バリアフリー推進事業

2022年度 一般部門 成果報告

研究助成名

高齢介護者における身体機能および車いす操作の介助能力からみた道路のバリアフリー化に関する研究

研究者名

東京国際大学 医療健康学部 理学療法学科  酒井美園

キーワード

高齢介護者、身体機能、車いす操作、バリアフリー

研究内容

(研究目的)
高齢者人口の増加にともない、介護者・要介護者の双方が75歳以上同士の組み合わせの割合は増え、老々介護は増加している。道路のバリアフリー化が整われてきているなかで、車いす利用者の中でも特に高齢の介護者において、実際にどの程度車いすを介助しながらの安全な外出ができるのか、といった実態の把握はなされてきていない。本研究では、75歳以上高齢者を対象に、様々な障壁に対する車いす操作の介助能力の実態把握、および操作能力と身体機能との関係性を理学療法士の立場から調査・分析し、道路のバリアフリー化の在り方について提言することを目的とした。

(研究手順)

対象は、健常な大学生および地域在住の75歳以上高齢者とし、全員女性とした。方法は、身体機能の評価(ロコモ度、5m歩行速度、TUG、片脚立位、握力)、車いすに60kgのダミー人形をのせた状態での車いす操作能力の評価(車いすを押しながらの5m歩行速度、3m先のコーンを回る課題、キャスター上げ課題、登坂および横傾斜路の課題、脱輪した状態からの復旧)を行った。

(研究成果)

5m歩行(普通)および車いすを押しながらの5m歩行(普通)を除いた全てにおいて、身体機能や車いす操作能力が高齢者は若年者よりも低下していることが示された。車いす操作に関して、登坂および横傾斜路では、ロコモ度が進行しているほど、動作にかかる時間が有意に長かった。キャスター上げは約1/4の高齢者が困難であった。今後、高齢介護者に対し、身体機能の向上により車いす操作の能力を高めること、車いす操作の介護指導をしていくことが重要といえる。また、アクセシブルデザインの考え方に基づき、高齢介護者が操作しやすい構造、機能をもつ車いすの開発・普及が求められると考えられる。一方で、我々が生活する地域には、厳しい傾斜をもつ路面や段差が多い。今回の研究結果が街の構造づくりやシステムづくりに寄与されるよう関係各所への啓発についても進めていきたい。

 

図:車いすをおして3m先のコーンをまわる課題

図:車いすをおして3m先のコーンをまわる課題

(左図)点線の枠の中にセットされた車いすを、ブレーキをはずしてスタートさせ3m先のコーンを回り再び点線の枠の中に車いすをセットしブレーキをかける。

図:キャスター上げ課題(10pの段差)

図:キャスター上げ課題(10pの段差)

図:横傾斜路の課題 (左へ1.7度の傾斜)

図:横傾斜路の課題 (左へ1.7度の傾斜)

図:登坂の課題 (4.5度の傾斜)

図:登坂の課題 (4.5度の傾斜)

図:脱輪からの復旧課題

図:脱輪からの復旧課題