公共交通機関の旅客施設に関する 移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編令和2年3月 国土交通省総合政策局安心生活政策課 目  次 公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会(旅客施設編) 委員名簿 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方1 1.移動等円滑化整備ガイドラインの活用にあたって1 1.1ガイドラインの策定・改訂の背景 1 1.2ガイドラインの位置づけ2 1.3対象施設と対象者3 2.移動等円滑化整備の基本的な考え方4 2.1移動等円滑化の目的4 2.2移動可能な環境づくり4 2.3一体的・統合的な整備の方針4 3.ガイドラインにおける経路・施設配置・情報提供等の具体的な考え方9 3.1移動経路確保の考え方9 3.2旅客施設と車両等における施設・設備配置の考え方9 3.3情報提供の考え方10 4.移動等円滑化整備に関連した連携協力11 5.当事者参加により期待できる効果12 第2部 旅客施設共通ガイドライン17 1.移動経路に関するガイドライン17 @移動等円滑化された経路17 A公共用通路との出入口25 B乗車券等販売所、待合所、案内所の出入口28 C通路31 D傾斜路(スロープ)40 E階段44 F昇降機(エレベーター)49 Gエスカレーター64 2.誘導案内設備に関するガイドライン69 @視覚表示設備69 A視覚障害者誘導案内用設備107 B緊急時の案内用設備135 3.施設・設備に関するガイドライン138 @トイレ138 A乗車券等販売所・待合所・案内所165 B券売機 169 C休憩等のための設備173 Dその他の設備175 第3部 個別の旅客施設に関するガイドライン 177 1.鉄軌道駅177 @鉄軌道駅の改札口177 A鉄軌道駅のプラットホーム180 2.バスターミナル209 @バスターミナルの乗降場209 3.旅客船ターミナル211 @乗船ゲート211 A桟橋・岸壁と連絡橋211 Bタラップその他の乗降用設備214 4.航空旅客ターミナル施設219 @航空旅客保安検査場の通路219 A航空旅客搭乗橋 220 B航空旅客搭乗改札口223 第5部 情報共有のアクセシビリティ確保に向けたガイドライン224 1. ウェブアクセシビリティについて224 @ウェブサイト等による情報提供224 バリアフリー基準・ガイドラインの今後検討すべき主な課題233 高齢者・障害者等の主な特性235 公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会(旅客施設編) 委員名簿 (五十音順) 委員長 秋山 哲男 中央大学研究開発機構 教授 委 員 赤瀬 達三 株式会社黎デザイン総合計画研究所 代表取締役 青木 邦比古 一般社団法人公営交通事業協会 業務部 部長 伊藤 勝明 東海旅客鉄道株式会社 総合企画本部投資計画部 担当部長 (江口 圭一 東海旅客鉄道株式会社 総合企画本部投資計画部 担当課長 ) 稲垣 具志 日本大学 理工学部交通システム工学科交通計画研究室 助教 伊藤 喜彦 東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 設備部 次長 伊藤 大  国土交通省自動車局総務課企画室 財務企画調整官 今西 正義 特定非営利活動法人DPI日本会議 交通問題担当顧問 石島 徹 一般社団法人日本地下鉄協会 業務部 部長 池田 薫 公益社団法人日本港湾協会 専務理事 大野 央人 公益財団法人鉄道技術総合研究所 人間科学研究部人間工学研究室 主任研究員 小幡 恭弘 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会 事務局長 鎌田 実 東京大学大学院 新領域創成科学研究科人間環境学専攻 教授 川内 美彦 東洋大学 ライフデザイン学部人間環境デザイン学科 教授 金井 仁志 国土交通省道路局路政課 課長補佐 川俣 満 国土交通省港湾局技術企画課技術監理室 課長補佐 北川 博巳 兵庫県立福祉のまちづくり研究所  主任研究員兼課長 小出 真一郎 一般財団法人全日本ろうあ連盟 理事 小出 隆司 全国手をつなぐ育成会連合会 副会長 定村 俊満 公益社団法人日本サインデザイン協会 常任理事 硯川 潤 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部 福祉機器開発室長 関 喜一 国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 人間情報研究部門  身体適応支援工学研究グループ 上級主任研究員 高野 光一 日本バスターミナル協会 会長 (横原 寛 日本バスターミナル協会 会長 ) 橋 儀平 東洋大学 ライフデザイン学部人間環境デザイン学科 教授 高橋 紀夫 国土交通省総合政策局安心生活政策課 交通バリアフリー政策室長 (平沢 善幸 国土交通省総合政策局安心生活政策課 交通バリアフリー政策室長 ) 高橋 良至 東洋大学 ライフデザイン学部人間環境デザイン学科 教授 高柴 和積 一般社団法人全国空港ビル協会 常務理事 高木 正三 社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会 副会長 津田 吉信 一般社団法人日本旅客船協会 企画部長 土岐 達志 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 副会長 長井 総和 国土交通省総合政策局安心生活政策課 課長 中野 泰志 慶応義塾大学 経済学部 教授 中村 豊四郎 アール・イー・アイ 株式会社 代表取締役 内藤 宗夫 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構設備部建築課 課長 半谷 克弘 公益社団法人全国脊髄損傷者連合会 橋口 亜希子 一般社団法人日本発達障害ネットワーク 事務局長 橋本 三喜昭 国土交通省航空局航空ネットワーク部空港業務課 空港機能高度化推進官 平野 祐子 主婦連合会 副会長 藤原 弘道 国土交通省航空局航空ネットワーク部空港計画課空港施設高度利用推進室 課長補佐 福元 正武 国土交通省鉄道局技術企画課 総括課長補佐 堀口 寿広 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部 統計解析研究室 室長 本田 卓  国土交通省道路局企画課 課長補佐 (川村 顕大 国土交通省道路局企画課 課長補佐 ) 松田 妙子 特定非営利活動法人子育てひろば全国連絡協議会 理事 松田 雄二 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授 三星 昭宏 関西福祉科学大学 客員教授 三宅 隆  社会福祉法人日本盲人会連合情報部 部長 湊 一成  一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会土木部会建築小委員会 主査  (東武鉄道(株) 鉄道事業本部 施設部建築土木課長) 安田 健一 西日本旅客鉄道株式会社駅業務部企画課 担当課長 矢澤 和也 国土交通省海事局内航課旅客航路活性化推進室 室長 谷野 香  公益財団法人全国老人クラブ連合会 事務局長 ( )内は前任者 事務局 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 八千代エンジニヤリング株式会社 ※平成28年度及び29年度開催 ※上記検討会において、ガイドラインの全体的な見直しを実施した。 1ページ 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方 1.移動等円滑化整備ガイドラインの活用にあたって 1.1 ガイドラインの策定・改訂の背景 平成12年11月に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が施行され、公共交通機関の旅客施設、車両等の移動等円滑化を促進することが定められた。 その後、施策の拡充を図るため、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)と交通バリアフリー法を一体化し、平成18年12月20日に新たに「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)が施行された。この法律は、それまで対象とされていた高齢者や身体障害者のみならず、知的障害、精神障害、発達障害など全ての障害者を対象に加え、@公共交通機関(旅客施設・車両等)、道路、路外駐車場、都市公園、建築物を新設等する場合においては、一定のバリアフリー化基準(移動等円滑化基準)に適合させなければならないこと、A市町村が作成する基本構想に基づき、旅客施設、建築物等及びこれらの間の経路の移動等円滑化を重点的かつ一体的に推進すること等を内容としたものであり、同法に基づいて、公共交通事業者等が旅客施設や車両等を新たに整備・導入等する際に義務として遵守すべき基準である移動等円滑化基準(「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令」)等が定められている。 「公共交通機関の旅客施設の移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)は、昭和58年に策定された「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」以降、平成6年、平成13年、平成19年、平成25年、平成30年に全体的な見直し、平成31年からは見直しが必要な項目の改訂を随時行っている。また、 「公共交通機関の車両等の移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン車両等編)は平成2年に策定された「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」以降、平成13年、平成19年、平成25年、平成30年に全体的な見直しを、平成31年から見直しが必要な項目について改訂を行ったところである。平成30年までは約5年ごとにガイドライン全体の見直しを行ってきたところであるが、バリアフリー化・ユニバーサル社会の実現を取り巻く環境の変化は早く、公共交通分野のバリアフリー水準の底上げを図るためにも、必要に応じ、随時、ガイドラインを改定すること  とした。平成30年以降の主な改訂次項は以下のとおりである。 旅客施設編 平成30年3月改訂  ・全体的な見直し  平成31年4月改訂  ・鉄道駅の島式ホームにおける内方線付き点状ブロックの敷設方法について一部内容を追記 等 令和元年10月改訂  ・鉄軌道駅のプラットホームにおける車両と追うラットホームの段差及び隙間の縮小、条項位置表示の記載内容の修正  ・第5部 情報提供のウェブアクセシビリティ確保に向けたガイドラインの追加 車両等編 平成30年3月改訂  ・全体的な見直し  平成31年4月改訂  ・貸切バス車両等が新たに適合義務の対象となった事による都市内路線バス、都市間バスに貸切バス車両の項目を追加 等 令和元年10月改訂  ・通勤型鉄道・地下鉄道、都市間鉄道における乗降口の段差・隙間の記載内容の追加 ・第5部 情報提供のウェブアクセシビリティ確保に向けたガイドラインの追加 2ページ 1.2ガイドラインの位置づけ (1)ガイドラインの内容と趣旨 移動等円滑化基準は、公共交通事業者等が旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際に義務基準として遵守しなければならない内容を示したものである。 一方で、本整備ガイドラインは、公共交通事業者等が、旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際、高齢者、障害者等をはじめとした多様な利用者の多彩なニーズに応えるための整備のあり方を具体的に示した目安である。そのため、移動等円滑化基準に基づく整備内容を除いて、公共交通事業者等は本整備ガイドラインに従うことを義務付けられるものではないが、旅客施設、車両等及びウェブサイト等の新設、新造、大規模な改良の機会をとらえて、高齢者や障害者等を含む全ての人が利用しやすい公共交通機関の実現に向け、本整備ガイドラインを活用願いたい。 なお、実際の整備においては、構造上の制約等から本整備ガイドラインに沿った整備が困難な場合も考えられる。上述の本整備ガイドラインの性格から、移動等円滑化基準に基づく整備内容を除き個々の内容ごとに例外的条項は記述していないが、各公共交通事業者等が、地域性、施設利用状況等の特性、 整備財源等を勘案し、「2.移動等円滑化整備の基本的な考え方」をはじめとする本整備ガイドラインに示された考え方や根拠を理解のうえ、整備水準を主体的に判断し、利用者等の意見も十分勘案したうえで、より多くの利用者のニーズに対応できる移動環境としての公共交通インフラの実現を通じて、広く社会活動を支える有効な基盤となることを念頭に置いた移動等円滑化の促進が望まれる。 (2)ガイドラインの構成 本整備ガイドラインは、上記の趣旨に鑑み以下の構成で編集されている。 各整備箇所に関して、整備にあたっての考え方を示した上で、義務となる移動等円滑化基準、具体化にあたって考慮すべき整備の内容を「移動等円滑化基準に基づく整備内容」、これに準じて積極的に整備することが求められる「標準的な整備内容」、さらに高い水準を求める「望ましい整備内容」に分けて記載している。 「移動等円滑化基準に基づく整備内容」(◎) 移動等円滑化基準に基づく、最低限の円滑な移動を実現するための内容の記述を行ったものであり、記号“◎” (二重丸)で示す。 「標準的な整備内容」(○) 社会的な変化や利用者の要請に合わせた整備内容のうち標準的な整備内容で、積極的に整備を行うことが求められるものであり、記号“○”(丸)で示す。 「望ましい整備内容」(◇)(四角) 上記の整備を行ったうえで、移動等円滑化基準に基づく整備内容(◎)、標準的な整備内容(○)より、さらに円滑な移動等を実現するための移動等円滑化や、利用者の利便性・快適性への配慮を行った内容のものであり、記号“◇”で示す。 なお、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満の旅客施設においても、利用状況などに配慮しつつ、本整備ガイドラインに沿って移動等円滑化を進めることが望まれる。また、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満で係員が配置されていない既存の鉄軌道駅では、巻末「参考」(3,000人未満の無人鉄軌道駅における配慮事項)に示した配慮事項を踏まえた施設整備が望まれる。 3ページ 1.3 対象施設と対象者 (1)対象施設及び車両等  「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)が対象とする施設は、バリアフリー法に定められた旅客施設(鉄道駅、軌道停留場、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル施設)である。また、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン車両等編)が対象とする車両等は、鉄道車両、軌道車両、乗合バス車両、貸切バス車両、福祉タクシー、航空機である。公共交通機関の移動等円滑化に関しては、それぞれのガイドラインを目安として整備し、移動等円滑化の推進に努めることが望まれる。 バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)は、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において2020年度末までの移動円滑化の目標の対象として設定されている1日平均利用者数3,000人以上の施設を念頭に記載しているが、3,000人未満の施設も含め、すべての旅客施設を対象としている。利用者数が少ない旅客施設においても、本整備ガイドラインを目安とした整備を行うことが望ましい。 車両等については、鉄軌道車両は約70%の移動円滑化の目標が設定されており、バスではノンステップバスの導入目標が約70%、リフト付きバス等が約25%である。貸切バスが約2,100台である。タクシーは福祉タクシー車両の導入目標約44,000台、航空機については原則100%の目標値が設定されている。これらの目標値に向けた努力がな されているところであるが、達成可能なところでは目標値を超える積極的な整備が望まれる。 また、利用者数の特に多い旅客施設、複数の路線が入る旅客施設、複数事業者の旅客施設が存在する施設、旅客施設以外の施設との複合施設等では、利用者数の規模や空間の複雑さ等を勘案して、特別な配慮を行うことが求められる。具体的な内容は、旅客施設編では「第2部」(旅客施設共通ガイドライン)、「第3部」(個別の旅客施設に関するガイドライン)、車両等編では「第4部」(個別の車両等に関するガイドライン)に掲載している。一方で、利用者数が少ない旅客施設においても適切な配慮をすることが重要である。  更に、情報提供の手段の1つであるウェブサイト等は、障害のある利用者にとって事前の情報収集手段として有効であり、ウェブアクセシビリティを確保することが求められる。具体的な内容は「第5部」(情報提供アクセシビリティ確保に向けたガイドライン)に掲載している。 (2)対象者  本整備ガイドラインに基づく施策の主な対象者は、高齢者、障害者等の移動制約者を念頭におきつつ、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方にも配慮している(表1-1-1)。なお、本表は主な障害等を列挙したものである。利用者の具体的な特性等については、移動の際に発生しうるニーズで整理する考え方も有効である。そのため、図1-2-1、表1-2-1に示した資料も参照し、すべての利用者にとって使いやすい旅客施設とすることが期待される。 表1-1-1 本整備ガイドラインにおける対象者 ・高齢者 ・肢体不自由者(車椅子使用者) ・肢体不自由者(車椅子使用者以外) ・内部障害者 ・視覚障害者 ・聴覚・言語障害者 ・知的障害者 ・精神障害者 ・発達障害者 ・高次脳機能障害者 ・妊産婦 ・乳幼児連れ ・外国人 ・その他 注:高齢者・障害者等においては、重複障害の場合がある。 ※高齢者や各障害の特性及びそれらに応じた公共交通機関利用時の課題等を巻末に掲載した。施設整備にあたっては、それらについても配慮することが望まれる。 4ページ 2.移動等円滑化整備の基本的な考え方  本項は、移動等円滑化基準や本整備ガイドラインに沿った旅客施設、車両等及びウェブサイト等の整備に関連して、それらの整備に取り組むにあたって念頭に置くべき、移動等円滑化全般にわたっての考え方を記述したものである。 2.1 移動等円滑化の目的 1.2ガイドラインの位置づけでも触れたように、本整備ガイドラインは、移動等円滑化基準をベースとして、高齢者、障害者等をはじめとした利用者のニーズに応えるための旅客施設、車両等及びウェブサイト等の整備のあり方を具体的に示した目安であるが、これら移動等円滑化への対応の目的は、高齢者、障害者等移動に困難を伴う多様な人々に対して生活を支えるための移動可能な環境の整備である。 移動可能な環境の整備とは、旅客施設、車両等、その他、旅客施設周辺のビルや旅客施設前広場等との連続的移動の確保、表示や音などの情報提供等、施設・設備面の整備とともに、ウェブサイト等による情報提供、業務要員による接遇も含めて、高齢者、障害者等が生活に必要な移動等を達成できるようにすることである。 2.2移動可能な環境づくり 移動可能な環境づくりの3つの要素とは、以下のとおりである。 @バリアのないルートの確保:可能な限り最短距離で、高低差が少なく、見通しがききわかりやすいルートと空間を連続的に確保すること。 Aわかりやすいルートの確保:空間構成、様々な表示サイン、音サイン、人的対応などを有効に組み合わせ、誘導を適切に行うこと。 B安全で使いやすい施設・設備:必要な施設・設備(乗車券等販売所、待合所、案内所、トイレ等)をアクセスしやすく、安全で使いやすく整備すること。 C情報収集手段の提供:@〜Bの施設・設備について、アクセシビリティを確保したウェブサイト等により、障害者等が利用できる情報収集手段を提供すること。 以上の4つの要素を満たすことによって、円滑に移動できる環境を作り出すことができる。 2.3一体的・統合的な整備の方針 移動の連続性、容易性を確保するためには、利用対象者をそのニーズに基づいて統合的にとらえ、施設・車両、地域などを一体的にとらえて計画し、整備を行うことが重要である。 (1)現状の課題と方針 @多様な利用者を統合的にとらえる 肢体不自由者(車椅子使用者、杖使用者等)、視覚障害者(ロービジョン、全盲)、聴覚・言語障害者(全聾・難聴)、知的障害者、精神障害者、発達障害者、コミュニケ―ションに障害がある人など、多様な障害がある人の機能状況(動くこと、見ること、聞くこと、伝えること、理解すること等)を個別の障害ごとに縦割りにとらえるのではなく、移動の際に発生するニーズに応じてとらえることが必要である(図1-2-1)。例えば、お年寄りの困りごとについては「動くこと」「見ること」「聞くこと」「伝えること・理解すること」の全ての領域に関係する場合があり、盲ろう者では「見ること」「聞くこと」「伝えること・理解すること」に関係する。また高齢者、障害者等だけを対象とするのではなく、利用者全体を統合的にとらえることで、他の多くの利用者のニーズにも対応し、移動等円滑化につながるものである。図1-2-1に対応し、表1-2-1には先述の対象者ごとに想定される主な特性とニーズの関連をあげた。 注)ここでいう統合(integration)とは、例えば「統合教育」と言う場合、障害のある子も同じ学級、 5ページ 同じ環境で他の児童・生徒と同じように教育を受けることを意味するものであり、移動においては誰もが同じように施設・車両等を使用して移動することである。 A施設・車両等を一体的にとらえる 空間、施設、車両等、設備の一部だけに着目して整備を進めるのではなく、誰もがその全てを利用する可能性があるため、例えば旅客施設であれば、その出入口から車両等に至るまで、すべての移 動経路、案内設備、サービス施設等を一体的にとらえて整備する。また、交通モードの結節部分については、事業者間で連携を図り移動の連続性を確保することが重要である。 なお、施設整備により事前的改善措置を図ることが基本であるが、人的な対応等と合わせて移動の連続性を確保する必要がある。 B旅客施設と周辺地域(旅客施設前広場など)を一体的にとらえる 移動の連続性から考えると、旅客施設、車両等と周辺地域(旅客施設と一体となった商業ビル、旅客施設前広場等)を一体的にとらえる必要がある。施設の大規模化や複合化に対応して、旅客施設から連続している商業施設、旅客施設前広場、バス等の乗降場、周辺街区までなど、人々が連続的に移動するエリアを一体的にとらえ、各施設設置管理者や自治体との連携の下、道路、建築物、都市公園等の移動等円滑化とも連携を図り、シームレス(継ぎ目のない状態)に整備する必要がある(図1-2-2)。 図1-2-1 多様な利用者を移動の際に発生しうるニーズに基づいて整理したイメージ図 利用者全体 (内部障害、難病等外見上わからない人も含む) a.「動くこと」に困っている人 ・車椅子を使っている人 ・杖を使っている人 ・お年寄り ・妊娠している人  ・子ども ・ベビーカーを押している人 ・大きな荷物を持った人 など b.「見ること」に困っている人 ・全盲の人 ・ロービジョン者 ・お年寄り ・子ども など c.「聞くこと」に困っている人 ・ろう者(全く聞こえない人) ・難聴者(聞こえにくい人) ・お年寄り など d.「伝えること・理解すること」に困っている人 ・日本語になれていない人 ・発声障害のある人 ・知的障害のある人    ・記憶障害のある人 ・言語・読み書きに障害のある人 ・お年寄り ・子ども ・コミュニケーションが苦手な人 など 6ページ 図1-2-2 旅客施設と周辺地域を一体的・統合的にとらえるイメージ図 表1-2-1 本整備ガイドラインに示す対象者の主な特性(より具体的なニーズ)の整理 対象者 高齢者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、b、cのニーズ> ・階段、段差の移動が困難 ・長い距離の連続歩行や長い時間の立位が困難 ・視覚・聴覚能力の低下により情報認知やコミュニケーションが困難 など 対象者 肢体不自由者(車椅子使用者) 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、b、dのニーズ> 車椅子の使用により ・階段、段差の昇降が不可能 ・移動及び車内で一定以上のスペースを必要とする ・座位が低いため高いところの表示が見にくい ・上肢障害がある場合、手腕による巧緻な操作・作業が困難 ・脳性まひなどにより言語障害を伴う場合がある など ※車椅子の主なタイプについてはP216を参照 対象者 肢体不自由者(車椅子使用者以外) 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、bのニーズ> 杖、義足・義手、人工関節などを使用している場合 ・階段、段差や坂道の移動が困難 ・長い距離の連続歩行や長い時間の立位が困難 ・上肢障害がある場合、手腕による巧緻な操作・作業が困難 ・片マヒがある場合、トイレの戸が右開きか左開きかで使いにくいことがある など 対象者 内部障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、dのニーズ> ・外見からは気づきにくい ・急な体調の変化により移動が困難 ・疲労しやすく長時間の歩行や立っていることが困難 ・オストメイト(人工肛門、人工膀胱造設者)によりトイレに専用設備が必要 ・障害によって、酸素ボンベ等の携行が必要 など 対象者 視覚障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のbのニーズ> 全盲以外に、ロービジョン(弱視)や色覚異常により見え方が多様であることから ・視覚による情報認知が不可能あるいは困難 ・空間把握、目的場所までの経路確認が困難 ・案内表示の文字情報の把握や色の判別が困難 ・白杖を使用しない場合など外見からは気づきにくいことがある など 対象者 聴覚・言語障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のc、dのニーズ> 全聾の場合、難聴の場合があり聞こえ方の差が大きいため ・音声による情報認知やコミュニケーションが不可能あるいは困難 ・音声・音響等による注意喚起がわからないあるいは困難 ・発話が難しく言語に障害がある場合があり伝えることが難しい ・外見からは気づきにくい など 対象者 知的障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のdのニーズ> 初めての場所や状況の変化に対応することが難しいため、 ・道に迷ったり、次の行動を取ることが難しい場合がある ・感情のコントロールが困難でコミュニケーションが難しい場合がある ・情報量が多いと理解しきれず混乱する場合がある ・周囲の言動に敏感になり混乱する場合がある ・読み書きが困難である場合がある ・視覚過敏や聴覚過敏である場合がある など 8ページ 対象者 精神障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のdのニーズ> 状況の変化に対応することが難しいため、 ・新しいことに対して緊張や不安を感じる ・混雑や密閉された状況に極度の緊張や不安を感じる ・周囲の言動に敏感になり混乱する場合がある ・ストレスに弱く、疲れやすく、頭痛、幻聴、幻覚が現れることがある ・服薬のため頻繁に水を飲んだりすることからトイレに頻繁に行くことがある ・外見からは気づきにくい ・視覚過敏や聴覚過敏である場合がある など 対象者 発達障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のdのニーズ> ・注意欠陥多動性障害(AD/HD)等によりじっとしていられない、走り回るなどの衝動性、多動性行動が出る場合がある ・広汎性発達障害等により特定の事柄に強い興味や関心、こだわりを持つ場合がある ・反復的な行動を取る場合がある ・学習障害(LD)等により読み書きが困難である場合がある ・他人との対人関係の構築が困難 ・視覚過敏や聴覚過敏である場合がある など 対象者 高次脳機能障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図 1-2-1 の a、d のニーズ> ・半側空間無視や注意障害がある場合、プラットホームを移動する際に転落や人・ものにぶつかる危険がある ・注意障害などにより、必要な情報を見つけるのが難しいことがある ・失語や失認などにより、案内や表示を見ても内容が理解できないことがある ・記憶障害や地誌的障害などにより、道順や経路、目印が覚えられないことがある 対象者 妊産婦 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のaのニーズ> 妊娠していることにより、 ・歩行が不安定(特に下り階段では足下が見えにくい) ・長時間の立位が困難 ・不意に気分が悪くなったり疲れやすいことがある ・初期などにおいては外見からは気づきにくい ・産後も体調不良が生じる場合がある など 対象者 乳幼児連れ 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のaのニーズ> ベビーカーの使用や乳幼児を抱きかかえ、幼児の手をひいていることにより、 ・階段、段差などの昇降が困難(特にベビーカー、荷物、幼児を抱えながらの階段利用は困難である) ・長時間の立位が困難(子どもを抱きかかえている場合など) ・子どもが不意な行動をとり危険が生じる場合がある ・オムツ交換や授乳できる場所が必要 など 対象者 外国人 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のb、c、dのニーズ> 日本語が理解できない場合は、 ・日本語による情報取得、コミュニケーションが不可能あるいは困難 など 対象者 その他 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、b、c、dのニーズ> ・一時的なけがの場合(松葉杖やギブスを使用している場合など含む) ・難病、一時的な病気の場合 ・重い荷物、大きな荷物を持っている場合 ・初めての場所を訪れる場合(不案内) など 注:高齢者・障害者等においては、重複障害の場合がある。 9ページ 3.ガイドラインにおける経路・施設配置・情報提供の具体的な考え方 3.1移動経路確保の考え方 (1)自立的な移動環境の確保 高齢者、障害者等が、可能な限り単独で、健常者と同様の時間、ルート、手段によって移動できるよう、旅客施設、車両等において、連続性のある移動動線を可能な限り最短経路で確保する。 旅客移動について最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化するとともに、主動線が利用できない緊急時等も勘案し、移動等円滑化された経路(以下「移動等円滑化経路」という。)を施設の実態に応じて複数確保することが求められる。また、他の交通機関等との結節点も移動円滑化することが望ましい(図1-3-1)。 図1-3-1 移動経路確保の基本イメージ (2)移動経路とわかりやすさ 旅客施設においても、車両等においても、高齢者、障害者等すべての人にとって快適でわかりやすい空間とすることが求められる。 (3)移動円滑化された経路の拡充 公共用通路と車両等の乗降口との間の経路ならびに乗継ぎ経路については、乗降場ごとに円滑化することが求められる。 また、以下のような場合には、移動等円滑化経路を複数確保するために積極的な整備が求められる。 @利用者数の特に多い施設、複数の路線が乗り入れている施設、複数の事業者が関わる複合施設 A上記以外の施設においても、利用者数、ピーク時の旅客の集中度、医療施設や高齢者、障害者施設が近くに立地するなど、利用者特性がある程度把握されている場合 B高齢者、障害者等の利用に加え、ベビーカー使用者など、幅広い利用者層への対応が求められる場合 (4)施設設置管理者間の連携 公共交通機関の乗り継ぎだけでなく、道路空間、隣接建築物等の施設設置管理者との連続的な移動等円滑化経路を確保することが望ましい。 3.2旅客施設と車両等における施設・設備設置の考え方 (1)トイレ @アクセスしやすいこと 旅客施設においても、車両内においても、トイレはアクセスしやすい場所に配置し、すべての利用者が利用しやすい構造とする。 A多機能トイレの機能の分散配置 多機能トイレへの利用が集中し、車椅子使用者などから使いたい時に使えない場合があることが指摘されている。このため、機能分散の観点から、車椅子使用者用便房とオストメイト用設備を有する便房を分けた整備が可能であることが示された。車椅子使用者用便房のほか、車椅子使用者用簡易型便房、オストメイト設備を有する便房、乳幼児連れ用設備を有する便房を設置し、 10ページ こうした機能を、一般便房へ分散的に配置するなどの方策を図ること。その際には、旅客施設内におけるトイレの設置位置とその有する機能についてわかりやすい案内表示を行うことが必要である。 Bトイレの複数個所への設置 旅客施設において主要な出入口が複数ある場合、旅客施設が複数に分かれている場合、平面的あるいは立体的に空間が広がっている場合などでは、複数個所へのトイレ設置を検討する。 (2)休憩施設等 休憩施設は、旅客動線等を考慮して必要箇所を把握し、施設全体から見た配置計画、配置数を検討するとともに、高齢者の増加、ベビーカー使用者の増加等、利用者層の将来的な変化も踏まえて計画する。計画にあたっては、高齢者や、持病のある利用者、内部機能障害等、多くの休憩機会が必要な利用者や、注射、服薬などが必要となる場合も考えられるため、トイレとの関連等も含め、休憩施設の機能を勘案する。また、乳幼児連れの旅客のための施設(授乳室等)の配置も望まれる。 3.3情報提供の考え方 (1)わかりやすく空間を整備する わかりやすい空間の整備を目標にして、情報コミュニケーションに制約のある人の特性(巻末参考資料「高齢者・障害者等の主な特性」参照)と、各種情報提供設備の特性を考慮し、旅客施設、車両等において、適切な情報の内容、方法、配置等を検討し整備する。 特に情報コミュニケーションの制約が大きいと考えられる障害等について留意事項を整理すると表1-3-1のとおりである。 表1-3-1 特に情報コミュニケーションの制約が大きいと考えられる障害等への留意事項 障害 留意事項 視覚障害 音声・音響案内、ロービジョンの人を考慮した視覚表示装置の工夫 色覚異常 情報提供装置、路線図、地図等への色、表示方法の工夫 聴覚障害 主に音声で案内される緊急時情報等の文字情報による素早い提供等 知的障害・精神障害・発達障害・高次脳機能障害 特に緊急時など通常と異なる情報、変化する情報、今後の見通し、代替手段等の利用について、理解しやすい情報提供のありかた、問い合わせへの対応など人的な面も配慮する (2)接近と退出双方向の情報提供 旅客施設及び車両等内において、また、旅客施設と外部とのアクセス(接近)・イグレス(退出)の経路において、高齢者、障害者等の移動を支援するため、見やすく(視覚表示設備の場合)、聞きやすく(音案内設備の場合)、内容がわかりやすい、適切な案内用設備を設置する。また、必要に応じて乗降場やその付近においても案内板等の設備を整備する。 11ページ (3)情報提供手段の役割分担 情報量が多い場合には、情報の優先順位に考慮した上で、パンフレット等による情報提供も活用することによって、案内用設備(視覚表示設備、音案内設備)による情報提供を簡潔にすることも検討する。さらに、案内用設備では対応できない高齢者、障害者等への人的な対応も考慮する。 ウェブサイト等による情報提供については、障害のある利用者にとって事前の情報収集が施設や車両を円滑に利用するための有効な手段である。情報提供の際には、障害者等が円滑にウェブサイト等を利用し必要な情報を得られるようにするために、JIS X 8341-3に基づき、ウェブアクセシビリティを確保する必要がある。 (4)異常時の情報提供 遅延や運休(欠航)などによる振替輸送の実施など、通常と異なる経路を案内する必要がある場合は、移動等円滑化経路についても前もって把握し、速やかに案内する。また、障害の状況により情報収集の方法が異なるため、音声情報や文字情報等複数の手段で情報提供をする必要がある。 (5)情報提供の方法 視覚表示設備を設置する場合には、漢字やローマ字のほかに、かなによる表示、多言語による表示などより多くの利用者が理解できる方法で情報提供を行う。 (6)音案内に関する考え方 音案内(音声・非音声音)については、現行ガイドラインで鉄道駅を対象に改札口、エスカレーター、トイレ、プラットホーム上の階段、地下駅地上出入口の各施設の音案内設置について記載している。 実際の音案内は、施設の構造、音質、騒音など周辺環境の影響によって、必要な時に聞こえない、聞こえてもわかりにくい、うるさく感じられる等の問題が生じており、十分にその機能が発揮されていない状況が見受けられる。 本整備ガイドラインでは旅客施設編129ページに参考として、「移動支援用音案内(非音声及び音声案内)に関する計画の考え方」を記載し、音案内の必要性、音案内を整備する上での留意事項と着眼点、音案内の整備のあり方と方向性について現時点での考え方を提示し、音案内を実施する際の音質、音量、音源の位置、音の反射、音案内が伝えるべき情報、暗騒音など周辺環境の対応などいくつかの基本的な論点を挙げて解説した。 4.移動等円滑化整備に関連した連携協力 公共交通機関における移動等円滑化を図るためには、より使いやすい施設、車両等の整備実現のために、公共交通事業者のみならず、国、地方公共団体、その他施設の設置管理者等の関係者が様々な面から互いに連携協力し、総合的かつ計画的に推進していくことが必要である。 また、ハード面での移動等円滑化は、移動等円滑化基準や本整備ガイドラインに基づく整備によって、一定の役割は果たすことができるが、様々なニーズに対応するためには、ハード面の整備とともに人的な対応も移動等円滑化の両輪として行う必要があり、利用者と直接接する業務に従事する要員による移動制約者等への対応や異常時・非常時への備え、利用者へのマナーの広報等も必要である。移動制約者の特性の理解、ニーズを把握するスキル、基本的な介助等の技術、施設・車両等のバリアフリー設備等の知識を習得するための研修が必要である。その際、障害者等移動制約者が研修に参画することが望ましい。また、それらをサポートし相互理解を深めるようなマニュアルやプログラムの整備が必要となる。さらに、施設、車両等の設計、施工、管理などを行う技術的な要員が移動等円滑化の取り組み全般を適切に理解するためにも、事業者内におけるこれら要員相互の積極的な連携協力が重要である。 12ページ 例)仙台市交通局の取組 東西線整備(2015年12月開業)を機に仙台市のまちづくり関係部局と仙台市交通局、公共施設管理者が連携し、サイン表記の共通基準を策定することにより統一を図り、乗継案内におけるバリアを解消した。また、東日本旅客鉄道に対してもサイン表記の統一の協力を要請し、乗継経路の案内サインの統一化が図られた。 改善前:コンコース乗換案内 改善後:コンコース乗換案内 改善後:自由通路乗換案内 提供:仙台市交通局 5.当事者参加により期待できる効果 施設、設備やウェブサイト等の整備については、一度整備を行った後で改善を図ることは物理的な制約やコストを考慮すると対応が容易でない場合がある。また、施設や利用者の状況によりガイドライン通りに整備を行っても必ずしも十分な対応とならないことがある。 施設を新設する場合や大規模な修繕を行う場合、また、ウェブサイトなどを開設・回収する場合には、障害者をはじめとする地域の利用者や専門家からの意見収集や意見交換を行い、当事者参加による整備を進めることで、より多くの利用者にとって利用しやすい施設、設備やウェブサイト等となる。また、施設や設備のみではなく利用空間全体を視野に入れて改善を図ることで分かりやすい施設とすることは、移動の連続性を確保するうえで重要な視点となる。 6.バリアフリー設備及びウェブサイト等の維持・管理 バリアフリー設備やウェブサイト等についてはその機能や役割が発揮されるよう、清掃、調整及び 13ページ 補修等、適切な維持、管理を行う事が必要である。また、一度整備されたものであっても、状況の変化により利用の仕方等が変化する場合があるため、当事者参加の下で継続的な評価を行い、改善を図ることが重要である。 参考:バリアフリー化された旅客施設のイメージ(鉄道駅) ・道路から段差なく駅に入ることができる ・駅に入ると駅施設を一望できる ・移動動線がとても短い ・移動動線上にエレベーター・トイレ・乗車券等販売所・待合所・案内所などが並んでいる ・改札口を入るとエレベーター、エスカレーター、階段を一時に視認できる ・改札口からエレベーター、エスカレーター、階段までの距離がほぼ等距離で、それらを任意に選択できる ・駅出入口・改札口・ホーム間の垂直移動が、上り線・下り線とも一度ですむ ・改札内コンコースからホームの様子を一望できる ・ホームから改札口方向を一望できる ・ホームから改札口にいたるエレベーター、エスカレーター、階段を一時に視認できる ・ホームから改札口にいたるエレベーター、エスカレーター、階段までの距離がほぼ等距離で、それらを任意に選択できる ・ホーム上に可動式ホーム柵などの安全措置が施されている 14ページ ◆本整備ガイドラインにおける基本的な寸法 ■車椅子の寸法(JIS T9201並びにT9203に示された最大寸法) ●車椅子の幅:手動車椅子及び電動車椅子を想定し、70cm ●車椅子の全長:手動車椅子及び電動車椅子を想定し、120cm ■車椅子使用者の必要寸法 ●通過に必要な最低幅:80cm ・出入りに必要な幅は、手動車椅子がハンドリムを手で回転して移動するための動作のスペースを10cmとし、車椅子の幅に加えた80cmが必要。 ・電動車椅子の場合、ハンドリムを手で回転させる動作はないが、障害の程度が手動車椅子使用者よりも重い傾向にあることや操作ボックスの設置場所に対する余裕を見込むと、同じく80cmが必要。 ●余裕のある通過に必要な最低幅:90cm ・余裕のある通過に必要な幅は、手動車椅子がハンドリムを手で回転して移動するための動作のスペースと余裕幅を20cmとし、車椅子の幅を加えた90cmが必要。 ・電動車椅子の場合、ハンドリムを手で回転させる動作はないが、障害の程度が手動車椅子使用者よりも重い傾向にあることや操作ボックスの幅を見込むと、手動車椅子と同じ余裕幅20cmが必要であり、90cmが必要。 ●車椅子の通行に必要な幅:90cm ・車椅子の通行には、車椅子の振れ幅を考慮すると、90cmが必要。 ●車椅子と人のすれ違いの最低幅:135cm ・車椅子と人がすれ違うためには、車椅子の振れ幅と人の寸法を加えた65cmの余裕幅が必要。 ●車椅子と車椅子のすれ違いの最低幅:180cm ・車椅子同士がすれ違うためには、双方の車椅子の通行に必要な余裕幅を確保した180cmが必要。 ●車椅子の回転に必要な広さ:180度回転できる最低寸法:140cm ・市販されている車椅子が切り返しを行わずに180度回転できる必要寸法としては幅140cm、長さ170cmの空間が必要。 ●車椅子の回転に必要な広さ:360度回転できる最低寸法:150cm ・市販されている車椅子が切り返しを行わずに360度回転できる必要寸法としては直径150cmの円空間が必要。 ●電動車椅子の回転に必要な広さ:360度回転できる最低寸法:180cm ・市販されている電動車椅子が切り返しを行わずに360度回転できる必要寸法としては直径180cmの円空間が必要。 ■松葉杖使用者の必要寸法 ●松葉杖使用者が円滑に通行できる幅:120cm 15ページ 参考:本ガイドラインにおける基本的な寸法 ●通過に必要な最低幅 80cm ●余裕のある通過及び通行に必要な最低幅 90cm ●車椅子と人のすれ違いの最低幅 135cm ●車椅子と車椅子のすれ違いの最低幅 180cm ●松葉杖使用者が円滑に通行できる幅 120cm ●車椅子が180度回転できる最低寸法 幅140cm、幅170p ●車椅子が360度回転できる最低寸法 幅150cm ●電動車椅子が360度回転できる最低寸法 幅180cm (注意)手動車椅子の寸法:全幅70p、全長120pの場合(JIS規格最大寸法) 16ページ <ハンドル形電動車椅子の寸法(全長・全幅)及び回転性能> ■ 最大寸法 単位:mm 区分 全長(L0) 最大寸法 1200 区分 全幅(W0) 最大寸法 700 区分 全高(H0) 最大寸法 1200 注記 全高(H0)は、ヘッドサポートを取り外した状態でバックミラーを含め床からの高さが最も高い部位で測る。 全長(L0)及び全幅(W0)は、カバー及びタイヤを含め最も外側となる部分で測る。 ■ 回転性能 1.2M形(タイプT) 幅1.2mの直角路を曲がらなければならない。 1.0M形(タイプU) a)幅0.9mの直角路を5回まで切返して曲がれなければならない。 b)幅1.0mの直角路を切返しなしで曲がれなければならない。 c)1.8m未満の幅で180°の回転ができなければならない。 出典:JIS T9208 ハンドル形電動車椅子 17ページ 第2部 旅客施設共通ガイドライン 1.移動経路に関するガイドライン @移動等円滑化された経路 考え方 経路については、高齢者、障害者等の移動等円滑化に配慮し、可能な限り単独で、駅前広場や公共用通路など旅客施設の外部から旅客施設内へアプローチし、車両等にスムーズに乗降できるよう、すべての行程において連続性のある移動動線の確保に努めることが必要である。旅客移動について最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化するとともに、主動線が利用できない非常時も勘案し、移動等円滑化された経路を複数確保することが望ましい。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 公共用通路(旅客施設の営業時間内において常時一般交通の用に供されている一般交通用施設であって、旅客施設の外部にあるものをいう。以下同じ。)と車両等の乗降口との間の経路であって、高齢者、障害者等の円滑な通行に適するもの(以下「移動等円滑化された経路」という。)を、乗降場ごとに一以上設けなければならない。 2 移動等円滑化された経路において床面に高低差がある場合は、傾斜路又はエレベーターを設けなければならない。ただし、構造上の理由により傾斜路又はエレベーターを設置することが困難である場合はエスカレーター(構造上の理由によりエスカレーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター以外の昇降機であって車椅子使用者の円滑に利用することができる構造のもの)をもってこれに代えることができる。 3 旅客施設に隣接しており、かつ、旅客施設と一体的に利用される他の施設の傾斜路(第六項の基準に適合するものに限る。)又はエレベーター(第七項の基準に適合するものに限る。)を利用することにより高齢者、障害者等が旅客施設の営業時間内において常時公共用通路と車両等の乗降口との間の移動を円滑に行うことができる場合は、前項の規定によらないことができる。管理上の理由により昇降機を設置することが困難である場合も、また同様とする。 10 公共用通路と車両等の乗降口との間の経路であって主たる通行の用に供するものと当該公共用通路と当該車両等との乗降口との間に係る移動等円滑化された経路が異なる場合は、これらの経路の長さの差は、できる限り小さくしなければならない。 11 乗降場間の旅客の乗継ぎの用に供する経路(次項において「乗継ぎ経路」という。)のうち、第二項から第九項までの基準に適合するものを、乗降場ごとに一以上設けなければならない。 12 主たる乗継ぎ経路と前項の基準に適合する乗継ぎ経路が異なる場合は、これらの経路の長さの差は、できる限り小さくしなければならない。 第18条の2 線路、水路等を挟んだ各側に公共用通路に直接通ずる出入口がある鉄道駅には、第四条第一項の規定にかかわらず、当該各側の出入口に通ずる移動等円滑化された経路をそれぞれ一以上設けなければならない。ただし、鉄道駅の規模、出入口の設置状況その他の状況及び当該鉄道駅の利用の状況を勘案して、高齢者、障害者等の利便を著しく阻害しないと地方運輸局長が認める場合は、この限りでない。 18ページ ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 移動等円滑化された経路 <経路確保の考え方> ◎公共用通路と車両等の乗降口との間の経路であって、高齢者、障害者等の円滑な通行に適するもの(以下「移動等円滑化された経路」という。)を、乗降場ごとに1以上設けなければならない。 ※公共用通路とは、旅客施設の営業時間内において常時一般交通の用に供されている一般交通用施設であって、旅客施設の外部にあるものをいう。 ◎公共用通路と車両等の乗降口との間の経路であって主たる通行の用に供するものと当該公共用通路と当該車両等の乗降口との間に係る移動等円滑化された経路が異なる場合は、これらの経路の長さの差は、できる限り小さくしなければならない。 ◎乗降場間の旅客の乗継ぎの用に供する経路(以下「乗継ぎ経路」という。)のうち、移動等円滑化された経路を、乗降場ごとに一以上設けなければならない。 ◎主たる乗継ぎ経路と移動等円滑化された乗継ぎ経路が異なる場合は、これらの経路の長さの差は、できる限り小さくしなければならない。 ○公共用通路との出入口と各乗降場を結ぶ経路において、旅客の移動が最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化する。 ○各乗降場間を結ぶ乗継ぎ経路において、旅客の移動が最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化する。 ○規模の大きい、又は利用者の多い旅客施設、特に鉄道駅にあっては、主要な出入口から移動等円滑化された経路を確保する。 ○利用者数に限らず、病院、障害者施設等の周辺施設の状況や高齢者、障害者等の利用の状況を考慮して移動等円滑化された経路を確保する。 ○移動等円滑化された出口までの経路を分かりやすく明示する。 ○公共用通路との出入口を移動等円滑化した場合には、公共用通路側の施設設置管理者と協議の上、誘導サインの表示内容の共通化及び連続化を図るなど利用者が混乱しないように改札から公共用通路出入口までの移動等円滑化された経路の案内を行う。他の事業者や公共交通機関への乗り換えルートについても同様とする。 ◇他の事業者の旅客施設(他の交通モードのものを含む。)との乗継ぎ経路についても、必要な調整を行うこと等により移動等円滑化することが望ましい。 19ページ 移動等円滑化された経路 【鉄道駅】 ◎線路、水路等を挟んだ各側に公共用通路に直接通ずる出入口がある鉄道駅には、当該各側の出入口に通ずる移動等円滑化された経路をそれぞれ一以上設けなければならない。ただし、鉄道駅の規模、利用状況、出入口の設置状況その他の鉄道駅の状況を勘案して高齢者、障害者等の利便を著しく阻害しないと当該鉄道駅の所在を管轄する地方運輸局長が認める場合についてはこの限りではない。 <垂直移動設備の優先順位> ◎移動等円滑化された経路において床面に高低差がある場合は、傾斜路又はエレベーターを設けなければならない。ただし、構造上の理由により傾斜路又はエレベーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター(構造上の理由によりエスカレーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター以外の昇降機であって車椅子使用者の円滑に利用することができる構造のもの)をもってこれに代えることができる。 ○車椅子使用者による単独利用を考え、垂直移動設備としてエレベーターを設置することを原則とする。 ◎旅客施設に隣接しており、かつ、旅客施設と一体的に利用される他の施設の傾斜路又はエレベーターを利用することにより高齢者、障害者等が旅客施設の営業時間内において常時公共用通路と車両等の乗降口との間の移動を円滑に行うことができる場合は、当該施設の傾斜路又はエレベーターを活用することができる。なお、それら傾斜路又はエレベーターは、本ガイドラインに記載された内容を満たしているものに限る。管理上の理由により昇降機を設置することが困難である場合も、また同様とする。 ○隣接する施設のエレベーター等を活用する場合には当該エレベーターを活用して段差解消を図る旨を十分に案内することとする。 <明るさの確保> ○移動等円滑化された経路は、高齢者やロービジョン者の移動等円滑化に配慮し、充分な明るさを確保するよう、採光や照明に配慮するとともに、羞明や夜盲症など様々な見え方があることを考慮する。また、照明については、極端な暗がりや眩しさが生じないように配慮する。また、節電時においても通行の安全性が確保できるよう配慮する。なお、鉄道駅舎においては、JISZ9110に示された照度を参考とする。 20ページ 移動等円滑化された経路 <工事期間中の経路確保の考え方> ○工事等の実施により移動等円滑化された経路が遮断される場合には、次の点に配慮する。 ・工事期間中は旅客の安全な移動に配慮する。 ・工事の実施前から実施完了まで、工事を実施する旨や迂回経路等について案内掲示を行う。 ・誘導サイン・位置サインは工事期間中の経路・設備を示す。 ・移動等円滑化された経路が分断される場合は、移動のやり直しが行われないような位置においてエレベーター等の経路への迂回路を掲示する。ただし、工事範囲などにより困難な場合は、代替的な段差解消措置を講ずるよう配慮する。 ・夜間の利用に配慮し、屋外の移動等円滑化された迂回路等においても充分な明るさを確保するよう照明に配慮する。 ・工事範囲の工事仮設物等により視覚障害者誘導用ブロックが分断される場合には、安全な経路に適切に誘導するため、連続性が保たれるように視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。 ・既設の視覚障害者誘導用ブロックを一時的に利用しない場合は、突起が分からないように配慮する。 ・工事仮設物等を設置する際には、視覚障害者が白杖で感知できないような隙間を設けないよう配慮する。 21ページ 参考2-1-1:複数移動等円滑化された経路を確保している旅客施設(鉄軌道駅)の事例 <大規模ターミナル駅の例(東京駅)> ・エレベーターの設置により、各方面(丸の内側・八重洲側)からの移動等円滑化された経路を確保している。 注)上図は最新状況とは限りません。 出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団「らくらくおでかけネット」ホームページ <地下通路の例(東日本旅客鉄道株式会社 新宿駅)> ・快適な歩行者空間の充実と回遊性の向上のため、新宿駅の東西自由通路の整備を促進するとともに、新宿駅東西広場及び駅周辺の再整備の検討を進めている(2018年4月現在の計画図です)。 ・本整備事業によるエレベーターの増設によって、従来の南口に加え、東西方面への移動等円滑化が図られる予定である。 出典:東日本旅客鉄道株式会社 22ページ <地下駅の例(札幌市交通局 大通駅)> ・地上へのエレベーターが2箇所あり、ホームまでの移動等円滑化された経路を確保。一部のホームについて複数経路が確保されている。(ただし、一部改札からの経路について未対応となっている。) 注)上図は最新状況とは限りません。                   出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団「らくらくおでかけネット」ホームページ 23ページ <地下駅の例(東京都交通局 一之江駅)> ・利用者がエレベーターを利用する際、環状7号線を挟んだ東口側まで大きく迂回する必要があったため、西口側にエレベーターを新設し、複数の移動等円滑化経路を確保した。 提供:東京都交通局 24ページ <郊外中規模駅 橋上駅の例(東武鉄道 つきのわ駅)> ・南北が分断された橋上駅舎において、南北駅前広場それぞれから改札階へのエレベーターが設置され、2方向からホームまでの移動等円滑化された経路を確保している。 注)上図は最新状況とは限りません 出典:株式会社東武鉄道ホームページ <郊外中規模駅 交差する他鉄道路線により分断された駅の例(京王電鉄 京王稲田堤駅)> ・交差する他鉄道路線により分断されている北口・南口の2方面・改札口からホームへの移動等円滑化された経路が確保されている。 注)上図は最新状況とは限りません 出典:株式会社京王電鉄ホームページ 25ページ A公共用通路との出入口 考え方 公共用通路との出入口については、高齢者、障害者等の移動等円滑化に配慮し、駅前広場や公共用通路など旅客施設の外部からアプローチしやすく、かつ、わかりやすい配置とする。 特に、車椅子使用者等が遠回りすることがないよう、一般的な動線上の出入口を移動円滑化するよう配慮する。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 4 移動等円滑化された経路と公共用通路の出入口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 二 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 三 次号に掲げる場合を除き、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 公共用通路との出入口の幅 ◎車椅子使用者の動作に対する余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、有効幅80cm以上とすることができる。 ◇車椅子使用者同士のすれ違いを考慮し、有効幅180cm以上とすることが望ましい。 段の解消 ◎車椅子使用者が通過する際に支障となる段を設けない。ただし、構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設する。 ○特に、公共用通路と旅客施設の境界部分については、管理区域及び施工区分が異なることによる段が生じないよう、施設設置管理者間の協議により、移動等円滑化された経路の連続性を確保する。 ◇水処理、エキスパンションなどの関係から多少の段差が生じる場合についても、車椅子使用者等の通行の支障にならないよう傾斜路を設ける等により段差が生じないようにすることが望ましい。 戸  幅 ◎車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、有効幅80cm以上とすることができる。 26ページ 戸 開閉構造 ◎自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものとする。 ○1以上の戸は自動式の引き戸とする。 ○自動開閉装置は、車椅子使用者や視覚障害者の利用を考慮し、押しボタン式を避け、感知式とする等、開閉操作の不要なものとする。その場合には、戸の開閉速度を高齢者、障害者等が使いやすいよう設定する(開閉速度は、開くときはある程度速く、閉じるときは遅いほうがよい。)。ただし、人通りが多い場合はその限りではない。 ◇手動式扉に握り手を設ける場合は、高齢者・障害者等に使いやすい形状とするとともに、周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したものとすることが望ましい。 戸の前後の水平区間 ○戸の前後には、車椅子1台が止まることができるよう120cm以上の長さの水平区間を設ける。 ◇自動式扉でない場合は、車椅子使用者の開閉動作のため車椅子が回転できる150cm以上の長さの水平区間を設けることが望ましい。 構造 ◎戸の下枠や敷居により車椅子使用者の通行の支障となる段を設けない。 ○戸の内部と外部で互いに確認できる構造とする。 ○戸が透明な場合には、衝突防止のため、見やすい高さに横線や模様などをつけて識別できるようにする。 床の仕上げ ◎床面は滑りにくい仕上げとする。 溝ふた ○水切り用の溝ふたを設ける場合は、車椅子のキャスターや視覚障害者の白杖の先端が落ち込まない構造のものとする。 ひさし ◇車椅子使用者や肢体不自由者、視覚障害者等は傘をさすことが難しいため、屋外に通じる旅客施設の出入口には大きめのひさしを設置することが望ましい。 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロックの敷設経路 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 27ページ 参考2-1-2:公共用通路との出入口の例 28ページ B乗車券等販売所、待合所、案内所の出入口 考え方 乗車券等販売所、待合所、案内所の各施設の出入口については、高齢者、障害者等すべての人がアプローチしやすいものとする。 特に車椅子使用者等が遠回りすることがないよう、動線上の出入口を移動円滑化するよう配慮する。 移動等円滑化基準 (乗車券等販売所、待合所及び案内所) 第16条 乗車券等販売所を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 出入口を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。   ロ 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。   (1) 幅は、八十センチメートル以上であること。   (2) 高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。   ハ ニに掲げる場合を除き、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。   ニ 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 2 前項の規定は、待合所及び案内所を設ける場合について準用する。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 出入口の幅 ◎有効幅80cm以上とする。 ○車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。 段の解消 ◎車椅子使用者が通過する際に支障となる段を設けない。ただし、構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設する。 ◇水処理、エキスパンションなどの関係から多少の段差が生じる場合についても、車椅子使用者等の通行の支障にならないよう傾斜路を設ける等により段差が生じないようにすることが望ましい。 戸 幅 ◎有効幅80cm以上とする。 ○車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。 29ページ 戸 開閉構造 ◎高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のもの(自動式の引き戸等)とする。 ○自動開閉装置を設ける場合は、車椅子使用者や視覚障害者の利用を考慮し、押しボタン式を避け、感知式とする等開閉操作の不要なものとする。ただし、人通りが多い場合はこの限りでない。 また、戸の開閉速度を、高齢者、障害者等が使いやすいよう設定する(開閉速度は、開くときはある程度速く、閉じるときは遅いほうがよい)。 ◇構造上やむを得ない場合以外は開き戸としないことが望ましい。なお、やむを得ず自動式の開き戸を設置する場合は、床面に開閉の軌道を表示するなど配慮する。また、手動式の引き戸の場合は、フリーストップ機能がついた半自動式にすることが望ましい。 ◇手動式扉に握り手を設ける場合は、高齢者・障害者等に使いやすい形状とするとともに、周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したものとすることが望ましい。 水平区間 ○戸の前後には、車椅子1台が止まることができるよう120cm以上の長さの水平区間を設ける。 ◇自動式扉でない場合は、車椅子からの開閉動作のため車椅子が回転できる150cm以上の長さの水平区間を設けることが望ましい。 構造 ◎戸の下枠や敷居により車椅子使用者の通行の支障となる段を設けない。ただし、構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設する。 ○戸の内部と外部が確認できる構造とする。 ○戸が透明な場合には、衝突防止のため、見やすい高さに横線や模様などで識別できるようにする。 床の仕上げ ◎床面は滑りにくい仕上げとする。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 30ページ 参考2-1-3:戸のある乗車券販売所、待合所、案内所の出入口の例 参考2-1-4:自動式引き戸の留意点 参考2-1-5:手動式引き戸の留意点       参考2-1-6:手動式開き戸の留意点 31ページ C通路 考え方 高齢者、障害者等すべての人が旅客施設を円滑に移動できるよう、連続性のある動線の確保に努めることが必要である。動線は可能な限り明快で簡潔なものとし、複雑な曲がり角や壁、柱、付帯設備などが突出しないよう配慮する。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、百四十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、通路の末端の付近の広さを車椅子の転回に支障のないものとし、かつ、五十メートル以内ごとに車椅子が転回することができる広さの場所を設けた上で、幅を百二十センチメートル以上とすることができる。 二 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。  三 次号に掲げる場合を除き、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。  四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。  五 照明設備が設けられていること。 (通路) 第5条 通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。  一 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。  二 段を設ける場合は、当該段は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものであること。 ロ 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものであること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の仕上げ ◎床の表面は滑りにくい仕上げとする。 幅 ◎有効幅140cm以上とする。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、通路の末端の付近の広さを車椅子の転回に支障のないものとし、かつ、50m以内ごとに車椅子が転回することができる広さの場所を設けた上で、有効幅を120cm以上とする。 ○車椅子使用者同士のすれ違いを考慮し、可能な限り有効幅180cm 以上とする。 戸 幅 ◎有効幅90cm以上とする。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、有効幅80cm以上とする。 32ページ 戸 開閉構造 ◎高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のもの(自動式の引き戸等)とする。 ○自動開閉装置を設ける場合は、車椅子使用者や視覚障害者の利用を考慮し、押しボタン式を避け、感知式とする等開閉操作の不要なものとする。また、戸の開閉速度を、高齢者、障害者等が使いやすいよう設定する(開閉速度は、開くときはある程度速く、閉じるときは遅いほうがよい)。 ◇手動式扉に握り手を設ける場合は、高齢者・障害者等に使いやすい形状とするとともに、周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したものとすることが望ましい。 段の解消 ◎同一フロアでは段を設けない。ただし、構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は傾斜路を併設する。 ◎段を設ける場合は、踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいことにより段を容易に識別できるものとする。また、段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものとする。 空中突出物 ○原則として床から200cm程度の高さまでの間の空間に天井、壁面からの突出物を設けない。やむを得ず突出物を設ける場合は、視覚障害者が白杖で感知できずに衝突してしまうことがないよう、高さ110cm以上の柵の設置やそれに代わる進入防止措置を講ずる。この場合、床面からの立ち上がり部に隙間を設けず、白杖で容易に柵等を感知できるよう配慮する。 手すり ○歩行に制約のある利用者に配慮して、可能な限り手すりを設置する。また、手すりをたどる経路上に支障となるものを設置しない。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)とする。 高さ ○2段手すりとする場合、床仕上げ面から手すり上端までの高さ:上段H=85cm程度、下段H=65cm程度。 ○一段の手すりとする場合:H=80〜85cm程度。 形状 ○丸状で直径3〜4cm程度とする。 材質 ◇冬期の冷たさに配慮した材質とすることが望ましい。 位置 ○手すりを壁面に取り付ける場合は、壁と手すりのあきを5cm程度とする。 端部 ○手すりの端部は、壁面側に巻き込むなど端部が突出しない構造とする。 33ページ 手すり 点字 ○視覚障害者の誘導動線となる通路の手すりには、行き先情報を点字で表示する。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、点字内容を文字で併記する。 ○2段手すりの場合は、上段の手すりに設置する。 ○点字は、はがれにくいものとする。 通路の明るさ ◎コンコースや通路には、照明設備を設ける。 ○高齢者やロービジョン者の移動等円滑化に配慮し、充分な明るさを確保するよう、採光や照明に配慮する。また、照明については、極端な暗がりや眩しさが生じないように配慮する。なお、鉄道駅舎においては、JISZ9110に示された照度を参考とする。 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロックの敷設経路 点状ブロックの敷設位置  「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 34ページ 参考2-1-7:移動等円滑化された経路を構成する通路の例 (コラム1)床面、壁面への配慮事項 ・ロービジョン者は視覚障害者誘導用ブロックを凹凸だけでなく明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)によっても認識しているため、視覚障害者誘導用ブロックの周囲に視覚障害者誘導用ブロックと誤認するような床面装飾模様を施さない配慮が必要。 ・誘導動線と直交するような縞状の模様や床色の塗り分けがあると、ロービジョン者は段差と誤認することがあるため、床面の塗色等の際には配慮が必要。 ・床面と壁面が同色であるとロービジョン者は通路の縁端が視認できないことがあるため、床面と壁面の下部又は全体の輝度コントラストを確保することにより通路の縁端が明確に認識できるようにする配慮が必要。 35ページ 参考2-1-8:空中突出物の留意点 参考2-1-9:手すりの高さの例 参考2-1-10:手すりの位置と形状の例 参考2-1-11:手すりの端部の例 点字の内容の墨字表記に加え、路線カラー等の情報も加えてわかりやすく表示している例。 (東日本旅客鉄道株式会社 川崎駅) 提供:東日本旅客鉄道株式会社 36ページ 参考2-1-12:手すりの点字表示(JIS T0921抜粋) 手すりの点字表示は、次のJIS T0921にあわせたものとする。詳細はJIS T0921を参照のこと。 ■点字の間隔 表  点字の点の間隔及びマスとマスとの間隔(単位mm) 変数 a  説明 垂直点間隔(点1と点2との間隔) 中心間距離2.2〜2.8 変数 b  説明 水平点間隔(点1と点4との間隔) 中心間距離2.0〜2.8 変数 p  説明 マス間隔 (点1と点1′との間隔) 中心間距離5.1〜6.8 変数 q  説明 行間隔  (点1と点1″との間隔) 中心間距離10.0〜15.0 表  点字の水平点間隔(b)とマス間隔(p)との関係(単位mm) 水平点間隔(b) 2.0 マス間隔(p)の範囲 5.1〜6.0 水平点間隔(b) 2.1 マス間隔(p)の範囲 5.2〜6.1 水平点間隔(b) 2.2 マス間隔(p)の範囲 5.4〜6.2 水平点間隔(b) 2.3 マス間隔(p)の範囲 5.6〜6.3 水平点間隔(b) 2.4 マス間隔(p)の範囲 5.8〜6.3 水平点間隔(b) 2.5 マス間隔(p)の範囲 6.0〜6.3 ■空白スペース ・突起物によって点字解読時の指の動きに支障を与えないようにするために,空白スペースを設けなければならない。 ・一マス又は複数のマスの点字を独立して使用する場合は,空白スペース(x)として,少なくとも周囲を6 mmずつ空けることが望ましい。   37ページ ■点字の断面形状 表 点字の直径及び高さ(単位mm) 中心間距離 d(底面の直径)1.0〜1.7 h(点の中心の高さ)0.3〜0.7 ■手すりの点字表示例 a) 点字1行の場合      b) 点字2行の場合      c) 点字3行の場合 手すりの点字表示方法は、次による。 ・点字は、手すりの長手方向と平行に表示することが望ましい。 ・点字の行数は、3行以内とする。 ・断面が円形状の手すりで、点字の行数が1行の場合は、点字部分を手すりの真上より少し側壁に表示し、3行の場合は、3行目が手すりの真上になるように表示することが望まし。上部が平面状の手すりの場合は、点字部分が平たん部からはみ出さないように表示する。 ■エレベーターの点字表示 ・乗り場では,探しやすい位置に現在階を点字表示する。また,呼ボタンの左側に“ウエ”,“シタ”と表示することが望ましい。ただし,ボタン形状が上若しくは下の方向を表す三角形,又は半円形の場合は,“ウエ”,“シタ”の点字表示はしなくてもよい。 ・エレベーターのかご内の操作ボタンが縦配列の場合は,ボタンの左側に表示する ・かご内に横配列のボタンがある場合は,横配列のボタンの上側に点字表示する。 ・かご内の操作ボタンのうち,“開”,“閉”,“非常呼”には,“アケ”,“シメ”,“ヒジョー”の点字表示をすることが望ましい。 出典:JIS T0921アクセシブルデザイン−標識,設備及び機器への点字の適用方法 日本規格協会 38ページ 参考2-1-13:照度設定にあたっての配慮事項 ・ロービジョン者の空間視認性を確保するためには十分な明るさが必要となるが、障害等によって、照度が低いと「暗すぎて見にくい」レベル、逆に照度が高すぎるために「明るすぎて見にくい」レベルが異なる。また、床面色・壁面色などによりまぶしさや視認性も変化する。今後、ロービジョン者や高齢者の見にくさに応じた適正照度に関する研究が進むことが望まれる。 (参考:岩田三千子「視認における輝度対比と適正照度の関係」−社団法人照明学会「ロービジョンを対象とした視環境計画に関する研究調査委員会報告書」2006年9月) 参考2-1-14:照明計画による空間把握・視認性の向上例 ・コンコースや通路、垂直移動設備、プラットホームなどの各空間・各設備の明るさを十分確保することは重要であるが、照度に限らず照明の配置などに配慮した照明計画が高齢者・ロービジョン者等が安心して安全に円滑に移動するための有効な手段となる。 <福岡市交通局 七隈線の照明計画> 七隈線のデザインポリシーである「ヒューマンライン=人に優しく地域に根ざした公共交通機関」に基づき、16駅各駅が建築と一体化し空間に調和することを基本としたデザインに統一され、形態や素材に特徴を持たせた空間を特化させる部位については、その特徴を生かした照明計画としている。 1.標準駅  駅出入り口上屋の照明には、高効率・長寿命・高演色な42wコンパクト型Hf蛍光ランプスポットライトを用い、空間の広がり感と明るさ感を高め、地下空間へ降りる不安感を少なくし、明るく自然な光環境を創出している(平均照度:300lx)。  コンコースの照明は、空間の広がり感を創出するため、壁面と天井面の境に建築と一体化した壁面照明(32WHf蛍光ランプ笠なし器具)を連続的に配置している。また、ベース照明は天井のモジュールに合わせた45Wコンパクト形Hf蛍光ランプスクウェア器具を規則的に配置し、行動のポイントとなる部分にダウンライトを記号的に配置することで利用者のスムーズな誘導を助ける役割を果たしている(平均照度:400lx)。  ホーム空間の照明は、32WHf蛍光ランプ(5000K)によるライン照明で平均照度300lx以上を確保し、ホームドア前に設置した35Wセラミックメタルハライドランプ(3000K)で足元を明るく特化することで、乗降部をわかりやすくしている。また、明るさ感と広さを創出するため、天井面には間接照明(32WHf蛍光ランプ笠なし器具)を、柱部分には16Wコンパクト形Hf蛍光ランプダウンライトを配置している。 2.天神南駅  本駅舎はロービジョン者の視点で安全性、情報性を最大の目的としてデザインされている。32WHf蛍光ランプによる足元の間接照明は白い床を明るく照らし、安全への配慮のほか空間の明るさ感と清潔感に大きく寄与している。また、床にできた光のラインは誘導効果をもたらし、それ以外のベース照明はグレアレス器具(32〜42wコンパクト形Hf蛍光ランプダウンライト)を使い、空間の光要素を減らすことでサインの視認性を高めている。 出典:三村 高志、小林 和夫 「福岡市営地下鉄七隈線駅舎の照明」、照明学会誌、vol.90、No.4(20060401) pp. 193-194 階段脇をわかりやすく示す照明デザイン ホーム乗降位置を示すスポット照明 誘導用ブロック及び出入口を示す照明デザイン 提供:福岡市交通局 39ページ <仙台市交通局 東西線の照明計画> 2017年12月に開業した東西線では、空間全体を活用した照明配置となっている。 1.仙台駅 ・オレンジ系の照明を用いて帯状に誘導している。また、白照明があることで全体的な照度確保がなされている。 ・視覚障害者誘導用ブロックの動線が明確で分かりやすい。 ・通路左側は、黒色のタイル、壁下の幅木部分と地の床や壁とのコントラストを確保しており、右側についても壁色と床色の境にコントラストを設けて空間認知がしやすい構造になっている。 2.緑薬師堂駅 ・ホームドアの上に白系の照明を設置し、空間の区分を明確にしている。 (仙台駅)空間誘導に役立つ照明デザイン (緑薬師堂駅)ホームドア内側との乗降位置の明るさを確保した照明 提供:仙台市交通局 40ページ D傾斜路(スロープ) 考え方 車椅子使用者に対しては、段を解消する傾斜路(スロープ)の設置が必要である。傾斜路(スロープ)の設置にあたっては、車椅子使用以外の障害者、高齢者、ベビーカー使用者等、すべての利用者が通過しやすい動線上に配置するとともに、幅や勾配は可能な限り余裕のあるものとするよう配慮する。 また、手動車椅子使用者に対しては、長距離や急傾斜の傾斜路利用が困難であることに配慮する。 なお、移動等円滑化基準省令第6条で規定する傾斜路(スロープ)とは階段に代わり、またはこれに併設するものを指す。例えば、構造的にコンコース全体が傾斜状になっているもの、エレベーター等設備前のわずかなレベル差(10cm程度)解消のためのすりつけ部分はこれに含まれない。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 6 移動等円滑化された経路を構成する傾斜路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 幅は、百二十センチメートル以上であること。ただし、段に併設する場合は、九十センチメートル以上とすることができる。 二 勾配は、十二分の一以下であること。ただし、傾斜路の高さが十六センチメートル以下の場合は、八分の一以下とすることができる。 三 高さが七十五センチメートルを超える傾斜路にあっては、高さ七十五センチメートル以内ごとに踏幅百五十センチメートル以上の踊り場が設けられていること。 (傾斜路) 第6条 傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。以下この条において同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 手すりが両側に設けられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 傾斜路の勾配部分は、その接続する通路との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりその存在を容易に識別できるものであること。 四 傾斜路の両側には、立ち上がり部が設けられていること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の仕上げ ◎傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の床の表面は滑りにくい仕上げとする。 幅 ◎移動等円滑化された経路を構成する傾斜路の有効幅は120cm以上とする。ただし、段に併設する場合は、有効幅90cm以上とする。 ◇車椅子使用者同士のすれ違いを考慮し、有効幅180cm以上とすることが望ましい。 41ページ 勾配 ◎移動等円滑化された経路を構成する傾斜路の勾配は1/12以下とする。ただし、傾斜路の高さが16cm以下の場合は、1/8以下とする。 ○屋外では1/20以下とする。 ◇屋内においても1/20以下とすることが望ましい。 踊り場 ◎車椅子使用者が途中で休憩できるよう、高さが75cmを超える移動等円滑化された経路を構成する傾斜路では、高さ75cm以内ごとに踏幅150cm以上の踊り場を設ける。 ◇車椅子使用者が途中で休憩できるよう、屋外では高さ60cm以内ごとに踏幅150cm以上の踊り場を設けることが望ましい。 端部 ○傾斜路の端部は床に対して滑らかに接する構造とする。 水平区間 ○他の通路と出会う部分に、通路を移動する人と車椅子使用者が衝突しないよう、長さ150cm以上の水平区間を設ける。 ◇車椅子使用者のより円滑な利用を想定し、長さ180cm以上の水平区間を設けることが望ましい。 勾配区間の識別 ◎傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の勾配部分は、その接続する通路との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいことによりその存在を容易に識別できるものとする。 立ち上がり部 ◎傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の両側には壁面又は立ち上がり部を設ける。 ○側面に壁面がない場合は、車椅子の乗り越え防止のため立ち上がり部に高さ35cm以上の幅木状の車椅子当たりを連続して設ける。 手すり ◎傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の両側に手すりを設置する。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)とする。 高さ ○2段手すりとした場合、床仕上げ面から手すり上端までの高さ:上段H=85cm程度、下段H=65cm程度 形状 ○丸形で直径3〜4cm程度とする。 材質 ◇冬期の冷たさに配慮した材質とすることが望ましい。 位置 ○手すりを壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを5cm程度とする。 端部 ○手すりの端部は壁面側に巻き込むなど端部が突出しない構造とする。 ○始終端部においては、手すりの水平部分を60cm程度以上とする。 点字 ○視覚障害者を誘導する傾斜路の上段の手すりにスロープの行き先を点字で表示する。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、点字内容を文字で併記する。 ○点字は、はがれにくいものとする。 42ページ ひさし ○車椅子使用者や肢体不自由者等は傘をさすことが難しいため、屋外に設置する場合は、屋根又はひさしを設置する。 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロックの敷設経路 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 参考2-1-15:移動等円滑化された経路を構成する傾斜路の例 43ページ 参考2-1-16:勾配区間の識別例 ・傾斜路の存在を容易に識別できるよう、勾配部分と接続する通路・水平部分との輝度コントラストを確保。 ・傾斜路の上端及び下端に接続する通路部に点状ブロックを敷設。 ・(名古屋鉄道名古屋本線 国府宮駅) ・(名古屋鉄道犬山線 徳重・名古屋芸大駅) 提供:名古屋鉄道株式会社 (コラム2)床面、側壁への配慮事項 ・床面と側壁が同色であるとロービジョン者は通路の縁端が視認できないことがあるため、床面と側壁の下部又は全体の輝度コントラストを確保する等により床の端が明確に認識できるようにする配慮が必要。 44ページ E階段 考え方 階段は、移動時に最も負担を感じる箇所であるため、特に高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、視覚障害者の円滑な利用に配慮する必要がある。特に手すりの高さや階段の滑りにくさ等について配慮が必要であるが、これらはすべての利用者にとっても効果的である。 移動等円滑化基準 (階段) 第8条 階段(踊り場を含む。以下同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 手すりが両側に設けられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限 りでない。 二 手すりの端部の付近には、階段の通ずる場所を示す点字をはり付けること。 三 回り段がないこと。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。  四 踏面の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものであること。 六 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものであること。 七 階段の両側には、立ち上がり部が設けられていること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 八 照明設備が設けられていること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 形式 ◎踏面の形状が一定していないため、回り段は避け、直階段又は折れ曲がり階段とする。 幅 ○有効幅120cm以上とする。 ◇2本杖使用者の利用を考慮し、有効幅150cm以上とすることが望ましい。 手すり ◎手すりを両側に設置する。 ○視覚障害者が階段の勾配を知り、ガイドとして伝って歩くことに配慮し、また、高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者が、上り、下りの両方向において体勢を継続的に安定させながら利用することができるよう、円滑な利用に配慮した手すり(例えば直棒2段手すり等)を設置する。 ○階段の幅が400cmを超える場合には、中間にも手すりを設置する。 高さ ○2段手すりとした場合、床仕上げ面から手すり上端までの高さ:上段H=85cm程度、下段H=65cm程度。 形状 ○丸形で直径3〜4cm程度とする。 材質 ◇冬期の冷たさに配慮した材質とすることが望ましい。 位置 ○手すりを壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを5cm程度とする。 端部 ○手すりの端部は、壁面側に巻き込むなど端部が突出しない構造とする。 ○始終端部においては階段の開始部より手前から設置し、手すりの水平部分を60cm程度とする。 45ページ 手すり 点字 ◎視覚障害者のために、手すりの端部の付近には、階段の通ずる場所を示す点字をはり付ける。 ○上記点字は、階段始終端部の点状ブロックの敷設された範囲近くの手すりの端部(水平部分)に表示する。 ○点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、点字内容を文字で併記する。 ○点字は、はがれにくいものとする。 蹴上げ・踏面 寸法 ○蹴上げ:16cm程度以下 踏面:30cm程度以上 段鼻 ◎段鼻の突き出しその他つまずきの原因となるものは設けない。 ○蹴込み板を設ける。 踏面の仕上げ ◎滑りにくい仕上げとする。 輝度コントラスト ◎踏面の端部(段鼻部)は、全長にわたって周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすることにより、段を容易に識別できるものとする。 ○踏面の端部(段鼻部)は、全長にわたって十分な太さ(幅5cm程度)とする。 ○踏面の端部(段鼻部)の色は始まりの段から終わりの段まで統一された色とする。 ○この識別部分は、汚損・損傷しにくいものを用いる。 立ち上がり部 ◎階段の両側には、立ち上がり部を設ける。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 ○側面に壁面がない場合は、5cm程度まで立ち上がり部を設ける。 階段始終端部の水平部分 ◇階段の始点、終点は、通路から120cm程度後退させ、平坦なふところ部分をとることが望ましい。 踊り場 ○高さ概ね300cm以内ごとに踊り場を設置する。 ○長さは120cm以上とする。 ○壁側の手すりは連続して設置する。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 明るさ ◎階段には照明設備を設ける。 ○高齢者やロービジョン者の移動等円滑化に配慮し、充分な明るさを確保するよう、採光や照明に配慮する。また、照明については、極端な暗がりや眩しさが生じないように配慮する。なお、鉄道駅舎においては、JISZ9110に示された照度を参考とする。 階段下 ○視覚障害者が白杖で感知できずに衝突してしまうことがないよう、階段下に十分な高さ(200cm程度の範囲内)のない空間を設けない。やむを得ず十分な高さのない空間を設ける場合は、高さ110cm以上の柵の設置やそれに代わる進入防止措置を講ずる。この場合、床面からの立ち上がり部に隙間を設けず、白杖で容易に柵等を感知できるよう配慮する。 46ページ 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロックの敷設位置 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 参考2-1-17:階段下の空間に柵等を設ける 47ページ 参考2-1-18:階段の例 参考2-1-19:蹴上げ・踏面の例 48ページ 参考2-1-20:踏面端部の例 参考2-1-21:踏面端部(段鼻部)の識別しやすい例 (コラム3)階段、段鼻への配慮事項 ・段鼻部の識別に加え、手すり下付近に、黄色や黄色/赤色のマーキングにより、ロービジョン者等の視認性に配慮した例。段鼻は無彩色としてしている。(写真右上) ・手すりを目立つ色とし、段の蹴上げ側から見た場合も段鼻部の視認性を確保している。(写真左下) ・手すり下部に照明をつけて、段の識別をしやすくしている。(写真右下) 49ページ F昇降機(エレベーター) 考え方 エレベーターは、車椅子使用者の単独での利用をはじめ、車椅子使用以外の障害者、高齢者、ベビーカー使用者等、すべての利用者に対して有効な垂直移動手段である。このためエレベーターは、すべての利用者が安全に、かつ容易に移動することができるようにきめ細かな配慮が必要である。 エレベーターの配置にあたっては、主動線上から認識しやすい位置に設置し、すべての利用者が容易に利用できるよう配慮する。 また、エレベーターの前には、エレベーター利用以外の旅客の動線と交錯しないようスペースを確保する。なお、利用者動線や車椅子使用者の円滑な移動の観点から、スルー型エレベーターが設置可能な場合は、スルー型エレベーターが望ましい。また、直角二方向出入口型エレベーターの設置は、他の方式のエレベーターの設置が構造上もしくは安全上困難な場合及び車椅子使用者が円滑に利用できるかごの大きさの場合に限定する。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 7 移動等円滑化された経路を構成するエレベーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 かご及び昇降路の出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 二 かごの内法幅は百四十センチメートル以上であり、内法奥行きは百三十五センチメートル以上であること。ただし、かごの出入口が複数あるエレベーターであって、車椅子使用者が円滑に乗降できる構造のもの(開閉するかごの出入口を音声により知らせる設備が設けられているものに限る。)については、この限りでない。 三 かご内に、車椅子使用者が乗降する際にかご及び昇降路の出入口を確認するための鏡が設けられていること。ただし、前号ただし書に規定する場合は、この限りでない。 四 かご及び昇降路の出入口の戸にガラスその他これに類するものがはめ込まれていること又はかご外及びかご内に画像を表示する設備が設置されていることにより、かご外にいる者とかご内にいる者が互いに視覚的に確認できる構造であること。 五 かご内に手すり(握り手その他これに類する設備を含む。以下同じ。)が設けられていること。 六 かご及び昇降路の出入口の戸の開扉時間を延長する機能を有したものであること。 七 かご内に、かごが停止する予定の階及びかごの現在位置を表示する設備が設けられていること。 八 かご内に、かごが到着する階並びにかご及び昇降路の出入口の戸の閉鎖を音声により知らせる設備が設けられていること。 九 かご内及び乗降ロビーには、車椅子使用者が円滑に操作できる位置に操作盤が設けられていること。 十 かご内に設ける操作盤及び乗降ロビーに設ける操作盤のうちそれぞれ一以上は、点字がはり付けられていること等により視覚障害者が容易に操作できる構造となっていること。 十一 乗降ロビーの幅は百五十センチメートル以上であり、奥行きは百五十センチメートル以上であること。 十二 乗降ロビーには、到着するかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられていること。ただし、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた時にかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられている場合又は当該エレベーターの停止する階が二のみである場合は、この限りでない。 50ページ 8 移動等円滑化された経路を構成するエレベーターの台数、かごの内法幅及び内法奥行きは、旅客施設の高齢者、障害者等の利用の状況を考慮して定めるものとする。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 かごの大きさ ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかごの内法幅は、140cm 以上、内法奥行き135cm 以上(11 人乗り程度)とする。ただし、スルー型など出入口が複数あるエレベーターで、車椅子使用者が円滑に乗降できる構造と開閉するかごの出入口を音声で知らせる設備が設けられているものにあっては、この限りでない。 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターの台数、かごの内法幅及び内法奥行きは、旅客施設の高齢者、障害者等の利用の状況を考慮して定めるものとする。 ○直角二方向出入口型エレベーターの設置は、他の方式のエレベーターの設置が構造上もしくは安全上困難な場合及び車椅子使用者が円滑に利用できるかごの大きさの場合に限定する。 ○旅客施設においてエレベーターを設置する場合には、当該旅客施設の高齢者、障害者等の利用状況を考慮し、適切な輸送力を確保するよう、設置台数並びに、かごの内法幅及び内法奥行きを検討する。かごの大きさについては、以下の表も参考にし、設置するエレベーターのかごの内法幅及び内法奥行きの大きさを選定する。 <エレベーターのかご及び昇降路寸法[JISA4301]抜粋> 最大定員[人]11 かごの内法幅[cm]140 かごの内法奥行き[cm]135 最大定員[人]13 かごの内法幅[cm]160 かごの内法奥行き[cm]135 最大定員[人]15 かごの内法幅[cm]160 かごの内法奥行き[cm]150 最大定員[人]17 かごの内法幅[cm]180 かごの内法奥行き[cm]150         かごの内法幅[cm]200 かごの内法奥行き[cm]135        備考 アクセシビリティ・ガイドライン※における標準 最大定員[人]20 かごの内法幅[cm]180 かごの内法奥行き[cm]170        かごの内法幅[cm]200 かごの内法奥行き[cm]150 最大定員[人]24 かごの内法幅[cm]200 かごの内法奥行き[cm]175        かごの内法幅[cm]215 かごの内法奥行き[cm]160        備考 アクセシビリティ・ガイドライン※における推奨 必要に応じて、上記以上の大きさも考慮する。 ※公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン」(開催地に求められるアクセシビリティに関する指針を示したもの) ◇利用者動線や車椅子使用者の円滑な移動の観点から、設置可能な場合は、スルー型エレベーターを設置することが望ましい。 ◇緊急時の対応等に配慮し、可能な箇所には、ストレッチャーを乗せることができる、奥行きのあるエレベーターを導入することが望ましい。 51ページ かご及び昇降口の出入り口の幅 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターの出入口の有効幅は80cm以上とする。 ◇車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とすることが望ましい。 鏡 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターにおいて、出入口同方向型(一方向型)のエレベーターには、かご正面壁面又はかご壁面上部に、出入口の状況(特に足元)が把握できるよう、大きさ、位置に配慮して鏡を設置する。(ステンレス鏡面又は安全ガラス等) ○出入口同方向型(一方向型)のエレベーターのかご正面壁面に設置する鏡は、車椅子使用者が後退時に出入口付近(特に足元)を確認できるよう、床上40cm程度から150cm程度までのものとする。 ○スルー型や直角二方向出入口型のエレベーターには、車椅子使用者の利用時の背後の状況(特に足元)が把握できるよう大きさ、形状、位置に配慮して鏡を設置する。(ステンレス鏡面又は安全ガラス等) 外部との連絡 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターは、防犯や事故発生時の安全確保、聴覚障害者の緊急時の対応のため、かご及び昇降路の出入口の戸にガラス等による窓等を設けることにより外部から内部が、内部から外部が見える構造とする。ガラス等による窓等を設置できない場合には、かごの内部から外部を、外部から内部を確認するための映像設備を設ける。外部から内部を確認するための映像設備は、ロビー出入口の上部等、見やすい位置に設置する。 ◇かご外部から、かご内の車椅子使用者や小児、また転倒した旅客が視認できるよう、ガラス窓の下端は床面から50cm程度が望ましい。 ◇聴覚障害者も含めた緊急時への対応に配慮すると、以下のような設備を設けることが望ましい。 ・故障が検知された場合は、故障したことが伝わるよう、自動的にかご内にその旨の表示を行うか、かご内に外部に故障を知らせるための非常ボタンを設ける。 ・かご内に、緊急時に聴覚障害者が外部と連絡を取ることが可能な(緊急連絡を必要としている者が聴覚障害者であることが判別できる)ボタンを設置する。 ・係員に連絡中である旨や係員が向かっている旨を表示する設備を設ける。 手すり ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内には手すり(握り手その他これに類する設備を含む)を出入口の戸のある側以外の壁面に設ける。 ○高さ80cm〜85cm程度に設置する。 ○握りやすい形状とする。 52ページ 表示 表示 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内に、かごの停止する予定の階及びかごの現在位置を表示する装置を設置する。 ◇聴覚障害者が定員超過であることが確認できるよう、かご内操作盤付近の見やすい位置に過負荷の文字表示装置を設置することが望ましい。 ◇表示画面の配色については、参考2-2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の利用者に配慮することが望ましい。 音声等 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内に、かごの到着する階並びにかご及び昇降路の出入口の戸の閉鎖を音声で知らせる設備を設ける。 ◇到着階に何があるか(地上出口、改札口等)具体的に音声案内することが望ましい。 ○スルー型エレベーターの場合は、開閉する側の戸を音声で知らせることとする。その際、視覚障害者に配慮した案内内容とする。 操作盤 ボタン ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターには、かご及び昇降路の出入口の戸の開扉時間を延長する機能を有したものとする。 ○操作盤のボタンは、指の動きが不自由な利用者も操作できるような押しボタン式とし、静電式タッチボタンは避ける。 ○音と光で視覚障害者や聴覚障害者にもボタンを押したことが分かるものとする。 ◇かご内に設ける操作盤は、視覚障害者で点字が読めない人もボタンの識別ができるよう階の数字等を浮き出させること等により分かりやすいものとすることが望ましい。 ◇ボタンの文字は、周囲との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したものであることが望ましい。 車椅子対応 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内及び乗降ロビーには、車椅子使用者が円滑に操作できる位置に操作盤を設置する。 ○かご内に設置する操作盤は、かごの左右に設置する。設置高さは100cm程度とする。 ○乗降ロビーに設置される操作盤は、車椅子使用者が操作しやすいように配慮する。設置高さは100cm程度とする。 ◇ドアが開いた状態は最低 4 秒維持するものとし、車椅子使用者対応の主・副操作盤の行き先ボタンを操作することにより、戸の開放時間が通常より長くなる(10秒以上)機能を設置することが望ましい。 53ページ 操作盤 点字 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内に設ける操作盤及び乗降ロビーに設ける操作盤のうちそれぞれ1以上は、点字がはり付けられていること等により視覚障害者が容易に操作できる構造とする。 ○かご内操作盤の各操作ボタン(階数、開、閉、非常呼び出し、インターホン)には、縦配列の場合は左側に、横配列の場合は上側に点字表示を行う。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。 光電安全装置 ○かごの出入口部には、乗客の安全を図るために、戸閉を制御する装置を設ける。高さは、車椅子のフットサポート部分と身体部の両方の高さについて制御できるようにする。なお、機械式セーフティーシューには、光電式、静電式または超音波式等のいずれかの装置を併設する。 管制運転による異常時表示 ○地震、火災、停電時管制運転を備えたエレベーターを設置する場合には、音声及び文字で管制運転により停止した旨を知らせる装置を設ける。 乗降ロビー 広さ ◎車椅子が回転できる広さ(幅150cm以上、奥行き150cm以上)を確保する。 ○電動車椅子が回転できる広さ(幅180cm以上、奥行き180cm以上)を確保する。 ○新設等の場合には、乗降ロビー付近には、下り階段・下り段差を設けない。 ○既存施設であって乗降ロビー付近に下り階段・下り段差が存在する場合には、参考2-1-30(<エレベーターロビー付近の安全空間確保の重要性>)を参考として、その間には十分な広さの空間を設ける。 ◇この場合、利用者の安全を確保する観点から、転落防止ポールの設置等の転落防止策を併せて講ずることが望ましい。 表示 ○障害者、高齢者、ベビーカー使用者等が優先利用できることを示す「優先マーク」を設置する。 音声 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターの乗降ロビーには、到着するかごの昇降方向を音声で知らせる設備を設ける。ただし、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた時にかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられている場合又は当該エレベーターの停止する階が2のみである場合は、この限りでない。 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロックの敷設経路 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 54ページ 参考2-1-22:エレベーターの平面の例 参考2-1-23:エレベーターの正面の例 参考2-1-24:エレベーターの断面の例 55ページ 参考2-1-25:大型エレベーター・ストレッチャー対応型エレベーターの例 ・11人乗り(140cm(W)×135cm(D))のエレベーター(スルー型や直角2方向出入口型以外のエレベーター)を電動車椅子使用者が利用する場合には、内部での転回が困難であるためバックにより退出する必要が生ずる。 ・一部の旅客施設では、15人乗り以上、さらには18人乗り以上のストレッチャー対応型エレベーターの設置事例が見られる。このようなエレベーターの設置により、緊急時におけるストレッチャー利用や電動車椅子利用時におけるかご内部での転回が可能となる。また、車椅子使用者と他の旅客によるエレベーターの同時利用が可能となる。 ・ストレッチャーの一般的な大きさは全長190cm程度、全幅60cm程度である。 ・安全性・利便性向上、輸送力向上、移動等円滑化の観点から、より大型のエレベーターを設置することが望ましい。