バリアフリー推進事業

2022年度 一般部門 成果報告

研究助成名

誰もいない場所での自の見えない人・見えにくい人に対する移動支援

研究者名

金沢工業大学 くにお

キーワード

視覚障害ナピゲーション単独歩行音声案内スマートフォン

研究内容

(研究目的)
目の見えない人・見えにくい人の移動手段としては、歩道等の点字ブロックやスマ ホの GPS 機能を用いた誘導がある。また、同行援護者や周囲の人に導かれての移動 もあるが、目的を達成するまでに必ずしもそのような条件が整わず、周囲に誰もい ない状況が生じることがある。このような状況での移動支援の実現は、自の見えな い人・見えにくい人を目的地まで安心安全に導くことが可能となる。

(研究手順)

研究手順 視覚障害者がよく利用する施設において、コード化点字ブロック及びコード化点字 ブロックアプリを用意し、以下の手順で実証実験を行なった。 @コード化点字ブロックの概要説明 Aコード化点字ブロックアプリのダウンロード B歩行順路の説明 C実際の体験 D体験後のアンケート回答 Eフリーディスカッション

(研究成果)

新型コロナの影響があり、当初予定していた高知、岐車での実証実験の機会を持 てなかったが、川崎、大阪、高知で計 1 7 名の視覚障害当事者の協力を得て実証実 験を行えた。参加した当事者の方々からは概ね好意的な評価を受けた。特に音声案 内のないエレベーターやトイレの個室内などの情報は、得たいと感じた時に有効で あることと、ターミナル駅やパス乗り場などの情報も得たいと考えている当事者が 多いことが示唆された。 コード化点字ブロックのシステムは、一般の人にも案内情報として使えるもので はあるが、視覚障害者の役に立つものであるとの認識が広がることが重要である。 アプリの使用感は体験してみないとなかなかわからない。普段スマートフォンは使 い慣れているが、何かをカメラで捉えるという行為はしないため、カメラの向きを どうコントロールするかは慣れが必要である。 コード化点字ブロックを普及させるためには、スマートフォン操作が極力簡単で 直観的である必要がある。今回の実験では、コード化点字ブロックが敷設されてい ることは、方向を知る、必要な情報を得る上で十分に有効であることが理解された が、カメラの向き、歩くスピードなどにある程度の慣れが必要で、場合によっては 健常者からアドバイスを受けながら歩くことも必要であることが伺えた。カメラか らの情報に注意を向けすぎると、周囲の環境に注意が向かなくなる傾向もあり、適 宜バランスをとることと、安全を確保した上で情報を取るなどの工夫も必要であ る。 その他、必要と思われる情報でもテキストが長すぎると覚えられない、方角を入 れてほしいなどの情報提供の方法にも課題があることがわかった。同じスマートフ オンでもパージョンが違うと操作に違いがあり、同じ場所でも昼夜の光の関係で誤 認識をするなど課題があることもわかった。 視覚障害者の単独移動は一つのアプリで全てが解決するわけではない。今後さら に移動の際の課題可決のための研究を積む必要がある。