表紙 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団30年史 P1 あいさつ 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 会長 岩村敬  エコモ財団は、本年9月30日、おかげさまで創立30年の節目を迎えることができました。1994年9月、当時の運輸省、日本船舶振興会そして交通事業者、地方公共団体等幅広い皆様のご支援とご協力により、当財団の前身であります「財団法人交通アメニティ推進機構」が設立されました。その設立目的は、高齢者や障害のある方々が安全かつ快適に公共交通機関を利用して移動できる交通システムを実現するため、バリアフリー施設整備に対する支援や調査研究等を行うことでした。  設立直後の1995年1月に阪神・淡路大震災が発生しましたが、当時の機構は、震災により甚大な被害を受けた「阪急伊丹駅」と「神戸港中突堤中央ターミナル」をアメニティ・ターミナルとして復興するプロジェクトを主導することとなりました。幸い多くの方々の協力を得て、利用者参加の実践など先駆的モデルとなる成果を上げることができました。その経験は、誕生間もない組織にとって自らの使命を再確認する機会となり、仕事を進めていく上での礎となりました。  京都議定書が採択された1997年には、我が国の直面する課題である運輸交通部門における地球環境問題への対応のための事業を追加することとし、名称を「交通エコロジー・モビリティ財団」と変更しました。今日重要性を増しているバリアフリーや地球環境問題にいち早く取り組むことの必要性を見出し、実践に努めた当時の関係者の見識に、改めて敬意を表したいと思います。  その後バリアフリーの分野では、2000年の交通バリアフリー法の制定をはじめとする法制度の充実やバリアフリー整備ガイドラインの改訂、さらには2020東京大会の開催などに伴い、ユニバーサルデザインの街づくりや心のバリアフリーの推進へと取り組みは進化・深度化しています。  地球温暖化対策に関しては、京都議定書に続く新たな国際的枠組みとしてのパリ協定の下、2050年のカーボンニュートラルを目指し、国を挙げた取り組みを進めていかなければなりません。運輸交通分野では、自動車・道路交通対策、物流の効率化、公共交通の利用促進などの総合的な対策が求められています。  2012年の公益法人制度改革により、当財団は、公益財団法人として認定を受け、バリアフリーと交通環境対策分野に係る公益目的実現のための歩みをさらに重ねています。両分野ともに、一定の水準を達成できれば完結するといったものではなく、社会やグローバル環境の変化に応じて常に取り組みのバージョンアップが求められる宿命にあります。その意味で求められる課題は目白押しです。  創立30周年を機に、役職員一同、当面する課題に立ち向かい、財団の使命である「人と地球にやさしい社会環境の実現」を目指して、より一層社会のニーズにお応えできるよう的確な事業遂行に努めて参る決意であります。国、日本財団、地方公共団体の皆様、交通事業者や障害者団体の皆様、学識経験者の皆様など各方面の皆様から戴いたご支援、ご協力に心から感謝申し上げますとともに、引き続きのご指導、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。 P2 目次 あいさつp1 財団の歴史及び事業内容p5 バリアフリー推進部p7 交通環境対策部p37 参考資料 事業推移【創立21〜30年まで】省略 出捐団体一覧p64 賛助会員名簿p65 役員の変遷省略 評議員の変遷省略 編集後記p74 P5 財団の歴史及び事業内容 P7 バリアフリー推進部 P8 第1期 1994(平成6)年度〜1999(平成11)年度  交通アメニティ推進機構として発足し、高齢者及び障害者等の円滑な公共交通機関の利用に資する啓発広報、情報提供及び調査研究を行う一方で、公共交通事業者の施設整備に対する支援を行うことにより、高齢者及び障害者等のより一層の円滑なモビリティを実現し、国民生活の向上に貢献することを目的として活動を開始しました。  設立後まもなく1995年に発生した阪神・淡路大震災により被災した阪急伊丹駅、神戸港中突堤ターミナルをアメニティターミナルとして復興させるべく日本財団の支援を受け再興プロジェクトに関わりました。今では当たり前のようになった利用当事者が計画段階から参加するモデル事業として進められ、その後の活動の重要な指針となる当事者参加を打ち立てる画期的な機会となりました。 1.鉄道駅における障害者対応型エレベーター・エスカレーター設置推進事業(1994〜1998年度)  鉄道駅における移動円滑化を図るため、鉄道事業者が行う障害者対応型エレベーター・エスカレーター設置の整備に対して助成しました。整備総数は、エレベーターが128基、エスカレーターが7基でした。現在では、利用者の多い鉄道駅においてエレベーター・エスカレーターの設置は標準となっています。 2.バスターミナル、旅客船ターミナル、空港旅客ターミナル及び旅客船における障害者対応型エレベーター・エスカレーター設置推進事業(1994〜1998年度)  バスターミナル、旅客船ターミナル、空港旅客ターミナル及び旅客船における移動円滑化を図るため、事業者が行うエレベーター・エスカレーターの整備に対して助成しました。整備総数は、エレベーター35基、エスカレーター33基でした。 3.路線バスへのノンステップバス導入推進事業及びノンステップバス普及促進セミナー等の実施   (1994〜2000年度)  バス車両の移動円滑化を図るため、バス事業者が行うリフト付バス及びノンステップバスの路線バスへの導入に対して助成しました(1994〜2000年度)。また、ノンステップバスの普及を行うため、「乗り降りらくらくバス普及セミナー」を東京ビッグサイト等で3回開催しました(1997〜1998年度)。 写真:乗り降りらくらくバス普及セミナー/ノンステップバスの展示会 P9 4.ポスターの作成及びパンフレットの作成(1994〜1999年度)  公共交通機関の利用者等に対して、高齢者及び障害者等の利用に配慮した交通施設の整備の必要性を説明するとともに、これらの方々が交通機関を利用する際の支援・協力を啓発するため、ポスターやパンフレットを作成し、配布しました。 図版:ポスターの例 5.アメニティターミナルにおける旅客案内サインの研究(1995〜1997年度)  鉄道駅における高齢者及び障害者等の移動円滑化を図るため、総合的な情報提供のあり方についての研究を行い、わかりやすい旅客案内サインについて検討を行いました。  その結果、旅客案内サインシステムを構築し、「交通拠点のサインシステムガイドブック」を作成しました。 図版:旅客案内サインの例/交通拠点のサインシステム計画ガイドブック 6.アメニティターミナルにおける駅用エレベーター設備の研究・開発(1995〜1997年度)  鉄道駅におけるエレベーターの整備を促進するために、「鉄道駅の特殊性に配慮した省スペース、低コストで設置できるエレベーター設備」について研究開発を行いました。その結果、従来のエレベーターに比べ、省スペースかつ低コストの直角二方向出入口タイプのエレベーターが完成し、これまでホームが狭隘なためエレベーターを設置できなかった駅でも設置できるようになりました。 図版/写真:駅用直角二方向エレベーター(左:説明図、右:設置例) P10 7.交通ボランティア育成講座の実施(1996〜2000年度)  駅などで高齢者及び障害者の移動のお手伝いができる交通ボランティアの育成を目的として、交通ボランティア育成講座を1996年度に2回(東京、大阪)、1997年度に2回(横浜、大阪)、1998年度に2回(所沢、神戸)、1999年度に2回(仙台、下関)、2000年度に2回(山形、松江)実施しました。 写真:交通ボランティア育成講座の様子/参加者用ワッペン 8.ホームドアシステムの研究開発(1998〜2000年度)  鉄道駅における利用者、特に視覚障害者のホームからの転落防止を図るため、既存の駅で設置しやすいホームドアシステムの研究開発を行いました。  この結果、従来のホームドアシステムに比べ、腰高タイプ(ホーム床面より130cm高程度)のホームドアシステムが完成し、既存駅へのホームドア設置が可能となりました。 写真:ホームドアの実験の様子 9.アメニティターミナル推進事業 (1)神戸港中突堤アメニティターミナル(1995〜2004年度)  1995年1月の阪神・淡路大震災により倒壊した神戸港中突堤ターミナルの復興とアメニティターミナルのモデル事業として、1996年1月に神戸港中突堤アメニティターミナル整備検討委員会を設置し、アメニティターミナルの設計・企画について検討を行いました。1996年12月に検討結果をとりまとめ、同月に着工し、1998年3月にターミナル本体が竣工しました。その後、ターミナルへのアプローチ経路のバリアフリー整備に着手し、神戸市に助成を行いました。 図版:神戸港中突堤ターミナル(左:外観イメージ図、右:内装図) P11 写真:神戸港中突堤ターミナル(完成ターミナル) (2)阪急伊丹駅アメニティターミナル(1996〜2003年度)  阪神・淡路大震災により倒壊した阪急伊丹駅の復興とアメニティターミナルのモデル事業として、1996年4月に阪急伊丹駅アメニティターミナル整備検討委員会を設置し、アメニティターミナルの設計・企画について検討を行いました。1997年3月に検討結果をとりまとめ、同年7月に着工し、1998年11月に駅ビル本体が竣工しました。その後、駅前広場の整備に着手し、阪急電鉄、伊丹市に助成を行いました。  また、本事業が完成に至るまでの伊丹市、阪急電鉄、障害者団体等の軌跡や、これからのアメニティターミナルのあり方等について記した記念本『究極のバリアフリー駅をめざして(大成出版社)』を出版しました。 図版/写真:阪急伊丹駅(左:イメージ図、右:完成ターミナル)  神戸港中突堤アメニティターミナル及び阪急伊丹駅アメニティターミナルの整備を実施したことにより、震災復興の一翼を担えたとともに鉄道駅・旅客船ターミナルにおけるアメニティターミナルのモデルを確立することができました。現在では、鉄道駅・旅客船ターミナルを建設する際に、設計・計画の段階から利用者の意見を取り入れ、バリアフリーについて配慮することが当然のこととなっています。 P12 第2期 2000(平成12)年度〜2012(平成24)年度  2000年に成立した交通バリアフリー法は、旅客施設や車両のバリアフリー化を総合的に推進するもので、鉄道やバスをはじめとする公共交通機関のバリアフリー化が義務化され、高齢者や身体障害者等が自立した日常生活や社会生活を営むことができる環境整備を国、地方公共団体、公共交通事業者等が協力し行うこととなりました。エコモ財団では法律の移動円滑化基準に沿ったガイドライン策定に携わることで、高齢者、障害者はもとより交通事業者の実情も考慮したバリアフリー推進はどうあるべきかを深く考える契機となり、バリアフリー推進部も多くの知識と経験、人的ネットワークを得る機会となりました。2006年、交通バリアフリー法からバリアフリー法へと法改正が行われ、建築物や道路なども含めた面的なバリアフリー整備の実現を目指す法体系となり、当財団においてもわが国のバリアフリー環境の拡充期に合わせて多くの調査研究事業を実施しました。  2011年3月、東日本大震災が発生し東北地方を中心に未曽有の大きな被害となりました。エコモ財団では関係者の協力のもと東北に赴き、発災後の交通事業者の対応状況、高齢者や障害者の逃げ遅れの問題、避難所での生活の実態などを調査し、社会的弱者が拡大再生産されてしまう災害の厳しい現実を目の当たりにしました。調査結果をとりまとめた後、現地の障害者団体を招いた報告会の開催、海上交通バリアフリー施設整備助成では被災地の事業者の申請に対する補助率の上乗せ、節電時における減灯下のロービジョン者の課題把握など微力ながら復興とバリアフリーに寄与する活動を行いました。 1.鉄道駅移動円滑化施設整備事業の実施(2000〜2010年度)  国の2000年度予算において、鉄道駅における高齢者、身体障害者等の移動の円滑化を図るために必要となる施設整備を行うため、鉄道駅総合改善事業費補助(鉄道駅移動円滑化施設整備事業)制度が新設され、当財団を同事業の実施機関として、大蔵省(当時)の承認を経て、当事業が開始されました。  鉄道駅における高齢者、障害者等の移動の円滑化を図るために必要となる移動円滑化施設を整備するため、鉄道事業者に工事を委託し、国庫補助金、地方公共団体補助金及び鉄道事業者から受け入れた預託金を原資に、既存の鉄道駅における通路、階段等を改良し、これと一体的にエレベーター、エスカレーター等、移動の円滑化を図るために必要な施設の貸付を鉄道事業者に行いました。  対象駅については、交通バリアフリー法に基づき制定された、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において定めている鉄道駅の移動等円滑化の目標(1日あたりの平均的な利用者数が5,000人以上である駅については、移動等円滑化施設が必要な駅として、2010年度までに、原則として全ての駅について移動等円滑化を実施すること。)を前提に運輸省(当時)から毎年提示される事業駅リストに基づいて、鉄道事業者、地方公共団体と協議の上、工事実施に問題がないものについて当該事業の対象とし、移動円滑化施設を整備し貸付を行いました。 P13 2.空港・バス・旅客船ターミナル、旅客船における交通バリアフリー施設の整備並びに旅客船及び旅客船ターミナルの移動円滑化施設整備助成(1999〜2011年度)  1999〜 2000年度まで、空港・バス・旅客船ターミナル、旅客船における車いす対応型エレベーターや車いす対応型トイレなどの交通バリアフリー施設の整備に対して助成を行ってきましたが、2001年度以降は、離島等における高齢者・障害者等の通院や買い物等日常生活や社会生活に必要な移動の円滑化を図るため、旅客船及び旅客船ターミナルのバリアフリー施設整備に対して助成しています。これにより高齢者や障害者等が旅客船や旅客船ターミナルを利用する際、円滑な移動ができるよう施設整備を進めることができました。   また、2010〜2011年度には旅客船に乗下船するための装置として、昇降装置を兼ね備えたタラップ(バリアフリータラップ)の開発を行い、長崎県五島市の奈留港に設置するとともにその仕様及び図面を公開しました。  従来より実施してきた各交通モードへの助成事業は、2002年度より「海上交通におけるバリアフリー施設整備の推進」として旅客船及び旅客船ターミナルに特化した助成事業となり、第3期においても継続的に施設整備に取り組んでいます。 写真:旅客船における助成対象設備(左、中左:乗降タラップ、中右:エレベーター、右:おむつ交換シート) 写真:バリアフリータラップ (左:全景、右:車椅子使用者の利用例) 3.ECOMO交通バリアフリー研究助成の実施(2008年度〜)  交通バリアフリーの促進に寄与することを目的として、2008年度より研究助成を実施しています。バリアフリーの研究者等の基礎的調査研究等に対し2008年度は7件、2009年度は8件、2010年度は7件、2011年度は9件(社会人部門7件、学生部門2件)、2012年度は4件(社会人部門3件、学生部門1件)の助成を行っており、第3期においても継続しています。 写真:ECOMO交通バリアフリー研究助成成果報告会 P14 4.