公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドラインバリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編 平成25年10月 監修 国土交通省総合政策局安心生活政策課 発行 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 はじめに このたび「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン(略称:バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)」、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン(略称:バリアフリー整備ガイドライン車両等編)」の改訂版を発行する運びとなりました。まずは、ご尽力頂いた関係者の皆様に心からお礼申し上げます。 交通バリアフリー法が平成12年に施行され、その後ハートビル法と一体化した新法のバリアフリー法(「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」平成18年)となって8年が経過しました。この法律により旅客施設、道路、建築物などの一体的、面的な整備が進められ、高齢者、障害者を含めたより多くの人々が暮らしやすい環境を実現するための努力が交通事業者をはじめとする関係者により続けられています。 バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編は、昭和58年に策定された「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」から、平成6年、平成13年、平成19年の改訂を経て今回で5版目の発行となります。また、車両等編は平成2年の「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」を最初に平成13年、平成19年の改訂を経て、途中モデルデザインからガイドラインに名称を変更し、今回で4版目の発行となります。 このたびの見直しは、平成24年1月に国土交通省で公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会を立ち上げ、旅客施設及び車両の小委員会を経て、数次にわたる委員会での検討結果を反映したものであります。今般の改訂にあたっては、かねてから指摘されていた課題への対応、新たな技術開発や研究結果などの知見を取り入れるなど、現時点で対応すべきものをとりまとめました。一方で、クリアすべき問題点との関係では今後の更なる検討に委ねざるを得なかったものもありますが、スパイラルアップの考えに基づいて絶えず改善を重ねる中で解決されていくべきものと考えます。 この冊子は国土交通省が平成25年6月に公表したバリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編、車両等編)を国土交通省総合政策局安心生活政策課の監修のもと、小委員会を主催した当財団より発行するに至ったものです。関係者の皆様には、この冊子を活用して、引き続きより良いバリアフリー整備に取り組んで頂くことを期待したいと思います。 最後に、本ガイドライン策定に向けて終始熱心にご議論頂いた委員各位、資料の提供やヒアリング等にご協力頂いた関係各位、また検討委員会並びに旅客施設の小委員会の議論をとりまとめて頂いた秋山哲男委員長、車両の小委員会の議論をとりまとめて頂いた鎌田実委員長に改めて感謝の意を表します。 平成25年10月 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 会 長 岩村 敬 公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会 委員名簿 (委員は五十音順) 委員長 秋山哲男 北星学園大学客員教授 委 員 赤瀬達三 公共デザイン学研究者・元千葉大学大学院教授 浅野義行 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会車両部会長 (豊田克孝 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会車両部会長) 阿部竜矢 国土交通省自動車局総務課企画室長 (山田輝希 国土交通省自動車局総務課企画室長) 阿部亮 東日本旅客鉄道株式会社鉄道事業本部設備部次長 (有山伸司 東日本旅客鉄道株式会社鉄道事業本部設備部担当部長) 石山齊 社団法人全国空港ビル協会常務理事 池田薫 国土交通省航空局航空ネットワーク部空港施設課長 伊藤健次 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構鉄道建設本部設備部建築課長 井上勝徳 国土交通省住宅局建築指導課長 江角直樹 国土交通省自動車局技術政策課長 (和迩健二 国土交通省自動車局技術政策課長) 岡野俊豪 一般社団法人日本自動車工業会安全環境技術委員会大型車部会バス分科会長 岡本八重子 社団法人全国乗用自動車連合会理事 鎌田実 東京大学高齢社会総合研究機構教授・機構長 川内美彦 東洋大学ライフデザイン学部教授 川村泰利 一般財団法人全国福祉輸送サービス協会副会長 瓦林康人 国土交通省海事局内航課長 北村不二夫 国土交通省鉄道局技術企画課長 栢沼史好 定期航空協会部長 (日下部稔 定期航空協会部長) 久保田雅晴 国土交通省航空局航空ネットワーク部航空事業課長 黒田憲司 国土交通省道路局路政課長 児玉芳記 一般社団法人日本自動車工業会流通委員会福祉車両部会長 齋藤秀樹 財団法人全国老人クラブ連合会理事・事務局長 鈴木昭久 国土交通省自動車局旅客課長 鈴木浩明 公益財団法人鉄道総合技術研究所人間科学研究部部長 須田義大 東京大学生産技術研究所教授 関喜一 独立行政法人産業技術総合研究所アクセシブルデザイン研究グループ主任研究員 竹下義樹 社会福祉法人日本盲人会連合会長 (笹川吉彦 社会福祉法人全日本盲人会連合会長) 高田達 社団法人日本旅客船協会業務部長 橋儀平 東洋大学ライフデザイン学部教授・学部長 竹田浩三 国土交通省鉄道局鉄道業務政策課長 田中徹二 社会福祉法人日本点字図書館理事長 妻屋明 社団法人全国脊髄損傷者連合会理事長 藤堂栄子 一般社団法人日本発達障害ネットワーク理事 仲條直樹 一般社団法人日本自動車車体工業会バス部会技術委員長 中野泰志 慶応義塾大学経済学部教授 中村豊四郎 アール・イー・アイ株式会社代表取締役 平原祐 国土交通省海事局安全基準課長 藤井直人 神奈川県立保健福祉大学非常勤講師 藤井高明 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会土木部会長 藤村賢治 社団法人公営交通事業協会業務部長 堀川洋 社団法人日本港湾協会事務局長 堀口寿広 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会精神保健研究部家族・地域研究室室長 松永康男 国土交通省港湾局技術企画課技術監理室長 (渡邊和重 国土交通省港湾局技術企画課技術監理室長) 松本紫穂 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会広報誌「ステージ」編集委員 松本正志 財団法人全日本聾唖連盟理事 (太田陽介 財団法人全日本聾唖連盟理事) 三澤了 特定非営利法人DPI日本会議議長 三星昭宏 関西福祉科学大学客員教授・近畿大学名誉教授 宮崎恵子 独立行政法人海上技術安全研究所運航・システム研究グループ上席研究員 森昌文 国土交通省道路局企画課長 森祐司 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会常務理事 安元杏 主婦連合会常任委員 山口一朗 国土交通省総合政策局安心生活政策課長 山下博 公益社団法人日本バス協会技術安全部長 山田稔 茨城大学工学部都市システム工学科准教授 横原寛 日本バスターミナル協会長 (福島八束 日本バスターミナル協会長) 良田かおり 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会事務局長 与田俊和 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団理事長 ( )内は前任者 公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン小委員会委員名簿 (委員は五十音順) 委員長 秋山哲男 北星学園大学客員教授 委 員 赤瀬達三 公共デザイン学研究者・元千葉大学大学院教授 粟津貴史 国土交通省住宅局建築指導課課長補佐 石山齊 社団法人全国空港ビル協会常務理事 伊藤健次 (独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構鉄道建設本部設備部建築課課長 伊藤滋 東日本旅客鉄道株式会社鉄道事業本部設備部駅設備グループ課長 井上圭介 国土交通省道路局企画課課長補佐 今西正義 特定非営利活動法人DPI日本会議バリアフリー担当アドバイザー 大野央人 公益財団法人鉄道技術総合研究所人間科学研究部主任研究員 落合一弘 埼玉県老人クラブ連合会常務理事・事務局長(全国老人クラブ連合会) 大熊昭 国土交通省総合政策局安心生活政策課交通バリアフリー政策室室長 鎌田実 東京大学高齢社会総合研究機構教授・機構長 川内美彦 東洋大学ライフデザイン学部教授 門元政治 国土交通省自動車局総務課企画室財務企画調整官 北川博巳 兵庫県立福祉のまちづくり研究所第一研究グループグループ長 栗原弥生 国土交通省鉄道局鉄道業務政策課課長補佐 小出真一郎 財団法人全日本聾唖連盟理事 (小椋武夫 財団法人 全日本聾唖連盟理事) 小西慶一 東京都身体障害者団体連合会専務理事(日本身体障害者団体連合会) 権藤宗高 国土交通省鉄道局技術企画課課長補佐 菅原勝良 国土交通省海事局内航課旅客航路活性化推進室課長補佐 鈴木孝幸 社会福祉法人日本盲人会連合会副会長 鈴木賢治 国土交通省航空局航空ネットワーク部空港施設課空港施設高度利用推進室課長補佐 関喜一 独立行政法人産業技術総合研究所アクセシブルデザイン研究グループ主任研究員 橋儀平 東洋大学ライフデザイン学部教授・学部長 田中徹二 社会福祉法人日本点字図書館理事長 田中知足 国土交通省港湾局技術企画課技術監理室技術基準審査官 妻屋明 社団法人全国脊髄損傷者連合会理事長 藤堂栄子 一般社団法人日本発達障害ネットワーク理事 中野泰志 慶応義塾大学経済学部教授 中村豊四郎 アール・イー・アイ株式会社代表取締役 福島八束 日本バスターミナル協会会長 福本仁志 国土交通省道路局路政課課長補佐 藤井直人 神奈川県立保健福祉大学非常勤講師 藤村賢治 社団法人公営交通事業協会業務部長 堀川洋 社団法人日本港湾協会事務局長 堀口寿広 国立精神・神経センター精神保健研究所室長 松本紫穂 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会ステージ編集委員 三星昭宏 関西福祉科学大学客員教授・近畿大学名誉教授 安元杏 主婦連合会常任委員 良田かおり 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会事務局長 山田稔 茨城大学工学部都市システム工学科准教授 山西敦也 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会土木部会建築小委員会主査 (古川真司 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会土木部会建築小委員会主査) ( )内は前任者 目  次 公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会 委員名簿 公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン小委員会委員名簿 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方 1 1.移動等円滑化整備ガイドラインの活用にあたって3 1.1ガイドラインの策定・改訂の背景3 1.2ガイドラインの位置づけ4 1.3対象施設と対象者5 2.移動等円滑化整備の基本的な考え方6 2.1移動等円滑化の目的7 2.2移動可能な環境づくり7 2.3一体的・統合的な整備の方針7 3.ガイドライン整備の経路・施設配置・情報提供等の具体的な考え方9 3.1移動経路確保の考え方9 3.2旅客施設と車両等における施設・設備配置の考え方9 3.3情報提供の考え方9 4.移動等円滑化整備に関連した連携協力11 第2部 旅客施設共通ガイドライン17 1.移動経路に関するガイドライン19 @移動等円滑化された経路19 A公共用通路との出入口25 B乗車券等販売所、待合所、案内所の出入口29 C通路32 D傾斜路(スロープ)41 E階段46 F昇降機(エレベーター)52 Gエスカレーター68 2.誘導案内設備に関するガイドライン74 @視覚表示設備74 A視覚障害者誘導案内用設備109 B緊急時の案内用設備139 3.施設・設備に関するガイドライン141 @トイレ141 A乗車券等販売所・待合所・案内所164 B券売機169 C休憩等のための設備173 Dその他の設備174 第3部 個別の旅客施設に関するガイドライン175 1.鉄軌道駅177 @鉄軌道駅の改札口177 A鉄軌道駅のプラットホーム180 2.バスターミナル198 @バスターミナルの乗降場198 3.旅客船ターミナル200 @乗船ゲート200 A桟橋・岸壁と連絡橋200 Bタラップその他の乗降用設備203 4.航空旅客ターミナル施設208 @航空旅客保安検査場の通路208 A航空旅客搭乗橋209 B航空旅客搭乗改札口211 第4部 個別の車両等に関するガイドライン 第4部は別冊「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」をご覧下さい。 巻末参考: 3,000人未満の無人鉄軌道駅における配慮事項212 高齢者・障害者の主な特性 214 おわりに 〜移動等円滑化整備の基本的な考え方に基づく整備に向けて〜221 資料編 関係法令集 ※このテキストデータの目次にあるページ番号は冊子版に合わせている。冊子版のページ番号をテキストデータの当該部分の冒頭に表示している。 ※参考図版の番号については、原則として部、章、個別番号の3ケタ表示とした。 例 参考2-1-1(=第2部・第1章移動等円滑化された経路に示された1つ目の参考図) 本テキスト版では、参考番号、タイトル及び当該参考図版等の説明等の文字のみ掲載し、図版等は省略している。 1ページ 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方 3ページ 1.移動等円滑化整備ガイドラインの活用にあたって 1.1 ガイドライン策定・改訂の背景 平成12年11月に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が施行され、公共交通機関の旅客施設、車両等の移動円滑化を促進することが定められた。 その後、施策の拡充を図るため、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)と交通バリアフリー法を一体化し、平成18年12月20日に新たに「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)が施行された。この法律は、それまで対象とされていた高齢者や身体障害者のみならず、知的障害、精神障害、発達障害など全ての障害者を対象に加え、@公共交通機関(旅客施設・車両等)、道路、路外駐車場、都市公園、建築物を新設等する場合においては、一定のバリアフリー化基準(移動等円滑化基準)に適合させなければならないこと、A市町村が作成する基本構想に基づき、旅客施設、建築物等及びこれらの間の経路の移動等円滑化を重点的かつ一体的に推進すること等を内容としたものであり、同法に基づいて、公共交通事業者等が旅客施設や車両等を新たに整備・導入等する際に義務として遵守すべき基準である移動等円滑化基準(「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令」)等が定められている。 「公共交通機関の旅客施設の移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)は、昭和58年に策定された「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」以降、平成6年、平成13年、平成19年と3回の改訂を行っており、今回は4回目の改訂となる。一方、「公共交通機関の車両等の移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン車両等編)は平成2年に策定された「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」以降、平成13年、平成19年の改訂に続く3回目の改訂となる。 平成23年3月31日には「移動等円滑化の促進に関する基本方針」が改正されて平成32年度末までの新たな移動等円滑化の目標(対象旅客施設を1日平均利用者数3,000人以上にまで拡大等)が示された。今般の公共交通機関の旅客施設・車両等の移動等円滑化整備ガイドラインの改訂は、移動等円滑化の進展や問題点等を踏まえ、、現行ガイドラインで課題となっていた事項、技術水準の向上によってより良い整備が可能になった事項、ニーズの変化等を見据え、バリアフリー法のスパイラルアップを具体化するため、必要な見直しを行うこととしたものである。 4ページ 1.2ガイドラインの位置づけ (1)ガイドラインの内容と趣旨 移動等円滑化基準は、公共交通事業者等が旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際に義務基準として遵守しなければならない内容を示したものである。 一方で、本整備ガイドラインは、公共交通事業者等が、旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際、高齢者、障害者等をはじめとした多様な利用者の多彩なニーズに応えるため、旅客施設及び車両等の整備のあり方を具体的に示した目安である。そのため、移動等円滑化基準に基づく整備内容を除いて、公共交通事業者等は本整備ガイドラインに従うことを義務付けられるものではないが、旅客施設及び車両等の新設、新造、大規模な改良の機会をとらえて、高齢者や障害者等を含む全ての人が利用しやすい公共交通機関の実現に向け、本整備ガイドラインを活用願いたい。 なお、実際の整備においては、構造上の制約等から本整備ガイドラインに沿った整備が困難な場合も考えられる。上述の本整備ガイドラインの性格から、移動等円滑化基準に基づく整備内容を除き個々の内容ごとに例外的条項は記述していないが、各公共交通事業者等が、地域性、施設利用状況等の特性、整備財源等を勘案し、「2.