バリアフリー推進事業

2021年度 一般部門 成果報告

研究助成名

地方都市におけるタクシー&バスライド導入による高齢者の活動拡大への効果と導入課題に関する研究

研究者名

東京理科大学理工学部土木工学科 鈴木 雄

キーワード

タクシー,バス,高齢者, 乗り継ぎ

研究内容

(研究目的)
タクシー&バスライドの導入による高齢者の活動への効果検証 タクシー&バスライド導入のための課題整理

(研究手順)

@タクシー&バスライドの法的・制度的課題把握のための有識者ヒアリング A運営側の課題把握のための交通事業者・自治体担当者ヒアリング Bタクシー&バスライドの利用意向把握のための住民アンケート C実際の利用による課題把握のための乗車体験および体験後のヒアリング  以上を秋田県秋田市・愛知県豊田市のそれぞれで実施

(研究成果)

1.研究の背景と目的  高齢化が進展する我が国において、高齢者のラストワンマイルの移動手段確保が重要となる。本研究では、路線バスとタクシーの乗り継ぎを前提とした運賃施策(タクシー&バスライド)について検討を行った。タクシーだけで広域な移動を行うには運賃が高額になる。自宅付近のバス停までタクシーで送迎し、そこから路線バスに乗り換えることで安価に広域な移動を実現しようというものである。以下に研究の成果を示す。 2.タクシー&バスライドの法的・制度的課題  路線バスと一般タクシーでは、乗合事業と乗用事業と事業の携帯が異なるため、単一事業者だろうが、異なる事業者であろうが連続的な運賃を設定することはできない。タクシー&バスライドの仕組みを実現するためには、事業者同士の取り決めにより、乗り継ぎが発生した場合にそれぞれ(もしくは一方)が負担して利用者に便宜を図ることになる。そのための証憑が必要になるため、乗り継ぎ券を発行するか、事前に通しの乗車券を発行しておくかの対応になる。 3.事業者側からの課題  タクシーは新型コロナウィルスの影響により利用者が大幅に減少した。空車時間を利用した施策の実施には好意的であるが、値引きにより収入や運賃受け渡しの際の煩雑さが課題として挙げられた。タクシー&バスライドの仕組みを実現するためには、タクシー事業者側もバス事業者側も現状の運行を妨げない範囲で、減収する場合には自治体などからの補助を求めている。 4.住民アンケートによるタクシー&バスライドの利用意向  本研究では、タクシー&バスライドの利用意向を把握するために、秋田県秋田市および愛知県豊田市の高齢者に対しアンケート調査を実施している。その結果、秋田市では720票、豊田市では915票の有効回答を得ている。アンケート調査の結果から、タクシー&バスライドの利用意向に関する主な分析を示す。  自宅から駅まで行く場合の移動についてタクシー&バスライドの利用意向を質問した。[タクシー予約][運賃][乗り継ぎ環境][乗り継ぎ時間]の水準を設定しL9直交表により9つのプランを作成し、それぞれの利用意向・利用した場合の外出頻度の増減・利用した場合の活動範囲の増減について質問している。[運賃]は便宜的にタクシー利用の運賃としている。ここでは、例として秋田市で実施した結果について、利用意向のものを示す。  タクシー&バスライドの利用意向について、最も良いプランの[A:当日予約・運賃100円・施設併合の乗り継ぎ場所・乗り継ぎ時間5分]の場合、現在から利用したい高齢者は21.4%、将来も含めて利用したい高齢者は78.0%となった。これらの結果について、目的変数を現在からの利用意向(1 or 0)とした、非集計での2項ロジスティック回帰分析を行った。各プランの利用意向と、2項ロジスティック回帰分析の結果を表に示す。標準偏回帰係数の絶対値をみると、[運賃]>[当日予約ダミー]>[施設併合ダミー]>[乗り継ぎ時間]となっており、この順に利用意向への影響が大きいことがわかる。パラメータの符号をみると、[当日予約ダミー]、[施設併合ダミー]が正となっている。一方で、[運賃]、[乗り継ぎ時間]が負となっている。運賃が高くなることや、乗り継ぎ時間が長くなることで利用意向が低下する基本的な特性の確認ができた。また、タクシー&バスライドの利用による外出頻度の増加や、活動範囲の拡大も、利用意向と類似の傾向であった。 表 各プランの利用意向と2項ロジスティック回帰分析の結果 5.実際の利用体験によるタクシー&バスライドの課題把握  実際にタクシー&バスライドを利用した場合の課題を把握するために、秋田市で9名、豊田市で10名の乗車体験と乗車体験後のヒアリングを行った。ヒアリングの結果、比較的若い年齢の高齢者では、タクシー&バスライドの利用意向が高く、駅前での駐車場代がかからないことのメリットなどが挙げられていた。一方で、手押し車を利用している年齢の高い高齢者ではタクシーやバスそのものの利用ができない課題なども挙げられていた。タクシー&バスライドの実施においては適切な利用対象を設定することと、施策を利用できない人への対応も必要となる。

5.実際の利用体験によるタクシー&バスライドの課題把握  実際にタクシー&バスライドを利用した場合の課題を把握するために、秋田市で9名、豊田市で10名の乗車体験と乗車体験後のヒアリングを行った。ヒアリングの結果、比較的若い年齢の高齢者では、タクシー&バスライドの利用意向が高く、駅前での駐車場代がかからないことのメリットなどが挙げられていた。一方で、手押し車を利用している年齢の高い高齢者ではタクシーやバスそのものの利用ができない課題なども挙げられていた。タクシー&バスライドの実施においては適切な利用対象を設定することと、施策を利用できない人への対応も必要となる。

 

表 各プランの利用意向と2項ロジスティック回帰分析の結果