バリアフリー情報提供(らくらくおでかけネット)(2001年度〜)  高齢者、障害者等が公共交通機関を円滑に利用できるようにするため、駅構内のバリアフリー施設、乗り換え案内のバリアフリー情報を統一的に提供するためのシステム(らくらくおでかけネット)を、交通バリアフリー法の指定法人(当時)として、インターネット上で運営を開始しました。2001年10月1日から試験公開を行い、2002年1月25日から本格運用を開始しました。  その後、2003年度に駅ごとにリフト付タクシーやスロープ付タクシーなどの福祉輸送サービス情報や各鉄軌道事業者のハンドル形電動車いすの利用に関する情報を新たに掲載しました。  これにより高齢者や障害者等が公共交通機関を利用する際、円滑な移動ができるよう事前に情報収集を行うことができるようになりました。第3期においても引き続き継続しており、高齢者や障害者だけでなくベビーカー利用者等の利用が増えています。 図版:らくらくおでかけネットのトップ画面(当時) 5.交通バリアフリー人材育成(2001〜2004年度)  急速な高齢化や障害者の自立と社会参加の要請に対応し、高齢者、障害者等が公共交通機関を円滑に利用できるようにするため、交通ボランティア活動事業の支援事業として、国土交通省からの受託で全国10箇所で「交通バリアフリー教室」を開催しました。  これにより国民が高齢者、障害者等に対する介助等の体験等を行うことを通じて、交通バリアフリーについての理解を深めるとともに、ボランティアに関する意識を醸成し、誰もが高齢者、障害者等に対し、自然に快くサポートできる「心のバリアフリー」社会の実現に取り組みました。その後、各地方運輸局が主体となり、継続的に交通バリアフリー教室が開催されています。 6.交通事業者向けバリアフリー教育訓練プログラム(BEST)の実施(2005年度〜)  バリアフリー化については、施設や車両等のハード面の整備だけではなく、人による対応や情報提供などソフト面の充実が必要です。このことから交通事業者の教育訓練で活用することを目的とした接遇・介助に関する障害当事者参加型の教育訓練プログラムの策定を行いました。  2006年度は、教育プログラムを作成するため、米国ワシントンD.C.に本部を置くイースターシールズ協会、オレゴン州ユージン市のレーン郡交通局を訪問し、そのトレーニング内容をもとに、より効果的な教育訓練のあり方の検討及び教育訓練プログラムの作成を行いました。  2007年度は、作成した教育訓練プログラムに基づき、試行研修を実施し、本格実施に向けて教育訓練プログラムの改善を行いました。なお、試行研修は、首都圏の鉄道事業者10社局19名、バス事業者13社局26名の参加を得て実施しました。2008年度は、前年度に見直しを行った教育訓練プログラムを用いて、関西地域の鉄道事業者18社局32名、バス事業者20社局33名及び仙台市内のバス事業者3社局31名の参加を得て実施しました。第3期においても「交通サポートマネージャー研修」の名称で継続しています。  また、2010年度から交通事業者内でバリアフリー教育訓練を実施できる人材を育成するため、リーダー養成研修を開始するとともに、2011年度から障害者団体と共催でバリアフリー障害当事者リーダー育成にも取り組んでいます。 写真:実施の様子 図版:受講者数一覧(延べ) 7.小学校児童・中学校生徒向けバリアフリー学習プログラムの研究・実施(2010年度〜)  将来を担う子どもたちに交通バリアフリーを浸透させ、共生社会について理解を促すため、小学校児童・中学校生徒向けの交通バリアフリー教室等に用いる教育プログラムを作成し、学校現場等での実施に努めています。2010年度は既存の学習素材や小・中学校のバリアフリー教室の開催状況等の基礎調査を実施し、試行版を作成し、2011年度に試行版の実施と共に、プログラムの見直しを行いました。2012年度より学校現場等における実施を進め、第3期においても継続的に取り組んでいます。 図版/写真:左:ウェブページ、右:授業風景 8.手話教室の開催(2004年度〜)  聴覚障害者の公共交通機関における移動の円滑化を図るため、公共交通事業等に従事する者を対象とする手話教室を2004年度より東京と大阪で開催しています。  これにより公共交通機関に従事する者等が聴覚障害者とのコミュニケーションを図ることができる手話を修得するとともに、障害者の理解を進めることで心のバリアフリーを推進しています。手話教室は第3期においても継続しており、修了生が各々の会社の主体となり、手話サークルの設立や聴覚障害者への手話を用いた接遇等が行われています。 写真:授業風景(左:大阪、右:東京) P16 9.「交通バリアフリー推進の集い」の開催(2002〜2006年度)  交通バリアフリー法の施行日(2000年11月15日)にちなんだ「交通バリアフリー推進の集い」を2002年から2006年まで毎年開催しました。バリアフリー推進ネットワーク参加団体の活動報告、小中学生による交通バリアフリー体験報告、バリアフリー優秀施設・優秀活動(2005年度からバリアフリー優秀大賞等に変更)の表彰を行いました。また、学識経験者、障害者等によるパネルディスカッションや特別講演会も行いました。  これによりネットワーク参加団体、地方公共団体、交通事業者等との交通バリアフリーに関する情報を共有することができました。その後、国土交通省がバリアフリー化推進功労者大臣表彰を実施しています。 優秀施設・優秀活動大賞(バリアフリー優秀大賞)受賞者一覧 第1回(2002年)「JR高松駅」、「さいたま新都心バリアフリーまちづくりボランティア」、「アクセシビリティガイド実行委員会」 第2回(2003年)「帝都高速度交通営団」「沼津駅北口駅前広場整備事業」「株式会社ラジオ福島」、「板橋福祉のまちをつくろう会」「都立大学駅周辺バリアフリーのまちづくり推進協議会」 第3回(2004年)「横浜高速鉄道株式会社」「沖縄都市モノレール株式会社」「東日本旅客鉄道株式会社」、「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」「NPO法人ホップ障害者地域生活支援センター」 第4回(2005年)「首都圏新都市鉄道株式会社、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」「ほのぼの広島会」、株式会社名門大洋フェリー、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」「横浜市交通局電車部」「NPO法人わははネット」「有限会社花園タクシー」 第5回(2006 年)「富山ライトレール株式会社」「バリアフリーまつど市民会議」「誰もが使える交通機関を求める全国行動東京実行委員会」 写真:左:パネルディスカッション、右:表彰式 10.バリアフリーに関する国際セミナー等の開催(2005〜2011年度)  海外におけるバリアフリー化の状況を把握し、専門家、障害者団体関係者、行政関係者等との情報共有や意見交換を行うため、セミナー等を開催しました。 写真:セミナーの風景(左、中左:2009年12月、中右:2011年3月、右:2012年3月) P17 表:国際セミナーの開催一覧 左から開催テーマ、日時、場所、参加人数 アジアセミナー−交通のバリアフリー化に向けたアジアの取組み(Asian Efforts for Barrier-free Transportation)− 2005.2.27-28 京王プラザホテル 250名 ユニバーサルなまちづくり日本・中国・韓国の現状と連携−日中韓、三カ国のトップランナーが語る、ユニバーサル・デザインの現状と将来像、そして連携−(共催) 2007.6.30 東洋大学白山キャンパス 150名 アジア交通バリアフリー会議“Future Mobility in Asia” 2009.3.15-16 台湾デザインセンター・イノベーションホール 100名 高齢者・障害者の移動円滑化国際セミナー〜高齢者・障害者のアクセシブルな交通の実現に向けて〜2009.12.4 新宿センタービル 150名 バリアフリーに関する国際セミナー〜公共交通機関のバリアフリー化 アジア3か国の都市から〜2011.3.3 東京国際フォーラム 75名 暢行未来Amenity & Seamlessセミナー 2012.3.7 台湾メトロ本社 120名 11.「交通バリアフリー基本構想策定推進セミナー」の開催(2001年度)  2000年11月の交通バリアフリー法施行後、市町村が策定する交通バリアフリー基本構想の策定を推進、支援するため、全国10箇所において、「交通バリアフリー基本構想策定推進セミナー」を開催しました。  なお、伊丹会場においては、阪急伊丹駅が1995年1月の阪神・淡路大震災時の全壊から復興する際、計画段階、建設段階、そして施設完成後の評価段階まで本格的に住民の参画が貫かれた国内初の事例であることから、高齢者、障害者の団体が集まり、「交通バリアフリーの推進」、「連携」、「参画」、「協働」、「継続」、「ネットワーク」をキーワードとする伊丹宣言を発表し、市民レベルでのバリアフリー推進を図るため交通バリアフリー推進支援連絡協議会(バリアフリー推進ネットワーク)を設置しました。 12.案内用図記号の統一化と交通、観光施設等への導入(1999〜2000年度、2007〜2009年度、2011年度)  案内用図記号は、交通施設等の公共の場において、利用者の円滑な移動を支援するための情報提供の一形態であり、文字や言語に依らず図形で情報を提供するもので、高齢者や障害者、外国人等に有効な案内方法です。しかし、この図記号は世界的に普及しているものの、国内においては、交通、観光施設等各々に図記号を定め、整備されていたため利用者にわかりにくいものでした。  このため、1999年度に国内外の図記号の実態を調査し、その調査結果を踏まえ、2000年度に図記号の標準化原案を作成しました。その後、理解度、視認性調査の適正度評価を行い、最終的に125項目の図記号を「標準案内用図記号」として選定し、公表しました。なお、2000年10月にISO分科会を日本(東京)で開催し、125項目の図記号を提案しました。これにより2002年に110項目が「案内用図記号(JISZ8210)」として登録され、案内用図記号を用いた施設整備が増え、高齢者や障害者等の多様な利用者の利便性向上に役立っています。  2009年度には優先設備(席)に使用されている「高齢者、けが人、妊産婦、乳幼児連れ、内部障害者」の図記号がばらばらに使用されている状況を鑑み、これらに関する図記号(高齢者、けが人、妊産婦、乳幼児連れ、内部障害者のそれぞれ立位と座位)の10点について、ISOで定める理解度テスト等をイギリス、オーストラリア、日本の3カ国で行い、 ISO提案の原案を作成し、2009年5月にISO図記号としてISO/TC145/SCロンドン会議に提案しました。その結果、提案した図記号10点は2013年6月に承認され、ISO図記号として発効されました。さらに、2014年7月に案内用図記号(JISZ8210)として、追加されました。  さらに、2011年度には案内用図記号が策定されてから10年以上経過したため、わかりやすさなどの理解度や認知度に関する追調査を行い、修正すべき事項、新たな図記号の必要な事項についての調査を行いました。その結果、1998年の策定当初に比べ、全般的には理解度・認知度は上昇しているものの、一部、図記号の変更が必要なもの、新たな図記号が必要なものがあることがわかりました。 図版:代表的な案内用図記号/優先設備関係の案内用図記号/優先席関係の案内用図記号 P18 13.バリアフリー整備ガイドライン等の作成(2000年度) (1)公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン(2001年・平成13年版)の作成  交通バリアフリー法が公布・施行されたことに対応して、従前の「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン」(昭和58年策定、平成6年改訂)についての見直しを国土交通省総合政策局から受託しました。なお、実施にあたっては、各方面の専門家や利用当事者からなる委員会を設置し、素案の作成を行いました。 図版:公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン (2)視覚障害者の誘導に関する研究の実施 @旅客施設における音による移動支援方策に関する研究(2001年度)  2001年・平成13年度版の公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドラインで、視覚障害者の誘導として、音声・音響による案内が有効であることが記載されましたが、具体的な方法や内容については課題となっていました。また当時、音による案内は、案内の行われる場所、内容については必ずしも統一されたものではない状況でした。  そこで、鉄軌道駅において望まれる音声・音響による案内について、駅を単独利用している視覚障害者(東京、大阪等5都市93名)にインタビュー方式で調査したところ、音による案内は、大まかに主要経路や施設・設備の位置を把握している駅で、その正確な位置と内容を確認したい場合有効であることが明らかになりました。  これら調査結果等を踏まえ、音声・音響案内についての基本的な考え方を示すと共に、音案内のニーズが高く、有効性が高いと想定される下記5箇所について、整備の考え方と望ましい内容をまとめました。なお、これらの成果は、国土交通省監修「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン追補版(2002年・平成14年版)」に記載されました。 音声・音響案内一覧 @改札口:「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響 Aエスカレーター:「{行き先}{上下方向}エスカレーターです」(音声案内) Bトイレ:例)「向かって右が男子トイレ、左が女子トイレです」(音声案内) Cホームからの階段始端部:鳥の鳴き声を模した音響 D地下鉄の地上出入口:「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響 P19   A視覚障害者の誘導警告設備に関する調査研究(2002〜2002年度)  鉄道駅における視覚障害者のホーム転落を防止するため、ホーム縁端部及びホーム狭隘部分における視覚障害者誘導用ブロック(線状・点状ブロック)の敷設方法を新たに策定しました。  2000年度は、視覚障害者の被験者によるホーム縁端部の内側、外側の検知性に関する実験を行いましたが、一部狭隘な駅ホームに実用化する場合、ホーム端部からのブロック敷設位置の上限値並びに狭小幅の島式ホームの始終端のブロックの敷設基準を明確にする必要性が発生しました。このため、2001年度は、これらの敷設基準を策定し、島式ホーム始終端のブロックの敷設位置等の最終確認試験を行いました。なお、これらの成果は、国土交通省の「公共交通機関旅客施設の移動円滑化ガイドライン追補版(2002年・平成14年版)」に記載されました。  これにより多くの鉄道駅のホームにおいて、ホーム縁端警告ブロックが敷設されたことで、視覚障害者がホーム上を移動する際、以前よりも安全性を高めることが可能となりました。さらに、2011年8月の「ホームドアの整備促進等に関する検討会」の中間とりまとめ(国土交通省)では、一日あたりの利用者が1万人以上の鉄道駅のホームにおいて、ホーム縁端警告ブロックの敷設が求められ、整備が行われています。 