移動等円滑化整備の基本的な考え方」をはじめとする本整備ガイドラインに示された考え方や根拠を理解のうえ、整備水準を主体的に判断し、利用者等の意見も十分勘案したうえで、より多くの利用者のニーズに対応できる移動環境としての公共交通インフラの実現を通じて、広く社会活動を支える有効な基盤となることを念頭に置いた移動等円滑化の促進が望まれる。 (2)ガイドラインの構成 本整備ガイドラインは、上記の趣旨に鑑み以下の構成で編集されている。 各整備箇所に関して、整備にあたっての考え方を示した上で、義務となる移動等円滑化基準、具体化にあたって考慮すべき整備の内容を「移動等円滑化基準に基づく整備内容」、これに準じて積極的に整備することが求められる「標準的な整備内容」、さらに高い水準を求める「望ましい整備内容」に分けて記載している(図1-1-1)。 「移動等円滑化基準に基づく整備内容」(◎) 移動等円滑化基準に基づく、最低限の円滑な移動を実現するための内容の記述を行ったものであり、記号“◎”(二重丸)で示す。 「標準的な整備内容」(○) 社会的な変化や利用者の要請に合わせた整備内容のうち標準的な整備内容で、積極的に整備を行うことが求められるものであり、記号“○”(丸)で示す。 「望ましい整備内容」(◇) 上記の整備を行ったうえで、移動等円滑化基準に基づく整備内容(◎)、標準的な整備内容(○)より、さらに円滑な移動等を実現するための移動等円滑化や、利用者の利便性・快適性への配慮を行った内容のものであり、記号“◇”(四角)で示す。 図1-1-1 ガイドライン改訂前後の構成の比較 注)区分の仕方とは別に、整備対象によっては、「望ましい整備内容」から「標準的な整備内容」に変更になった事項、新たに「望ましい整備内容」に記述された事項(    )がある。 5ページ なお、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満の旅客施設においても、利用状況などに配慮しつつ、本整備ガイドラインに沿って移動等円滑化を進めることが望まれる。また、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満で係員が配置されていない既存の鉄軌道駅では、巻末「参考」(3,000人未満の無人鉄軌道駅における配慮事項)に示した配慮事項を踏まえた施設整備が望まれる。 1.3 対象施設と対象者 (1)対象施設及び車両等 「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)が対象とする施設は、バリアフリー法に定められた旅客施設(鉄道駅、軌道停留場、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル施設)である。車両等については、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン車両等編)に基づくこととなる。公共交通機関の移動等円滑化に関しては、それぞれのガイドラインを目安として整備し、移動等円滑化の推進に努めることが望まれる。 なお、平成23年3月31日に「移動等円滑化の促進に関する基本方針」が改正され、平成32年度末までの新たな移動等円滑化の目標(移動等円滑化の対象旅客施設を1日平均利用者数3,000人以上に拡大すること、移動等円滑化された車両の割合及び台数の引き上げ)が示された。 バリアフリーガイドライン(旅客施設編)は、1日平均利用者数3,000人以上の施設を念頭に記載しているが、3,000人未満の施設も含め、すべての旅客施設を対象としている。利用者数が少ない旅客施設においても、本整備ガイドラインを目安とした整備を行うことが望ましい。 車両等については、鉄軌道車両は70%を移動円滑化し、バスではノンステップバスの導入目標が70%、これまで目標値が無かったリフト付きバス等が25%となった。タクシーは福祉タクシー車両の導入目標28,000台が設定された。航空機については90%の目標値が設定された。これらの目標値に向けた努力がなされているところであるが、達成可能なところでは目標値を超える積極的な整備が望まれる。 6ページ また、利用者数の特に多い旅客施設、複数の路線が入る旅客施設、複数事業者の旅客施設が存在する施設、旅客施設以外の施設との複合施設等では、利用者数の規模や空間の複雑さ等を勘案して、特別な配慮を行うことが求められる。具体的な内容は、旅客施設編では「第2部」(旅客施設共通ガイドライン)、「第3部」(個別の旅客施設に関するガイドライン)、車両等編では「第4部」(個別の車両等に関するガイドライン)に掲載している。 (2)対象者 本整備ガイドラインに基づく施策の主な対象者は、高齢者、障害者等の移動制約者を念頭におきつつ、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方にも配慮している(表1-1-1)。なお、本表は主な障害等を列挙したものである。利用者の具体的な特性等については、移動の際に発生しうるニーズで整理する考え方も有効である。そのため、図1-2-1、表1-2-1に示した資料も参照し、すべての利用者にとって使いやすい旅客施設とすることが期待される。 表1-1-1 本整備ガイドラインにおける対象者 ・高齢者 ・肢体不自由者(車椅子使用者) ・肢体不自由者(車椅子使用者以外) ・内部障害者 ・視覚障害者 ・聴覚・言語障害者 ・知的障害者 ・精神障害者 ・発達障害者 ・妊産婦 ・乳幼児連れ ・外国人 ・その他 注:高齢者・障害者等においては、重複障害の場合がある。 ※高齢者や各障害の特性及びそれらに応じた公共交通機関利用時の課題等を巻末に掲載した。施設整備にあたっては、それらについても配慮することが望まれる。 2.移動等円滑化整備の基本的な考え方 本項は、移動等円滑化基準や本整備ガイドラインに沿った旅客施設、車両等整備に関連して、それらの整備に取り組むにあたって念頭に置くべき、移動等円滑化全般にわたっての考え方を記述したものである。 7ページ 2.1 移動等円滑化の目的 1.2ガイドラインの位置付けでも触れたように、本整備ガイドラインは、移動等円滑化基準をベースとして、高齢者、障害者等をはじめとした利用者のニーズに応えるための旅客施設及び車両等の整備のあり方を具体的に示した目安であるが、これら移動等円滑化への対応の目的は、高齢者、障害者等移動に困難を伴う多様な人々に対して生活を支えるための移動可能な環境の整備である。 移動可能な環境の整備とは、旅客施設、車両等、その他、旅客施設周辺のビルや旅客施設前広場等との連続的移動の確保、表示や音などの情報提供等、施設・設備面の整備とともに、業務要員による接遇も含めて、高齢者、障害者等が生活に必要な移動等を達成できるようにすることである。 2.2 移動可能な環境づくり 移動可能な環境づくりの3つの要素とは、以下のとおりである。 @バリアのないルートの確保:可能な限り最短距離で、高低差が少なく、見通しがききわかりやすいルートと空間を連続的に確保すること。 Aわかりやすいルートの確保:空間構成、様々な表示サイン、音サイン、人的対応などを有効に組み合わせ、誘導を適切に行うこと。 B安全で使いやすい施設・設備:必要な施設・設備(乗車券等販売所、待合所、案内所、トイレ等)をアクセスしやすく、安全で使いやすく整備すること。 以上の3つの要素を満たすことによって、円滑に移動できる環境を作り出すことができる。 2.3 一体的・統合的な整備の方針 移動の連続性、容易性を確保するためには、利用対象者をそのニーズに基づいて統合的にとらえ、施設・車両、地域などを一体的にとらえて計画し、整備を行うことが重要である。 (1)現状の課題と方針 @多様な利用者を統合的にとらえる 肢体不自由者(車椅子使用者、杖使用者等)、視覚障害者(ロービジョン、全盲)、聴覚・言語障害者(全聾・難聴)、知的障害者、精神障害者、発達障害者、コミュニケ―ションに障害がある人など、多様な障害がある人の機能状況(動くこと、見ること、聞くこと、伝えること、理解すること等)を個別の障害ごとに縦割りにとらえるのではなく、移動の際に発生するニーズに応じてとらえることが必要である(図1-2-1)。また高齢者、障害者等だけを対象とするのではなく、利用者全体を統合的にとらえることで、他の多くの利用者のニーズにも対応し、移動等円滑化につながるものである。図1-2-1に対応し、表1-2-1(第1部の最後に掲載)には先述の対象者ごとに想定される主な特性とニーズの関連をあげた。 注)ここでいう統合(integration)とは、例えば「統合教育」と言う場合、障害のある子も同じ学級、同じ環境で他の児童・生徒と同じように教育を受けることを意味するものであり、移動においては誰もが同じように施設・車両等を使用して移動することである。 A施設・車両等を一体的にとらえる 空間、施設、車両等、設備の一部だけに着目して整備を進めるのではなく、誰もがその全てを利用する可能性があるため、例えば旅客施設であれば、その出入口から車両等に至るまで、すべての移動経路、案内設備、サービス施設等を一体的にとらえて整備する。 8ページ B旅客施設と周辺地域(旅客施設前広場など)を一体的にとらえる 移動の連続性から考えると、旅客施設、車両等と周辺地域(旅客施設と一体となった商業ビル、旅客施設前広場等)を一体的にとらえる必要がある。施設の大規模化や複合化に対応して、旅客施設から連続している商業施設、旅客施設前広場、バス等の乗降場、周辺街区までなど、人々が連続的に移動するエリアを一体的にとらえ、各施設設置管理者や自治体との連携の下、道路、建築物、都市公園等の移動等円滑化とも連携を図り、シームレス(継ぎ目のない状態)に整備する必要がある(図1-2-2)。 図1-2-1 多様な利用者を移動の際に発生しうるニーズに基づいて整理したイメージ図 利用者全体 (内部障害、難病等外見上わからない人も含む) a.「動くこと」に困っている人 ・車椅子を使っている人 ・杖を使っている人 ・お年寄り ・妊娠している人  ・子ども ・ベビーカーを押している人 ・大きな荷物を持った人 など b.「見ること」に困っている人 ・全盲の人 ・ロービジョン者 ・お年寄り ・子ども など c.「聞くこと」に困っている人 ・ろう者(全く聞こえない人) ・難聴者(聞こえにくい人) ・お年寄り など d.「伝えること・理解すること」に困っている人 ・日本語になれていない人 ・発声障害のある人 ・知的障害のある人    ・記憶障害のある人 ・言語・読み書きに障害のある人 ・お年寄り ・子ども ・コミュニケーションが苦手な人 など 図1-2-2 旅客施設と周辺地域を一体的・統合的にとらえるイメージ図 9ページ 3.ガイドライン整備の経路・施設配置・情報提供の具体的な考え方 3.1 移動経路確保の考え方 (1)自立的な移動環境の確保 高齢者、障害者等が、可能な限り単独で、健常者と同様の時間、ルート、手段によって移動できるよう、旅客施設、車両等において、連続性のある移動動線を可能な限り最短経路で確保する。 旅客移動について最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化するとともに、主動線が利用できない緊急時等も勘案し、移動等円滑化された経路(以下「移動等円滑化経路」という。)を複数確保することが望ましい(図1-3-1)。 図1-3-1 移動経路確保の基本イメージ (2)移動経路とわかりやすさ 旅客施設においても、車両等においても、高齢者、障害者等すべての人にとって快適でわかりやすい空間とすることが望ましい。 (3)大規模旅客施設等における対応 以下のような場合、移動等円滑化経路を複数確保することが望ましい。 @利用者数の特に多い施設、複数の路線が入る施設、複数の事業者施設が存在する施設 A上記以外の施設においても、利用者数、ピーク時の集中度、医療施設や高齢者、障害者施設が近く高齢者、障害者の利用が多いなど、利用者特性がある程度把握されている場合 B高齢者、障害者等の利用に加え、近年増加しているベビーカー使用者など、利用者層の変化への対応が求められる場合 (4)施設設置管理者間の連携 公共交通機関の乗り継ぎだけでなく、道路空間、隣接建築物等の施設設置管理者との連続的な移動等円滑化経路を確保することが望ましい。 3.2 旅客施設と車両等における施設・設備設置の考え方 (1)トイレ @アクセスしやすいこと 旅客施設においても、車両内においても、トイレはアクセスしやすい場所に配置し、すべての利用者が利用しやすい構造とする。 A多機能トイレの機能の分散配置 多機能トイレへの利用が集中し、車椅子使用者などから使いたい時に使えない場合があることが指摘されている。このため、機能分散の観点から、状況に応じ、多機能トイレに備える設備・機能の一部を、簡易型多機能便房、一般便房へ分散的に配置するなどの方策を図ること。その際には、旅客施設内におけるトイレの設置位置とその有する機能についてわかりやすい案内表示を行うことが必要である。 10ページ Bトイレの複数個所への設置 旅客施設において主要な出入口が複数ある場合、旅客施設が複数に分かれている場合、平面的あるいは立体的に空間が広がっている場合などでは、複数個所へのトイレ設置を検討する。 (2)休憩施設等 休憩施設は、旅客動線等を考慮して必要箇所を把握し、施設全体から見た配置計画、配置数を検討するとともに、高齢者の増加、ベビーカー使用者の増加等、利用者層の将来的な変化も踏まえて計画する。計画にあたっては、高齢者や、持病のある利用者、内部機能障害等、多くの休憩機会が必要な利用者や、注射、服薬などが必要となる場合も考えられるため、トイレとの関連等も含め、休憩施設の機能を勘案する。また、乳児連れの旅客のための施設(授乳室等)の配置も望まれる。 3.3 情報提供の考え方 (1)わかりやすく空間を整備する わかりやすい空間の整備を目標にして、情報コミュニケーションに制約のある人の特性(巻末参考資料「高齢者・障害者等の主な特性」参照)と、各種情報提供設備の特性を考慮し、旅客施設、車両等において、適切な情報の内容、方法、配置等を検討し整備する。 特に情報コミュニケーションの制約が大きいと考えられる障害等について留意事項を整理すると表1-3-1のとおりである。 表1-3-1 特に情報コミュニケーションの制約が大きいと考えられる障害等への留意事項 障害 留意事項の順 視覚障害 音声・音響案内、ロービジョンの人を考慮した視覚表示装置の工夫 色覚異常 情報提供装置、路線図、地図等への色、表示方法の工夫 聴覚障害 主に音声で案内される緊急時情報等の文字情報による素早い提供等 知的障害・発達障害・精神障害 特に緊急時など通常と異なる情報、変化する情報、今後の見通し、代替手段等の利用について、理解しやすい情報提供のありかた、問い合わせへの対応など人的な面も配慮する (2)接近と退出双方向の情報提供 旅客施設及び車両等内において、また、旅客施設と外部とのアクセス(接近)・イグレス(退出)の経路において、高齢者、障害者等の移動を支援するため、見やすく(視覚表示設備の場合)、聞きやすく(音案内設備の場合)、内容がわかりやすい、適切な案内用設備を設置する。 (3)情報提供手段の役割分担 情報量が多い場合には、情報の優先順位に考慮した上で、パンフレット等による情報提供も活用することによって、案内用設備(視覚表示設備、音案内設備)による情報提供を簡潔にすることも検討する。さらに、案内用設備では対応できない高齢者、障害者等への人的な対応も考慮する。 11ページ (4)異常時の情報提供 遅延や運休(欠航)などによる振替輸送の実施など、通常と異なる経路を案内する必要がある場合は、移動等円滑化経路についても前もって把握し、速やかに案内する。 (5)情報提供の方法 視覚表示設備を設置する場合には、漢字やローマ字のほかに、かなによる表示、多言語による表示などより多くの利用者が理解できる方法で情報提供を行う。 (6)音案内に関する考え方 音案内(音声・音響)については、現行ガイドラインで鉄道駅を対象に改札口、エスカレーター、トイレ、プラットホーム上の階段、地下駅地上出入口の各施設の音案内設置について記載している。 実際の音案内は、施設の構造、音質、騒音など周辺環境の影響によって、必要な時に聞こえない、聞こえてもわかりにくい、うるさく感じられる等の問題が生じており、十分にその機能が発揮されていない状況が見受けられる。 本整備ガイドラインでは旅客施設編131ページに参考として、「移動支援用音案内(非音声及び音声案内)に関する計画の考え方」を記載し、音案内の必要性、音案内を整備する上での留意事項と着眼点、音案内の整備のあり方と方向性について現時点での考え方を提示し、音案内を実施する際の音質、音量、音源の位置、音の反射、音案内が伝えるべき情報、暗騒音など周辺環境の対応などいくつかの基本的な論点を挙げて解説した。 4.移動等円滑化整備に関連した連携協力 公共交通機関における移動等円滑化を図るためには、より使いやすい施設、車両等の整備実現のために、公共交通事業者のみならず、国、地方公共団体、その他施設の設置管理者等の関係者が様々な面から互いに連携協力し、総合的かつ計画的に推進していくことが必要である。 また、ハード面での移動等円滑化は、移動等円滑化基準や本整備ガイドラインに基づく整備によって、一定の役割は果たすことができるが、様々なニーズに対応するためには、ハード面の整備とともに人的な対応も移動等円滑化の両輪として行う必要があり、利用者と直接接する業務に従事する要員による移動制約者等への対応や異常時・非常時への備え、利用者へのマナーの広報等も必要である。移動制約者の特性の理解、ニーズを把握するスキル、基本的な介助等の技術、施設・車両等のバリアフリー設備等の知識を習得するための研修が必要である。その際、障害者等移動制約者が研修に参画することが望ましい。また、それらをサポートし相互理解を深めるようなマニュアルやプログラムの整備が必要となる。さらに、施設、車両等の設計、施工、管理などを行う技術的な要員が移動等円滑化の取り組み全般を適切に理解するためにも、事業者内におけるこれら要員相互の積極的な連携協力が重要である。 