取り合い、それらを積み重ねていくことで、災害時などもスムーズな連携が取れるようなネットワークづくりを目指し、松江市の特徴的な地域包括ケアシステムのモデルの一つとしていきたい。

 

 

表1 10月30日(火)12時30分スタート 現地視察(シュミレーション)

10月30日(火)12時30分スタート 現地視察(シュミレーション)

表2 11月3日(金) 実証実験行程

11月3日(金) 実証実験行程

表3 オーダーが入った場合のイメージ

11月3日(金) 実証実験行程

今後の連携イメージ

図1 今後の連携イメージ

 

 

バリアフリー設備のご紹介

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