写真/図版ホーム縁端警告ブロックの例(左:ホーム敷設例)(中:一体型)(右:分離型) 図版:公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン(追補版) (3)「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」及び「障害者、高齢者等の公共    交通機関の車両等に関するモデルデザイン」(2007年・平成19年版)の改訂、並びに「旅客船バリアフリーガイドライン」の作成(2006年度)  交通バリアフリー法がバリアフリー法に改正されたことを受けて、2007年度には、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン(2007年・平成19年版)」及び「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン(2007年・平成19年版)」として従来のガイドラインの改訂を行いました。  また、同法及び同基準に基づいた「旅客船バリアフリー〜設計マニュアル〜(2000年・平成12年版)」についても所要の見直しを国土交通省海事局から受託し、委員会を設置し、新たに「旅客船バリアフリーガイドライン(2007年・平成19年版)」として作成しました。 図版:バリアフリー施設整備ガイドライン (左:旅客施設編、中:車両等編、右:旅客船) P20 14.高齢者・障害者向けの地域福祉交通サービスの整備方策に関する調査並びに高齢者・障害者に配慮した地域交通モデルの実現(2002〜2005年度)  交通バリアフリー法の施行により公共交通機関におけるバリアフリー化は大きく進み始めましたが、個別輸送のスペシャル・トランスポート・サービスの導入や過疎地域、都市部における交通空白地帯の高齢者、障害者等の移動手段の確保が問題となっていました。また、規制緩和政策による参入規制の撤廃、バスの不採算路線からの撤退など地域交通を巡る大きな環境の変化もありました。そこで、地域福祉交通のあり方を運営主体、経営、政策制度等の各方面から検討し、その整備方策を検討しました。  検討結果を具体化するため、八戸地域交通計画策定協議会の協力を得て、青森県福地村(現八戸市)で新たな交通システム(DRT=需要応答型交通)の実証実験運行を2004年11月17日から2005年2月4日までの78日間にわたり行いました。国内での実施事例がまだ少ないDRT方式を導入し検証したことは、その後の普及に大きく貢献しました。 写真:基幹バス、支線バス (基幹バスから支線バスであるジャンボタクシーへ乗継) 15.車いすの公共交通機関利用時における乗降及び車内安全性に関する研究(2006〜2009年度)  公共交通機関の中でも車いす使用者の利用頻度の高い路線バスに主眼を置き、既存の車いす用乗降装置及び固定機器の使用状況、基準・規格等の策定状況、実際の現場での使用実態等について調査を行いました。  2006年度は、利用実態について、交通事業者及びその乗務員、利用者である車いす使用者へのヒアリングやアンケート調査を実施し、特に固定についてはその操作が煩雑で時間を要するため、運用の現場では適切に使用されている例が極めて少ないことが明らかになりました。  2007年度はバス車内の車いす固定装置の耐衝撃強度について、妥当な安全水準を把握するためにタイプの異なる車いす固定装置への衝撃実験を行いました。  2008年度以降は、車いす固定の必要性を再認識させる実験結果を得たため、国土交通省、経済産業省、JASPA(日本福祉用具・生活支援用具協会)に提示し、ノンステップバス標準仕様の検討時に参照されています。 写真:台車(スレッド)実験の風景 16.公共交通機関利用時におけるコミュニケーション支援ツールの検討・作成(2007〜2010年度)  2007年度に知的障害者、話し言葉や聞き言葉によるコミュニケーションが困難な聴覚障害者、日本語がわからない外国人等が、公共交通機関利用時の様々な場面においてコミュニケーションを円滑に行うためのサポートツールとして「コミュニケーション支援ボード」を作成しました。現在では、鉄道駅の有人改札やバス車両、観光案内所等への設置が進んでいます。 図版:コミュニケーション支援ボードの例(左:表紙、右:乗り物/駅)    P21 17.災害復興における公共交通機関のバリアフリー整備に関する研究(2011〜2012年度)  2011年3月11日に発生した東日本大震災後、被災した高齢者・障害者がどのような状況に置かれているか、日本福祉のまちづくり学会震災特別研究委員会の協力並びに一般社団法人バリアフリー協議会、建設コンサルタント社員のグループと連携して調査を行いました。調査では@交通まちづくり、A住まい、B福祉コミュニティの3つのテーマを設定し、行政機関、障害者団体、ボランティア団体、福祉避難所、仮設住宅、交通事業者等を訪問しました。交通では移動困難者及び特に視覚障害者の状況、住まいでは仮設住宅のバリアフリー化の対応、福祉コミュニティでは震災後の地域環境の変化において、災害弱者と言われる高齢者・障害者が直面する課題について広く把握し、その結果を東京と仙台で開催したセミナー等で発信し、その後の災害時のバリアフリーのあり方を考える契機となりました。 写真:東北の障害者団体関係者も招いた震災勉強会に多くの人が詰めかけた 18.公共交通機関における照明のあり方の研究(2012〜2014年度)  東日本大震災後、旅客施設では節電を目的として減灯が行われる中、ロービジョン(弱視)者などから薄暗い空間では安全に歩行できないという指摘がなされていました。そこで、旅客施設等で高齢者やロービジョン者が円滑に移動できるよう、節電時も考慮した適切な照明のあり方について2012年度から検討を行い、地下鉄駅を中心に照度の実態調査を行いました。2013年度は障害当事者へのヒアリング、アンケート、定量データを用いた明るさの評価手法の検討を実施しました。さらに鉄道総合技術研究所、照明メーカー等の協力を得て、模擬駅舎を使い様々な照度を再現するとともに、視覚障害者の参加を得て視認性評価の実証実験を行い、輝度コントラストを活用した適切な照明手法並びに旅客施設において確保すべき輝度コントラストの目安値を提示しました。 図版:輝度コントラストを確保できる領域を特定しそれに近い明るさ環境にある駅施設を評価 写真:視覚障害者に協力頂いた模擬駅舎での実証実験の様子 P22 写真:駅施設の実際の明るさの画像(左)と輝度分布画像(右) 19.子ども連れ(ベビーカー)の利用しやすい環境づくりの検討(2012〜2013年度)  2012年度、子ども連れ(ベビーカー利用者)の公共交通機関における安全な移動環境を構築するため、国内21社の鉄道・バス事業者に対し、子ども連れの利用実態やベビーカー利用者の乗車方法、要望・ニーズ、問題点等についてヒアリングを行いました。また、子ども連れが買い物等で利用する機会の多い阪急電鉄西宮北口駅、つくばエクスプレス秋葉原駅、東急電鉄/みなとみらい線横浜駅におけるベビーカー利用者の実態調査を実施しました。その結果に基づき、他の利用者にも配慮した公共交通機関における子ども連れ等の安全な移動について検討し、現状の課題及び今後の方向性を整理しました。 写真:エレベーターに並ぶベビーカー利用者 P23 第3期 2013(平成25)年度〜2024(令和6)年度  2013年に2020東京大会の招致が決定し、共生社会実現に向け、国を挙げた多くの取り組みが動き出しました。公共交通機関を中心とした移動円滑化も主要テーマとして位置づけられ、UD2020行動計画に基づく「ユニバーサルデザインの街づくり」、「心のバリアフリー推進」を軸に、バリアフリー法の改正、各種ガイドラインの見直しや策定、人材育成、情報提供などソフト面の拡充が謳われ、公共交通機関のバリアフリー化も大きく進展する契機となりました。  バリアフリー推進部では既に大会を開催したイギリス、ブラジルの現地調査、一般社団法人日本福祉のまちづくり学会と実施した国際パラリンピック委員会(IPC)発行のアクセシビリティ・ガイドの日本語訳、大会組織委員会が開催する各種会議に参画するとともに、日本財団の助成を受け、多くの観戦客の来日を想定した標準案内用図記号の見直し、らくらくおでかけネット英語版の公開を行いました。また、パラリンピックのレガシーを継承するため、日本財団の協力により「共生社会実現に向けた移動円滑化基金(バリアフリー基金)」を設置し、リフト付き空港アクセスバスの導入、乗下船・搭乗時のバリアフリー設備の導入、共生社会ホストタウン自治体の取り組み支援を行っています。  大会は新型コロナウィルス感染症の感染拡大により無観客開催となりましたが、コロナ下での障害者の日常生活や移動に関する課題や工夫を把握する調査を行うなど、日常業務が制約される中でもバリアフリーの課題とその解決方法を模索する活動を継続しました。 1.オリンピック、パラリンピック開催に向けた移動と交通に関する基礎調査(2014〜2021年度)  2020東京大会開催に向けて、2014年度より公共交通機関における対応状況、オリパラを契機とした施設整備状況を把握するため、2012ロンドン大会の開催地である英国において運輸省、ロンドン交通局、鉄道、バス事業者等へのヒアリングと現地調査を行いました。また、2016リオ大会の開催地であるブラジルにおいて、2017年度に行政機関、交通事業者、元組織委員会関係者等へのヒアリングと現地調査を行いました。  上記に加え、2015年度より2020東京大会開催に向けた移動と交通に関するニーズを把握するため、空港等で訪日客へのアンケート調査を実施すると共に、多様な人の意識の変化を経年的に把握するため、ウェブでのアンケート調査を実施しました。さらに、2020東京大会開催期間中の障害のある方を含めた輸送対応について交通事業者等へのヒアリング調査を行なうことにより、大規模イベントにおける多様な人の移動と交通に関する課題とその対応について検討しました。 写真:左:ロンドンオリパラ開催時ベストを着たボランティアスタッフ、中左:ロンドンオリパラ終了後の案内表示(ロンドン地下鉄)、中右:リオオリパラ開催時のBRTの車両とプラットフォーム、右:訪日客へのアンケート調査(羽田空港国際線ターミナル) P24  また、2020東京大会への課題及び、レガシーとして取り組むべき方向性について、有識者・障害当事者14名にインタビュー調査(オンライン)を実施しました。   インタビュー調査結果は、2020東京大会に向けて、そしてそのレガシーについて、「基本的な考え方」、「ハード・施設整備・車両整備・情報提供等設備」、「ソフト・人的支援・接遇関連」等のキーワード別に整理した上で、2020東京大会に向けて「招致決定から、これまで充実してきたと感じること」、「まだ課題があると感じること」、「開催までの限られた時間で、私たちが取り組むべきこと」等としてまとめ、現時点で考える 2020東京大会のレガシーとして「ポジティブな変化が期待できること」、「課題が残りそうなこと」、「レガシーとして残すべきこと」、「継続的な取り組みが必要なこと」等をまとめました。  新型コロナウィルス感染症の影響により、2020年に開催予定であった2020東京大会の開催が1年延期されました。2020年度は、本来であれば2019年度に実施した有識者・障害当事者へ開催後のインタビュー調査を実施する予定でしたが、内容を新型コロナウィルス感染症の影響(生活、移動等)に変更し、インタビュー調査(オンライン)を実施しました。  1年延期された2020東京大会が、2021年7月23日〜9月5日まで開催されましたが、新型コロナウィルス感染症の影響により会場や聖火リレー等も無観客(一部有観客)での開催となりました。2022年度は、開催期間中のボランティア活動についてボランティア経験者8名、オリパラレガシー及び新型コロナウィルス感染症の影響について有識者・障害当事者14名にインタビュー調査(オンライン)を実施しました。 2.標準案内容図記号の検討(2015年度〜)  2002日韓ワールドカップ開催に向けて、初めて標準案内用図記号を体系的に検討、「標準案内用図記号ガイドライン」を2000年に発行してから20年が経過し、2020東京大会開催に向けて、よりわかりやすいサイン環境を目指すため、図記号の見直し及び新規作成を行ないました。  事例調査を実施した上で、検討項目を絞り込み、図形(2015年度:10項目、2016年度:19項目)を作成し、試験(理解度試験および視認性試験:640名[日本400名、英国、米国、中国、シンガポール各60名])を実施した結果を踏まえ、委員会及びワーキングにて審議を行い、新たに17項目作成し、「標準案内用図記号ガイドライン改正版」を2017年7月に公表しました。 図版:新たに作成した標準案内容図記号(17項目)  その後、検討課題として残されたトイレ関連等を中心に新たに図記号の検討・作成を進めました。当事者団体等へのヒアリングの上、図形(7項目)を作成し、試験(理解度試験および視認性試験:450名[日本人362名、外国人88名])を実施した結果を踏まえ、委員会及びワーキングにて審議を行い、新たに7項目作成し、先に改訂した「標準案内用図記号ガイドライン改正版」に追加する検討を進めましたが、新型コロナウィルス感染症の影響により委員会開催を延期せざる得なくなり、改正は2020年度以降に持ち越しとなりました。2020年度に改めて改正を進め「標準案内用図記号ガイドライン2020」として2020年11月に公開しました。 図版:新たに作成した図記号(7項目)※その他JISZ8210より洋風便器、和風便器、温水洗浄便座、優先設備関係、優先席関係図記号を追加 P25 さらに、2021年度、2020年度に開催していた委員会委員からの要望を受け、新型コロナウィルス感染症を含む「感染症対応図記号」を新たに検討することとなり、日本サインデザイン協会にて項目として選出した17項目を2回のアンケート調査から5項目に絞り込み、図形(5項目)を作成し、試験(理解度試験および視認性試験:670名[WEB日本人400名、外国人180名、紙面日本人90名])を実施した結果を踏まえ、委員会及びワーキングにて審議を行い、新たに5項目を追加し「標準案内用図記号ガイドライン2021」として2021年8月に公開するに至りました。  複数存在するデザインを統一するこれまでの考え方から、新しいカテゴリーでの図記号を作成を検討する項目も出てきました。図記号の周知啓発を図るため、「カームダウン・クールダウン」「男女共用お手洗」の解説ページを作成し公開しました。 図版:新たに作成した図記号(5項目) 図版:カームダウン・クールダウン解説ページ 3.障害の社会モデルから考える「心のバリアフリー研修」プログラム(2017年度〜)  2020東京大会開催に向けて、ボランティアに従事する人が、様々な来訪者に対する適切な接遇が必要になることから、そのスキルを磨くためのトレーニングプログラムが必要になることを契機として検討を開始しました。障害当事者、有識者によるプログラム研究会を設置し、教材となる動画と研修の進行シナリオを作成しました。成果として「障害の社会モデルから考える心のバリアフリー研修」用動画(車いす編、視覚障害編、精神障害編、聴覚障害編)を作成し、一般社団法人日本福祉のまちづくり学会で試行したほか、自治体、大学、交通事業者等の研修で活用されています。本事業は、より広範な普及を目指すため、一般財団法人国土技術研究センターと共同事務局を担って実施しています。 図版/写真:市民向け心のバリアフリー研修の様子 4.