12ページ 表1-2-1 本整備ガイドラインに示す対象者の主な特性(より具体的なニーズ)の整理 対象者 主な特性(より具体的なニーズ)の順 高齢者 <主として図1-2-1のa、b、cのニーズ> ・階段、段差の移動が困難 ・長い距離の連続歩行や長い時間の立位が困難 ・視覚・聴覚能力の低下により情報認知やコミュニケーションが困難 肢体不自由者 (車椅子使用者) <主として図1-2-1のa、b、dのニーズ> 車椅子の使用により ・階段、段差の昇降が不可能 ・移動及び車内で一定以上のスペースを必要とする ・座位が低いため高いところの表示が見にくい ・上肢障害がある場合、手腕による巧緻な操作・作業が困難 ・脳性まひなどにより言語障害を伴う場合がある など 肢体不自由者 (車椅子使用者以外) <主として図1-2-1のa、b、dのニーズ> 杖、義足・義手、人工関節などを使用している場合 ・階段、段差や坂道の移動が困難 ・長い距離の連続歩行や長い時間の立位が困難 ・上肢障害がある場合、手腕による巧緻な操作・作業が困難 など 内部障害者 <主として図1-2-1のa、dのニーズ> ・外見からは気づきにくい ・急な体調の変化により移動が困難 ・疲労しやすく長時間の歩行や立っていることが困難 ・オストメイト(人工肛門、人工膀胱造設者)によりトイレに専用設備が必要 ・障害によって、酸素ボンベ等の携行が必要 など 視覚障害者 <主として図1-2-1のbのニーズ> 全盲以外に、ロービジョン(弱視)や色覚異常により見え方が多様であることから ・視覚による情報認知が不可能あるいは困難 ・空間把握、目的場所までの経路確認が困難 ・案内表示の文字情報の把握や色の判別が困難 ・白杖を使用しない場合など外見からは気づきにくいことがある 聴覚・ 言語障害者 <主として図1-2-1のc、dのニーズ> 全聾の場合、難聴の場合があり聞こえ方の差が大きいため ・音声による情報認知やコミュニケーションが不可能あるいは困難 ・音声・音響等による注意喚起がわからないあるいは困難 ・発話が難しく言語に障害がある場合があり伝えることが難しい ・外見からは気づきにくい 知的障害者 <主として図1-2-1のdのニーズ> 初めての場所や状況の変化に対応することが難しいため、 ・道に迷ったり、次の行動を取ることが難しい場合がある ・感情のコントロールが困難でコミュニケーションが難しい場合がある ・情報量が多いと理解しきれず混乱する場合がある ・周囲の言動に敏感になり混乱する場合がある ・読み書きが困難である場合がある 13ページ 精神障害者 <主として図1-2-1のdのニーズ> 状況の変化に対応することが難しいため、 ・新しいことに対して緊張や不安を感じる ・混雑や密閉された状況に極度の緊張や不安を感じる ・周囲の言動に敏感になり混乱する場合がある ・ストレスに弱く、疲れやすく、頭痛、幻聴、幻覚が現れることがある ・服薬のため頻繁に水を飲んだりすることからトイレに頻繁に行くことがある ・外見からは気づきにくい 発達障害者 <主として図1-2-1のdのニーズ> ・注意欠陥多動性障害(AD/HD)等によりじっとしていられない、走り回るなどの衝動性、多動性行動が出る場合がある ・アスペルガー症候群等により特定の事柄に強い興味や関心、こだわりを持つ場合がある ・反復的な行動を取る場合がある ・学習障害(LD)等により読み書きが困難である場合がある ・他人との対人関係の構築が困難 など 妊産婦 <主として図1-2-1のaのニーズ> 妊娠していることにより、 ・歩行が不安定(特に下り階段では足下が見えにくい) ・長時間の立位が困難 ・不意に気分が悪くなったり疲れやすいことがある ・初期などにおいては外見からは気づきにくい ・産後も体調不良が生じる場合がある など 乳幼児連れ <主として図1-2-1のaのニーズ> ベビーカーの使用や乳幼児を抱きかかえ、幼児の手をひいていることにより、 ・階段、段差などの昇降が困難(特にベビーカー、荷物、幼児を抱えながらの階段利用は困難である) ・長時間の立位が困難(子どもを抱きかかえている場合など) ・子どもが不意な行動をとり危険が生じる場合がある ・オムツ交換や授乳できる場所が必要 など 外国人 <主として図1-2-1のb、c、dのニーズ> 日本語が理解できない場合は、 ・日本語による情報取得、コミュニケーションが不可能あるいは困難など その他 <主として図1-2-1のa、b、c、dのニーズ> ・一時的なけがの場合(松葉杖やギブスを使用している場合など含む) ・難病、一時的な病気の場合 ・重い荷物、大きな荷物を持っている場合 ・初めての場所を訪れる場合(不案内) など 注:高齢者・障害者等においては、重複障害の場合がある。 14ページ 参考:バリアフリー化された旅客施設のイメージ ・道路から段差なく駅に入ることができる ・駅に入ると駅施設を一望できる ・移動動線がとても短い ・移動動線上にエレベーター・トイレ・乗車券等販売所・待合所・案内所などが並んでいる ・改札口を入るとエレベーター、エスカレーター、階段を一時に視認できる ・改札口からエレベーター、エスカレーター、階段までの距離がほぼ等距離で、それらを任意に選択できる ・駅出入口・改札口・ホーム間の垂直移動が、上り線・下り線とも一度ですむ ・改札内コンコースからホームの様子を一望できる ・ホームから改札口方向を一望できる ・ホームから改札口にいたるエレベーター、エスカレーター、階段を一時に視認できる ・ホームから改札口にいたるエレベーター、エスカレーター、階段までの距離がほぼ等距離で、それらを任意に選択できる ・ホーム上に可動式ホーム柵などの安全措置が施されている ・駅を出るとすぐ近くにバスなど乗り継ぎ交通手段がある 15ページ 参考:本整備ガイドラインにおける基本的な寸法 ■車椅子の寸法(JIS T9201並びにT9203に示された最大寸法) ●車椅子の幅:手動車椅子及び電動車椅子を想定し、70cm ●車椅子の全長:手動車椅子及び電動車椅子を想定し、120cm ■車椅子使用者の必要寸法 ●通過に必要な最低幅:80cm ・出入りに必要な幅は、手動車椅子がハンドリムを手で回転して移動するための動作のスペースを10cmとし、車椅子の幅に加えた80cmが必要。 ・電動車椅子の場合、ハンドリムを手で回転させる動作はないが、障害の程度が手動車椅子使用者よりも重い傾向にあることや操作ボックスの設置場所に対する余裕を見込むと、同じく80cmが必要。 ●余裕のある通過に必要な最低幅:90cm ・余裕のある通過に必要な幅は、手動車椅子がハンドリムを手で回転して移動するための動作のスペースと余裕幅を20cmとし、車椅子の幅を加えた90cmが必要。 ・電動車椅子の場合、ハンドリムを手で回転させる動作はないが、障害の程度が手動車椅子使用者よりも重い傾向にあることや操作ボックスの幅を見込むと、手動車椅子と同じ余裕幅20cmが必要であり、90cmが必要。 ●車椅子の通行に必要な幅:90cm ・車椅子の通行には、車椅子の振れ幅を考慮すると、90cmが必要。 ●車椅子と人のすれ違いの最低幅:135cm ・車椅子と人がすれ違うためには、車椅子の振れ幅と人の寸法を加えた65cmの余裕幅が必要。 ●車椅子と車椅子のすれ違いの最低幅:180cm ・車椅子同士がすれ違うためには、双方の車椅子の通行に必要な余裕幅を確保した180cmが必要。 ●車椅子の回転に必要な広さ:180度回転できる最低寸法:140cm ・市販されている車椅子が切り返しを行わずに180度回転できる必要寸法としては幅140cm、長さ170cmの空間が必要。 ●車椅子の回転に必要な広さ:360度回転できる最低寸法:150cm ・市販されている車椅子が切り返しを行わずに360度回転できる必要寸法としては直径150cmの円空間が必要。 ●電動車椅子の回転に必要な広さ:360度回転できる最低寸法:180cm ・市販されている電動車椅子が切り返しを行わずに360度回転できる必要寸法としては直径180cmの円空間が必要。 ■松葉杖使用者の必要寸法 ●松葉杖使用者が円滑に通行できる幅:120cm 16ページ 参考:本ガイドラインにおける基本的な寸法 ●通過に必要な最低幅 80cm ●余裕のある通過及び通行に必要な最低幅 90cm ●車椅子と人のすれ違いの最低幅 135cm ●車椅子と車椅子のすれ違いの最低幅 180cm ●松葉杖使用者が円滑に通行できる幅 120cm ●車椅子が180度回転できる最低寸法 140cm ●車椅子が360度回転できる最低寸法 150cm ●電動車椅子が360度回転できる最低寸法 180cm (注意)手動車椅子の寸法:全幅70p、全長120pの場合(JIS規格最大寸法) 17ページ 第2部 旅客施設共通ガイドライン 表紙 19ページ 第2部 旅客施設共通ガイドライン 1.移動経路に関するガイドライン @移動等円滑化された経路 考え方 経路については、高齢者、障害者等の移動等円滑化に配慮し、可能な限り単独で、駅前広場や公共用通路など旅客施設の外部から旅客施設内へアプローチし、車両等にスムーズに乗降できるよう、すべての行程において連続性のある移動動線の確保に努めることが必要である。旅客移動について最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化するとともに、主動線が利用できない非常時も勘案し、移動等円滑化された経路を複数確保することが望ましい。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 公共用通路(旅客施設の営業時間内において常時一般交通の用に供されている一般交通用施設であって、旅客施設の外部にあるものをいう。以下同じ。)と車両等の乗降口との間の経路であって、高齢者、障害者等の円滑な通行に適するもの(以下「移動等円滑化された経路」という。)を、乗降場ごとに一以上設けなければならない。 2 移動等円滑化された経路において床面に高低差がある場合は、傾斜路又はエレベーターを設けなければならない。ただし、構造上の理由により傾斜路又はエレベーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター(構造上の理由によりエスカレーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター以外の昇降機であって車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のもの)をもってこれに代えることができる。 3 旅客施設に隣接しており、かつ、旅客施設と一体的に利用される他の施設の傾斜路(第六項の基準に適合するものに限る。)又はエレベーター(第七項の基準に適合するものに限る。)を利用することにより高齢者、障害者等が旅客施設の営業時間内において常時公共用通路と車両等の乗降口との間の移動を円滑に行うことができる場合は、前項の規定によらないことができる。管理上の理由により昇降機を設置することが困難である場合も、また同様とする。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 移動等円滑化された経路  <経路確保の考え方> ◎公共用通路と車両等の乗降口との間の経路であって、高齢者、障害者等の円滑な通行に適するもの(以下「移動等円滑化された経路」という。)を、乗降場ごとに1以上設けなければならない。 ※公共用通路とは、旅客施設の営業時間内において常時一般交通の用に供されている一般交通用施設であって、旅客施設の外部にあるものをいう。 ○公共用通路との出入口と各ホームを結ぶ乗降動線(異なる路線相互の乗り換え経路を含む。)において旅客の移動が最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化する。 20ページ ○移動等円滑化された経路は一般的な経路と同一にすることを原則とする。 ○線路によって地域が分断されている場合など、離れた位置に複数の出入口があり、それぞれの出入口の利用者数が多く、それぞれの出入口からの経路案内が利用者から期待される場合は、その全ての主要出入口から移動等円滑化された経路を確保する。 ○公共用通路との出入口を移動等円滑化した場合には、公共用通路側の施設設置管理者と協議の上、誘導サインの表示内容の共通化及び連続化を図るなど利用者が混乱しないように改札から公共用通路出入口までの移動等円滑化された経路の案内を行う。他の事業者や公共交通機関への乗り換えルートについても同様とする。 ◇他の経路に関しても可能な限り移動等円滑化することが望ましい。 <垂直移動設備の優先順位> ◎移動等円滑化された経路において床面に高低差がある場合は、傾斜路又はエレベーターを設けなければならない。ただし、構造上の理由により傾斜路又はエレベーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター(構造上の理由によりエスカレーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター以外の昇降機であって車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のもの)をもってこれに代えることができる。 ○車椅子使用者による単独利用を考え、垂直移動設備としてエレベーターを設置することを原則とする。 ◎旅客施設に隣接しており、かつ、旅客施設と一体的に利用される他の施設の傾斜路又はエレベーターを利用することにより高齢者、障害者等が旅客施設の営業時間内において常時公共用通路と車両等の乗降口との間の移動を円滑に行うことができる場合は、当該施設の傾斜路又はエレベーターを活用することができる。なお、それら傾斜路又はエレベーターは、本ガイドラインに記載された内容を満たしているものに限る。管理上の理由により昇降機を設置することが困難である場合も、また同様とする。 ○隣接する施設のエレベーター等を活用する場合には当該エレベーターを活用して段差解消を図る旨を十分に案内することとする。 21ページ <明るさの確保> ○移動等円滑化された経路は、高齢者やロービジョン者の移動等円滑化に配慮し、充分な明るさを確保するよう、採光や照明に配慮する。なお、節電時においても通行の安全性が確保できるよう配慮する。 <工事期間中の経路確保の考え方> ○工事等の実施により移動等円滑化された経路が遮断される場合には、次の点に配慮する。 ・工事の実施前から実施完了まで、工事を実施する旨や迂回経路等について案内掲示を行う。 ・誘導サイン・位置サインは工事期間中の経路・設備を示す。 ・移動等円滑化された経路が分断される場合は、移動のやり直しが行われないような位置においてエレベーター等の経路への迂回路を掲示する。ただし、工事範囲などにより困難な場合は、代替的な段差解消措置を講ずるよう配慮する。 ・夜間の利用に配慮し、屋外の移動等円滑化された迂回路等においても充分な明るさを確保するよう照明に配慮する。 ・工事範囲の工事仮設物等により視覚障害者誘導用ブロックが分断される場合には、安全な経路に適切に誘導するため、連続性が保たれるように視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。 ・工事仮設物等を設置する際には、視覚障害者が白杖で感知できないような隙間を設けないよう配慮する。 ・工事期間中は旅客の安全な移動に配慮する。 22ページ 参考2-1-1:複数移動等円滑化された経路を確保している旅客施設(鉄軌道駅)の事例 <大規模ターミナル駅の例(JR東日本 東京駅)> ・エレベーターの設置により、各方面(丸の内側・八重洲側)からの移動等円滑化された経路を確保している。 注)上図は最新状況とは限りません。 出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団「らくらくおでかけネット」ホームページ 23ページ <地下駅の例(札幌市交通局 大通駅)> ・地上へのエレベーターが2箇所あり、ホームまでの移動等円滑化された経路を確保。一部のホームについて複数経路が確保されている。(ただし、一部改札からの経路について未対応となっている。) 注)上図は最新状況とは限りません。 出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団「らくらくおでかけネット」ホームページ 24ページ <郊外中規模駅 橋上駅の例(東武鉄道 東上線 つきのわ駅)> ・南北が分断された橋上駅舎において、南北駅前広場それぞれから改札階へのエレベーターが設置され、2方向からホームまでの移動等円滑化された経路を確保している。 注)上図は最新状況とは限りません 出典:東武鉄道ホームページ <郊外中規模駅 交差する他鉄道路線により分断された駅の例(京王電鉄 京王稲田堤駅)> ・交差する他鉄道路線により分断されている北口・南口の2方面・改札口からホームへの移動等円滑化された経路が確保されている。 注)上図は最新状況とは限りません 出典:京王電鉄ホームページ 25ページ A公共用通路との出入口 考え方 公共用通路との出入口については、高齢者、障害者等の移動等円滑化に配慮し、駅前広場や公共用通路など旅客施設の外部からアプローチしやすく、かつ、わかりやすい配置とする。 特に、車椅子使用者等が遠回りすることがないよう、一般的な動線上の出入口を移動円滑化するよう配慮する。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 4 移動等円滑化された経路と公共用通路の出入口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 二 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。   ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。  三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 公共用通路との出入口の幅  ◎車椅子使用者の動作に対する余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、有効幅80cm以上とすることができる。 ◇車椅子使用者同士のすれ違いを考慮し、有効幅180cm以上とすることが望ましい。 段の解消  ◎車椅子使用者が通過する際に支障となる段を設けない。ただし、構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設する。 ○特に、公共用通路と旅客施設の境界部分については、管理区域及び施工区分が異なることによる段が生じないよう、施設設置管理者間の協議により、移動等円滑化された経路の連続性を確保する。 ◇水処理、エキスパンションなどの関係から多少の段差が生じる場合についても、車椅子使用者等の通行の支障にならないよう傾斜路を設ける等により段差が生じないようにすることが望ましい。 26ページ 戸  幅 ◎車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、有効幅80cm以上とすることができる。 開閉構造 ◎自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものとする。 ○1以上の戸は自動式の引き戸とする。 ○自動開閉装置は、車椅子使用者や視覚障害者の利用を考慮し、押しボタン式を避け、感知式とする等、開閉操作の不要なものとする。その場合には、戸の開閉速度を高齢者、障害者等が使いやすいよう設定する(開閉速度は、開くときはある程度速く、閉じるときは遅いほうがよい。)。ただし、人通りが多い場合はその限りではない。 ◇手動式扉に握り手を設ける場合は、高齢者・障害者等に使いやすい形状とするとともに、周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したものとすることが望ましい。 戸の前後の水平区間 ○戸の前後には、車椅子1台が止まることができるよう120cm以上の長さの水平区間を設ける。 ◇自動式扉でない場合は、車椅子使用者の開閉動作のため車椅子が回転できる150cm以上の長さの水平区間を設けることが望ましい。 構造 ○戸の内部と外部で互いに確認できる構造とする。 ○戸が透明な場合には、衝突防止のため、見やすい高さに横線や模様などをつけて識別できるようにする。 ○戸の下枠や敷居により車椅子使用者の通行の支障となる段を設けない。 床の仕上げ ◎床面は滑りにくい仕上げとする。 溝ふた ○水切り用の溝ふたを設ける場合は、車椅子の車輪や視覚障害者の白杖が落ち込まない構造のものとする。 ひさし ◇車椅子使用者や肢体不自由者、視覚障害者等は傘をさすことが難しいため、屋外に通じる旅客施設の出入口には大きめのひさしを設置することが望ましい。 