コンコースや通路、垂直移動設備、プラットホームなどの各空間・各設備の明るさを十分確保することは重要であるが、照度に限らず照明の配置などに配慮した照明計画が高齢者・ロービジョン者等が安心して安全に円滑に移動するための有効な手段となる。

福岡市交通局 七隈線の照明計画

七隈線のデザインポリシーである「ヒューマンライン=人に優しく地域に根ざした公共交通機関」に基づき、16駅各駅が建築と一体化し空間に調和することを基本としたデザインに統一され、形態や素材に特徴を持たせた空間を特化させる部位については、その特徴を生かした照明計画としている。

  1. 標準駅

    駅出入り口上屋の照明には、高効率・長寿命・高演色な42wコンパクト型Hf蛍光ランプスポットライトを用い、空間の広がり感と明るさ感を高め、地下空間へ降りる不安感を少なくし、明るく自然な光環境を創出している(平均照度:300lx)。

    コンコースの照明は、空間の広がり感を創出するため、壁面と天井面の境に建築と一体化した壁面照明(32WHf 蛍光ランプ笠なし器具)を連続的に配置している。また、ベース照明は天井のモジュールに合わせた45Wコンパクト形Hf 蛍光ランプスクウェア器具を規則的に配置し、行動のポイントとなる部分にダウンライトを記号的に配置することで利用者のスムーズな誘導を助ける役割を果たしている(平均照度:400lx)。

    ホーム空間の照明は、32WHf 蛍光ランプ(5000K)によるライン照明で平均照度300lx 以上を確保し、ホームドア前に設置した35Wセラミックメタルハライドランプ(3000K)で足元を明るく特化することで、乗降部をわかりやすくしている。また、明るさ感と広さを創出するため、天井面には間接照明(32WHf 蛍光ランプ笠なし器具)を、柱部分には16W コンパクト形Hf 蛍光ランプダウンライトを配置している。

  2. 天神南駅

    本駅舎はロービジョン者の視点で安全性、情報性を最大の目的としてデザインされている。32WHf蛍光ランプによる足元の間接照明は白い床を明るく照らし、安全への配慮のほか空間の明るさ感と清潔感に大きく寄与している。また、床にできた光のラインは誘導効果をもたらし、それ以外のベース照明はグレアレス器具(32~42wコンパクト形Hf蛍光ランプダウンライト)を使い、空間の光要素を減らすことでサインの視認性を高めている。

出典:三村 高志、小林 和夫 「福岡市営地下鉄七隈線駅舎の照明」、照明学会誌、vol.90、No.4(20060401)pp. 193-194

画像提供元:福岡市交通局