オリンピック・パラリンピックに向けたらくらくおでかけネットの改修(2018年度)  2018年度に日本財団の支援をうけ、高齢者、障害者等、移動に制約がある人々が公共交通機関を利用する際のバリアフリー施設、乗換案内等の情報を入手しやすくするため、既存のシステムをベースに、2020東京大会の開催や訪日外国人旅行客の増加に対応した機能を加えたシステムを構築し、誰もが自律的に公共交通機関を利用し、安心して快適に移動できる情報提供基盤を確立しました。 P26 5.共生社会実現に向けた移動円滑化基金事業(バリアフリー基金)(2019年度〜)  2020東京大会を契機として、「心のバリアフリー」と「ユニバーサルデザインの街づくり」に取り組む「共生社会ホストタウン」における共生社会の実現に向けた活動を、パラリンピック後もレガシーとして継続することを目的に、先駆的なハード・ソフト両面のバリアフリー化の取り組みに対して、2019年度に日本財団の支援を受け造設した「共生社会実現に向けた移動円滑化基金」を活用し、地方公共団体及び交通事業者に支援を開始しました。   2020年度は、基金規程や各事業の実施要領等の作成を行うとともに、港湾施設の支援に向けて、「別府港UD ターミナル推進協議会」を発足させ、設置管理者や障害当事者等との協議を行い、提言書を作成しました。   2021年度は、「共生社会ホストタウンサミット」の開催に着手するとともに、自治体等の取り組みを支援する「心のバリアフリー推進事業」を開始し、大阪府大東市に支援を行いました。  2022年度は、港湾施設の支援を行った「さんふらわあターミナル(別府)」が2023年1月に開所しました。また、「共生社会バリアフリーシンポジウム(と改名)」を2022年9 月に三重県伊勢市で開催するとともに、「心のバリアフリー推進事業」として秋田県大館市、島根県邑南町、福島県福島市に支援を行いました。  2023年度は、「空港アクセスのリフト付きバス導入支援」を大分交通2台、広島電鉄1台の計3台に行いました。また、「津波等災害時における学校避難所のバリアフリー化支援」について兵庫県明石市と協議を開始しました。さらに、2023年10月に「共生社会バリアフリーシンポジウム」を兵庫県明石市で開催するとともに、「心のバリアフリー推進事業」として神奈川県川崎市、箱根町、奈良県大和郡山市、三重県伊勢市、滋賀県甲賀市、広島県広島市に支援を行いました。  2024年度は、新たに「空港施設のバリアフリー化設備の導入支援」を行うとともに、「共生社会バリアフリーシンポジウム」を2024年8月に北海道札幌市で開催するとともに、「心のバリアフリー推進事業」として福島県福島市、秋田県大館市、三重県志摩市等に支援を実施しています。 写真:リフト付きバス/共生社会バリアフリーシンポジウムin伊勢/さんふらわあターミナル(別府) 6.ECOMO交通バリアフリー研究・活動助成(2008年度〜)  2008年度より実施している助成事業について、審査委員会委員からの提案を受け、障害当事者や個人で研究、活動している事業への柔軟な助成を実施するため、2017年度より「研究・活動部門」を新たに設置しました。また、「一般・大学院生部門」は、当該年度35歳以下の方を対象とする「若手研究者部門」とし、事業名も「ECOMO交通バリアフリー研究・活動助成」としました。  また、毎年成果報告会を開催していましたが、2020年度よりコロナの影響で現地開催を見送り、オンライン(zoomウェビナー)での開催に切り替え実施しました。2023年度から、発表者と審査委員会委員を現地参加とし、参加者のみオンライン(zoomウェビナー)での参加に切り替え、開催しています。 P27 7.小型旅客船のバリアフリー化と標準化モデルの検討(2017年度)  第2期より「海上交通におけるバリアフリー施設整備の推進」事業を継続するとともに、その一環として、旅客船の助成以外に当財団独自の技術開発や調査研究を実施しました。  2017年度に、小型旅客船のバリアフリー化と標準化モデルの検討として、省スペースのバリアフリートイレの開発を行いました。本土と離島、又は離島間の日常生活航路に就航している多くの旅客船は小型船舶であり、狭隘な船内の状況から、高齢者や障害者等が円滑に移動できる構造となっていません。特に、総トン数20トン未満で便所を設置する場合のバリアフリー化基準は、手すり、トイレ内触知案内板の設置及び滑りにくい床面に関する事項のため、小型旅客船においても車いす使用者等が利用できる省スペースのトイレを開発するべく、小型船舶の実態調査や旅客船事業者及び造船会社へのヒアリング、アンケート調査を実施し、新たなトイレを考案しました。トイレ内の広さ、扉の形状などを検証するため、モックアップを製作し、車いすを使用する障害当事者による検証を行い、小型旅客船に実装可能な省スペースのバリアフリートイレの試設計を行いました。 写真:モックアップ検証 8.交通バリアフリー情報提供システム(らくらくおでかけネット)の運営等(2001年度〜)  高齢者、障害者等が公共交通機関を円滑に利用できるようにするため、駅構内のバリアフリー施設、乗換案内のバリアフリー情報をインターネット等で提供するシステムの運営及び情報更新等を継続しています。2021年度は、新たに「プラットホームと車両乗降口の段差・隙間に関する情報」を追加しました。  また、他事業者間における乗換案内について、複雑な駅構内図に代わるものとして文章による乗換案内の作成を開始し、2022年度は東京都内3駅(秋葉原駅、市ヶ谷駅、飯田橋駅)、2023年度は大阪府内3駅(新大阪駅、天王寺駅、京橋駅)で行い、障害当事者とともに確認調査を実施しました。2024年度は、東京都内の大規模ターミナルや観光需要の大きい駅を対象に実施する予定です。 図版/写真:らくらくおでかけネットアクセス件数(2002〜2023年)/ 確認調査風景 9.手話教室(オンライン方式の開始)(2004年度〜)  聴覚障害者の公共交通機関による移動の円滑化を図るため、交通事業等に従事する者を対象とする手話教室を開催しています。2020年度は大阪地区において10 名、2021年度は大阪地区において7名、2022年度は首都圏では6 名、大阪地区では8 名、2023年度は首都圏では5名、大阪地区では11名が所定の要件を満たし、手話教室を修了しました。なお、2022年度からは、首都圏では試行的にオンライン方式を開始しました。2024年度は、年度は、オンライン方式を本格化し、全国の交 通事業等に従事する者を対象とするため、大阪地区での開催は廃止し、一元的なオンライン方式として開催しています。 写真:オンライン/現地会場(大阪) P28 10.交通サポートマネージャー研修(2009年度〜)  2009年度に本格実施した「交通事業者向けバリアフリー教育訓練プログラム(BEST)」は、2015年度に名称を「交通サポートマネージャー研修(通称:サポマネ研修)」に変更し、首都圏と関西を中心に継続的に実施しています。障害当事者が講師を担う“障害当事者参加型”のプログラムを大切にし、たくさんの障害当事者の協力を得て実施してきた本研修の受講生は、2009年度から2023年度までの15年で2,200名を超えました。神戸市交通局と京都市交通局は、この研修を自局の研修に取り入れて単独開催しています。  リーダー養成研修は「上級交通サポートマネージャー研修」に名称を変え、コロナ禍にはオンライン開催も試みながら、サポマネ研修後のステップアップを図る場として実施しています。交通事業者の接遇・介助の資質向上のために、今後も継続して取り組みを進めます。 写真/図版:研修中のディスカッションの風景/サポマネ研修のロゴ  表:サポマネ研修の取り組み 2009 「交通事業者向けバリアフリー教育訓練プログラム(BEST)」を本格実施→関西と九州で集合型研修の開催 神戸交通局(地下鉄)の単独研修を開始 2010 首都圏での研修開始→首都圏と関西で集合型研修の開催 リーダー養成研修を開始 2011 バリアフリー障害当事者リーダー育成(講師育成)の取り組みに参加 2013 受講者500名達成 2015 研修の名称を「交通サポートマネージャー研修」に変更→リーダー養成研修は「上級交通サポートマネージャー研修」に変更 サポマネ通信の発行を開始 2017 受講者数1000名達成 2018 京都市交通局(地下鉄・バス)の単独研修を開始 2019 サポマネ研修の「ロゴマーク」を作成→交通事業者が修了者の名札にロゴマークを掲載する事例あり 2020 コロナ感染拡大に伴い首都圏の研修が中止に 上級サポマネ研修をオンラインで開催(2020年度まで) 2021 受講者を制限して研修を再開 2022 受講者数2000名達成 2023 京都市交通局において「見た目ではわかりにくい障害」をテーマにした特別セミナーを開催 11.旅客船事業者向けバリアフリー研修(2023年度〜)  交通サポートマネージャー研修を通じて得たノウハウや障害当事者講師等とのネットワークを活用して、2023年度から旅客船事業者向けのバリアフリー研修に取り組んでいます。  この取組みは、旅客船の船員の方や陸上スタッフの方などの接遇・介助スキルの向上を目指しており、東海汽船株式会社と連携してプログラムの開発や研修テキストの作成、研修会の実施を進めています。2023年度には開発した「基礎編」のプログラムを2回実施し、2024年度には基礎編を修了した方を対象に船内での実技を組み込んだ実践編の「ステップアップ研修」を2回、「基礎編」を1回、計3回の研修を実施しました。プログラムの開発や研修テキストの作成にあたっては、有識者、障害当事者、旅客船事業者が参画したワーキングを立ち上げて、検討を行いました。 写真/図版:研修中のディスカッション風景/研修テキストのイメージ P29 12.バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編、車両等編)の見直し(2017〜2019年度)  2015年度、国土交通省総合政策局安心生活政策課に協力し、同ガイドラインの策定事務局として障害当事者、交通事業者、有識者等からなる検討会を開催し2つのガイドラインの改訂とりまとめを行いました。公共交通移動等円滑化基準は、交通事業者等が旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際の義務基準として遵守するものであるのに対し、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)」並びに「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン(同車両等編)」は、高齢者、障害者等をはじめとした多様な利用者のニーズに応えるためのバリアフリー整備のあり方を示した目安となり、バリアフリー化の先導的な役割を持つものです。  そのため環境の変化に合わせて、数年ごとに改定されるバリアフリー整備ガイドラインについて、改定すべき点の洗い出し、改定ポイントについての基礎調査等も実施しています。2017年度の取り組みでは 「ICT等を活用した誘導案内のあり方検討」として、有識者、専門家、国土交通省関係者による検討を行い、ウェブアクセシビリティ並びに歩行者誘導支援をバリアフリー整備ガイドラインに反映させる際の素案を提示しました(ウェブアクセシビリティはその後のガイドライン新項目として追記された)。また、バリアフリー整備ガイドラインが改定された際には、各地方運輸局と連携し全国11カ所で説明会を実施しました。加えて、バリアフリー好事例周知のため、バリアフリー整備ガイドラインの掲載事例並びに新たに調査した好事例をウェブサイト上で公開し、設備名や障害種別のカテゴリーで検索可能なデータベースを作成し公表しています。 図版:バリアフリー整備ガイドライン(左:旅客施設編、右:車両等編) 写真/図版:ガイドライン改訂内容周知のセミナー/ウェブ事例集の検索画面と検索結果の例 P30 13.公共交通機関における障害者差別解消の推進に関する研究(2014〜2019年度)  2024年度に、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(差別解消法)」の施行を前に交通機関の乗車拒否などの事例、対応事例を調査するとともに、公共交通機関における差別となる事例の明確化、過度な負担と合理的配慮の考え方の整理を目的に、差別と思われる事例等について障害者へのウェブアンケートを実施しました。また、合理的配慮の取り組み等に関する交通事業者へのアンケート、先行して差別禁止条例を策定している地方自治体へのヒアリングを実施し、交通事業者のための「対応指針」策定に資する提案をとりまとめました。その後、障害当事者、有識者の協力を得て、交通事業者及び障害当事者向けのイラストと平易な解説によるわかりやすい冊子を作成しました。 図版:差別解消法を理解するためのパンフレット(一部抜粋) 14.コミュニケーション支援ボードデジタル版の作成(2015〜2016年度)  知的障害、発達障害、聴覚障害や高齢者、日本語のわからない外国人等が、コミュニケーションを円滑に進めるためのサポートツールとして2007年度に作成した「コミュニケーション支援ボード」について、タブレット等の普及による電子版の要望に応えるべく、公共交通機関や観光案内所等での使用を前提とした「コミュニケーション支援ボードデジタル版(ブラウザ使用)」を2015年度に作成し、公開しました。  さらに、2016年度は、案内を希望する当事者自ら使用することを想定したスマートフォンに対応した個人版「マイボード(ブラウザ使用)」を作成し、公開しました。 図版:コミュニケーション支援ボードデジタル版(ブラウザ版) 15.公共交通機関における認知症者の利用実態把握と交通事業者向け対応マニュアルの作成(2016〜2019年度)  外出先で迷ったり、目的地がわからなくなっても安心して外出できる、帰ってこられる環境づくりのため、2016年度に、「認知症者の交通機関利用に関する対応マニュアル作成ワーキング」をスタートさせ、研究者、支援者、介護職さらに当事者の方々を交えて議論しました。全国400社弱の交通事業者に対して実施したアンケートでは、現場では認知症者と思われる利用者の対応が発生しているものの、マニュアル策定や研修を行っているケースは一部であることを確認しました。先進的な取り組みを行う英国の現地調査なども経て、調査の成果を広く普及させるため、「お出かけサポートカード」、交通事業者側の理解を深めるための解説書並びにポケットブックを作成し、ウェブサイトや研修会を通じて普及につとめています。 図版:お出かけサポートカード/交通事業者向けリーフレット P31 16.失語症サポートカードの作成(2023年度)  「聴く・読む・話す・書く」に障害のある失語症は、その症状やタイプが人それぞれ異なり、周囲の配慮が必要な言語障害ですが、目に見えにくい障害ですので、外見から配慮が必要かどうか分かりづらいと言われています。また、コミュニケーションをサポートするためのカード等の作成やカスタマイズすることが難しい状況です。そこで2023年度に、失語症の方が公共交通機関を利用する際、想定される要配慮項目を伝えるための「おでかけサポートカード」を作成しました。検討にあたっては、失語症ご本人、そのご家族、言語聴覚士(ST)の方々等にヒアリング、アンケート調査を行い、必要な項目を決定し、失語症ご本人に試行に協力いただきました。  このサポートカードは、データをダウンロードした上で、一人一人にカスタマイズでき、高次脳 機能障害等他の目に見えにくい障害のある方にも応用することが可能です。 図版:おでかけサポートカード/おでかけサポートカードリーフレット  P32  17.