27ページ 視覚障害者誘導用ブロック  線状ブロックの敷設経路 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 28ページ 参考2-1-2:公共用通路との出入口の例 29ページ B乗車券等販売所、待合所、案内所の出入口 考え方 乗車券等販売所、待合所、案内所の各施設の出入口については、高齢者、障害者等すべての人がアプローチしやすいものとする。 特に車椅子使用者等が遠回りすることがないよう、動線上の出入口を移動円滑化するよう配慮する。 移動等円滑化基準 (乗車券等販売所、待合所及び案内所) 第16条 乗車券等販売所を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 出入口を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。 ロ 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 (1) 幅は、八十センチメートル以上であること。 (2) 高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 ハ ニに掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 ニ 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 2 前項の規定は、待合所及び案内所を設ける場合について準用する。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 出入口の幅 ◎有効幅80cm以上とする。 ○車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。 段の解消 ◎車椅子使用者が通過する際に支障となる段を設けない。ただし、構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設する。 ◇水処理、エキスパンションなどの関係から多少の段差が生じる場合についても、車椅子使用者等の通行の支障にならないよう傾斜路を設ける等により段差が生じないようにすることが望ましい。 戸  幅 ◎有効幅80cm以上とする。 ○車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。  開閉構造 ◎高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のもの(自動式の引き戸等)とする。 ○自動開閉装置を設ける場合は、車椅子使用者や視覚障害者の利用を考慮し、押しボタン式を避け、感知式とする等開閉操作の不要なものとする。また、戸の開閉速度を、高齢者、障害者等が使いやすいよう設定する(開閉速度は、開くときはある程度速く、閉じるときは遅いほうがよい)。ただし、人通りが多い場合はこの限りでない。 ◇構造上やむを得ない場合以外は開き戸としないことが望ましい。また、手動式の引き戸の場合は、フリーストップ機能がついた半自動式にすると利便性が向上する。 ◇手動式扉に握り手を設ける場合は、高齢者・障害者等に使いやすい形状とするとともに、周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したものとすることが望ましい。 30ページ 水平区間 ○戸の前後には、車椅子1台が止まることができるよう120cm以上の長さの水平区間を設ける。 ◇自動式扉でない場合は、車椅子からの開閉動作のため車椅子が回転できる150cm以上の長さの水平区間を設けることが望ましい。 構造 ◎戸の下枠や敷居により車椅子使用者の通行の支障となる段を設けない。ただし、構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設する。 ○戸の内部と外部が確認できる構造とする。 ○戸が透明な場合には、衝突防止のため、見やすい高さに横線や模様などで識別できるようにする。 床の仕上げ ◎床面は滑りにくい仕上げとする。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 参考2-1-3:戸のある乗車券販売所、待合所、案内所の出入口の例 31ページ 参考2-1-4:自動式引き戸の留意点 参考2-1-5:手動式引き戸の留意点  参考2-1-6:手動式開き戸の留意点 32ページ C通路 考え方 高齢者、障害者等すべての人が旅客施設を円滑に移動できるよう、連続性のある動線の確保に努めることが必要である。動線は可能な限り明快で簡潔なものとし、複雑な曲がり角や壁、柱、付帯設備などが突出しないよう配慮する。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、百四十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、通路の末端の付近の広さを車いすの転回に支障のないものとし、かつ、五十メートル以内ごとに車いすが転回することができる広さの場所を設けた上で、幅を百二十センチメートル以上とすることができる。 二 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 五 照明設備が設けられていること。 (通路) 第5条 通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 二 段を設ける場合は、当該段は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものであること。 ロ 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものであること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の仕上げ ◎床の表面は滑りにくい仕上げとする。 幅 ◎有効幅140cm以上とする。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、通路の末端の付近の広さを車椅子の転回に支障のないものとし、かつ、50m以内ごとに車椅子が転回することができる広さの場所を設けた上で、有効幅を120cm以上とする。 ◇車椅子使用者同士のすれ違いを考慮し、有効幅180cm以上とすることが望ましい。 33ページ 戸 幅 ◎有効幅90cm以上とする。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、有効幅80cm以上とする。 開閉構造 ◎高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のもの(自動式の引き戸等)とする。 ○自動開閉装置を設ける場合は、車椅子使用者や視覚障害者の利用を考慮し、押しボタン式を避け、感知式とする等開閉操作の不要なものとする。また、戸の開閉速度を、高齢者、障害者等が使いやすいよう設定する(開閉速度は、開くときはある程度速く、閉じるときは遅いほうがよい)。 ◇手動式扉に握り手を設ける場合は、高齢者・障害者等に使いやすい形状とするとともに、周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したものとすることが望ましい。 段の解消 ◎同一フロアでは段を設けない。ただし、構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は傾斜路を併設する。 ◎段を設ける場合は、踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいことにより段を容易に識別できるものとする。また、段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものとする。 空中突出物 ○原則として床から200cm程度の高さまでの間の空間に天井、壁面からの突出物を設けない。やむを得ず突出物を設ける場合は、視覚障害者が白杖で感知できずに衝突してしまうことがないよう、高さ110cm以上の柵の設置やそれに代わる進入防止措置を講ずる。この場合、床面からの立ち上がり部に隙間を設けず、白杖で容易に柵等を感知できるよう配慮する。 手すり ○歩行に制約のある利用者に配慮して、可能な限り手すりを設置する。また、手すりをたどる経路上に支障となるものを設置しない。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)とする。 高さ ○2段手すりとする場合、床仕上げ面から手すり中心までの高さ:上段H=85cm程度、下段H=65cm程度。 ○一段の手すりとする場合:H=80〜85cm程度。 形状 ○丸状で直径3〜4cm程度とする。 34ページ 材質 ◇冬期の冷たさに配慮した材質とすることが望ましい。 位置 ○手すりを壁面に取り付ける場合は、壁と手すりのあきを5cm程度とする。 端部 ○手すりの端部は、壁面側に巻き込むなど端部が突出しない構造とする。 点字 ○視覚障害者の誘導動線となる通路の手すりには、行き先情報を点字で表示する。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、点字内容を文字で併記する。 ○2段手すりの場合は、上段の手すりに設置する。 ○点字は、はがれにくいものとする。 通路の明るさ ◎コンコースや通路には、照明設備を設ける。 ○高齢者やロービジョン者の移動等円滑化に配慮し、充分な明るさを確保するよう、採光や照明に配慮する。 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロックの敷設経路  点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 35ページ 参考2-1-7:移動等円滑化された経路を構成する通路の例 (コラム1)床面、壁面への配慮事項 ・ロービジョン者は視覚障害者誘導用ブロックを凹凸だけでなく明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)によっても認識しているため、視覚障害者誘導用ブロックの周囲に視覚障害者誘導用ブロックと誤認するような床面装飾模様を施さない配慮が必要。 ・誘導動線と直交するような縞状の模様や床色の塗り分けがあると、ロービジョン者は段差と誤認することがあるため、床面の塗色等の際には配慮が必要。 ・床面と壁面が同色であるとロービジョン者は通路の縁端が視認できないことがあるため、床面と壁面の下部又は全体の輝度コントラストを確保することにより通路の縁端が明確に認識できるようにする配慮が必要。 36ページ 参考2-1-8:空中突出物の留意点 参考2-1-9:手すりの高さの例 参考2-1-10:手すりの位置と形状の例 37ページ 参考2-1-11:手すりの端部の例 38ページ 参考2-1-12:手すりの点字表示(JIS T0921抜粋) 手すりの点字表示は、次のJIS T0921にあわせたものとする。詳細はJIS T0921を参照のこと。 ■点字の間隔 表 点字の間隔(単位mm) * aが2.2mmから2.3mmの場合に限り、qは10.1mmを下限値とすることができる。 表 bとpの関係(単位mm) ■点字の断面形状 表 点字の直径及び高さ(単位mm) 39ページ ■手すりの点字表示例 手すりの点字表示方法は、次による。 ・点字は、手すりの長手方向と平行に表示することが望ましい。 ・点字の行数は、3行以内とする。 ・断面が円形状の手すりで、点字の行数が1行の場合は、点字部分を手すりの真上より少し側壁に表示し、3行の場合は、3行目が手すりの真上になるように表示することが望まし。上部が平面状の手すりの場合は、点字部分が平たん部からはみ出さないように表示する。 40ページ 参考2-1-13:照度設定にあたっての配慮事項 ・ロービジョン者の空間視認性を確保するためには十分な明るさが必要となるが、障害の疾患等によって、照度が低いと「暗すぎて見にくい」レベル、逆に照度が高すぎるために「明るすぎて見にくい」レベルが異なる。また、床面色・壁面色などによりまぶしさや視認性も変化する。今後、ロービジョン者や高齢者の見にくさに応じた適正照度に関する研究が進むことが望まれる。 (参考:岩田三千子「視認における輝度対比と適正照度の関係」−社団法人照明学会「ロービジョンを対象とした視環境計画に関する研究調査委員会報告書」2006年9月) 参考2-1-14:照明計画による空間把握・視認性の向上例 ・コンコースや通路、垂直移動設備、プラットホームなどの各空間・各設備の明るさを十分確保することは重要であるが、照度に限らず照明の配置などに配慮した照明計画が高齢者・ロービジョン者等が安心して安全に円滑に移動するための有効な手段となる。福岡市交通局七隈線の照明計画を以下に紹介する。 七隈線のデザインポリシーである「ヒューマンライン=人に優しく地域に根ざした公共交通機関」に基づき、16駅各駅が建築と一体化し空間に調和することを基本としたデザインに統一され、形態や素材に特徴を持たせた空間を特化させる部位については、その特徴を生かした照明計画としている。 1.標準駅 駅出入り口上屋の照明には、高効率・長寿命・高演色な42wコンパクト型Hf蛍光ランプスポットライトを用い、空間の広がり感と明るさ感を高め、地下空間へ降りる不安感を少なくし、明るく自然な光環境を創出している(平均照度:300lx)。 コンコースの照明は、空間の広がり感を創出するため、壁面と天井面の境に建築と一体化した壁面照明(32wHf蛍光ランプ笠なし器具)を連続的に配置している。また、ベース照明は天井のモジュールに合わせた45wコンパクト形Hf蛍光ランプスクウェア器具を規則的に配置し、行動のポイントとなる部分にダウンライトを記号的に配置することで利用者のスムーズな誘導を助ける役割を果たしている(平均照度:400lx)。 ホーム空間の照明は、32wHf蛍光ランプ(5000K)によるライン照明で平均照度300lx以上を確保し、ホームドア前に設置した35wセラミックメタルハライドランプ(3000K)で足元を明るく特化することで、乗降部をわかりやすくしている。また、明るさ感と広さを創出するため、天井面には間接照明(32wHf蛍光ランプ笠なし器具)を、柱部分には16wコンパクト形Hf蛍光ランプダウンライトを配置している。 2.天神南駅 本駅舎はロービジョン者の視点で安全性、情報性を最大の目的としてデザインされている。32wHf蛍光ランプによる足元の間接照明は白い床を明るく照らし、安全への配慮のほか空間の明るさ感と清潔感に大きく寄与している。また、床にできた光のラインは誘導効果をもたらし、それ以外のベース照明はグレアレス器具(32〜42wコンパクト形Hf蛍光ランプダウンライト)を使い、空間の光要素を減らすことでサインの視認性を高めている。 出典:三村 高志、小林 和夫 「福岡市営地下鉄七隈線駅舎の照明」、照明学会誌、vol.90, No.4(20060401) pp. 193-194       階段脇をわかりやすく示す照明デザイン ホーム乗降位置を示すスポット照明 41ページ D傾斜路(スロープ) 考え方 車椅子使用者に対しては、段を解消する傾斜路(スロープ)の設置が必要である。傾斜路(スロープ)の設置にあたっては、車椅子使用以外の障害者、高齢者、ベビーカー使用者等、すべての利用者が通過しやすい動線上に配置するとともに、幅や勾配は可能な限り余裕のあるものとするよう配慮する。 また、手動車椅子使用者に対しては、長距離や急傾斜の傾斜路利用が困難であることに配慮する。 なお、移動等円滑化基準省令第6条で規定する傾斜路(スロープ)とは階段に代わり、またはこれに併設するものを指す。例えば、構造的にコンコース全体が傾斜状になっているもの、エレベーター等設備前のわずかなレベル差(10cm程度)解消のためのすりつけ部分はこれに含まれない。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 6 移動等円滑化された経路を構成する傾斜路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 幅は、百二十センチメートル以上であること。ただし、段に併設する場合は、九十センチメートル以上とすることができる。 二 勾配は、十二分の一以下であること。ただし、傾斜路の高さが十六センチメートル以下の場合は、八分の一以下とすることができる。 三 高さが七十五センチメートルを超える傾斜路にあっては、高さ七十五センチメートル以内ごとに踏幅百五十センチメートル以上の踊り場が設けられていること。 (傾斜路) 第6条 傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。以下この条において同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 手すりが両側に設けられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 傾斜路の勾配部分は、その接続する通路との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりその存在を容易に識別できるものであること。 四 傾斜路の両側には、立ち上がり部が設けられていること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の仕上げ ◎傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の床の表面は滑りにくい仕上げとする。 42ページ 幅 ◎移動等円滑化された経路を構成する傾斜路の有効幅は120cm以上とする。ただし、段に併設する場合は、有効幅90cm以上とする。 ◇車椅子使用者同士のすれ違いを考慮し、有効幅180cm以上とすることが望ましい。 勾配 ◎移動等円滑化された経路を構成する傾斜路の勾配は1/12以下とする。ただし、傾斜路の高さが16cm以下の場合は、1/8以下とする。 ○屋外では1/20以下とする。 ◇屋内においても1/20以下とすることが望ましい。 踊り場 ◎車椅子使用者が途中で休憩できるよう、高さが75cmを超える移動等円滑化された経路を構成する傾斜路では、高さ75cm以内ごとに踏幅150cm以上の踊り場を設ける。 ◇車椅子使用者が途中で休憩できるよう、屋外では高さ60cm以内ごとに踏み幅150cm以上の踊り場を設けることが望ましい。 端部 ○傾斜路の端部は床に対して滑らかに接する構造とする。 水平区間 ○他の通路と出会う部分に、通路を移動する人と車椅子使用者が衝突しないよう、長さ150cm以上の水平区間を設ける。 ◇車椅子使用者のより円滑な利用を想定し、長さ180cm以上の水平区間を設けることが望ましい。 勾配区間の識別 ◎傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の勾配部分は、その接続する通路との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいことによりその存在を容易に識別できるものとする。 立ち上がり部 ◎傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の両側には壁面又は立ち上がり部を設ける。 ○側面に壁面がない場合は、車椅子の乗り越え防止のため立ち上がり部に高さ35cm以上の幅木状の車椅子当たりを連続して設ける。 手すり ◎傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の両側に手すりを設置する。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)とする。 高さ ○2段手すりとした場合、床仕上げ面から手すり中心までの高さ:上段H=85cm程度、下段H=65cm程度 形状 ○丸形で直径3〜4cm程度とする。 43ページ 材質 ◇冬期の冷たさに配慮した材質とすることが望ましい。 位置 ○手すりを壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを5cm程度とする。 端部 ○手すりの端部は壁面側に巻き込むなど端部が突出しない構造とする。 ○始終端部においては、手すりの水平部分を60cm程度以上とする。 点字 ○視覚障害者を誘導する傾斜路の上段の手すりにスロープの行き先を点字で表示する。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、点字内容を文字で併記する。 ○点字は、はがれにくいものとする。 ひさし ○車椅子使用者や肢体不自由者等は傘をさすことが難しいため、屋外に設置する場合は、屋根又はひさしを設置する。 視覚障害者誘導用ブロック  線状ブロックの敷設経路  点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 44ページ 参考2-1-15:移動等円滑化された経路を構成する傾斜路の例 45ページ 参考2-1-16:勾配区間の識別例 ・傾斜路の存在を容易に識別できるよう、勾配部分と接続する通路・水平部分との輝度コントラストを確保。 ・傾斜路の上端及び下端に接続する通路部に点状ブロックを敷設。 (名古屋鉄道名古屋本線 国府宮駅)       (名古屋鉄道犬山線 徳重・名古屋芸大駅) (コラム2)床面、側壁への配慮事項 ・床面と側壁が同色であるとロービジョン者は通路の縁端が視認できないことがあるため、床面と側壁の下部又は全体の輝度コントラストを確保する等により床の端が明確に認識できるようにする配慮が必要。 46ページ E階段 考え方 階段は、移動時に最も負担を感じる箇所であるため、特に高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、視覚障害者の円滑な利用に配慮する必要がある。特に手すりの高さや階段の滑りにくさ等について配慮が必要であるが、これらはすべての利用者にとっても効果的である。 移動等円滑化基準 (階段) 第8条 階段(踊り場を含む。以下同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 手すりが両側に設けられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 二 手すりの端部の付近には、階段の通ずる場所を示す点字をはり付けること。 三 回り段がないこと。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 踏面の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものであること。 六 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものであること。 七 階段の両側には、立ち上がり部が設けられていること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 八 照明設備が設けられていること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 形式  ◎踏面の形状が一定していないため、回り段は避け、直階段又は折れ曲がり階段とする。 幅  ○有効幅120cm以上とする。 ◇2本杖使用者の利用を考慮し、有効幅150cm以上とすることが望ましい。 手すり ◎手すりを両側に設置する。 ○視覚障害者が階段の勾配を知り、ガイドとして伝って歩くことに配慮し、また、高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者が、上り、下りの両方向において体勢を継続的に安定させながら利用することができるよう、円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)を設置する。 ○階段の幅が400cmを超える場合には、中間にも手すりを設置する。 47ページ 高さ  ○2段手すりとした場合、床仕上げ面から手すり中心までの高さ:上段H=85cm程度、下段H=65cm程度。 形状  ○丸形で直径3〜4cm程度とする。 材質  ◇冬期の冷たさに配慮した材質とすることが望ましい。 位置  ○手すりを壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを5cm程度とする。 端部  ○手すりの端部は、壁面側に巻き込むなど端部が突出しない構造とする。 ○始終端部においては階段の開始部より手前から設置し、手すりの水平部分を60cm程度とする。 点字  ◎視覚障害者のために、手すりの端部の付近には、階段の通ずる場所を示す点字をはり付ける。 ○上記点字は、階段始終端部の点状ブロックの敷設された範囲近くの手すりの端部(水平部分)に表示する。 ○点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、点字内容を文字で併記する。 ○点字は、はがれにくいものとする。 蹴上げ・踏面 寸法  ○蹴上げ:16cm程度以下 踏面:30cm程度以上 参考2-1-19 段鼻  ◎段鼻の突き出しその他つまずきの原因となるものは設けない。 ○蹴込み板を設ける。 踏面の仕上げ  ◎滑りにくい仕上げとする。 輝度コントラスト  ◎踏面の端部(段鼻部)は、全長にわたって周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすることにより、段を容易に識別できるものとする。 参考2-1-21 ○踏面の端部(段鼻部)は、全長にわたって十分な太さ(幅5cm程度)とする。 ○踏面の端部(段鼻部)の色は始まりの段から終わりの段まで統一された色とする。 ○この識別部分は、汚損・損傷しにくいものを用いる。 立ち上がり部 ◎階段の両側には、立ち上がり部を設ける。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 ○側面に壁面がない場合は、5cm程度まで立ち上がり部を設ける。 参考2-1-20 48ページ 階段始終端部の 水平部分  ◇階段の始点、終点は、通路から120cm程度後退させ、平坦なふところ部分をとることが望ましい。 踊り場 ○高さ概ね300cm以内ごとに踊り場を設置する。 ○長さは120cm以上とする。 ○壁側の手すりは連続して設置する。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 明るさ ◎階段には照明設備を設ける。 ○高齢者やロービジョン者等の移動を円滑にするため、十分な明るさを確保するよう採光や照明に配慮する。 階段下 ○視覚障害者が白杖で感知できずに衝突してしまうことがないよう、階段下に十分な高さ(200cm程度の範囲内)のない空間を設けない。やむを得ず十分な高さのない空間を設ける場合は、高さ110cm以上の柵の設置やそれに代わる進入防止措置を講ずる。この場合、床面からの立ち上がり部に隙間を設けず、白杖で容易に柵等を感知できるよう配慮する。 参考2-1-17 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロックの敷設位置 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 49ページ 参考2-1-17:階段下の空間に柵等を設ける例 50ページ 参考2-1-18:階段の例 参考2-1-19:蹴上げ・踏面の例 51ページ 参考2-1-20:踏面端部の例 参考2-1-21:踏面端部(段鼻部)の識別しやすい例 (コラム3)階段、側壁への配慮事項 ・階段と側壁が同色であるとロービジョン者は階段の縁端が視認できないことがあるため、階段と側壁の下部又は全体の輝度コントラストを確保することにより床の端が明確に認識できるようにする配慮が必要。 52ページ F昇降機(エレベーター) 考え方 エレベーターは、車椅子使用者の単独での利用をはじめ、車椅子使用以外の障害者、高齢者、ベビーカー使用者等、すべての利用者に対して有効な垂直移動手段である。このためエレベーターは、すべての利用者が安全に、かつ容易に移動することができるようにきめ細かな配慮が必要である。 エレベーターの配置にあたっては、主動線上から認識しやすい位置に設置し、すべての利用者が容易に利用できるよう配慮する。 また、エレベーターの前には、エレベーター利用以外の旅客の動線と交錯しないようスペースを確保する。なお、利用者動線や車椅子使用者の円滑な移動の観点から、スルー型エレベーターが設置可能な場合は、スルー型エレベーターが望ましい。また、直角二方向出入口型エレベーターの設置は、他の方式のエレベーターの設置が構造上もしくは安全上困難な場合に限定する。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 7 移動等円滑化された経路を構成するエレベーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 かご及び昇降路の出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 二 かごの内法幅は百四十センチメートル以上であり、内法奥行きは百三十五センチメートル以上であること。ただし、かごの出入口が複数あるエレベーターであって、車いす使用者が円滑に乗降できる構造のもの(開閉するかごの出入口を音声により知らせる設備が設けられているものに限る。)については、この限りでない。 三 かご内に、車いす使用者が乗降する際にかご及び昇降路の出入口を確認するための鏡が設けられていること。ただし、前号ただし書に規定する場合は、この限りでない。 四 かご及び昇降路の出入口の戸にガラスその他これに類するものがはめ込まれていること又はかご外及びかご内に画像を表示する設備が設置されていることにより、かご外にいる者とかご内にいる者が互いに視覚的に確認できる構造であること。 五 かご内に手すり(握り手その他これに類する設備を含む。以下同じ。)が設けられていること。 六 かご及び昇降路の出入口の戸の開扉時間を延長する機能を有したものであること。 七 かご内に、かごが停止する予定の階及びかごの現在位置を表示する設備が設けられていること。 八 かご内に、かごが到着する階並びにかご及び昇降路の出入口の戸の閉鎖を音声により知らせる設備が設けられていること。 九 かご内及び乗降ロビーには、車いす使用者が円滑に操作できる位置に操作盤が設けられていること。 十 かご内に設ける操作盤及び乗降ロビーに設ける操作盤のうちそれぞれ一以上は、点字がはり付けられていること等により視覚障害者が容易に操作できる構造となっていること。 十一 乗降ロビーの幅は百五十センチメートル以上であり、奥行きは百五十センチメートル以上であること。 53ページ 十二 乗降ロビーには、到着するかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられていること。ただし、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた時にかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられている場合又は当該エレベーターの停止する階が二のみである場合は、この限りでない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 かごの大きさ  ◇利用者動線や車椅子使用者の円滑な移動の観点から、設置可能な場合は、スルー型エレベーターを設置することが望ましい。また、直角二方向出入口型エレベーターの設置は、他の方式のエレベーターの設置が構造上もしくは安全上困難な場合に限定することが望ましい。 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかごの内法幅は、140cm以上、内法奥行き135cm以上(11人乗り程度)とする。ただし、スルー型や直角二方向出入口型エレベーターで、車椅子使用者が円滑に乗降できる構造と開閉するかごの出入口を音声で知らせる設備が設けられているものにあっては、この限りでない。 ○エレベーター利用者が多く、エレベーター待ちの旅客の滞留がある場合は、かごの内法幅160cm以上、内法奥行き150cm 以上(15人乗り程度)のものとする。ただし、スルー型や直角二方向出入口型エレベーターで、車椅子使用者が円滑に乗降できる構造と開閉するかごの出入口を音声で知らせる設備が設けられているものにあっては、前記寸法によらなくても、15人乗り程度の大きさを備えるものであればよいものとする。 ◇利用者の状況や旅客施設の規模、特性などを考慮し、エレベーター利用者が特に多い場合は、20人乗り以上のエレベーターを導入する。その際、緊急時の対応等に配慮し、可能な箇所には、ストレッチャーを乗せることができる、奥行き(概ね200cm以上)のあるエレベーターを導入することが望ましい。 ◇利用状況を勘案し、エレベーターを複数個所に設置すること等が望ましい。 ○斜行型段差解消機を設置する場合、通常のエレベーターの仕様に準じるものとする。なお、構造上準じることが難しい場合でも、カゴの大きさは、最低でも車椅子使用者と介助者が同時に乗れる大きさとする。 54ページ かご及び昇降口の 出入り口の幅 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターの出入口の有効幅は80cm以上とする。 ◇車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とすることが望ましい。 鏡  ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターにおいて、出入口同方向型(一方向型)のエレベーターには、かご正面壁面又はかご壁面上部に、出入口の状況(特に足元)が把握できるよう、大きさ、位置に配慮して鏡を設置する。(ステンレス鏡面又は安全ガラス等) ○出入口同方向型(一方向型)のエレベーターのかご正面壁面に設置する鏡は、車椅子使用者が後退時に出入口付近(特に足元)を確認できるよう、床上40cm程度から150cm程度までのものとする。 ○スルー型や直角二方向出入口型のエレベーターには、車椅子使用者の利用時の背後の状況(特に足元)が把握できるよう大きさ、形状、位置に配慮して鏡を設置する。(ステンレス鏡面又は安全ガラス等) 参考2-1-24 参考2-1-27 参考2-1-28 外部との連絡 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターは、防犯や事故発生時の安全確保、聴覚障害者の緊急時の対応のため、かご及び昇降路の出入口の戸にガラス等による窓等を設けることにより外部から内部が、内部から外部が見える構造とする。ガラス等による窓等を設置できない場合には、かごの内部から外部を、外部から内部を確認するための映像設備を設ける。外部から内部を確認するための映像設備は、ロビー出入口の上部等、見やすい位置に設置する。 ◇かご外部から、かご内の車椅子使用者や小児、また転倒した旅客が視認できるよう、ガラス窓の下端は床面から50cm程度が望ましい。 ◇聴覚障害者も含めた緊急時への対応に配慮すると、以下のような設備を設けることが望ましい。 ・故障が検知された場合は、故障したことが伝わるよう、自動的にかご内にその旨の表示を行うか、かご内に外部に故障を知らせるための非常ボタンを設ける。 ・かご内に、緊急時に聴覚障害者が外部と連絡を取ることが可能な(緊急連絡を必要としている者が聴覚障害者であることが判別できる)ボタンを設置する。 ・係員に連絡中である旨や係員が向かっている旨を表示する設備を設ける。 参考2-1-23 55ページ 手すり ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内には手すり(握り手その他これに類する設備を含む)を出入口の戸のある側以外の壁面に設ける。 ○高さ80cm〜85cm程度に設置する。 ○握りやすい形状とする。 参考2-1-22 参考2-1-24 表示 表示 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内に、かごの停止する予定の階及びかごの現在位置を表示する装置を設置する。 ◇聴覚障害者が定員超過であることが確認できるよう、かご内操作盤付近の見やすい位置に過負荷の文字表示灯を設置することが望ましい。 ◇表示画面の配色については、参考2-2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の利用者に配慮することが望ましい。 参考2-1-29 音声等 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内に、かごの到着する階並びにかご及び昇降路の出入口の戸の閉鎖を音声で知らせる設備を設ける。 ◇到着階に何があるか(地上出口、改札口等)具体的に音声案内することが望ましい。 ○スルー型エレベーターの場合は、開閉する側の戸を音声で知らせることとする。その際、視覚障害者に配慮した案内内容とする。 参考2-1-30 操作盤 ボタン ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターには、かご及び昇降路の出入口の戸の開扉時間を延長する機能を有したものとする。 ○操作盤のボタンは、指の動きが不自由な利用者も操作できるような押しボタン式とし、静電式タッチボタンは避ける。 ○音と光で視覚障害者や聴覚障害者にもボタンを押したことが分かるものとする。 ◇かご内に設ける操作盤は、視覚障害者で点字が読めない人もボタンの識別ができるよう階の数字等を浮き出させること等により分かりやすいものとすることが望ましい。 ◇ボタンの文字は、周囲との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したものであることが望ましい。 車椅子 対応 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内及び乗降ロビーには、車椅子使用者が円滑に操作できる位置(高さ100cm程度)に操作盤を設置する。 ○かご内に設置する操作盤は、かごの左右に設置する。 ○乗降ロビーに設置される操作盤は、車椅子使用者が操作しやすいように配慮する。 