バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関するワークショップを月に1回開催しています。

第62回バリアフリー推進勉強会 開催結果概要

高速道路休憩施設のユニバーサルデザインの現状
− 発達障害にやさしいSA・PA 調査結果からわかったこと −

開催日
2020年12月11日(金曜日)14:00〜15:30
開催場所
オンライン(ライブ配信)
お話頂いた方
橋口亜希子さん(橋口亜希子個人事務所
荒木 華子さん(中日本高速道路株式会社東京支社)
コーディネーター
橋 儀平さん(東洋大学 名誉教授)

講演概要

「発達障害にやさしいサービスエリア、パーキングエリアの調査から」 橋口亜希子さん

(以下、配布資料のテキストデータ)

1ページ目スライド上
発達障害にやさしいSA・PAの調査から
「いいところ発見隊」でみつけたこと!
発達障害を手がかりとしたユニバーサルデザインコンサルタント
橋口亜希子個人事務所
橋口亜希子

1ページ目スライド下
高速道路は貴重な移動手段の1つ
人混みや騒音、周囲の視線が苦手など本人の困りごと

人に迷惑をかけたくない・好奇の目線にさらしたくないなど家族の困りごと
新幹線や飛行機での長距離移動を避けて、高速道路を使って移動する人たちも多くいる

2ページ目スライド上
ママたちから聞こえる困りごと
・飛び出しやドアを思いっきり開けるなど駐車場が怖い、ヒヤッとする
・日常的に利用するわけではないので、どこに何があるかがわからなくて不安
・いつも使っているトイレと違ったり、床が濡れていると使えない
・混雑時に並び方がわからなくて、他のお客様から叱責された
・母子・異性同伴で多目的トイレを利用していいのかわからない、使いづらい
・落ち着いて食事ができる場所がわからないので、結局車の中で食べる
・通路にお土産コーナーが突き出てたりすると、ぶつかって倒してしまう
・渋滞や長時間の移動で疲れた時だけでも、人目につかない場所で休みたい
・こんな私たちでも旅行を楽しみたい
行き当たりばったりで行くしかない・・・
トイレ利用さえもあきらめて、嫌がる子供にオムツをはかせる辛さ・・・

2ページ目スライド下
でも私は知っている…やさしい設備があることを
・広い障害者専用駐車スペースや、施設に密接駐車できるエリアあるよね!
・HPや案内版、ピクトグラムや視認性の高い案内もあるよね!
・ここはデパートか?と思うくらいきれいなトイレや、選択肢も数も多くあるよね!
・並び方や空き情報がわかるトイレもあるよね!
・多目的トイレが充実しているから他の利用者に気兼ねすることなく使えるよね!
・プライベート空間を保てたり、SAほど混雑してない穴場のレストランあるよね!
・すっきりとしていて、動線と静止空間が分かれている安心の売店もあるよね!
・人目につかずに、ゆっくり休めるベンチや空間もあるよね!
・ささやかなことかもしれないけど、楽しさや思い出になる場所もきっとあるよね!
課題は、そのやさしさが「見える化」されていないこと、
そして事前情報として「伝わっていない」こと!

3ページスライド上
困っている人たちが欲しいのは、今すぐ役立つ情報
UD調査というと、課題の発見を一番の目的にしがち…
もちろん
未来を良くするために課題や改善点を上げることも大事
でも
施設や設備などの課題改善には時間がかかる…
「困りごとは会議室で起きてるんじゃない、
今この瞬間も現場で起きている!」by踊る調査線
だから「いいところ発見隊」として調査を開始♪

3ページ目スライド下
いいところ発見隊「調査の具体的なポイント」
・駐車スペース
 発達障害など見た目にわからない障害の駐車可能の有無
 駐車場所から施設への移動のしやすさ
 安全確認(駐車スペースの広さ、駐車場内道路の安全性)
・案内サイン
 トイレ利用など目的をスムーズに果たせる案内であるか
 色分けやイラストのわかりやすさ(混乱の有無)
 視認性
・トイレ
 個室の利用しやすさ、わかりやすさ
 個室・全体の清潔さ
 混雑時の利用しやすさ(列の並び方、動線)
・多目的トイレ
 異性・母子同伴利用
 着替え
 オムツ交換