バリアフリーサポートBOOKの作成(2023〜2024年度)  「いのち輝く未来のデザイン」をテーマに、2025年4月から10月まで大阪市(夢洲)で開催される「大阪・関西万博」には、国内外から約2,800万人の来場者が想定されており、日本国際博覧会協会の「基本計画書」によると「1日の計画来場者28.5万人の輸送手段は、鉄道(大阪メトロ)が11.8万人(41%)、それ以外では大阪市内の主要駅や空港からのシャトルバス6.2万人(22%)による会場内の交通ターミナルの乗降」となり、大半が公共交通機関での来場となります。  そのため、2023年度に、国内外の高齢者、障害者等が公共交通機関を円滑に利用できるように、交通事業の従事者が、接遇・介助時の一助となる「交通事業者向けバリアフリーサポートBOOK」を作成しました。2024年度は、冊子の普及・広報活動を実施しています。 図版:交通事業者向けバリアフリーサポートBOOK(左:表紙、右:内容例) 18.地方都市等における交通機関のバリアフリー化のあり方に関する実態調査(2015〜2016年度)  超高齢社会においては、大都市郊外部、地方都市等では、公共交通機関のバリアフリー整備が進んでも公共交通空白地域や困難地域があるため、自分で車を運転できないケースなどの移動困難者が発生します。そこで、2015、2016年度に、1960年代後半に住宅都市整備公団や民間事業者によって開発された千葉県の郊外団地を対象に、高齢者、障害者などの移動実態を把握するための調査を実施しました。その結果、現状では移動の問題は大きくないが、運転免許返納やバスの運行本数減に対して住民は大きな不安を抱いており、すでに外出を控える傾向にあることが明らかになりました。団地外部への交通のみならず、敷地内での住居、福祉、医療、商業などの充足など、地域の総合的な対策の必要性があることが明らかになりました。 図版:団地内における移動支援のイメージ/団地〜最寄駅周辺における移動支援のイメージ 写真:村山団地(東京)の自転車タクシー P33 19.福祉送迎車両の利便性・安全性向上に関する調査研究(2017〜2018年度)  福祉送迎車両における利用実態やニーズを把握するため、2017年度は、特別支援学校の協力を得て、登下校時の実態把握や保護者、輸送担当教諭、福祉車両運行事業者、車両特装メーカーとの意見交換会を実施しました。2018年度は、第61回全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会総会で来場 者へのアンケート調査を実施し、学校単位での送迎車両ニーズを把握しました。その結果、利便性と安全性の向上については設備上相反する部分もあり、特装技術や法制度の面では具体的な提案事項の取りまとめには至らなかったものの、利用者、特装メーカー、交通事業者それぞれの視点から、現状の課題や要望事項等を整理することができました。 写真:福祉送迎車両 20.空港のユニバーサルデザイン診断実施とセミナーの開催(2019年度〜)  2018年にバリアフリー法が改正され、同年10月に「みんなが使いやすい空港旅客施設計画資料」が改正され、交通事業者へ「ハードとソフト計画作成・取組状況の報告・公表」が義務づけられました。ハード・ソフト両面から計画を進めるためにも、まず空港のユニバーサルデザインの実態を把握するため、「中央大学ユニバーサルデザイン・プロジェクトチーム」による空港ビルのユニバーサルデザイン診断(以下、空港UD診断)を開始しました。  空港UD診断は、6つの評価項目に基づき、空港関係者と共に施設内を歩き、仕様調査に加えてユーザビリティの視点を加えた性能調査を実施します。2019年度は小松/旭川/出雲/宮崎、続く2020年度は山形/那覇/徳島/鹿児島、2021年度は南紀白浜/福岡/青森/静岡、2022年度は新石垣/広島/長崎/福江/新千歳/秋田、2023年度は松山/新潟/熊本/宮古/岡山、2024年度は対馬/高松の各空港で実施しました。  また、空港UD診断結果や空港施設・サービス等のユニバーサルデザインに関する取り組みや最近のUD動向を報告する「空港施設ユニバーサルデザインセミナー」を2020年度から毎年開催しました(2020年11月那覇空港、2021年10月福岡空港、2022年10月新千歳空港、2023年10月東京国際空港[羽田空港])。 図版:空港UD診断 診断項目 写真:空港施設のユニバーサルデザインセミナー(左:空港視察、右:セミナー会場) P34 21.見えにくい障害への対応の検討(2022年度〜)  発達障害、知的障害など目に見えにくい障害への対応として、英国ガトウィック空港で始まった「ひまわり支援マーク(Hidden Disabilities Sunflower Lanyard)」の有効性を検証するため、国内5空港(新千歳空港、成田国際空港、東京国際(羽田)空港、福岡空港、那覇空港)で2022年4月〜2024年3月までトライアル実施しました。2024年度以降は一般社団法人全国空港事業者協会に運用主体を移管し実施されることとなりました。  また、飛行機を利用した発達障害者とその家族を対象とした持続可能なツアー実施を検証するため、2022年度より日本航空株式会社、株式会社ジェイエア、中央大学研究開発機構、大阪大学大学院・連合小児発達学研究科等と共に検討を進め、発達障害者とその家族がツアーに参加するまでに、2回の事前搭乗体験会を実施するプログラムを整え、2022年度は羽田空港―山形空港、2023年度は伊丹空港―山形空港の「アクセシブルツアーin山形」を実施しました。 写真/図版:ひまわり支援マーク(左上下:ストラップ、右:リーフレット) 写真:アクセシブルツアーin山形(左:実機での第2回事前搭乗体験会、右上:モックアップでの第1回事前搭乗体験会、右下:ツアーでのりんご狩り) P34 22.バリアフリー推進ワークショップ・勉強会(2013年度〜)  交通バリアフリーを推進する上での課題等について、ハード・ソフト両面の個別テーマ毎に最新の動向を踏まえ、関係者等との意見交換、情報交換を目的として、バリアフリー推進勉強会をスタートしました。記念すべき第1回目は、「内照式LEDサインの問題点と課題」をテーマとし、アール・イー・アイ株式会社の中村豊四郎氏による講演を財団内の会議室で行い、学識者、障害当事者、交通事業者、行政関係者など33名が参加しました。  2013年度は10回、2014年度は10回、2015年度は12回(首都圏9回、関西3回)、2016年度は12回(首都圏10回、関西2回)、2017年度は12回(東京8回、関西2回、呉・浜松各1回)、2018年度は9回(東京7回、関西2回)、2019年度は3 回(東京2 回、関西1 回)のバリアフリー推進勉強会を開催しました。一方、国際面では、2018年11月に台湾・台北で開催されたTRANSED2018(第15回高齢者と障害者の移動と交通に関する国際会議)に論文発表並びに展示ブースを出展しました。  なお、2020年度からは、新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、会場での開催は行わず、オンライン配信を主体とする開催に変更しました。2020年度は3 回(東京1 回、関西2 回)、2021年度は3 回(東京1 回、関西2 回)、2022年度年度は9 回(東京4 回、関西2 回、北海道3 回)、2023年度は6回(東京3回、関西2回、栃木1回)開催し、2024年度は対面開催に戻しつつ、継続して実施しています。 写真:第1回開催風景/TRANSED2018/第72回開催風景 P37 交通環境対策部 P38 第1期 1997(平成9)年度〜2004(平成16)年度  地球環境問題、とりわけ地球温暖化問題に対応するための議論は、1970年頃から国連を中心に開始されました。1972年にストックホルムにおいて国連人間環境会議が開催され、1982年にナイロビで国連環境計画管理理事会特別会合が開催されました。そして、1992年5月国連において、地球温暖化問題に対応するため、気候変動枠組条約が採択されました。1992年6月にリオ・デ・ジャネイロにおいて、環境と開発に関する国際連合会議が開催され、各国首脳が気候変動枠組条約に署名を行いました。その結果、1994年3月に同条約が発効することとなりました。  1997年12月に気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が京都で開催され、京都議定書が採択されました。当時、同議定書は発効要件を満たしていない状況でしたが、我が国は地球温暖化対策を推し進めるための計画である地球温暖化対策推進大綱を策定し、1998年6月に閣議決定を行いました。その後、1998年10月に同議定書の根拠となる地球温暖化対策推進法を制定し、我が国の温暖化対策の枠組みが形づくられていきました。  このような社会情勢を踏まえつつ、当財団は日本財団の支援を受け、運輸部門の地球環境対策について何が有効か検討すべく、調査研究を進めると共に、様々な主体に対し運輸部門の地球環境問題の認識を深めるべく、啓発活動を行いました。 1.環境負荷低減型税制に関する調査(1997年度)  自動車関係諸税を燃費効率を考慮したものに再編成するなどの方策により、ユーザーが低燃費車を取得するように誘導するグリーン化税制の効果を定量的に把握するため、シミュレーションモデルを開発し、税額や税率を燃費別に再編成したいくつかの具体的なケースを想定することにより、燃料消費や二酸化炭素排出の抑制・削減効果を調査研究しました。 2.運輸部門における地球環境問題に関する意識調査(1997年度)  運輸部門における民間主導の地球環境対策の一つとしてのボランタリー基金の設立に向けて、自動車ユーザーの地球環境問題への意識を調査すると同時に、ボランタリー基金の設立のような先行的取り組み等に対する意識調査を実施し、その成立可能性及び実施のための諸条件の整備について検討を行いました。 3.地球温暖化防止に資する新たな交通システムに関する調査(1997年度)  地球環境に配慮したモビリティの高い社会を創造するために、運輸分野において技術開発を進めるべき重点課題として、新しい交通システムを取り上げ、その開発の方向性及び内容を明らかにしました。すなわち、表面効果を利用した高速輸送機関(表面効果機関)や次世代幹線物流など、次世代の交通体系において開発が望まれる新しい交通システムを抽出し、それらシステムの構成、技術開発要素とその解決方法、システム導入による効果等を調査研究しました。 4.モーダルシフトモデル事業(1998年度) (1)個別輸送モデル事業調査  モーダルシフトの一層の推進と定着を図ることを目的として、様々な事例や荷主意向の把握から阻害要因を検証するとともに、阻害要因の克服に向けたモーダルシフトの試験輸送を実施し、モーダルシフト実践に向けてのきっかけを与えるとともに今後のモーダルシフト推進のための方策をとりまとめました。 P39 (2)モデル地域調査  モーダルシフトを、より広範に効果的に推進するために、地域における物流改善のための総合的な取り組みを喚起、支援するべく、臨海部型のモデル地域として「福岡県北九州市」を、また内陸型のモデル地域として「愛媛県松山市」を選定し、各地域の交通インフラ、貨物流動、貨物施設等の状況を把握、課題を整理し対応策をとりまとめました。 5.バスの活用による都市交通の円滑化に関する調査(1998年度)  都市圏(内)交通において、バスを活用するパークアンドバスライドの事例を調査し、実施による効果や周辺への影響、課題などを抽出し、実施上の留意点などを整理しました。また、新潟市において、パークアンドバスライドの実証実験を1998年11月9日〜13日の5日間実施し、以後の本格施策に向けての課題を整理するとともに、同様の問題を抱える各都市における施策実施における留意点などを提示することができました。 6.先進的な環境対策活動調査(1998〜1999年度)  自動車貨物輸送数量の約83%を占める中小運送事業者に焦点を当て、これら事業者が地球環境対策に有効な取り組みを実践するための問題点を洗い出し、各事業者が自ら地球環境対策に着手するための指針、参考となる事例等をとりまとめました。  1998年度事業では、共同化によって有効となる事例として、配車計画段階における取り組みの中からポケットベルを活用した傭車(注)システムが挙げられました。  本システムは導入に関わるコストが低い等の特徴があり、1999年度は、これを実用化した東京都の特定グループ以外の運送事業者に周知することにより普及を進め、事業者の環境問題への自主的取り組みへの支援を行いました。  また、成約後の料金決済等について、インターネットを活用した具体的なシステムの検討を行い、システム構築を行う際の指針を作成しました。 (注)傭車:輸送業者が他の業者の車両を一時的に借りて輸送業務を行うこと。また、その車両のこと。 7.鉄道車両内への自転車持ち込みに関するモデル事業調査(1998〜1999年度)  鉄道車両内への自転車持ち込みの普及・促進を図るため、JR北海道、JR四国、三岐鉄道、富士急行の4社の賛同を得て、モデル事業を実施しました。このモデル事業実施期間中に利用者や一般乗客の反応を調査し、自転車持ち込み料金、転倒防止や施設改良などの安全対策をまとめ、今後の課題等について整理しました。  1998年度に実施したモデル事業を踏まえ、1999年度は自転車持ち込みの可能性をより広く究明するため、比較的都市部に近い生活型特性の高い線区でモデル事業を実施しました。具体的には、近畿日本鉄道、福岡市交通局、松浦鉄道、JR九州各社の協力を得て、モデル事業を実施し、当該施策についての課題等を利用者、施設面、行政など幅広い観点から追求し、自転車持ち込み施策についての提言を示すことができました。 写真:鉄道車両内への自転車持ち込み P40 8.一般商船による北太平洋の温室効果ガスの観測システムの構築(1998〜2000年度)  地球温暖化並びにそれに伴って将来起こるであろう様々な現象の予測を行うためには、全地球的に気候変動を監視し、大気と海洋間の温室効果ガス、特に二酸化炭素の動態を解明することが重要です。しかしながら、地球の表面積の7割を占める広大な海洋上の観測データは極めて少ないのが現状です。そこで1998年度に一般商船に搭載可能な観測システムを開発するとともに、北太平洋を航行するコンテナ船にそのシステムを搭載し、以降2000年度までシステムの安定運用を監視・調整するとともに観測を実施しました。2000年度に実施した4航海を含め3年間を通して計9航海分の観測を実施したことにより、大気と海洋間の二酸化炭素の動態について、季節変動を含め明らかにすることができました。 写真:コンテナ船 9.エコ交通に関する調査研究(1999年度)  環境に配慮した新しい交通システムへの転換が求められており、この環境負荷の小さな交通を「エコ交通」と称して、その概念を整理し、位置づけ、役割、あり方等について検討しました。  また、当時車の利用方法の新しい概念として、住民で自動車を共同利用するシステム(カーシェアリング)が、欧州各地で増加しつつありました。車の絶対量を削減し、交通渋滞の緩和等により、環境問題にも効果があると期待されており、2000年度にカーシェアリング研究会を設置し、普及・事業化のための諸課題を検討することとしました。 10.地球環境事業の将来ビジョン調査(1999年度) (1)ビジョン検討  当財団として取り組むべき環境問題について、21世紀を視野に入れ適切に対応していくためには、長期的視点に立って基本的な方針を定め、計画的に整合性のとれた事業を展開していく必要がありました。  