56ページ 点字 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内に設ける操作盤及び乗降ロビーに設ける操作盤のうちそれぞれ1以上は、点字がはり付けられていること等により視覚障害者が容易に操作できる構造とする。 ○かご内操作盤の各操作ボタン(階数、開、閉、非常呼び出し、インターフォン)には、縦配列の場合は左側に、横配列の場合は上側に点字表示を行う。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。 光電安全装置  ○かごの出入口部には、乗客の安全を図るために、戸閉を制御する装置を設ける。高さは、車椅子のフットサポート部分と身体部の両方の高さについて制御できるようにする。なお、機械式セーフティーシューには、光電式、静電式または超音波式等のいずれかの装置を併設する。 管制運転による異常時表示 ○地震、火災、停電時管制運転を備えたエレベーターを設置する場合には、音声及び文字で管制運転により停止した旨を知らせる装置を設ける。 乗降ロビー 広さ  ◎車椅子が回転できる広さ(幅150cm以上、奥行き150cm以上)を確保する。 〇電動車椅子が回転できる広さ(幅180cm以上、奥行き180cm以上)を確保することが望ましい。 ○新設等の場合には、乗降ロビー付近には、下り階段・下り段差を設けない。 ○既存施設であって乗降ロビー付近に下り階段・下り段差が存在する場合には、参考2-1-31(<エレベーターロビー付近の安全空間確保の重要性>)を参考として、その間には十分な広さの空間を設ける。 ◇この場合、利用者の安全を確保する観点から、転落防止ポールの設置等の転落防止策を併せて講ずることが望ましい。 音声 ◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターの乗降ロビーには、到着するかごの昇降方向を音声で知らせる設備を設ける。ただし、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた時にかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられている場合又は当該エレベーターの停止する階が2のみである場合は、この限りでない。 視覚障害者誘導用ブロック 敷設経路 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 57ページ 参考2-1-22:エレベーターの平面の例 参考2-1-23:エレベーターの正面の例 参考2-1-24:エレベーターの断面の例 58ページ 参考2-1-25:大型エレベーター・ストレッチャー対応型エレベーターの例 ・11人乗り(140cm(W)×135cm(D))のエレベーター(スルー型や直角2方向出入口型以外のエレベーター)を電動車椅子使用者が利用する場合には、内部での転回が困難であるためバックにより退出する必要が生ずる。 ・一部の旅客施設では、15人乗り以上、さらには20人乗り以上のストレッチャー対応型エレベーターの設置事例が見られる。このような大型のエレベーターの設置により、緊急時におけるストレッチャー利用や電動車椅子利用時におけるかご内部での転回が可能となる。また、車椅子使用者と他の旅客によるエレベーターの同時利用が可能となる。 ・ストレッチャーの一般的な大きさは全長190cm程度、全幅60cm程度である。 ・安全性・利便性向上、輸送力向上、移動等円滑化の観点から、このような大型エレベーターを設置することが望ましい。また、利用者動線や車椅子使用者が内部で転回することなく利用できる等の観点からスルー型が有効な場合は、その設置を検討する。 参考2-1-26:斜行型段差解消機の例 ○移動円滑化基準に応じたエレベーターの仕様に準じる。構造上準じることが難しい場合は、車椅子使用者と介助者が同時に乗れる大きさとする (コラム4)大型エレベーターを設置せずに複数エレベーターを設置した事例 ・エレベーター利用者が多くても、建物の構造上、大型エレベーターを導入できない箇所もある。ここに紹介する旅客施設では、高速のスルー型11人乗りエレベーターを2基設け、それぞれの待機する階を地上出入口と改札階に分け、乗客の待ち時間を短縮している。 59ページ 参考2-1-27:かご内正面に低い位置まで鏡を設置したエレベーターの例 <福岡市交通局 七隈線エレベーター> 参考2-1-28:直角二方向型エレベーターに設置された凸面鏡の例 ○直角二方向型エレベーターにおいても、背面方向出入口の旅客の利用状況や床等が見やすい設置位置、形状に配慮する。 <京王電鉄 下高井戸駅 直角二方向型エレベーター> 60ページ 参考2-1-29:聴覚障害・ロービジョン者・色覚異常の利用者等に対応したエレベーターかご内の大型文字表示の事例 <液晶画面による輝度コントラストを確保した表示・操作ボタン> ・操作ボタンと液晶表示の文字色に、数字の誤認識が少ないフォントと高い輝度コントラスト(明度差7)を確保した文字表示を採用している。 ・非常時の誘導案内などエレベーターの状況をリアルタイムに液晶表示している。 出典:株式会社日立製作所 <大型文字表示・点滅による表示> 中部国際空港では、操作ボタンのわかりやすさ、音声、文字表示について充実が図られている。 ・満員/地震/停電/火災 ・こちらのドアがひらきます ・係員が向かっています ・しばらくお待ちください ・ドアが開いたら降りてください ・非常ボタンを押してください  等 出典:中部国際空港株式会社「セントレアとユニバーサルデザイン」 61ページ <聴覚障害者に対応したボタンの配置(東京国際空港)> 出典:東京国際空港ターミナル株式会社 62ページ (コラム5)防水機能のあるボタン 屋外にあるエレベーターでは、防水のために押し込むタイプのボタンを設けている場合がある。口径が狭く指先だけで押し込まなければならないものだと、手や指が不自由な利用者にとって不便なため、ボタン回りの丸枠部分を低くするなど操作しやすいボタンであることが望ましい。 参考2-1-30 エレベーターかご内の音声案内の例 <停止する階が2つである場合(国土交通省実証実験結果を踏まえた整備の方向性)> ■表現 ・エレベーターの開扉方向の案内放送は、「乗り口と反対側」など、乗った位置を元にした具体的な文章表現とし、「こちら側」などの音声案内装置の位置を基にした抽象的な文章表現を避ける。 ・直角方向のエレベーターの開扉方向の案内放送は、「乗り口から見て右側」など、乗った位置を基にした具体的な文章表現とする。 ・文章表現は誰でもわかりやすい平易なものとする。 ■タイミング ・エレベーターの開扉方向の案内放送は、できるだけ乗った時と降りる時両方に案内をする。 ・乗った時と降りる時両方の案内が難しい場合は、乗った時に案内をする。 63ページ <停止する階が3つである場合> <下へ移動するときのアナウンス> @2階を出て1階へ行くとき 手前スピーカー 音声なし 奥扉スピーカー 下へ参ります。反対側のドアが開きます A1階に着く直前 手前スピーカー こちらのドアが開きます 奥扉スピーカー 音声なし B1階を出て地階に行くとき 手前スピーカー 1番線ホーム改札階へ参ります。 奥扉スピーカー 音声なし C地階に着く直前 手前スピーカー 地下2階1番線ホーム改札階です。地下2階1番線ホーム改札階です。こちらのドアが開きます。 <上へ移動するときのアナウンス> @地階を出て1階に行くとき 手前スピーカー 上へ参ります。2階は反対側のドアが開きます 奥扉スピーカー 音声なし A1階に着く前 手前スピーカー 1階地上出口です。こちらのドアが開きます。 奥扉スピーカー 音声なし B1階を出て2階へ行くとき 手前スピーカー 2階へ参ります。反対側のドアが開きます 奥扉スピーカー 音声なし C2階に着く直前 手前スピーカー 音声なし 奥扉スピーカー こちらのドアが開きます 64ページ 参考2-1-31 エレベーターロビー付近の安全空間確保の重要性 ○エレベーターロビー付近に下り段差等が近接する等の危険な状況をつくりださないこと ・車椅子使用者は、かご内で転回できない場合には、前進で乗り込み、後退して降りることとなるため、エレベーターを降りた後のロビー空間において車椅子使用者が転回できる空間を確保することが重要である。このため、本整備ガイドラインにおいては、ロビー空間の広さについて、標準的な整備内容として車椅子使用者が転回できるよう150cm以上×150cm以上の空間を確保すること、望ましい整備内容として電動車椅子使用者が転回できるよう180cm以上×180cm以上の空間を確保することを示している。 ・しかし、実際の利用状況を鑑みると、電動車椅子使用者がエレベーターを出入口の左右に避けながら降りることも想定され、出入口の正面方向のみでなく、出入口の左右方向にも十分な広さの空間を確保する必要がある。 ・このような電動車椅子使用者等の利用状況を考慮すると、出入口左右方向に下り段差や下り階段、下りスロープが設置されている場合、電動車椅子使用者等が転倒、転落するおそれがある。同様に、肢体不自由者、高齢者、視覚障害者等をはじめ高齢者、障害者等にとっても、エレベーター出入口付近に下り段差や下り階段、下りスロープが近接することは危険であることに十分留意する必要がある。このため、H19年版ガイドラインには乗降ロビー周辺には段差等を設けない旨の記述を追記した。 <H19年ガイドライン改訂前に起きたX駅での事故事例> @ 事故の発生状況 ・X駅において、電動車椅子使用者がエレベーターに近接する下り階段(2段)から転落し、死亡する事故が発生した。 ・事故現場はエレベーターロビー出入口と下り階段が隣接(出入口端から階段まで38cm)しており、電動車椅子使用者は、エレベーター前の通路で方向転換する際に当該階段より転落した。 【事故発生時の状況】図省略 65ページ A事故後の転落防止策 写真省略 ・事故発生直後、当該階段への転落を防止するため、階段始端部に転落防止ポールが設置された。 ・その後、エレベーターロビー出入口に近接する下り段差部分を嵩上げし、階段始端部の位置を変更することにより出入口左方向にロビー空間を拡大した。 ・また、階段の存在を注意喚起するとともに退出方向を示している。 【階段始端部を変更し、出入口左方向にロビー空間を拡大】 【現在、掲示されている注意喚起案内】 <新設・大規模改良時の配慮事項> 図省略 @電動車椅子が後向きでエレベーターを降りた後、左右に避け、さらに転回できる範囲を確保するため、出入口左右端からそれぞれ十分な広さの範囲(左右端からそれぞれ電動車椅子が転回できる空間の確保を考慮すると180cm程度)には、下り階段・段を設けない。 A正面で転回することも考慮し、正面方向にも十分な広さ(電動車椅子の転回を考慮すると180cm程度)の範囲には下り階段・段を設けない。 B電動車椅子使用者がかご内で転回し前進により降りることができる大型のエレベーター(20人乗り以上等)を設置することや、かご内部で転回することなく利用できるスルー型エレベーターを設置することも有効である。 66ページ <既存施設等において危険な状況が生じている場合の対応方策> @上記空間内(出入口左右端から電動車椅子が転回できる十分な空間)に下り階段・下り段がある場合、転落防止策として、転落防止柵等を設ける。 Aただし、階段において転落防止柵を設けることにより、本整備ガイドラインで定める階段幅120cmや建築基準法で定める階段幅を確保できない場合など構造上転落防止柵を設置できない場合には、当該エレベーターを利用するために必要な各階乗り口位置及びかご内の車椅子使用者に配慮した操作盤近くにおいて注意喚起の掲示を行う(降りた後に下り階段・下り段が近接する位置とともに安全に降りるために転回すべき方向を示す)。 Bなお、旅客施設のエレベーターロビーには、様々な構造が想定されるため、@及びA以外の転落防止策の実施にあたっては、必要に応じて電動車椅子使用者の意見を聞き検討する。 67ページ Gエスカレーター 考え方 高齢者、障害者等による利用を想定すると、乗降ステップの水平区間や速度などに配慮する必要がある。高齢者、障害者等は下り階段を不安に感じる場合があり、上り専用とともに下り専用エスカレーターを設置する配慮が必要である。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 8 移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、第七号及び第八号については、複数のエスカレーターが隣接した位置に設けられる場合は、そのうち一のみが適合していれば足りるものとする。 一 上り専用のものと下り専用のものをそれぞれ設置すること。ただし、旅客が同時に双方向に移動することがない場合については、この限りでない。 二 踏み段の表面及びくし板は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 昇降口において、三枚以上の踏み段が同一平面上にあること。 四 踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段相互の境界を容易に識別できるものであること。 五 くし板の端部と踏み段の色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりくし板と踏み段との境界を容易に識別できるものであること。 六 エスカレーターの上端及び下端に近接する通路の床面等において、当該エスカレーターへの進入の可否が示されていること。ただし、上り専用又は下り専用でないエスカレーターについては、この限りでない。 七 幅は、八十センチメートル以上であること。 八 踏み段の面を車いす使用者が円滑に昇降するために必要な広さとすることができる構造であり、かつ、車止めが設けられていること。 (エスカレーター) 第7条 エスカレーターには、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を音声により知らせる設備を設けなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 方向 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターには、上り専用と下り専用をそれぞれ設ける。ただし、旅客が同時に双方向に移動することがない場合については、この限りでない。 幅 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターの踏み段幅は80cm以上とする。ただし、複数のエスカレーターが隣接した位置に設けられる場合は、そのうち1のみが適合していれば足りるものとする。 ◇踏み段幅100cm(S1000型)程度とすることが望ましい。 68ページ ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、踏み段の面を車椅子使用者が円滑に昇降できるために必要な広さとすることができる構造であり、かつ、車止めが設けられていること。ただし、複数のエスカレーターが隣接した位置に設けられる場合は、そのうち1のみが適合していれば足りるものとする。 踏み段及びくし板表面の仕上げ ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターの踏み段及びくし板の表面は滑りにくい仕上げとする。 識別 踏み段 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、踏み段の端部全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により、踏み段相互の識別をしやすいようにする。 ◇踏み段の端部だけでなく、四方に縁取りを行うなどにより、踏み段相互の識別をしやすいようにすることが望ましい。 くし板 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、くし板の端部と踏み段の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により、くし板と踏み段との境界を容易に識別できるようにする。 昇降口水平部 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターの昇降口の踏み段の水平部分は踏み段3枚以上とする。 手すり ○くし板から70cm程度の移動手すりを設ける。 ○乗降口には、旅客の動線の交錯を防止するため、高さ80〜85cm程度の固定柵又は固定手すりを設置する。 速度 ◇1以上のエスカレーターは30m/分以下で運転可能なものとすることが望ましい。 表示 ◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターにおいて、上り専用又は下り専用のエスカレーターの場合、上端及び下端に近接する通路の床面又は乗り口付近のわかりやすい位置(ゲートポスト等)等において、当該エスカレーターへの進入の可否を示す。ただし、上り専用又は下り専用でないエスカレーターについては、この限りでない。 ◇上り又は下り専用でないエスカレーターについて、当該エスカレーターへの進入の可否を表示することが望ましい。 ○エスカレーターへの進入可否表示の配色については、参考2-2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の利用者に配慮する。 ◇エスカレーターのベルトに、しるしをつけることにより、進行方向がわかるようにすることが望ましい。 69ページ 音声案内 ◎進入可能なエスカレーターの乗り口端部において、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を知らせる音声案内装置を設置する。 ○音声案内装置の設置にあたっては、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい音量、音質とすることに留意し、音源を乗り口に近く、利用者の動線に向かって設置する。 (設置の考え方、具体的な音声案内例は2.A「視覚障害者誘導用案内設備」を参照) 視覚障害者誘導用ブロック 点状ブロックの敷設位置 「視覚障害者誘導案内用設備」(107ページ)参照 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 70ページ 参考2-1-32:エスカレーターの例 71ページ 参考2-1-33:エスカレーター進入可否表示の例 ○床面及び乗り口ポールの低い位置においてエスカレーターへの進入可否を表示。 ※配色については、参考2-2-5を参照。 ○点状ブロックは、点検蓋に接する程度の箇所に奥行き60cm程度で敷設。センサーがある場合はその手前に敷設。横からの進入もある場合は横にも敷設。 (コラム6) エスカレーターでの歩行への注意喚起 ・エスカレーター内で歩行している利用者がいると、高齢者や片側に麻痺がある人、視覚障害者、子連れや介助者を伴っている利用者等にとって、危険を伴うことがあるとともに、思わぬ事故を誘発することもありうる。すべての利用者が安全にエスカレーターを利用するために、十分な注意喚起を促すことが望まれる。そのための案内や掲示が必要である。 エスカレーターの上りと下りの判別に男女の声 ・エスカレーターの上下方向を案内する際に、一部の事業者で見られるような、男女の声を分けて音声案内するなど、分かりやすい工夫が必要である。 