バリアフリー推進事業

2020年度 若手研究者部門 成果報告

研究助成名

こども連れ移動時の安全性と利便性の両立をめざした子供と乗る自転車

研究者名

法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科 山田泰之

キーワード

自転車,子供の乗せ自転車,安全性,人間中心設計

研究内容

(研究目的)
今後の都市部へのさらなる人口集中時の持続可能な社会生活において,こども連れ移動時の安全性と利便性の両立を実現し,さらなる全員参加型社会の推進を実現する.

(研究手順)

同乗する子供の乗車時と乗り降り時双方の安全性を確保するため,子供の搭乗位置の検討と,子供の保護を行う補助具の追加を検討した.これらの検討では,実験自転車を作成して子供の簡易ダミーを用いて,自転車事態の運転性・操作性,転倒時の子供のHIC(頭部の衝撃指数)の比較した.

(研究成果)

  1. 1.研究成果概要

日本の都市事情に適応しつつ,子供乗せ自転車への子供の搭乗と移動時の安全性,転倒時のリスク低減を目指した子供乗せ自転車を開発した.一般的な子供乗せ自転車の子供の重心高は約1000 mmであり,転倒時の子供の頭部に与える衝撃(HIC)が高く脳障害のリスクがある,また,重心の高い自転車は走行安定性が低い課題があった.そこで,後輪を小径化して子供の乗車位置を下げることにより,子供の乗せ自転車の転倒時の子供への衝撃を低減した.また,転倒時の子供の保護を目的としたロールケージを設置することで,子供乗せ自転車転倒時の子供にかかる衝撃を低減した.実験的に,転倒時の子供頭部への衝撃度合いを表す指数HICを比較した結果.一般的自転車でヘルメットを着用して転倒した際に比較して,提案自転車は,30%の衝撃(HIC)を低減し,安全性を高められることを確認した.

2.研究開発概要
日本では,道路交通法により普通自転車である子供乗せ自転車の長さは1900 mm未満であり,幅は600 mm未満と定められている.また,都市部では,駐輪場も狭く,法規以上にサイズの制約がある.このため,自転車先進国のデンマークなどの自転車専用道路が前提となる環境で活用されている海外製の子供の乗せ自転車は日本では利用が困難である.
そこで,現在の日本の社会事情前提として,子供の安全性を優先した設計を行う.まず,図2に示すように,子供の搭乗する座席高さを検討した.子供乗せ自転車の転倒事故の多くは,走行時ではなく,停車時である.これは座席への乗り降りの不安定性が要因である.そこで,図のように,2歳児〜6歳児が自分で乗り降り可能な座席位置を検討した.次に,低い座席位置を実現するために,自転車後輪を12inchに小型化した.この際に,運転や押して操作する際の操作性が低下しないか,図3のようにスラローム走行試験により調査した.結果,後輪の小型化しても安定性は低下しないという結果となった.一般的な子供乗せ自転車よりも一般的に車輪が小型化するとジャイロ効果が低下して走行安定性は低下するが,座席位置変更による重心位置の低下は走行安定性を高めるため,総合的に走行安定性は向上したと考えられる.最後に,転倒時の頭部への衝撃(HIC)を図4のように比較実験した.結果,表1のように,ヘルメットの有無にかかわらず,ロールゲージを追加した提案自転車により,子供の安全性が向上することが確認された.

 

 

図1試作自転車

図1 試作自転車

子供の乗り降りと座席高さ

図2 子供の乗り降りと座席高さ

スラローム試験の様子

図3 スラローム試験の様子

図4 転倒実験の様子

図4 転倒実験の様子

表1 各条件時の転倒時最大加速度とHIC

表1 各条件時の転倒時最大加速度とHIC