4ページ目スライド上
いいところ発見隊「調査の具体的なポイント」
・レストラン
 メニューのわかりやすさ
 注文のしやすさ
 落ち着いて食事ができる場所の有無
 その地域ならではの特産品のわかりやすさ(食べる楽しみ)
・売店・コンビニ
 買い物のしやすさ
 列の並び方など利用しやすさ
 その地域ならではの特産品のわかりやすさ(買う楽しみ)
・カームダウン・クールダウン
 カームダウン・クールダウンできそうなエリアの有無
・インフォメーション
 コミュニケーションボードの有無
 わかりやすい案内、説明
 筆談などその他の支援
・その他そこでしか見れない景色など、そのPA・SAの特色

4ページ目スライド下
東名高速上り線調査速報
発見!発達障害にやさしいトイレ事例紹介
愛鷹PA
写真左:トイレ奥の照明が明るく、絵が描かれている女子トイレ
写真右:トイレ奥の照明が明るい男子トイレ
暗さから、奥が空いていても怖さや不安を感じていけない人たちが、
奥に行くほど明るくなったり、アート効果で行ける仕組み

5ページ目スライド上
東名高速上り線調査速報
発見!発達障害にやさしいトイレ事例紹介
浜名湖SA
写真左:男性トイレの標準案内用図記号が大きく表示され、導線が敷かれている男子トイレ
写真右:小便器に仕切りが設置されている男子トイレ

5ページ目スライド下
発見したいいところを見える化「事前学習冊子(案)」
画像左:こうそくどうろSA・PAにいってみよう!(表紙)
画像右:とうめいこうそくどうろくだりせんSA・PAすごろく
行く場所や現在地がわかるすごろくをベースとして、
行ってみたくなるような楽しさと魅力を伝えながら、

6ページ目スライド上
発見したいいところを見える化「事前学習冊子(案)」
画像左上:まめちしきSAとPAのちがい
画像中央:トイレずかん
画像右下:ピクトグラムずかん
お子さんへの知識提供と同時に困りごとも解決できる情報と、

6ページ目スライド下
発見したいいところを見える化「事前学習冊子(案)」
画像左上:保護者の方へ「施設に密接駐車できるSA・PA」ならここ
画像中央:保護者の方へ「落ち着いて食事する」ならここ
画像右下:保護者の方へ「カームダウン・クールダウン」ならここ
ご家族の困りごとも解決できる情報も掲載予定

7ページ目スライド上
調査を終えて思うこと…SA・PAには愛がある!
間に合わずに小便器に大便をしてしまって泣いている男児を心配して、後処理の大
変さより、子供用トイレの設置場所の改善が必要ではないかと提案してくださった方
知的障害のある大人の方が団体でトイレ利用をしている時に、周囲のお客さんが
笑ったりする姿に心を痛めてくださる方
車酔いをして吐いてしまったお子さんとご家族に対して、嘔吐専用のバケツを用意し
て、汚してしまった服を洗える場所を紹介してくださる方
ここでは書ききれないほど、
真摯で誠実な対応に感謝しかなく、何度も涙…
現場のことは、現場の人がよくわかってる
地元のスタッフの方によって、愛に溢れたSA・PAは実現!

7ページ目スライド下
最後に…この調査の先に込める思い
発達障害を手がかりとしたUDコンサルタントの私の役割と使命
発見したいいところを好事例として
社会に示すことで、
発達障害にやさしい好事例を
社会に増やし、
他の機関などにも活用してもらい、
すべての人が移動や旅行を楽しめる
社会になってほしい
画像右:NEXCO中日本キャラクターみちまるくんと筆者(浜名湖SA)


「高速道路休憩施設のユニバーサルデザインの取り組み」 荒木 華子さん

(以下、講演概要)

 より快適で便利で楽しく美しいトイレを目指して、NEXCO中日本東京支社では商業施設等のトイレ意匠設計に長けた学識経験者の協力のもと、「休憩施設お手洗いにおける快適空間デザイン検討WG(お手洗いWG)」を設置し、より良いトイレ空間の検討・整備を行ってきました。
 これまでの休憩施設のトイレ整備では、身体の不自由な方に焦点を当てた検討を行ってきましたが、今回、橋口亜希子氏とともに「発達障害にやさしい」という視点で休憩施設の調査を行い、今後は内部障害や発達障害の方にも優しいトイレ整備の検討を行っていきたいと考えております。
 ここでは、NEXCO中日本東京支社でのこれまでのトイレの取り組みについてご紹介します。


