バリアフリー推進事業

平成21年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 成果報告

研究助成名

ハンドル形電動車いす使用者の走行空間に対する注視特性に関する基礎的研究 (344-6)

研究者名

北翔大学間福祉学部医療福祉学科 石橋達勇

キーワード

ハンドル形電動車いす、空間認知、注視特性、アイマークレコーダ、走行イメージ

研究内容

研究目的

近年、ハンドル形電動車いす(以下、ハンドル形車いす)使用者の操作ミスが原因と思われる事例が散見される。この操作ミスの発生原因の一つとして、筆者らは使用者の走行空間内における走行イメージと、ハンドル形車いす自体の走行状況との間に「差異」がある為、つまり使用者が想定している走行イメージと実際のハンドル形車いすの動きが一致していないことが大きな理由と考えた(図1参照)。
この差異を小さくすることが、事故防止や安全・快適な走行に繋がると考えられるが、その為には使用者が走行空間からどの様な情報を収集して走行イメージを持っているのかを把握し、それとハンドル形車いすの走行状況との関係を明らかにする必要がある。
そこで本研究では、特に走行空間からの情報収集と走行イメージに大きく関係していると思われる使用者の注視行動に着目し、 事故発生状況を想定した走行空間における使用者の注視行動の特性(注視特性)を踏まえて、使用者の走行空間内における走行イメージと、ハンドル形車いす自体の走行状況との関係を探ることとした。

 これにより、事故発生構造の解明と共に、事故予防やハンドル形車いす使用者に対する事前教育の教材開発が進展し、最終的に誰もが安全・快適に使用できる移動空間の環境整備に貢献できると考えた。

研究手順

1)ハンドル形車いすが関連した事故事例の収集と状況分析
ハンドル形車いすが関連した事故事例の収集とその状況を把握するために文献調査及びヒヤリング調査を実施し、特に使用者の操作ミスが原因と思われる事例を抽出し、それら事例の事故発生状況について考察した。
2)事故発生状況を踏まえた走行空間における使用者の注視特性とハンドル形車いすの走行状況との関係の把握
1)の結果を踏まえ、障害物を回避する4種類の実験コースを設定し、そこを被験者にハンドル形車いす(スズキ社製ET-4D)を各5回走行させ、その際アイマークレコーダ(NAC社製 EMR-8)により記録した被験者の注視行動、また各種計測・記録機器等を用いて記録したハンドル形車いすの走行状況の経時変化を比較・分析すると共に、走行後のヒアリング調査の結果から得た被験者の走行イメージと照らし合わせて、考察を進めた。

なお、被験者の属性と人数は、健常者:20歳前半男女各5名、計10名である。
研究成果

有効データとして収集できた男女各2名ずつ計4名のデータを分析対象とし、その結果以下のこと等が明らかとなった。
・一部事例において、走行回数が増加するにつれて、ハンドル形車いすの動線が合理的に変化し、また被験者の注視が1方向に集中し、注視距離が伸びた。これは走行回数が増加することで被験者がハンドル形車いすの操作に習熟したことが関連していると考えた。
・コース内に設定した障害物の反対側の壁面の有無により、被験者の意識の変化が見られたが、ハンドル形車いすの動線や被験者の注視特性については変化がみられなかった。
・以上のこと等から、ハンドル形車いすの走行状況と走行イメージとの関連性については、その可能性が示唆された。

 

図1 ハンドル形電動車いす走行時における各要素間の関係モデル

 

図2 走行実験の概要

 

図3 走行実験の様子

 

バリアフリー設備のご紹介

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実績報告

成果報告会