このため、学識経験者等をメンバーとする委員会を設置し、当財団が今後重点的に取組むべき課題、事業の方向性を明確にするため、将来ビジョンを策定しました。 <ビジョン> 「持続可能な循環・省資源型社会を実現」する交通としての「エコ交通」と、エコ交通を運輸・交通体系の中心に据えた「エコ交通社会」を考え、この実現を図ることを、当財団の社会的使命とし、エコ交通とエコ交通社会を実現するために、以下の事業を行うこととしました。 1)エコ交通の価値観づくり 2)エコ交通のしくみづくり 3)エコ交通事業支援( 1)、2)をサポートする事業としての位置づけ) 4)エコ関連事業  事業実施のあり方においても、従来から実施している普及啓発、調査研究、モデル事業を核としながらも、より社会的な要請が高く、公共ベンチャー的な独創性の発揮できる具体的な行動を伴う事業の実施を行っていくこととしました。  また、事業の対象者も、事業者、消費者、自治体を含む行政担当者、海外等幅を広げ、それらとの連携を図っていくこととしました。  これらを進めることにより、エコ交通社会実現のための新しい価値観と行動様式を定着させ、エコ交通社会実現のための新しい社会システム作りの支援を行うという社会的使命に基づく事業を推進することで、エコ交通社会の実現に貢献していくことが、当財団としての環境事業ビジョンの基本としました。 P41 (2)新海上交通システム  当時、高速貨物の物流については、効率的な大量輸送が可能な国内海上輸送モードへのシフトが進展していませんでした。そこで、トラック輸送に匹敵する速度と、これを上回る経済性を両立する新海上交通システムが実現できるか否かについて検討しました。  その結果、新海上交通システムを実現させるための規制の緩和、港湾等のインフラの整備がなされれば、民間の事業としての本システムの普及の進展と、二酸化炭素の削減効果も期待できることが明らかになりました。 11.エコドライブの普及(1997年度〜) (1)エコドライブ普及推進協議会事務局活動  1997年4月の運輸政策審議会総合部会で、運輸部門における地球温暖化対策としてエコドライブへの取組みが提唱され、そのための活動組織として運輸関係11団体で構成する「エコドライブ普及推進協議会」が設立されました。  当財団は、設立時より事務局の運営を務め、最初の具体的活動として「エコドライブのすすめ」10ヶ条を制定し、ポスター、リーフレット、ステッカーとして配布しました。  配布に当たっては、運輸省(当時)及び警察庁交通局の指導、並びに社団法人全日本指定自動車教習所協会連合会の協力を得て、全国の指定自動車教習所約1,500ヶ所を含めた数多くの団体・個人に提供しました。  なお、2000年度に協議会活動は一旦中断しましたが、2003年度から活動を再開し第2期も活動しています。 図版:リーフレット (2)エコドライブコンテストの開催(1998年度〜1999年度)  1998年度と1999年度に、エコドライブに関する優れた取り組みを行っている事業者を表彰する「エコドライブコンテスト」を開催し、その取り組みを紹介することでエコドライブの更なる普及を図りました。  1999年度の第2回エコドライブコンテストでは、従来の(エコドライブ部門)に加えて(エコドライブ支援装置部門)を設け、エコドライブを支援する装置を開発している事業者を表彰しました。 図版/写真:チラシ/表彰式 (3)短時間のアイドリングストップの有効性実測(1999年度)  短時間のアイドリングストップは、再始動時の排出ガス・燃料消費量の増大などにより、かえって逆効果になる場合もあると指摘されていました。このため、短時間のアイドリングストップの効果について、排出ガス及び燃料消費量に対象を絞り、実際の使い方に近い(エンジン再始動後直ちに発進する)条件下で実測調査し、実際に効果があらわれる有効時間を示すことができました。 P42 12.環境と運輸(1997年度〜)  啓発活動として、1997年度から発行している「運輸・交通と環境」があります。  1997年度から1999年度までは、「環境と運輸─環境と調和した次世代の運輸交通システムを目指して─」という名称等で、運輸政策審議会総合部会でとりまとめられた「運輸部門における地球環境問題への対応方策」に基づき、運輸部門における地球温暖化対策の重要性等をわかりやすく紹介しました。  2000年度は内容を大幅に見直し、「運輸部門 環境年次報告書―環境にやさしい交通の創造―」という名称で、交通部門における地球環境問題の現状と対策について、トピックスも織り交ぜ基礎となる最新の情報を取りまとめるとともに、当財団の取り組んできた事業概要も盛りこみ作成、配布しました。  2001年度は、運輸部門における環境問題の現状と対策について、地球温暖化、大気汚染、オゾン層破壊、海洋汚染、騒音などの幅広い観点から、基礎となる最新の情報や当財団が取り組んだ事業概要、市民団体の活動なども織り交ぜて作成、配布しました。  2002年度から、運輸部門における環境問題の現状と対策について、地球温暖化、大気汚染、オゾン層破壊、海洋汚染、騒音などの幅広い観点から、基礎となる最新の情報や行政、当財団、市民団体、企業等の取組みも織り交ぜ、「運輸・交通と環境」という名称で第2期も作成、配布しています。 図版:環境と運輸(1999 年度版 ) 13.運輸事業におけるグリーン経営認証制度の実施 (1)グリーン経営推進マニュアルの作成(2002〜2004年度)  我が国の二酸化炭素排出量のうち運輸部門は当時においても20.7%(2000年度)と多くを占めており、それぞれの事業者自らが環境改善への積極的な取り組みが強く求められていました。しかしながら中小規模の事業者が大半を占めている運輸業界にあっては、ノウハウ不足等から自主的取り組むことはなかなか容易ではありませんでした。  そこで、当財団は、国土交通省の指導のもと、社団法人全日本トラック協会、社団法人日本バス協会、社団法人全国乗用自動車連合会の協力を得て、中小規模の事業者でも環境保全のための取り組みを推進するためのグリーン経営(環境負荷の少ない事業運営)推進マニュアルを2002年3月トラック運送事業者向けに、2003年3月にバス事業者、タクシー事業者向けに作成しました。  また、国土交通省が社団法人日本倉庫協会、社団法人日本冷蔵倉庫協会、社団法人日本港運協会、社団法人日本旅客船協会、日本内航海運組合総連合会の協力を得て進める旅客船、内航海運、港湾運送、倉庫事業者向けグリーン経営推進マニュアルの作成に当財団は協力しました。  このマニュアルはISO14031(環境パフォーマンス評価に関する国際規格)の考え方に基づき、中小規模の事業者でも容易に環境改善に向けた取り組みができるよう取り組むべき環境保全項目の各々について、チェック項目としてその具体的取り組み内容を明示しています。これにより取り組みを行おうとする事業者の経営規模に合わせて、目標の設定と評価が容易にでき、自主的かつ継続的な環境保全活動が進められるようになっています。 図版:グリーン経営の進め方 P43 (2)グリーン経営認証制度の創設(2003年度〜)  運輸事業者のグリーン経営推進マニュアルに基づく環境保全への取り組みの努力を客観的に証明し公表することにより、事業者の取り組み意欲の向上を図り、あわせて事業者に対する社会あるいは利用者の理解と協力を得て、運輸業界における環境負荷の低減につなげていくための認証制度を2003年10月からトラック事業者向けに、2004年4月からバス、タクシー事業者向けに開始しました。  本認証制度は、当財団が認証機関となり、グリーン経営推進マニュアルに基づいて一定のレベル以上の取り組みを行っている事業者に対して、審査の上認証・登録するもので第2期も行っています。 図版/写真:ロゴマーク/リーダー研修会(情報提供) 14.環境負荷の少ない地域交通を目指した取り組み (1)カーシェアリングによる自動車利用のライフスタイル変革推進(2001年度〜)  カーシェアリングは、車を複数の人で組織的に共同利用する手法であり、個人にとってはマイカーに近い移動手段をより安く確保できるうえ、社会的にも、車に占拠される都市空間の節約をもたらすほか、車の絶対量や交通量を削減すると期待されています。  そこで当財団では2001年度、カーシェアリングの我が国での普及可能性や社会的効果の検証のため、ガソリン車では我が国初となるカーシェアリング社会実験を実施しました。  2002年度には、カーシェアリングに関心のある人達がインターネットを通じて容易に情報交換を行い、連携を深められる場として、メーリングリスト「カーシェアリング・フォーラム」の運営を開始しました。  2003年度には、カーシェアリングのシンポジウムを開催し、160名の参加者と海外の先進事例や、我が国の先駆的な取り組みに関する紹介をし、我が国での普及のための方策を討論しました。 写真:東京都北区での社会実験/シンポジウムで講演するフレックスカー社の役員    P44 (2)住民主体の環境に配慮した地域交通づくりの推進(2002〜2005年度)  交通は、地域住民のくらしや地域のあり方を左右する重要な社会基盤であることを考えると、環境負荷の少ない交通を基軸としながらも、移動のしやすさ等の他の要素との調和が必要です。このような地域交通を実現するためには、地方公共団体とともに住民が主体となって、地域の具体的ニーズや特性に合った交通施策を立案し、実施していける仕組みが必要です。  そこで当財団では、このような視点から地域交通づくりに取り組まれている地方公共団体や市民団体に対し、住民参加型の委員会の設置・運営を通じて、交通施策に関する専門知識の提供や、合意形成等の支援を行い、よりよい地域交通の実現を協働して目指す事業を実施しました。  協働先の選定にあたっては、2002年5月に全国の人口5,000人以上、100万人未満の地方公共団体と150の市民団体にアンケート調査を行い、協働に関心ありと回答した団体を中心にヒアリング等を実施して候補を絞り込み、委員会審議を経て、協働先となる3団体(2地方公共団体、1市民団体)を決定しました。  この3団体と住民参加型の委員会の設置・運営を通じて、よりよい地域交通の実現を3、4年かけて、協働して目指すとともに、他の地域がこれらをモデルケースとして活用するためのノウハウをとりまとめ、その取り組みの普及を行いました。 表:協働先の3団体とプロジェクト内容 左から団体名 プロジェクト名 プロジェクト内容 和泉市(大阪府) 「総合的な学習における」交通・環境教育プログラム 市、学校(教員)、PTAが協力して、小学5年生の「 総合的な学習の時間」を活用し、交通に関わる環境問題知識の習得と交通利用体験を通して環境負荷の少ない交通行動への変革に結びつけることを目指し、2004 年度までに汎用性のある交通環境教育の教材やプログラムを確立しました。 滝沢村(岩手県) 村のバス事業見直しや新駅開設に伴う公共交通網 の再編 公共交通機関の利用促進と村の交通課題(道路渋滞、高齢者の足の確保等)の解決を図るため、2005年度までに村の公共交通総合計画を作成しました。 広島のみちの使い方を考える研究会(広島市) わかりやすく使いやすい公共交通の実現 マイカーから公共交通への利用転換を促進するため、2004年度までに、5つのバス事業者が独自に作成していたバス停表示について、その統一化案をバス事業者向けに提案しました。 P45 (3)エコモビリティ研究会(2001〜2005年度)  地域交通においては、環境への負荷を軽減しつつも、人々のモビリティの質にも配慮した交通(エコモビリティ)が求められています。しかしながら地方公共団体においては、交通施策の企画・立案などができる専門家の育成が十分に進んでいないことや、参考となる手引書がないこと等が、取り組みの遅れにつながっていました。  そこで2001年度から環境負荷の少ない利便性の高い地域交通に関する有効な施策、先進事例等の研究を行い、2005年度初めにその成果をとりまとめた実践的な手引書を出版しました。 15.湾内におけるダイオキシン類分布調査(2000〜2001年度)  ダイオキシン類は河川を経由して湾内に流入したり、大気中から煤塵の形で降下してきますが、その海への影響については、河口や港湾区域等を除き全容が明らかになっていませんでした。そこで、汚染度合いが高いと考えられる東京湾において、水平汚染状況(表層)、経年的堆積過程(底泥の鉛直分布、100数十年分)、発生源経路等について、柱状サンプリングを用い、ダイオキシン類の分布 調査を2000年度に実施しました。この調査の結果、表層の水平分布は既往データを上回ることはありませんでしたが、湾奥部の方が湾口部と比較して濃度が高くなる傾向が明らかになったこと、経年的堆積過程は1962年〜 1980年の地層に濃度のピークがみられたこと、発生源については湾奥部では農薬の影響を、湾口部では大気及び降下煤塵の影響を受けていることなどが分かりました。   2001年度は、我が国の代表的な海域についてのダイオキシン汚染の現状を概観的に評価するため、東京湾(2000年度実施)に引き続き、大阪湾に隣接し、複雑な地形を持った開放海域である播磨灘における底泥のダイオキシン類の分布調査を実施しました。  調査の結果、播磨灘全域のダイオキシン類の水平分布が明らかになり、絶対値も問題になるレベルではないことが分かりました。また、経年的堆積過程では1970年代〜1980年代の地層にピークがみられたこと、主要な起源は東京湾の湾奥部と同様に農薬由来と推定されること、更には粒径の細かい粒子に多くのダイオキシン類が付着すること等除去方策等を検討する上で重要な知見が得られ、これらの事業成果を公表しました。 写真:ダイオキシン類分布調査 16.運輸部門のクリーン開発メカニズム(CDM)調査(2003年度)  開発途上国においては、近年のモータリゼーション等により運輸部門からの二酸化炭素排出量が急激に増大しており、地球温暖化対策として、運輸部門でのクリーン開発メカニズム(CDM)※の推進が有効です。しかしながら、運輸部門のCDMは、他の分野に比べて手法の開発が遅れており、このことが検討事例の少なさにつながっていました。  そこで、試行的に作成された運輸部門プロジェクト設計書を温室効果ガス削減量検証機関に模擬審査させ、その審査結果について他の検証機関や専門家を交えて議論することにより、運輸部門のCDMの審査に必要な知見と課題の抽出・検討を行いました。 ※クリーン開発メカニズム(CDM):京都議定書で認められている制度で、開発途上国への先進国の技術・資金等の支援により実現された温室効果ガス排出削減量を、当該先進国の削減量として計上できるというもの。 P46 第2期 2005(平成17)年度〜2024(令和6)年度  2004年11月にロシアの批准により発効要件が満たされたため、2005年2月に京都議定書が発効しました。それに伴い、2005年4月に日本政府は京都議定書目標達成計画を策定し、閣議決定しました。国土交通省においては2004年6月に「国土交通省環境行動計画」が策定されました。  当財団の交通環境対策事業の取り組みも同計画に位置付けられ、これまでの調査研究や普及啓発活動の成果を活かし、自主事業として「運輸事業におけるグリーン経営認証制度」や「環境的に持続可能な交通(EST)」など、社会情勢に合わせて事業内容を見直し、新たな課題にも対応しながら実施しています。 1.運輸事業におけるグリーン経営認証制度の実施(2005年度〜) (1)倉庫、港湾運送、旅客船、内航海運へのグリーン経営認証制度の対象拡大  グリーン経営認証制度の対象業種は、2005年7月からは、倉庫・港湾運送・旅客船・内航海運の4事業が新たに対象として加わり、全7業種となりました。  