1.休憩施設のトイレ整備の取り組み

 お手洗いWGによる検討結果を反映し改修を行った、東名日本平PAのトイレを例に、トイレ整備の取り組みの一部をご紹介します。
<乾式清掃の採用>
 従来は、臭気対策・清掃作業効率の向上を目的に湿式清掃(床に水を流して清掃する方法)を採用していました。しかし、湿式清掃は清掃後の床が滑りやすくなり、汚れた印象があります。さらに、お客さまが水跳ね等により濡れる心配もありました。
 上記対策として、乾式清掃(固く絞ったモップ等で汚れを拭き取る方法)を採用するとともに、乾式清掃に適した床材(ゴムタイル等)を採用しています。
<ロビーの整備>
 トイレにアクセスするためのアプローチ空間、待ち合わせの空間、及び乾式清掃を採用するための風除室としてロビーを整備しています。
<内装材の色や素材の見直し>
 公衆便所のイメージ(暗い・汚い)から脱却するため、上品さと風格と柔らかい雰囲気の「木質(シート材)」をトイレブースや天井に採用しています。
<お手洗いサイン計画の改良>
 東洋大学 高橋儀平教授を中心に他のWGメンバーやさまざまな身体状況の方々の協力を得ながら、ユニバーサルデザインへの取り組みとして、誰もが使いやすいピクト・サインを整備しています。
 更に、近年の国際化への対応として、ピクトに文字を表記する場合は、日本語の他、英語、中国語(簡体、繁体)、韓国語の5か国語で表記をしています。


2.SA・PAのトイレの基本計画

 NEXCO中日本東京支社で採用しているトイレの基本計画についてご紹介します。
<全体配置>
・多機能トイレは異性同伴者に配慮して、男女トイレ内部ではなく、直接出入りできる位置に整備することとしています。
・一定規模以上のトイレでは、清掃のために男女トイレ内部を分割可能な計画として、それぞれのブロックに、大型ブース、オストメイトブースを整備することとしています。
<トイレ内設備>
・トイレブースの種別ごとに必要な設備を規定して、サービスレベルの統一を図っています。
・トイレ内設備については、お客さまが高速道路を利用される前に、トイレ設備の整備状況を確認できるよう、各SA・PAのトイレ設備の整備状況を当社HPにて公開しています。


3.バリアフリーに配慮したトイレの取り組み

<多機能トイレの整備>
 多機能トイレは、車いす使用者、肢体不自由者(松葉杖や義足の使用者)、高齢者、妊婦、乳幼児を含む小児連れ等の利便性に配慮したトイレとし、手すり、非常警報装置、簡易ベッド、仕切りカーテン等を整備することとしています。
<オストメイト対応器具の整備>
 ご利用される方がオストメイトであることを知られたくない心情に配慮し、原則、男女各トイレの洋式トイレに設置することとしています。
<大型ブースの整備>
 大型ブースは同伴者を必要としない車いす使用者、肢体不自由者(松葉杖や義足の使用者)、高齢者、妊婦、小児連れ等を対象としたブースであり、男女各トイレに設置しています。
<段差解消の取り組み>
 身障者駐車場からトイレまでの動線は、スロープやエレベーター等を整備し、極力段差が生じないようにしています。


4.近年の取り組み

 近年の取り組みでは、様々なお客さまのニーズに対応し、快適にご利用いただけるトイレ整備に取り組んでいます。
<大型車ドライバーのニーズの反映>
 大型車ドライバーへのアンケート調査を行い整備計画に反映しました。
・洗髪洗面台を個室化して整備しました。
・リフレッシュする為の健康器具として背伸ばしベンチを整備しました。
<トイレ利用状況案内表示>
・トイレの利用状況を表示したモニターを設置しています(5ヶ国語対応、ブース種別表示の追加)。
・各ブース扉に設置したランプによる利用状況をお知らせしています。
<多言語タブレットの導入>
 訪日外国人のお客さまに対し、洗浄便座の操作ボタンやご利用方法を14カ国語でご案内するタブレット端末を導入しています。海老名SAなど、8休憩施設で整備しています。