72ページ 参考2-1-34:エスカレーターへの誤進入防止の例 ◇エスカレーターの稼動方向がわかる手すりの表示例  手すりへの案内表示により、上下の稼動方向が視認しやすくなっている。 参考2-1-35:踏み段の識別に関する例 ◇四方を縁取りすることで、踏み段の範囲を視認しやすくしている例 73ページ 2.誘導案内設備に関するガイドライン @視覚表示設備 考え方 一般に、視力の低下は40〜50歳ぐらいからはじまり、60歳を超えると急激に低下する、車椅子使用者の視点は一般歩行者よりおよそ40cmほど低い、聴覚障害者は耳から聞く情報は得られないことが多い、日本語のわからない訪日外国人が多いなど、さまざまな利用者が情報コミュニケーションの制約を抱えている。 移動等円滑化をめざす視覚表示設備の整備においては、設備本来の機能を十分に発揮できるようにすることが必要であると同時に、さまざまな情報コミュニケーションの制約を抱える利用者も、共通の設備から情報を得られるように工夫する考え方が必要である。 サインはコミュニケーション・メディアの一種なので、情報・様式・空間上の位置という三つの属性を持つ。視覚表示設備は、見やすさとわかりやすさを確保するために、情報内容、表現様式(表示方法とデザイン)、掲出位置(掲出高さや平面上の位置など)の三要素を考慮することが不可欠である。 さらにサインの情報内容や表現様式、掲出位置を、体系的なシステムとして整備し、また可変式情報表示装置を、状況により変化するニーズに合った情報をタイムリーに表示する方式として整備することが、移動しながら情報を得たい利用者にわかりやすく情報を伝達する基本条件になる。 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備) 第10条 車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (標識) 第11条 エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備(以下「移動等円滑化のための主要な設備」という。)又は次条第一項に規定する案内板その他の設備の付近には、これらの設備があることを表示する標識を設けなければならない。 2 前項の標識は、日本工業規格Z八二一〇に適合するものでなければならない。 (移動等円滑化のための主要な設備の配置等の案内) 第12条 公共用通路に直接通ずる出入口(鉄道駅及び軌道停留場にあっては、当該出入口又は改札口。次項において同じ。)の付近には、移動等円滑化のための主要な設備(第四条第三項前段の規定により昇降機を設けない場合にあっては、同項前段に規定する他の施設のエレベーターを含む。以下この条において同じ。)の配置を表示した案内板その他の設備を備えなければならない。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 74ページ ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 ■サインシステム ●基本的事項 サインの種別 ○サインは、誘導・位置・案内・規制の4種のサイン類を動線に沿って適所に配置して、移動する利用者への情報提供を行う。 ・誘導サイン類:施設等の方向を指示するのに必要なサイン ・位置サイン類:施設等の位置を告知するのに必要なサイン ・案内サイン類:乗降条件や位置関係等を案内するのに必要なサイン ・規制サイン類:利用者の行動を規制するのに必要なサイン 75ページ 表示方法 ○出入口名、改札口名、行先、旅客施設名など主要な用語には、英語を併記する。 ◇地域ごとの来訪者事情により、日本語、英語以外の言語を併記することが望ましい。 ○英語を併記する場合、英訳できない固有名詞にはヘボン式ローマ字つづりを使用する。 ◇固有名詞のみによる英文表示には、ローマ字つづりの後に〜Bridgeや〜Riverなど、意味が伝わる英語を補足することが望ましい。 ◇書体は、視認性の優れたゴシック体とすることが望ましい。 ○文字の大きさは、視力の低下した高齢者等に配慮して視距離に応じた大きさを選択する。 ○掲示位置については、ロービジョン者等に配慮して、可能な限り、接近できる位置、視点の高さに配置する。 ○安全色に関する色彩は、別表2-2-1に示すJIS Z9103:2005による。出口に関する表示は、別表2-2-1に示すJIS Z9103:2005により黄色とする。別表2-2-1 ○高齢者に多い白内障に配慮して、青と黒、黄と白の色彩組み合わせは用いない。 ○サインの図色と地色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により容易に識別できるものとする。 ○色覚異常の利用者に配慮し、参考2-2-5を参考とし見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素毎の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保した表示とする。  留意すべき色の選択例: ・濃い赤を用いず朱色やオレンジに近い赤を用いる。赤を用いる場合は他の色との境目に細い白線を入れると表示が目立ちやすくなる。  見分けにくい色の組み合わせ例: ・「赤と黒」、「赤と緑」、「緑と茶色」、「黄緑と黄色」、「紫と青」、「赤と茶色」、「水色とピンク」の見分けが困難 ・輝度コントラストには敏感であり、同系色の明暗の識別に支障は少ない。 また、路線、車両種別等を色により表示する場合には、文字を併記する等色だけに頼らない表示方法にも配慮する。 ◇サインは、必要な輝度が得られる器具とすることが望ましい。さらに、近くから視認するサインは、まぶしさを感じにくい器具とすることが望ましい。参考2-2-6 ◎エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備(以下「移動等円滑化のための主要な設備」という。)又は公共用通路に直接通ずる出入口の付近に設けられる、移動等円滑化のための主要な設備の配置を表示した案内板その他の設備の付近には、これらの設備があることを表示する標識を設けなければならない。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 76ページ ◎エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備を表示する標識、又は公共用通路に直接通ずる出入口に設けられる、移動等円滑化のための主要な設備の配置を表示した案内板があることを表示する標識(ピクトグラム)は、JIS Z8210に示された図記号を用いる。別表2-2-2 ○上記標識(ピクトグラム)は、JIS Z8210に示された図記号の他、一般案内用図記号検討委員会が策定した標準案内用図記号を活用する。 ◎公共用通路に直接通ずる出入口(鉄道駅及び軌道停留場にあっては、当該出入口又は改札口。以下同じ。)の付近には、移動等円滑化のための主要な設備の配置を表示した案内板その他の設備を備えなければならない。 ◇外光、照明の逆光や光の反射により、見にくくならないよう配慮することが望ましい。また、サインの背景に照明や看板等が位置すること等により、見にくくならないように配慮することが望ましい。 乗換経路等 誘導時の配慮 ○他の事業者や他の公共交通機関への乗り換え経路への誘導にあたっては、エレベーターを利用した経路もわかりやすく表示する。 ◇隣接する他社線、公共空間とは連続的に案内サインが繰り返し配置されることが望ましい。この場合、サイン計画にあたっては、施設設置管理者間で協議調整の上、表示する情報内容を統一し、案内サインがとぎれないよう留意すること。また、関係者が多岐にわたる等の場合においては、協議会等を設置して検討する。 ●誘導サイン・位置サイン 表示する情報内容 ○誘導サイン類に表示する情報内容は、別表2-2-3のうち必要なものとする。 ○誘導サイン類に表示する情報内容が多い場合、経路を構成する主要な空間部位と、移動等円滑化のための主要な設備にかかるものを優先的に表示する。別表2-2-3 ◇移動距離が長い場合、目的地までの距離を併記することが望ましい。 77ページ ○位置サイン類に表示する情報内容は、別表2-2-4のうち移動等円滑化のための主要な設備のほか必要なものとする。別表2-2-4 ○位置サイン類に表示する情報内容が多い場合、移動等円滑化のための主要な設備のほか経路を構成する主要な空間部位を優先的に表示する。 表示面と器具のデザイン ◇誘導サイン類及び位置サイン類はシンプルなデザインとし、サイン種類ごとに統一的なデザインとすることが望ましい。 表示面の向きと掲出高さ ○誘導サイン類及び位置サイン類の表示面は、動線と対面する向きに掲出する。 ○誘導サイン類及び位置サイン類の掲出高さは、視認位置からの見上げ角度が小さく、かつ視点の低い車椅子使用者でも混雑時に前方の歩行者に遮られにくい高さとする。 ○誘導サイン類及び位置サイン類の掲出にあたっては、照明の映り込みがないように配慮する。また、外光、照明の配置により見にくくならないよう配慮する。 ◇動線と対面する向きのサイン2台を間近に掲出する場合、手前のサインで奥のサインを遮らないように、2台を十分離して設置することが望ましい。 配置位置と配置間隔 ○経路を明示する主要な誘導サインは、出入口と乗降場間の随所に掲出するサインシステム全体のなかで、必要な情報が連続的に得られるように配置する。 ○個別の誘導サインは、出入口と乗降場間の動線の分岐点、階段の上り口、階段の下り口及び動線の曲がり角に配置する。 ◇長い通路等では、動線に分岐がない場合であっても、誘導サインは繰り返し配置することが望ましい。 ○個別の位置サインは、位置を告知しようとする施設の間近に配置する。 ●案内サイン 表示する情報内容 ○構内案内図に表示する情報内容は、別表2-2-5のうち移動等円滑化のための主要な設備とする。 ○構内案内図には移動等円滑化された経路を明示する。別表2-2-5 ○旅客施設周辺案内図を設ける場合、表示する情報内容は、別表2-2-6のうち必要なものとする。 ◇ネットワーク運行・運航のある交通機関においては、改札口等に路線網図を掲出することが望ましい。別表2-2-6 表示面と器具のデザイン ◇案内サイン類はシンプルなデザインとし、サイン種類ごとに統一的なデザインとすることが望ましい。 ◇構内案内図や、表示範囲が徒歩圏程度の旅客施設周辺案内図の図の向きは、掲出する空間上の左右方向と、図上の左右方向を合わせて表示することが望ましい。 78ページ 表示面の向きと掲出高さ ◇案内サイン類の表示面は、利用者の円滑な移動を妨げないよう配慮しつつ、動線と対面する向きに掲出することが望ましい。 ◇空間上の制約から動線と平行な向きに掲出する場合は、延長方向から視認できる箇所に、その位置に案内サイン類があることを示す位置サインを掲出することが望ましい。 ○構内案内図、旅客施設周辺案内図、時刻表などの掲出高さは、歩行者及び車椅子使用者が共通して見やすい高さとする。参考2-2-11 ○運賃表を券売機上部に掲出する場合においても、その掲出高さは、券売機前に並ぶ利用者に遮られないように配慮しつつ、車椅子使用者の見上げ角度が小さくなるように、極力低い高さとする。この場合、照明の映り込みが起きないように配慮する。 ○券売機上部に掲出する運賃表の幅は、利用者が券売機の近くから斜め横向きでも判読できる範囲内とする。 ○案内サインの掲出にあたっては、照明の映り込みがないように配慮する。また、外光、照明の配置により見にくくならないよう配慮する。 配置位置と配置間隔 ○構内案内図は、出入口付近や改札口付近からそれぞれ視認できる、利用者の円滑な移動を妨げない位置に配置する。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 ◇乗り換え経路又は乗り換え口を表示する構内案内図は、当該経路が他の経路と分岐する位置にも配置することが望ましい。 ◇旅客施設周辺案内図を設ける場合、改札口など出入口に向かう動線が分岐する箇所に設置することが望ましい。 ◇大規模な旅客施設では、構内案内図などを繰り返し配置することが望ましい。 ◇地下駅等における移動等円滑化された経路上ではない各出入口において、エレベーターが設置されている出入口までを示す位置案内図等を設置し、移動等円滑化された経路への誘導経路を示すことが望ましい。 ■可変式情報表示装置 可変式情報表示装置とは、LEDなどを用いた電子式やフラップなどを用いた機械式の表示方式を用いて、視覚情報を可変的に表示する装置のことをいう。 ◎車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を文字等により表示するための設備を備えなければならない。 79ページ 表示する情報内容 ○平常時に表示する情報内容は、発車番線、発車時刻、車両種別、行先など、車両等の運行(運航)に関する情報とする。 ◇車両等の運行(運航)の異常に関連して、遅れ状況、遅延理由、運転再開予定時刻、振替輸送状況など、利用者が次の行動を判断できるような情報を提供することが望ましい。この場合、緊急時の表示メニューを用意することも有効である。ネットワークを形成する他の交通機関の運行・運航に関する情報も、提供することが望ましい。 ○簡潔かつ分かりやすい文章表現とする。 ◇運休(欠航)・遅延の別や運行(運航)障害発生の原因等の情報を、運休(欠航)が発生した場合、事故等の要因により遅延が発生した場合に提供することが望ましい。 ○異常情報を表示する場合は、フリッカーランプを装置に取り付けるなど、異常情報表示中である旨を継続的に示す。 表示方式  ◇表示方式は、文字等が均等な明るさに鮮明に見える輝度を確保し、図と地の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること、文字を大きくすること等により容易に識別できるものとすることが望ましい。 ○色覚異常の利用者に配慮し、参考2-2-5を参考とし見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素毎の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保した表示とする。参考2-2-5 ◇外光、照明の逆光や光の反射により、見にくくならないよう配慮することが望ましい。また、サインの背景に照明や看板等が位置すること等により、見にくくならないように配慮することが望ましい。 案内放送による提供  ○上述の情報内容は、あわせてアナウンスにて、聞き取りやすい音量、音質、速さで繰り返す等して放送する。 配置位置  ○車両等の運行(運航)用の可変式情報表示装置は、視覚情報への依存度の大きい聴覚障害者を含む多くの利用者が、運行(運航)により乗降場が頻繁に変動する場合に各乗降場へ分流する位置のほか、改札口付近や乗降場、待合室など、視覚情報を得て行動を判断するのに適当な位置に配置する。参考2-2-14 ◇可変式情報表示装置の掲出高さは、誘導サインや位置サイン類と統一することが望ましい。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 80ページ 別表2-2-1:JIS Z9103:2005「安全色・一般的事項」に示されている安全色の表示事項及び使用箇所(サインシステムと関連する内容を抜粋した) 色の区分 色材(注) 意味 使用箇所及び使用例 赤(安全色) A 防火 禁止 停止 − 消火器、非常用電話などを示す防火標識、同様の防火警標、配管系識別、の消火装置 − 防火設備の位置を表示する安全マーキング − 消火器、消火栓、消火バケツ、火災報知器の塗色 − 禁煙、立入禁止などの禁止標識、同様の禁止警標 − 禁止の位置を表示する安全マーキング(立入禁止のバリケード) − 緊急停止のボタン、停止信号旗 B 防火 停止 緊急 − 消火器、消火栓、火災報知器その他の消防用具などの所在を示す色光 − 信号の“停止” − 緊急自動車の使用する赤色灯、緊急停止ボタンの所在を示す色光、緊急事態を通報し又は救助を求めるための発光信号 黄赤(安全色) A 危険 明示 (航海・航空の保安施設) − スイッチボックスの内ふた(蓋)、機械の安全カバーの内面 − 救命いかだ、救命具、救命ブイ、水路標識、船舶けい(繋)留ブイ − 飛行場救急車、燃料車 黄(安全色) A 警告  − 警告標識、警告警標、警告表示 − 危険位置を表示する安全マーキング、火薬類、劇薬類容器のマーキング − 低いはり、衝突のおそれがある柱、床上の突出物、床面の端 − 踏切諸施設の踏切注意さく、踏切遮断機、踏切警報機 明示 − 駅舎、改札口、ホームなどの出口表示 B 注意 − 信号の“注意” 緑(安全色) A 安全状態 進行 − 安全旗及び安全指導標識 − 労働衛生旗及び衛生指導標識 − 保護具箱(ケース)、担架、救急箱、救護室の位置及び方向を示す標識並びに警標 − 非常口の位置及び方向を示す標識、広域避難場所標識 − 安全状態を表示する安全マーキング − 進行信号旗 B 安全状態 進行 − 救急箱、保護具箱(ケース)、担架、救護所、救急箱などの位置を示す色光 − 信号の“進行” 青(安全色) A 指示 誘導 − 保護めがね着用、修理中などを示す指示標識 − 指示を表示する安全マーキング − 駐車場の位置及び方向を示す透過色光による誘導標識 赤紫(安全色) A(再帰性反射体を除く) 放射能 − 放射能標識、放射能警標 − 放射能に関係するマーキング 白(対比色) A 通路 − 通路の区画線及び方向線並びに誘導標識 − 安全標識、警標などの地色、図記号 − 安全マーキング りん光(黄みの白) − 停電時に機能する安全標識、警標、特に避難誘導標識の対比色 黒(対比色) A(蛍光材料及び再帰性反射体を除く) − 安全標識、警標の図記号、警告標識、警告警標の帯状三角形 − 補助標識の文字、境界線 − 安全マーキング 注)色材Aは、一般材料、蛍光材料、再帰性反射体、透過色光を示す。色材Bは、信号灯を示す。 