2013年10月には認証開始10周年を迎え、認証登録を10年継続している事業所のこれまでの環境保全への取り組みや地球温暖化防止に対する尽力に敬意を表し、同時期より「グリーン経営認証永年登録事業所表彰」を実施しています。表彰対象となる事業所については、事業所名を公表するとともに、表彰状、記念額、及びゴールドステッカーを授与することとしました。  永年登録事業所表彰の対象事業は、2013年度のトラック運送事業から始まり、翌年以降他の事業も加わりました。  2023年10月にグリーン経営認証制度は、認証開始20周年を迎えました。そこで、グリーン経営認証登録を20年継続されている事業所に対し、環境保全への尽力に敬意を表し「グリーン経営認証永年登録事業所表彰」を行い、盾の贈呈を開始しました。また、永年登録表彰事業者用のロゴマークのデザインを一新しました。 図版:ゴールドステッカー(左:トラック、バス、タクシー用、右:倉庫、港湾運送、旅客船、内航海運用) 図版/写真:永年登録表彰事業者用の新ロゴマーク/盾 P47 (2)グリーン経営認証取得による効果検討  グリーン経営認証を取得した運輸事業者においては、二酸化炭素の排出削減をはじめ、交通事故の減少、荷主の評価向上等さまざまな効果が想定され、それらの効果を定量的に把握し、公表することにより、グリーン経営認証取得事業者及びグリーン経営に対する社会的評価が高まることが期待されます。  そこで、運送事業者がグリーン経営認証を取得したことによる二酸化炭素排出削減効果、及びその他の効果について定量的に評価・検討し、2006年3月から毎年度公表することとしました。 2.エコドライブの普及 (1)エコドライブ普及推進協議会事務局活動(1997年度〜)  2003年度から活動を再開したエコドライブ普及推進協議会ですが、2006年度にエコドライブ普及連絡会の「エコドライブ10のすすめ」策定にあわせて、協議会としてのチラシ、ポスターを作成するとともに、新たに協議会活動をPRするためのポータルサイトを設けました。また、2007年度からは、エコドライブ推進月間の11月に、「エコドライブシンポジウム」を開催し、広くエコドライブに関する情報を提供しています。 図版:チラシ/ポスター/ポータルサイト  2012年度からエコドライブ普及連絡会の「エコドライブ10のすすめ」に沿ったチラシ、ポスターを配布するとともに、エコドライブ推進月間の11月に、「エコドライブシンポジウム」を開催し、広くエコドライブに関する情報を提供しています。2020年1月にはエコドライブ普及連絡会の「エコドライブ10のすすめ」が改訂されたため、協議会のチラシ、ポスターも改訂しました。 図版:チラシ/ポスター P48 (2)エコドライブ講習団体の認定及び受講者への修了証発行(2007年度〜)  2007年度より、運輸事業者等の要望に応え、「トラックのエコドライブ講習認定」と認定団体での講習受講者への修了証発行を開始しています。これは、当財団が設定したトラックのエコドライブ講習認定基準に基づいて申請団体を審査・認定し、その団体でのエコドライブ講習受講ドライバーに、修了証を授与するものです。  さらに2008年度からは、同様の取り組みを乗用車に対しても開始しています。この取り組みにおいては、一般財団法人省エネルギーセンターと協働し、エコドライブ指導者の養成を同センターが、燃費解析ソフト等の教材提供、審査・認定を当財団が実施しています。 写真:講習状況 (3)エコドライブ活動コンクールの再開(2011年度〜)  1998年度と1999年度に実施し、その後中断していた優れたエコドライブ活動を表彰する制度を、2011年度より「エコドライブ活動コンクール」として再開しました。  エコドライブ普及連絡会とエコドライブ普及推進協議会の後援を受け、多くの事業者の参加を頂いており、2014年度からは、国土交通省及び環境省より大臣賞が授与されることとなりました。なお、上位入賞者については、11月開催のエコドライブシンポジウムの中で表彰することとしています。  2022年度より支援ビジネス・ユニーク部門を設けて、エコドライブ支援サービス等に対しても表彰しています。 写真:エコドライブシンポジウムの様子 3.環境的に持続可能な交通(EST)の普及 (1)EST普及推進委員会活動(2005年度〜)  環境的に持続可能な交通(EST)は、運輸部門における環境負荷の削減、とりわけ脱温暖化社会を目指した長期的・継続的な取り組みです。このESTは、OECD(経済協力開発機構)において提案され、我が国でも国土交通省などがモデル事業を展開してきました。また、2006年度からは、学識経験者、関係団体、関係省庁等からなるEST普及推進委員会のもとで、ESTの普及活動を展開してきました。  当財団は、2005年度に国から委託を受け、国土交通省などが展開したモデル事業を効率的に推進し、ESTの実現に向けた取り組みを全国各地に広めるため、モデル事業実施地域の関係者による意見交換と情報共有化のためのESTモデル事業懇談会及びモデル事業実施地域の取り組みから得られた知見を一般に広めるためのシンポジウム「ESTスタート・セッション」を開催しました。  2006年度は、ESTを地方公共団体や交通事業者等へ一層浸透させるため、学識経験者、関係団体、EST関係省庁等と連携し、ホームページの開設、メールマガジンの配信、パンフレットの作成・配布、ロゴマークの作成、先進事例データベースの作成等を実施しました。さらに、引き続き国から委託を受け、ESTの普及促進のため、シンポジウム「EST普及推進フォーラム」を開催しました。 P49  2007年度は、イギリス、フランス等の海外を含め内外の先進事例調査を行い、ホームページ上のデータベースの拡充を図りました。また、地方においてESTの普及推進を図るため、浜松市、岡山市、福岡市で地方公共団体や交通事業者を対象とした講習会(EST創発セミナー)の開催を開始しました。さらに、ESTを普及促進するため、シンポジウム「第2回EST普及推進フォーラム」を開催しました。  2009年度には、新たに地域の優れた交通環境対策の取組みを表彰するEST交通環境大賞を創設し、表彰式を兼ねたシンポジウム「第3回EST普及推進フォーラム」を東京で開催しました。  さらに2010年度は、地域で交通環境対策をリードする人材を養成するための研修会を検討し、2011年度に第1回の研修会を横浜で開催しました。  2012年度からは、国土交通省及び環境省より大臣賞が授与されることとなりました。また、ESTへの取り組み方や工夫などを具体的に知っていただくために、人材養成研修会の開催地を前年度のEST交通環境大賞受賞地域にて開催することとしました。  2018年度からはEST創発セミナーも前年度のEST交通環境大賞受賞地域で開催することとしました。 EST交通環境大賞やESTフォーラム、EST創発セミナー、人材養成研修会を基軸としてESTの普及啓発活動を続けてきましたが、コロナ禍はESTフォーラムのプログラムを縮小してオンラインも活用した「EST交通環境大賞表彰式・記念講演」として開催し、コロナ後にフォーラムを再開しました。 写真:左上:豊田市でのEST創発セミナー、右上:EST交通環境大賞表彰式、下:岐阜市での人材養成研修(現地視察・グループワーク) (2)地域バス交通活性化セミナー(2012年度〜)  2012年度から当財団では、低炭素な地域交通体系確立及び乗合バスの利用促進の観点から、地域バス交通の維持・活性化に向けた検討を開始しました。  まずは全国の地域バス交通の維持・活性化に向けた取り組みを広く普及するために、各地方運輸局等と連携してセミナーを開催しました。第1回目は都内にてセミナーを開催し、2024年8月までに26回のセミナーを開催しています。  2015年度からはセミナーの翌日に開催地の取組内容を見学・体験できるエクスカーションを開催し、各地域の工夫をより知ることができるようにしました。  2019年度には、これまでにセミナーで発表されたバス事業者や自治体等の取り組みを取りまとめ、データベース化を行いました。  2020年度はコロナ禍ではありましたが、感染症対策を万全に行い、セミナーを開催しました。 写真:左:第1回セミナー(東京)、右:第7回セミナーエクスカーション(三沢) 図版:先進事例データペース P50 (3)カーシェアリングの推進 (2001年度〜)  2003年度当時、カーシェアリングの利用者は欧米諸国を中心に20万人近くいるといわれましたが、我が国での普及は進んでいませんでした。その背景として、わが国ではいまだにカーシェアリングの認知度が低いうえ、「事業としてのカーシェアリング」においては無人貸渡しや点検等に関わる法規制が厳しく、これをクリアするための初期投資や運営費が嵩んでしまうことがあげられました。  これらの解決策として、市民が車を共同利用し、共同で管理・運営する形態をとることにより、事業として行う場合に適用されるレンタカー規制を回避し設備費の低減を図るとともに、自らの運営によりコストを抑えることが考えられます。この方式は小規模でも比較的取り組みやすいため、我が国でのカーシェアリング普及の鍵となる可能性があります。  そこで2004年度に当財団では、埼玉県・志木ニュータウンの集合住宅の住民により設立されたNPO法人「志木の輪」が自らのニーズで取組んでいる車の共同利用、共同管理・運営活動、「手作りカーシェアリング」を支援しました。  その後、自動車を所有せず、必要な時だけ利用できるカーシェアリングが世界的に拡大しており、我が国においても利用者数が増えており、普及状況を把握するため全国のカーシェアリング車両台数や会員数の把握を行ったところ、利用者数は46万人を超えていました(2014年1月当財団調べ)。  当財団は2012年度に、このようなカーシェアリングの環境負荷低減効果を検証しました。カーシェアリング主要5事業者の協力を得て加入者アンケートを実施した結果、カーシェアリング加入により、1世帯あたりの平均自動車保有台数は6割強減少し、1世帯あたりの年間自動車総走行距離は4割弱減少し、1世帯あたりの自動車からの年間二酸化炭素排出量は平均0.34t(率にして45%)削減されていることを確認しました。 P51 4.交通環境学習(モビリティ・マネジメント教育)の普及(2006年度〜)  交通環境学習(モビリティ・マネジメント教育)とは、われわれ一人ひとりの移動手段や社会全体の交通流動を「人や社会、環境にやさしい」という観点から見直し、改善していくために自発的な行動を取れるような人間を育成することを目指した教育活動を意味します。  当財団では、2002年度の環境に配慮した住民主体の地域交通づくりの推進事業において支援した和泉市の「『総合的な学習における』交通・環境教育プログラム」の全国への展開を目指し、2006年度には和泉市や豊中市など大阪府下での取組みをまとめた事例集「楽しく学ぶ交通と環境─大阪府の小学校における実践例─」を発行しました。  2007年度には継続的に実施する拠点を全国に作るため、地方公共団体への支援制度を開始しました。(2023年度までに13団体を支援)  2008年度には、地方公共団体等において教材を作成しなくても取り組めるように、交通と環境問題の関係や対策等を簡単に取りまとめた教材「エコモ環境BOOK」を作成・配布し、現在も運輸局や地方公共団体等で継続して活用していただいています。  2010年度には、交通環境学習の指針となる教育宣言「モビリティ・マネジメント教育のすすめ」を発行するとともに、交通環境学習に関心のある学校や教員の方を支援するため、小中学校を対象とした支援制度を開始しました。(2013年度までに延べ141校を支援)  2011年度には、交通環境学習のさらなる普及を目指し、概要や実践方法、事例などをとりまとめ、教員向けの書籍「モビリティ・マネジメント教育」を出版するとともに、関心のある地方公共団体や学校、教員間の情報共有を図るために、メールマガジンの発行を開始しました。   2012年度には、これまで小中学校向けだった交通環境学習の対象を拡大し、一橋大学商学部に寄附講義科目「交通と環境政策」を開設しました。  2014年度にはこれまでに自治体支援を行った札幌市と京都府の事例と、学校支援を行った川西市の取り組みを取りまとめた手引書を発行しました。手引書では学習の流れだけではなく、実際に作成された指導計画書を掲載して教員の方が学習カリキュラムをイメージしやすいようにしました。  2015年度には2014年度に作成した手引書を更新し、新たに仙台市、富山市、金沢市での取り組みを追加掲載しました。2016年度には手引書に掲載した取り組みをWebで検索できるようにデータベースを作成し、公開しました。  さらなる普及を行うため、2015年度は広島市で、2016年度には草津市で交通環境学習普及セミナーを開催しました。  また2016年度から交通環境学習の実施状況や課題を把握するため、首長部局の交通担当部署と教育委員会へのアンケート調査を毎年実施しています。 図版:モビリティ・マネジメント教育のすすめ/書籍/手引書 図版:交通通環境学習プログラムデータベース P52 これまで学校支援制度の対象は小・中学校だけとしていましたが、2020年度より高等学校も支援先として追加して、募集・支援を開始しました。  2022年度には、取り組み当初に作成したパンフレット「モビリティ・マネジメント教育のすすめ」の改訂を行い、これまで支援をしてきた自治体や学校の具体的な取り組み事例を掲載しました。  さらに2023年度には、「モビリティ・マネジメント教育のすすめ」のデザイン変更に伴い、ポータルサイトのデザインを合わせるとともに、掲載内容を整理して取り組み事例へアプローチしやすくしたり、参考となるデータを更新したりといった改訂を行いました。 図版:モビリティ・マネジメント教育のすすめ(改訂版)/ポータルサイト 5.エコプロダクツ展への出展及びエコプロダクツ大賞の実施(2003年度〜2023年度)   エコプロダクツ展は、環境配慮型製品・サービスの普及を目的に開催されている環境総合展示会であり、ビジネスマンや行政担当者、一般消費者が来場する国内有数の環境イベントです。  当財団では、2003年度から国土交通省と共同で出展していましたが、グリーン経営認証制度や環境的に持続可能な交通の普及などの事業拡大に伴い、より詳細に多くの方々に普及するため、2007年度より2023年度まで当財団単独で出展しました。  また、2004年度に、環境負荷の低減に配慮した優れた製品・サービスの普及を図るため「エコプロダクツ大賞」が関係する6省(財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)の後援で創設され、当財団は、運営主体の「エコプロダクツ大賞推進協議会」の一員として活動を開始しました。2016年度、環境負荷の低減に配慮した優れた製品・サービスの一定程度の普及がなされたと判断し、エコプロダクツ大賞推進協議会は解散し、同賞の実施も終了しました。 P53  6.エコ通勤優良事業所認証制度の実施(2009年度〜)   エコ通勤とは、「クルマから、環境にやさしいエコな通勤手段に転換すること」です。  この取り組みを推進するため、2009年6月に、エコ通勤を積極的に推進している事業所を優良事業所として認証・登録する「エコ通勤優良事業所認証制度」が創設されました。交通事業者団体や経済団体、関係行政機関等からなる「公共交通利用推進等マネジメント協議会」が認証機関となり、国土交通省と当財団が共同で認証制度の事務局を運営しています。  