橋 儀平さん コメント

 橋口さんのほうでいいところばかり先にお話し頂いたので、コメントは正直言って難しいですが、ご発表の最初から振り返ってみると、やはり発達障害の方が車でご家族や同伴の方と一緒に移動できるというのは、すごく大きな要素と思います。特にコロナ禍では、密を避けるという意味、あるいは本当に知っている人だけで移動できるという安心感には、私もすごく同感するところがあります。
 それから二つ目は、「ママたちから」というところで、ここに「パパたち」も入れて欲しかったというのはありますが、「ママたちから聞こえる困りごと」というところで、母子・異性同伴で多目的トイレを利用していいのかわからない、でも利用できることを外にも知らせたいということですね。
 私も中日本高速道路のトイレ調査を、ずいぶん前に行いまして、たまたま私が多機能トイレを調査しているときに、3人の大人で多機能トイレを利用するシーンがありました。トイレを出てきたときに、すかさず私はインタビューしたところ、ご両親(発達障害のある人の親)が「私たちはこういうトイレがないと外出できない」とお答えされ、サービスエリア・パーキングエリア(以下、SA・PA)にはたくさんのトイレがあるにもかかわらず、その多機能トイレを利用されていることがわかり、この時にやはり多機能トイレの機能を分散しないといけないということを確信しました。それ以前にも車椅子ユーザーの方々が、使いたいときに使えないという状況はありました。近年では、トランスジェンダーの方あるいは認知症の高齢者が同伴するという使い方もあります。行く場所がないので、しかも男女共用で使えるところがないから、どうしてもそこに集中せざるを得ない状況があるわけです。そういうことも含め、問題提起をされていると理解させていただきました。
 そして、橋口さんが3点目でお話ししている優しさの設備の中に、ゆっくり休めるベンチや空間もあるということで、「ベンチ」は本当に大事であると感じています。もちろんSA・PAですから、高速道路であり、とにかくトイレ休憩はすぐに済ませて次の目的地に行くという人もいますし、やっぱり運転手も含めて一息ついてからという場合もあると思います。発達障害の視点から見ると、今12月は冬ですけれども、暖かくなった時には屋外空間や屋外テラス等の仕掛けが、少し必要になってくるのではないかという気がします。
 後で荒木さんにもご質問したいと思いますが、私も時々、車で移動するときに、新しい道の駅を利用させていただきますが、この道の駅の展開はすごいと思います。売っている物もすごいし、スペースのとり方などもすごいので、こういうやさしい設備の情報が特に良い資産となります。
 同感するのは4点目ですが、やっぱり公共交通機関と連動していくというのはすごく重要で、空港に行くときの高速道路は多くの人が使うと思います。それ以外でも近場に行くときに高速道路を使う場合もあると思いますが、そのような連続しているところで、同じような案内や情報を提供されているのはすごく重要なので、とにかく先にグッドプラクティスを展開したいと思います。そこの事業者が伝えていく方法もありますが、利用者自身が発信することも含め、そこがとても重要であるという認識をしています。
 そして5点目は、様々な「いいところ発見隊」で、調査の具体的なポイントから実際のものが出てきました。コントラストが良く、視認性が高いものがたくさん表現されています。これはもう中日本高速道路が誇るといいますか、各高速道路の先頭を切って動いているのではないかというふうに私も理解しています。浜名湖SAの西棟とか、愛鷹(あしたか)PAエリアとか、最新の事例が出てきて私も一緒に勉強させていただきました。
 特に利用状況からすると、浜名湖SAに導入されている床サインの事例を写真で紹介されていました。一見すると、これまで床サインは、すぐに汚れてしまうからメンテナンスが大変ではないかと思っていましたが、例えば、駅の改札口を通るときも、床に少しサインがあるとか、車を運転していて路面の矢印と他の案内が、ナビと一体になって連動して出てくると、確かにお金はかかりますが、利用するときにはすごく安心すると感じます。なおかつ、浜名湖SAは、レイクビューということで、ここは私も一度行ってみたいと思います。
 そして、後半の方ですが、事前学習の冊子ということで、こちらも公共交通機関の連動について、強くご指摘され、有益なサジェスチョンを与えていただきました。やはり、発達障害の方だけではなく、このような学習というか案内というか、ホームページあるいはスマホで見られるというのは、単に発達障害の方々だけではなく私達1人1人にとってもすごく便利となります。
 高速道路では、広域エリアのマップを休みながら見たり、あるいは頂いてきたりしますが、やはり連続的に事前の学習ができるというのはすごく重要で、それをまた持ち帰って家族でもう一度再学習することで、結果的に高速道路の楽しさを知ることになり、目的地に行くことのさらなる楽しさにも繋がってくるのではないかと聞いていました。そして、新しいことを発見しながら、理解が深められます。そういう展開はすごく素晴らしいですが、おそらく、そこはあまりボリュームがあるといけないと思うので、コンパクトに、いくつかのシリーズのようなものが良いかも知れません。報告書に期待したいと思います。
 そして「見える化」のところで、食事のこととか、あるいはカームダウン・クールダウンっていう新しい部分の情報提供の仕方がありました。さらに、下り線の展望スペースがよかったというお話があり、先ほど私も少しコメントしましたが、屋外の展望スペースとか、テラスとか、そういうものをもう少し多様化し、選択肢を広げることをやっていくと良いという気がします。すでに、様々なコーヒーショップがそのような展開をしていますが、食事スペースが広がるし、あるいは個の利用ができるということになると思います。
 最後に、SA・PAには愛がある。まだ私は愛を感じていないですが、これからもう一度感じられるか、確認していきたいと思います。これはやはり裏方で働いている方々の対応というのは、どんな仕事でもそうですが、私はそれが見えないので、ある面では、その見える化を橋口さんは提案されているという感じがしました。今日のお話について楽しみながら聞かせていただきました。どうもありがとうございました。