また、利用者動線や車椅子使用者が内部で転回することなく利用できる等の観点からスルー型が有効な場合は、その設置を検討する。 (コラム4)複数エレベーターを設置した事例及び大型エレベーターを新設した事例 <阪急電鉄 六甲駅の例> ・エレベーター利用者が多くても、建物の構造上、大型エレベーターを導入できない箇所もある。ここに紹介する旅客施設では、高速のスルー型11人乗りエレベーターを2基設け、それぞれの待機する階を地上出入口と改札階に分け、乗客の待ち時間を短縮している。 提供:阪急電鉄株式会社 <東日本旅客鉄道 有楽町駅の例> ・エレベーター利用者の増加に伴う待機列の解消のため、エレベーターを大型のものとし、バリアフリー設備を拡充した。  提供:東日本旅客鉄道株式会社 56ページ (コラム5)開口部に袖壁無のエレベーターを設置した事例 ・空港の事例: 車椅子使用者の出入りのしやすさ、カートやキャリーバックの利用状況を考慮した構造となっている。 提供:東京国際空港ターミナル株式会社 (コラム6)ハンドル形電動車椅子の対応について ・平成28年度に検討された、ハンドル形電動車椅子による公共交通利用の際の要件の見直しにおいて、「ハンドル形電動車椅子の公共交通利用に関する調査検討報告書」(平成29年3月:国土交通省総合政策局安心生活政策課)では、以下のように示されている。 ジョイスティック形電動車椅子、手動車椅子と同様、段差が解消された駅をハンドル形電動車椅子 の利用可能な鉄道駅とすることを原則とする。なお、鉄道事業者は駅の構造上の問題や、工事中などで利用できない時などには、利用できない理由を予めホームページ等で周知した上で、利用者からの問い合わせに対し、具体的に説明することとする。 ・例えば直角二方向出入口型エレベーター等を設置する際に、誰もが利用できる仕様とすることが原則であるが、万が一、構造上の問題でサイズの大きな車椅子での利用が困難な場合には、その旨をホームページ等で情報提供する必要がある。 57ページ 参考2-1-26:かご内正面に低い位置まで鏡を設置したエレベーターの例 <福岡市交通局 七隈線エレベーター> 提供:福岡市交通局 参考2-1-27:直角二方向出入口型エレベーターに設置された凸面鏡の例 ○直角二方向型エレベーターにおいても、背面方向出入口の旅客の利用状況や床等が見やすい設置位置、形状に配慮する。 <東京都交通局 板橋区役所前駅 直角二方向型エレベーター> ハンドル形電動車椅子で利用する場合も切り返しを行うことで使用可能なサイズとなっている。 58ページ 参考2-1-28:聴覚障害・ロービジョン者・色覚異常の利用者等に対応したエレベーターかご内の大型文字表示の事例 <液晶画面による輝度コントラストを確保した表示・操作ボタン> ・操作ボタンと液晶表示の文字色に、数字の誤認識が少ないフォントと高い輝度コントラスト(明度差7)を確保した文字表示を採用している。 ・非常時の誘導案内などエレベーターの状況をリアルタイムに液晶表示している。 提供:株式会社日立製作所 <大型文字表示・点滅による表示> 中部国際空港では、操作ボタンのわかりやすさ、音声、文字表示について充実が図られている。 ・満員/地震/停電/火災 ・こちらのドアがひらきます ・係員が向かっています ・しばらくお待ちください ・ドアが開いたら降りてください ・非常ボタンを押してください  等 出典:中部国際空港株式会社「セントレアとユニバーサルデザイン」 59ページ <聴覚障害者に対応したボタンの配置(東京国際空港)> 提供:東京国際空港ターミナル株式会社 60ページ (コラム7)防水機能のあるボタン 屋外にあるエレベーターでは、防水のために押し込むタイプのボタンを設けている場合がある。口径が狭く指先だけで押し込まなければならないものだと、手や指が不自由な利用者にとって 不便なため、ボタン回りの丸枠部分を低くするなど操作しやすいボタンであることが望ましい。 参考2-1-29 エレベーターかご内の音声案内の例 <停止する階が2つである場合(国土交通省実証実験結果を踏まえた整備の方向性)> ■表現 ・エレベーターの開扉方向の案内放送は、「乗り口と反対側」など、乗った位置を元にした具体的な文章表現とし、「こちら側」などの音声案内装置の位置を基にした抽象的な文章表現を避ける。 ・直角方向のエレベーターの開扉方向の案内放送は、「乗り口から見て右側」など、乗った位置を基にした具体的な文章表現とする。 ・文章表現は誰でもわかりやすい平易なものとする。 ■タイミング ・エレベーターの開扉方向の案内放送は、できるだけ乗った時と降りる時両方に案内をする。 ・乗った時と降りる時両方の案内が難しい場合は、乗った時に案内をする。 61ページ <停止する階が3つである場合の例> <下へ移動するときのアナウンス> @2階を出て1階へ行く時  手前スピーカー 音声なし 奥扉スピーカー 下へ参ります 反対側のドアが開きます A1階に着く直前 手前スピーカー こちらのドアが開きます 奥扉スピーカー 音声なし B1階を出てB2へ行く時 手前スピーカー 1番線ホーム改札階へ参ります 奥扉スピーカー 音声なし CB2に着く直前 手前スピーカー 地下2階1番線ホーム改札階です こちらのドアが開きます 奥扉スピーカー 音声なし <上へ移動するときのアナウンス> @B2を出て1階に行く時 手前スピーカー 上へ参ります 2階は反対側のドアが開きます 奥扉スピーカー 音声なし A1階に着く直前 手前スピーカー 1階地上出口です こちらのドアが開きます 奥扉スピーカー 音声なし B1階を出て2階へ行く時 手前スピーカー 2階へ参ります。反対側のドアが開きます 奥扉スピーカー 音声なし C2階に着く直前 手前スピーカー 音声なし 奥扉スピーカー こちらのドアが開きます 62ページ 参考2-1-30 エレベーターロビー付近の安全空間確保の重要性 ○エレベーターロビー付近に下り段差等が近接する等の危険な状況をつくりださないこと ・車椅子使用者は、かご内で転回できない場合には、前進で乗り込み、後退して降りることとなるため、エレベーターを降りた後のロビー空間において車椅子使用者が転回できる空間を確保することが重要である。このため、本整備ガイドラインにおいては、ロビー空間の広さについて、標準的な整備内容として車椅子使用者が転回できるよう150cm以上×150cm以上の空間を確保すること、望ましい整備内容として電動車椅子使用者が転回できるよう180cm以上×180cm以上の空間を確保することを示している。 ・しかし、実際の利用状況を鑑みると、電動車椅子使用者がエレベーターを出入口の左右に避けながら降りることも想定され、出入口の正面方向のみでなく、出入口の左右方向にも十分な広さの空間を確保する必要がある。 ・このような電動車椅子使用者等の利用状況を考慮すると、出入口左右方向に下り段差や下り階段、下りスロープが設置されている場合、電動車椅子使用者等が転倒、転落するおそれがある。同様に、肢体不自由者、高齢者、視覚障害者等をはじめ高齢者、障害者等にとっても、エレベーター出入口付近に下り段差や下り階段、下りスロープが近接することは危険であることに十分留意する必要がある。 <X駅での事故事例> ・X駅において、電動車椅子使用者がエレベーターに近接する下り階段(2段)から転落し、死亡する事故が発生した。 ・事故現場はエレベーターロビー出入口と下り階段が隣接(出入口端から階段まで38cm)しており、電動車椅子使用者は、エレベーター前の通路で方向転換する際に当該階段より転落した。 ・エレベーターかご内・出入口幅の寸法はならびにロビー広さは旧移動等円滑化基準に適合しており、かつ、旧整備ガイドラインに記載された内容を満たしていた。 【事故発生時の状況】 63ページ <新設・大規模改良時の配慮事項> @電動車椅子が後向きでエレベーターを降りた後、左右に避け、さらに転回できる範囲を確保するため、出入口左右端からそれぞれ十分な広さの範囲(左右端からそれぞれ電動車椅子が転回できる空間の確保を考慮すると180cm程度)には、下り階段・段を設けない。 A正面で転回することも考慮し、正面方向にも十分な広さ(電動車椅子の転回を考慮すると180cm程度)の範囲には下り階段・段を設けない。  ※@Aにおいて、構造上の問題などにより段・階段を設ける場合には、転落防止ポール等により対応する。 B電動車椅子使用者がかご内で転回し前進により降りることができる大型のエレベーター(18人乗り以上等)を設置することや、かご内部で転回することなく利用できるスルー型エレベーターを設置することも有効である。 <既存施設等において危険な状況が生じている場合の対応方策> @上記空間内(出入口左右端から電動車椅子が転回できる十分な空間)に下り階段・下り段がある場合、転落防止策として、転落防止柵等を設ける。 Aただし、階段において転落防止柵を設けることにより、本整備ガイドラインで定める階段幅120cmや建築基準法で定める階段幅を確保できない場合など構造上転落防止柵を設置できない場合には、当該エレベーターを利用するために必要な各階乗り口位置及びかご内の車椅子使用者に配慮した操作盤近くにおいて注意喚起の掲示を行う(降りた後に下り階段・下り段が近接する位置とともに安全に降りるために転回すべき方向を示す)。 Bなお、旅客施設のエレベーターロビーには、様々な構造が想定されるため、@及びA以外の転落防止策の実施にあたっては、必要に応じて電動車椅子使用者の意見を聞き検討する。 64ページ Gエスカレーター 考え方 高齢者、障害者等による利用を想定すると、乗降ステップの水平区間や速度などに配慮する必要がある。高齢者、障害者等は下り階段を不安に感じる場合があり、上り専用とともに下り専用エスカレーターを設置する配慮が必要である。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 9 移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、第七号及び第八号については、複数のエスカレーターが隣接した位置に設けられる場合は、そのうち一のみが適合していれば足りるものとする。 一 上り専用のものと下り専用のものをそれぞれ設置すること。ただし、旅客が同時に双方向に移動することがない場合については、この限りでない。 二 踏み段の表面及びくし板は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 昇降口において、三枚以上の踏み段が同一平面上にあること。 四 踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段相互の境界を容易に識別できるものであること。 五 くし板の端部と踏み段の色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりくし板と踏み段との境界を容易に識別できるものであること。 六 エスカレーターの上端及び下端に近接する通路の床面等において、当該エスカレーターへの進入の可否が示されていること。ただし、上り専用又は下り専用でないエスカレーターについては、この限りでない。 七 幅は、八十センチメートル以上であること。 八 踏み段の面を車椅子使用者が円滑に昇降するために必要な広さとすることができる構造であり、かつ、車止めが設けられていること。 (エスカレーター) 第7条 エスカレーターには、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を音声により知らせる設備を設けなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 方向 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターには、上り専用と下り専用をそれぞれ設ける。ただし、旅客が同時に双方向に移動することがない場合については、この限りでない。 幅 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターの踏み段幅は80cm以上とする。ただし、複数のエスカレーターが隣接した位置に設けられる場合は、そのうち1のみが適合していれば足りるものとする。 ◇踏み段幅100cm(S1000型)程度とすることが望ましい。 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、踏み段の面を車椅子使用者が円滑に昇降できるために必要な広さとすることができる構造であり、かつ、車止めが設けられていること。ただし、複数のエスカレーターが隣接した位置に設けられる場合は、そのうち1のみが適合していれば足りるものとする。 65ページ 踏み段及びくし板表面の仕上げ ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターの踏み段及びくし板の表面は滑りにくい仕上げとする。 識別 踏み段 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、踏み段の端部全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により、踏み段相互の識別をしやすいようにする。 ◇踏み段の端部だけでなく、四方に縁取りを行うなどにより、踏み段相互の識別をしやすいようにすることが望ましい。 くし板 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、くし板の端部と踏み段の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により、くし板と踏み段との境界を容易に識別できるようにする。 昇降口水平部 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターの昇降口の踏み段の水平部分は踏み段3枚以上とする。 手すり ○くし板から70cm程度の移動手すりを設ける。 ○乗降口には、旅客の動線の交錯を防止するため、高さ80〜85cm程度の固定柵又は固定手すりを設置する。 速度 ◇1以上のエスカレーターは30m/分以下で運転可能なものとすることが望ましい。 表示 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターにおいて、上り専用又は下り専用のエスカレーターの場合、上端及び下端に近接する通路の床面又は乗り口付近のわかりやすい位置(ゲートポスト等)等において、当該エスカレーターへの進入の可否を示す。ただし、上り専用又は下り専用でないエスカレーターについては、この限りでない。 ◇上り又は下り専用でないエスカレーターについて、当該エスカレーターへの進入の可否を表示することが望ましい。 ○エスカレーターへの進入可否表示の配色については、参考2-2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の利用者に配慮する。 ◇エスカレーターのベルトに、しるしをつけることにより、進行方向がわかるようにすることが望ましい。 音声案内 ◎進入可能なエスカレーターの乗り口端部において、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を知らせる音声案内装置を設置する。 ○音声案内装置の設置にあたっては、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい音量、音質とすることに留意し、音源を乗り口に近く、利用者の動線に向かって設置する。 (設置の考え方、具体的な音声案内例は2.A「視覚障害者誘導用案内設備」を参照) 66ページ 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロックの敷設経路 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 参考2-1-31:エスカレーターの例 67ページ 参考2-1-32:エスカレーター進入可否表示の例 ○床面及び乗り口ポールの低い位置においてエスカレーターへの進入可否を表示。 ※配色については、参考2-2-5を参照。 ○点状ブロックは、点検蓋に接する程度の箇所に奥行き60cm程度で敷設。センサーがある場合はその手前に敷設。横からの進入もある場合は横にも敷設。 (コラム8) エスカレーターでの歩行への注意喚起 ・エスカレーター内で歩行している利用者がいると、高齢者や片側に麻痺がある人、視覚障害者、子連れや介助者を伴っている利用者等にとって、危険を伴うことがあるとともに、思わぬ事故を誘発することもありうる。すべての利用者が安全にエスカレーターを利用するために、十分な注意喚起を促すことが望まれる。そのための案内や掲示が必要である。 エスカレーターの上りと下りの判別に男女の声 ・エスカレーターの上下方向を案内する際に、一部の事業者で見られるような、男女の声を分けて音声案内するなど、分かりやすい工夫が必要である。 68ページ 参考2-1-33:エスカレーターへの誤進入防止の例 ◇エスカレーターの稼動方向がわかる手すりの表示例  手すりへの案内表示により、上下の稼動方向が視認しやすくなっている。 参考2-1-34:踏み段の識別に関する例 ◇四方を縁取りすることで、踏み段の範囲を視認しやすくしている例    69ページ 2.誘導案内設備に関するガイドライン @視覚表示設備 考え方 一般に、視力の低下は40〜50歳ぐらいからはじまり、60歳を超えると急激に低下する、車椅子使用者の視点は一般歩行者よりおよそ40cmほど低い、聴覚障害者は耳から聞く情報は得られないことが多い、日本語のわからない訪日外国人が多いなど、さまざまな利用者が情報コミュニケーションの制約を抱えている。 移動等円滑化をめざす視覚表示設備の整備においては、設備本来の機能を十分に発揮できるようにすることが必要であると同時に、さまざまな情報コミュニケーションの制約を抱える利用者も、共通の設備から情報を得られるように工夫する考え方が必要である。 サインはコミュニケーション・メディアの一種なので、情報・様式・空間上の位置という三つの属性を持つ。視覚表示設備は、見やすさとわかりやすさを確保するために、情報内容、表現様式(表示方法とデザイン)、掲出位置(掲出高さや平面上の位置など)の三要素を考慮することが不可欠である。 さらにサインの情報内容や表現様式、掲出位置を、体系的なシステムとして整備し、また可変式情報表示装置を、状況により変化するニーズに合った情報をタイムリーに表示する方式として整備することが、移動しながら情報を得たい利用者にわかりやすく情報を伝達する基本条件になる。 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備) 第10条 車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (標識) 第11条 エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備(「移動等円滑化のための主要な設備」という。)又は次条第一項に規定する案内板その他の設備の付近には、これらの設備があることを表示する標識を設けなければならない。 2 前項の標識は、日本工業規格Z八二一〇に適合するものでなければならない。 (移動等円滑化のための主要な設備の配置等の案内) 第12条 公共用通路に直接通ずる出入口(鉄道駅及び軌道停留場にあっては、当該出入口又は改札口。次項において同じ。)の付近には、移動等円滑化のための主要な設備(第四条第三項前段の規定により昇降機を設けない場合にあっては、同項前段に規定する他の施設のエレベーターを含む。以下この条において同じ。)の配置を表示した案内板その他の設備を備えなければならない。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 70ページ ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 ■サインシステム ●基本的事項 サインの種別 ○サインは、誘導・位置・案内・規制の4種のサイン類を動線に沿って適所に配置して、移動する利用者への情報提供を行う。 ・誘導サイン類:施設等の方向を指示するのに必要なサイン ・位置サイン類:施設等の位置を告知するのに必要なサイン ・案内サイン類:乗降条件や位置関係等を案内するのに必要なサイン ・規制サイン類:利用者の行動を規制するのに必要なサイン 表示方法 ○出入口名、改札口名、行先、旅客施設名など主要な用語には、英語を併記する。 ◇地域ごとの来訪者事情により、日本語、英語以外の言語を併記することが望ましい。 ○英語を併記する場合、英訳できない固有名詞にはヘボン式ローマ字つづりを使用する。 ◇固有名詞のみによる英文表示には、ローマ字つづりの後に〜Bridgeや〜Riverなど、意味が伝わる英語を補足することが望ましい。 ◇書体は、視認性の優れた角ゴシック体とすることが望ましい。 ○文字の大きさは、視力の低下した高齢者等に配慮して視距離に応じた大きさを選択する。 ○掲示位置については、ロービジョン者等に配慮して、可能な限り、接近できる位置、視点の高さに配置する。 ○安全色に関する色彩は、別表2-2-1に示すJIS Z9103による。出口に関する表示は、別表2-2-1に示すJIS Z9103により黄色とする。 ○高齢者に多い白内障に配慮して、青と黒、黄と白の色彩組み合わせは用いない。 ○サインの図色と地色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により容易に識別できるものとする。 ○色覚異常の利用者に配慮し、参考2-2-5を参考とし見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素毎の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保した表示とする。  留意すべき色の選択例: ・濃い赤を用いず朱色やオレンジに近い赤を用いる。赤を用いる場合は他の色との境目に細い白線を入れると表示が目立ちやすくなる。 71ページ 見分けにくい色の組み合わせ例: ・「赤と黒」、「赤と緑」、「緑と茶色」、「黄緑と黄色」、「紫と青」、「赤と茶色」、「水色とピンク」の見分けが困難 ・輝度コントラストには敏感であり、同系色の明暗の識別に支障は少ない。 また、路線、車両種別等を色により表示する場合には、文字を併記する等色だけに頼らない表示方法にも配慮する。 ◇サインは、必要な輝度が得られる器具とすることが望ましい。さらに、近くから視認するサインは、まぶしさを感じにくい器具とすることが望ましい。 ◎エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備(以下「移動等円滑化のための主要な設備」という。)又は公共用通路に直接通ずる出入口の付近に設けられる、移動等円滑化のための主要な設備の配置を表示した案内板その他の設備の付近には、これらの設備があることを表示する標識(ピクトグラム)を設けなければならない。また、その標識(ピクトグラム)はJISZ8210に適合するものとする。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 ◎公共用通路に直接通ずる出入口(鉄道駅及び軌道停留場にあっては、当該出入口又は改札口。以下同じ。)の付近には、移動等円滑化のための主要な設備の配置を表示した案内板その他の設備を備えなければならない。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 ○移動等円滑化のための主要な設備の配置を表示した案内板その他の設備について、誘導サイン等他の設備の整備状況を踏まえ、必要な場合には乗降場又はその付近にも整備する。 ◇外光、照明の逆光や光の反射により、見にくくならないよう配慮することが望ましい。また、サインの背景に照明や看板等が位置すること等により、見にくくならないように配慮することが望ましい。 ○番線表示や設備の存在を示すためのサインは遠方からでも確認できる大きさのものとする。 ○視野欠損のロービジョン者などは壁に掲示されたサインなどは近づいて読む場合があり、極端に大きな文字等の場合には一部だけしか見えないことがあるため接近して読む可能性のあるサインの設置では文字等の大きさに配慮する。 ◇移動等円滑化された経路等(乗り継ぎ経路含む)を高齢者、障害者等が円滑に移動できるよう、標識等により誘導することが望ましい。 乗継ぎ経路等誘導時の配慮 ○エレベーターの設置されている出入口の位置が遠方からでも把握できるように大きなピクトグラム等で表示する。 ○他事業者・他交通モード間の乗継ぎ経路への誘導にあたっては、エレベーターを利用した経路もわかりやすく表示する。 72ページ 乗継ぎ経路等誘導時の配慮 ◇隣接する他社線、公共空間とは連続的に案内サインが繰り返し配置されることが望ましい。この場合、サイン計画にあたっては、施設設置管理者間で協議調整の上、表示する情報内容を統一し、案内サインがとぎれないよう留意すること。また、関係者が多岐にわたる等の場合においては、協議会等を設置して検討する。 ●誘導サイン・位置サイン 表示する情報内容 ○誘導サイン類に表示する情報内容は、別表2-2-3のうち必要なものとする。 ○誘導サイン類に表示する情報内容が多い場合、経路を構成する主要な空間部位と、移動等円滑化のための主要な設備にかかるものを優先的に表示する。 ○位置サイン類に表示する情報内容は、別表2-2-4のうち移動等円滑化のための主要な設備のほか必要なものとする。 ○位置サイン類に表示する情報内容が多い場合、移動等円滑化のための主要な設備のほか経路を構成する主要な空間部位を優先的に表示する。 表示面と器具のデザイン ◇誘導サイン類及び位置サイン類はシンプルなデザインとし、サイン種類ごとに統一的なデザインとすることが望ましい。 表示面の向きと掲出高さ ○誘導サイン類及び位置サイン類の表示面は、動線と対面する向きに掲出する。 ○誘導サイン類及び位置サイン類の掲出高さは、視認位置からの見上げ角度が小さく、かつ視点の低い車椅子使用者でも混雑時に前方の歩行者に遮られにくい高さとする。 ○誘導サイン類及び位置サイン類の掲出にあたっては、照明の映り込みがないように配慮する。また、外光、照明の配置により見にくくならないよう配慮する。 ◇動線と対面する向きのサイン2台を間近に掲出する場合、手前のサインで奥のサインを遮らないように、2台を十分離して設置することが望ましい。 配置位置と配置間隔 ○経路を明示する主要な誘導サインは、出入口と乗降場間の随所に掲出するサインシステム全体のなかで、必要な情報が連続的に得られるように配置する。 ○個別の誘導サインは、出入口と乗降場間の動線の分岐点、階段の上り口、階段の下り口及び動線の曲がり角に配置する。 ◇長い通路等では、動線に分岐がない場合であっても、誘導サインは繰り返し配置することが望ましい。 ○個別の位置サインは、位置を告知しようとする施設の間近に配置する。 ●案内サイン 表示する情報内容 ○構内案内図に表示する情報内容は、別表2-2-5のうち移動等円滑化のための主要な設備とする。 ○構内案内図には移動等円滑化された経路を明示する。 73ページ ○旅客施設周辺案内図を設ける場合、表示する情報内容は、別表2-2-6のうち必要なものとする。 ◇ネットワーク運行・運航のある交通機関においては、改札口等に路線網図を掲出することが望ましい。 表示面と器具のデザイン ◇案内サイン類はシンプルなデザインとし、サイン種類ごとに統一的なデザインとすることが望ましい。 ◇構内案内図や、表示範囲が徒歩圏程度の旅客施設周辺案内図の図の向きは、掲出する空間上の左右方向と、図上の左右方向を合わせて表示することが望ましい。 表示面の向きと掲出高さ ◇案内サイン類の表示面は、利用者の円滑な移動を妨げないよう配慮しつつ、動線と対面する向きに掲出することが望ましい。 ◇空間上の制約から動線と平行な向きに掲出する場合は、延長方向から視認できる箇所に、その位置に案内サイン類があることを示す位置サインを掲出することが望ましい。 ○構内案内図、旅客施設周辺案内図、時刻表などの掲出高さは、歩行者及び車椅子使用者が共通して見やすい高さとする。 ○運賃表を券売機上部に掲出する場合においても、その掲出高さは、券売機前に並ぶ利用者に遮られないように配慮しつつ、車椅子使用者の見上げ角度が小さくなるように、極力低い高さとする。この場合、照明の映り込みが起きないように配慮する。 ○券売機上部に掲出する運賃表の幅は、利用者が券売機の近くから斜め横向きでも判読できる範囲内とする。 ○案内サインの掲出にあたっては、照明の映り込みがないように配慮する。また、外光、照明の配置により見にくくならないよう配慮する。 配置位置と配置間隔 ○構内案内図は、出入口付近や改札口付近からそれぞれ視認できる、利用者の円滑な移動を妨げない位置に配置する。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 ◇乗り換え経路又は乗り換え口を表示する構内案内図は、当該経路が他の経路と分岐する位置にも配置することが望ましい。 ◇旅客施設周辺案内図を設ける場合、改札口など出入口に向かう動線が分岐する箇所に設置することが望ましい。 ◇大規模な旅客施設では、構内案内図などを繰り返し配置することが望ましい。 ◇地下駅等における移動等円滑化された経路上ではない各出入口において、エレベーターが設置されている出入口までを示す位置案内図等を設置し、移動等円滑化された経路への誘導経路を示すことが望ましい。 その他 ◇移動距離が長い場合、目的地までの距離を併記することが望ましい。 74ページ ■可変式情報表示装置 可変式情報表示装置とは、LEDなどを用いた電子式やフラップなどを用いた機械式の表示方式を用いて、視覚情報を可変的に表示する装置のことをいう。 ◎車両等の運行(運航を含む。)に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む。)を文字等により表示するための設備を備えなければならない。 表示する情報内容 ○平常時に表示する情報内容は、発車番線、発車時刻、車両種別、行先など、車両等の運行(運航を含む。)に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む。)とする。 ○車両等の運行(運航を含む。)の異常に関連して、遅延状況、遅延理由、運転再開予定時刻、振替輸送状況など、利用者が次の行動を判断できるような情報を提供する。なお、可変式情報表示装置による変更内容の提供が困難な場合には、ボードその他の文字による情報提供ができる設備によって代えることができる。 ◇ネットワークを形成する他の交通事業者の運行(運航を含む。)に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む。)も、提供することが望ましい。 ○簡潔かつ分かりやすい文章表現とする。また、必要に応じて図やイラストを用いて情報を提供する。 ◇運休(欠航を含む。)・遅延の別や運行(運航を含む。)障害発生の原因等の情報を、運休(欠航を含む。)が発生した場合、事故等の要因により遅延が発生した場合に提供することが望ましい。 ○異常情報を表示する場合は、フリッカーランプを装置に取り付けるなど、異常情報表示中である旨を継続的に示す。 表示方式 ◇表示方式は、文字等が均等な明るさに鮮明に見える輝度を確保し、図と地の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること、文字を大きくすること等により容易に識別できるものとすることが望ましい。 ○色覚異常の利用者に配慮し、参考2-2-5 を参考とし見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素毎の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保した表示とするとともに、必要に応じて文字や記号等を付加して情報を提供する。 ◇外光、照明の逆光や光の反射により、見にくくならないよう配慮することが望ましい。また、サインの背景に照明や看板等が位置すること等により、見にくくならないように配慮することが望ましい。 案内放送による提供 ○上述の情報内容は、あわせてアナウンスにて、聞き取りやすい音量、音質、速さで繰り返す等して放送する。 75ページ 配置位置 ○車両等の運行(運航を含む。)用の可変式情報表示装置は、視覚情報への依存度の大きい聴覚障害者を含む多くの利用者が、運行(運航を含む。)により乗降場が頻繁に変動する場合に各乗降場へ分流する位置のほか、改札口付近や乗降場、待合室など、視覚情報を得て行動を判断するのに適当な位置に配置する。 ◇可変式情報表示装置の掲出高さは、誘導サインや位置サイン類と統一することが望ましい。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 (コラム9)鉄道駅に接続する民間施設等との情報提供例 ・複数路線ある鉄道駅では、他事業者や施設の情報案内を行う必要がある。東日本旅客鉄道の仙台駅では、東西線整備(2015年12月開業)を機に、東西線への案内を含めた案内サインへの改修が行われた。  改善前 改善後:地下鉄の乗り換え表示を掲出 提供:仙台市交通局 76ページ 別表2-2-1:JIS Z9103附属書JB(参考) 安全色及び対比色の意味,並びに使用箇所及び使用例 色の種類 赤 色材a)A 意味 防火 使用箇所及び使用例   −  消火器,非常用電話などを示す防火標識,配管系識別の消火表示 − 防火設備の位置を表示する安全マーキング − 消火器,消火栓,消火バケツ,火災報知器の塗色 − 禁煙,立入禁止などの禁止標識,同様の禁止警標 意味 禁止 使用箇所及び使用例  − 禁止の位置を表示する安全マーキング(立入禁止のバリケードなど) − 禁止信号旗(海水浴場,スケート場) 意味 停止 使用箇所及び使用例  − 緊急停止のボタン,停止信号旗 意味 危険 使用箇所及び使用例  − 気象,防災情報などの段階表示で,警報に相当する危険度の表示 色の種類 赤 色材a)B 意味 防火 使用箇所及び使用例 − 消火器,消火栓,火災報知器その他の消防用具などの所在を示すランプ 意味 停止 使用箇所及び使用例 − “停止”を示す信号灯 意味 危険 使用箇所及び使用例 − 道路工事中の赤ランプ,一般車両の前方・後方に積載物がはみ出している場合に用いる端につるす赤ランプ,火薬などの危険物搭載車両の夜間標識,坑内列車の尾灯,坑内の危険のおそれがある箇所に用いる赤ランプ,テレビジョン塔及びその他航空障害物の障害灯 意味 緊急 使用箇所及び使用例 − 緊急自動車の使用する赤色灯,緊急停止ボタンの所在を示すランプ,緊急事態を通報し又は救助を求めるための発光信号 − 機器類において,操作者による即時に対処が必要な状態を示すランプ(赤色光と黄色光とが区別しにくい人に配慮し,点灯と点滅パターンなどでも区別することが望ましい。) 色の種類 黄赤 色材a)A 意味 注意警告 使用箇所及び使用例 − スイッチボックスの内蓋,機械の安全カバーの内面 − 救命いかだ,救命具,救命ブイ,水路標識,船舶けい(繋)留ブイ 意味 明示 使用箇所及び使用例 − 飛行場救急車,燃料車(航空の保安施設) 意味 明示(輝度差確保) 使用箇所及び使用例 − 黒背景の上に標示又は設置する場合の,本来は赤で標示すべき禁止標識,緊急停止ボタンなど 色の種類 黄 色材a)A 意味 注意警告 使用箇所及び使用例 − 高電圧危険,爆発物注意,火薬及び発破,感電注意などの注意警告標識,配管系識別の注意警告表示 − 危険位置を表示する安全マーキング,火薬類,劇薬類容器のマーキング − クレーン,構内車両のバンパ,低いはり(梁),衝突のおそれがある柱,床上の突出物,床面の端,ピットの縁,ホッパの周囲及び階段の踏面の縁,つり足場,電線の防護具 − 踏切諸施設の踏切注意柵,踏切遮断機,踏切警報機 − 気象,防災情報などの段階表示で注意報に相当する危険度の表示 意味 明示 使用箇所及び使用例 − 駅舎,改札口,ホームなどの出口表示 色の種類 黄 色材a)B 意味 注意 使用箇所及び使用例 − “注意”を示す信号灯 − 機器類で,操作者による対処が必要な注意すべき状態を示すランプ(赤色光と黄色光とが区別しにくい人に配慮し,点灯と点滅パターンなどでも区別することが望ましい。) 77ページ 色の種類 緑 色材a)A 意味 安全状態 使用箇所及び使用例 − 安全旗及び安全標識 − 労働衛生旗及び安全衛生標識 − 保護具箱(ケース),担架,救急箱,救護室の位置及び方向を示す標識 − 非常口の位置及び方向を示す標識,避難場所及び避難所を示す標識 − 鉱山の回避所,坑口,特免区域の位置及び方向を示す警標 − 安全状態を表示する安全マーキング  意味 進行  使用箇所及び使用例  − 進行信号旗   色の種類 緑 色材a)B 意味 安全状態 使用箇所及び使用例 − 鉱山の回避所を示す緑色電灯,非常口を示すランプ − 保護具箱(ケース),救急箱,担架,救護所,救急車などの位置を示すランプ 意味 進行 使用箇所及び使用例 − “進行”を示す信号灯  意味 完了・稼働中  使用箇所及び使用例 − 機器類で,使用の準備が完了した状態,稼働している状態を示すランプ   色の種類 青 色材a)A  意味 指示  使用箇所及び使用例   − 保護めがね着用,修理中などを示す指示標識  − 指示を表示する安全マーキング  意味 誘導  使用箇所及び使用例   − 駐車場の位置及び方向を示す誘導標識 − 案内図などの誘導経路標示 色の種類 青 色材a)B 意味 安全状態 使用箇所及び使用例  − 非常口を示すランプ − 保護具箱(ケース),救急箱,担架,救護所,救急車などの位置を示すランプ  意味 進行 使用箇所及び使用例  − “進行”を示す信号灯 意味 完了・稼働中 使用箇所及び使用例  − 機器類で,使用の準備が完了した状態,稼働している状態を示すランプ 色の種類 赤紫 色材a)A 意味 放射能 使用箇所及び使用例  − 放射能標識 − 放射能に関係する安全マーキング 意味 極度の危険 使用箇所及び使用例  − 気象,防災情報などの段階表示で,特別警報及び大津波警報に相当する危険度の表示 色の種類 白(対比色) 色材a)A 使用箇所及び使用例  − 通路の区画線及び方向線 − 安全色に対する色(文字など背景が赤,緑,青,赤紫の場合),図記号要素,標識などの地色 − 安全色,図記号要素の黒及び周辺色の間の境界線 色の種類 白(対比色) 色材a)蓄光(黄みの白) 使用箇所及び使用例  − 停電時に機能する安全標識,特に避難誘導標識の対比色 色の種類 黒(対比色) 色材a)A 使用箇所及び使用例  − 安全色に対する色(文字など背景が黄,黄赤の場合),図記号要素 − 補助標識の文字,境界線 注a) 色材Aは,一般材料,蛍光材料,再帰性反射材及び蓄光材料を示す。色材Bは,内照式安全標識及び信号灯を示す。 78ページ 安全などの案内用図記号に用いる基本形状、色及び使い方 79〜85ページ 別表2-2-2:JIS Z8210 案内用図記号 公共・一般施設 交通施設 商業施設 観光・文化・スポーツ施設 安全 禁止 注意 指示 災害種別一般 洪水・堤防案内 JIS Z8210付属書JA(参考) 出典:JIS Z8210「案内用図記号」 日本規格協会 86ページ 別表2-2-3:誘導サイン類に表示する情報内容 情報内容 経路を構成する主要な空間部位 情報内容例 出入口、改札口、乗降場、乗り換え口 情報内容 移動等円滑化のための主要な設備 情報内容例 エレベーター、トイレ(多機能トイレ等※の情報含む)、乗車券等販売所 情報内容情報提供のための設備 情報内容例 案内所 情報内容 アクセス交通施設 情報内容例 鉄軌道駅、バスのりば、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル、タクシーのりば、レンタカー、駐車場 情報内容 隣接商業施設 情報内容例 大型商業ビル、百貨店、地下街 別表2-2-4:位置サイン類に表示する情報内容 情報内容 経路を構成する主要な空間部位 情報内容例 出入口、改札口、乗降場、乗り換え口 情報内容 移動等円滑化のための主要な設備 情報内容例 エレベーター、エスカレーター、傾斜路、トイレ(多機能トイレ等※の情報含む)、乗車券等販売所 情報内容 情報提供のための設備 情報内容例 案内所、情報コーナー 情報内容 救護救援のための設備 情報内容例 救護所、忘れもの取扱所 情報内容 旅客利便のための設備 情報内容例 両替所、コインロッカー、公衆電話 情報内容 施設管理のための設備 情報内容例 事務室 別表2-2-5:構内案内図に表示する情報内容 情報内容 経路を構成する主要な空間部位 情報内容例 出入口、改札口、乗降場、その間の経路、階段、乗り換え経路、乗り換え口、移動等円滑化された経路 情報内容 移動等円滑化のための主要な設備 情報内容例 エレベーター、エスカレーター、傾斜路、トイレ(多機能トイレ等※の情報含む)、乗車券等販売所 情報内容 情報提供のための設備 情報内容例 案内所、情報コーナー 情報内容 救護救援のための設備 情報内容例 救護所、忘れもの取扱所 情報内容 旅客利便のための設備 情報内容例 両替所、コインロッカー、公衆電話 情報内容 施設管理のための設備 情報内容例 事務室 情報内容 アクセス交通施設 情報内容例 鉄軌道駅、バスのりば、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル、タクシーのりば、レンタカー、駐車場 情報内容 隣接商業施設  情報内容例 大型商業ビル、百貨店、地下街 ※:個別機能を備えた便房や複数の機能を備えた便房等のあるトイレを示す。 87ページ 別表2-2-6:旅客施設周辺案内図に表示する情報内容 情報内容 情報内容例の順 街区・道路・地点  地勢等 山、湾、島、半島、河川、湖、池、堀、港、埠頭、運河、桟橋 街区等 市、区、町、街区 道路 高速道路、国道(国道マークを併記)、都道府県道、有名な通称名のある道路 地点 インターチェンジ、交差点、有名な橋(それぞれ名称を併記) 交通施設 鉄軌道路線、鉄軌道駅、バスのりば、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル、駐車場、地下道出入口・歩道橋 旅客施設周辺の移動等円滑化設備 公衆トイレ、エレベーター、エスカレーター、傾斜路 情報拠点 案内所 観光・ショッピング施設  観光名所 景勝地、旧跡、歴史的建造物、大規模公園、全国的な有名地 大規模集客施設 大規模モール、国際展示場、国際会議場、テーマパーク、大規模遊園地、大規模動物園 ショッピング施設 大型商業ビル、地下街、百貨店、有名店鋪、卸売市場 文化・生活施設 文化施設 博物館・美術館、劇場・ホール・公会堂・会議場、公立図書館 スポーツ施設 大規模競技場、体育館・武道館・総合スポーツ施設 宿泊集会施設 ホテル・結婚式場・葬斎場 行政施設 中央官庁又はその出先機関、都道府県庁、市役所、区役所、警察署、交番、消防署、裁判所、税務署、法務局、郵便局、運転免許試験所、職業安定所、大使館、領事館 医療福祉施設 公立病院、総合病院、大学病院、保健所、福祉事務所、大規模な福祉施設 産業施設 放送局、新聞社、大規模な工場、大規模な事務所ビル 教育研究施設 大学、高等学校、中学校、小学校、大規模なその他の学校、大規模な研究所 88ページ 参考2-2-1:ヘボン式ローマ字つづり ・ヘボン式ローマ字のつづり方は下表のとおりである。 ・備考は昭和29年12月9日付内閣告示第1号の「ローマ字のつづり方、そえがき」及び新村出編『広辞苑第 四版』1991の「ローマ字のつづり方、ヘボン式の備考」による。 ・備考2. 4. の符標は、明治18年に羅馬字会(日本の有識者による書き方取調委員会)が発行した『羅馬字にて 日本語の書き方』及び昭和21年4月1日付運輸省達第176号の「鉄道掲示規程、修正ヘボン式によるローマ 字のつづり方」を参照した。 ・なお現在のヘボン式は、慶応3年にヘボンの提唱したつづり方が先の羅馬字会の提言によって修正されたこと から、明治後期から修正ヘボン式と呼ばれ(小泉保『日本語の正書法』1978)、戦後になって標準式あるいは 単にヘボン式と呼ばれるようになった経緯がある。 備考 1.はねる音「ン」は n で表わすが、ただし m、b、p の前では m を用いる。 2.はねる音を表わす n と次にくる母音字または y とを切り離す必要がある場合には、 n の次に「-」(ハイフン)を入れる。 3.つまる音は、次にくる最初の子音字を重ねて表わすが、ただし次に chがつづく場合には c を重ねずに t を用 いる。 4.長音は母音字の上に「−」(長音符標)をつけて表わす。なお、大文字の場合は母音字を並べてもよい。(注) 5.特殊音の書き表わし方は自由とする。 6.文の書きはじめ、及び固有名詞は語頭を大文字で書く。なお、固有名詞以外の名詞の語頭を大文字で書いても よい。 注:長音符号は日本独自のもので、国際化されていないため、外国人に理解されない可能性がある。長音符号の 使用は事業者や自治体等で対応が 異なる、もしくは使用しない場合があるため表示にあたっては確認が必要。 89ページ 参考2-2-2:角ゴシック体の書体例 ・日本字及びアルファベットの角ゴシック体には、次の例などがある。  太いウェイトの書体                       細いウェイトの書体 ・上に示した書体は一例である。近年では読みやすさ、見分けやすさを工夫した書体が開発されており、現場の 状況に応じて適切なものを選択することが望ましい。 ・内照式で、白背景に墨ノセ文字とする場合、光の影響により、書体の線が印刷物と比較すると細く見える傾向 があることに留意する。 参考2-2-3:文字の大きさの選択の目安 ・遠くから視認する吊下型等の誘導サインや位置サインなどは 20m 以上、近くから視認する自立型や壁付型等 の案内サインなどは 4〜5m 以下、案内サインの見出しなどは 10m程度に視距離を設定することが一般的である。 ・下表は、前記の想定のもとに各々の視距離から判読できるために通常有効な文字の大きさを示 したものである。 ・過度に長体化した文字は視認性が下がるため、それには適用できない(過度な長体化は避けるべきである)。 ・可変式情報表示装置を用いる場合にも、以下の表を参考として過度な長体化は避ける。 注)ここでいう視距離は、案内上必要な視対象・視認者間の距離を指し、サインの配置間隔を示すものではない。 ■ロービジョン者が近づいて確認することへの配慮 ・表に示される文字高は最低限の目安であり、ロービジョン者の利用を考慮した場合、より大きい文字高で表示することが必要になる。 ・遠距離視認用の大きな文字を壁付型などのサイン板面で視点の高さに掲出することで、ロービジョン者にとっては接近視できるため読みやすい。また、壁付型等の案内サインについては、ロービジョン者が近づいて確認できるように設置位置を工夫する。 90ページ なお、文字高とは、日本字では指定書体の「木」の高さを、アルファベットでは指定書体の「E」の高さをいう。 参考2-2-4:図色と地色の明度対比例 ・サインの図色と地色に、下図に示す程度の明度対比を確保すると、容易に識別しやすい。 91ページ 参考2-2-5:色覚異常の人の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ 〜大多数を占める赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)の特徴 ・赤〜緑の波長域において、明度が類似した色の見分けが困難になっている。次図の、黒い実線から右(長波長)側の「赤?緑の領域」で、色の差が小さくなっている。この範囲では点線を中心に左右の色がほぼ対称に見えていて、「赤と緑」「黄緑と黄色」の差が特に小さくなっている。 ・さらに1型色覚では、最も長波長側の視物質に変異があるため、赤が暗く感じられる。そのため「濃い赤」はほとんど「黒」に見える(ロービジョン者も同じ傾向がある。)。黒背景に赤い文字の電光掲示はほとんど読み取れず、また注意標示や時刻表などの赤が黒と同じに見えてしまう(交通信号機ではこの問題を避けるため、赤信号にはオレンジに近い色を使用している。)。 注)この図版は最も程度の強い人の見え方をシミュレートしたもので、全員がこのように見えるわけではありません。 ・ある色と、それにRGBの赤成分または緑成分を足した色が区別しにくくなる。「紫と青」「緑と茶色」「赤と茶色」などそれぞれの色が同じようにみえてしまう。 ・彩度の低い色どうしも識別が難しく、「水色とピンク」「灰色と淡い水色、淡いピンク、薄緑」などがそれぞれ同じように見える。 ・鮮やかな蛍光色どうしの見分けも苦手で、黄色と黄緑の蛍光ペンや、ピンクと水色の蛍光ペンは、それぞれほとんど同じ色に見える。 ・赤と緑の一方の視物質がない分、色の識別において青視物質に依存する度合いが高いため、青色への感度はむしろ高い面がある。「赤と緑」や「黄色と黄緑」はほとんど同じ色に見えるが、「緑と青緑」は全然違う色に見える(交通信号機ではこれを利用して、緑の信号には青味の強い色を使用している。)。 ・色相(色あい)の見分けが苦手な分、明度や彩度の差にはむしろ敏感であり、同系色の明暗の識別には支障は少ない。 ・ある程度の色は区別できるため、区別できないところにさらに色分けがあるとは考えない傾向がある。そのため色分けがされていること自体に気付かないことがある。 ・一般の人の色覚に合わせて作られた「色名」(色のカテゴリー)に、色覚異常の人はうまく対応できない。そのため、色名が明記されていないと、たとえ色が違うことが分かってもそれぞれの色名が分からず、色名を使ったコミュニケーションが困難になる(これに対応して、近年の国産文房具ではペン軸に色名を明記しているものが増えている。)。 出典:神奈川県「カラーバリアフリー『色づかいのガイドライン』」平成20年(一部加筆) 92ページ ・色覚異常の人が見分けづらい色の組み合わせは、xy色度図の上でほぼ一直線に並ぶ。この線を混同線という。路線図など多くの色を使用する場合も、それぞれの色の範囲内で混同線に乗らないように色合いを微調整し、明度にも差をつけることによって、色覚異常の人にも区別がしやすくなる(色覚シミュレーションソフトを使うと、同じ混同線に乗る色が1つの色に表示されるので、見分けづらい組み合わせを確認できる。)。 出典:秀潤社「細胞工学」誌「色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション」平成14年8月及び金芳堂「脳21」誌「色覚のタイプによって色はどのように見えるか」平成15年10月(一部加筆) 93ページ (コラム10)「色覚異常の人の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」の一例 (大多数を占める赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)の場合の例) 背景の色と文字やサインの色について ■黒の背景の場合 ・黒背景の上に重要な情報が赤字で表示されていてもその部分は黒く見えてしまい識別できない場合があるので、オレンジに近い赤や、黄色やオレンジを用いると視認しやすくなる。赤を用いる場合には、他の色との境目に細い白線を入れると視認しやすくなる。 ・LED表示は黒背景となるので、赤よりもオレンジ等を用いると視認しやすくなる。 ・白内障の人は青が暗く見える場合があるため、黒背景の上には青よりも水色を用いると視認しやすくなる。 ■色付きの背景の場合 ・濃色の背景の上に別の色で文字やサインを表示すると、色覚異常の人は明度や彩度の差には敏感なので、同系色の濃淡で文字やサインを表示しても視認できる。 文字やサインの表示要素ごとの見分けにくい色の組み合わせについて ■赤と黒 ・黒と対比させる場合はなるべくオレンジか、オレンジに近い赤を用いると視認しやすくなる。 ・注意書きの文章や案内地図の現在位置表示等を赤で表示する場合は、下線を引く又は反転文字により示すといったように、色だけでなく形状でも変化をつけると視認しやすくなる。 ・禁煙、立入禁止等の警告サインは、赤と黒が接するところに細い白縁を入れると視認しやすくなる。 ■赤と緑 ・この組み合わせは識別できない場合があるので、赤と青、もしくは赤と水色を用いると視認しやすくなる。やむを得ず緑を使う場合は、緑ではなく青緑を用いると視認しやすくなる(緊急避難の経路図、トイレの空き・使用中の表示、扉の開・閉、エスカレーター等の進入可・不可、タクシーの空車・乗車など。)。 ・色だけでなく、「空き・使用中」などの文字表示や、「○」「×」「↑」などの記号を用いると視認しやすくなる。 ・表示ランプ等で赤と緑のランプが切り替わるものは識別できない場合があるので、色を変えるのでなく「点灯・消灯」や「点灯・点滅」の方が識別しやすくなる(携帯電話やデジタルカメラの充電状況の表示灯は「赤・緑」から「点灯・消灯」に変更された。)。 ■ピンクと水色 ・この組み合わせは識別できない場合があるので、赤と青を用いると視認しやすくなる。水色を用いる場合は、ピンクを赤紫(マゼンタ)に近い色にすると視認しやすくなる(トイレの男女を示すサインなど。)。 ■黄色と明るい黄緑、オレンジと黄緑 ・この組み合わせは識別できない場合があるので、黄緑のかわりに青みの強い緑や、彩度の低いパステルカラーを用いると視認しやすくなる(案内図の塗り分けなど。)。 ■青と紫 ・この組合せは識別できない場合があるので、やむを得ず青を用いる場合には、赤みの強い赤紫(マゼンタ)を用いると視認しやすくなる。 ■茶色と赤、茶色と緑 ・この組合せは識別できない場合があるので、赤や緑の明度を大きく変えると視認しやすくなる(明るい緑と焦げ茶色、濃い緑と淡く明るい茶色など。)。 ■蛍光色 ・蛍光色どうしを組み合わせると識別できない場合があるので、蛍光色とくすんだ色を組み合わせると視認しやすくなる。 ■電光表示の色 ・光る色の識別は特に難しく、赤・橙・黄・黄緑・緑が全て同じ色に見える場合がある。色の違いによって識別することが必要な場合は、これらのうちなるべく1色を用い、その他色覚異常の利用者にも識別しやすい青緑・青・白等を組み合わせると視認しやすくなる。 94ページ ■路線や列車種別、店舗の種類や施設のゾーン等を色で区別している場合 ・見分けやすい色の組み合わせを選ぶことが望ましいが、従前より情報として用いてきた色を変更することが難しい場合には、以下の配慮を行うことにより、視認しやすくなる。 @同じ色名で表現できる色の中で、色相、明度、彩度を微調整すると視認しやすくなる(色の微調整によって一般の人への印象をあまり変えずに色覚異常の人への視認性を大きく向上できることがある。)。 A色のみに頼るのでなく、文字を併記する、○△×といった形状を変える、ハッチングや紋様を施す、斜体・下線・枠囲み・明暗反転表記を併用することなど形状による識別を追加すると視認しやすくなる。 その他デザインについて ■色名の表記 ・凡例等には、それぞれの色名を明記するとコミュニケーションがとりやすくなる。 ■色面の境界 ・色と色の境界には白または黒の細線で縁取りをすると、違う色で塗られていることが視認しやすくなる。 ■色の面積等 ・面積が広いほど色の違いが分かりやすくなるので、色付きの線は極力太くし、文字は極力太い書体を用いると視認しやすくなる。 ・路線色によって車両等を色分けする場合には、なるべく太い帯状もしくは全体を色分けすると視認しやすくなる。 ・車両等は、他の一般車両と判別しやすい色に明確に塗られていると視認しやすくなる。 ■ 色指定の統一 ・色覚異常の人は微妙な青みの違いや明度・彩度の違いにはむしろ敏感であるために、一般の人には大体同じように感じられる色が、色覚異常の人には全然違う色に見える場合がある。従って、案内図、壁面・床面等のサイン、パンフレット等の印刷物等で、同じものを示す場合にはそれぞれの色を統一すると視認しやすくなる(色を指定する場合は色名ではなく、カラーチップやCMYK値などで数値的に行うと統一できる。)。 出典:神奈川県「カラーバリアフリー『色づかいのガイドライン』」平成17年10月及び秀潤社「細胞工学」誌「色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション」平成14年9月を基に作成 95ページ 参考2-2-6:輝度からみたサイン器具の考え方 ・サインの見やすさを保つためには、一定の表示面輝度を確保する必要がある。屋内に設置するサインの表示面輝度は1,000cd/u位までは大きいほど文字等が読みやすくなるが、それを超えるとまぶしくて読みづらくなる。なお、LED照明ではこれより低い輝度でまぶしく感じられることがあるため注意が必要。 ・表示面輝度を得る方法に従ってサインの器具を分類すると、照明器具を内蔵した内照式、表示面の外側に照明器具を付設した外照式、室内灯などの一般照明光源を利用した無灯式などに分かれる。 ・視力が低下する高齢者等も考慮に入れると、一般的には、内照式は遠くから見る場合でも必要な輝度を確保しやすいが、近くから見るとまぶしさを感じやすい。外照式はまぶしさを感じにくいが、遠くから見るのに必要な輝度を確保するには内照式の場合より灯具を増やすなどの対策が必要になる。無灯式は採光がある場合は必要な輝度を得やすいが、自然光がないときは一般照明に頼るので輝度不足になりやすい。 参考2-2-7:誘導サインと位置サインの表示例 ・ここでは、移動等円滑化のための主要な設備への誘導サイン及びそれぞれの位置サインの表示例を示している。 ・エレベーター・エスカレーター・トイレ・障害のある人が使える設備のピクトグラムはすでによく知られているため、ピクトグラムのみの表示とした。 ●誘導サイン(吊下型などの形式を想定) ●位置サイン(吊下型などの形式を想定) 96ページ ●便房設備の表示例 出典:「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」P.2-91 便所・洗面所5 ●優先設備/優先席のピクトグラム ・ピクトグラムは、高齢者、障害のある人・けが人、内部障害のある人、乳幼児連れ、妊産婦の5つ。 ●優先エレベーターでの使用例 出典:JISZ8210「案内用図記号」付属書JB(参考) 日本規格協会 97ページ 参考2-2-8:遠くから視認するサインの掲出高さの考え方 ・移動している場合、一定の高さ以上にあるものは視野に入りにくい。一般には仰角(水平からの見上げ角度)10°より下が有効視野に入る範囲といわれている。また旅客施設では視認者の前方に視界を遮る他の通行者がいると考えるべきで、その通行者より上が遮蔽するものがない見やすい範囲である。 ・車椅子使用者の視点は低いので、見やすい範囲は通常の歩行者に比べてかなり狭い。従って一定の高さにあるサインを移動しながら視認できる距離は、極端に小さい。 ・図に示すとおり混雑時に前方5mの位置に他の通行者がいると想定すると、車椅子使用者が器具天地50cmのサインを移動しながら視認できる距離は、床面から器具の下端までを2.2m、2.5m、3.0m、4.0mとした場合、それぞれ0.9m、2.0m、3.8m、7.5mとなり、視認が可能な時間に換算すると(移動速度を毎秒1.1mとして計算)それぞれ約0.8秒、1.8秒、3.5秒、6.8秒となる。(通常の歩行者では、掲出高さが2.5mの場合は、視認できる距離は約29.8m、視認が可能な時間は約27秒である。) 98ページ ・視認可能時間が短いと見落とす確率は高まり、情報を得ることが困難になる。 ・このことから、遠くから視認するサインの掲出高さは、視距離に応じた文字の大きさを選択したうえで、視認想定位置から仰角10°より下の範囲内で、極力高くするのが適当である。 注1)野呂影勇編「図説エルゴノミクス」1990(日本規格協会)では、瞬時に特定情報を雑音内より受容できる範囲(有効視野)を、上方約8°と記述している。 注2)下図の人体の寸法は、工業技術院「生命工学工業技術研究所研究報告」1994による。車椅子の座面高はJIS T9201:1987「手動車椅子」の中型(400mm)とした。(以下サイン関連参考図共通) 99ページ 参考2-2-9:案内サインの表示例 ・ここでは、地下駅の地上出入口に設置するエレベーター位置案内図、駅構内に設置する駅構内図、駅周辺案内図の表示例を示している。 ●エレベーター位置案内図 ・この図例では、現在地からエレベーターのある出入口までの地上における移動経路のほか、方向感覚が得やすいように、目印となる周辺の施設、主要道路名、至表記などを表示している。  なお、エレベーター位置案内図は、車椅子使用者等、この設備を必要とする人が確実に視認できる位置に設置する。 提供:京都市交通局 出典:「”見やすくわかりやすい”交通拠点のサイン計画の手引き」 (公財)交通エコロジー・モビリティ財団 <エレベーターの位置案内図の例> 大きな表示を設置することで離れた位置からもエレベーターがあることを確認することができる。 大阪市営地下鉄(現:大阪市高速電気軌道株式会社) 御堂筋線 長居駅 ※ガラス面にインクジェット出力シート(UVカットラミネート)直貼 東日本旅客鉄道 秋葉原駅 提供:大阪市高速電気軌道株式会社(左)、東日本旅客鉄道株式会社(右) 100ページ ●駅構内案内図 ・この図例では、駅の構造をできるだけシンプルに表現するとともに、入場動線、出場動線それぞれに必要とされる移動等円滑化のための主要な設備の位置を、図記号を用いて表示している。 ・現在地を赤枠に反転文字を表記して、視認しやすくしている。 ・移動等円滑化経路の表示を他の表示要素と色や形で区別できるようにしている。 ・背景は、表示要素との明度差を確保している。色覚異常の利用者に配慮した色の選択が行われている。 出典:「”見やすくわかりやすい”交通拠点のサイン計画の手引き」 (公財)交通エコロジー・モビリティ財団 提供:東京地下鉄株式会社 101ページ ●旅客施設周辺案内図 ・この図例では、駅を中心として歩行圏(およそ1.2km四方)を表示している。主要な都市施設の表示には、図記号が用いられている。 提供:表示灯株式会社 色覚異常の利用者に配慮した配色等 ・配色:青みの濃淡に敏感な色覚異常の利用者に配慮し、暖色系だけでなく青みの強い色と青みの少ない色を織り交ぜて使っている。 ・模様:混同しやすい一部の塗り分けの異なるパターンの文様を淡い濃淡で施し、色だけでなく塗り分けパターンでの識別を可能にしている。 ・輪郭:建物や道路には濃色の輪郭、路線の両側には白フチを施し、視認性を向上させている。 ・色名の表記:凡例には色の塗り分けの色名と各路線の路線名を表記し、色覚異常の利用者の色認識に配慮している。 102ページ ●構内案内板(東日本旅客鉄道) ・この図例では、当該駅の形状や構造などに合わせた内容を表示している。エレベーターに通し記号を付して、位置案内を行っている。案内板に示された施設等の表記を枠で囲み、階数表示を付記し、現在階と目的階の判別に配慮している。 (案内板)                     (位置サイン) (天井吊下げ型の誘導サイン) 提供:東日本旅客鉄道株式会社 ●出入口案内板(福岡市交通局) ・出入口番号が小さく視認しにくかった案内板の番号表示を拡大し、周辺施設との地図と合わせて情報案内を加えることで視認性向上及び利用者の取得情報の増加に貢献している。 (改善前)                  (改善後) 提供:福岡市交通局 103ページ ●色覚障害に対応する路線図等の表示方法の工夫 施設内の標識や車両内の表示装置等において、ガイドラインでは積極的に見分けやすい色の組み合わせを用いることが奨められているが、実際の路線図等においても、見分けやすい色使い、文字による色名の併記、線種の判別がしやすいように模様を加えるなどの工夫がなされている例がある。 (上記事例は、いずれも国土交通省「平成25年度 色覚障害者の移動等円滑化に関する調査研究」報告書より抜粋一部修正) 104ページ 参考2-2-10:情報コーナーの表示例 ・ここでは、案内サイン類を集約的に掲出している場所(情報コーナー)を通路の延長方向から見つけやすいように設置する、情報コーナーの位置サインの表示例を示している。 参考2-2-11:近くから視認するサインの掲出高さの考え方 ・対面するものを見る場合、車椅子使用者が見やすい範囲は、立っている人よりおよそ40cm下がっている。 ・このことから、近くから見るサインを、立位の利用者と車椅子使用者が共通に見やすい範囲に掲出する際の高さは、床面からサイン表示面の中心までの距離を、双方の視点の中間である135cm程度と考えるのが適当である。 注)下図の通常視野は、日本建築学会編「建築設計資料集成3集」1980(丸善)による。 105ページ 参考2-2-12:運賃表の幅の考え方 ・運賃表の幅は、表示する情報量と必要な文字の大きさの判断に加えて、誤読されない視方角も考慮して設定する必要がある。文献では、視方角が45°以下になると運賃表の誤読率が高まることが指摘されている。 ・利用者は切符を購入する際、金額を未確認のまま券売機に接近しがちなので、この場合運賃表を見る視距離はかなり小さくなる。 ・視方角の限界を考慮すると、運賃表の幅は、視距離を1mと想定する場合は2m程度以内、また2mと想定する場合は4m程度以内になる。 注)野呂影勇編「図説エルゴノミクス」1990(日本規格協会)では、監視用グラフィックパネルの鉄労研のデータから、視方角が45°以下では表示内容の誤読率が増加して好ましくない、と述べている。 参考2-2-13:可変式情報表示装置の表示例 遅延、運休などの緊急情報を表示している。 ・発車番線、発車時刻、車両種別、行き先を表示している。 ・フルカラーLED表示により色覚異常の人の見え方に配慮した配色を用いている。 *上記表示板において、左図は一般色覚の見え方、右図は色覚異常(2型色覚)の見え方 提供:東京地下鉄株式会社(上)、東海旅客鉄道株式会社(下) 106ページ 参考2-2-14:可変式情報表示装置の設置例 ・ここでは、改札口に設置する可変式情報表示装置の設置例を示している。 (コラム11)運行(運航)情報の、可変式情報表示装置での情報提供のスピード ・これまでの調査によって、異常時の可変式情報表示装置での文字の表示について、当事者参加による実証実験を行った結果、もっともよいとする意見が同程度あったため、以下の2案が対応の方向性として提案された。  ■緊急時:どのように行動したらよいかがわかる情報を一定程度示す。 A案:緊急時のスクロールは、通常よりも「速い」スピード(5.2 文字/秒程度)とする。 ただし、説明が長く、読み取りにくいなどの場合は、この限りではない。 B案:緊急時のスクロールは原則として「中位」のスピード(2.6 文字/秒程度)とする。  ■運行異常時:発生原因や振替輸送などの代替手段がわかるような情報を一定程度示す。 A案:運行異常時のスクロールは原則として「中位」のスピード(2.6 文字/秒程度)とする。 B案:運行異常時のスクロールは原則として「遅い」スピード(1.7 文字/秒程度)とする。 107ページ A視覚障害者誘導案内用設備 考え方 視覚障害者誘導用ブロックは、現時点では視覚障害者の誘導に最も有効な手段であり、旅客施設の平面計画等を考慮し、歩行しやすいよう敷設することが有効である。敷設にあたっては、あらかじめ誘導動線を設定するとともに、誘導すべき箇所を明確化し、利用者動線が遠回りにならないよう配慮する必要がある。また、視覚障害者誘導用ブロックを感知しやすいよう、周囲の床材の仕上げにも配慮する必要がある。 視覚障害者の誘導手法としては、音声・音響による案内も有効である。 <鉄軌道駅の改札口> 改札口は、鉄道を利用する際の起終点となる場所であるとともに、駅員とコミュニケーションを図り、人的サポートを求めることのできる場所でもあるため、その位置を音響案内で知らせることが重要である。加えて、複数事業者が乗り入れている駅等で異なる事業者の改札口が隣接する場合の音響案内については、音声案内を付加すること等により区別できるようになれば、より利便性が高まる。また、改札口付近に触知案内図、インターホン等を設置する場合は、設置位置を知らせるため、音響または音声案内装置を設置することも重要である。 なお、改札口付近においては駅職員等が勤務していることから、音量、音質、設置位置など騒音とならないよう配慮することが必要となる。 <エスカレーター> 視覚障害者のエスカレーター利用にあたっては、位置や進入可否、行き先、上下方向の確認が困難となっている。従って、単独でエスカレーターを利用している視覚障害者の円滑な移動を図るためには、進入可能なエスカレーター(時間帯によって上下方向が変更されるエスカレーターや自動運転エスカレーターを含む)において、音声により、その位置と行き先及び上下方向が分かることが必要である。また、逆方向のエスカレーターへの誤進入を避けるため、進入不可能なエスカレーターにおいては、音声案内を行わないこととする。なお、注意喚起案内を行って いるエスカレーターについては、案内のタイミングが重ならないよう配慮することが必要である。 エスカレーターの音声案内については、視覚障害者が環境認知に音源定位を活用していること踏まえ、乗り口を特定しやすいよう、乗り口に近い位置に音源を設置すべきである。また、音声案内を行う場合には、利用者と対面する通路方向に指向性を持たせることが有効となる。 視覚障害者におけるエスカレーター利用のニーズは高く※、エスカレーターを使用できる環境を整備する必要があると考えらえる。一方で、安全性への配慮が必須であり、視覚障害者誘導用ブロックの敷設に加え、音声案内など でエスカレーターの位置や行き先をよりわかりやすくする等の工夫が必要である。 ※平成25年度に視覚障害者のエスカレーター誘導に関する調査研究(公益財団法人交通エコ ロジー・モビリティ財団)で実施したアンケート調査では以下のような結果となっている。 ・慣れている駅では、視覚障害者の 70%以上が単独でエスカレーターを利用している。 ・慣れていない駅では、視覚障害者の 60%以上が単独でエスカレーターを利用している。 また、平成28年度に国土交通省が実施した基準検討会時の視覚障害者へのアンケートでは以下のような結果となっている。  ・普段利用に慣れている施設では約80%がエスカレーターを利用している。  ・普段利用に慣れていない施設では70%以上がエスカレーターを利用している。  ・歩き慣れている施設では60%以上がエスカレーターを利用したいと回答している。  ・歩き慣れていない施設では70%以上がエスカレーターを利用したいと回答している。 108ページ 考え方 <トイレ> 視覚障害者のトイレ利用においては、設置位置及び男女別の配置を把握することが困難となっている。このため、視覚障害者に対しては、トイレ出入口付近において、位置と男女別が分かる音声案内を行うことが必要である。案内方式としては、設置場所の空間特性に応じて、常時式、人感知式、などの音声案内装置によって実施する。 なお、男子用、女子用、車椅子使用者用トイレが並列している場合等、視覚障害者誘導用ブロックの誘導箇所によっては、左右の男女トイレの位置を示す音声案内だけではわかりにくい状況も考えられるため、個々の空間状況に 応じて、「車椅子使用者用トイレ」も案内すれば、より利便性が高まる。 <鉄軌道駅のプラットホーム> プラットホームにおいては、視覚障害者に対して列車降車後に出口へ通ずる退出口の方向としての階段位置を知らせるため、階段位置を示す音響案内装置を設置することが必要である。 ただし、複数ホームが並列している駅では、隣接ホームと自ホームとの音源位置の錯誤を防ぐ必要があり、また、 音響案内を行うスピーカーの設置にあたっては、空間特性に応じて、音量、設置位置、ホーム長軸方向への狭指向性を十分に検討する必要がある。 ただし、複数ホームが並列している駅では、隣接ホームと自ホームとの音源位置の錯誤を防ぐ必要があり、また、音響案内を行うスピーカーの位置にあたっては、空間特性に応じて、音量、設置位置、ホーム長軸方向への狭指向性を十分に検討する必要がある。 なお、視覚障害者のプラットホーム上の歩行については、転落の危険性が高いため、ホームドア等、内方線付き点状ブロック等による転落防止措置によって安全対策が示されている。 <地下駅の地上出入口> 地下駅の地上出入口については、街路、建物内に設置され、視覚障害者が入口を確認することが困難となっているため、その位置を知らせることが必要とされている。地上出入口部に視覚障害者誘導用ブロックを敷設することとともに、音響案内によって地上出入口の位置を知らせることも有効な案内となる。設置場所については、視覚障害者の利用する施設方面やバスとの乗り換え口など、利用状況を考慮し音響案内の優先度の高い場所とする。 一方、地下駅の地上出入口における音響案内については、周囲への騒音となる可能性があり、道路管理者、周辺の 建築物の管理者等との調整も必要となるため、音量制御などにより騒音への対応を図るなどの配慮が必要である。 なお、地下駅の地上出入口と改札口が隣接する場合の音響案内については、音声案内を付加すること等により、区別できるようにすれば、より利便性が高まる。 移動等円滑化基準 (エスカレーター) 第7条 エスカレーターには、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を音声により知らせる設備を設けなければならない。 (階段) 第8条 階段(踊り場を含む。以下同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 手すりの端部の付近には、階段の通ずる場所を示す点字をはり付けること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 109ページ 第9条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 2 前項の規定により視覚障害者誘導用ブロックが敷設された通路等と第四条第七項第十号の基準に適合する乗降ロビーに設ける操作盤、第十二条第二項の規定により設けられる設備(音によるものを除く。)、便所の出入口及び第十六条の基準に適合する乗車券等販売所との間の経路を構成する通路等には、それぞれ視覚障害者誘導用ブロックを敷設しなければならない。ただし、前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。 3 階段、傾斜路及びエスカレーターの上端及び下端に近接する通路等には、点状ブロックを敷設しなければならない。  (運行情報提供設備) 第10条 車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、 この限りでない。 (移動等円滑化のための主要な設備の配置等の案内) 第12条 2 公共用通路に直接通ずる出入口の付近その他の適切な場所に、旅客施設の構造及び主要な設備の配置を音、点 字その他の方法により視覚障害者に示すための設備を設けなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 誘導案内の方法 ◎公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成する通路等には、視覚障害者誘導用ブロック(線状ブロック及 び点状ブロックで構成)を敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 ※音声その他の方法とは、以下に示すような方法を示す。 ・音響音声案内装置:音響または音声で設備等の位置・方向や車両等の運行・運航案内を示すもの ・触知案内図等:点字や触知記号等で設備等の位置や方向を示すもの ・点字表示:点字で経路の行先や運賃等を示すもの ■視覚障害者誘導用ブロック ●基本的事項 形状 ◎形状については、JIS T9251に合わせたものとする。 ○JISに相当していないブロックの部分補修を行う場合は、近接したブロックをJISに合わせたブロックに交換する。 110ページ 線状ブロックの敷設経路 ◎公共用通路との出入口から改札口を経て乗降口に至る経路を構成する通路等に、線状ブロックを敷設する。 ○通路等が傾斜路のみで構成される場合には線状ブロックを敷設する。 ◎上記の経路上から、移動等円滑化のための主要な設備であるエレベーターの乗降ロビーに設ける操作盤、トイレの出入口、乗車券等販売所(券売機を含む)及び触知案内図等(音によるものを除く)へ分岐する経路上にも線状ブロックを敷設する。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 ○上記分岐する経路では、往経路と復経路を別としない。 ○線状ブロックは、構造上やむを得ない場合等を除き、旅客の動線と交錯しないよう配慮し、安全で、できるだけ曲がりの少ないシンプルな道すじに連続的に敷設する。 ○視覚障害者の移動の際に屈曲経路が続くことにより進行方向を錯誤しないよう、短い距離にL字形、クランクによる屈曲部が連続的に配置されないよう配慮する。 ◇他社線旅客施設、公共用通路等と連続した誘導経路となるよう、誘導動線、形状、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)などを統一的連続的に敷設することが望ましい。 ○線状ブロックの敷設は、安全でシンプルな道すじを明示することを優先するとともに、一般動線に沿うことに考慮しつつ可能な限り最短経路により敷設する。また歩行できるスペースが確保できるよう、可能な限り壁面、柱や床置きの什器等から適度に離れた道すじに敷設する。 点状ブロックの敷設位置 ◎点状ブロックは、視覚障害者の継続的な移動に警告を発すべき箇所である階段、傾斜路及びエスカレーターの上端及び下端に近接する通路の、それぞれの位置に敷設する。 ○点状ブロックは、上記のほか、視覚障害者の継続的な移動に警告を発すべき箇所である出入口(戸がある場合)、触知案内図等の前、券売機その他の乗車券等販売所の前、エレベーターの前、待合所・案内所の出入口(戸がある場合)、ホームドア、可動式ホーム柵(昇降式を除く)及び固定式ホーム柵の開口部、ホームの縁端付近及び線状ブロックの分岐位置・屈曲位置・停止位置の、それぞれの位置に敷設する。 色彩 ○黄色を原則とする。ただし周辺の床材との対比を考慮して、色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が十分に確保できず、かつ安全で連続的な道すじを明示できない場合はこの限りでない。 材質 ○十分な強度を有し、滑りにくく、耐久性、耐磨耗性に優れたものとする。 111ページ ●敷設方法の詳細 公共用通路との境界 ◇公共用通路との境界は、旅客施設内外が連続するように敷設し、色彩や形状の統一に配慮することが望ましい。 改札口 ○改札口への線状ブロックの敷設経路は、有人改札口がある場合は有人改札へ誘導する。 券売機 ○券売機その他の乗車券等販売所への線状ブロックの敷設経路は、点字運賃表及び点字表示のある券売機の位置とする。この場合、改札口への線状ブロックの敷設経路からできる限り簡単で短距離となるように分岐する。 ○線状ブロックで誘導される券売機その他の乗車券等販売所の前に敷設する点状ブロックの位置は、券売機の手前30cm程度の箇所とする。 ◇上記の券売機その他の乗車券等販売所は、改札口に近い券売機その他の乗車券等販売所とすることが望ましい。 階段 ○階段への線状ブロックの敷設経路は、手を伸ばせば手すりに触れられる程度の距離を離した位置とする。 ○階段の上端及び下端に近接する通路等に敷設する点状ブロックの位置は、階段の始終端部から30cm程度離れた箇所に60cm程度の奥行きで全幅にわたって敷設する。 ○踊り場の長さが300cmを超える場合、踊り場の開始部分及び終了部分において、階段の段から30cm程度離れた箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを敷設する。 ○階段の方向が180度折り返しているなど、方向が変わる踊り場では、踊り場の開始部分及び終了部分において、階段の段から30cm程度離れた箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを敷設する。なお、屈曲部から階段始点までの距離が短く、点状ブロック同士が干渉して判別困難になる場合は、危険を生じないよう敷設方法に配慮する。 エレベーター ○エレベーターへの線状ブロックの敷設経路は、点字表示のある乗降ロビー側操作盤の位置とする。 ○エレベーター前に敷設する点状ブロックの位置は、点字表示のある乗降ロビー側操作盤から30cm程度離れた箇所とする。 エスカレーター ○エスカレーター前には、エスカレーター始終端部の点検蓋に接する箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを全幅にわたって敷設する。 ○エスカレーターに誘導する視覚障害者誘導用ブロックを敷設する場合は以下の条件を満たすこととする。 (条件) ・乗り口方向のみに敷設する。 ・時間帯により進行方向が変更しないエスカレーターのみに敷設をする。 ・乗り口方向には進行方向を示す音声案内を設置する。 112ページ 傾斜路 ○傾斜路の始終端部から30cm程度離れた箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを敷設する。 ○傾斜路の方向が180度折り返しているなど、方向が変わる踊り場では、踊り場の開始部分及び終了部分において、傾斜路の始終端部から30cm程度離れた箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを敷設する。 ○通路等が傾斜路のみで構成される場合には線状ブロックを敷設する。 トイレ ○トイレへの線状ブロックの敷設経路は、トイレ出入口の壁面にある触知案内図等の位置とする。 ○トイレの触知案内図等の前に敷設する点状ブロックの位置は、触知案内図等から30cm程度離れた箇所とする。 触知案内図等 ○触知案内図等への線状ブロックの敷設経路は、出入口付近又は改札口付近に設置した案内図の正面の位置とする。 ○触知案内図等の前に敷設する点状ブロックの位置は、案内図前端から30cm程度離れた箇所とする。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見やすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 113ページ 参考2-2-15:視覚障害者誘導用ブロックの形状(JIS T9251) <点状突起の配列及び寸法> 点状突起は、想定する主な歩行方向に対して並行に配列する。点状突起の数は 25 (5×5) 点を下限とし、点状突起を配列するブロック等の大きさに応じて増やす。なお、ブロック最外縁の点状突起の中心とブロック端部との距離は、s/2寸法より、5.0mmを超えない範囲で大きくしてもよい。 記号d1 突起の頭頂部の直径 寸法 12.0mm 記号d2  突起の座部の直径 寸法 d1 +10.0mm 記号s  突起の中心点間の距離 寸法 55.0〜60.0 a) mm 許容差+1.50mm 記号 h 突起の高さ 寸法 5.0mm 許容差+1.0mm 注a) この寸法範囲でブロック等の大きさに応じて一つの寸法を設定する。 <線状突起の配列及び寸法>  線状突起は、示そうとする歩行方向に向けて配列する。線状突起の本数は、4本を下限とし、線状突起を配列する ブロック等の大きさに応じて増やす。 線状突起の間に潜水のあるおそれがある場合は、30.0mm以下の排水用の隙間(隣接する線状突起の上面端の間隔) を設ける。※ ※視覚に障害のある歩行者にとって、線状突起はなるべく途切れず継続したものが辿りやすい。  また、排水用の隙間は、どの列も同じ間隔で設けることが望ましい。 記号b1 突起の頭頂部の幅 寸法 17.0mm 記号b2 突起の座部の幅   寸法b1 +10.0mm 記号s  突起の中心点間の距離 寸法 75 mm 許容差+1.50mm 記号 h 突起の高さ 寸法 5.0mm 許容差+1.0mm l1 寸法270.0mm以上 l2 寸法 l1 +10.0mm 114ページ <ホーム縁端警告ブロック突起の配列及び寸法>  点状突起及び線状突起の配列は下図のとおり、点状突起の寸法は「点状突起の配列及び寸法」の図に、線状突起の寸法は、「線状突起の配列及び寸法」の図による。点状突起の数は25(5×5)点を下限とする。内方線である線状突起は1本とし、近接する点状突起との中心間距離(S2)は90.0mm±5.0mmとする。 出典:JIS T9251高齢者・障害者配慮設計指針−視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状・寸法及びその配列   日本規格協会 参考2-2-16:分岐部・屈曲部の敷設方法の例 115ページ 参考2-2-17:各設備への視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法の例 <券売機> <エレベーター> <傾斜路> <エスカレーター> <トイレ> 116ページ <階段>  ■階段の上下端部及び方向が変わらない踊り場における点状ブロック敷設の一例 117ページ ■階段の方向が90度・180度変わる踊り場における点状ブロックの敷設方法例 ・踊り場の空間がある程度広く、当該踊り場において合流、分岐がある場合には線状ブロックも敷設した方が、利便性が高まる。 118ページ ■音声・音響案内 ◎車両等の運行(運航を含む。)に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む。を音声により提供するための設備を設けなければならない。 ○音声・音響案内を提供する場合、スピーカーを主要な移動経路に向けて流す。また、スピーカーから流す案内の音量は、その移動経路の適切な地点から確認して、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい大きさとする。 ※「高齢者・障害者配慮設計指針−公共空間に設置する移動支援用音案内」(JIS T0902) 。 車両等の運行に関する案内 ○車両等の発車番線、発車時刻、行先、経由、到着、通過等のアナウンスは、聞き取りやすい音量、音質、速さで繰り返す等して放送する。 ○同一のプラットホーム上では異なる音声等で番線の違いがわかるようにする。 触知案内図等 通話装置 音声案内装置 「A視覚障害者誘導案内用設備 ■触知案内図等及び点字表示」(134ページ)参照 鉄軌道駅の改札口 ○改札口の位置を知らせるための音響案内装置を設置する。ただし、乗換専用改札口はこの限りではない。 ○有人改札口が併設されている場合には、有人改札口に上記音響案内装置を設置する。 旅客施設の窓口 ◇磁気誘導ループ等を設置することが望ましい。 エスカレーター ◎エスカレーターの行き先及び上下方向を知らせる音声案内装置を設置する。 ○なお、音声案内装置の設置にあたっては、進入可能なエスカレーターの乗り口端部に設置し、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい音量、音質とすることに留意し、音源を乗り口に近く、利用者の動線に向かって設置する。 ※JIS T0902「高齢者・障害者配慮設計指針−公共空間に設置する移動支援用音案内」も参照のこととする。 トイレ ○視覚障害者誘導用ブロックによって誘導されたトイレ出入口付近壁面において、男女別を知らせる音声案内装置を設置する。 ◇音声案内を行う場合は、短い時間で簡潔に情報提供することに配慮することが望ましい。 鉄軌道駅の プラットホーム ○音響案内を行うスピーカーの設置にあたっては、空間特性・周辺騒音に応じて、設置位置、音質、音量、ホーム長軸方向への狭指向性等を十分に配慮し設置する。 ○ホーム上にある出口へ通ずる階段位置を知らせるため、階段始端部の上部に音響案内装置を設置する。ただし、ホーム隙間警告音、列車接近の警告音などとの混同、隣接ホームの音源位置との錯誤によって危険が避けられない場合は、この限りではない。 ○同一の駅において、ホームドア・可動式ホーム柵が設置されて いるプラットホームと設置されていないプラットホームが混在 する場合、当該プラットホームに通ずるエレベーター、エスカ 119ページ レーターもしくは適切に音声案内が行える場所付近等におい て、ホームドア・可動式ホーム柵の設置状況を知らせる音声案 内装置を設置する。特に、島式ホームにおいて、両面でそれぞ れ転落防止設備の方法が異なる場合は、その旨を案内するもの とする。 ◇同一の駅において、ホームドア・可動式ホーム柵が設置されて いるプラットホームと設置されていないプラットホームが混在 する場合、当該プラットホームに通ずる階段にホームドア・可 動式ホーム柵の設置状況を知らせる音声案内装置を設置するこ とが望ましい。音声案内装置を設置する場合には、音が明瞭に 聞こえ、他の音と錯綜がない環境下で設置する。 地下駅の地上出入口 ◇地下駅の移動等円滑化された経路の地上出入口において、その位置を知らせる音響案内装置を設置することが望ましい。その際、設置場所及び音量等については、駅の立地特性、周辺状況を踏まえる必要がある。なお、出入口が階段始端部となる場合には、階段区間への設置を避け、階段始端の平坦部の上部に設置する。 音響計画 ◇指向性スピーカー等の活用により、音声・音響案内の干渉・錯綜を避け、必要な情報が把握しやすくなるよう音響計画を実施することが望ましい。 参考2-2-18:改札口における音響案内の例 参考2-2-19:改札口における音響案内の標準例 「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響 (具体的な音響づくりについては、参考2-2-29に示す「音案内を行う際の基礎知識」を参照) 参考2-2-20:エスカレーター内蔵スピーカーの例 120ページ ・エスカレーターに設置(内蔵)されたスピーカーは、対面方向に向かって音源が設置されている。 (東京地下鉄東西線行徳駅) 参考2-2-21: エスカレーターにおける音声案内の標準例及びエレベーター、エスカレーター、階段 におけるホームドア設置状況の案内例 案内文設定の考え方 ・案内内容は、行き先方向を端的に短く伝えることが望ましい。冗長な案内はかえって混乱を招くこととなる。 ・乗車動線上であれば「ホーム方面行き」、降車動線上であれば「改札口方面行き」であることを基本とする。 ・案内間隔はできる限り短くすることが望ましい。 音声案内の案内文標準例 標準パターン 「{行き先}{上下方向}エスカレーターです」 コンコースからホームへ向かうエスカレーター ・行き先ホームの路線名などを案内する。また全ての路線名を案内することが煩雑となる場合は番線名を案内する。 「環状線下町方面ホーム行き下りエスカレーターです」 「環状線ホーム行き下りエスカレーターです」 「山手方面ホーム行き上りエスカレーターです」 「港湾線みなとまち方面、環状線山手方面ホーム行き上りエスカレーターです」 「5番線・6番線ホーム行き上りエスカレーターです」 ホームからコンコースへ向かうエスカレーター ・行き先となるコンコースから最寄の主要な改札口を行き先として案内する。 「南口改札方面下りエスカレーターです」 「東口・北口改札方面上りエスカレーターです」 「南口・市営地下鉄乗換改札方面下りエスカレーターです」 通路上途中経路に設置されたエスカレーター ・乗車動線上であれば、「乗り場方面行き」、降車動線であれば「改札口方面行き」を目安として案内を行う。 「環状線乗り場方面下りエスカレーターです」 「乗り場方面下りエスカレーターです」 「南口改札方面下りエスカレーターです」 121ページ コンコースからホームへ向かうエレベーター、エスカレーター、階段におけるホームドア設置状況の案内 ・エスカレーター、階段、エレベーターにおけるホームドア、可動式ホーム柵 の設置状況を案内する。エスカレーターは、上記「コンコースからホームへ 向かうエスカレーター」の案内と組み合わせることも考えられる。 「○○線○○方面行きホームにはホームドア(ホーム柵)がありません。ご 注意ください」 「○線○方面行き、○○線○○方面行き、○○線○○方面行きホームにはホ ームドア(ホーム柵)がありません。ご注意ください」 「右○番線、左○番線、左○線にはホームドア(ホーム柵)がありません。 ご注意ください」 「右○番線、左○番線ともホームドア(ホーム柵)がありません。ご注意く ださい」 (コラム12)エスカレーターの音響案内(香港の事例) 音声案内に加えて、エスカレーター乗り口に以下の非音声音案内を設置し、進入可能口を知らせている。 ・進入可能な場合…カチカチ(短い間隔) ・進入不可な場合…カッチカッチ(間隔をおいている) 122ページ 参考2-2-22:トイレでの音声案内の例(人感知式) 参考2-2-23:トイレにおける音声案内の標準例 ●男子用・女子用トイレが一体的に設置されている場合 「向かって右が男子トイレ、左が女子トイレです」 ●男子用トイレ、女子用トイレが別々に設置されている場合 男子用トイレ入口:「男子トイレです」 女子用トイレ入口:「女子トイレです」 参考2-2-24:音声案内に関する配慮 音声・音響案内を提供する場合、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい大きさとすることが重要である。一方で、発達障害者等の利用者は、大きな音や複数の音・音響が重なること等により不安を生じる場合があることに 配慮する必要がある。 音案内を整備する上では次のことに留意することが重要である。 ○音案内は、旅客の行動に合わせて、利用の流れを考慮して適切な位置に設置することが重要であり、音源定位、旅客の静止時・移動時の聞き取り状況等を考慮する必要がある。 ○音案内の背景にある必要性の低い音を制御する等、音の総量を規制することが重要である。そのためには、音声の自動放送と肉声でのアナウンスの重なりを回避することや、必要に応じて商業施設等へ協力依頼を行う必要がある。 指向性のあるラインアレイタイプのスピーカー 123ページ 参考2-2-25:プラットホーム上の階段における音響案内の例 鳥の鳴き声を模した音響  視覚障害者用付加装置(交通交差点におけるいわゆる音響信号機)の案内音(音響規格等詳細は警察庁交通局「音響式視覚障害者用交通信号付加装置仕様書」を参照)とは区別する。 (具体的な音響づくりについては、参考2-2-28に示す「音案内を行う際の基礎知識」を参照) 参考2-2-26:地下鉄駅の地上出入口における音響案内の例 参考2-2-27:地下駅地上出入口における音響案内の標準例 「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響 (具体的な音響づくりについては、参考2-2-28に示す「音案内を行う際の基礎知識」を参照) 124ページ 参考2-2-28:音案内を行う際の基礎知識 ここでは、各場所で音案内を設置する際に、全般的に考慮が求められる視覚障害者の特性、音の性質、音量選択の考え方、案内範囲の考え方などを示している。 なお、ここで示した技術仕様は、JIS T0902「高齢者・障害者配慮設計指針 ―公共空間に設置する移動支援用音案内」と整合している。 近年は、暗騒音の音圧レベルに対して自動的に音量を約10dB過不足ないよう自動調整する音案内機器も実用化されている。夜間の仕様を想定した場合、このような機器の積極的な導入が望ましい。 本文中、*印で示した仕様は、この JIS で定めた要求推奨事項である。また、音声以外の可聴音を使用した音案内について、本ガイドライ ンでは「音響案内」という用語を使用しているが、本 JIS では「非音声音案内」という用語を定義 している。ここでは「音響(非音声音)案内」と併記する。 1.視覚障害者の音利用特性 (1)視覚障害者の聴覚による環境認知の基礎 音情報は、視覚障害者にとって歩行中の周囲の様子を知るために非常に重要である。 視覚障害者の歩行における聴覚の基本的役割は、車両などの音を発している物体の位置を知る(これを「音源定位」という)だけではなく、壁や柱などの音を発していない構造の位置を反射音などを手がかりに知る(これを「障害物知覚」という)役割も担っている。また、室内の残響の様子などを手がかりに施設の広さや構造を知る役割も果たしている。 一般に視覚障害者は晴眼者に比べて音に敏感であるなどと言われているが、決して視覚障害者が特殊な聴覚を有しているわけではない。上述した聴覚による環境認知の技能は、あくまで訓練や学習によって獲得されたものである。 獲得の度合いには個人差があり、一般に中途失明者より先天盲のほうが聴覚による環境認知を高度に修得している。 また、中途失明者でも、若い時期に訓練や学習を積む機会があった者ほどしっかり修得している傾向にある。 視覚障害者の歩行における聴覚の役割は、視覚障害者の歩行訓練(Orientation & Mobility)の理論の中である程度体 系づけられている。音案内による視覚障害者の誘導を考える際には、必ずその役割を理解した上で、その役割を妨 害せずに必要に応じて不足している部分を補うような音響設計を心掛けなければならない。 (2)ランドマークとしての音案内の必要性 晴眼者にとっては「雑音」でしかない音情報が、視覚障害者にとっては「ランドマーク」となっていることが多い。 例えば、釣り銭の音で券売機の位置が分かったり、かつての改札のハサミの音が改札口の位置を知る手がかりとな ったり、水の音がトイレの位置を知らせていたり、中から聞こえてくる話声で男子トイレか女子トイレかを判断で きたりする。また、雑踏の流れによって通路の方向が分かったり、壁からの反射音の変化によって壁の開口部分(つ まり施設の出入口)が分かったりする。 しかしながら、これらの音情報は不確定なものであり、状況によっては利用できない場合がある。また、施設内に不必要に大きい騒音や音楽(BGM)が存在する場合は音情報そのものが利用できなくなることがある。さらには、風の強い場所などでは、風の音や気流の影響により音情報が確認しにくくなることもある。 上述のことを踏まえ、視覚障害者が確実に音情報を利用できるようにするためには、不必要な騒音や音楽(BGM) を排除した上で、確定的な音情報を人工的に配置することが望ましい。 124ページ 2.音による案内の考え方 −音の性質− (1)音案内に適した周波数や音色の考え方 人間の可聴域は20Hz〜20kHzと言われている。最も感度が高いのは4kHz付近である。なお、通常人間の音声の重要な部分は、ほとんどが5kHz以下の周波数帯域に含まれている。 生活環境に存在する騒音が低周波数優位な雑音であることを考えると、高い周波数の音のほうが環境騒音中では注意を引き、聞き取りやすい。しかし、加齢による聴覚機能の減退を考えると、高齢になるほど低い周波数音のほう が聞き取りやすい。両者を考慮すると、音案内として使用する周波数帯域は、基本周波数(その音の一番低い周波 数成分)が100Hz〜1kHzの範囲にあることが必要である*。なお、人間の音声は、男声が100〜150Hz、女声が 200〜300Hz、また現在実用化されているチャイムは770Hzと640Hzが使用されており、それぞれ基本周波数の必要条件を満たしている。 また、使用する音は、音源定位の正確さを確保するために、なるべくその周波数帯域(その音を構成する周波数成分の存在する周波数範囲)内にできるだけ多くの周波数成分をもつ音を使用する必要があり*、かつ最高周波数は8kHz以上である必要がある*。純音(単一周波数の音)や狭帯域音は使用してはならない。なお、現在実用化されている音案内(音声・チャイム共)は、最高周波数が約5〜8kHzの範囲となっており、全てが理想的とは言えず今 後改善が必要である。 上記のことを踏まえ、具体的な音響(非音声音)案内を設定する際には、以下のことに配慮すると、暗騒音や残響中での音源定位により有効となる。 ・純音(単一周波数の音)は不可とし、広い周波数帯域をもつ音を用いる。最低周波数は100Hz〜1kHz、最高周波数は8kHz以上とする必要がある*。また、その周波数帯域内にできるだけ多くの成分を持つ複合音とすることが望ましい*。多くの倍音(その音の基本周波数の整数倍の周波数の音)を含んだ音は利用者にとって音源定位がしやすい音となる。なお、倍音成分を間引き(例えば偶数倍音や高周波成分を削除)するなどして心地よい音色をデザインするケースがあるが、この種類の音は音源定位の性能を確保するために大音量で出力する必要があり、かえって不快感を増す結果となるので好ましくない。 ・音の時間長さは、5秒以下とすることが望ましい*。短い時間長さの音を繰り返すほうが、音の立ち上がりが頻繁に発生するので音源定位がしやすい案内となる。 ・定常音(単一の音色が継続的に流れる音)や単調に減衰する音を使用しても構わないが、もし可能なら周波数ゆらぎ(注1)や振幅ゆらぎ(注2)を持たせることが望ましい*。 ・音の立ち上がりは、0.005秒以下の急峻なものとする*。 ・鳥の鳴き声を模した音響(非音声音)などの「自然現象などから類推できる音」については、実在する自然音と区別できる音にしなければならない*。このため、実際に自然の音を録音したものをそのまま用いることは好ましくない。 ・音の繰り返し頻度は、案内音と次の案内音との間の無音時に利用者が通過してしまうことがないように、無音時間を原則2秒以下にすることが望ましい*。ただし、周辺の利用者、住民、及び施設職員に不快感をもたらさないことにも配慮して無音時間を決めるものとする。 ・スピーカは、前述の周波数帯域を再生することが可能な周波数特性をもつものを用いる*。デジタル再生の場合、分解能は8bit以上が必要であり、可能なら16bit以上を用いることが望ましい*。 (注1)周波数ゆらぎ・・・案内音のサイクルの中で、周波数の組み合わせが一定ではなく、多様な周波数の組み合わせが用いられていること (注2)振幅ゆらぎ・・・案内音のサイクルの中で、一定の振幅で推移するのではなく、多様な振幅を持っていること (2)音量選択の目安 音案内は視覚障害者にとって重要な情報源である反面、それを必要としない人にとっては騒音に過ぎないことを留意したい。音案内は必要最低限に留めることが重要である。 音のうるささや音による不快感は単純に物理的な音量だけで決まるわけではないが、環境基準では一応の騒音レベルの上限が設けられている。これによると、商工業住居併用地域における騒音は、昼間60dB以下、夜間50dB以下でなければならないとされている(騒音レベルの数値の例は下表1 126ページ 参照)。住居用の地域、及び療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域では、さらにこれより低い上限が設けられている(詳しくは表2参照)。旅客施設内でこの基準を満たすことは難しいが、施設周辺の住宅街などに対しては、音による案内もこの環境基準を満たすことが望まれる。また、基準を満たすだけではなく、周辺住民や近隣で働く人に不快感を与えないよう設定する必要がある。 表1 騒音レベルの数値の例 120 dB ジェットエンジンの音 100 dB 電車通過時のガード下 90 dB 地下鉄車内 80 dB 騒々しい街頭 60 dB 会話の音声 50 dB 静かな住宅街の昼 40 dB 図書館 30 dB 静かな住宅街の夜 0 dB 最小可聴限 表2 環境基準 療養施設、社会福祉施設等地域 昼間50 dB以下 夜間40 dB以下 住居地域              昼間55 dB以下 夜間45 dB以下 商工業住居併用地域     昼間60 dB以下 夜間50 dB以下 音案内の音量は、騒音公害の観点からはなるべく小さいことが望ましいが、その反面、周囲の環境騒音にマスクされずに正しく聞き取れるだけの大きさは確保する必要がある。基本的には、音案内の音圧レベルは、暗騒音の音圧レベルに対して約10dB以上大きいことが必要である*。周囲の環境騒音の騒音レベルは時間帯や曜日によって変化するので、音案内の音量(できれば周囲の騒音に合わせた各周波数成分毎のレベル)もこれに応じて過不足なく調整されることが望ましい。音量調整の具体的方法は、音案内を設置する施設や周辺の音環境の特性に応じて案内音の明瞭性を確保しつつ、かつ周辺住民や近隣で働く人とよく協議した上で周囲の迷惑とならないよう決定することが必要であろう。 (3)音の案内範囲の考え方 ―減衰特性と指向性の考慮― 音案内は、案内が必要な場所にのみ行うことが理想である。不必要な場所での案内は視覚障害者にとってもただの騒音となってしまうばかりか、誤った場所案内をしてしまう可能性があるので注意が必要である。 音案内は通常、スピーカーから音を発して行う。原則として、スピーカーの音の放射方向は、利用者の主要な動線の方向を向けることとする*。現在実用化されている音案内機器の中には、施工や外観の都合上、天井や壁にスピーカーを埋め込んで、天井から真下に音を放射したり、壁に垂直に音を放射するものがある。これらは利用者の動線とは関係のない方向に音を放射しているため好ましくなく、今後改善が必要である。 通常のスピーカーから発せられた音は、一般に距離の二乗に反比例して減衰する特性を持つ。遠くまで案内音を届かせようとすると、スピーカーの近隣がうるさくなってしまうので、減衰特性がより緩慢なスピーカー(例えば線音源スピーカーや面音源スピーカーなど)を用いるとよい。 また、通常のスピーカーは広い指向性を持っているので、案内が不要な方向にまで及ぶ場合がある。特 127ページ 定の方向にのみ案内を行う場合には、狭指向性スピーカーを利用することができる。半径2〜3mの近距離範囲にのみ案内を行いたい場合は、通常スピーカーを小音量で用いるか、または狭指向性スピーカーを使用して案内範囲を限定し、不必要に案内音が広範囲に届かないようにする。 スピーカーを設置する高さについては、施設の位置を知らせる観点からは、利用者がアクセスしようとしている対象の位置から音が発せられていることが理想的である。スピーカー設置高さによる特性としては、天井など高過ぎる位置への取り付けは、音の水平方向が分かりにくくなる問題があり、また残響が大きくなる問題もあるため好ましくない。また逆に、床など低い位置にスピーカーを取り付けると混雑時に音源が人の陰に隠れて音案内が不明瞭になる可能性があり、混雑しやすい施設では音案内の明瞭性を十分に検証して取り付ける必要がある。なお、中程度の高さ(1〜2m)では、耳に近い高さとなるため通過時に利用者が大音量を聞かされる可能性があるため、好ましくない。原則として、スピーカーの設置高さは、0.8m以下、または2〜3mの範囲である*。 現在一般に、広い範囲まで案内を行う場合は、床から2〜3mくらいの高さにスピーカーが配置されていることが多いようであるが、低い位置に設置されているアクセス対象(例えばエスカレーターなど)の位置関係が掴みにくい欠点がある。今後は可能な限り、アクセス対象と同位置にスピーカーを取り付けることが望ましい。 (4)音案内による利害 音案内は、施設利用者、特に視覚に障害を持つ利用者を対象として行われるものであるが、一方で、音案内を必要としない人にとっては騒音となってしまう可能性があるので注意したい。特に施設の職員など、長時間同じ場所で同じ案内を聞くこととなる人にとっては苦痛となることに留意しなければならない。このようなことを避けるため、不必要な音を避け、先述した音の案内範囲の考え方を踏まえて、音案内を設置することが必要となる。 3.音案内設置上の配慮事項 上記の「音案内を行う際の基礎知識」を踏まえ、本ガイドラインで示されている音案内の設置においては以下の点に配慮する必要がある。また、これらは、公共交通事業者等が、本ガイドラインを超える内容の音案内を設置する際にも十分な配慮が求められる事項である。 ・音響(非音声音)案内については、多くの音色を設定しない。本ガイドラインにおいて音響(非音声音)案内の標準例を示しているのでこれを遵守すること。また、本ガイドラインで定めた以外の方法で音案内を使用すると利用者が混乱するため、極力避けること。さらに、音案内を実施している場所では、騒音や音楽(BGM)など音案内以外の音を極力抑えること。 ・隣り合う施設(例えば階段と改札口)に同一音の音響(非音声音)案内を設置しない*。 ・案内音の音量設定にあたっては、音案内設置場所の空間特性を考慮し、環境騒音や残響の中でも聞き取れる音量を確保することが望ましい。原則として、環境騒音に対し約10dB以上を確保する*。 ・音源となるスピーカーの向きは、旅客動線上の案内が必要とされる方向に向け*、また、特定方向のみに案内を行う場合は狭指向性スピーカーを利用することが望ましい。 ・音源となるスピーカーの設置高さは、原則0.8m以下または2〜3mの範囲*とし、エスカレーターなどのアクセス対象と同位置にスピーカーを取り付けることが望ましい。 ・視覚障害者が音源を特定しやすいよう、可能な限り連続的に案内することが望ましい。