移動円滑化に資する鉄道駅の簡易委託化に関する研究
龍谷大学政策学部 石原 凌河
簡易委託駅、鉄道駅、地域管理、改正バリアフリー法、移動円滑化
(研究目的) (研究手順) @JR西日本管内及び西日本地域の第3セクター路線の鉄道駅のうち、鉄道要覧を用いて簡易委託駅を判別。 A資料調査により、西日本地域に簡易委託駅73駅をデータベース化し、簡易委託駅の実態について網羅的に把握。 B若桜鉄道、JR木次線、JR芸備線、JR小浜線、JR日豊本線の簡易委託駅計26駅を対象に、簡易委託駅の管理・運営実態を把握するため、駅舎管理者へのヒアリング調査を実施。 (研究成果) 本研究では、@簡易委託駅の管理運営の実態、A簡易委託契約を行った要因、B簡易委託駅の管理者による要配慮者への介助の実態の3点を明らかにした。 まず、簡易委託駅の管理運営の実態として、簡易委託駅の駅舎管理主体を業種ごとに分類したところ、「自治体型」、「観光協会型」、「個人商店型」、「市民型」、「第三セクター型」、「交通事業者型」、「福祉団体型(社会福祉協議会や障害者支援団体)」、の7種類に分類することができ、多様な主体が鉄道駅の管理を行っていることが明らかとなった。簡易委託化に関する契約や支援の実態について明らかにしたところ、地方自治体が簡易委託化開始継続に大きな影響を与えていることが示唆された。また、鉄道事業者は譲渡後の駅舎の管理・運営には、直接関わっていないことが示唆された。 駅舎の管理主体ごとの運営実態を明らかにしたところ、自治体型では鉄道駅に対する金銭的な支援が手厚く行われている点、観光協会型では地方自治体が指定管理者制度を用いて観光協会を駅舎の指定管理者とし、地方自治体から職員雇用や駅舎管理に対する委託料が観光協会に支払われている点、地方自治体が観光協会と委託契約を結び、切符の販売業務が委託されているという点、個人商店型では賃借料が免除されている点、市民型では地方自治体が駅舎を所有しており、地域の市民団体によって駅舎の管理が行われている点、福祉団体型では委託料が発生しており、家賃を支払っている点がそれぞれ特徴的であることが示唆された。 簡易委託契約を行った要因について明らかにしたところ、簡易委託化に関する契約や支援の実態について明らかにしたところ、地方自治体が簡易委託化開始継続に大きな影響を与えていることが示唆された。また、鉄道事業者は譲渡後の駅舎の管理・運営には、直接関わっていないことが示唆された 簡易委託駅の管理者による要配慮者への介助の実態について明らかにしたところ、簡易委託駅では、管理者が利用者に声掛けや介助を行っていたこともあり、鉄道の利便性の確保や障害者の移動の自由の確保に貢献していることが示唆された。障がい者などの要配慮者が駅に訪れたとしても、管理者の手によって迅速に対応できることが鉄道駅の簡易委託化の大きな効果であると考える。一方で、JR西日本の方針により、駅管理者による要配慮者への介助が一律で禁止されているために、駅管理者の介助ができないと回答した簡易委託駅が散見されたことから、たとえ簡易委託化して管理者が鉄道駅に常駐したとしても、要配慮者の利用が困難を生じる可能性が高いことが示唆された。 以上の研究成果を踏まえて、@鉄道事業者以外の主体が鉄道駅舎の管理運営をスムーズに担えるための制度の整備、A立地適正化計画の事業の一環として鉄道駅の再整備と併せた駅舎の簡易委託化の推進、B地方自治体や他の民間事業者に駅舎の管理・運営を任せるための議論の場の必要性、C介助が必要な場合の鉄道事業者と簡易委託駅の管理者との役割や責任問題を明確にした上で、障害者や高齢者の利便性を確保するために介助を認めること、の4つの内容ついて提言を行った。 |