2009年6月に「エコ通勤優良事業所認証ロゴマーク」を定め、登録事業所が使用できるようにし、2010年3月にはパンフレット「エコ通勤優良事業所の認証を取得しませんか?」を、2012年4月にはそれを補足するリーフレット「エコ通勤に取り組みませんか」を公表し、普及啓発に努めました。  また、環境保全に関して公共交通機関の利用を促進する活動に積極的に取り組み、顕著な功績のあった事業者等に対して国土交通大臣より表彰状が授与されることとなりました。  2017年度に「エコ通勤認証・普及等委員会」を立ち上げ、プロモーション戦略の刷新を開始しました。マーケティング理論の一概念であるカスタマージャーニーを検討した上で、その段階とターゲットを明確にしたツールの見直し方針を定め、先行して2018年6月に「エコ通勤優良事業所認証ロゴマーク」を更新し、リブランディングを行いました。2019年6月には、それをブロンズ、シルバー、ゴールドで囲み、それぞれ満10年以上、満20年以上、満30年以上の登録事業所が使用できる「長期継続認証ロゴマーク」を公表しました。また、マーク等の策定にあたり視覚情報(色、かたち、パターンなど)をVisual Identity(VI)として整理、策定し、2020年1月には、そのVIを適用し、企業・事業所等向けのエコ通勤啓発リーフレットを公表しました。 図版:左:「エコ通勤優良事業所認証マーク」のデザイン更新、右:企業・事業所向けのエコ通勤啓発リーフレット  民間企業のブランディング戦略に携わる専門家も参画する「エコ通勤認証・普及等委員会」のWGで、プロモーション戦略の検討を継続しました。まずはエコ通勤について認知・検討してもらう段階のツールとして、2020年12月には、自治体向けのエコ通勤啓発リーフレットも公表し、ターゲット別にイベント等で広く配布できるようにしました。2021年2月にはコロナ禍でのリーフレット補完ツールを、2021年8月には社会情勢やエコ通勤取り組み内容等の最新の動向を反映した事業所向け・自治体向けの「手引き」を、2022年5月には制度や登録方法を簡潔にまとめた90秒動画を、2023年4月には第3期のツールをまとめ申請方法を視覚的に示した制度説明パンフレットを公表しました。併行して申請様式の押印廃止や改訂・簡素化を進め、2024年5月にはWeb申請フォームも整備しました。プロモーション戦略を刷新する前の2016年度末と比べ、2023年度末時点の登録事業所は184事業所増え、839事業所となりました。 図版:左:自治体向けエコ通勤啓発リーフレット、右:制度説明パンフレット P54 7.交通・観光分野におけるカーボンオフセットの普及(2009年度〜2019年度)   カーボンオフセットは、導入企業の温暖化問題への取り組み姿勢をアピールする手段となるだけでなく、個人を含む幅広い層の自主的な二酸化炭素削減を促進する手段ともなり得るものです。 そこで、我が国の交通・観光分野におけるカーボンオフセットの取り組みを普及させるために、交通・観光事業者がカーボンオフセットを導入する際の諸課題の抽出(排出量の算定方法、オフセット料金の設定・徴収方法、オフセット手段の獲得方法等)と解決方策の検討を2008年度から開始しました。  2009年度は、オフセットする二酸化炭素排出量の算定方法や料金徴収方法等を示した交通・観光カーボンオフセットガイドライン(国土交通省推奨)を作成、公表しました。さらに、2009年度から事業者が運輸・観光関連サービスにカーボンオフセットを導入する際の負担を軽減し、二酸化炭素排出量の算定や排出枠の購入をウェブ上で可能にする支援システムを構築し、運用を開始するとともに、説明会を開催しました。  2010年度は、具体的な導入案を業種別にまとめた事例集を作成・配布するとともに、2010年度から他の事業者のモデルとなりうる取り組みの募集・支援を行いました。  その後、カーボンオフセットが交通・観光事業者に普及しつつあるということが確認できたため、会員事業者には他のカーボンオフセットシステム運営事業者に移っていただき、カーボンオフセット支援システムの運用を2019年度で終了しました。 8.地域内や観光地における電動小型低速車の活用(2016年度〜)   我が国の地方における公共交通の衰退は、マイカーの増加に伴い環境負荷が増大する等の問題を引き起こしています。今後の更なる低炭素社会を見据えたとき、環境負荷の少ない電動小型低速車は、歩行者とも共存できる新たなモビリティとして、地域内における生活の足や観光地での移動手段として、その解決策の一つになることが期待されています。  当財団では2016年度から本事業に取り組み、2014年から公道走行が可能になったゴルフカートの国内の事例調査や活用シナリオの検討、セミナー開催等を行いました。  また2017年度には、北米における電動小型低速車の活用事例を調査するとともに、2018年度の実証実験地(横浜市金沢区富岡、輪島市、松江市)を選定し、実施計画を策定しました。  さらに2018年度には、横浜市金沢区富岡、輪島市、松江市で実証を実施し、大多喜町、利島村、京都市等で試走を行いました。 写真:左:セミナー、右:カルフォルニア州・サンタカタリナ島 写真:左:輪島市、右:松江市 P55  今後の更なる低炭素社会に対応するため、環境負荷が少なく歩行者や車とも共存できる新たなモビリティとして、2016年度より活用や普及に向けた検討をしています。  当財団では国土交通省や環境省等が実施するグリーンスローモビリティの社会実験に参加しつつ、車両貸与や研修会の開催等、導入検討地域への支援活動を実施しています。 写真:左:研修会(座学)、右:ドライバー講習 9.今後のモビリティ・アクセシビリティのあり方の検討(スローモビリティ社会の検討)(2016年度〜)  2016年度より、グリーンスローモビリティの普及を図るため、国内外の事例調査や社会実験のための車両貸与、研修会の開催等、導入検討地域への支援活動を、環境対策部、バリアフリー推進部連携事業として実施してきました。  また、2022年度の当財団内連携事業において、環境負荷が小さく誰もが利用しやすいアクセシビリティのあり方等を検討した結果、今後、スローモビリティ社会の実現に向けてより積極的に取り組むこととなりました。  2023年度からは、引き続きグリーンスローモビリティの社会実験を事業へ繋げるべく、自治体からの協力を得ながらその一層の普及を目指すとともに、新たな研究グループにおいて、モビリティスクーターの試走や実証等を開始するほか、シンポジウムの開催などを通じてスローモビリティ社会の実現に向けた課題の整理や関係者間の情報の共有、意識の醸成等を図ることとなりました。  公共交通が脆弱な地域における生活の足や観光地等での移動手段として、歩行者や車とも共存できるスローモビリティ社会の実現に向けて、2024年度は、自治体等からの協力を得ながら、モビリティスクーターの住宅地区等での試乗を支援するとともに、離島を中心にグリーンスローモビリティやモビリティスクーターの試走・実証調査を継続実施し、有識者の助言のもと、スローモビリティ社会の実現に向けて低速の交通まちづくりを検討し、課題の整理や関係者間の情報共有を行っています。 写真:離島におけるグリーンスローモビリティ/モビリティスクーターの実証調査   P56 10.運輸・交通と環境の発行(1997年度〜)  1997年度から毎年発行している「運輸・交通と環境」は、2015年度からは、「運輸・交通と環境」の英訳版である”Transport and Environment in Japan”を新たに作成、配布しています。本冊子は、国際会議等で配布し、日本における運輸部門の環境問題の現状と対策について、わかりやすく紹介しています。 図版:左:運輸・交通と環境(2019年度版)、右:Transport and Environment in Japan 2019 11.地域における外国人旅行者等の円滑な移動の推進(2017年度〜2019年度)   2013年ごろから訪日外国人旅行者数は、年々増え続けているとともに、ツアーによる団体客より、個人での旅行者が増加しており、これら個人旅行者が円滑に移動できる環境の整備は重要となっています。  しかしながら我が国の公共交通機関は、特に地方部や中山間地域などでは衰退しているところが多く、また生活路線となっているため、複数の観光地を巡るような路線となっているところは少なくなっています。また、路線図や時刻表などの案内も外国語表記をおこなわれているところはまだまだ少なく、移動手段のわかりにくさや利便性の低さは、再来訪の妨げや、レンタカーへの転換といった要因となっています。  そこで当財団では、地域において外国人旅行者等が目的地まで円滑に移動するための交通機関の改善や案内情報の充実化などの取り組みを普及推進する支援事業を2017年度から2019年度にかけて実施しました。  具体的には公募を行い、22件の応募があった中から第三者委員会において審議を行い、十勝圏二次交通活性化推進協議会と三好市の2団体に支援を行いました。  その後、観光庁をはじめとして、訪日外国人旅行者向け対策の支援策が多く実施されているため、本支援事業は2団体への支援だけで終了しました。 P57 表:支援団体の取組概要 左から実施団体名 取組概要 十勝圏二次交通活性化推進協議会 バス停表示の多言語化や空港連絡バスの券売機見直しの他、バスとタクシーを使ったツアーの開発やタクシードライバー用コミュニケーションボード(英語、中国語(繁体、簡体))の作成などを行いました。 三好市 市内の主要4駅周辺の観光地図や周遊マップを作成したほか、観光用に用意している小型モビリティの利用促進などを行いました。 P59 参考資料 事業推移【創立21年〜30年まで】:省略 出捐団体一覧:p65 賛助会員名簿:p66 役員の変遷:省略 評議員の変遷:省略  P60から62 事業推移【創立21年〜30年まで】:省略 P64 出捐団体 (公財)日本財団 鉄道関係:北海道旅客鉄道(株) 東日本旅客鉄道(株) 東海旅客鉄道(株)西日本旅客鉄道(株) 四国旅客鉄道(株) 九州旅客鉄道(株) 東武鉄道(株) 西武鉄道(株) 京成電鉄(株) 京王電鉄(株) 小田急電鉄(株) 東急電鉄(株) 京浜急行電鉄(株) 東京地下鉄(株) 相模鉄道(株) 名古屋鉄道(株) 近畿日本鉄道(株) 南海電気鉄道(株) 京阪電気鉄道(株) 阪急電鉄(株) 阪神電気鉄道(株)西日本鉄道(株)新京成電鉄(株)泉北高速鉄道(株)北大阪急行電鉄(株)神戸電鉄(株)山陽電気鉄道(株)東京モノレール(株) 海運関係:(一社)日本旅客船協会東京港埠頭(株)名古屋港埠頭(株)大阪港埠頭(株)神戸港埠頭(株) バス関係:(公社)日本バス協会(株)盛岡バスセンター(株)長野バスターミナル草津温泉バスターミナル(株)(株)世界貿易センタービルディング京王電鉄(株)東京シティ・エアターミナル(株)横浜シティ・エア・ターミナル(株)(株)豊橋バスターミナル名古屋鉄道(株)ジエイアールセントラルビル(株) (株)広島バスセンター 鳥取バスターミナル(株) (株)福岡交通センター 九州産業交通ホールディングス(株) (株)別府交通センター 那覇バスターミナル(株) 航空関係:日本空港ビルデング(株) 北海道空港(株) 名古屋空港ビルディング(株) 大阪国際空港ターミナル(株) 福岡空港ビルディング(株) 鹿旧島空港ビルディング(株) 函館空港ビルデング(株) 帯広空港ターミナルビル(株) 仙台空港ビル(株) 山形空港ビル(株) 新潟空港ビルディング(株) 北陸エアターミナルビル(株) 広島空港ビルディング(株) 松山空港ビル(株) 大分航空ターミナル(株) 長崎空港ビルディング(株) 自治体:東京都 北海道 青森県 岩手県 秋田県 山形県 栃木県 千葉県 埼玉県 富山県 石川県 静岡県 愛知県 奈良県 岡山県 広島県 佐賀県 熊本県 横浜市 川崎市 仙台市 金融関係:(株)三井住友銀行 (株)みずほ銀行 (株)三菱東京UFJ銀行 その他:三井住友海上火災保険(株) (一財)日本経済研究所 ダイコー(株) 極東開発工業(株) (株)大成出版社 第一法規(株) (株)ぎょうせい P65 賛助会員(2024年3月時点) 北海道旅客鉄道(株) 東日本旅客鉄道(株) 東海旅客鉄道(株) 西日本旅客鉄道(株) 四国旅客鉄道(株) 九州旅客鉄道(株) 東武鉄道(株) 西武鉄道(株) 京成電鉄(株) 京王電鉄(株) 小田急電鉄(株) 東急電鉄(株) 京浜急行電鉄(株) 東京地下鉄(株) 相模鉄道(株) 名古屋鉄道(株) 近畿日本鉄道(株) 南海電気鉄道(株) 京阪電気鉄道(株) 阪急電鉄(株) 阪神電気鉄道(株) 西日本鉄道(株) 新京成電鉄(株) 泉北高速鉄道(株) 北大阪急行電鉄(株) 神戸電鉄(株) 山陽電気鉄道(株) 東京モノレール(株) (公社)日本バス協会 (一社)全国ハイヤー・タクシー連合会 (公社)全日本トラック協会 (一社)日本物流団体連合会 (一社)全国空港事業者協会 (一社)日本旅客船協会 (一社)日本海事検定協会 東京都 北海道 仙台市 社会システム(株) 矢崎エナジーシステム(株) みずほ証券(株) NTTアドバンステクノロジ(株) ジョルダン(株) (株)Fujitaka 新日本海フェリー(株) (公財)日本海事科学振興財団 P66から69 役員の変遷:省略 P70から73 評議員の変遷:省略 P74 編集後記 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 理事長 門野秀行  財団発展の歴史を振り返り整理するチャンスを与えられたことは、手間はかかりましたが得るものも多く幸運でした。今回はデジタル資料集として編纂する形としましたので、使い勝手には一長一短あると思います。また内容的にもいろいろとご批判はあろうかと思いますが、広く皆様にご一読いただき、財団発展の過程にご理解、ご関心を持っていただければ嬉しく思います。  そもそも今の財団の中で、30年間を通じての在職者は1人もいません。このため、内部の教育的見地からも、若い職員を中心に財団の来し方を学び、先人の苦労や対処を知ることとなれば、今後に向けて刺激やヒントを得られるものと期待します。諸先輩が、バリアフリー分野を中心に、ある意味世の中をけん引し、実績を残してきたこと、あるいは交通環境対策の分野でも、早くから具体的な事業を手掛けてきたことなどを知れば、とても誇らしく、意気に感じてくれるのではないでしょうか。  私たちの仕事は、公益財団法人という制度的枠組みの中で行わなければなりませんので、必ずしも自由自在に振る舞うことができる訳ではありません。財政的な制約も勿論あります。そうした中でも、バリアフリーと交通環境対策の両分野において、引き続き周囲の皆様の幅広いサポートを頂戴しながら、これからも精力的に意義ある取り組みを展開し、新しいことにも挑戦してまいります。改めて30年間に及ぶ財団の諸活動に関与いただいた全ての皆様へ心からの御礼を申し上げ、編集後記といたします。 裏表紙 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団30年史 2024年10月発行 編集・発行 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 〒112-0004 文京区後楽1-4-14 TEL03-5844-6264(代表) FAX03-5844-6294 https://www.ecomo.or.jp/ 無断での転載および転写は堅くお断り致します。Copy Rights Reserved. おわり