表紙  第81回バリアフリー推進勉強会 旅客船におけるバリアフリー化推進セミナー@大阪 〈画像説明〉横並びの2枚の写真 左:船内の吹き抜けになっているロビー。受付と2階、3階へ続く階段がある 右:船の外部デッキ。円形の緑の芝がある 『旅客船におけるバリアフリー化の課題』 2026年8月28日 エコモ財団企画調査部バリアフリー推進グループ ��橋徹 1ページ目 1.調査の背景 障害者等の旅客船利用には、様々な課題がある 課題発生の背景 ・「旅客船バリアフリーガイドライン」(以降、「ガイドライン」)の記載内容が十分とはいえない ・「ガイドライン」は、バリアフリー化する際の最低基準(ミニマムリクワイアメント)であるにも関わらず、設計者や旅客船事業者等が最低基準を満たすことだけで設計・施工されていることが多い 調査の目的 旅客フェリーのバリアフリー化の整備に関する実態を把握し、「ガイドライン」改定の方向性等を整理する 調査方法 �@旅客フェリーにおけるバリアフリー化の実態調査(3隻で実施) �A旅客フェリーに乗船経験がある障害当事者との意見交換会 2ページ目 「ガイドライン」とは 〈画像説明〉左側に旅客船バリアフリーガイドラインの表紙、右側にガイドラインの中の乗降用設備/舷門の画像 吹き出しで、上から「設備項目」、「基本的な考え方」、「バリアフリー基準(移動等円滑化基準)」、「基準・推奨の仕様」の順で掲載されている 「基準・推奨の仕様」は、設備等で求められる仕様であり、基準が黒文字、推奨は青文字と文字の色分けがされている 3ページ目 ガイドラインの更新状況比較 縦12×横3の一覧表 縦軸はガイドラインの改訂があった年度、横軸はガイドラインの種類 左から旅客船、旅客施設編、備考となっている 昭和58年度から令和5年度までに、「旅客船」は3回、「旅客施設編」は13回更新されている 4ページ目 2.実態調査の概要 実態調査にご協力いただいた3隻 〈画像説明〉横並びの3枚の船舶の写真 それぞれの画像の下に船舶の基本情報を記載している 左:航行時間8時間、総トン数14,759トン、旅客定員519人、進水年月平成30年8月 中央:航行時間4時間45分、総トン数5,200トン、旅客定員620人、竣工年月令和4年9月 右:航行時間13時間30分、総トン数14,006トン、旅客定員576人、竣工年月令和4年4月 バリアフリーに配慮されて建造されています 5ページ目 調査に用いたチェックリストの例 〈画像説明〉左側にバリアフリー客席(寝台)のチェックリスト、右側に客室内にて、車椅子を利用する男性がハンガーラックに手を伸ばす写真(調査の様子) 調査に用いたチェックリストの例では、「引き戸(手動)」、「施錠および開錠が手動(客室)」、「室内」の項目に分かれ、それぞれ複数の質問項目がある 6ページ目 【バリアフリートイレ(独立型)】 〈画像説明〉上下に2階と3階の船内図 バリアフリートイレの場所を囲って、吹き出しで客室は2フロアあるが船内に1箇所のみと記載 問題点:トイレ利用のために毎回フロア移動が必要 7ページ目 【バリアフリートイレ(独立型)】 〈画像説明〉横並びの2枚の写真 左:便座の動線上にあるおむつ台 吹き出しで「軽い力で持ち上げることはできるが…」と記載 右:出入口の動線上にあるハンドドライヤー 吹き出しで「扉の幅は十分 確保できているが…」と記載 問題点:車椅子の動線を考慮した配置 8ページ目 【バリアフリートイレ(独立型)】 〈画像説明〉横並びの3枚の写真 左:つまむタイプのトイレの内鍵 吹き出しで「鍵のサムターンが小さい」と記載 中央:レバー式のトイレの内鍵 吹き出しで「レバー式が操作しやすい」と記載 右:つまんで上方向に開けるゴミ箱 吹き出しで「つまむ動作が必要」と記載 問題点:上肢に障害がある方など、より多くの人が使いやすい形状へ 9ページ目 【バリアフリートイレ(独立型)】のガイドライン記載内容 〈画像説明〉バリアフリートイレ(独立型)のガイドライン 吹き出しで「法的拘束力のない青色文字(推奨の仕様)での記載が多く、その都度、個別の判断・解釈が必要」と記載 10ページ目 【車椅子スペース】 〈画像説明〉横並びの2枚の写真 左:通路上(出入口そば)に設置された窓に面した車椅子スペース 右:<参考>路線バスの車椅子スペース 問題点:空間が限られる&乗車時間の短い路線バスと同レベル 11ページ目 【車椅子スペース】のガイドライン記載内容 〈画像説明〉車椅子スペースのガイドライン 吹き出しで「設置数や仕様の記載はあるが、車椅子スペースの『設置意義』は記載されていない」と記載 12ページ目 【バリアフリー客室(寝台)】 