音案内の繰返し頻度は、音から次の音までの無音時間2秒以下が原則である*。 ・視覚障害者が僅かな音響的手がかりにも注意を払って生活していることを踏まえ、音案内を設置し音量を調整する段階においては、最初から必要以上に大音量を出力しないことが望ましい。 128ページ 4.音響(非音声音)案内標準例の選定にあたって 本ガイドラインでは、改札口、プラットホームにおける階段、地下鉄地上出入口の各場所ごとに以下の考え方により音響(非音声音)案内の標準例を示した。 ●改札口:「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響(非音声音) ・既に多くの鉄軌道駅の改札口で導入されている音響(非音声音)案内であり、視覚障害者においても、この音響(非音声音)案内を頼りに改札口の位置を確認している。 ・既に普及している音響(非音声音)案内は、「音案内に適した周波数や音色の考え方」で示した音源定位しやすい配慮事項を満たしているものも多い。しかし中にはデザイン性を重視して配慮事項を満たしていない例も散見されるので、より一層の改善が望まれる。 ●プラットホーム上の階段:鳥の鳴き声を模した音響(非音声音) ・京阪電鉄、南海電鉄のホーム上の階段位置に設置され、視覚障害者からも「聞こうとする者にとって聞き取りやすく、出口方向の確認に頼りとなる」と評価が高いものとなっている。 ・隣接ホームとの音源錯誤を防ぐ上でも、隣接ホーム間で音色を変えることによって工夫を行うことができる(京阪電鉄では隣接ホームで音色を変えている)。 ・具体的な案内音の選定にあたっては、当該旅客施設周辺に生息する本物の鳴き声と区別がつくよう配慮しなければならない。実際の鳴き声を録音したものをそのまま使用することは避けなければならない。 ・既に設置されている鳥の鳴き声の音響(非音声音)案内は、「音案内に適した周波数や音色の考え方」で示した音源定位しやすい配慮事項を満たしているものもあるが、中には高い周波数成分のみで校正されているものも散見されるので、より一層の改善が望まれる。 ・鳥の鳴き声を模した音響(非音声音)を音案内として使用することについては賛否両論があり、今後もガイドラインで継続して推奨するか否か更なる検討が必要である。 ●地下鉄の地上出入口:「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響(非音声音) ・公営地下鉄の一部の駅地上出入口で導入されている音響(非音声音)案内であり、「ピン・ポーン」の案内音が駅のイメージとして視覚障害者に定着しつつある。 ・改札口との区別が容易につくため、改札口と同一音を示した。 ・既に普及している音響(非音声音)案内の現状は、上記「改札口」の最後の説明参照。 129ページ 参考2-2-29:移動支援用音案内(非音声及び音声案内)に関する計画の考え方 移動支援における「音案内(非音声及び音声案内)に関する計画の考え方」は、音案内の整備計画を立てる場合の考え方、留意点を整理したものである。明瞭に聞こえ、かつ不快感を与えない音案内の実現は、周囲の騒音など旅客施設を取り巻く環境を同時に考慮しないと実現することが難しい課題であるが、利用者にとって少しでも役に立つ音案内を実現するために改善を重ねる必要がある。そのためここに示す考え方が音案内の企画、設計・施工の際 の基本的な手順として理解され、整備の際の参考として活用されることを期待したい。 1. 音案内の必要性 (1)音案内の必要性と提供対象 われわれは視覚、聴覚などを通して日常的に様々な情報を取り入れている。特に視覚障害者にとって、音の情報は 安全で円滑な移動のために重要である。もちろん、視覚障害者の移動支援(主にオリエンテーション情報)を提供する主要な手段は音案内単独だけではなく触覚表示(視覚障害者誘導用ブロック、点字表示など)等との組み合わせによって実現されるものである。 図1 音案内の提供対象の整理 音案内は視覚障害者を主な対象として設置されるが、視覚障害者以外の利用者の移動に対してもメリットがあると考えられる(図1)。特に今後増加する高齢者にとって、複雑化、多様化する経路の案内や誘導には音案内が有効な支援方法の一つとなると考えられる。そのような観点からも、音案内の設置に際しては多様な人が共通してそれを活用できる配慮が必要である。 130ページ (2)移動の際に役に立つ音 現状の旅客施設で移動の手がかりとして役に立つ音は、主に以下の二つが考えられる。 一つは、本整備ガイドラインで従来から提示している設備の位置や注意を促すための意図的に作り出された音、適切に提供されている自動放送が挙げられる。これらの音はいずれも、音源方向の定位(どこから音が出ているか判断できる)が旅客の誘導に役立ち、音量や設置位置が決まっているため常に安定した移動の手がかりとなる。 もう一つは、鉄道駅であれば列車の走行音、ドアの開閉音、旅客の足音など自然に発生する音であり、環境の状態の把握に役立つものである。音が持つ記号としての意味内容が様々な状況判断に有用であるが、これらの音は常に安定した質を持つものでないため二次的な手がかりとして活用される。 (3)音案内の妨げになる音 音案内を妨げてしまう環境中の音は、主に以下の三つが挙げられる。 一つ目は、旅客施設内外の不適切な案内放送で、例えば過剰に繰り返される放送、音量の大きすぎる放送、音質の悪い放送で、音案内と無関係に長く鳴り続ける音挙げられる。さらに周辺騒音、暗騒音と言われる、商業施設等で流す販売案内放送、BGMなどの誘導案内とは無関係の意図的に作り出された音である。 二つ目は、建築施設の壁面、天井などの材質や構造によって発生する反射音・残響音である。 三つ目は、複数の案内音などが重なることによる影響で、例えば近い周波数帯の音や類似する音が重なることで所定の音案内として聞こえなくなる現象、2つの音が同時に発生した場合に、長い方の音や大きい方の音が他方の音をかき消すマスキング効果等である。 (4)実態把握の必要性 音案内の有効性が損なわれるような状況を認識したうえで、利用者の立場に立った音案内の必要性を整理する必要がある。 すなわち旅客施設の特性と主要な移動経路を想定した場合、利用者にとって音案内が必要な場所・場面、視覚障害者誘導用ブロックや点字・触知図等の触覚と音の両面で対応すべき箇所などの整理が必要である。特に既設の音案内設備における効果の検証は重要である。 こうした利用者ニーズからみた音案内の有効性に関する実態把握は、現状の音案内の提供実態や音案内を妨げる要因の有無の確認を可能にし、音案内の適切性向上を意図した設備施工、運用後の評価、さらに環境改善に資するものである。 2.音案内を整備する上での留意事項と着眼点 (1)重要な3つの視点と5つのキーワード 音案内を考える上で「旅客の行動に合わせた適切な音案内」(文脈)、「音の伝えるべき情報と性能」(内容)、「音案内を行う環境の整備」(音環境)の3つの視点を合わせて考える必要がある。 視点1:旅客の行動に合わせた適切な音案内(文脈:context) 移動する人に系統的に必要な情報を伝えるために、音案内が途絶せず連続して提供されること、すなわち”利用文脈(利用の流れ)を考慮した適切な設置”が重要である。途絶には装置の配置による装置間途絶と内容伝達の途絶の二面が考えられるが、必ずしも常に音が聞こえる状態が必須というわけではなく、実際は、視覚障害者誘導用ブロックなど触覚的設備との連動によって途絶を軽減したり、回避されていることも多い。 また、具体的な例では、利用者が頼りにしている自動放送を遮断してしまう手動放送(例えば、自動放送中の係員によるマイクの案内)、他の音源が別の音をかき消してしまう問題などへの対応が求められる。 131ページ 視点2:音の伝えるべき情報と性能(内容:contents) 音声(言語)音・非音声音の役割分担、注意喚起と具体的な意味内容の伝達、音源定位(音の発生位置を特定する)、旅客の静止時・移動時の聞き取り状況等々を考慮した音の性能基準を考慮する必要がある。すなわち、多義性(1種類の音で複数の意味を持つこと)のある音の誤った場所での使用の回避、伝える内容に適した音の選択など、特に、音の質や種類の適切性を踏まえ、個々の音源を調整・制御する需要と必要性が今後は高まってくる。 視点3:音案内を行う環境の整備(音環境:circumstance) 音案内を行う環境の整備として、”音の総量規制”という概念が必要である。音の総量規制とは、すなわち音案内の背景にある必要性の低い音を制御することであり、空間における音の必要性や発生源をふまえ、全体としての情報量や音量を整理整頓(複数の音が同時に流れて聞き取れない、音が大きすぎてうるさいということを減らす)して、案内したい音が的確に伝わる環境を整えることである。 このために、周辺騒音、暗騒音を下げるための遮音・吸音対策、さらに反射・残響が発生しないような空間づくりが必要であり、特に地下等の遮蔽空間では重要である。そのためには、必要に応じて商業施設等への協力依頼を行うことも考慮する。 一方でどういう環境の時にどういう音の出し方が良いか、空間の複雑さ等に対応した目標値の整理などが今後の研究に求められている。 また、音案内自体については@「統一性」、A「類推性」、B「印象の等価性」、C「了解性」、D「非騒音性」の5つのキーワードが挙げられる。それぞれの意味を以下に示す。 @統一性:設置者、施設が異なる場合でも、同じルールに基づいた音案内が用いられていること。 A類推性:自然現象などとの類似性によって意味を推測しやすくなっていること。また、従来からの普及によって音と事象の関連が推測されやすくなっていること。 B印象の等価性:音自体の物理的特性によって生じるイメージが音サインの意味と大きく相反しないこと。すなわち、危険を伝える音は危険らしさを感じさせるようにする、垂直移動で上下どちらに向かう経路かを音高の変化で示すような例。 C了解性:確実に聞き取ることができ、意味の解釈を誤らないような状態であること。すなわち、明瞭度が十分あり、意味も周知されている状態であること。 D非騒音性:音案内がうるさく感じられてしまうことがないように設定されていること。 @〜Cについては音案内を活用する人にとっての配慮として重要であり、Dはさらに音案内を直接活用しない周囲の人への配慮も含むものである。 これらの視点とキーワードの関係性(図2)を意識して計画することが重要である。 図2 音案内における3つの視点と5つのキーワード 132ページ (2)施設規模に応じた音案内の必要性 先にも述べたとおり、地域性や旅客施設の各々の音環境の違いに着目した、環境別対応という考え方が必要になる。施設内及び周辺の騒音の大きさ、騒音発生の頻度、音の反射などの相違から環境を大きく区分けして考え、今までは音案内自体の音量(増大)による対処が主であったが、騒音など音案内以外の音をコントロールする(下げる)対処や案内音の指向性制御の考え方が必要とされてくる。特に、大規模旅客施設で、案内すべき施設が多数存在する場合や暗騒音レベルが終日高い場合などに、音量を大きくしすぎるなどの対応で、結果的に案内の有効性を向上させないまま騒音の大きな状態の環境をつくり出してしまうなど、誤った整備を行わないようにする必要がある。 3.音案内の整備のあり方と方向性 音案内を実施する際は、上記の内容を考慮し以下の手順に沿って行うことが望ましい。 (1)音案内を整備する際の原則 @トータルな立場からのデザイン ・個別の装置に取り付けられている音(報知音、操作音など)、異なる施設から発せられる音を把握し、その場所での音全体を制御することを考える A音案内を行う環境の整備 ・その場所での音を一定の音量以上に大きくしないなど、背景音の制御という考え方に基づき不要な音の削減・暗騒音レベルの低減化を図る B規定以外の使用方法で音案内を用いない ・例えば改札口や地下鉄出入り口以外の場所で「ピンポン」音を使用しないなど (2)音案内を整備する際の計画 @音案内の系統的配置 ・旅客施設の中で音案内が必要な場所を系統的に特定する A意味伝達性の保障 ・適正な案内内容、適正な音の特性を確認する B過度な設備の回避 ・複数の音源が近接して設置されるなどの過度な設備を原因とする音の輻輳によるわかりにくさを回避する C他の案内方法との機能分担、協働の整理 ・必要に応じて触知による案内・誘導(視覚障害者誘導用ブロック等)の活用を図る ・設備面だけで全て対応できない場合があることを理解し、その際は人的支援による補完を考慮する (3)個別の音案内の性能、整備水準 @個別音源の調整 JIS T0902「高齢者・障害者配慮設計指針−公共空間に設置する移動支援用音案内」参照 A個別の音源が相互連動性をもって機能すること (4)整備効果の評価検証の留意点 @音案内の周知 ・どのような音がどのような意味で用いられているかということを視覚障害者当事者だけでなく、音案内が有効と考えられる利用者に広く周知されるよう配慮する A案内の整備効果の評価検証手順 ・個別の音の音響的特性については、2013年度発効予定のJIS T0902に則り評価する ・利用の文脈の中での案内の適切性、個別の音の内容の適切性を利用者並びに専門家の支援を得て 133ページ 検証し、整備後の定期的な評価(少なくとも5年に1度程度)を行い必要に応じた修正を行うと共に、可能であれば施設の改修なども視野に入れる。 (5)その他の課題 施設側の適切な音案内設備拡充のほか、携帯電話(スマートフォン)等の通信機器を用いた情報提供手段の可能性についても今後検討していく必要がある。また、予期できない音に対して対応しきれない利用者もおり、今後、コントロールされた音環境下で、さらに多くの人が不快を感じない音案内の提供方法の検討が必要である。 本参考資料作成にあたり下記の方々のご協力を頂いた。 ※肩書は平成25年のガイドライン改定時のもの 秋山哲男 北星学園大学客員教授・旅客施設小委員会委員長 太田篤史 横浜国立大学大学院特別研究教員 鎌田 実  東京大学教授・車両小委員会委員長 関 喜一  産業総合技術研究所主任研究員 土田義郎  金沢工業大学教授 中野泰志  慶應義塾大学教授 永幡幸司 福島大学准教授 原 利明 鹿島建設株式会社 船場ひさお フェリス女学院大学講師 前田耕造  株式会社ジーベック 武者 圭  サウンドスケープデザイナー 鈴木孝幸  日本盲人会連合副会長 田内雅規  岡山県立大学教授 134ページ ■触知案内図等及び点字表示 触知案内図等 ◎公共用通路に直接通ずる出入口の付近その他の適切な場所に、旅客施設の構造及び主要な設備の配置を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備を設けなければならない。 ○出入口付近又は改札口付近(出入口と改札口が離れている場合)に、それぞれの箇所の移動方向にある主要な設備等の位置や方向を示す音声・音響案内がない場合は、触知案内図等により案内する。 ◇乗り換えのある旅客施設では、乗り換え経路が他の経路と分岐する位置にも触知案内図等を設置することが望ましい。 ○トイレ出入口付近の視覚障害者が分かりやすい位置に、男女別及び構造を点字等で表示する。 ○触知案内図等において、点字により表示する場合の表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、触知案内図により表示する場合の表示方法はJIS T0922にあわせたものとする。視覚障害者用と晴眼者用ではわかりやすい案内図の表現が異なるため、これを晴眼者用と兼用として設けることは適当ではないが、何が書かれているのか晴眼者が理解できるよう、JIS T0921あるいはJIS T0922にあわせて文字も併記する。 通話装置 ○職員等が不在となる時間帯がある改札口や無人の旅客施設においては、職員等とやり取りができるように通話装置(インターホン等)を設置する。 音声案内装置 ◇触知案内図等に、スピーカーを内蔵し押しボタンによって作動する音声案内装置を設置することが望ましい。 ◇この装置を設置する場合、対面して操作する利用者の「前、後、左、右」などわかりやすい言葉を用いて、簡単明瞭に施設等の方向を指示することが望ましい。 ○職員等が不在となる時間帯がある改札口や無人の旅客施設においては、触知案内図もしくは通話装置(インターホン等)、または両方の位置を知らせる音声案内装置を設置するものとする。 ◇有人の改札口・旅客施設においても、触知案内図等の位置を知らせるよう音声案内装置を設置することが望ましい。 手すりの点字表示 ◎視覚障害者のために、手すりに階段の通ずる場所を点字で表示する。 ○上記の点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。 ○その他の視覚障害者を誘導する通路や傾斜路の手すり端部にも、当該通路や傾斜路の通ずる場所を点字で表示する。 ○同一の駅において、ホームドア・可動式ホーム柵を設置しているプラットホームと設置していないプラットホームが混在する場合、当該プラットホームに通ずる通路に階段がある場合は、階段の手すりにホームドア・可動式ホーム柵の設置状況を点字で表示する。 ○手すりの点字表示は、はがれにくいものとする。 ○上記手すりには、点字内容を文字で併記する。 135ページ 点字運賃表 ○線状ブロックで誘導した券売機付近には、点字運賃表を設置する。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。 ○点字運賃表の駅名の表示順序は50音順とすることを原則とし、見出しを設ける。 ◇点字運賃表は、可能な限り大きな文字でその内容を示すこと等によりロービジョン者が容易に運賃を把握できるようにすることが望ましい。 ◇点字の上に文字が重ならないように配置することが望ましい。 券売機の点字表示 ○線状ブロックで誘導した券売機には、運賃等の主要なボタンに点字を併記する。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。 ◇上記券売機には、操作可能なすべてのボタン、投入・取出口を示す点字を併記することが望ましい。 ○点字の表示位置については、JIS T0921(縦方向に並ぶ操作ボタンの場合はその左側、横方向に並ぶボタンはその上側(スペース上やむを得ない場合は除く。))にあわせたものとする。 ◇線状ブロックで誘導しない券売機についても、上記同様に点字を併記することが望ましい。 ◇複数社の乗り入れ区間では、乗り換えボタンなどにも点字を併記することが望ましい。 ○点字は、はがれにくいものとする。 B緊急時の案内用設備 考え方 緊急時に高齢者、障害者等が円滑に移動及び避難等ができるよう、消防関係法令や各都道府県等の条例に基づいて施設等の整備を行う。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 誘導標識 ◇停電時などを考慮して、主要通路に蓄光式誘導標識を敷設する。(JIS Z9095参照)ただし、消防法その他の法令の規定により停電時などを考慮した誘導案内方法が整備されている場合はこの限りでない。 緊急時の案内設備 ◇視覚障害者や聴覚障害者にも配慮し、緊急事態の情報を音声・文字表示によって提供できる設備を備えることが望ましい。 ・光による火災発生の情報提供については、「光警報装置の設置に係るガイドライン」、外国人来訪者等に配慮した災害情報の伝達や避難誘導の方策等については、「外国人来訪者等が利用する施設における災害情報の伝達・避難誘導に関するガイドライン」を参考とすること。 136ページ 参考2-2-30:触知案内図及び代替機能の事例 ・設置位置を把握しやすくしている事例(音情報や、設置位置のルールを明確にし、情報を提供しているもの) ・人的な対応を積極的に行っている事例 ・通話装置(インターホン等)が設置されている事例(施設管理者等と連絡が取れるようになっているもの) ・旅客施設内の点字マップ(持ち運びができる地図で、点字で示されたもの) 参考2-2-31:蓄光式誘導標識(JIS Z 9095) このJIS規格は、旅客施設を含む公共施設、商業施設、地下街等の建物内の照明及び誘導灯が停電などで使用できない場合に使用できる蓄光式の避難誘導システムについて規定されたものである。蓄光式の誘導案内は、誘導灯及び誘導標識に代わって設置されるものではなく、それらに加えて設置される。 <基本原則として、以下の事項が明記されている> ・視覚的に連続した視認性の高い誘導ラインを建物内から避難路の最終地点まで引いて避難路の境界線と完全に一致させなければならないこと ・設置場所、掲示の高さ、視覚的強化(ラインを太くする、ラインを増やす等)はリスク評価に基づいて決定しなければならないこと ・蓄光式の安全標識の色、形状、図記号は、JIS Z9101,JIS Z9103,JIS Z8210 及び ISO 7010 によるものとすること ・蓄光式の安全標識、誘導ラインなどは少なくとも 60 分間の使用時間中、明瞭に見えなければならないこと 137ページ (コラム14)視覚障害者誘導案内用設備を補強するナビゲーションシステムについて(令和2年2月現在) <東京地下鉄 視覚障害者向け駅構内ナビゲーションシステム「shikAI」> ・東京地下鉄では、駅構内の点字ブロックにQRコードを設置し、スマートフォンのカメラで読み取ることで、現在地から目的地までの正確な移動ルートを導き出し、音声で目的地まで案内する視覚障害者向け駅構内ナビゲーションシステム「shikAI」の最終検証を2019年に実施。アプリの一般公開に向けて、視覚障害者の方を対象に、駅構内の円滑な移動、電車の乗降、混雑時のスムーズな移動の実現など、様々な状況下におけるシステムの検証を行った。7月から開催される東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、競技会場最寄り駅・ホームドア調整済みの駅に一部導入するための準備を進めているところである。 写真左【QRコードのイメージ】 写真右【shikAIシステム概要】 提供:東京地下鉄株式会社 <三井不動産、清水建設、日本アイ・ビーエム 高精度音声ナビゲーションシステム「インクルーシブ・ナビ」> ・スマートフォンによる高精度な測位と、AI を活用した音声対話の連携で、一般歩行者だけでなく、視覚に障がいをもつ方や車いすの方も利用できるナビゲーション・アプリ。利用者に適した経路と情報により目的地まで誘導する。2019 年10 月に日本橋室町地区でサービスを開始した。アプリとの対話などにより目的地を設定すると、例えば、視覚に障がいをもつ利用者には「9 メートル進み、正面のエレベーターを使って3 階へ上がる」「扉の右に呼び出しボタン。点字有り」など、円滑な移動に必要なきめ細かな情報を音声で伝えてくれる。国内外の様々な施設での実証実験も継続し、駅・空港等の旅客施設との連携を図るなど対象エリアの拡大を通じて誰もが目的地へ円滑に移動できる社会の実現を目指している。 写真左【高精度音声ナビゲーションシステム概要】 写真右【ナビ利用の様子】 提供:清水建設株式会社 138ページ 3.施設・設備に関するガイドライン @トイレ ○個別機能を備えた便房に関する用語説明 A.車椅子使用者用便房:車椅子使用者が円滑に使用できる広さを備えた便房(標準内法寸法200cm×200cm程度の広さがあり、大型ベッドを備えたものも含まれる) B.車椅子使用者用簡易型便房:車椅子使用者が利用可能な出入口の有効幅員と最小限の広さを有する便房でこれまで簡易型多機能便房と呼んでいた便房の広さと同程度のもの C.オストメイト用設備を有する便房:腰掛便座のある広めの便房に汚物流しなどのオストメイト用水洗器具を設けたもの D.乳幼児連れ用設備を有する便房:ベビーカーとともに入れる広さを備えた便房でベビーチェア、乳幼児用おむつ交換台、着替え台等を備えたもの 車椅子使用者用便房にオストメイト用設備や乳幼児連れ用設備を備えた便房もある。 ※参考図を参照 考え方   トイレは利用しやすい場所に配置し、すべての利用者がアクセスしやすい構造とする。  近年、これまで整備を進めてきた多機能トイレでは、乳幼児連れやオストメイトなどそれらの機能を使いたい人が増えたこと、また、本来こうした機能を必要としないと思われる人が使用することなどにより、そこしか使えない車椅子使用者が利用できない問題が生じている。  このような課題に対応するため、多機能トイレを設置した上で、一般トイレにも簡易型多機能便房等の設置を推奨し、さらに一般便房への乳幼児連れ用設備などの機能分散を進め、より多様な利用者が円滑に使用できるよう配慮してきた。  今回の移動等円滑化基準見直しではさらに利用者の分散を促すよう、車椅子使用者用便房とオストメイト用設備を設けた便房を分けて整備する考え方が示された。また、おむつ交換の需要も多いため、乳幼児連れ用設備は可能な限り車椅子使用者便房以外に設置することが必要である。  上述の考え方に基づき、車椅子使用者が主に使用できる便房を確保したうえで、それ以外の機能をトイレ内に分散させ、これまで多機能トイレに集中していた利用者の分散化を図る記述内容をこのガイドラインで示している。  なお、これまでの多機能トイレの整備でも考慮されてきた点や新たな配慮事項を以下に示す。 ・1以上の車椅子使用者用便房は異性介助に配慮し男女共用とすることを標準とする。 ・旅客施設の規模、乗降客数、周辺の障害者施設等の立地状況により車椅子使用者用便房を複数設けることが望ましい。 ・車椅子使用者用便房には障害者等の介助のために大型ベッド等を設けることが望ましい。 ・便房内の戸の把手又は自動開閉ボタンの周辺には戸の開閉等に支障となる大型ベッドなどを接近して設けないものとする。 ・自動開閉ボタンを設ける場合は車椅子使用者がボタンに円滑にアクセスできるように配慮する。 139ページ 考え方 ・オストメイト用水洗器具は、温水が出る汚物流しを1以上設置する。その際、男女がそれぞれ使用できるように配慮して設置する。また、上記に加えて機能分散の観点から必要に応じて複数の便房にオストメイト用設備(この場合簡易型オストメイト用設備※でも可とする)を設置することが望ましい。 ・乳幼児連れ用設備を有する便房を男女それぞれ1以上又は男女共用で設けることが望ましい。 ・高齢者や知的・発達障害者等の同伴介助や性的マイノリティ等の利用に配慮し、広めの男女共用便房を設置することに配慮する。 ・片まひなど障害部位によりトイレの使用方法が異なることから、手すり等も左右両側の使用を想定したものとする。 ・車椅子使用者用便房の戸は電動式引き戸又は軽い力で操作できる手動式引き戸が望ましい。また、非常時には外部から解錠できるようにする。 ・非常用通報装置の位置は、転倒も考慮し、実際に手の届く範囲に設置する。 ※腰掛便座の背もたれ付近に水栓をつけたもの等 (トイレ全般) 移動等円滑化基準 (便所) 第13条 便所を設ける場合は、当該便所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 便所の出入口付近に、男子用及び女子用の区別(当該区別がある場合に限る。)並びに便所の構造を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。 二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 男子用小便器を設ける場合は、一以上の床置式小便器、壁掛式小便器(受け口の高さが三十五センチメートル以下のものに限る。)その他これらに類する小便器が設けられていること。 四 前号の規定により設けられる小便器には、手すりが設けられていること。 2 便所を設ける場合は、そのうち一以上は、前項に掲げる基準のほか、次に掲げる基準のいずれかに適合するものでなければならない。 一 便所内に車椅子使用者が円滑に利用することができる構造の便房(次条において「車椅子使用者用便房」という。)及び高齢者、障害者等が円滑に利用することができる構造の水洗器具を設けた便房がそれぞれ又は同一の便房として一以上(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれ一以上)設けられていること。 二 高齢者、障害者等が円滑に利用することができる構造の便所であること。 第14条 前条第二項第一号の便房が設けられた便所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 移動等円滑化された経路と便所との間の経路における通路のうち一以上は、第四条第五項各号に掲げる基準に適合するものであること。 二 出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 三 出入口には、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。ただし、傾斜路を設ける場合は、この限りでない。 四 出入口には、車椅子使用者用便房及び高齢者、障害者等が円滑に利用することができる構造の水洗器具を設けた便房が設けられていることを表示する標識が設けられていること。 140ページ 五 出入口に戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。   ロ 高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 六 車椅子使用者の円滑な利用に適した広さが確保されていること。 2 前条第二項第一号の車椅子使用者用便房は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 出入口には、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 二 出入口には、当該便房が車椅子使用者用便房であることを表示する標識が設けられていること。  三 腰掛便座、手すりその他の車椅子使用者の円滑な利用に適した設備が設けられていること。 3 第一項第二号、第五号及び第六号の規定は、前項の便房について準用する。 4 前条第二項第一号の高齢者、障害者等が円滑に利用することができる構造の水洗器具を設けた便房には、出入口に当該便房が高齢者、障害者等が円滑に利用することができる構造の水洗器具を設けたものであることを表示する標識を設けなければならない。 第15条 第十三条第二項第二号の便所には、高齢者、障害者等が円滑に利用することができる構造の水洗器具を設けなければならない。 2 前条第一項第一号から第三号まで、第五号及び第六号並びに同条第二項第二号及び第三号の規定は、第十三条第二項第二号の便所について準用する。この場合において、前条第二項第二号中「当該便房が車椅子使用者用便房」とあるのは「当該便所が高齢者、障害者等が円滑に利用することができる構造のもの」と読み替えるものとする。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 配置 便所を設ける場合、次の移動等円滑化基準に基づく整備内容のいずれかに適合すること ◎高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便所として、以下の要件を満たす便房をそれぞれ又は同一の便房として1 以上(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれ1以上)設置する。 ・車椅子使用者が円滑に利用することができる構造を有する便房(以下、「車椅子使用者用便房」という)。 ・オストメイトのパウチ等の洗浄ができる水洗器具が設けられた便房。 ◎高齢者、障害者等が円滑に利用することができる構造の便所であること。 ○異性介助に配慮し、男女共用車椅子使用者用便房を1以上設置する。 ○車椅子使用者用便房を男女別に設置する場合は、一般トイレ出入口付近等異性介助の際に入りやすい位置に設置する。 ○乳幼児連れ用設備を有する便房を1以上設置する。 ○高齢者、障害者等の利用状況に応じ機能分散の考え方を踏まえ、車椅子使用者用便房(車椅子使用者用簡易型便房を含む)、オストメイト用設備を有する便房、乳幼児連れ用設備を有する便房をそれぞれまたは同一の便房として増設する。 141ページ 配置 ◇更なる機能分散を図る観点から、必要に応じて、一般便房にベビーチェアや簡易型オストメイト用設備(腰掛便座の背もたれに水栓をつけたもの等)などを設置することが望ましい。 ◇車椅子使用者便房を2 か所以上設置する場合は、右まひ、左まひの車椅子使用者等の便器への移乗を考慮したものとすることが望ましい。 ◇介助者を伴って利用することが想定される便房内には、介助者の同伴に配慮し、カーテンなどを設置することが望ましい。 ○旅客施設の複数の方面から移動等円滑化された経路が確保されている場合は、移動等円滑化された経路の方面ごとに、男女共用の車椅子使用者用便房、オストメイト用設備を有する便房、乳幼児連れ用設備を有する便房を1 以上設置する。 案内表示 ◎男女別及び構造を、便所の出入口付近の視覚障害者がわかりやすい位置に、音、点字その他の方法により示す。 ◎便所内に車椅子使用者用便房が設けられている場合は、便所の出入口及び便房の外側に、その旨を表示する標識が設けられていること。 ◎便所内にオストメイトのパウチ等の洗浄ができる水洗器具が設けられている場合は、便所の出入口及び便房の外側に、その旨を表示する標識が設けられていること。 ○壁面等に触知案内図を設置した場合には、その正面に誘導するよう視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。 ○点字を用いて表示する場合の表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。 ○触知案内図を用いて表示する場合の表示方法はJIS T0922にあわせたものとする。 ○触知案内図等は、床から中心までの高さが140cmから150cmとなるよう設置する。 ○一般トイレ内に車椅子使用者用簡易型便房、オストメイト用設備、おむつ交換台、ベビーチェアなどがある場合には、その旨がわかるように出入口付近において案内表示を行う。また、上記の設備がある便房の外側扉にも、便房内にある設備が便房の外からわかるように案内表示を行う。 ◇車椅子使用者用簡易型便房を設置する場合は、簡易型と分かる表示をすることが望ましい。 音声案内 ○便所出入口付近において、男女別等を知らせる音による案内装置を設置する。 (設置の考え方、具体的な音声案内例は参考2-2-23 を参照) ◇音声案内を行う場合は、短い時間で簡潔に情報提供することに配慮することが望ましい。 その他の情報提供 ◇トイレの個室の大きさや備えている機能について、ホームページ等で情報を提供することが望ましい。 142ページ 出入口 ◎出入口の幅は、80cm以上とする。 ◎出入口には、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないようにする。ただし、傾斜路を設ける場合は、この限りでない。 小便器 ◎便所内に、男子用小便器を設けている場合、杖使用者等の肢体不自由者等が立位を保持できるように配慮した手すりを設置した床置式又はリップ高さ35cm以下の壁掛式小便器を1以上設置する。 ◇上記小便器は、入口に最も近い位置に設置することが望ましい。 ○小便器の便器洗浄については、自動センサー式など操作を必要としないものとする。 ◇小便器の脇には杖や傘などを立てかけるフック等を設け、小便器正面等に手荷物棚を設置することが望ましい。 大便器 ◎便所内に腰掛式便器を1以上設置した上、その便房の便器周辺には手すりを設置するなど高齢者・障害者等の利用に配慮したものとする。 ○便房の戸に握り手を設ける場合は、高齢者、障害者等が操作しやすい形状とする。 ○便房内には利用者の出入りに考慮した余裕を確保する。 ◇便房の戸は引き戸式(2枚式引き戸を含む)や折戸式等を採用することが望ましい。 ◇便房の戸に引き戸式や折戸式を設ける場合には、戸の開閉方法を矢印等で表示することが望ましい。 ◇折戸や内開き戸を設ける場合は内側に十分な開閉スペースを確保し、外開き戸を設ける場合には、戸の開閉が円滑となるよう補助取っ手等を設ける。 ◇腰掛式便器を設置する場合、原則として腰掛式便器を設置するすべての便房の便器周辺に手すりを設置するなど高齢者、障害者等の利用に配慮することが望ましい。 ◇和式便器を設置する場合には、和式便器の周囲の壁に手すりを設置するなど、高齢者・障害者等の利用に配慮したものとすることが望ましい。 ◇便房内には、杖や傘などを立てかけられるフック等、手荷物を置く棚等を設置することが望ましい。 ◇ロービジョン、色覚異常の利用者等に配慮し、戸には確認しやすい大きさ、色(参考2-2-5参照)により使用可否を表示することが望ましい。また、色だけでなく「空き」、「使用中」等の文字による表示も併記することが望ましい。 143ページ オストメイト用 設備 ◎オストメイトのパウチ等の洗浄ができる水洗器具が設けられていること。 ◎上記設備が設けられた便房にはその旨を表示する標識が設けられていること。 ○上記の水洗器具の1以上は、パウチの洗浄や利用者がペーパー等で腹部を拭う場合を考慮し、温水が出る汚物流しを設置する。 ○汚物流しの洗浄装置を設置する場合には、洗浄装置付近の利用しやすい高さに、パウチなどのものを置ける十分なスペースを設置する。 ◇オストメイトのパウチ等の洗浄ができる水洗器具を複数設置することが望ましい。その場合、簡易型水洗器具とすることができる。 ◇簡易型オストメイト用設備を設置する場合は、当該設備では利用が難しい人がいることを踏まえ、簡易型であることがわかる表示を便房の扉に設置することが望ましい。 ◇施設内の他の場所に汚物流しを備えた便房がある場合は、その位置も案内することが望ましい。 洗面器 ○洗面器は、もたれかかった時に耐えうる強固なものとするか、又は、手すりを設けたものを1以上設置する。 ○車椅子使用者の利用を想定する場合、洗面器の下に床上65cm程度の高さを確保し、洗面器上面の標準的高さを75~80cm程度とする。 ○蛇口は、センサー式、レバー式などとする。 ◇子供等の利用に配慮し、高さ55cm程度、奥行き45p程度(吐水口に手が届きやすい)のものも設けることが望ましい。 乳幼児用設備 ○乳幼児連れの人の利用を考慮し、一般便房内(男女別に設けるときはそれぞれ)にベビーチェアを1以上設置する。当該便房の戸には、ベビーチェアが設置されている旨の表示を行う。 ○おむつ交換台を設置する。 ◇おむつ交換台を設置する場合、床面からおむつ交換台下端までの高さ70cm程度とする。また、正面開きタイプでは、幅75cm程度、奥行80cm程度、側面開きタイプでは、幅70cm程度、奥行60cm程度とすることが望ましい。 ◇おむつ交換台とあわせて荷物台やおむつ用のゴミ箱を設置する場合は、おむつ交換台の近くに設置することが望ましい。 床面の仕上げ ◎滑りにくい仕上げとする。 ◇排水溝などを設ける必要がある場合には、視覚障害者や肢体不自由者等にとって危険にならないように、配置を考慮することが望ましい。 ○床面は、高齢者、障害者等の通行の支障となる段を設けないようにする。 144ページ 呼び出しボタン(通報装置) ◇便器に腰掛けた状態、車椅子から便器に移乗しない状態、床に転倒した状態のいずれからも操作できるように呼出しボタンを設置することが望ましい。この場合、音、光等で押したことが確認できる機能を付与する。 器具等の形状・色・配置 ○紙巻器、便器洗浄ボタン、呼出しボタンの形状、色、配置についてはJIS S0026にあわせたものとする。 車椅子使用者用簡易型便房 ○車椅子使用者用簡易型便房は、正面から入る場合は有効奥行き200cm 以上、有効幅130cm以上のスペースと有効幅80cm 以上の出入口、側面から入る場合は有効奥行き180cm 以上、有効幅150cm 以上のスペースと有効幅80cm 以上の出入口を確保する。 ○車椅子使用者用簡易型便房に通ずるトイレ内通路には車椅子の転回スペースを確保する。 ◇ドアの握り手は、引き戸の場合ドア内側の左右両側に設置することが望ましい。開き戸の場合、握り手は高齢者、障害者等が操作しやすい形状とすることが望ましい。 ◇便器に背もたれを設置することが望ましい。 ○便器の周辺には、手すりを設置するとともに、便器に腰掛けたままの状態と車椅子から便器に移乗しない状態の双方から操作できるように便器洗浄ボタン、呼出しボタン及び汚物入れを設置する。 ○便器洗浄ボタンは、操作しやすい押しボタン式、靴べら式などとする。手かざしセンサー式を設置する場合は、押しボタン式、靴べら式などと併設する。 ○洗面台を設置する場合、蛇口は、上肢不自由者のためにもセンサー式、レバー式などとする。 ○紙巻器、便器洗浄ボタン、呼出しボタンの形状、色、配置についてはJIS S0026 にあわせたものとする。 ◇便器に腰掛けた状態と車椅子から便器に移乗しない状態の双方から使用できるように紙巻器を設置することが望ましい。 ○荷物を掛けることのできるフックを設置する。このフックは、立位者、車椅子使用者の顔面に危険のない形状、位置とするとともに、1以上は車椅子に座った状態で使用できるものとする。 ○便房の床、出入口には段を設けない。 ◇状況に応じ、乳幼児連れ利用者が、本人の排せつだけでなく、乳幼児のおむつ交換や排せつ対応等が可能なスペース、及びベビーチェア、おむつ交換台等の乳幼児用設備を備えた便房とすることが望ましい。 ◇トイレの個室の大きさや備えている機能について、ホームページ等で情報を提供することが望ましい。 145ページ 緊急時通報 ◇視覚障害者や聴覚障害者にも配慮し、緊急事態の情報を音声及び光によって提供できる設備(フラッシュライト等)を備えることが望ましい。 ◇フラッシュライト等を設置する場合には、便房内の扉等にフラッシュライトの点滅が緊急事態を表す旨を表示することが望ましい。 ◇フラッシュライト等は、便房の扉を閉じた状態で、すべての便房内からその点滅が十分識別できる位置に設置することが望ましい。 146ページ 参考2-3-1:トイレの配置例  ■車椅子使用者用便房2箇所及びオストメイト用設備を有する便房、乳幼児連れ用設備を有する便房を配置した例 ■車椅子使用者用便房を1箇所及びオストメイト用設備を備えた便房を男女別に配置した例 147ページ ■オストメイト用設備を備えた便房を1箇所及び乳幼児連れに配慮した便房を男女別に配置した例 ■複数の機能を備えた便房を1箇所配置した例 148ページ ●便所・洗面所の例 ■個別機能を備えた便房及び複数の機能を備えた便房の寸法例 男女共用で利用しやすい位置に設置するなど異性介助に配慮する。 ・オストメイト用設備を有する便房 ・車椅子使用者用便房 ・大型ベッド付便房 ・多機能便房 ・乳幼児連れに配慮した便房(ベビーカーと共に入ることができる寸法) 出典:「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(平成29 年3 月)」より抜粋 (トイレのピクトグラム)  トイレのピクトグラムには以下を使用する。 ・車椅子使用者用便房 ・オストメイト用設備を有する便房 ・乳幼児連れ用設備を有する便房 ・複数の機能を備えた便房 東京都交通局 新宿線 市ヶ谷駅におけるトイレ入口付近の情報提供の例(触知案内図) 149ページ 参考2-3-2:複数の方面から移動等円滑化経路が確保されている場合の車椅子使用者用便房、オストメイト用設備 を備えた便房の複数設置例 <京浜急行 羽田空港駅> ・2方面・改札口からホームへの移動等円滑化が図られ、方面ごとに車椅子使用者用便房を設置 (2箇所設置)。  出典:京浜急行電鉄ホームページより <京王電鉄 京王稲田堤駅> ・交差する他鉄道路線により分断されている北口・南口の2方面・改札口からホームへの移動等円滑化が図られ、方面ごとに複数の機能を備えた便房を設置(2箇所設置)。 出典:京王電鉄ホームページより 150ページ 参考2-3-3:小便器の手すり例 参考2-3-4: 和式便器の手すり例  腰掛式便器の手すり例 参考2-3-5:杖・傘等のフック、手荷物棚の例 151ページ 参考2-3-6:車椅子使用者用簡易型便房の例  <その他> 本ガイドラインでは、側面から入る場合において車椅子が 90 度転回できることを前提としている。一方で、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」では、斜めから移乗可能な例として 180cm 以上×150cm 以上が示されている。 151ページ コラム13)子どもトイレの設置 小田急電鉄の新宿駅では、機能分散の一環で子どもトイレ、オムツ替え室、授乳室などを 併設した。 (小田急電鉄新宿駅西口) 提供:小田急電鉄株式会社  参考2-3-7:JIS S0026「公共トイレにおける便房内操作部の形状・色・配置及び器具の配置」抜粋 <操作部の形状> ・便器洗浄ボタンの形状は,丸形(○)とする。 ・呼出しボタンの形状は,便器洗浄ボタンと区別しやすい形状[例えば,四角形(□)又は三角形(△)]とする。操作部は,指だけでなく手のひら又は甲でも押しやすい大きさとする。      注a)ボタンの高さは,目の不自由な人が触覚で認知しやすいように,ボタン部を周辺面より突起させることが望ましい。 <操作部の色及び輝度コントラスト> ・ボタンの色:操作部の色は,相互に識別しやすい色の組合せとする。JIS S 0033に規定する“非常に識別性の高い色の組合せ”から選定することが望ましい。例えば,便器洗浄ボタンの色を無彩色又は寒色系とし,呼出しボタンの色を暖色系とすることが望ましい。 ・ボタン色と周辺色の輝度コントラスト:操作部は,ボタンの色と周辺色とのコントラストを確保する。また,弱視の人及び加齢による黄色変化視界の高齢者も判別しやすいよう、明度差及び輝度比にも留意する。 153ページ 表 操作部及び紙巻器の設置寸法  単位:mm 器具の種類 紙巻器 便座上面端部(基点)からの水平距離 X1:便器前方へ約0〜100 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y1:便器上方へ約150〜400 2つの器具間距離 − 器具の種類 便器洗浄ボタン 便座上面端部(基点)からの水平距離 X1:便器前方へ約0〜100 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y2:便器上方へ約400〜550 2つの器具間距離Y3:約100〜200(紙巻器との垂直距離) 器具の種類 呼出しボタン 便座上面端部(基点)からの水平距離 X2:便器後方へ約100〜200 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y2:便器上方へ約400〜550 2つの器具間距離 X3:約200〜300(便器洗浄ボタンとの水平距離) 注)JIS S0026では上図の配置・寸法を基本とするものの、JISの解説において“この規格に示す設置寸法以外のとなる場合”の配置例を示している(手すりを設置する場合、棚付紙巻器を設置する場合、スペア付紙巻器を設置する場合等)。上図の配置・寸法による設置が困難な場合等においてはJIS S0026解説を参照されたい。 <操作部及び紙巻器の配置> ・呼出しボタンは,利用者が転倒した姿勢で容易に操作できる位置にも設置することが望ましい。 ・温水洗浄便座リモコンを設置する場合の配置例。 出典:JIS S 0026:2007 154ページ (コラム14)車椅子使用者用便房の便器脇手すり等の配慮事項 ・重度の上肢障害のある利用者(例えば上肢の動作が困難な頸椎損傷や筋ジストロフィーの人)にとっては便器洗浄ボタン等の操作スイッチの壁面取り付け位置は低めが望ましいという結果が示されている(JIS S0026の規格制定の事前検証「ぐっどトイレプロジェクト」による)。本整備ガイドラインでは壁面に取り付ける手すりの高さの目安を65〜70cm程度と示しているが、操作スイッチ類を低めに設置するにあたり、手すりがスイッチや紙巻器類に干渉しないよう高さの決定に際しては十分な配慮が必要である。 ・JIS S0026では上図の配置・寸法を基本とするものの、JISの解説において“この規格に示す設置寸法以外となる場合”の配置例を示している(手すりを設置する場合、棚付紙巻器を設置する場合、スペア付紙巻器を設置する場合等)。上図の配置・寸法による設置が困難な場合等においてはJIS S0026解説を参照されたい。 便器洗浄ボタンの紙巻器と垂直距離(Y3)が、この規格に示す設置寸法(約100〜200mm)以外となる場合の設置例・手すり、棚など、便器洗浄ボタンの真下に乗せることができるものが設けられる場合 @手すりを設置する場合                         A棚付紙巻器を設置する場合 ・棚付紙巻器に耐荷性がある場合には立ち座りの際のサポートに利用できるとともに、小さな荷物を置くことができる。 ・耐荷性のある棚付紙巻器を設置する場合は、I 型の縦手すりを設置することが考えられる。 ・Tokyo2020 アクセシビリティ・ガイドラインでは、縦手すりは便器 先端から 200〜250mm 程度前方の位置に設置することが示されている。 出典:JIS S 0026:2007 を基にして図を作成 155ページ 参考2-3-8:フラッシュライトの設置 ・便房に、フラッシュライトを設置する際には、便房内でその点滅が十分識別できるよう配置する必要がある。 ・「光警報装置の設置に係るガイドライン」では、光警報装置の機能において白色光とすることが示されている。 (フラッシュライトの設置イメージ) 156ページ (車椅子使用者用便房) ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 案内表示 ◎出入口には車椅子使用者用便房が設けられていることを表示する標識を設ける。 出入口 ◎高齢者、障害者等の円滑に利用することができる構造の便所又は便房の出入口は、段がないようにする。ただし、傾斜路を設ける場合は、この限りでない。また、設備の位置が容易にわかるように触知案内図等を設置する。 ○点字を用いて表示する場合の表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。 ○触知案内図を用いて表示する場合の表示方法はJIS T0922にあわせたものとする。 ◎高齢者、障害者等の円滑に利用することができる構造の便所又は便房の出入口の有効幅は、80cm 以上とする。 戸 ◎有効幅80cm以上とする。 ◇有効幅90cm以上とすることが望ましい。 ◎高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造の戸とする。 ○電動式引き戸又は軽い力で操作のできる手動式引き戸とする。手動式の場合は、自動的に戻らないタイプとし、握り手は棒状ハンドル式のものとする。 ◇握り手はドア内側の左右両側に設置することが望ましい。 ○握り手、鍵その他の付属物の設置にあたっては、車椅子使用者の円滑な動作に十分に配慮する。 ◇便房内の出入口の戸から70cm程度の範囲には、壁に付属物を設置しないことが望ましい。 ○防犯上・管理上の理由等からやむを得ず常時施錠が必要となる場合には、ドア近くにインターホン等を設置し、駅係員等が速やかに解錠できるものとする。 ○車椅子使用者や指の動きが不自由な人でも容易に施錠できる構造、高さ(60cm〜70cm程度)のものとし、非常時に外から解錠できるようにする。 戸の開閉盤(開閉スイッチ) ○戸の開閉盤(開閉スイッチ)は、電動式の戸の場合、車椅子使用者が中に入りきってから操作できるよう配慮する。 ◇戸の開閉盤は、戸から70cm以上離して設置し、その設置高さは100cm程度とすることが望ましい。 ○電動式の戸の場合、手かざしセンサー式だけの設置は避け、操作しやすい押しボタン式とする。手かざしセンサー式が使いにくい人もいることから、手かざしセンサー式とする場合には押しボタンを併設する。 ○使用中である旨を表示する装置を設置する。 157ページ 大きさ ◎車椅子使用者の円滑な利用に適した広さが確保されていること。 ○手動車椅子で方向転換が可能なスペースを確保する(標準的には標準内法寸法200cm×200cm程度のスペースが必要)。 ○新設の場合等、スペースが十分取れる場合は、電動車椅子で方向転換が可能なスペースを確保する(標準的には標準内法寸法220cm×220cm程度のスペースが必要)。 ◇電動車椅子で方向転換が可能なスペース(標準内法寸法220cm×220cm程度)を有する場合、便器横の移乗スペースを75cm以上確保することが望ましい。 便器 ◎便器は腰掛式とする。 ○便座には便蓋を設けず、背後に背もたれを設ける。 ○便座の高さは40〜45cmとする。 ○便器に逆向きに座る場合も考慮して、その妨げになる器具等がないように配慮する。 ◇上肢が動かしにくい利用者に考慮し温水洗浄便座を設けることが望ましい。 手すり ◎高齢者、障害者等の円滑に利用することができる構造の便房には、手すりを設置する。取り付けは堅固とし、腐触しにくい素材で、握りやすいものとする。 ○壁と手すりの間隔は5cm以上の間隔とする。 ○手すりは便器に沿った壁面側はL字形に設置する。もう一方は、車椅子を便器と平行に寄り付けて移乗する場合等を考慮し、十分な強度を持った可動式とする。可動式手すりの長さは、移乗の際に握りやすく、かつアプローチの邪魔にならないように、便器先端と同程度とする。手すりの高さは65〜70cm程度とし、左右の間隔は70〜75cmとする。 158ページ 付属器具 ○すべての付属器具の設置にあたっては、車椅子使用者の動作空間に配慮し、ドアの開閉動作等の支障とならないよう、配置に留意する。 ○便器洗浄ボタンは、便器に腰掛けたままの状態と、便器の回りで車椅子から便器に移乗しない状態の双方から操作できるように設置する。手かざしセンサー式だけの設置は避け、操作しやすい押しボタン式、靴べら式などする。手かざしセンサーが使いにくい人もいることから、手かざしセンサー式とする場合には押しボタン、手動式レバーハンドル等を併設する。 ○紙巻器は片手で紙が切れるものとし、便器に腰掛けたままの状態と、便器の回りで車椅子から便器に移乗しない状態の双方から使用できるように設置する。 ○荷物を掛けることのできるフックを設置する。このフックは、視覚障害者、車椅子使用者に危険のない高さ、形状とするとともに、1以上は車椅子に座った状態で使用できるものとする。 ○手荷物を置ける棚などを設置する。(またはスペースを確保する) ◇小型手洗い器を便座に腰掛けたままで使用できる位置に設置することが望ましく、蛇口は操作が容易なセンサー式、押しボタン式などとする。 洗面器 ○車椅子から便器へ前方、側方から移乗する際に支障とならない位置、形状のものとする。 ○車椅子での使用に配慮し、洗面器の下に床上65cm程度の高さを確保し、洗面器上面の標準的高さを75~80cm程度とする。よりかかる場合を考慮し、十分な取付強度を持たせる。 ○蛇口は、上肢不自由者のためにもセンサー式、レバー式などとする。 ○鏡は車椅子でも立位でも使用できるよう、低い位置から設置され十分な長さを持った平面鏡とする。 ◇洗面台周りに石鹸容器やハンドドライヤー等を設置する場合には、仕上がり床面から80cm〜100cm程度の操作可能な高さで、洗面台中央から75cm程度の範囲に設置することが望ましい。 汚物入れ ○汚物入れはパウチ等を捨てることを考慮した大きさのものとする。 ◇汚物入れは、おむつ交換台やオストメイト用の水洗器具から手の届く場所に設置することが望ましい。 鏡 ◇洗面器前面の鏡とは別に、全身の映る姿見を設置することが望ましい。 おむつ交換台 ◇機能分散の観点から、おむつ交換台は車椅子使用者用便房以外の場所に設置することが望ましい。 159ページ 大型ベッド等 ◇障害者等のおむつ替え用等に、折りたたみ式大型ベッドまたは収納式の大型おむつ交換台を設置することが望ましい。 ◇上記の折り畳み式大型ベッド等を設置する場合、畳み忘れであっても、車椅子での出入りが可能となるよう、車椅子に乗ったままでも畳める構造、位置とすることが望ましい。 ◇大型ベッドを設置する際には、介助者の動きを考慮し、ベッドの両側に十分なスペースをとることが望ましい。 床の表面 ◎滑りにくい仕上げとする。 ◇排水溝などを設ける必要がある場合には、視覚障害者や肢体不自由者等にとって危険にならないように、配置を考慮する。 ○床面は、高齢者、障害者等の通行の支障となる段を設けないようにする。 呼出しボタン(通報装置) ○呼出しボタンは、便器に腰掛けた状態、車椅子から便器に移乗しない状態、床に転倒した状態のいずれからも操作できるように複数設置する。音、光等で押したことが確認できる機能を付与する。 器具等の形状・色・配置 ○紙巻器、便器洗浄ボタン、呼出しボタンの形状、色、配置についてはJIS S0026にあわせたものとする。 (コラム15)便房外のおむつ交換台 スペースや構造上の関係で個室便房におむつ交換台を設置できない場合においても、パーティション等を設けるこ とにより便房外に設置する場合でもプライバシーに配慮することができる。(パーティションにはおむつ交換台サインを配置) 160ページ 参考2-3-9:車椅子使用者用便房の例 161ページ 参考2-3-10:複数の機能を同一の便房として整備(従来の多機能トイレ)した事例 162ページ 参考2-3-11:呼出しボタン・非常通報器の設置位置 (コラム16)車椅子使用者用便房へのカーテン設置について ・介助者が車椅子使用者用便房内で待つことや異性同伴の介助に配慮すると遮断カーテンの設置が望ましい、燃やされる・破られるといった防火面やモラル面での問題点、さらには、カーテンを手すり代わりとして使用される場合は危険であるといった安全面での問題点も指摘されている。 ・車椅子使用者用便房内にカーテンを設置する際には、上記の問題点を踏まえ、カーテンの素材、設置後の適切な管理などに十分配慮する必要がある。 163ページ 参考2-3-12:複数の機能を同一の便房として整備(従来の多機能トイレ)したほか、一般便房の機能強化を図った例 <個別機能便房の複数配置>  車椅子使用者用便房の他に、男女それぞれの限られたスペースの一般便房にオストメイト用設備を有する便房や乳幼児連れ用設備を有する便房を設置している。(東京都交通局 新宿線 市ヶ谷駅) 提供:東京都交通局提供資料を基に作成 164ページ <一般トイレに乳幼児連れ用設備を設けた例> 一般トイレに乳幼児用おむつ交換台、ベビーチェア、着替え台等、乳幼児連れ用設備を設けた便房を整備している。 (JR東海 名古屋駅) <JR東海 品川駅の乳幼児連れ用設備を備えた便房の例> 提供:東海旅客鉄道株式会社 165ページ A乗車券等販売所・待合所・案内所 考え方 出札・案内等のカウンターは、構造上、車椅子使用者にとって利用しにくいものもある。 特に、カウンターの高さや、蹴込みについて、考慮する必要がある。カウンターの下部は、車椅子使用者のひざや フットサポートなどが当たらないよう配慮する。 移動等円滑化基準 (乗車券等販売所、待合所及び案内所) 第16条 乗車券等販売所を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 カウンターを設ける場合は、そのうち一以上は、車椅子使用者の円滑に利用することができる構造のものであること。ただし、常時勤務する者が容易にカウンターの前に出て対応できる構造である場合は、この限りでない。 2 前項の規定は、待合所及び案内所を設ける場合について準用する。 3 乗車券等販売所又は案内所(勤務する者を置かないものを除く。)は、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該乗車券等販売所又は案内所に表示するものとする。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容(義務)、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 出入口 「第2部旅客施設共通ガイドライン 1.移動経路に関するガイドライン B乗車券等販売所、待合所、案内所の出入口」(28ページ) 参照 カウンター ◎乗車券等販売所、待合所及び案内所にカウンターを設ける場合は、そのうち一以上は、車椅子使用者の円滑に利用することができる構造のものとする。ただし、常時勤務する者が容易にカウンターの前に出て対応できる構造である場合は、この限りでない。 ○カウンターの蹴込みの一部は高さ60cm程度以上、奥行き40p程度以上とする。 ○カウンターの一部は、車椅子使用者との対話に配慮して高さ75cm程度とする。 ○カウンターのついたてまでの奥行きは、車椅子使用者との対話に配慮して30cm〜40cmとする。 視覚障害者の誘導 ○カウンターの1か所に視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。 聴覚障害者の案内 ◎乗車券等販売所、待合所及び案内所(勤務する者を置かないものを除く。)には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備える。 ◎この場合においては、当該設備を保有している旨を当該乗車券等販売所又は案内所に表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通が図れるように配慮する。 ○手話での対応やメモなどの筆談用具を備え、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ○手話での対応が可能な場合は、その旨を当該乗車券等販売所、又は案内所の見やすい場所に表示する。 166ページ コミュニケーション支援ボード ◇言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者等に配慮し、JIS T0103に適合するコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーションボードを準備することが望ましい。 参考2-3-13:カウンターの例 参考2-3-14:筆談用具がある旨の表示例 【文字表記の具体例】 ●「筆談用具を設置しています」 ●「筆談いたしますのでお申し出ください」 167ページ (コラム17)耳マーク・手話マークなど ・聴覚障害者が、自分の耳が不自由であることを表す耳マークの他、窓口等でヒアリングループを設置していることや手話、筆談での対応が可能であることを示すマークがあります。 (耳マーク)(ヒアリングループマーク)出典:(一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会                     (手話マーク)(筆談マーク)出典:(一財)全日本ろうあ連盟 参考2-3-15 :JIS T0103「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」に収載されている絵記号の例 【分類項目】501:乗り物・交通 168ページ (コミュニケーション支援ボードの一例) 出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団 169ページ B券売機 考え方 車椅子使用者等であっても利用しやすい高さに券売機を設置し、車椅子使用者が容易に券売機に接近できるように、蹴込みを設けるなどの配慮が必要である。 操作性についても、タッチパネル式は視覚障害者が利用できないため、テンキーを設けるなどの配慮が必要である。 移動等円滑化基準 (券売機) 第17条 乗車券等販売所に券売機を設ける場合は、そのうち一以上は、高齢者、障害者等の円滑に利用することができる構造のものでなければならない。ただし、乗車券等の販売を行う者が常時対応する窓口が設置されている場合は、この限りでない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 ◎1以上の券売機は、高齢者、障害者等の円滑に利用することができる構造とする。ただし、乗車券等の販売を行う者が常時対応する窓口が設置されている場合は、この限りでない。 高さ ◎主要なボタン及び金銭投入口は、車椅子使用者が利用しやすい高さとする。 ○主要なボタンは、110cm程度の高さを中心に配置する。 ○金銭投入口の高さは、110cm以下とすること。なお、券売機の構造上やむを得ない場合はこの限りでない。 金銭投入口 ○金銭投入口は、硬貨を複数枚同時に入れることができるものとする。 ◇金銭投入口・カード投入口等は、周囲と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)のある縁取りなどにより識別しやすいものとすることが望ましい。 蹴込み ○車椅子使用者が容易に接近できるよう、カウンター下部に高さ60cm程度以上の蹴込みを設ける。 ○車椅子使用者が券売機を操作できるように、蹴込みの奥行きは40cm程度とする。 呼出装置 ◇緊急時や故障時、問い合わせが必要な時に、駅係員に連絡できるよう、インターホン又は呼出ボタンを設けることが望ましい。 ◇高齢者、障害者等が使用しやすい構造とすることが望ましい。 ◇聴覚障害者等話し言葉によるコミュニケーションが困難な障害者の利用に配慮し、駅係員に連絡中である旨や駅係員が向かっている旨を表示する設備を設けることが望ましい。 障害者割引ボタン ◇障害者割引切符がある場合には、当該割引切符を示すボタンを配置することが望ましい。 170ページ 画面 ◇タッチパネル式の表示画面・操作画面及びボタン表示の配色については、参考2-2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の人の利用に配慮することが望ましい。 ◇タッチパネル式の表示画面・操作画面の文字はゴシック体で、できる限り大きな表示とすることが望ましい。 ◇表示画面・操作画面は、外光・照明の反射により、見にくくならないよう配慮することが望ましい。 点字表示 「■触知案内図等及び点字表示 券売機の点字表示」(135ページ)参照 ボタン ◇主要な点字ボタンの料金表示は、周辺との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくする等してロービジョン者の利用に配慮することが望ましい。 点字運賃表 「■触知案内図等及び点字表示 点字運賃表」(135ページ)参照 テンキー ○タッチパネル式の場合は、点字表示付きのテンキーを設置する。 ○テンキーを設置した券売機には音声案内を設置する。 ◇機器メーカーと共同して統一化を図ることが望ましい。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 171ページ 参考2-3-16:券売機の例 <自動販売機の点字表示位置の例> 172ページ 参考2-3-17:車椅子フットサポート部分に支障のないような蹴込みを設けた券売機の例 (左図はつくばエクスプレス券売機、右図は仙台空港駅) 参考2-3-18:券売機の金銭投入口等を縁取りした例 参考2-3-19:券売機の障害者割引切符を示すボタンの例 ・障害者割引切符を示す「福祉」ボタン 提供:大阪市高速電気軌道株式会社 173ページ C休憩等のための設備 考え方 大規模な旅客施設においては、長距離移動に配慮し、高齢者、障害者等が休憩するための設備を設置することが必要である。また、乳幼児連れの旅客のための施設を配置することが望ましい。 移動等円滑化基準 (休憩設備) 第18条 高齢者、障害者等の休憩の用に供する設備を一以上設けなければならない。ただし、旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれのある場合は、この限りでない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 ベンチ等 ◎高齢者・障害者等の長距離移動、長時間立位が困難であること、知的障害者、精神障害者及び発達障害者等の知覚面又は心理面の働きが原因で発現する疲れやすさや服薬の影響等による疲れやすさ等に配慮し、旅客の移動を妨げないよう配慮しつつ休憩のためのベンチ等を1以上設ける。ただし、旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれのある場合は、この限りでない。 ◇ベンチの形状は、巧緻な操作が困難である障害者等に配慮し、はね上げ式や折りたたみ式を避け、固定式とし、長距離の移動が困難となる利用者に配慮して適切な間隔で配置することが望ましい。 待合室 ○戸のある待合室を設ける場合には、その戸の有効幅を80cm以上とする。 ◇待合室を設ける場合には、車椅子使用者、ベビーカー使用者等の利用に配慮し、室内の動線の妨げにならない位置に130cm以上×75cm以上のスペースを設けることが望ましい。 水飲み台 ○水飲み台を設ける場合は、旅客の移動を妨げないよう配慮する。 ○車椅子使用者が使いやすいよう、高さは70〜80cmとする。壁付きの場合には、蹴込みの高さは60cm程度、奥行きは35〜40cm程度とする。 授乳室等 ◇授乳室やおむつ替えのできる場所を設け、ベビーベッドや給湯設備等を配置することが望ましい。 174ページ 参考2-3-20:授乳室等の設置例 <東日本旅客鉄道 宇都宮駅(新幹線)の例:ベビー休憩室> <小田急電鉄 新宿駅西口地下の例:授乳室> 提供:東日本旅客鉄道株式会社(上)、小田急電鉄株式会社(下) 175ページ Dその他の設備 考え方 旅客施設においては、急病の際に安静をとるための施設を配置することが望ましい。 公衆電話は、車椅子使用者にとっては金銭投入口やダイヤルの位置が高い場合には利用しにくく、また、視覚障害者や聴覚障害者、高齢者及び外国人にとっては電話機の利用が困難である。電話の設置や通信機器が利用できる環境整備については、通信事業者が行う事項であるが、電話置台、電話機種への配慮が必要となる。聴覚障害者にとっては、緊急時等において、携帯電話のメール機能・インターネット機能を利用した情報の取得や外部との連絡手 段の確保が有効であることに配慮が必要である。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 救護室 ◇急病人やけが人等が休むための救護室を設けることが望ましい。 AED ○誰もが分かりやすく使いやすい位置にAED(自動体外式除細動器)を設置するとともに、使用方法をわかりやすく表示する。 環境 明るさ ○旅客施設内の主要な施設内は、高齢者、障害者等が見やすいよう十分な明るさとする。 電話 ○電話機を設ける場合は、旅客の移動を妨げないよう配慮する。 高さ ○電話機の1台以上について、電話台の高さを70cm程度とし、電話置台の台下の高さを60cm程度以上とする ボタン等の高さ ○ダイヤルやボタンの高さは、90〜100cm程度とする。 蹴込み ○蹴込みの奥行きは45cm以上確保する。 電話機 ◇少なくとも1台は音声増幅装置付電話機を設けることが望ましい。この場合、見やすい位置にその旨を表示する。 ◇外国人の利用の多い旅客施設には、英語表示の可能な電話を設置することが望ましい。 ○補聴器利用者などが電話を利用しやすいよう、公衆電話の周辺では電磁波が発生しないよう配慮する。 FAX・通信環境等 ◇聴覚障害者が外部と連絡をとれるよう、自由に利用できる公衆FAXを設置することや、携帯電話等が利用できる環境とすることが望ましい。 176ページ (コラム17-2)電話リレーサービス 〜手話フォン〜 遠隔の者との意思疎通手段として、電話は国民の日常生活や社会経済活動における基幹的な通信手段であり、警察等の緊急通報を利用できる唯一のサービスとして、重要な役割を担っている。これまで、聴覚障害者や発話障害者等は介助なしに電話を利用することが困難であったが、近年、ブロードバンドサービスやスマートフォン、タブレット端末の普及等が進み、手話通訳者等が聴覚障害者等の手話・文字を通訳し、電話をかけることにより意思疎通を仲介する「電話リレーサービス」が、公共インフラとして提供可能な環境が整ってきている。この電話リレーサービスについては、(公財)日本財団が2013 年よりモデル事業として関係者と連携して提供しており、一部の空港などの公共施設において電話リレーサービス専用設備である「手話フォン」が設置されている。なお、2021 年4 月以降は法律に基づく制度化が予定されている。 <電話リレーサービス概念図> <手話フォン(羽田空港第1、第2、第3旅客ターミナル)> 写真左 ボックス型   写真右 タブレット型 177ページ 第3部 個別の旅客施設に関するガイドライン 1.鉄軌道駅 @鉄軌道駅の改札口 考え方 車椅子使用者が、改札口を通過する場合、既設の幅では利用が困難な場合が多く、荷物等の搬入口など特別なルートしかない駅があるが、一般の旅客と同様に駅係員の対応などの制約がなく単独で改札口を利用できることが望ましい。また、改札機の自動化が進んでいるが高齢者や視覚障害者、妊産婦等にとって利用困難な場合があるため有人改札口を併設することが望ましい。 改札口は、視覚障害者が鉄軌道を利用する際の起終点となる場所であるとともに、駅員とコミュニケーションを図り、人的サポートを求めることのできる場所でもあることに配慮し、その位置を知らせる音響案内を設置する。 移動等円滑化基準 (改札口) 第19条 鉄道駅において移動等円滑化された経路に改札口を設ける場合は、そのうち一以上は、幅が八十センチメートル以上でなければならない。 2 鉄道駅において自動改札機を設ける場合は、当該自動改札機又はその付近に、当該自動改札機への進入の可否を、容易に識別することができる方法で表示しなければならない。 (準用) 第22条 前節の規定は、軌道停留所について準用する。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 拡幅改札口 ◎移動等円滑化された経路に改札口を設ける場合、有効幅80cm以上の拡幅改札口を1か所以上設置する。 ◇車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とすることが望ましい。 ◇入出場双方向から利用する拡幅改札口の場合は、その内外に車椅子使用者同士がすれ違うことができるスペースを設けることが望ましい。 ◇有人改札口ではない自動改札機にある改札口に設けることが望ましい。その際、当該改札口は、車椅子使用者の問い合わせ等がある場合に対応できるよう有人改札から視認できる位置とする。 ◇有人改札口を拡幅改札口とする場合には、さらに自動改札機のある改札口のうち1か所以上を拡幅改札口とすることが望ましい。 有人改札口 視覚障害者の誘導 ○視覚障害者誘導用ブロックは、有人改札口を経由して敷設する。 178ページ 有人改札口 聴覚障害者の案内 ○手話での対応やメモなどの筆談用具を備え、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ○この場合、当該筆談用具を備えている旨を表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通が図れるように配慮する。 ○筆談用具がある旨の表示については、駅係員及び聴覚障害者から見やすく、かつ聴覚障害者から手の届く位置に表示する。 コミュニケーション支援ボード ◇言語(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者等に配慮し、JIS T0103に適合するコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーション支援ボードを備えることが望ましい。 ローカウンターの高さの蹴込み ◇有人改札口のカウンターの一部は、車椅子使用者等との対話に配慮して高さ75cm程度とすることが望ましい。 ◇上記高さのカウンターの蹴込みは、高さ60cm程度以上、奥行き40cm程度以上とすることが望ましい。 戸 ○案内所を兼ねている等、有人改札口に戸が設置されている場合、その戸の有効幅は80p以上とする。 ◇案内所を兼ねている等、有人改札に戸が設置されている場合、有人改札の戸外側、もしくは戸内側に車椅子使用者どうしがすれ違うことができるスペースを設けることが望ましい。 自動改札機 ◎自動改札機を設ける場合は、当該自動改札機又はその周辺において当該自動改札口への進入の可否を容易に識別することができる方法で示す。 ○自動改札口の乗車券等挿入口は、色で縁取るなど識別しやすいものとする。 ◇進入可否表示の配色については、参考2-2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の人の利用に配慮することが望ましい。 音響案内 「A視覚障害者誘導案内用設備 ■音声・音響案内」(118ページ)参照 コミュニケーション ○無人駅・無人改札口においては、視覚障害者、聴覚障害者等からの問い合わせに対応できるよう措置を講ずる。 179ページ 参考3-1-1:改札口の例 (コラム18)視覚障害者誘導用ブロックの有人改札への案内 鉄道駅における有人改札口への視覚障害者の誘導案内は、視覚障害者が鉄道を利用する際の起終点となる場所であるとともに駅員とコミュニケーションを図り、人的サポートを求めることのできる場所であるところから視覚障害 者誘導用ブロックの敷設、音案内が行われている。 参考3-1-2:有人改札へのローカウンター設置事例 180ページ A鉄軌道駅のプラットホーム 考え方 プラットホームにおいては、転落等防止のための措置を重点的に行う必要がある。特に視覚障害者の転落等防止の観点から、ホームドア、可動式ホーム柵、内方線付き点状ブロック等の措置を講ずる。また、車椅子使用者が単独で乗降するためには、プラットホームと列車の段差をできる 限り平らにし、隙間をできる限り小さくする必要がある。 そのため、新設駅や高架化等の大規模改良駅においては、段差・隙間をできる限り小さくするため、その立地条件を十分に勘案し、可能な限りプラットホームを直線に近づける配慮が必要である。 一方、既存の駅において段差・隙間の改良に取り組む際は、プラットホームと車両の接触防止のため、プラットホームの形状、軌道の構造、車両の性能(諸元)、列車の進入速度や通過速度等の運転状況等、駅施設・車両の構造や運行等の条件が駅毎に異なることを考慮する必要がある。その際、施設等の状況に応じて、実際の車両動揺による段差・隙間の変化量を把握する等、十分に列車走行の安全確保を図った上で取り組む必要がある。上記の運行の安全確保を考慮した上で、やむを得ず段差や隙間が生じる場合は、渡り板等により対応する。その場合、迅速かつ確実に対応できるよう体制を整える必要がある。 移動等円滑化基準 (プラットホーム) 第20条 鉄道駅のプラットホームは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 プラットホームの縁端と鉄道車両の旅客用乗降口の床面の縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。この場合において、構造上の理由により当該間隔が大きいときは、旅客に対しこれを警告するための設備を設けること。 二 プラットホームと鉄道車両の旅客用乗降口の床面とは、できる限り平らであること。 三 プラットホームの縁端と鉄道車両の旅客用乗降口の床面との隙間又は段差により車椅子使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車椅子使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備が一以上備えられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 排水のための横断勾配は、一パーセントが標準であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 五 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 六 発着するすべての鉄道車両の旅客用乗降口の位置が一定しており、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができるプラットホーム(鋼索鉄道に係るものを除く。)にあっては、ホームドア又は可動式ホーム柵(旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれがある場合にあっては、内方線付き点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備)が設けられていること。 七 前号に掲げるプラットホーム以外のプラットホームにあっては、ホームドア、可動式ホーム柵、内方線付き点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備が設けられていること。 八 プラットホームの線路側以外の端部には、旅客の転落を防止するための柵が設けられていること。ただし、当該端部に階段が設置されている場合その他旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 九 列車の接近を文字等により警告するための設備及び音声により警告するための設備が設けられていること。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 十 照明設備が設けられていること。 181ページ 2 前項第四号及び第九号の規定は、ホームドア又は可動式ホーム柵が設けられたプラットホームについては適用しない。 (車椅子使用者用乗降口の案内) 第21条 鉄道駅の適切な場所において、第三十二条第一項の規定により列車に設けられる車椅子スペースに通ずる第三十一条第三号の基準に適合した旅客用乗降口が停止するプラットホーム上の位置を表示しなければならない。ただし、当該プラットホーム上の位置が一定していない場合は、この限りでない。 (準用) 第22条 前節の規定は、軌道停留場について準用する。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の表面 ◎滑りにくい仕上げとする。 横断勾配 ◎排水等のため横断勾配を設ける必要がある場合、当該横断勾配は1%を標準とする。 転落防止柵 転落防止柵とは、列車の乗降が行われない箇所において設置される柵のことをいう。 ◎プラットホームの線路側以外の端部には、旅客の転落を防止するための柵が設けられていること。ただし、当該端部に階段が設置されている場合その他旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ○プラットホームの線路側以外の端部には、建築限界に支障しない範囲で高さ110cm以上の転落防止柵を設置する。 ○あわせて、プラットホームの線路側以外の端部を認識できるよう点状ブロックを敷設する。なお、敷設幅は60cm程度(少なくとも40cm以上)とする。 ○プラットホームの線路側端部において、列車が停車することがない等乗降に支障のない箇所には、建築限界に支障しない範囲で高さ110cm以上の柵を設置する。 ○プラットホーム上のエレベーターの出入口付近に傾斜がある場合は、車椅子使用者等の線路への転落防止のため、傾斜に関する注意喚起の掲示とともに旅客の円滑な流動に支障を及ぼさない範囲で柵を設置する。 転落防止措置 ◎発着するすべての鉄軌道車両の旅客用乗降口の位置が一定しており、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができるプラットホーム(鋼索鉄道に係るものを除く。)においては、ホームドア又は可動式ホーム柵(旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれがある場合にあっては、内方線付き点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備)を設ける。 ◎上記以外のプラットホームにおいては、ホームドア、可動式ホーム柵、内方線付き点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備を設ける。 ◎点状ブロック、線状ブロック、内方線付き点状ブロックの規格についてはJIS T9251に適合するものとする。 182ページ 転落防止措置 ホームドア・可動式ホーム柵 ○旅客用乗降口との間の閉じこめやはさみこみ防止措置を図る。 ○ホームドアや可動式ホーム柵の可動部の開閉を音声や音響で知らせる。 ○ホームドアや可動式ホーム柵(横開き式)の開閉が行われる各開口部の全幅にわたって、奥行き60p程度の点状ブロックを敷設する。ドアの戸袋等の各固定部からの離隔を設けないことを基本とし、構造上やむを得ない場合であっても30p以下とする。 ○可動式ホーム柵(昇降式)についてはホーム縁端全面にわたって、内方線付き点状ブロック(JIS T 9251)を敷設する。プラットホームの線路側の縁端からの距離は80cm以上とし、可動式ホーム柵(昇降式)に並行して連続的に敷設する。 ○可動式ホーム柵(昇降式)のブロックの敷設については、プラットホーム上の柱などの構造物と干渉しないよう配慮して敷設する。やむを得ず、内方線付き点状ブロックがホーム縁端付近の柱などの構造物と干渉する場合であっても、構造物を迂回して敷設するのではなく、連続して敷設し、干渉部分を切り取ることとし、内方線付き点状ブロックを構造物との間に隙間を設けずに敷設する。 ○可動式ホーム柵(昇降式)の島式ホームにおけるブロックの敷設については、向い合う内方線付き点状ブロックの内方線の中心と中心との距離を60cm以上確保することを原則とする。ただし、プラットホームの幅員が確保できず、やむを得ない場合は、40cm以上確保する。なお、40cm以上確保できない場合は、点状ブロックのみとし、内方線は敷設しない。 ○可動式ホーム柵(昇降式)においては、原則、通常の動作において開口部に車両が停車しない空間を設けることはないようにする。やむを得ず、そのような状態が発生する場合においては音声等による注意喚起を行う。 183ページ 転落防止措置 ホームドア・可動式ホーム柵 ○ホームドア及び可動式ホーム柵は、乗降部への徒列ライン敷設、案内板の設置、または、固定部と可動部の色を変えるなど、ロービジョン者等が乗降位置を容易に視認できるよう色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)に配慮する。 ○可動式ホーム柵は、柵から身を乗り出した場合及びスキー板、釣り竿等長いものを立てかけた場合の接触防止の観点から、柵の固定部のホーム内側の端部から車両限界までの離隔は40cm程度を基本とする。 固定式ホーム柵 ○固定式ホーム柵から身を乗り出した場合及びスキー板、釣り竿等長いものを立てかけた場合の接触防止の観点から、ホーム内側の端部から車両限界までの離隔は40cm程度を基本とする。なお、固定式ホーム柵とは、列車の乗降が行われる各ドア位置に合わせて開口部を設けた柵のことをいう。 ○あわせて、各開口部の全幅にわたって、奥行き60cm程度の点状ブロックに内方線が付いた形状となるよう内方線付き点状ブロックを敷設する。各固定部からの離隔は設けないことを基本とし、構造上やむを得ない場合であっても30p以下とする。 視覚障害者誘導用ブロック プラットホーム上の点状ブロック ○階段等から連続して敷設された線状ブロックとホーム縁端部の点状ブロックとが交わる箇所(T字部)については、ホーム縁端部の点状ブロックの内側に点状ブロックを敷設する。 内方線付き点状ブロックの使用場所 ○内方線付き点状ブロックは、プラットホームの線路側の縁端部を警告するために敷設するものであり、プラットホーム上における、これ以外の場所には敷設しない。 ○プラットホームの線路側の縁端からの離隔は80〜100cm程度とし、線路に並行して連続的に敷設する。 ◎プラットホームの内側であることを認識できるよう、点状ブロックの内側に内方線が位置するものとし、JIS T9251に適合するものとする。 ◎発着するすべての鉄軌道車両の旅客用乗降口の位置が一定しておらず、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができないため、ホームドア又は可動式ホーム柵等が設置できないプラットホームにおいて敷設する。 184ページ 視覚障害者誘導用ブロック 内方線付き点状ブロックの使用場所 ○プラットホーム上の柱などの構造物と干渉しないよう配慮して敷設する。やむを得ずホーム内方線付き点状ブロックがホーム縁端付近の柱などの構造物と干渉する場合であっても、構造物を迂回して敷設するのではなく、連続して敷設し、干渉部分を切り取ることとする。ただし、内方線付き点状ブロックと構造物との間に隙間を設けずに敷設する。 ◇内方線付き点状ブロックを連続して敷設することにより、視覚障害者がプラットホーム上の柱など構造物と衝突した際の安全性を考慮し、柱にクッションを巻くことが望ましい。 ○島式ホームにおいては、向かい合う内方線付き点状ブロックの内方線の中心と中心との距離を60cm以上確保することを原則とする。ただし、プラットホームの幅員が確保できず、やむを得ない場合は、40cm以上確保する。なお、40cm以上確保出来ない場合は点状ブロックのみとし、内方線は敷設しない。 転落時の安全確保措置 ○万が一プラットホームから旅客が転落した場合を想定し、以下の安全確保措置を講じる。 ・列車を停止させるための非常押しボタン又は転落検知マットを設置する。この場合、当該押しボタンは操作しやすい位置に設置するとともに、その位置、機能について、旅客へ周知する。 ・プラットホーム下には、列車を避けるための待避スペースまたはプラットホームに上がるためのステップを設置する。 乗降位置表示 ◎プラットホーム床面等において、車椅子スペースに近接する乗降口位置を表示する。ただし、当該プラットホーム上の位置が一定してしない場合は、この限りでない。 ◇列車編成数及び停止位置が一定している場合には、プラットホームの床面において号車番号を表示することが望ましい。 ○ホームドアや可動式ホーム柵、固定式ホーム柵を設置する場合には、号車及び乗降口位置(扉番号)を文字及び点字(触知による案内を含む。)により開口部左脇に表示する。 ○なお、表示する位置については、ホームドアは、可動部のドア側面または固定部の側面(140cm〜160cm程度の高さ)、可動式ホーム柵は、上面または側面(120〜130cm程度の高さ)、固定式ホーム柵は、固定部の上面(120〜130cm程度の高さ)とする。 ◇点字(触知による案内を含む。)による乗降位置情報は、開口部の左右両側に表示することが望ましい。 ◇乗降位置表示は、視覚障害者の円滑かつ安全な移動を支障しないよう内方線付き点状ブロックからの位置も考慮して表示することが望ましい。 ○車椅子使用者が単独で乗降しやすい乗降口がある場合、車椅子 185ページ 使用者本人が当該乗降口において単独で乗降できるか判断できるよう、当該乗降口に関する案内を行う。例えば、 ・プラットホーム床面等に当該乗降口位置等を表示する。 ・プラットホームのエレベーター等の車椅子使用者が通行する 箇所に単独乗降しやすい乗降口に関する情報を表示する。 ・改札口等に、路線の駅毎における単独乗降しやすい乗降口に関する情報及び駅係員への乗降補助を要請する方法を表示する。 ・Web サイトやアプリ等により、駅毎における単独乗降しやすい乗降口に関する情報を表示する。この表示は媒体や提供元等の違いによらず、共通の様式とし、さらに乗車駅と降車駅を容易に比較できるよう考慮することが望ましい。 連絡装置 ◇駅係員と連絡ができるよう、プラットホーム上のわかりやすい位置(案内サインの掲出位置等)にインターホンを設置することが望ましい。この場合、その設置位置の上部などにおいてわかりやすい案内表示を行う。 車両とプラットホームの段差及び隙間の縮小 ◎鉄軌道車両とプラットホームの段差又は隙間について、段差はできる限り平らに、隙間はできる限り小さいものとする。 ◎車椅子使用者の円滑な乗降のため十分な長さ、幅及び強度を有する渡り板等の設備を設ける。 ○段差縮小のためプラットホームの嵩上げを行う場合は、プラットホーム全体、あるいは一定の区域において行うことを基本とする。また、縁端部の部分的な嵩上げ(スロープ化)は、視覚障害者や片麻痺などの歩行困難な方の移動に影響を及ぼす可能性やホーム転落の危険性等も踏まえ、ホームドアの整備箇所において実施することを基本とする。また、ホームドアを設置する際は、列車の安全確保を前提にプラットホームの形状や軌道の構造等を踏まえ、可能な限り段差・隙間の縮小に取り組む。 ○コンクリート軌道である路線の場合、プラットホームの直線部において、くし状ゴムの設置、プラットホームの改修その他の措置を必要に応じ講ずることにより、1以上(複数であることが望ましい)の乗降口において、渡り板等の設備を使用しなくても車椅子使用者が単独で乗降しやすいように段差・隙間を縮小する。なお、相互乗り入れ等で車両床面高さが異なる場合には将来的な統一を目指すべきであるが、当面は多くの車両に対して車椅子使用者の単独乗降が実現するように可能な限り段差・隙間を縮小する。(※) ◇コンクリート軌道である路線の場合、プラットホームの曲線部においても、その形状を踏まえ、プラットホームの改修その他の措置を必要に応じ講ずることにより、1以上(複数であることが望ましい)の乗降口において、渡り板等の設備を使用しなくても車椅子使用者が単独で乗降しやすいように段差・隙間を縮小することが望ましい。(※) ◇バラスト軌道の場合であっても、列車の安全が確保でき、構造 (※)「設備を使用しなくても車椅子使用者が単独で乗降しやすいように段差・隙間を縮小する」整備の目安について車両とプラットホームの間の段差・隙間に関しては、平成30 年度に、車椅子使用者の単独乗降と列車走行の安全確保を両立するプラットホームと車両乗降口の段差・隙間について検討が行われた。(コラム21 参照) 検討結果では、車両とホームの接触防止といった安全運行の確保や軌道・車両の維持管理等の制約を考慮し、段差・隙間の縮小に向けた当面の目安値の組み合わせは段差3cm・隙間7cm とし、プラットホームの形状や軌道の構造等に応じて整理している。そのうえで、車椅子使用者による段差・隙間の実証試験において、全ての被験者(23 名)が乗降可能であった組み合わせが段差2cm・隙間5cm 以下であり、また、路線によっては目安値以下の段差・隙間を達成できている事例もあることを踏まえ、安全の確保を前提として、より多くの車椅子使用者が乗降できるよう、段差はできる限り平らに、隙間はできる限り小さくなるよう考慮することが望ましいとしている。車椅子使用者が単独で乗降しやすい乗降口を整備する際には、上記の検討を参考とされたい。 ◇車椅子使用者が単独で乗降しやすい乗降口位置は、エレベーターの設置位置等を踏まえながら、同一路線内ではどの駅においても同じ車両扉となるよう整備することが望ましい。また、その乗降口を必要とする乗客が集中するのを防ぐために、車椅子使用者が単独で乗降しやすい乗降口は、プラットホーム上に分散して複数設置されることが望ましい。 ○渡り板は、速やかに使用できる場所に配備する。 ○渡り板は、幅80cm 以上、使用時の傾斜は10 度以下として十分な長さを有するもの、耐荷重300kg 程度のものとする。ただし、構造上の理由により傾斜角10 度以下の実現が困難な場合には、車椅子の登坂性能等を考慮し、可能な限り傾斜角10 度に近づけ るものとする。○渡り板のホーム側接地面には滑り止めを施し、かつ、渡り板の 車両側端部にひっかかりを設けること等により、使用時にずれることのないよう配慮する。 ○なお、渡り板の使用においては、ホームの形状に配慮し、降りたホームの反対側の線路に転落する等の事故がないよう、渡り板の長さとホームの幅に十分注意する。 187ページ ○渡り板を常備しない場合、駅係員等が速やかに操作できる構造の段差・隙間解消装置を設置する。 ◇鉄軌道車両・ホーム等の構造上の理由により渡り板が長く、また、傾斜角が急(概ね10 度を超える)となる場合には、脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設けることが望ましい。 隙間の警告 ◎構造上の理由により鉄軌道車両の旅客用乗降口の床面の縁端とプラットホームの縁端との隙間が大きいときは、旅客に対しこれを警告するための設備を設けること。 列車接近の警告・案内 ◎音声による案内で、列車の接近を警告する。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ○音声や音響による案内で、列車の接近のほか、その列車の停止・通過、乗車可否(回送の場合は回送である旨)、列車種別、車両編成数、行き先、次停車駅名を知らせる。 ◎文字や光による情報で、列車の接近を警告する。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ○文字や光による情報で、列車の接近のほか、その列車の停止・通過、乗車可否(回送の場合は回送である旨)、列車種別、行き先、次停車駅名を知らせる。 プラットホーム上のベンチ等 ○高齢者、障害者等の長距離移動、長時間立位が困難であること、知的障害者、精神障害者及び発達障害者等の知覚面又は心理面の働きが原因で発現する疲れやすさや服薬の影響等による疲れやすさ等に配慮し、旅客の乗降・移動を妨げないよう配慮しつつプラットホーム上にベンチ等を設ける。 待合室 ◇プラットホーム上に待合室を設ける場合には、車椅子使用者、ベビーカー使用者等の利用に配慮し、130cm以上×75cm以上のスペースを設けることが望ましい。 プラットホーム上の設置物 ○壁面や柱などに取り付ける看板などは通行の支障にならないように設置する。 ◇売店、ベンチ、ゴミ箱等を設置する場合は、車椅子使用者や視覚障害者、一般利用者等の通行の支障にならないようにすることが望ましい。 ◇ロービジョン者が各設置物を視認できるよう、プラットホームの床面と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)に配慮した色とすることが望ましい。 プラットホーム上の柱の識別 ○ロービジョン者が柱を認識できるよう、柱の色あるいは柱の下端部の色はプラットホーム床面と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保する。 照明設備 ◎プラットホームには照明設備を設ける。 ○プラットホームの両端部まで、高齢者やロービジョン者等の円滑な乗降のため、採光や照度に配慮して照明設備を設置する。 188ページ 駅名標示 ○到着する駅名を車内で標示する場合を除き、車内から視認できる高さに駅名標を表示する。 ○到着する駅名を車内で標示する場合を除き、車内のどの位置からも視認できるよう駅名標の配置間隔に配慮する。 停車駅案内 ◇コンコースからプラットホームに至る箇所等に、方面ごとに列車の種別、行き先、発車時刻等がわかるよう案内表示をすることが望ましい。 ◇列車の種別ごとの停車駅がわかるよう案内表示をすることが望ましい。 ◇列車到着時に降車した駅が旅客にわかるよう、駅名の音声案内を行うことが望ましい。 階段の音響案内 「A視覚障害者誘導案内用設備 ■音声・音響案内」(118ページ)参照 音声・音響計画 ◇指向性スピーカー等の活用により、音声・音響案内、案内放送の輻輳を避けた音声・音響計画を実施することが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 参考3-1-3:プラットホームの例 <可動式ホーム柵・ホームドア(以下、この項において「可動式ホーム柵等」という)がない場合の敷設例> 出典:国土交通省「視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書」平成22年(2010年)を基に加筆 189ページ <ホームドア・可動式ホーム柵の場合の開口部の敷設例> (国土交通省調査結果) ・可動式ホーム柵等がある場合の開口部点状ブロックについては被験者全員が必要であるとの回答を得た。また安全面と開口部の検出容易性のいずれの観点においても開口部点状ブロックの奥行きは 60cm が好ましいとの回答を得た。 ・長軸方向線状ブロックについては約 60%の被験者が必要であると回答を得た。また、長軸方向線状ブロックを敷設する場合の可動式ホーム柵等からの離隔は 60cm が好ましいとの回答を得た。 ・開口部点状ブロックと長軸方向線状ブロックの接合部はすべて点状ブロックを敷設するパターンが好ましいとの回答を得た。 出典:国土交通省「視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書」平成22年(2010年)を基に加筆 出典:国土交通省「視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書」平成22年(2010年)を基に加筆 190ページ <固定式ホーム柵の場合の開口部の敷設例> 出典:国土交通省「視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書」平成22年(2010年)を基に加筆 <可動式ホーム柵(横開き式)の敷設例> ・ホーム縁端全面に内方線付点状ブロックを連続して1 枚敷くこととした上で、開口部に点状ブロック をホームドアと内方線付き点状ブロックの間に1列追加する敷設も有効と考えられる。 出典:国土交通省「プラットホームにおける視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書」平成30年(2018年)を基に作成 191ページ <可動式ホーム柵(昇降式)の敷設例> ・ホーム縁端全面に内方線付点状ブロックを連続して1 枚敷くこと。 出典:国土交通省「プラットホームにおける視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書」平成30年(2018年)を基に作成 <固定部、開口部位置が不定の場合の敷設例> ・本検討で固定部と表現している部分自体が可動するホームドアの場合、ブロックの敷設でホームドアの固定部、開口部を区別することは困難である。このような場合においても、ブロックの敷設はホーム縁端全面に内方線付点状ブロックを連続して1枚敷くことを基本とする。 出典:国土交通省「プラットホームにおける視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書」平成30年(2018年)を基に作成 192ページ 参考3-1-4-1:ホーム始終端部における敷設方法の例 参考3-1-4-2:T字部における敷設 参考3-1-4-3:構造物と干渉する場合の敷設 ※「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン 追補版」(平成14年12月)の策定にあたり実施した「コの字迂回敷設部分と連続敷設部分の歩行実験」の結果、被験者の90%から連続敷設を支持する回答を得たことから、上図の連続敷設方式を採用し、また構造物と衝突した際の安全性を考慮し、柱などの構造物にはクッションなどを設けることが望ましいとしている。このような敷設方法とした理由として、「@迂回すると方向や位置がわからなくなる。」、「A構造物の線路側のブロックが無くなるのは困る。」、「B連続敷設が簡潔で分かりやすい。連続敷設は構造物に触れることができる。触れることで安全を確認する。」、「Cホーム縁端からの距離が一定である。」等の意見があった。 193ページ 参考3-1-4-4:ホーム終端部におけるブロックの敷設と柵の設置の例 <ホーム終端の列車が停止しない部分の柵とブロックの例> <ホーム終端にエレベーターやトイレ等がある場合の柵とブロックの例> <島式ホーム終端で列車が停止しない部分が左右非対称である場合の柵とブロックの例> 194ページ 参考3-1-5:ホームドア・可動式ホーム柵の例 参考3-1-6:可動式ホーム柵(昇降式)の例 参考3-1-7:転落防止に配慮したベンチの例 提供:西日本旅客鉄道株式会社     191ページ (コラム19)ホームからの転落防止策 鉄軌道駅のプラットホームにおける視覚障害者の転落防止については、ホームドア・可動式ホーム柵・内方線付き点状ブロック等の整備といったハード面の対策に加えて、駅員等による誘導案内の充実や旅客による声かけの促進などソフト面の対策も合わせて取り組むことが効果的である。 (参考:「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」中間とりまとめ(平成28年12月)) 参考3-1-8:床面表示の例 ■乗降位置表示の例 ■通行帯を確保するためのホーム床面サインの例 ホームの中央部など安全な場所に通行スペースを設けて誘導をすることにより、ホーム上の流動や徒列を整理することなどの効果が期待される。 <西日本旅客鉄道の例> 提供:西日本旅客鉄道株式会社 <近畿日本鉄道の例> 提供:近畿日本鉄道株式会社 196ページ (コラム20) 〜オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした車椅子使用者へのバリアフリー情報提供〜 オリンピック・パラリンピック競技大会では、世界各国から多くの外国人、パラリンピック選手団やその関係者、観客が来日するとともに、都市内での移動が発生する。公共交通機関の発達した都市では鉄道、バスを主体とした移動が想定され、それらのアクセシビリティ確保は大会成功の大きなカギとなる。そのため、鉄道駅においては、駅構内の段差の解消等のハードウェア整備に加え、情報提供等のソフト面の充実が必要である。 2012 年にオリンピック・パラリンピック競技大会が開催されたロンドンの地下鉄では、ハード面のバリアフリー整備として、プラットホームの部分嵩上げや低床車両の導入を実施することにより、一部の駅では車椅子使用者が単独乗降可能な段差・隙間まで縮小しており、また、単独乗降可能な駅を情報提供する方法として、 @駅毎の段差解消の程度が把握できるマップを数種類作成し、Webサイト等で公表 A駅において、路線内の単独乗降可能な駅一覧を掲示 B車椅子使用者が通行可能な乗り継ぎルートを通路等に掲示 Cプラットホームにおいて床や壁、吊り式の案内サインを設置し、単独乗降可能位置を掲示 を実施している。 また、国土交通省においては、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、同様に都心部の鉄道駅における段差・隙間に関するバリアフリー状況をマップ化すべく取り組んでいるところである。 事例@:ロンドンの地下鉄における段差・隙間の情報提供用ステップフリーマップ ロンドンでは、段差・隙間の情報提供として、複数のステップフリーマップを作成し、Web上で公表している。 (例1):駅の段差解消の状態について、3 種類に区分しているマップ 当該マップでは駅のバリアフリー状況として、 ・駅の出入口から車両まで段差解消された駅(青地に白線の障害者マーク) ・駅の出入口からプラットホームまで段差解消された駅(白地に青線の障害者マーク) ・段差解消されていない駅(障害者マークなし) の3 つに分類し記載している。 197ページ (例2):段差・隙間の程度について、色及び文字により9 段階で表示しているマップ 当該マップでは、段差を色(緑、黄、赤)で、また、隙間を文字(A、B、C)で表現している。 表記例: A⇒段差0〜50mm、隙間0〜85mm の駅 B⇒段差120mm 超、隙間86〜180mm の駅 他、利用者が自身で判断できるよう、それぞれの駅の主要ルートにおける段差や隙間を数値で表示しているマップがある。 (参考:ロンドン地下鉄ステップフリーマップURL:https://tfl.gov.uk/maps/track/tube) 事例A:ロンドンにおける路線内の単独乗降可能な駅一覧の掲示 ・路線内の駅における車椅子使用者の対応ついて、一覧を駅に掲示している。 (意訳) Train to platform access at step-free Piccadilly line stations (Piccadilly Line における、プラットホームと車両の間 が段差解消されている駅について) Station(駅名) Access from train when arriving (車両到着時の乗降について) Acton Town Step/gap between train and platform (段差・隙間があります) Caledonian Road ○! Manual boarding ramp ? please contactstaff before boarding train(see below) (渡し板を設置します。