発達障害や認知症者などの外からは見えにくい障害がある人が安心して航空機を利用できるようにする為の環境の整備に関わる調査 ―新千歳空港をフィールドに[気持ちを落ち着かせる為の場所]の実証実験を通してー
中央大学 研究開発機構 丹羽 菜生
発達障害、航空機利用、カームダウンクールダウン、センサリールーム
(研究目的) (研究手順) @実態把握のための調査:日本の空港で設置されているカームダウンクールダウンに関する調査を行う(室の広さ、照度、騒音)。 A 航空機を利用する旅行について感じている、空港や航空機などの場面における現状の課題把握を行う(アンケート実施14名)。 B 現在、空港でトライアルを実施している[ストラップ]の実証実験と合わせ、環境の整備として、気持ちを落ち着かせることができる仮設スペース設置による実装実験において利用調査を行う(利用者数)。 C それらを組み込んだ実際の航空機利用を仮定した実証実験により、利用動機等の心理的指標の変化から、環境側の障壁の解消の有効性を示す(4名を対象に実施(※新札幌駅?新千歳空港内))。生体評価と主観評価を用いて考察を行う。 D 関連事業者へ環境側・社会側の障壁の除去の理解を促す(3月18日に実施予定) (研究成果) 今回の旅行に関わるアンケート回答者から、飛行機を利用する旅行では、他人がいることによる不安が大きいこと、さらに旅行検討時に不安になったときに気持ちを落ち着かせるような場所があるか分からないことなどで旅行を躊躇する場合があることがわかった。 生体評価と主観評価を合わせてみると、本調査で検証したような場所の存在は、感覚過敏や感覚回避が高い今回対象とした被験者にとって心理的、物理的障壁の除去として一定程度有効となるとことが分かった。 一方で、自身の感覚状態を内省して自己方策等によって対応が可能な者にとっては、今回のようなスペースでの休息以上に、自己方策が効果的であることも示された。 外出・旅行行動をとるうえで、感覚過敏などからくる緊張や不安の除去の方策として、感覚状態を内省して自己方策などを知ることがあり、それも難しいような障害特性や状況に対して、今回のような場所は貢献しうる場所になるということが伺える。 今後の課題として、特別な場所でなくとも自己方策で安静を得られる当事者に対して、どのようにそれらに適する場所を事前提示できるかという点において、今後の発展的な検討として進めて行く。 |