〈画像説明〉横並びの3枚の写真 左:客室内にて、車椅子を利用する男性がハンガーラックに手を伸ばす写真 中央:壁に設置された電源ボタン 右:天井の換気口 吹き出しで「車椅子利用者は手が届かない」と記載 問題点:利用者を想定した配慮が必要 13ページ目 【バリアフリー客席(寝台)】のガイドライン記載内容 〈画像説明〉バリアフリー客席(寝台)のガイドライン 吹き出しで「細かな配慮事項についての記載はない」と記載 14ページ目 【その他】ガイドラインに触れられていない施設 〈画像説明〉横並びの2枚の写真 左:喫煙室の出入口 右:一般客室の出入口 狭く・重い扉と段差 15ページ目 【その他】ガイドラインに触れられていない施設 〈画像説明〉横並びの2枚の写真 左:シンク台においてある電子レンジ 吹き出しで「電子レンジの下に脚を入れるスペースが無く、車椅子使用者は利用がしづらい」と記載 右:3台の横並びで設置されている自動販売機 吹き出しで「商品ボタンに手が届かない、乗務員に手伝ってもらうための仕組みがない」と記載 問題点:ガイドラインで触れられていないと、配慮が大幅に低下。少しの工夫で利用できる方は増えるはず 16ページ目 ガイドラインの目次 〈画像説明〉ガイドラインの目次 吹き出しで「ガイドラインでは最低限の施設(設備項目)を対象」と記載 17ページ目 3.旅客フェリーに乗船経験がある障害当事者との意見交換会 〈画像説明〉オンラインで開催された意見交換会の様子 段差としてボーディングブリッジと車両甲板からエレベータに続く段差の写真が挙げられている 乗船時に感じた課題(一部抜粋) ・施設・設備内の備品等が、障害者等が実際に利用するシーンを想定した配置となっておらず、施設・設備もしくは備品が利用しづらい ・船内のパブリックスペースなのに、車椅子使用者のスペースがない 18ページ目 4.「ガイドライン」での記載状況と課題 今回の調査で把握した課題を「ガイドライン」での記載状況で整理した一覧表 横軸は、「ガイドライン」での記載状況」、「課題件数」、「課題の例」の3つ 縦軸は分類1から4に分かれ、うち分類1から3は「整備項目として取り上げられている施設」としてカテゴリー付けをされている [分類1] 「ガイドライン」での記載状況」:記載内容は理解できるが、法的拘束力のない推奨の仕様として、より進んだバリアフリーを目指した整備内容として紹介 「課題件数」:12件 「課題の例」:手すりが連続していない(「ガイドライン」では推奨の仕様に「可能な限り連続して設置する。」と記載) [分類2] 「ガイドライン」での記載状況」:記載内容が不十分で「ガイドライン」に記載してある目的や意図の理解が難しい 「課題件数」:29件 「課題の例」:車椅子スペースが船内の空きスペースに設置されている(「ガイドライン」では車椅子スペースの必要数のみ記載) [分類3] 「ガイドライン」での記載状況」:施設内で、設備等の課題が発生している箇所についての記載がない 「課題件数」:38件 「課題の例」:バリアフリートイレにおむつ交換シートが設置されているが、動線の妨げとなっている。(「ガイドライン」では設置における推奨の仕様のみを記載。留意点がない。) [分類4] 「ガイドライン」での記載状況」:整備項目として取り上げられておらず、当該施設に関する記載がない 「課題件数」:62件 「課題の例」:授乳室、喫煙室等がバリアフリー化されていない 「課題件数」の合計は141件 19ページ目 5.調査のまとめ �@「ガイドライン」に記載されていない施設・設備は、バリアフリーに関する配慮がほぼされていない実態とともに、設計時に少しでも配慮されていれば、利用の可能性が拡大する点が多々ある →ガイドライン改定では、基準としての法的拘束力を付与するかには関わらず、現在、対象となっていない施設・設備も取り上げて掲載するのが望ましい �A背景のひとつには、旅客フェリーの設計者及び旅客船事業者等が、障害者等への基本的な知識(移動の際に生じる困りごと、必要となる基本的設備や人的対応等)が十分に習得できていないことがあると推察できる →基本的な知識習得に向けて、研修する機会、施設整備後の検証を障害当事者とともに実施する機会、設計の段階で障害当事者との意見交換を実施する機会等の創出が望まれる �B一般客席や授乳室、喫煙所等の扉は、法令に従い防火扉を採用しているが、「重い、幅が狭い、段差がある、開き戸である」等の多くのバリアフリー化に関わる問題が共通して発生している →誰もが利用しやすい施設としていくためには、防火規格を維持したまま、バリアフリー化した入口扉の技術開発等も必要である 以上