バリアフリー推進事業

2024年度 一般部門 成果報告

研究助成名

公共交通機関をベビーカーで利用したいと考える保護者支援とは 〜多胎児等家庭保護者の捉えを資料として〜

研究者名

船橋情報ビジネス専門学校  生越 雅志

キーワード

子育てバリアフリー、多胎児、公共交通機関、双子用ベビーカー

研究内容

(研究目的)
子供を連れて外出する際には、電車やバス、自家用車、自転車やベビーカー利用など様々な移動方法が考えられる。しかし、多胎児(双子や三つ子など同じ母体から同時期に発育して生まれた複数の子供)や年子(一つ違いで生まれた兄弟姉妹で学年は問わない)(以下、本調査では「多胎児等」とする)を連れて外出する家族の苦慮に関しては明らかになっていない。 そこで、多胎児等をもつ保護者から、公共交通機関利用の際の工夫や困難さなどの具体的な意見を集め、子育て当事者の声を集めた事例集を作成し、公共交通機関の事業者や自治体に配布し、運用の参考にしてもらう。さらに、多胎児等をもつ保護者にも、配布し外出時の工夫や移動を容易にする方法等共有し啓発することが目的である。

(研究手順)

アンケート調査とヒアリング調査を行った。
アンケート調査では、実際に多胎児等をもつ保護者から、公共交通機関の移動手段や移動の実態及び苦慮している点(安全意識)、公共交通機関を利用した移動の工夫や希望を把握した。配布先は、子育て支援関係の施設・団体・サークルや自治体とし、アンケートを手渡し及び郵送にて配布回収した。
ヒアリング調査:多胎児等のいる保護者約15人に、直接30分〜60分程度、公共交通機関利用時の工夫や困難事例など具体的な状況を確認した。ヒアリング項目はアンケート内容を基本とし、半構造化インタビュー方式とする。

調査結果を集計、分析し自由記述等はテキストマイニングを行った。

(研究成果)

【アンケート調査結果】

    (1)調査方法と回収率

アンケート調査期間:2024年5月〜9月
対象者:ベビーカー等を利用している当事者
(アンケート回収率29.2%、アンケート回答者339人、(ヒアリング回答者15人含む)

    (2)回答者の基本属性

回答者の性別:男性 30人、女性 320人、その他 2人(ヒアリング回答者含む)である。年齢構成は24歳以下 6人、25〜29歳 39人、30〜39歳 130人、40歳以上 157人、無回答 20人(ヒアリング回答者含む)となった。

子どものきょうだい構成は多胎児等が95家族、一人っ子164家族、多胎児等以外二人以上77家族、その他3家族で、合計1160人となった。

(3)外出時の移動方法や頻度等

外出時の頻度は、多子世帯(多胎児以外2人以上)については外出頻度が最も多く、きょうだい児が多いとよく外出していることがわかるが、一方で、多胎児等が最も低いことがわかった。公共交通機関を利用した外出時間については、多胎児等は最も時間が短い60分以内が36.8%と多い結果となった。一方で一人っ子は外出時間が長い傾向が見られた公共交通機関を利用する際にベビーカーの状態をどうしているかを尋ねたところ、電車では7割近くが子供を乗せたまま利用しているが、バスにおいてはいまだ畳んでいる当事者が多かった。タクシーにおいては、車椅子対応の車両もあるもののベビーカーを折りたたまずに乗れる車両が少なく周知されていない。
(4)公共交通機関への希望
タクシーにおいては費用を補助している自治体もあるため、タクシーチケットの利用について尋ねた。多胎児等はタクシーチケットを期待している割合が6割を超え、多胎児等以外においてもチケットが利用できるとしたら利用したいと考える当事者が半数以上いることが分かった。
(5)希望する公共交通機関について
ベビーカーに子どもを乗せたまま乗車できるスロープ付き介護タクシーが利用できるとしたら、利用したいか尋ねたところ、利用したいと考える当事者が半数以上いることも分かった。さらに、車両のフリースペースの希望を尋ねたところ、半分フリーが「望ましい」といった声が多い、一方で、全部がフリーの場合は「望ましくない」といった声が多かった。車両の半分のフリースペースを「望ましい」といった理由として、他乗客からの視線が気になるの声が多い、一方で、車両の全部がフリースペースは「望ましくない」といった理由では、他乗客も利用する中で子連れのみが優先される必要はないと考える声が多かった。都市部を中心に時間帯によって女性専用車両があるように、子連れ専用車両を期待する声も多かった。
(6)自由記述
公共交通機関を自由に作れるとしたらどのようなものを作るかを尋ねたところ、多胎児のお子さんの子育て当事者からは、「広いスペースやフリーなスペースがある」「ベビーカーをたたまずにタクシーが利用できる」「乗り降りがしやすい、ノンステップ、スロープを付ける」「子どもや子育て当事者を優先とした車両をつくる」というような声が多かった。
【成果物】
アンケート調査及びヒアリング調査の結果を整理し、関係者等に配布できる冊子を3000部作成した。タイトルを「子育て当事者がもとめる・1160人のこどもたちのいま【公共交通機関をベビーカーで利用しやすくするために〜多胎児を育てる子育て当事者の声を中心に〜」とし、8ページフルカラーとした。
自由記述から得られた、あったらいいなと思う車両についてイメージイラストにおこした。
【配布】

3000部印刷し、アンケート協力施設及び首都圏公共交通関係機関に配布した。