乗車前にスタッフにご連絡ください) Earl’sCourt Level access via platform hump (一部嵩上げした箇所で解消しています) To request a manual boarding ramp at the station where you intend to get off please press the Assistance button on any Help point and talk a member staff before board you the train (駅で降車するために渡し板の設置を希望される場合は、乗車前に駅のHelp point にあるAssistance button を押すか、近くの係員スタッフにお伝えください。) 198ページ 事例B:ロンドンにおける通路等に車椅子使用者が利用可能なルートを掲示 【参考】左写真及び上写真(拡大)の表記 「Lift to exit and Jubilee line」 (意訳)出口及びJubilee line 行きリフト(エレベーター) 事例C:床や壁、吊り式の案内サインにより、単独乗降可能な位置を掲示 ■ホーム上の吊り式の案内サイン 左写真及び上写真(拡大) 段差・隙間を解消するためにホームを一部嵩上げした箇所に 吊り式の案内サインを掲示ピクトグラム(標識)には、左より「ベビーカーマーク」、 「障害者マーク」、「矢印」、「車両」を並べ、乗降可能位置であること表現している。 ■ホーム床上の案内サイン 【参考】左上写真の床サインの表記 「Board train here for level access at Wembley Park」 (意訳)Wembley Park 駅で単独降車する ための乗降口位置 ■ホーム壁に表示されている案内サイン 【参考】右上写真の壁サインの表記 「Level access boarding point here」 (意訳)ここは単独乗車可能な位置です。 199ページ 参考3-1-9:駅員連絡装置の例 提供:東京地下鉄株式会社 参考3-1-10-1:ホームと車両の段差・すき間を低減した例 ■ホームと車両の段差0.5p・隙間5pを実現した例 ・ホームと車両のすき間をできる限り小さくするため,車両限界からの離れを5.2p±0.2pという精度で先端タイルが設置された。これは全ての駅のホームを直線で構成することにより可能となった。また,荷重条件による車両床高さの変動が少ない鉄輪式リニアモータシステムの台車の特徴を活かし,ホーム床と車両床のレベル差を±0.5pに調整することでほぼ完全なフラット化が図られた。 提供:福岡市交通局 ■スロープと櫛状ゴム(もしくは樹脂製)の設置によりホームと車両との段差・すき間を低減した事例 段差・隙間縮小対策として、ホーム端部をスロープ状にかさ上げし、ホーム縁端に櫛状のゴムを設置。段差:0〜2p、隙間:約3pに縮小。 提供:大阪市高速電気軌道株式会社 千日前線 200ページ 隙間の縮小対策としてホーム縁端に櫛状のゴムを設置。 段差:0〜1.5pmm、隙間:約2pに縮小。      提供:大阪市高速電気軌道株式会社 長堀鶴見緑地線 隙間の縮小対策としてホーム縁端に櫛状のゴムを設置。段差:ほぼ平ら、隙間:2.8p。 提供:仙台市交通局 東西線 段差の縮小対策としてホーム全体にわたる嵩上げ。 提供:東京地下鉄株式会社 丸ノ内線 201ページ ■プラットホームの縁端部を嵩上げした例 ・プラットホーム縁端部を嵩上げすることにより、ホームと車両床面の段差を縮小する。 なお、縁端部の一部を嵩上げする場合は視覚障害者や片麻痺などの歩行困難な障害者の移動に影響を及ぼす可能性やホーム転落の危険性等を踏まえ、ホームドアの整備箇所において実施することを基本とする。 (東京都交通局三田線) ■可動式ステップを設置した例 ・隙間が大きい箇所のプラットホーム側に可動ステップを設置することにより、ホームと車両の隙間を縮小する。(車椅子利用者の乗降(荷重)に耐えられるかどうか、あらかじめ検証が必要である。 参考3-1-10-2:渡り板の例 202ページ (コラム21)車椅子使用者が単独乗降しやすい段差・隙間について 〜「鉄道駅におけるプラットホームと車両乗降口の段差・隙間に関する検討会」〜 1.背景 駅のプラットホームと車両乗降口には旅客の円滑な乗降と列車の安全な走行に支障しないような一定の段差・隙間が設けられており、車椅子使用者等が乗降する際には渡り板が必要となり、駅員等の介助なしに単独で乗降することができない場合がある。 一方で、2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、多くの車椅子使用者等の円滑な移動を可能とするため、介助なしでも単独で列車を乗降可能なプラットホームとすることが望まれている。このため、学識経験者、障害者団体、鉄道事業者等からなる検討会を立ち上げ、実証試験等を通じて検討を行った。 2.実証試験と段差・隙間の現状調査の実施 模擬駅ホームに留置された列車の扉前に模擬的な段差・隙間を設定し、車椅子使用者(23 名)に協力いただき、様々な車椅子による列車の単独乗降の可能な段差・隙間の数値の組み合わせを調査した。この結果、全ての被験者が乗車可能なケースは段差2cm、隙間5cm であり、車椅子の乗降のしやすさは、隙間の大きさに比べ段差の大きさが支配的であった。 一方で、東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会において、競技会場へのアクセシブルルート上にある駅及びその乗り換え等に利用される首都圏の主要駅(316 駅、番線数868)について、プラットホームと車両乗降口の段差・隙間に関する現状について調査した結果、コンクリート軌道・直線部においては、バラスト軌道・曲線部に比べて段差・隙間が小さいことを確認した。また、車両の床面高さの調査の結果、車両の空満差や車輪の摩耗等による変位量のバラツキは最大約5cm であった。 3.段差・隙間の目安と整備の進め方に関する検討 (1)段差・隙間の目安 1)基本的な考え方 段差・隙間の調査の結果、実際の駅・車両においては、プラットホームの形状、軌道の構造、 車両の構造条件等の違いにより、段差・隙間の実態は様々であり、特に曲線プラットホームやバラスト軌道の駅では段差・隙間が生じやすい一方で、コンクリート軌道・直線プラットホームの駅では、ホーム縁端部の嵩上げやくし状ゴムの設置等の対策等を講じることで、車椅子使用者が単独乗降が可能となる可能性が高いと考えられる。また、今回の実証試験においては、全ての被験者が乗降可能な組み合わせは段差2cm・隙間5cmであり、理想的なケースと言えるが、一方で現実のプラットホームにおける状況は、車両乗降口の逆段差への配慮など旅客の円滑な移動の観点や、車両とプラットホームとの接触防止など列車 の安全な走行の観点などから、様々な制約がある。このため、特に設計条件の整っている新線建設や高架化等の大規模改良の際など条件のよい場合においては、安全の確保を前提に段差2cm・隙間5cm、更にはそれ以上の段差・隙間の縮小について設計段階から入念な検討を行う。一方で既設線においては、プラットホームの形状や軌道の構造等に応じて、本検討の結果を踏 【実証試験の様子】 203ページ まえた以下に示す目安等により整備を進めることを基本とする。 2)段差の目安値 段差については、車両の床面高さの調査結果から空満差や車輪摩耗による最大変動量は5cm であり、一方で乗客の安全な降車のため逆段差は2cm までに留める必要がある。以上から、現実的な段差は3cm が目安値と考えられる。なお、空満差の少ない路線、車輪摩耗の少ない鉄輪式リニアモーター駆動方式の鉄道のうち曲線が少ない路線の目安はより小さくすることが可能である。ただし、バラスト軌道では、バラストの粉砕による沈下等により、この目安がより大きくなることはやむを得ない。 3)隙間の目安値 隙間については、プラットホームと車両乗降口の段差・隙間の調査結果から、列車通過時や 停車時における左右の動揺による列車とプラットホームとの接触を防止するため、直線プラットホームにおける隙間は概ね10cm 以下であった。単独乗降しやすいプラットホームと車両乗降 口の段差・隙間に関する実証試験では、段差3cm・隙間7cm の組み合せであれば約9 割の被験者が乗降可能であった。 また、接触しても車両への影響を少なくする、くし状ゴムの設置による縮小幅は3cm 程度であることから、くし状ゴムの設置により、隙間を7cm 程度とすることが可能と考えられる。以上から、直線プラットホームの隙間は7cm が目安値と考えられる。 ただし、バラスト軌道では、列車の左右の動揺に伴う軌道変位により、この目安がより大き くなることはやむを得ない。加えて、曲線プラットホームでは、列車とプラットホームの接触防止のために、隙間をより大きく設定する必要がある。 【段差・隙間と乗降可能割合の関係(実証試験)】 【隙間の大きさと番線数の関係(直線部)】 4)段差・隙間の縮小に向けた当面の目安値 既設線においては、上記2)及び3)の方針のもと、プラットホームの形状や軌道の構造等 に応じて、以下に示す目安等により整備を進めることを基本とする。なお、実証試験の結果か ら、段差3cm・隙間7cm の組み合わせであれば約9 割の被験者が乗降可能であった。 @コンクリート軌道・直線プラットホーム(既設線)における考え方 既設線を改良する場合、くし状ゴムの活用などにより、段差3cm・隙間7cm の組合せを整 204ページ 備実現に向けた当面の目安値とすることとし、そのうえで、安全の確保を前提として、より 多くの車椅子使用者が乗降できるよう、段差はできる限り平らに、隙間はできる限り小さく なるよう考慮することが望ましい。 段差・隙間の縮小に向けた当面の目安値: 段差3cm × 隙間7cm ※安全の確保を前提として、より多くの車椅子使用者が乗降できるよう、段差はできる限 り平らに、隙間はできる限り小さくなるよう考慮することが望ましい(23 名の被験者に より行った今回の実証試験では、全ての被験者が乗降可能であった組合せは、段差2cm・ 隙間5cm であった)。 ※上記の値は設計上の目安値であり、管理値ではない。 ※段差については、通常の乗車時(乗車率100%〜150%程度)における値を示しており、空 車時等は大きくなる場合がある。 ※隙間については、直線部であっても、レール頭頂面と車輪フランジとの遊間等により変 動する。 ※車両の乗車率、乗客の偏りによる車両動揺、レールや車輪の摩耗、軌道変位、レールと 車輪のフランジの遊間など、様々な要因が複合的に作用するため、段差・隙間は必ずし も常に一定の状態にならず、ある程度の幅を有することに注意が必要である。 ※なお、この値は今回の実証試験の結果を参考として検討したものであり、全ての車椅子 使用者に対して100%当てはまるとは限らないことに留意する必要がある。 Aコンクリート軌道・曲線プラットホーム(既設線)における考え方 コンクリート軌道・曲線プラットホームにおける段差については、軌道変位が進みにくい (変動しにくい)一方で、隙間については、曲線であるが故に車両とプラットホームとの接 触を防止するための余裕が必要であり、直線部に比べて隙間を狭めることが難しい。 また、実証試験の結果より、車椅子の乗降しやすさは、隙間の大きさに比べ、段差の大き さが支配的であったことを踏まえ、まずは段差を優先し、できる限り3cm を目安として整備 するとともに、隙間についても、できる限り小さくなるよう考慮することが望ましい。 Bバラスト軌道(既設線)における考え方 バラスト軌道は列車荷重によるバラストの粉砕による沈下等により、軌道変位が進みやす い(変動しやすい)ため、段差・隙間の管理が難しいことから、一定の目安値は定められな いが、以下の点を考慮することが望ましい。 ・直線プラットホームにおいては、段差は目安値を参考にできる限り平らに、隙間は目安値 を参考にできる限り小さくなるよう考慮することが望ましい。 ・曲線プラットホームにおいては、段差は目安値を参考にできる限り平らになるよう考慮す ることが望ましい。 (2)整備の進め方 @ 上記(1)で整理した既設のプラットホームの状況に応じた段差・隙間の目安等に基づき整備を進める。ただし、上記のプラットホーム等の条件にかかわらず、東京2020 年オリンピック・パラリンピック競技大会において競技会場へのアクセシブルルート上にある駅やその乗り換え等に利用される山手線内の各駅など首都圏の主要駅については、同競技大会に向け 205ページ て対応可能な駅やプラットホームを選定し、優先的な整備を進める。 A 段差縮小のためプラットホームの嵩上げを行う場合は、プラットホーム全体、あるいは一定の区域において行うことを基本とする。また、縁端部の部分的な嵩上げ(スロープ化)は、視覚障害者の方や片麻痺などの歩行困難な方の移動に影響を及ぼす可能性やホーム転落の危 険性等も踏まえ、ホームドアの整備箇所において実施することを基本とする。また、ホーム ドアを設置する際は、上記(1)で整理した考え方を踏まえ可能な限り段差・隙間の縮小に 取り組む。 B 段差・隙間の双方の目安を同時に満たすことが難しい場合は、まずは乗降のしやすさに大 きな影響を与える段差の縮小に取り組み、次に、順次隙間の縮小に取り組むといった段階的 な対応も有効である。 C 駅の構造等を勘案して、プラットホームの全体にわたり段差・隙間の縮小が困難な場合に は、ホームドアを整備したプラットホームの一部(その乗降口を必要とする乗客が集中する のを防ぐために、プラットホーム上に分散して複数設置されることが望ましい。)の乗降口で 段差・隙間の縮小に取り組むことも重要である。 D 更に、異なる規格の型式の車両が混在する路線の場合は、2cm を超える逆段差が生じないことを念頭に置きつつ、計画的に車両床面高さが統一されるよう車両更新(新造車)に取り組むことも重要である。 (3)段差・隙間の改良に際しての留意点 段差・隙間の改良に取り組む際は、プラットホームと車両の接触防止のため、プラットホー ムの形状、軌道の構造、車両の性能(諸元)、列車の進入速度や通過速度等の運転状況等、駅施設・車両の構造や運行等の条件が駅毎に異なることを考慮する必要がある。その際、施設等の状況に応じて、実際の車両動揺による段差・隙間の変化量を把握する等、十分に列車走行の安全確保を図った上で取り組む必要がある。 加えて、バラスト軌道は列車荷重によるバラストの粉砕による沈下等により軌道変位が進みやすく(変動しやすく)、段差・隙間の管理が難しいことから、バラスト軌道における段差・隙間の縮小に向けた技術的検討や、より大きな隙間に対応可能なくし状ゴムの開発等を、引き続き進める必要がある。 また、どうしても単独乗降が困難な場合においては、駅員等の介助による、ソフト面の対策 を行うことが望ましい。なお、単独乗降しやすい駅のマップ化やアプリなどの鉄道事業者等の取組とあわせて、一緒に乗降する一般の鉄道利用者が積極的に手助けをすることで、車椅子使用者の円滑な移動を確保す ることも望まれる。 206ページ 参考3-1-10-3:回転灯等を設置して転落の危険に対し注意喚起している事例 参考3-1-11:ホーム床面と柱の識別しやすい事例 ・ホーム床面と柱の下端部分の色を変えることで柱の存在が目立つ。(左写真) ・柱全体を床面と異なる色とすることで柱の存在が目立つ。(右写真) 207ページ 参考3-1-12:駅名標の掲出高さの考え方 ・車内から車外への視界は、窓によって確保されている。したがって、車外の見やすい範囲は、車内にいる利用者の視点と窓の上端を結ぶ線より下で、座席に座る人に遮られない窓の半分程度より上の範囲になる。また、利用者の視野は、高齢者等にとって体をねじって後方を見る姿勢はとりづらいので、振り向かないでも見られる前方にあるものとして考えることが望ましい。 ・図に示す通り幅員6mと8mの島式ホームを想定すると、ホーム中心に掲出する駅名標の通勤車両から見やすい掲出高さは、床面から器具の上端までそれぞれ約2.15m、2.3mになる。また、車両から約1.5m離れた独立柱上では、床面から器具の上端まで約1.9mになる。 ・同図の対向壁側の駅名標では、器具の上端が車両客室窓の上端程度の位置が見やすい高さになる。 ・このことから、駅名標の掲出高さは車両内から見やすい高さにし、ホーム上においては利用者の円滑な移動を妨げないよう配慮しつつ、時刻表等と組み合わせた自立型や柱付型などを工夫する。 ・なお吊り下げ式の場合、旅客流動を考慮して、旅客等の頭上に十分な空間を確保する必要があることにも配慮する。 208ページ 参考3-1-13:車両窓ごとに駅名標を配置した例 ・福岡市営地下鉄七隈線では、対向壁ならびに可動式ホーム柵の内壁において、車両窓に対応して駅名標が配置されている。車両窓と駅名標の位置をあわせ、車内から駅名が確認しやすい配慮がある。 ・車両内から可動式ホーム柵内側に表示された駅名標が確認できる(左写真)。 提供:福岡市交通局 参考3-1-14:駅番号表示・駅名標における漢字・ひらがな・アルファベット表示 ・大都市地下鉄路線では、外国人旅行者をはじめとして、誰にでもわかりやすく鉄道を利用できるよう、路線名や駅名を固有のアルファベットや番号で表記している。このような表記は、色覚異常等においても判別しやすく有効である。 ・東京メトロでは同一ホーム上において、駅名標では漢字を主としつつも、ひらがな表記を付記したもの、アルファベット表記を付記したものがそれぞれ設置されている。 ※漢字表記が分かりやすい障害者やひらがな表記が分かりやすい障害者について配慮することが必要である。 路線固有のアルファベットや番号、漢字、アルファベット、ひらがなで表記 提供:東京地下鉄株式会社 209ページ 2.バスターミナル @バスターミナルの乗降場 考え方 路線バスは、最も身近な交通手段であり高齢者や障害者等にとって利用ニーズが高い。また、ノンステップ車両の普及などにより高齢者、障害者等の利用が増加することが予想される。乗り場や行き先、発車時刻、運行情報等については、必要性の高い情報のため、視覚障害者等に配慮した案内(音声案内、携帯電話への情報提供等)を拡充することが必要である。 なお、バスターミナルとは、「旅客の乗降のため、事業用自動車を同時に二両以上停留させることを目的として設置した施設であって、道路の路面その他一般交通の用に供する場所を停留場所として使用するもの以外のもの」として定義(自動車ターミナル法第2条)されているが、公共交通移動等円滑化基準の適合義務の対象とならないバス停が集合した箇所についても同様に、本ガイドラインに沿って対応することが期待される。 移動等円滑化基準 (乗降場) 第23条 バスターミナルの乗降場は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 二 乗降場の縁端のうち、誘導車路その他のバス車両の通行、停留又は駐車の用に供する場所(以下この号において「バス車両用場所」という。)に接する部分には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者のバス車両用場所への進入を防止するための設備が設けられていること。 三 当該乗降場に接して停留するバス車両に車椅子使用者が円滑に乗降できる構造のものであること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 ◎当該乗降場に接して停留するバス車両に車椅子使用者が円滑に乗降できる構造のものとする。 段 ○乗降場と通路との間に高低差がある場合は、傾斜路を設置する。 ○傾斜路の勾配は、屋内では1/12以下とし、屋外では1/20以下とする。 ◇屋内においても1/20以下とすることが望ましい。 幅 ○乗降場の有効幅は180cm以上とする。 仕上げ ◎乗降場の床の表面は、滑りにくい仕上げとする。 上屋 ◇防風及び雨天を考慮し、上屋を設けることが望ましい。  進入防止措置 ◎乗降場の縁端のうち、誘導車路その他のバス車両の通行、停留又は駐車の用に供する場所(バス車両用場所)に接する部分には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者のバス車両用場所への進入を防止するための設備を設ける。 横断歩道 ○乗降場に行くために誘導車路を横切る必要がある場合は横断歩道等を設け、歩行の安全に配慮する。 運行情報の案内 ◇乗り場ごとに、行き先などの運行情報を点字・音声で表示するとともにロービジョン者に配慮した大きさや配色の文字で表示することが望ましい。 210ページ 時刻表 ◇乗降場の時刻表(バスターミナル以外のバス停のものを含む。)には、ノンステップバス等の運行時間を分かり易く表示することが望ましい。 (コラム22)BRT BRTとはBus Rapid Transit(バス高速輸送システム)と言われており、Rapid:在来の道路走行より高速、Transit:定路線の乗合交通を意味する交通システムである。 世界的には大量輸送、定時性なども十分条件とされていて、専用の軌道やレーンなどにより走行空間を持つものが多い。 わが国では道路運送法、軌道法などにより規制されることが想定され、バリアフリーを考慮すべきシステムである。先進例を見ると、以下に示す方法によりバリアフリーを達成しているが、車両とプラットホームの隙間及び段の解消はいずれも課題となっている。 @車両を高床としてプラットホームを高くし、傾斜路(スロープ)などで周辺道路等との乗降ルートを確保する A車両を低床(ノンステップ)として、プラットホームも低くする BRTの施設整備にあたっては、用いるシステムによって、本ガイドラインの、「旅客施設共通」、「鉄軌道駅」、「バスターミナル」、並びに「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令」及び「道路の移動円滑化整備ガイドライン」のうち乗合自動車停留場及び路面電車停留場等を参照のこと。 (コラム23)リフト付きバスの利用を考慮したバス乗降場所の構造 乗降場所において、車椅子リフト付きバスを利用する場合、リフト可動範囲及び乗降スペースを考慮すると歩道側に3m程度のスペースが必要である。  参考:(一社)日本自動車工業会 211ページ 3.旅客船ターミナル @乗船ゲート 考え方 高齢者、障害者等の移動等円滑化に配慮し、1以上は車椅子使用者の移動に配慮した拡幅ゲートを設ける。 移動等円滑化基準 (乗降用設備) 第24条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 幅は、九十センチメートル以上であること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 乗船ゲートの幅 ◎車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。 A桟橋・岸壁と連絡橋 考え方 高齢者、障害者等すべての人が安全かつ円滑に移動できるよう、連続性のある移動動線の確保に努めることが必要である。この経路のバリアフリー化にあたっては、潮の干満があること、屋外であること等の理由から特別の配慮が必要であることから、ここに記述することとする。 経路の設定にあたっては、なるべく短距離でシンプルなものとし、また風雨雪、日射などの影響にも、配慮することとする。岸壁と浮き桟橋を結ぶ連絡橋については、潮の干満によって勾配が変動することを考慮したうえで、すべての人が安全かつ円滑に移動出来る構造とすることが必要である。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 次号に掲げる場合を除き、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第9条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 (乗降用設備) 第24条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合には、この限りでない。 212ページ 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 (視覚障害者誘導用ブロックの設置の例外) 第25条 旅客船ターミナルにおいては、乗降用設備その他波浪による影響により旅客が転倒するおそれがある場所については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 (転落防止設備) 第26条 視覚障害者が水面に転落するおそれのある場所には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設けなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の表面 ◎桟橋、岸壁や連絡橋の床は滑りにくい仕上げとする。 段差 ◎車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。 ◎段を設けない。 ◎連絡橋と浮桟橋の間の摺動部(桟橋・岸壁と連絡橋の取り合い部等をいう。)に構造上やむを得ず段が生じる場合には、フラップ(補助板)等を設置する。 摺動部 ○摺動部は安全に配慮した構造とする。 ○フラップの端部とそれ以外の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等により摺動部を容易に識別できるものとする。 ◇フラップの端部の厚みを可能な限り平坦に近づけることとし、面取りをするなど、車椅子使用者が容易に通過できる構造とすることが望ましい。 手すり ◎連絡橋等の乗降用設備には、手すりを設置する。 ○上記手すりを両側に設置する。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)とする。 ◇始終端部においては、桟橋・岸壁と連絡橋間の移動に際し、つかまりやすい形状に配慮することが望ましい。 勾配 ◇連絡橋の勾配は、1/12以下とすることが望ましい。 213ページ 視覚障害者誘導用ブロック ◎通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 ○ターミナルビルを出て、タラップその他のすべての乗降用施設に至る経路に、敷設する。ただし、連絡橋、浮桟橋等において波浪による影響により旅客が転落するおそれのある場所及び着岸する船舶により経路が一定しない部分については、敷設しない。 ○岸壁・桟橋(浮桟橋を除く)の連絡橋への入口部分には点状ブロックを敷設する。 転落防止設備 ◎視覚障害者が水面等へ転落する恐れがある箇所には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設ける。 ひさし ◇経路上には、風雨雪及び日射を防ぐための屋根またはひさしを設置することが望ましい。 揺れ ◇浮桟橋は、すべての人が安全に移動できるように、波浪に対し揺れにくい構造に配慮することが望ましい。 明るさ ○高齢者やロービジョン者の移動等円滑化に配慮し、充分な明るさを確保するよう、採光や照明に配慮する。 *:基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 214ページ Bタラップその他の乗降用設備 (1)タラップ 考え方 高齢者、障害者等すべての人が安全かつ円滑に移動できるよう、連続性のある移動動線の確保に努めることが必要である。タラップに設けられる手すり及び階段は、旅客施設共通の規定のほかに、特別な配慮が必要であることから、ここに記述することとする。 桟橋・岸壁とタラップ、タラップと船舶の接続部に生じる段差については、フラップ(補助板)等を設けることで、その解消を図る。 また、タラップに階段が設けられている場合は、別途、スロープや昇降装置を併設することを原則とする。タラップは船舶等の揺れの影響を受けるため、ある程度の揺れが常時発生することから、手すりや転落防止柵を設置する。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 次号に掲げる場合を除き、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第9条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 (乗降用設備) 第24条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合には、この限りでない。 二 幅は、九十センチメートル以上であること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 (視覚障害者誘導用ブロックの設置の例外) 第25条 旅客船ターミナルにおいては、乗降用設備その他波浪による影響により旅客が転倒するおそれがある場所については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 (転落防止設備) 第26条 視覚障害者が水面に転落するおそれのある場所には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設けなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 表面 ◎滑りにくい仕上げとする。 幅 ◎有効幅90cm以上とする。 214ページ 幅 ◇高齢者等が安全に移動できるよう、両側の手すりにつかまることが出来る程度の有効幅とすることが望ましい。 段 ◎車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。 ◎段を設けない。 ◎桟橋・岸壁とタラップ、タラップと舷門(船舶)の間の摺動部に、構造上やむを得ず段が生じる場合には、フラップ(補助板)等を設置する。 摺動部 ○安全に配慮した構造とする。 ○フラップの端部とそれ以外の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により摺動部を容易に識別できるものとする。 ◇フラップの端部の厚みを可能な限り平坦に近づけることとし、面取りをするなど、車椅子使用者が容易に通過できる構造とすることが望ましい。 ○タラップ本体に階段を有する場合、別途スロープ又は昇降装置を設置する。 階段 ○タラップの高さが変化する構造のものを除き、蹴込み板を設ける。 手すり ◎タラップには、手すりを設置する。 ○上記手すりを両側に設置する。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)とする。 ◇始終端部においてはタラップへ乗り移る場合に際し、つかまりやすい形状に配慮することが望ましい。 勾配 ◇1/12以下とすることが望ましい。 視覚障害者誘導用ブロック ◎通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の 経路を構成する通路等については、この限りでない。 転落防止設備 ◎視覚障害者が水面等へ転落する恐れがある箇所には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設ける。 ひさし ◇風雨雪及び日射を防ぐことができる構造の屋根またはひさしを設置することが、望ましい。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 216ページ 参考3-3-1:タラップの例 217ページ (2)ボーディングブリッジ 考え方 高齢者、障害者等すべての人が安全かつ円滑に移動できるよう、連続性のある動線の確保に努めることが必要である。ボーディングブリッジのバリアフリー化にあたっては、特別の配慮が必要であることから、ここに記述することとする。 旅客船ターミナルとボーディングブリッジ、ボーディングブリッジと乗降口の接続部、及びボーディングブリッジ内の伸縮部に生じる段については、フラップ(補助板)等を設置することで、その解消を図る。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 次号に掲げる場合を除き、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第9条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 (乗降用設備) 第24条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合には、この限りでない。 二 幅は、九十センチメートル以上であること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容(義務)、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の表面 ◎ボーディングブリッジの床は滑りにくい仕上げとする。 幅 乗降口 ◎有効幅90cm以上とする。 通路 ◎有効幅90cm以上とする。 ◇車椅子使用者を含めた旅客の円滑な流動を確保するため、人と車椅子使用者がすれ違うことができる有効幅又は場所を確保することが望ましい。 段 ◎車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。 ◎段を設けない。 ◎桟橋・岸壁とボーディングブリッジ、ボーディングブリッジと舷門(船舶)の間の摺動部に構造上やむを得ず段が生じる場合には、フラップ(補助板)等を設置する。 218ページ 段 摺動部 ○安全に配慮した構造とする。 ○フラップの端部とそれ以外の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により摺動部を容易に識別できるものとする。 ◇フラップの端部の厚みを可能な限り平坦に近づけることとし、面取りをするなど、車椅子使用者が容易に通過できる構造とすることが望ましい。 ○伸縮部を除き、両側に手すりを設置する。 手すり ◎ボーディングブリッジには、手すりを設置する。 ○上記手すりを両側に設置する。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)を設置する。 ◇始終端部においては、ボーディングブリッジへの移動に際し、つかまりやすい形状に配慮することが望ましい。 勾配 ◇1/12以下とすることが望ましい。 視覚障害者誘導用ブロック ◎通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 ○傾斜部の始終端部から30cm程度離れた箇所に、点状ブロックを敷設する。 転落防止設備 ◎視覚障害者が水面等へ転落する恐れがある箇所には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設ける。 戸 ○係員による開放を行わない場合は、自動式の引き戸とする。 *:基準では「色の明度、色相又は彩度の差」とあるが、コントラスト(誘導用ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 219ページ 4.航空旅客ターミナル施設 @航空旅客保安検査場の通路 考え方 車椅子使用者、その他金属探知機に反応することが明らかな器具等を使用する者については、門型の金属探知機を通過しなくて済むよう、十分な広さを有する別通路を設けるとともに、その旨の案内表示を行う。 移動等円滑化基準 (保安検査場の通路) 第27条 航空旅客ターミナル施設の保安検査場(航空機の客室内への銃砲刀剣類等の持込みを防止するため、旅客の身体及びその手荷物の検査を行う場所をいう。以下同じ。)において門型の金属探知機を設置して検査を行う場合は、当該保安検査場内に、車椅子使用者その他の門型の金属探知機による検査を受けることのできない者が通行するための通路を別に設けなければならない。 2 前項の通路の幅は、九十センチメートル以上でなければならない。 3 保安検査場の通路に設けられる戸については、第四条第五項第二号ロの規定は適用しない。 4 保安検査場には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該保安検査場に表示するものとする。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 通路の幅 ◎有効幅90cm以上とする。 案内表示 ○金属探知機に反応する車椅子使用者、医療器具等の使用者、妊産婦等が金属探知機を通過しなくてすむ旨の案内表示をする。 保安検査場における聴覚障害者の案内 ◎筆談用のメモなどを準備し、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ◎この場合においては、当該設備を保有している旨を保安検査場に表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通が図れるように配慮する。 ○筆談用具がある旨の表示については、職員及び旅客から見やすく、かつ旅客から手の届く位置に表示する。 220ページ A航空旅客搭乗橋 考え方 搭乗橋は伸縮部分、可動部分を含む構造であるが、可能な限り移動等円滑化に配慮する。 移動等円滑化基準 (旅客搭乗橋) 第28条 航空旅客ターミナル施設の旅客搭乗橋(航空旅客ターミナル施設と航空機の乗降口との間に設けられる設備であって、当該乗降口に接続して旅客を航空旅客ターミナル施設から直接航空機に乗降させるためのものをいう。以下この条において同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、第三号及び第四号については、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 幅は、九十センチメートル以上であること。 二 旅客搭乗橋の縁端と航空機の乗降口の床面との隙間又は段差により車椅子使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車椅子使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備が一以上備えられていること。 三 勾配は、十二分の一以下であること。 四 手すりが設けられていること。 五 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 2 旅客搭乗橋については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 幅 ◎有効幅90cm以上とする。 勾配 ◎渡り板部分を除き、1/12以下とする。 ○渡り板部分についても、移動等円滑化に配慮し、可能な限り勾配を緩やかにする。 手すり ◎可動部分等を除き、手すりを設置する。 ○上記手すりは両側に設置する。 ◎伸縮部の渡り板部分には手すりを設置する。 ○上記手すりは両側に設置する。 床の表面 ◎床の表面は滑りにくい仕上げとする。 視覚障害者誘導用ブロック ◎旅客搭乗橋については、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 渡り板 ◎旅客搭乗橋の縁端と航空機の乗降口の床面との隙間又は段差により車椅子使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車椅子使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備を1以上備える。 ○渡り板の表面は滑りにくい仕上げとする。 221ページ 参考3-4-1:航空旅客搭乗橋と代替設備の例 航空機に搭乗する際、搭乗橋により直接搭乗できる方式が望ましいが、物理的制約等から他の方式を取らざるを得ない場合もある。この場合、代替設備を利用した搭乗方法がある。 <航空旅客搭乗橋> 搭乗橋のつなぎ目部分の段差を解消 222ページ <パッセンジャーボーディングリフト(PBL)車> <小型機専用車椅子リフト>   <車椅子昇降装置のついたタラップ> <ランプ> <屋根を設置したランプ> 提供:日本エアコミューター株式会社 223ページ B航空旅客搭乗改札口 考え方 各搭乗口の自動若しくはその他の改札口は、車椅子使用者が円滑に通過できるよう配慮する。 移動等円滑化基準 (改札口) 第29条 各航空機の乗降口に通ずる改札口のうち一以上は、幅が八十センチメートル以上でなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容(義務)、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 幅 ◎各航空機の乗降口に通ずる改札口のうち1以上は、有効幅80cm以上とする。 224ページ 第5部 情報提供のアクセシビリティ確保に向けたガイドライン 1. ウェブアクセシビリティについて 1. ウェブサイト等による情報提供 考え方 障害者等にとって、円滑に旅客施設を利用するためにエレベーターやトイレ等の設備の設置状況や設置位置、受けられるサービスの内容等について、ウェブサイト等により事前に情報を収集することが重要となる。  ウェブサイトについては、文字の大きさ、色使い、コントラスト等の見やすさや、画像、映像、音声情報などを活用した情報の把握のしやすさ、操作のしやすさ等に配慮するとともに、サイト全体としての使いやすさを考慮した構成を検討する必要がある。加えて、障害者や高齢者等を含めた誰もがウェブサイト等で提供される情報や機能を支障なく利用できるようにするため、ウェブアクセシビリティについての対応も重要となる。  「みんなの公共サイト運用ガイドライン」(総務省)では、公的機関はウェブアクセシビリティに関する日本産業企画であるJIS X 8341-3:2016の適合レベル「AA」に準拠することが求められている。そのため、公共交通事業者等のウェブサイトにおいても、レベル「AA」に準拠することを基本とする。また、レベル「AAA」についても、公共交通事業者として対応が必要であると考えられる項目については取り組むことが望ましい。  なお、アクセシビリティの確保はウェブコンテンツ全般について求められるものである。公共交通事業等はウェブアクセシビリティ確保の目標と計画を定め、確実に取り組むことが必要である。また、ガイドラインの趣旨は、各項目の基準に準拠することが目的ではなく、技術上の問題等で記載内容通りに対応できないものについては、代替手段を検討し利用者の目的を達成することが重要である。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容(義務)、〇:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 アクセシビリティ 〇障害者等が円滑にウェブサイト等を利用し必要な情報を得られるようにするために、JIS X 8341-3:2016に基づき、ウェブアクセシビリティを確保する。 225ページ 参考5-1-1:X 8341-3:2016達成基準 項目 1 知覚可能の原則 レベル− 内容 情報及びユーザインターフェースコンポーネントは、利用者が知覚できる方法で利用者に提示可能でなければならない。 項目1.1 代替テキストのガイドライン レベル− 内容 全ての非テキストコンテンツには、拡大印刷、点字、音声、シンボル、平易な言葉などの利用者が必要とする形式に変換できるように、代替テキストを提供する。 項目 1.1.1 非テキストコンテンツの達成基準 レベルA  内容 利用者に提示される全ての非テキストコンテンツには、同等の目的を果たす代替テキストが提供されている。ただし次の場合は除く。 a) コントロール及び入力 非テキストコンテンツが、コントロール又は利用者の入力を受け付けるものであるとき、その目的を説明する名前を提供している。 b) 時間依存メディア 非テキストコンテンツが、時間に依存したメディアであるとき、代替テキストは、少なくともその非テキストコンテンツを識別できる説明を提供している。 c) テスト 非テキストコンテンツが、テキストで提示されると無効になるテスト又は演習のとき、代替テキストは、少なくともその非テキストコンテンツを識別できる説明を提供している。 d) 感覚的 非テキストコンテンツが、特定の感覚的体験を創り出すことを主に意図しているとき、代替テキストは、少なくともその非テキストコンテンツを識別できる説明を提供している。 e) CAPTCHA 非テキストコンテンツが、コンピュータではなく人間がコンテンツにアクセスしていることを確認する目的で用いられているとき、代替テキストは、その非テキストコンテンツの目的を特定し、説明して、かつ、他の感覚による知覚に対応して出力するCAPTCHAの代替形式を提供することで、様々な障害に対応している。 f) 装飾、整形及び非表示 非テキストコンテンツが、純粋な装飾である場合、見た目の整形のためだけに用いられている場合、又は利用者に提供されるものではない場合、その非テキストコンテンツは、支援技術によって無視されるように実装されている。 項目 1.2 時間依存メディアのガイドライン レベル− 内容 時間依存メディアには代替コンテンツを提供する。 項目 1.2.1 音声だけ及び映像だけ(収録済み)の達成基準 レベルA 収録済みの音声しか含まないメディア及び収録済みの映像しか含まないメディアは、次の事項を満たしている。ただし、その音声又は映像がメディアによるテキストの代替であって、メディアによる代替であることが明確にラベル付けされている場合は除く。 a)収録済みの音声しか含まない場合 時間依存メディアに対する代替コンテンツによって、収録済みの音声しか含まないコンテンツと同等の情報を提供している。 b)収録済みの映像しか含まない場合 時間依存メディアに対する代替コンテンツ又は音声トラックによって、収録済みの映像しか含まないコンテンツと同等の情報を提供している。 項目 1.2.2 キャプション(収録済み)の達成基準  レベルA 内容 同期したメディアに含まれている全ての収録済みの音声コンテンツに対して、キャプションが提供されている。ただし、その同期したメディアがメディアによるテキストの代替であって、メディアによる代替であることが明確にラベル付けされている場合は除く。 項目 1.2.3 音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準 レベルA  内容 同期したメディアに含まれている収録済みの映像コンテンツに対して、時間依存メディアに対する代替又は音声解説が提供されている。ただし、その同期したメディアがメディアによるテキストの代替であって、メディアによる代替であることが明確にラベル付けされている場合は除く。 項目 1.2.4 キャプション(ライブ)の達成基準 レベルAA  同期したメディアに含まれている全てのライブの音声コンテンツに対して、キャプションが提供されている。 項目 1.2.5 音声解説(収録済み)の達成基準 レベルAA 内容 同期したメディアに含まれている全ての収録済みの映像コンテンツに対して、音声解説が提供されている。 項目 1.2.6 手話(収録済み)の達成基準 レベルAAA 内容 同期したメディアに含まれている全ての収録済みの音声コンテンツに対して、手話通訳が提供されている。 項目 1.2.7 拡張音声解説(収録済み)の達成基準 レベルAAA  内容 前景音声の合間の時間が、音声解説で映像の意味を伝達するのに不十分な場合、同期したメディアに含まれている全ての収録済みの映像コンテンツに対して、拡張音声解説が提供されている。 項目 1.2.8 メディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準 レベルAAA  内容 全ての収録済みの同期したメディア及び全ての収録済みの映像しか含まないメディアに対して、時間依存メディアに対する代替コンテンツが提供されている。 項目 1.2.9 音声だけ(ライブ)の達成基準 項目 レベルAAA  内容 ライブの音声しか含まないコンテンツに対して、それと同等の情報を提示する、時間依存メディアの代替コンテンツが提供されている。 項目 1.3 適応可能のガイドライン レベル− 内容 情報、および構造を損なうことなく、様々な方法(例えば、よりシンプルなレイアウト)で提供できるようにコンテンツを制作する。 項目 1.3.1 情報及び関係性の達成基準 レベルA 内容 何らかの形で提示されている情報、構造、及び関係性は、プログラムによる解釈が可能である、又はテキストで提供されている。 項目 1.3.2 意味のある順序の達成基準 レベルA 内容 コンテンツが提示されている順序が意味に影響を及ぼす場合には、正しく読む順序はプログラムによる解釈が可能である。 項目 1.3.3 感覚的な特徴の達成基準 レベルA 内容 コンテンツを理解し操作するための説明は、形、大きさ、視覚的な位置、方向、又は音のような、構成要素がもつ感覚的な特徴だけに依存していない。 226ページ 項目 1.4 判別可能のガイドライン レベル− 内容 コンテンツを、利用者にとって見やすく、聞きやすいものにする。これには、前景と背景とを区別することも含む。 項目 1.4.1 色の使用の達成基準 レベルA 内容 色が、情報を伝える、動作を示す、反応を促す、又は視覚的な要素を判別するための唯一の視覚的手段になっていない。 項目 1.4.2 音声の制御の達成基準 レベルA 内容 ウェブページ上にある音声が自動的に再生され、3秒より長く続く場合、その音声を一時停止若しくは停止するメカニズム、又はシステム全体の音量レベルに影響を与えずに音量レベルを調整できるメカニズムが利用できる。 項目 1.4.3 コントラスト(最低レベル)の達成基準  レベルAA テキスト及び文字画像の視覚的表示には、少なくとも4.5:1のコントラスト比がある。ただし、次の場合は除く。 a) 大きな文字 サイズの大きなテキスト及びサイズの大きな文字画像には、少なくとも3:1のコントラスト比がある。 b) 附随的 テキスト又は文字画像において、次の場合はコントラストの要件はない。アクティブではないユーザインタフェースコンポーネントの一部である、純粋な装飾である、誰も視覚的に確認できない、又は重要な他の視覚的なコンテンツを含む写真の一部である。 c) ロゴタイプ ロゴ又はブランド名の一部である文字には、最低限のコントラストの要件はない。 項目 1.4.4 テキストのサイズ変更の達成基準 レベルAA 内容 キャプション及び文字画像を除き、テキストは、コンテンツ又は機能を損なうことなく、支援技術なしで200%までサイズ変更できる。 項目 1.4.5 文字画像の達成基準 レベルAA 内容 使用している技術で意図した視覚的提示が可能である場合、文字画像ではなくテキストが情報伝達に用いられている。ただし、次に挙げる場合を除く。 a) カスタマイズ可能 文字画像は、利用者の要求に応じた視覚的なカスタマイズができる。 b) 必要不可欠 テキストの特定の表現が、伝えようとする情報にとって必要不可欠である。 項目 1.4.6 コントラスト(高度レベル)の達成基準 レベルAAA 対応の優先度−(なし) 内容 テキスト及び文字画像の視覚的表示には、少なくとも7:1のコントラスト比がある。ただし、次の場合は除く。 a) 大きな文字 サイズの大きなテキスト及びサイズの大きな文字画像には、少なくとも4.5:1のコントラスト比がある。 b) 附随的 テキスト又は文字画像において、次の場合はコントラストの要件はない。アクティブではないユーザインタフェースコンポーネントの一部である、純粋な装飾である、誰も視覚的に確認できない、又は重要な他の視覚的なコンテンツを含む写真の一部である。 c) ロゴタイプ ロゴ又はブランド名の一部である文字には、最低限のコントラストの要件はない。 項目 1.4.7 小さな背景音、又は背景音なしの達成基準 レベルAAA 内容 収録済みの音声しか含まないコンテンツで、(1)前景に主として発話を含み、(2)音声CAPTCHA又は音声ロゴではなく、かつ、(3)例えば、歌、ラップなどのように、主として音楽表現を意図した発声ではないものについては、次に示す事項のうち、少なくとも一つを満たしている。 a) 背景音なし 音声は背景音を含まない。 b) 消音 背景音を消すことができる。 c) 20デシベル 背景音は、前景にある発話のコンテンツより少なくとも20デシベルは低い。ただし、継続時間が2秒以内で発生頻度が低い背景音は除く。 項目 1.4.8 視覚的提示の達成基準 レベルAAA 内容 テキストブロックの視覚的提示において、次を実現するメカニズムが利用できる。 a) 利用者が、前景色と背景色とを選択できる。 b) 幅が80字を超えない(全角文字の場合は、40字)。 c) テキストが、均等割付けされていない[両端そろ(揃)えではない。]。 d) 段落中の行送りは、少なくとも1.5文字分である。そして、段落の間隔は、その行送りの少なくとも1.5倍以上ある。 e) テキストは、支援技術なしで200%までサイズ変更でき、利用者が全画面表示にしたウィンドウで1行のテキストを読むときに横スクロールする必要がない。 項目1.4.9 文字画像(例外なし)の達成基準  レベルAAA  文字画像は、純粋な装飾に用いられているか、又はテキストの特定の表現が伝えようとする情報にとって必要不可欠である場合に用いられている。 項目 2 操作可能の原則 レベル− 内容 ユーザインタフェースコンポーネント及びナビゲーションは、操作可能でなければならない。 項目 2.1 キーボード操作可能のガイドライン レベル− 内容 全ての機能をキーボードから利用できるようにする。 項目 2.1.1 キーボードの達成基準 レベルA 内容 コンテンツの全ての機能は、個々のキーストロークに特定のタイミングを要することなく、キーボードインターフェースを通じて操作可能である。ただし、その根本的な機能が利用者の動作による始点から終点まで続く一連の軌跡に依存して実現されている場合は除く。 項目 2.1.2 キーボードトラップなしの達成基準 レベルA 内容 キーボードインターフェースを用いてキーボードフォーカスをそのウェブページのあるコンポーネントに移動できる場合、キーボードインターフェースだけを用いてそのコンポーネントからフォーカスを外すことが可能である。さらに、装飾キーを伴わない矢印キー、Tabキー、又はフォーカスを外すその他の標準的な方法でフォーカスを外せない場合は、フォーカスを外す方法が利用者に通知される。 項目 2.1.3 キーボード(例外なし)の達成基準 レベルAAA コンテンツの全ての機能は、個々のキーストロークに特定のタイミングを要することなく、キーボードインターフェースを通じて操作可能である。 