障害者等用駐車区画・バリアフリートイレの利用状況把握システムの開発
早稲田大学大学院 人間科学研究科 金賀 駿
利用状況把握,障害者等用駐車区画,バリアフリートイレ,車いす,IoT,スマート
(研究目的) (研究手順) まず,スマホアプリの開発と利用状況検知デバイスの開発を行う.次に,車いす ユーザおよびその家族に対してアンケート調査を行い,本システムおよびスマホア プリの需要や有用性,見やすさについて検討する.さらに,一般住宅の駐車場で2 週間の実証試験を行い,装置の防水性,耐久性,電源の持久力等を検討する. (研究成果) 【利用状況把握システムの概要】 システムの概要を図1に示す.本システムは駐車場の利用状況を検知し,Wi-Fi で Google スプレッドシードに送信し,スマホに表示するというシステムである.子 機では,防水距離センサとマイコンボードで駐車状況を検知し,その情報を無線モ ジュールで親機に無線で送信する.親機では,子機または中継機からの情報を受け 取り,Wi-Fi 通信が可能なマイコンボードで Google スプレッドシートに送信する (Wi-Fi 経由).また,ソーラー充電池により電源供給を行った. 【スマートフォンアプリの概要】 スマホアプリは,メイン画面, 施設検索画面,マップ画面,設定 画面の4つで構成されている.メ イン画面(図 1 右)では,登録し た施設における車いす用駐車場ま たはバリアフリートイレの利用状 況が表示される.詳細ボタンを押 すと,利用開始時間や直近2週間 の利用状況から予想される混雑度 も表示される.施設検索画面で は,よく利用する施設を検索し, 図2 マップ画面の概要 先ほど紹介したメイン画面に登録することができる.マップ画面(図2)では,地 図上で空きのある駐車場が表示される.車のマークをタッチすると,詳細が表示さ れ,メイン画面に登録することもできる.設定画面では,利用したい施設に利用状 況把握システムが導入されていない場合に,導入のリクエストを送ることができ る. 【アンケート調査】 本システムおよびスマホアプリの需要や有用性を検 討するため,車いすユーザとその家族 63 名(男性 34 名,女性 29 名,39.4±9.8 歳)に対してアンケート調 査を行った.まず,外出時に車いす用駐車場およびバ リアフリートイレが埋まっていて困った経験はあるか という質問(4件法)に対して,駐車場では 89%,ト イレでは 94%が「よくある・時々ある」と答えた.ま た,利用状況を知りたいと思うことは 図3 本アプリを日常的 に使いたいか あるかという質問に対して 95%が「よ くある・時々ある」と答えた.本アプ リを日常的に使いたいかという質問に 対しては,95%が「とても使いたい・ まあまあ使いたい」と答えた(図3). 各画面の有用性および見やすさの評価 については 0?10 で得点化しており, 表1 各画面の評価得点の平均値(0-10) 有用性 見やすさ メイン画面 7.84±1.90 7.31±2.26 検索画面 7.30±2.36 7.59±2.16 マップ画面 8.64±1.91 8.16±2.06 設定画面 7.38±2.41 7.56±2.34 表1の通りとなった.特に,マップ画面に対する評価が高く(次いでメイン画面), カナーナビとの連携が取れればさらに利用しやすくなると考えられる. 【実証実験】 開発したデバイスを実際に稼働させ,防水性,耐久性,電源の持久力等を検討す る必要があるため,一般住宅の駐車場で2週間の実証試験を行った.実証実験の結 果,97%の精度で利用状況を把握できていたが(雨天時に誤認識),100%でないと 導入は難しいため,プログラムおよびハード面の調整をする必要がある.本装置の 部品は防水対応のものを使用しているため,実験終了後,内部への水漏れはなかっ た.汚れについては,距離センサ部に砂埃がかぶっていたが,動作には影響がなか った.ただし,数ヶ月・数年単位になると汚れが蓄積して誤動作する可能性がある ため,スプレー等による自己清掃機能を取り付けることも検討する必要がある. |
図1 利用状況検知システムの概要
図2 マップ画面の概要
図3 本アプリを日常的 に使いたいか
表1 各画面の評価得点の平均値(0-10)