 それから、荒木さんの取り組みについて、これは私が言う必要は全くないですが、東京支社の取り組みとしてたくさんの事例紹介がありました。
 最初にトイレの変遷ということで、一般的な公共トイレの変遷について、私も勉強をはじめて35年ぐらいになりますが、1980年代の中頃はさすがにわが家でも高速道路を利用するという経済的な状況にはなかったので、ほとんど利用できませんでした。90年代、そして2000年代に入ってようやく使い始めた。おそらく今日聞かれている皆さん方もそういう印象をお持ちの方がたくさんいるのではないかと思います。この辺りまで来るとそろそろオストメイトの方の独立したトイレができ始めているという情報が入ってきて、私も探しに走り回った記憶があります。
 そして、今まさに中日本高速道路のトイレ整備、トイレ関係を中心とした整備が急速に展開していると思います。同性の介助、異性同伴の方々あるいは異性の介助の方々も含めて様々な利用できるブースがたくさん出てきているということです。
 その中で少し気になったのは、後半のところに実はうまくいっていない事例もあるというお話をしていただきました。やはりいろいろと公共的なトイレを考えていると、少し大きめのブースをトイレの中に整備していくという方法が、2000年代の前半ぐらいから始まりました。一か所に集中しないようにしたいということと、車いす対応トイレもそれほど多くないということで、進められてきたのですが、これが今の時代だと本当に一般トイレの中でいいのか、あるいは、共用ブロックみたいなエリアを設けて対応するのがいいのか議論が考えられます。
 先ほどの異性同伴の介助とか、様々な人たちが利用できるようなスペース確保は、本当に高速道路のトイレでしかできない、ターミナルの駅みたいな大きなところでしかできない、そういう事業かと思いますが、あるブロックを作って、不自然な形ではなく誰もが利用できると利用しやすいからいろんなところに出かけられるということがあると思います。
 私も長年、高速道路の人たちとの調査を一緒にさせていただいて、多機能トイレは、特に朝とか夕方が一番多く、トラックの運転手とか、障害がないと思われるような方々が、たくさん利用しているという状況を見せていただいたことがありますが、そのこと自体は悪いことではないと思うんです。
 悪いことではないけど、休日あるいは日中とか、そのトイレしか利用できない人と利用が重なることを避ける、場合によっては、ブース数が少ないからそれを増やすということになりますが、その増やし方の問題がこれからの課題になってくるという感じがします。
 そして、情報提供の仕方、これは事前学習にも、非常に共通な部分だと思いますが、デジタル化が進んでいく中で、その情報をどうやって様々なユーザーの人たちが使い切れるかどうか。情報提供の多言語化は、決して悪いことではないが、もう少しスリムに絞り込んでいくことも場合によっては必要かもしれない。ぜひこれからも継続的に検証していただきたい。いずれにしても中日本高速道路のSA・PAのトイレや店舗については、たくさんの利用者に沿った形でいろいろな施設整備がされています。その事例が一般的な公共空間、都市空間、それから駅なども含めて、そういうところに大きく応用されていく素地がたくさんあるような気がしています。
 高速道路だけではなく、外にも広げていく、そういう取り組みにも期待したいと思います。

当日の配布資料及び質疑応答