(研究目的)
鉄道事業者が安全対策を講じたり,行政当局が個別の安全施策への補助メニューの効果を検討したりする際に,その有効性や優先順位を評価する指標について,既往の駅ホームの安心安全評価手法を,交通バリアフリーの観点から高度化すること
(研究手順)
1.駅ホーム事故データの基礎集計
2.駅ホーム構造の実地調査
3.大都市交通センサスを用いた高齢者利用割合の算出(利用者特性の要因の精緻化)
4.一般化線形モデルによる事故件数回帰モデルや事故リスク算出モデルの作成(安全性評価指標と事故状況データの分析)
(研究成果)
- 駅ホーム事故を防ぐためのホームドア設置には多額の費用がかかることから,すべての駅でホームドアを設置することは簡単ではない(図1).従ってホームドア以外の安全設備も含めて,様々な安全対策を検討する必要がある.そのため,安全対策の有効性や優先順位を評価する指標について考えることは有用である.
本研究では,鉄道事業者から提供された事故データと,独自に行なった駅ホーム構造調査の結果から,事故件数回帰モデルや事故リスク算出モデルを作成した.
まず事故データの基礎集計を行ったところ,全事故件数のうち約半数が踏み外しであった.踏み外しとは列車乗降時にホームと列車の間に足を踏み外す事象である.踏み外しは朝の通勤ラッシュ時の若い女性に多く発生していることがわかった.
続いて,既往の安心安全評価手法に従い,駅ホーム構造調査を行った.これは16項目について,各駅,各ホームについて現地調査を行うものである(図2).
事故件数回帰モデルの結果からは,乗降人数や列車との最大隙間,島式ホームであること,曲線ホーム凸側であることなどが事故件数を増やす要因であることが確認できた.現況再現性を確認したところ,全体的な適合度は高いものの,事故件数が0件と1件の番線数においてずれが大きいことがわかった.これはポアソン回帰の限界なのか今後検討する必要がある(図3).
事故リスク算出モデルの結果からは,酔客の転落事故の発生リスクは非酔客の11.7倍,20代は他の年代と比べて4.00倍,男性は女性に比べて2.74倍,ということが分かった.
以上の分析から,既往の安心安全評価手法が信頼できるものであることに加え,鉄道利用者の属性を評価指標に取り入れる必要性が確認できた.
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