227ページ 項目 2.2 十分な時間のガイドライン レベル− 内容 利用者がコンテンツを読み、かつ、使用するために十分な時間を提供する。 項目 2.2.1 タイミング調整可能の達成基準 レベルA 内容 コンテンツに制限時間を設定する場合は、次ぐに示す事項のうち、少なくとも一つを満たしている。 a) 解除 制限時間があるコンテンツを利用する前に、利用者がその制限時間を解除することができる。 b) 調節 制限時間があるコンテンツを利用する前に、利用者が少なくともデフォルト設定の10倍を超える、大幅な制限時間の調整をすることができる。 c) 延長 時間切れになる前に利用者に警告し、かつ、少なくとも20秒間の猶予をもって、例えば”スペースキーを押す”等の簡単な操作によって、利用者が制限時間を少なくとも10倍以上延長することができる。 d) リアルタイムの例外 リアルタイムのイベント(例えば、オークション)において制限時間が必須の要素で、その制限時間に代わる手段が存在しない。 e) 必要不可欠な例外 制限時間が必要不可欠なもので、制限時間を延長することがコンテンツの動作を無効にすることになる。 f) 20時間の例外 制限時間が20時間よりも長い。 項目 2.2.2 一時停止、停止及び非表示の達成基準 レベルA 内容 動きのある、点滅している、スクロールする、又は自動更新する情報は、次の全ての事項を満たしている。 a) 動き、点滅又はスクロール 動きのある、点滅している、又はスクロールしている情報が、(1)自動的に開始し、(2)5秒よりも長く継続し、かつ、(3)その他のコンテンツと並行して提示される場合、利用者がそれらを一時停止、停止、又は非表示にすることのできるメカニズムがある。ただし、その動き、点滅、又はスクロールが必要不可欠な動作の一部である場合は除く。 b) 自動更新 自動更新する情報が、(1)自動的に開始し、かつ、(2)その他のコンテンツと並行して提示される場合、利用者がそれぞれ一時停止、停止、若しくは非表示にする、又はその更新頻度を調整することのできるメカニズムがある。ただし、その自動更新が必要不可欠な動作の一部である場合は除く。 項目 2.2.3 タイミング非依存の達成基準 レベルAAA 内容 タイミングは、コンテンツによって提示されるイベント又は動作の必要不可欠な部分ではない。ただし、インタラクティブではない同期したメディア及びリアルタイムのイベントは除く。 項目 2.2.4 割込みの達成基準 レベルAAA 内容 割込みは、利用者が延期、又は制御することができる。ただし、緊急を要する割込みは除く。 項目 2.2.5 再認証の達成基準 レベルAAA 内容 認証済みのセッションが切れた場合は、再認証後でもデータを失うことなく利用者が操作を継続できる。 項目 2.3 発作の防止のガイドライン レベル− 内容 発作を引き起こすようなコンテンツを設計しない。 項目2.3.1   3回のせん(閃)光、又はしきい(閾)値以下の達成基準 レベルA 内容 ウェブページには、どの1秒間においても3回を超えるせん(閃)光を放つものがない、又はせん(閃)光が一般せん(閃)光しきい(閾)値及び赤色せん(閃)光しきい(閾)値を下回っている。 内容 2.3.2   3回のせん(閃)光の達成基準 レベルAAA ウェブページには、どの1秒間においても3回を超えるせん(閃)光を放つものがない。 項目 2.4 ナビゲーション可能のガイドライン レベル− 内容 利用者がナビゲートしたり、コンテンツを探し出したり、現在位置を確認したりすることを手助けする手段を提供する。 項目 2.4.1 ブロックスキップの達成基準 レベルA 内容 複数のウェブページ上で繰り返されているコンテンツのブロックをスキップするメカニズムが利用できる。 項目 2.4.2 ページタイトルの達成基準 レベルA 内容 ウェブページには、主題又は目的を説明したタイトルがある。 項目 2.4.3 フォーカス順序の達成基準 レベルA 内容 ウェブページが順を追ってナビゲートできて、そのナビゲーション順が意味又は操作に影響を及ぼす場合、フォーカス可能なコンポーネントは、意味及び操作性を損なわない順序でフォーカスを受け取る。 項目 2.4.4 リンクの目的(コンテキスト内)の達成基準 レベルA  内容 それぞれのリンクの目的が、リンクのテキスト単独で判断できるか、又はリンクのテキストとプログラムによる解釈が可能なリンクのコンテキストとから判断できる。ただし、リンクの目的がほとんどの利用者にとってあいまいな場合は除く。 項目 2.4.5 複数の手段の達成基準  レベルAA  ウェブページ一式の中で、あるウェブページを見つける複数の手段が利用できる。ただし、ウェブページが一連のプロセスの中の1ステップ又は結果である場合は除く。 項目 2.4.6 見出し及びラベルの達成基準 レベルAA 内容 見出し及びラベルは、主題又は目的を説明している。 項目 2.4.7 フォーカスの可視化の達成基準 レベルAA 内容 キーボード操作が可能なあらゆるユーザインタフェースには、フォーカスインジケータが見える操作モードがある。 項目 2.4.8 現在位置の達成基準 レベルAAA 内容 ウェブページ一式の中での利用者の位置に関する情報が利用できる。 項目 2.4.9 リンクの目的(リンクだけ)の達成基準 レベルAAA 内容 それぞれのリンクの目的を、リンクのテキスト単独で特定できるメカニズムが利用できる。ただし、リンクの目的がほとんどの利用者にとってあいまいな場合は除く。 項目 2.4.10 セクション見出しの達成基準 レベルAAA 内容 セクション見出しを用いて、コンテンツが整理されている。 228ページ 項目 3 理解可能の原則 レベル− 内容 情報及びユーザインタフェースの操作は、理解可能でなければならない。 項目 3.1 読みやすさのガイドライン レベル− 内容 テキストのコンテンツを読みやすく理解可能にする。 項目 3.1.1 ページの言語の達成基準 レベルA 内容 それぞれのウェブページのデフォルトの自然言語がどの言語であるか、プログラムによる解釈が可能である。 項目 3.1.2 一部分の言語の達成基準 レベルAA 内容 コンテンツの一節、又は語句それぞれの自然言語がどの言語であるか、プログラムによる解釈が可能である。ただし、固有名詞、技術用語、言語が不明な語句、及びすぐ前後にあるテキストの言語の一部になっている単語又は語句は除く。 項目 3.1.3 一般的ではない用語の達成基準  レベルAAA 内容 慣用句及び専門用語を含めて、一般的ではない用法又は限定された用法で使われている単語又は語句の、明確な定義を特定するメカニズムが利用できる。 項目 3.1.4 略語の達成基準 レベルAAA  内容 略語の元の語、又は意味を特定するメカニズムが利用できる。 項目 3.1.5 読解レベルの達成基準 レベルAAA 内容 固有名詞及び題名を取り除いた状態で、テキストが前期中等教育レベルを超えた読解力を必要とする場合は、補足コンテンツ又は前期中等教育レベルを超えた読解力を必要としない版が利用できる。 項目 3.1.6 発音の達成基準 レベルAAA 内容 文脈において、発音が分からないと単語の意味が不明瞭になる場合、その単語の明確な発音を特定するメカニズムが利用できる。 項目 3.2 予測可能のガイドライン  レベル− 内容 ウェブページの表示及び挙動を予測可能にする。 項目 3.2.1 フォーカス時の達成基準 レベルA 内容 いずれのコンポーネントも、フォーカスを受け取ったときにコンテキストの変化を引き起こさない。 項目 3.2.2 入力時の達成基準 レベルA 内容 ユーザインタフェースコンポーネントの設定を変更することが、コンテキストの変化を自動的に引き起こさない。ただし、利用者が使用する前にその挙動を知らせてある場合を除く。 項目 3.2.3 一貫したナビゲーションの達成基準 レベルAA 内容 ウェブページ一式の中にある複数のウェブページ上で繰り返されているナビゲーションのメカニズムは、繰り返されるたびに相対的に同じ順序で出現する。ただし、利用者が変更した場合は除く。 項目 3.2.4 一貫した識別性の達成基準 レベルAA 内容 ウェブページ一式の中で同じ機能をもつコンポネートは、一貫して識別できる。 項目 3.2.5 要求による変化の達成基準 レベルAAA 内容 コンテキストの変化は利用者の要求によってだけ生じるか、又は、そのような変化を止めるメカニズムが利用できる。 項目 3.3 入力支援のガイドライン  レベル− 利用者の間違いを防ぎ、修正を支援する。 項目 3.3.1 エラーの特定の達成基準 レベルA  内容 入力エラーが自動的に検出された場合は、エラーとなっている箇所が特定され、そのエラーが利用者にテキストで説明される。 項目 3.3.2 ラベル又は説明の達成基準 レベルA 内容 コンテンツが利用者の入力を要求する場合は、ラベル又は説明文が提供されている。項目 3.3.3 エラー修正の提案の達成基準 レベルAA 内容 入力エラーが自動的に検出され、修正方法を提案できる場合、その提案が利用者に提示される。ただし、セキュリティ又はコンテンツの目的を損なう場合は除く。 項目 3.3.4 エラー回避(法的、金融及びデータ)の達成基準 レベルAA 内容 利用者にとって法律行為若しくは金融取引が生じる、利用者が制御可能なデータストレージシステム上のデータを変更若しくは削除する、又は利用者が試験の解答を送信するウェブページでは、次に示す事項のうち、少なくとも一つを満たしている。 a) 取消 送信を取り消すことができる。 b) チェック 利用者が入力したデータの入力エラーがチェックされ、利用者には修正する機会が提供される。 c) 確認 送信を完了する前に、利用者が情報の見直し、確認及び修正をするメカニズムが利用できる。項目 3.3.5 ヘルプの達成基準 レベルAAA 内容 コンテキストに応じたヘルプが利用できる。 項目 3.3.6 エラー回避(全て)の達成基準 レベルAAA  内容 利用者に情報の送信を要求するウェブページでは、次に挙げる事項のうち、少なくとも一つを満たしている。 a) 取消 送信を取り消すことができる。 b) チェック 利用者が入力したデータの入力エラーがチェックされ、利用者には修正する機会が提供される。 c) 確認 送信を完了する前に、利用者が情報の見直し、確認及び修正をするメカニズムが利用できる。 項目 4 堅ろう(牢)の原則 レベルA 内容 コンテンツは、支援技術を含む様々なユーザエージェントが確実に解釈できるように十分に堅(ろう)牢でなければならない。 項目 4.1 互換性のガイドライン レベル− 内容 現状及び将来の、支援技術を含むユーザエージェントとの互換性を最大にする。 項目 4.1.1 構文解析の達成基準 レベルA  内容 マークアップ言語を用いて実装されているコンテンツにおいては、要素には完全な開始タグ及び終了タグがあり、要素は仕様に従って入れ子になっていて、要素には重複した属性がなく、どのIDも一意的である。ただし、仕様で認められているものを除く。 項目 4.1.2 名前、役割、及び値の達成基準 レベルA 内容 全てのユーザインタフェースコンポーネント(フォームを構成する要素、リンク、スクリプトが生成するコンポーネントなど)では、名前及び役割は、プログラムによる解釈が可能である。そして、支援技術を含むユーザエージェントが、これらの項目に対する変更通知を利用できる。 229ページ (コラム24)JIS X 8341-3:2016 JIS X 8341-3:2016(『高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における危機、ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ』)はウェブサイト、ウェブサイトアプリケーション、携帯端末などを用いて利用されるコンテンツ、電子マニュアルなどブラウザ等を介して利用者に提供されるあらゆるコンテンツを対象とし、高齢者や障害のある人を含むすべての利用者が、使用している端末、ウェブブラウザ、支援技術などに関係なく、ウェブコンテンツを利用することができるようにすることを目的としている。ウェブアクセシビリティの確保は、障害者のためだけの配慮ではない。ウェブサイト等の見やすさやわかりやすさを向上することは、情報の収集が困難な障害者の他にも、より多くの人にとって効果のあるものである。  またウェブコンテンツが満たすべきアクセシビリティの品質基準として、レベルA、レベルAA、レベルAAAの3つのレベルが定められている。「みんなの公共サイト運用ガイドライン」(総務省)では、公共機関に対してレベルAAに準拠することとされている。  なお、JIS X 8341-3:2016は、国際規格である「ISO/IEC 40500:2012」の内容と一致している。 ■ウェブアクセシビリティにかかわる主な問題例 ウェブサイトのイメージ図 画像が何を意味しているのか音声読み上げソフトの利用者等に伝える説明文(大体テキスト)が無い。 イメージ図の事例では「詳細はこちらをクリック」のボタンが画像のみとなっている。 視覚障碍者が音声読み上げソフトでページを読む場合に、画像に書かれた内容が伝わらない。 JIS X 8341-3:2016では改善に関する具体的な技術手法は示されていないが、WCAG2.0※解説書では、改善の意図や技術的な手法について参照することができる。 ※「WCAG2.0」は、インターネットに関する技術開発と標準化を確保することを目的とした策定ガイドラインである。なおWCAGの最新版は2.1であるがWCAG2.1で新たに追加された内容はJIS X 8341-3:2016には含まれていない。 【WCAG2.0 日本語訳版】 URL: https://waic.jp/docs/UNDERSTANDING-WCAG20/Overview.html 230ページ (コラム25)スマートフォン/タブレット向けアプリケーションのアクセシビリティ  近年、スマートフォン/タブレットの普及に伴い、多くの情報や機能がスマートフォン/タブレット向けアプリケーション(以下、アプリ)を介して提供されている。これらのアプリのアクセシビリティ対応については、JIS X 8341-3に相当する視覚やガイドラインはまだ存在していないが、主要なプラットフォームにおけるアクセシビリティ対応に関する情報が提供されている。公共事業者等が各種の情報や機能についてアプリをかいして提供する場合には、これらの情報を参照し、高齢者や障害者等を含めた誰もが利用しやすいアプリとすることが望ましい。 【参考】 ・iOSでのアクセシビリティ https://developer.apple.com/jp/accessibility/ios/ ・Accessibility overview(Android Developersガイド): https://developer.android.com/guide/topics/ui/accessibility/index.html 231ページ 巻末参考1:3,000人未満の無人鉄軌道駅における配慮事項 1日当たりの平均的な利用者の人数が3,000人未満であって係員が配置されていない既存の鉄軌道駅については、構造的な制約、利用状況、立地特性等を踏まえつつも、次に掲げる配慮事項を考慮し施設整備を行うことが望まれる。 @移動経路の配慮事項 ・エレベーター、緩やかな傾斜路等により段差解消を図ることが望ましい。 ・階段については、高齢者や杖使用者、視覚障害者等の円滑な利用に配慮し、手すりを設置することが望ましい。 ・駅に接続するエレベーターについては、列車の運行時間に合わせて運用することが望ましい。なお、鉄道事業者とは管轄が異なるエレベーターについては事業者間で調整を図ることが求められる。また、エレベーターの運用時間が列車の運行時間よりも短い場合は、その旨を分かりやすく示す必要がある。 A誘導案内設備の配慮事項 ・車両等の運行の異常に関連して、遅れ状況、遅延理由、運転再開予定、到着予定時刻などの案内放送その他音声による情報提供を行うことが望ましい。 ・上記情報を常時確認できるよう、また、聴覚障害者に配慮し、インターネット、通信回線等を活用した文字情報を提供することが望ましい。(参考例参照) ・出入口から乗降位置まで視覚障害者誘導用ブロックを敷設することが望ましい。 ・ホームに対して短い車両である場合は、車両が停止する範囲について、分かりやすい情報を提供することが望ましい。 Bプラットホームの配慮事項 ・プラットホームにおいては、車両とホームの段差・隙間が大きいことが想定されることから、車椅子使用者の乗降のための渡り板を施設側・車両側いずれか速やかに設置できる場所に配備することが望ましい。また、渡り板の傾斜は、乗降時の介助や電動車椅子の登坂性能を考慮し、可能な限り10度以下とすることが望ましい。 ・地方鉄道等において段差が著しく大きい場合には、@施設側によるホーム嵩上げ、A車両側における低床化、B段差解消設備を設ける等により、可能な限り段差解消に努めることが望ましい。 ・転落防止措置として内方線付き点状ブロック、点状ブロックを敷設することが望ましい。 Cその他コミュニケーション手段の確保等 ・係員等とコミュニケーションを図ることができるようプラットホームのわかりやすい位置にインターホン等の駅員連絡装置の設置、あるいは携帯電話などにより連絡できるようわかりやすい位置に連絡先電話番号等を掲示することが望ましい。 ・視覚障害者の上記コミュニケーション手段の確保に配慮し、インターホン等の駅員連絡装置を設置する場合には、当該場所まで視覚障害者誘導用ブロックを敷設することが望ましい。また、携帯電話番号を提示する場合には、あらかじめ事業者のホームページ等に連絡先電話番号を示しておくこと(読み上げ対応)等も有効である。 ・地域のボランティア等との連携によるコミュニケーション、接遇・介助が行われることも有効と考えられる。 232ページ 巻末参考2:積雪地域における配慮事項 積雪地域においては、特有の課題が生じるため次に掲げる配慮事項を考慮し施設整備や運用の工夫を行うことが 望まれる。 ≪鉄道駅・バス停留所≫ ・寒冷地では、積雪によりバス停からバスへ乗車することが困難なことやホームの縁端が凍り、滑って転落する恐れがあるため、適宜、除雪を行うことが望ましい。 ・積雪により駅のホームやバス停等が利用できない(利用しにくい)状態になることを防ぐために、屋根を設けることが望ましい。 ≪空港≫ ・雪の影響により、飛行機の発着に遅れが生じる場合には、音声及び文字情報により情報を提供するとともに、状況が把握できていないと思われる利用者(例えば、降雪により飛行機が運行できない状況で、搭乗ロビーで待ち続けている利用者がいる場合等)には、空港職員が声掛けをし、状況を伝える配慮をすることが望ましい。 233ページ バリアフリー基準・ガイドラインの今後検討すべき主な課題  平成28年度及び29年度に「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準等検討委員会」を設置し、学識経験者、高齢者、障害者等関係団体、事業者団体等の参画を得て、バリアフリー基準の改正内容、ガイドライン改訂の主たる検討項目について検討を行った。これを踏まえ、平成29年度に交通エコロジー・モビリティ財団において「バリアフリー整備ガイドライン改訂検討委員会(旅客施設編・車両等編)」を設置し、ガイドライン改訂内容の具体的な検討を行ったところである。  それぞれの委員会の議論の中では、「地方のバリアフリー化」、「誘導案内設備の表示方法」、「ホームと車両の段差・隙間の解消」、「車両の車椅子スペース」、「リフト付きバス」等について多くの意見が出されたが、時間の関係で議論が十分できなかったものもある。 下記に示した主な課題は、今後、見直しを行うにあたって念頭に置くべき事項として記載したものであり、何らかの機会を捉えて検討することが望まれる。 【旅客施設】 1.1日の利用者数3,000人未満の駅のバリアフリー化について 2.誘導案内設備の表示方法等について @サインを表示する際のより適切な書体について Aサインの大きさとロービジョン者が接近して確認できる位置の関係 B床サインの用途と表示方法 C駅等におけるバリアフリールートの適切な表示方法 D駅等の出入口におけるバリアフリールートへの誘導経路の表示 E他事業者・他交通モード間のバリアフリールートの一体的な表示方法 F視覚障害者のエスカレーターへの誘導 Gプラットホームにおける歩行空間の確保と誘導用ブロックの敷設方法の考え方(プラットホーム中央に誘導用ブロックを敷設すること等について) H触知案内図のあり方の検討(出入口、改札口近くの触知案内図は視覚障害者にとって有益性が低いという指摘について) 3.情報バリアフリーについて @Webやアプリを作成する際のアクセシビリティへの配慮(分かりやすさの確保(不要な広告の不掲載、用語の統一、インターフェース、音声読み上げ対応等)) A旅客施設並びに鉄道やバス車両内にヒアリングループ(磁気誘導ループ)を導入することについて Bヒアリングループが利用できるエリアを示す統一的なピクトグラム 4.トイレ機能の分散について   @各便房の機能を分かりやすく表示するためのピクトグラム 5.拡幅改札口を2カ所設置(入場と出場を別にする)することについて 234ページ 【車両等】 (鉄軌道) 1.プラットホームと車両の段差・隙間の解消について 2.2台目以降の車椅子スペースの長さについて(都市間鉄道) 3.グリーン席にも車椅子スペースを設けることについて(現在は望ましい整備内容)(都市間鉄道) 4.座席の肘掛けを可動式にすることを標準的な整備内容とすることについて(都市間鉄道) (バス) 1.都市内路線バスの運賃箱・カードリーダーの設置位置の検討について(都市内路線バス) 2.リフト付きバスの導入の推進について(都市間路線バス) (航空機) 1.通路が1かつ旅客定員100名以上の航空機の車椅子対応トイレの設置について 235ページ 高齢者・障害者等の主な特性 (1)高齢者  「平成29年版高齢社会白書」によると、1970年には7.1%であった高齢化率(65歳以上の高齢者の比率)は、2016年には27.3%に達しており、2036年には33.3%で国民の3人に1人が65歳以上の高齢者となると予測されている。  高齢者は、身体機能が全般的に低下しているため、歩行を補助する機器(歩行補助杖(T字杖、松葉杖等)、歩行補助具(シルバーカー、歩行器等))や補聴器等を利用している場合がある。ただし、明らかに特定の障害がある場合以外は、外見上顕著な特徴が見られないこともある。しかし、程度は軽くても様々な障害が重複している可能性があり、移動全般において身体的・心理的負担を感じていることが多い。  機能低下の内容や程度は様々であり、本人が気づいていないうちに進行していることもある。身体的な機能低下はそれぞれの障害と関連して対応を考えることができる。例えば、耳が遠くなるということは聴覚障害の一部と考えることができ、白内障で視力が低下することは、視覚障害の一部ということができる。  心理面では、体力全体が低下している高齢者は、機敏な動きや、連続した歩行等に自信がなくなり(また、実際に困難になり)、心理的にも気力が低下してくることがある。 ■移動上の困難さ ・人混み、大規模な旅客施設、普段利用しない場所では不安を感じやすい。 ・若い人のように長い距離を歩いたり、素早く行動することが困難な傾向にある。 ・転倒したり、つまずきやすくなり、大きなけがにつながる可能性がある。 ・路線図、運賃表、時刻表などの小さな文字が見えにくい。 ・新しい券売機等の操作がわかりにくい。 ・階段の上り下り、車両の乗降などは、身体的負担が大きい。 ・階段の利用については、上るとき以上に下るときの身体的負担が大きく、不安に感じる。 ・トイレに頻繁に行きたくなる。 ・長時間の立位が困難であり、ベンチなどに座る必要がある。 ・屋外や空調下などでは、水分摂取が適宜行えない等から体温調整が難しい。 等 1)認知症  認知症は加齢に伴い著しく出現率が高まる疾病である。認知症の基本的な症状は単なる「もの忘れ」ではなく、脳の萎縮や血管の病変によって起こる認知・記憶機能の障害である。認知症にはいくつかの原因があり、アルツハイマー病や脳血管性認知症が代表的である。 235ページ ■移動上の困難さ ・体験の全部や少し前のことを忘れたり、忘れたことの自覚を伴わない記憶機能の障害がある。 ・自分のいる場所や行き先、時間がわからなくなる見当識の障害がある。 ・徘徊行動をとり旅客施設などに迷い込む場合がある。こうした行動は制止が困難な場合が多い。 等 (2)肢体不自由者(車椅子を使用している場合)  車椅子使用者は、下肢等の切断、脳血管障害、脊髄損傷、脳性麻痺、進行性筋萎縮、リウマチ性疾患等により下肢の機能が失われる(又は低下するなど)こと等により、障害に適した車椅子(手動車椅子、簡易式折りたたみ式電動車椅子、電動車椅子、ハンドル形電動車椅子、(身体支持部のティルト機構やリクライニング機構等を有する)座位変換形車椅子、バギータイプの車椅子等)を使用している。また、一時的なけがによる車椅子の使用も考えられる。 236ページ @手動車椅子 A簡易型折りたたみ式電動車椅子 B電動車椅子 Cハンドル形電動車椅子 D座位変換型車椅子 E子供用車椅子(福祉バギー・バギーカー) Fバギータイプの車椅子 周知ポスターの例 @ABDE提供:日進医療器 C提供:電動車いす安全普及協会 F提供:大阪市交通局(現:大阪市高速電気軌道株式会社) 脳血管障害により車椅子を使用している人は、左右いずれかの片麻痺の状態であることが多く、片方の手足で車椅子をコントロールしている場合がある。  脊髄損傷により車椅子を使用している人は、障害の状況により下半身、四肢等の麻痺が生じ、歩行が困難又は不可能になっている。また、便意を感じない、体温調整が困難、床ずれになる等、生活上多くの2次障害を抱えている場合が多い。床ずれを予防するため車椅子のシートにクッションを敷いていることが多い。  脳性麻痺により車椅子を使用している人は、不随意の動きをしたり、手足に硬直が生じていることがあり、細かい作業(切符の購入等)に困難をきたす場合がある。また、言語障害を伴う場合も多くあり、知的障害と重複している場合もある。  進行性筋萎縮症は進行性で筋肉が萎縮する疾患である。進行性のため、徐々に歩行が困難となり車椅子を使用するに至る。首の座りや姿勢を維持するのが難しい場合もあり、筋肉が弱っていることから身体に触れる介助は十分な配慮が必要となる。  リウマチは慢性的に進行する病気で、多くは関節を動かした時に痛みを伴う。関節が破壊されていくため、特に脚などの力のかかる部分は、大きな負担に耐えられなくなる。そのため、症状が重くなると車椅子を使う場合がある。  なお、肢体不自由児はバギータイプの車椅子を使用する場合があるため、ベビーカーと混同しないようにする必要がある。 ■移動上の困難さ ・車椅子使用者は、段差や坂道が移動の大きな妨げとなる。 ・移動が円滑に行えない、トイレが使用できない等の問題があることから、外出時の負担が大きい。 ・階段、段差だけでなく、極端な人混み、狭い通路、急なスロープ、長い距離のスロープ、通路の傾斜などの通過も困難となる。 ・券売機の設置位置が高かったり、車椅子のフットサポートが入るスペースが十分でないなど券売機での切符の購入が困難な場合がある。 ・頭の位置が低いために人混みでは周囲の人のバッグなどが顔にあたることがある。 ・視点が常に低い位置にあり、高い位置にあるものが見えにくかったり、手が届かないことがある。 ・上肢に障害がある場合、手腕による巧緻な操作や作業が難しく、エレベーターやトイレ、券売機等の操作ボタン等の操作が困難な場合がある。 ・車椅子(手動車椅子、簡易式折りたたみ式電動車椅子、電動車椅子、ハンドル形電動車椅子、座位変換形車椅子等)が安定的に位置取りかつ動作できるスペースが必要なことがある。  等 (3)肢体不自由者(車椅子使用以外)  杖歩行の場合、スロープでは滑りやすく、また、膝上からの義肢を装着している場合には、膝がないため下肢をまっすぐに踏ん張ることができず、勾配により歩くことが困難となる。加えて、車内では直立時の安定性が低く転倒の危険性があるため、多くの場合、座席が必要となる。  杖歩行以外でも、障害の部位や程度は様々で、その部位によって歩行機能のレベルや求められるニーズが異なる。 ■移動上の困難さ ・階段、段差だけでなく、極端な人混み、狭い通路、スロープ、通路の傾斜などの通過も困難となる。 ・肢体不自由のため杖歩行をしている人は、短距離の移動でも疲労を感じる。ベンチなど休憩する場所を必要とする。 ・松葉杖などを使用している人は、両手がふさがるため、切符の購入や料金の支払いが困難になる場合がある 等 (4)内部障害者  「平成23年生活のしづらさなどに関する調査結果(厚生労働省)」によると、内部障害者は約93万3百人で、身体障害者386万4千人(知的障害、精神障害を除く)のうち全体の24.1%を占めて 238ページ いる。内部障害は、普段、外見上わかりにくい障害である。全体の半数以上が1級の障害で、心臓疾患がもっとも多く、ついで腎臓疾患である。他の障害に比べ年々増加しているのが大きな特徴である。 1)心臓機能障害  不整脈、狭心症、心筋症等のために心臓機能が低下した障害で、ペースメーカー等を使用している人がいる。 2)呼吸器機能障害  呼吸器系の病気により呼吸機能が低下した障害で、酸素ボンベを携行したり、人工呼吸器(ベンチレーター)を使用している人がいる。 3)腎臓機能障害  腎機能が低下した障害で、定期的な人工透析に通院している人がいる。 4)膀胱・直腸機能障害 膀胱疾患や腸管の通過障害で、腹壁に新たな排泄口(ストーマ)を造設している人がいる。オストメイト(人工肛門や人口膀胱を持つ人)は、トイレの中に補装具(パウチ=排泄物を溜めておく袋)を洗浄できる水洗装置、温水設備等を必要とする。 5)小腸機能障害  小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている人がいる。 6)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害   HIVによって免疫機能が低下した障害で、抗ウィルス剤を服薬している。  上記の内部障害の他にも膠原病や、パーキンソン病、ペーチェット病等の難病も、病気の進行によって、平衡を維持できない場合がある等、日常生活に著しく制約を受ける。 ■移動上の困難さ ・長時間の立位が困難な場合がある。 ・心肺機能の低下等により長い距離を連続して歩くことや階段の昇降が困難な場合がある。 ・携帯電話等の電波によるペースメーカーへの影響が懸念される。 ・障害の部位により、空気の汚染されている場所に近づけないことや、酸素ボンベの携行が必要な場合がある。 ・膀胱・直腸等の機能障害による排泄の問題がある。 ・オストメイトの人のパウチ洗浄設備など、トイレに特別の設備を必要とする場合がある。等 (5)視覚障害者(全盲・ロービジョン・色覚異常)  「平成23年生活のしづらさなどに関する調査結果(厚生労働省)」によると、視覚障害者は約31万6千人、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の8.2%を占めている。疾病等により後天的に障害となった人が80%と圧倒的に多く、年齢が高くなるほど増加している。  また、色覚異常の人は、日本人の男性の20人に1人、女性は500人に1人の割合で、全国で約320万人程度いると言われている。  視覚障害者には、主として音声による情報案内が必要となる。たとえば、運賃や乗り換え経路の案内、駅構内の案内等である。また、ホーム上での適切な誘導による安全確保等、移動の安全を確保することが重要となる。  視覚障害者は、まったく見えない全盲の人だけでなく、光を感じたり物の輪郭等を判断でき、視覚障害者誘導用ブロックや壁面・床面のラインと背景色の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)を目印に外出できるようなロービジョン(弱視とも呼ばれる)と言われる人も少なくない。全盲は視覚に障害のある方の2割程度といわれ、その他はロービジョンとなる。ロービジョンは周囲の明るさや対象物の輝度コントラスト等の状況によって、同じ物でも見え方が異なる場合がある。  ほかに、視野の一部に欠損があり、周囲の情報を十分に視覚的に捉えることができない障害や視力低下、ぼやけて見えにくい、視野狭窄により見えにくい、視野の中心の暗点により見えにくい、明暗の順応に時間がかかる、まぶしく感じて見えにくい等、様々な障害がある。  色覚異常の人は、明度や彩度の似た色の判別が困難となる。また、加齢により色覚機能が低下する人もいることから、今後、高齢化の進展により何らかの色覚異常を有する人が増えるものと見込まれる。 色覚異常の人は、一見異なった色でも同じ明度や彩度の場合見分けることが困難となることがある。例えば、「赤と緑とグレー」、「オレンジと黄緑」は明度が同じであるため、区別することが困難となる場合がある。 逆に、「緑と青緑」の2色は見分けることができる場合がある。このため、旅客施設における案内表示等について、色覚異常の人に対する配慮が必要となる。 視覚障害者が、公共交通機関を利用して外出する時は、目的地への道順、目標物等を事前に学習してから出かけることが一般的である。しかし、日によって屋外空間の状況は変化することから、天候、人の流れ、不意な工事の実施等、いつもと違う環境に遭遇することも少なくない。また、急に初めての場所に出かける必要に迫られることもある。単独歩行に慣れている視覚障害者でも、こうした状況の変化は緊張を強いられ、ともすれば思わぬ危険に遭遇することもある。駅周辺の放置自転車や、コンコースに出店している売店等も注意しなければぶつかるため、周囲の配慮が必要となる。 ■移動上の困難さ ・経路の案内、施設設備の案内、運行情報等、主として音声・音響による情報案内が必要である。 ・視覚障害者はホーム上を歩行する際に転落の危険・不安を感じている。 ・ロービジョン者は、色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)がないと階段のステップや表示などが認識できない場合がある。また、文字表示は大きくはっきりと表示し、近づいて読めることが必要である。 ・色覚異常の人は、線路の案内図や時刻表、路線情報の表示などにおいて、明度や彩度の似た色など、色の組み合わせによりその識別が困難になる場合がある。              等 (6)聴覚・言語障害者  「平成23年生活のしづらさなどに関する調査結果(厚生労働省)」によると、聴覚・言語障害者は約32万4千人、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の8.4%を占めている。  聴覚・言語障害者は、コミュニケーションをとる段階になって、初めてその障害に気がつくことが多く、普段は見かけ上わかりにくい。聴覚の障害も個人差が大きく、障害の程度が異なる。特に乳幼児期に失聴するなど、その時期によっては言葉の習得が困難になるため、コミュニケーションが十分に行えない場合もある。聞こえるレベルにより、補聴器でも会話が可能な人もいるが、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時等、うまく聞き取れないこともある。また、重度の聴覚障害の場合には補聴器をつけても人の声を聞き取ることができない場合がある。聞こえないことにより、言葉をうまく発音できない障害を伴うことがある。また、聴覚障害という認識がなくても、高齢になり耳が聞こえにくくなっている場合もある。  聴覚障害者は、公共交通機関を利用するときに、駅の案内放送、発車ベル、車内放送等が聞こえず困難を感じている。電光掲示装置や何らかの視覚的な表示機器を必要としている。アナウンスが聞き取れない、車内に電光掲示装置がない等の状況では、外を見たり、駅名、停留所名表示に常に注意しなければならない。列車の接近音、発車合図が聞こえないことにより、列車に接触しそうになったり、ドアに挟まれそうになったり、危険な思いをすることが少なくない。  聴覚・言語障害者にとって、窓口や案内時におけるコミュニケーションの取り方を習得した職員による、短く簡潔な文章による筆談、できれば簡単な手話等での対応が望まれる。 ■移動上の困難さ ・旅客施設内、ホーム、車内での案内放送が聞こえない場合がある。 ・ホーム等では列車の接近や発車合図に気がつかない場合がある。 ・事故や故障で停止・運休している時の情報が音声放送だけではすぐに得られない。 ・駅の案内放送、発車ベル、車内放送等が聞こえず困難を感じることがある。 ・可変式情報表示装置や何らかの視覚的な表示機器がない駅や車内では不便を感じる。 ・外見で判断することが難しく、周囲が気づきにくいため障害を理解されないことがある。 ・聴こえるレベルにより、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時等、うまく聞き取れないことある。 ・カウンター窓口越しの対応などで相手の表情が見えないとコミュニケーションが取りにくいことがある。                               等 240ページ (7)知的障害者  「平成29年版障害者白書」によると、わが国の知的障害児・者数は、74万1千人であり、年々増加の傾向にある。在宅生活をしている知的障害者は62万2千人である。  知的障害とは、概ね18歳頃までの発達期に脳に何らかの障害が生じたために、「考えたり、理解したり、感情をコントロールしたり、話したり」する等の知的な能力やコミュニケーションに障害が生じ、社会生活への適応能力が同年齢の子供と比べて低いなどの課題を持つ障害である。主な原因として、ダウン症候群など染色体異常によるもの、脳性マヒやてんかんなどの脳の障害がある。また、発達障害を併せもつことが少なくない。  知的障害者は都道府県等より療育手帳(知的障害者福祉手帳)が交付されている。 1)ダウン症  ダウン症は染色体異常を伴う障害である。身体的な特性としては、成長に少し時間がかかるため、出生時から体重、身長とも平均より少なくその後も同年齢の平均に比べ小さい等の特徴がある。 ■傾向 ・利用上のルールや常識が理解できにくいことがある。 ・一度にたくさんのことを言われると混乱することがある。 ・困ったことが起きても、自分から人に助けを求めることができない人もいる。 ・コミュニケーションに際しては、ゆっくり、ていねいに、わかりやすく説明することが必要となる。等 (8)精神障害者  「平成29年版障害者白書」によると、わが国の精神障害者は392万4千人であり、年々増加の傾向にある。在宅生活をしている精神障害者は267万5千人、施設に入所している精神障害者は392万4千人である。 1)統合失調症  約1%の発病率で身近な病気である。日本では約67万人が治療を受け、20万人以上が入院生活を送っている。  不眠やあせりの気持ちがひどくなり、つらい気持ちになるが、治療を受け十分な休養とって規則正しい生活のリズムを作ると、回復へ向かう。 2)うつ病 241ページ  うつ病は、ストレスにさらされれば誰でもなる可能性がある。大きな悲しみ、失敗等が原因で、食欲の低下や不眠を招くことがあるが、うつ病はこれが重症化し、そのまま治らなくなったり、治りにくくなった状態である。 まれに高揚状態(そう)があらわれる人もいる。 3)てんかん  脳内に正常よりも強い電気的変化が突発的に生ずることにより、意識障害やけいれんの発作が起きる病気で、規則的に服薬を続けると大部分は発作を防げるようになる。また、手術で根治する場合もある。一部に発作をコントロールできず、発作が繰り返されることがあるが、発作は通常2〜3分でおさまる。まれに発作が強くなったり、弱くなったりしながら長時間つづく「発作重積」と呼ばれる状態がある。 ■傾向 ・ひとりで外出する時や、新しいことを経験するときは、緊張し、不安を感じやすい。 ・腹痛や吐き気を催すときがあるので、トイレの近くに座るようにしている人や、喫煙によりスト レスの解消を図ろうとする人がいる。 ・関係念慮(本来自分とは関係のないことを自分に関係づけて考えたり感じたりする。)が強く外出することが困難な人もいる。 ・のどの渇き、服薬のため水飲み場を必要とする人もいる。等 (9)発達障害者  改正発達障害者支援法において、発達障害者とは「発達障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害で、通常低年齢で発現する障害)がある者であって、発達障害及び社会的障壁により日常生活または社会生活に制限を受けるもの」と定義されている。 1)自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害 自閉症は、「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」などの特徴をもつ障害。最近では、自閉症スペクトラムと呼ばれることもある。 アスペルガー症候群は広い意味での「自閉症」に含まれる一つのタイプで、「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、興味・関心のかたより」がある。自閉症のように、幼児期に言葉の発達の遅れがないため、障害があることが分かりにくいが、成長とともに不器用さがはっきりすることが特徴。 2)注意欠陥多動性障害(AD/HD) 注意欠陥多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、「集中できない(不注意)」「じっとしていられない(多動・多弁)」「考えるよりも先に動く(衝動的な行動)」などを特徴とし、適切に注意や関心を持続することが困難、外からの刺激に衝動的に反応しやすい、自分の感情や行動をうまくコントロールできないといった行動がみられる。 3)学習障害(LD) 学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)とは、全般的な知的発達に遅れはないのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力を学んだり、行ったりすることに著しい困難を示すさまざまな状態をいう。 4)トゥレット症候群 トゥレット症候群(TS:Tourette's Syndrome)は、多種類の運動チック(突然に起こる素早い運動の繰り返し)と1つ以上の音声チック(運動チックと同様の特徴を持つ発声)が1年以上にわたり 242ページ 続く重症なチック障害で、このような運動や発声を、本人はそうするつもりがないのに行ってしまうのが特徴。 5)吃音 吃音(Stuttering)とは、音の繰り返し、ひき伸ばし、言葉を出せずに間があいてしまうなど、一般に「どもる」と言われる話し方の障害。幼児・児童期に出始めるタイプ(発達性吃音)がほとんどで、大半は自然に症状が消失したり軽くなったりする。しかし、青年・成人期まで持続したり、青年期から目立つようになる人や、自分の名前が言えなかったり、電話で話せなくて悩む人もいる。 ■移動上の困難さ ・外見で判断することが難しく、周囲が気づきにくいため障害を理解されないことがある。 ・利用上のルールや常識が理解できにくいことがある。 ・大声をだしたり騒いだりする人もいる。 ・環境の変化を理解し対応することが困難なので、ごくわずかな変化にも対応できないことがあり、例えば行き先の変更や時間の遅れがあった場合に困惑する。 ・場面にあった会話や行動ができず、周囲から浮いてしまうことがある。 ・気持ちをうまく伝えられないために、コミュニケーションがとれないことがある。 ・流れる文字や情報表示の転換が早いときには情報取得が困難となる。 ・匂い、光、音、温度等に対して感覚過敏や感覚鈍麻がある場合がある。 ・聴いても理解できなかったり、時刻表が読めない人もいる。 ・「不注意」「多動性」「衝動性」の行動特徴があり、車内で座席にずっと座っていることができない人もいる。 ■困りごとが生じる具体的な状況と求められる対応 @情報提供方法の配慮事項 ・案内表示などが連続して提示されていないと迷ってしまうことがある。また、サインが複雑に感じられると混乱し、理解しづらい人がいる。例えば、文字や音声など異なる方法で情報が提示され、それらが重なり合っている場合、それぞれの表記や表現の仕方が一致しない場合に、どちらが正しいか判断に迷い混乱してしまう人がいる。 ・案内文が長い、表現の一部が省略されている、LEDを用いて文字をスクロールさせているなどの場合には、情報を適切に把握できない人がいる。 ・一方で、情報を得るために用いる方法には個人差があり、情報提供の方法が限られていると、適切に情報を得られない人がいる。 ・電車の遅延などで通常と異なる状況の時には何が起きたか把握できず、どのような行動をとるべきかわからずに混乱してしまう人がいる。 【対応として】 ・サインが発見しやすいように表示の内容や設置する間隔を適切なものとすること、職員の配置を工夫すること等により、移動の連続性を確保する。 ・人により情報を得るための方法が異なるため、複数の方法で簡潔な情報を提供する。 ・必要な情報が確実に伝わるようにするためには、簡潔な情報を繰り返し提供することが有効である。また、同じ情報を伝える場合に、文字と音声で表記・表現が異なると理解しにくいため、提供する情報の表現は一致させることが望ましい。 A錯覚を生じさせやすいデザインや誤解につながるデザインを回避する配慮事項 ・通路の床面の色やデザインによっては錯覚(段や溝に見える)を起こして、不安を感じるため、その場で立ち止まってしまう人がいる。 【対応として】 ・色や模様の採用に当たり、錯覚を生じないか確認する。 243ページ B音・光環境の配慮事項 ・音量や提示速度の異なる音声案内が重なる、高い輝度や多彩な色で画像や動画を表示する商業広告は、耳や目から一度に入る情報量が過多となりストレスを感じる人がいる。 【対応として】 ・音の重なりや反響を考慮した機器の選択や配置、それらを軽減する素材を建築材に使用することを検討する。 ・目から入る刺激が混乱の原因とならないように、照明や広告表示の輝度や配置に配慮する。 Cカームダウン(クールダウン)の配慮事項 ・発達障害者は、周囲から理解されにくく、注意・叱責を受けることがある。本人が状況を理解できないまま、反復して注意されると興奮してしまうことがある。この場合、しばらく時間をおき、気持ちが落ち着いてから、「どうしたのか?」と尋ねることで、冷静に自分の行動を振り返ることができる。この対応をカームダウン(クールダウン)という。 ・旅客施設の利用時は、様々な視覚情報、音声情報及び騒音・雑音などが重なることで感覚に対する反応が過敏となること、天候の影響や事故の影響による電車の遅延など不測の事態が生じた場合等にパニックになることがある。そのような場合においてもカームダウン(クールダウン)の対応が有効となる。 【対応として】 ・カームダウン(クールダウン)のスペースを用意することが効果的な場合がある。駅事務室等の活用の他、パーティション等で視線を遮れるような空間があるだけでも有効な場合がある。 (10)高次脳機能障害者 交通事故や病気等により脳に損傷を受け、その後遺症等として記憶、注意、社会的行動といった認知機能(高次脳機能)が低下した状態を高次脳機能障害という。高次脳機能障害は日常生活の中で現れ、外見からは障害があると分かりにくく、「見えない障害」や「隠れた障害」などと言われている。(出典:障害者白書より) ■移動上の困難さ ・注意障害や身体失認等による狭いホームの移動時に転落の危険がある。 ・降りる駅に気づけずに乗り過ごしてしまう。 ・乗り過ごしたことに気づいても対処することが難しい。 ・停車している駅がどこだか分からない。 ・必要な表示や案内を見つけられない。探すのに時間がかかる。 ・案内表示を見ても理解できないことがある。 ・緊急時のアナウンス等を理解することが困難な場合があり、状況が把握できずに混乱する。 等 (国リハヒアリングの内容より) ■困りごとが生じる具体的な状況と求められる対応 @ホーム上での配慮事項 ・半側空間無視、注意障害の症状がある場合、プラットホームを移動する際に転落や人・ものにぶつかる危険や人ごみの合間を縫って歩くことが難しいことによる転倒の危険がある。 【対応として】 ・ホームドアや柵の整備が有効である。 A情報提供の配慮事項 ・サインそのものを見つけることの難しい人がいる。また、注意障害、半側空間無視、失語、失認等の症状によりサインを見つけたあとに内容を読み取ることの難しさがある。例えば、失語では、言語(文 244ページ 字言語・音声言語)が苦手な人が多く、失認では、図(路線図、矢印や絵文字等)が苦手な人が多い。 ・電車の遅延などで通常と異なる状況の時には何が起きたか把握できなかったり、どのようにすればよいかわからなかったりして混乱してしまう人がでることがある。 【対応として】 ・注意障害、半側空間無視、失語、失認の症状がある場合、サインを統一的なデザインとすること、見つけやすい配置とすることが重要である。また、遂行機能障害の症状がある場合、見通しを立てることが難しいことが多いため、目的地までの距離の併記は有効である。 ・必要な情報が確実に伝わるようにするためには、簡潔に要点をまとめ、繰り返し情報を提供する方法が有効である。また、情報の内容が同じ場合でも文字と音声で表記・表現が異なると把握が難しくなる人がいるため、提供する情報の表現は一致させる。等 (11)妊娠中・乳幼児連れ(ベビーカー使用者など)の人  妊娠中の人やベビーカーを使用している人、子どもを抱いている人は、円滑な移動のためには、さまざまな配慮が必要となる。  特に、妊娠初期の人は、赤ちゃんの成長やお母さんの健康を維持するための大切な時期であるものの、外見からはわかりにくいため特段の配慮が必要となる。また、他の人に迷惑をかけてしまうことを恐れたり、公共交通機関の利用を躊躇してしまうといった心理的なバリアが存在している場合がある。 ■移動上の困難さ ・妊娠初期は外見からはわかりにくいため、体調が優れない場合でも優先座席の利用がしにくい。 ・長時間立っているのが困難な場合がある。 ・長い距離を連続して歩くことや階段の昇降が困難な場合がある。 ・妊娠中でお腹が大きくなった人は足元が見えにくくなるため、階段を下りることが非常に困難となる。 ・人ごみの中で移動しにくい。 ・ベビーカーを畳んで子どもを抱えなくては行けない場合、特にバランスを崩しやすく危険である。 ・ベビーカーや大きな荷物を持っている場合、また子どもが不意な行動をとる場合などに他の人の迷惑になったり、危険な場合があるため、公共交通機関の利用に心理的なバリアを感じている。等 (12)外国人  日本語による情報を理解することが困難である。日本語によるコミュニケーションが困難である。日本政府観光庁より、2018年1月の訪日外客数は250万1千人であり、2020年の東京オリンピック・パラリピックも考慮すると更なる増客が見込まれる。英語表記やその他の外国語による表記、言語の違いによらない図記号(ピクトグラム)や数字・アルファベットなどを用いた表示が有効である。 (13)一時的な怪我をした人や大きな荷物を持った人  海外旅行用トランクやカートなどの大きな荷物を持ったまま、あるいは怪我をして公共交通機関を利用する場合に、階段や段差の移動、長距離の移動が困難となることがある。 (14)病気の人 病気の人は、病気の種類や状況によって身体機能が全般的に低下し、階段や段差の移動、長距離の 245ページ 移動が困難となることがある。また、移動中において服薬や注射などを必要とする場合がある。 (参考)上記の「高齢者・障害者の主な特性」を参照のうえ、個々の障害に対応したニーズを的確に把握し、障害の特性に応じた適切な対応が求められる。一方でWHO(世界保健機関)では、ICF(国際機能分類)という考え方が採択されている。これは、人間の生活機能と障害について「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つの次元及び影響を及ぼす「環境因子」等の因子で構成されるもので、例えばバリアフリー整備による環境評価も含めた機能分類を行うことができる。今後の新たなバリアフリー化のための技術開発など、障害の理解並びにバリアフリー促進の視点から、ICFの適切な活用方策の検討が望まれる。 (詳しくは厚生労働省資料等を参照されたい) (高齢者・障害者等の主な特性を記載するにあたって参考とした主な文献) ・内閣府編「平成29年版 障害者白書」、2017年 ・内閣府編「平成29年版 高齢社会白書」、2017年 ・シルバーサービス振興会編「ケア輸送サービス従事者研修用テキスト 平成17年7月改訂」中央法規出版、2005年 ・国土交通省「ゆっくり「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」 −知的障害、精神障害のあるお客様への応対−」、2004年 ・全国視覚障害者情報提供施設協議会編「視覚障害者介護技術シリーズ3 初めてのガイド」、1999年 ・直居鉄監修「新版 視覚障害者の介護技術 −介護福祉士のために−」YNT企画、1999年 ・大倉元宏編著、村上琢磨「目の不自由な方にあなたの腕を貸してください −オリエンテーションとモビリティの理解−」財団法人労働科学研究所、2000年 ・E&Cプロジェクト編「“音”を見たことありますか?」小学館、1996年 ・厚生省大臣官房傷害保険福祉部企画課監修「障害者ケアマネジャー養成テキスト 身体障害編」中央法規出版、1999年 ・山縣文治、柏女霊峰編集委員代表「社会福祉用語辞典 第6版 −福祉新時代の新しいスタンダード」ミネルヴァ書房、2007年 ・『21世紀のろう者像』編集委員会編「21世紀のろう者像」財団法人全日本ろうあ連盟出版局、2005年 ・介護予防に関するテキスト等調査研究委員会編、厚生労働省老健局計画課監修、「介護予防研修テキスト」株式会社社会保険研究所、2001年 公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン (バリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編) 令和2年(2020)3月 発行 国土交通省総合政策局安心生活政策課 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 電話:03-5253-8111(代表) FAX:03-5253-1552