MaaSおよび新モビリティサービス時代の交通システムの 災害発生後バリアフリー交通における活用可能性に関する研究
呉工業高等専門学校 環境都市工学分野 神田 佑亮
電動キックボード,MaaS,デマンド交通,非定常時交通
(研究目的) (研究手順) ・既存のAIオンデマンドシステムのユーサビリティ評価 ・高齢者の特性を考慮したAIオンデマンド予約システムのGUIの検討 ・電動キックボードの適応性に対する試乗・悪路走破性実験 ・災害発生時等の条件不利環境下でのMaaS・新モビリティの在り方 (研究成果) の検討,A近距離生活移動を支える交通手段としてのマイクロモビリティ(電動キックボード)の活用可能性の検証,の2点について,高齢者等のユニバーサルな面も意識して,以下の内容について調査・研究を行った. 1.既存のAIオンデマンドシステムのユーサビリティ評価 AIオンデマンド交通は,路線バスのサービスと比較して,乗降できる場所を柔軟かつ機動的に増やしたりすることが可能である.すなわち,公共交通利用時のアクセス・イグレス距離を短くすることが可能であり,サービス水準を高くすることができる.しかしながら,AIオンデマンド交通の普及状況を見ると,こうした特性が十分に発揮できているとは言い難い.AIオンデマンド交通の予約はスマートフォン等インターネットを通じて行われることが多いが,一方で高齢者にとって使いやすいシステムを提供することが必要不可欠である.このような課題認識から,本分析では既存のAIオンデマンド交通予約・配車システムを対象とし,利用者利便性の評価を行なった. 現在我が国で実際に利用されているサービスの予約サイトを対象に,より,3社のサービスを対象に,6名のモニター(全員若年層)による項目別の評価時間を計測した. 要していることが明らかとなった.C社の画面は,地図での探索画面に遷移する方法がわかりにくく,かつ,用いられている地図上で目的地を探しにくい特徴があった. 2.高齢者の特性を考慮したAIオンデマンド予約システムのGUIの検討 同時期に実証実験で取得したモニターの利用実験では,AIオンデマンド交通の利用者のほとんどが高齢者であった.発着の時間帯や出発地・目的地の傾向を見ると,ほとんどの利用者が朝の時間帯に郊外の自宅を出発し,昼前に自宅に戻る移動パターンであった.訪問先は,買い物単体か,通院が主目的であり,ついでに買い物に行き,戻るというパターンであった. 上記のように移動のパターンがある程度限定されることから,一方で上記の実証実験ではほとんどが電話予約のみであったことから,@GUIの改善点として,あらかじめパターン化されることから,時間帯に応じてよく使う目的地をすぐにレコメンドできるようにするとともに,A利用者へのコミュニケーションとして,時間を要する初期登録の段階で対面で設定し,上記の行動パターンも登録する,などの対応が必要である. なお,上記について災害時での活用を想定した場合,災害発生後の目的地が行政手続きのために市役所等の行政機関や,病院や食料品や日用品の買い物施設,経済活動の復旧後は職場といった目的地が増加する.災害発生後はこうした施設を乗降スポットとして登録し,上記のように利用の抵抗のない状態を整える必要がある. 3.電動キックボードの適応性に対する試乗・悪路走破性実験 電動キックボードについては,乗車経験のある人は少ない.特に,高齢者については乗車経験のある人はほとんどいないものと思われる.本研究では,国営公園内の周回路(約5km)を対象に電動キックボードの体験走行利用を行った16歳?72歳の利用者(229名)を対象に,走行性・安全性による評価を行った. 分析の結果,1時間程度の走行は受容できることや,高齢者も簡単に乗れ,評価も高かったことが明らかとなった.一方で,段差やブレーキにより危険を感じたことも指摘された.電動キックボードから得たGPSの情報を解析すると,インターロッキング路面が不安定な箇所では徐行しながら通行して対応していることも確認された. 4.災害発生時等の条件不利環境下でのMaaS・新モビリティの在り方 AIオンデマンド交通交通は,路線設定の柔軟さ等から,利用者ニーズへの対応力も高いが,予約webサイトやアプリの操作性の難しさが,MaaSが持つポテンシャルを阻害している.筆者らの平成30年7月豪雨の対応の経験から災害発生時のMaaSの活用を想定した場合,こうしたモビリティサービスや,移動手段を失ったりした中で,一方で復旧や復興等の活動のために移動需要の変化に対応するためには,サブスクリプション(乗り放題)の導入による,移動の負担感の緩和も必要である.加えて,電動キックボードは機動力を有し,ある程度の高齢層でも対応できることから,こうしたモビリティを含めた被災時の交通BCPを考案しておくこと,新たなモビリティを若者向けの乗り物と偏って捉えずに,普段から触れて慣れておくことが必要である. |