81〜86ページ 別表2-2-2:標準案内用図記号 JIS Z 8210 公共・一般施設 Public Facilities 交通施設Transport Facilities 商業施設Commercial Facilities 観光・文化・スポーツ施設Tourism, Culture, Sport facilities 安全Safety 禁止Prohibition 注意Warning 指示Mandatory (参考)JISZ8210以外の案内用図記号 87ページ 別表2-2-3:誘導サイン類に表示する情報内容 情報内容 情報内容例の順 経路を構成する主要な空間部位 出入口、改札口、乗降場、乗り換え口 移動等円滑化のための主要な設備 エレベーター、トイレ(多機能トイレ等の情報含む)、乗車券等販売所 情報提供のための設備 案内所 アクセス交通施設 鉄軌道駅、バスのりば、旅客船ターミナル、 航空旅客ターミナル、タクシーのりば、レンタカー、駐車場 隣接商業施設 大型商業ビル、百貨店、地下街 別表2-2-4:位置サイン類に表示する情報内容 情報内容 情報内容例の順 経路を構成する主要な空間部位 出入口、改札口、乗降場、乗り換え口 移動等円滑化のための主要な設備 エレベーター、エスカレーター、傾斜路、トイレ(多機能トイレ等の情報含む)、乗車券等販売所 情報提供のための設備 案内所、情報コーナー 救護救援のための設備 救護所、忘れもの取扱所 旅客利便のための設備 両替所、コインロッカー、公衆電話 施設管理のための設備 事務室 別表2-2-5:構内案内図に表示する情報内容 情報内容 情報内容例の順 経路を構成する主要な空間部位 出入口、改札口、乗降場、その間の経路、階段、 乗り換え経路、乗り換え口、移動等円滑化された経路 移動等円滑化のための主要な設備 エレベーター、エスカレーター、傾斜路、トイレ(多機能トイレ等の情報含む)、乗車券等販売所 情報提供のための設備 案内所、情報コーナー 救護救援のための設備 救護所、忘れもの取扱所 旅客利便のための設備 両替所、コインロッカー、公衆電話 施設管理のための設備 事務室 アクセス交通施設 鉄軌道駅、バスのりば、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル、タクシーのりば、レンタカー、駐車場 隣接商業施設 大型商業ビル、百貨店、地下街 88ページ 別表2-2-6:旅客施設周辺案内図に表示する情報内容 情報内容 情報内容例の順 街区・道路・地点  地勢等 山、湾、島、半島、河川、湖、池、堀、港、埠頭、運河、桟橋 街区等 市、区、町、街区 道路 高速道路、国道(国道マークを併記)、都道府県道、有名な通称名のある道路 地点 インターチェンジ、交差点、有名な橋(それぞれ名称を併記) 交通施設 鉄軌道路線、鉄軌道駅、バスのりば、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル、駐車場、地下道出入口・歩道橋 旅客施設周辺の移動等円滑化設備 公衆トイレ、エレベーター、エスカレーター、傾斜路 情報拠点 案内所 観光・ショッピング施設  観光名所 景勝地、旧跡、歴史的建造物、大規模公園、全国的な有名地 大規模集客施設 大規模モール、国際展示場、国際会議場、テーマパーク、大規模遊園地、大規模動物園 ショッピング施設 大型商業ビル、地下街、百貨店、有名店鋪、卸売市場 文化・生活施設 文化施設 博物館・美術館、劇場・ホール・公会堂・会議場、公立図書館 スポーツ施設 大規模競技場、体育館・武道館・総合スポーツ施設 宿泊集会施設 ホテル・結婚式場・葬斎場 行政施設 中央官庁又はその出先機関、都道府県庁、市役所、区役所、警察署、交番、消防署、裁判所、税務署、法務局、郵便局、運転免許試験所、職業安定所、大使館、領事館 医療福祉施設 公立病院、総合病院、大学病院、保健所、福祉事務所、大規模な福祉施設 産業施設 放送局、新聞社、大規模な工場、大規模な事務所ビル 教育研究施設 大学、高等学校、中学校、小学校、大規模なその他の学校、大規模な研究所 89ページ 参考2-2-1:ヘボン式ローマ字つづり ・ヘボン式ローマ字のつづり方は下表のとおりである。 ・備考は昭和29年12月9日付内閣告示第1号の「ローマ字のつづり方、そえがき」及び新村出編『広辞苑第四版』1991の「ローマ字のつづり方、ヘボン式の備考」による。 ・備考2. 4. の符標は、明治18年に羅馬字会(日本の有識者による書き方取調委員会)が発行した『羅馬字にて日本語の書き方』及び昭和21年4月1日付運輸省達第176号の「鉄道掲示規程、修正ヘボン式によるローマ字のつづり方」を参照した。 ・なお現在のヘボン式は、慶応3年にヘボンの提唱したつづり方が先の羅馬字会の提言によって修正されたことから、明治後期から修正ヘボン式と呼ばれ(小泉保『日本語の正書法』1978)、戦後になって標準式あるいは単にヘボン式と呼ばれるようになった経緯がある。 備考 1.はねる音「ン」は n で表わすが、ただし m、b、p の前では m を用いる。 2.はねる音を表わす n と次にくる母音字または y とを切り離す必要がある場合には、 n の次に「-」(ハイフン)を入れる。 3.つまる音は、次にくる最初の子音字を重ねて表わすが、ただし次に chがつづく場合には c を重ねずに t を用いる。 4.長音は母音字の上に「−」(長音符標)をつけて表わす。なお、大文字の場合は母音字を並べてもよい。(注) 5.特殊音の書き表わし方は自由とする。 6.文の書きはじめ、及び固有名詞は語頭を大文字で書く。なお、固有名詞以外の名詞の語頭を大文字で書いてもよい。 注:長音符号は日本独自のもので、国際化されていないため、外国人に理解されない可能性がある。長音符号の使用は事業者や自治体等で対応が 異なる、もしくは使用しない場合があるため表示にあたっては確認が必要。 90ページ 参考2-2-2:角ゴシック体の書体例 ・日本字及びアルファベットの角ゴシック体には、次の例などがある(カッコ内は書体名)。 参考2-2-3:文字の大きさの選択の目安 ・遠くから視認する吊下型等の誘導サインや位置サインなどは20m以上、近くから視認する自立型や壁付型等の案内サインなどは4〜5m以下、案内サインの見出しなどは10m程度に視距離を設定することが一般的である。 ・下表は、前記の想定のもとに各々の視距離から判読できるために通常有効な文字の大きさを示している。 ・遠距離視認用の大きな文字を壁付型などで視点の高さに掲出すれば、ロービジョン者にとっては接近視できるので読みやすい。 ・なお文字高とは、日本字では指定書体の「木」の高さを、アルファベットでは指定書体の「E」の高さをいう。 91ページ 参考2-2-4:図色と地色の明度対比例 ・サインの図色と地色に、下図に示す程度の明度対比を確保すると、容易に識別しやすい。 92ページ 参考2-2-5:色覚異常の人の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ 〜大多数を占める赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)の特徴 ・赤〜緑の波長域において、明度が類似した色の見分けが困難になっている。次図の、黒い実線から右(長波長)側の「赤〜緑の領域」で、色の差が小さくなっている。この範囲では点線を中心に左右の色がほぼ対称に見えていて、「赤と緑」「黄緑と黄色」の差が特に小さくなっている。 ・さらに1型色覚では、最も長波長側の視物質に変異があるため、赤が暗く感じられる。そのため「濃い赤」はほとんど「黒」に見える(ロービジョン者も同じ傾向がある。)。黒背景に赤い文字の電光掲示はほとんど読み取れず、また注意標示や時刻表などの赤が黒と同じに見えてしまう(交通信号機ではこの問題を避けるため、赤信号にはオレンジに近い色を使用している。)。 注)この図版は最も程度の強い人の見え方をシミュレートしたもので、全員がこのように見えるわけではありません。 ・ある色と、それにRGBの赤成分または緑成分を足した色が区別しにくくなる。「紫と青」「緑と茶色」「赤と茶色」などそれぞれの色が同じようにみえてしまう。 ・彩度の低い色どうしも識別が難しく、「水色とピンク」「灰色と淡い水色、淡いピンク、薄緑」などがそれぞれ同じように見える。 ・鮮やかな蛍光色どうしの見分けも苦手で、黄色と黄緑の蛍光ペンや、ピンクと水色の蛍光ペンは、それぞれほとんど同じ色に見える。 ・赤と緑の一方の視物質がない分、色の識別において青視物質に依存する度合いが高いため、青色への感度はむしろ高い面がある。「赤と緑」や「黄色と黄緑」はほとんど同じ色に見えるが、「緑と青緑」は全然違う色に見える(交通信号機ではこれを利用して、緑の信号には青味の強い色を使用している。)。 ・色相(色あい)の見分けが苦手な分、明度や彩度の差にはむしろ敏感であり、同系色の明暗の識別には支障は少ない。 ・ある程度の色は区別できるため、区別できないところにさらに色分けがあるとは考えない傾向がある。そのため色分けがされていること自体に気付かないことがある。 ・一般の人の色覚に合わせて作られた「色名」(色のカテゴリー)に、色覚異常の人はうまく対応できない。そのため、色名が明記されていないと、たとえ色が違うことが分かってもそれぞれの色名が分からず、色名を使ったコミュニケーションが困難になる(これに対応して、近年の国産文房具ではペン軸に色名を明記しているものが増えている。)。 出典:神奈川県「カラーバリアフリー『色づかいのガイドライン』」平成20年(一部加筆) 93ページ ・色覚異常の人が見分けづらい色の組み合わせは、xy色度図の上でほぼ一直線に並ぶ。この線を混同線という。路線図など多くの色を使用する場合も、それぞれの色の範囲内で混同線に乗らないように色合いを微調整し、明度にも差をつけることによって、色覚異常の人にも区別がしやすくなる(色覚シミュレーションソフトを使うと、同じ混同線に乗る色が1つの色に表示されるので、見分けづらい組み合わせを確認できる。)。 出典:秀潤社「細胞工学」誌「色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション」平成14年及び金芳堂「脳21」誌「色覚のタイプによって色はどのように見えるか」平成15年10月(一部加筆) 94ページ (コラム7)「色覚異常の人の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」の一例 (大多数を占める赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)の場合の例) 背景の色と文字やサインの色について ■黒の背景の場合 ・黒背景の上に重要な情報が赤字で表示されていてもその部分は黒く見えてしまい識別できない場合があるので、オレンジに近い赤や、黄色やオレンジを用いると視認しやすくなる。赤を用いる場合には、他の色との境目に細い白線を入れると視認しやすくなる。 ・LED表示は黒背景となるので、赤よりもオレンジ等を用いると視認しやすくなる。 ・白内障の人は青が暗く見える場合があるため、黒背景の上には青よりも水色を用いると視認しやすくなる。 ■色付きの背景の場合 ・濃色の背景の上に別の色で文字やサインを表示すると、色覚異常の人は明度や彩度の差には敏感なので、同系色の濃淡で文字やサインを表示しても視認できる。 文字やサインの表示要素ごとの見分けにくい色の組み合わせについて ■赤と黒 ・黒と対比させる場合はなるべくオレンジか、オレンジに近い赤を用いると視認しやすくなる。 ・注意書きの文章や案内地図の現在位置表示等を赤で表示する場合は、下線を引く又は反転文字により示すといったように、色だけでなく形状でも変化をつけると視認しやすくなる。 ・禁煙、立入禁止等の警告サインは、赤と黒が接するところに細い白縁を入れると視認しやすくなる。 ■赤と緑 ・この組み合わせは識別できない場合があるので、赤と青、もしくは赤と水色を用いると視認しやすくなる。やむを得ず緑を使う場合は、緑ではなく青緑を用いると視認しやすくなる(緊急避難の経路図、トイレの空き・使用中の表示、扉の開・閉、エスカレーター等の進入可・不可、タクシーの空車・乗車など。)。 ・色だけでなく、「空き・使用中」などの文字表示や、「○」「×」「↑」などの記号を用いると視認しやすくなる。 ・表示ランプ等で赤と緑のランプが切り替わるものは識別できない場合があるので、色を変えるのでなく「点灯・消灯」や「点灯・点滅」の方が識別しやすくなる(携帯電話やデジタルカメラの充電状況の表示灯は「赤・緑」から「点灯・消灯」に変更された。)。 ■ピンクと水色 ・この組み合わせは識別できない場合があるので、赤と青を用いると視認しやすくなる。水色を用いる場合は、ピンクを赤紫(マゼンタ)に近い色にすると視認しやすくなる(トイレの男女を示すサインなど。)。 ■黄色と明るい黄緑、オレンジと黄緑 ・この組み合わせは識別できない場合があるので、黄緑のかわりに青みの強い緑や、彩度の低いパステルカラーを用いると視認しやすくなる(案内図の塗り分けなど。)。 ■青と紫 ・この組合せは識別できない場合があるので、やむを得ず青を用いる場合には、赤みの強い赤紫(マゼンタ)を用いると視認しやすくなる。 ■茶色と赤、茶色と緑 ・この組合せは識別できない場合があるので、赤や緑の明度を大きく変えると視認しやすくなる(明るい緑と焦げ茶色、濃い緑と淡く明るい茶色など。)。 ■蛍光色 ・蛍光色どうしを組み合わせると識別できない場合があるので、蛍光色とくすんだ色を組み合わせると視認しやすくなる。 ■電光表示の色 ・光る色の識別は特に難しく、赤・橙・黄・黄緑・緑が全て同じ色に見える場合がある。色の違いによって識別することが必要な場合は、これらのうちなるべく1色を用い、その他色覚異常の利用者にも識別しやすい青緑・青・白等を組み合わせると視認しやすくなる。 95ページ ■路線や列車種別、店舗の種類や施設のゾーン等を色で区別している場合 ・見分けやすい色の組み合わせを選ぶことが望ましいが、従前より情報として用いてきた色を変更することが難しい場合には、以下の配慮を行うことにより、視認しやすくなる。 @同じ色名で表現できる色の中で、色相、明度、彩度を微調整すると視認しやすくなる(色の微調整によって一般の人への印象をあまり変えずに色覚異常の人への視認性を大きく向上できることがある。)。 A色のみに頼るのでなく、文字を併記する、○△×といった形状を変える、ハッチングや紋様を施す、斜体・下線・枠囲み・明暗反転表記を併用することなど形状による識別を追加すると視認しやすくなる。 その他デザインについて ■色名の表記 ・凡例等には、それぞれの色名を明記するとコミュニケーションがとりやすくなる。 ■色面の境界 ・色と色の境界には白または黒の細線で縁取りをすると、違う色で塗られていることが視認しやすくなる。 ■色の面積等 ・面積が広いほど色の違いが分かりやすくなるので、色付きの線は極力太くし、文字は極力太い書体を用いると視認しやすくなる。 ・路線色によって車両等を色分けする場合には、なるべく太い帯状もしくは全体を色分けすると視認しやすくなる。 ・車両等は、他の一般車両と判別しやすい色に明確に塗られていると視認しやすくなる。 ■色指定の統一 ・色覚異常の人は微妙な青みの違いや明度・彩度の違いにはむしろ敏感であるために、一般の人には大体同じように感じられる色が、色覚異常の人には全然違う色に見える場合がある。従って、案内図、壁面・床面等のサイン、パンフレット等の印刷物等で、同じものを示す場合にはそれぞれの色を統一すると視認しやすくなる(色を指定する場合は色名ではなく、カラーチップやCMYK値などで数値的に行うと統一できる。)。 出典:神奈川県「カラーバリアフリー『色づかいのガイドライン』」平成20年及び秀潤社「細胞工学」誌「色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション」平成14年を基に作成 参考2-2-6:輝度からみたサイン器具の考え方 ・サインの見やすさを保つためには、一定の表示面輝度を確保する必要がある。屋内に設置するサインの表示面輝度は1,000cd/u位までは大きいほど文字等が読みやすくなるが、それを超えるとまぶしくて読みづらくなる。なお、LED照明ではこれより低い輝度でまぶしく感じられることがあるため注意が必要。 ・表示面輝度を得る方法に従ってサインの器具を分類すると、照明器具を内蔵した内照式、表示面の外側に照明器具を付設した外照式、室内灯などの一般照明光源を利用した無灯式などに分かれる。 ・視力が低下する高齢者等も考慮に入れると、一般的には、内照式は遠くから見る場合でも必要な輝度を確保しやすいが、近くから見るとまぶしさを感じやすい。外照式はまぶしさを感じにくいが、遠くから見るのに必要な輝度を確保するには内照式の場合より灯具を増やすなどの対策が必要になる。無灯式は採光がある場合は必要な輝度を得やすいが、自然光がないときは一般照明に頼るので輝度不足になりやすい。 96ページ 参考2-2-7:誘導サインと位置サインの表示例 ・ここでは、移動等円滑化のための主要な設備への誘導サイン及びそれぞれの位置サインの表示例を示している。 ・エレベーター・エスカレーター・トイレ・身障者用設備の図記号はすでによく知られているため、図記号のみの表示とした。 ・なおオストメイトの図記号は、JIS Z8210並びに一般案内用図記号検討委員会が策定した「標準案内用図記号」には含まれていない。 注)「男子」「女子」を識別する図記号は、識別性を高めるために、男子に寒色系の色彩を、また女子に暖色系の色彩を用いるのが現実的である。 97ページ ●国際標準化機構(ISO)での標準化(2013年6月)を踏まえ、JIS化が予定されている優先設備のピクトグラム ・ピクトグラムは、杖をついた人、障害のある人・けが人、妊産婦、乳幼児連れ、内部障害者の5つ。 ●エレベーターでの使用例 98ページ 参考2-2-8:遠くから視認するサインの掲出高さの考え方 ・移動している場合、一定の高さ以上にあるものは視野に入りにくい。一般には仰角(水平からの見上げ角度)10°より下が有効視野に入る範囲といわれている。また旅客施設では視認者の前方に視界を遮る他の通行者がいると考えるべきで、その通行者より上が遮蔽するものがない見やすい範囲である。 ・車椅子使用者の視点は低いので、見やすい範囲は通常の歩行者に比べてかなり狭い。従って一定の高さにあるサインを移動しながら視認できる距離は、極端に小さい。 ・図に示すとおり混雑時に前方5mの位置に他の通行者がいると想定すると、車椅子使用者が器具天地50cmのサインを移動しながら視認できる距離は、床面から器具の下端までを2.2m、2.5m、3.0m、4.0mとした場合、それぞれ0.9m、2.0m、3.8m、7.5mとなり、視認が可能な時間に換算すると(移動速度を毎秒1.1mとして計算)それぞれ約0.8秒、1.8秒、3.5秒、6.8秒となる。(通常の歩行者では、掲出高さが2.5mの場合は、視認できる距離は約29.8m、視認が可能な時間は約27秒である。) 99ページ ・視認可能時間が短いと見落とす確率は高まり、情報を得ることが困難になる。 ・このことから、遠くから視認するサインの掲出高さは、視距離に応じた文字の大きさを選択したうえで、視認想定位置から仰角10°より下の範囲内で、極力高くするのが適当である。 注1)野呂影勇編「図説エルゴノミクス」1990(日本規格協会)では、瞬時に特定情報を雑音内より受容できる範囲(有効視野)を、上方約8°と記述している。 注2)下図の人体の寸法は、工業技術院「生命工学工業技術研究所研究報告」1994による。車椅子の座面高はJIS T9201:1987「手動車いす」の中型(400mm)とした。(以下サイン関連参考図共通) 100ページ 参考2-2-9:案内サインの表示例 ・ここでは、地下駅の地上出入口に設置するエレベーター位置案内図、駅構内に設置する駅構内図、駅周辺案内図の表示例を示している。 ●エレベーター位置案内図 ・この図例では、現在地からエレベーターのある出入口までの地上における移動経路のほか、方向感覚が得やすいように、目印となる周辺の施設、主要道路名、至表記などを表示している。 なお、エレベーター位置案内図は、車椅子使用者等、この設備を必要とする人が確実に視認できる位置に設置する。 ●駅構内案内図 ・この図例では、駅の構造をできるだけシンプルに表現するとともに、入場動線、出場動線それぞれに必要とされる移動等円滑化のための主要な設備の位置を図記号を用いて表示している。 ・現在地を赤枠に反転文字を表記して、視認しやすくしている。 ・移動等円滑化経路の表示を他の表示要素と色や形で区別できるようにしている。 ・背景は、表示要素との明度差を確保している。色覚異常の利用者に配慮した色の選択が行われている。 101ページ ●旅客施設周辺案内図 ・この図例では、駅を中心として歩行圏(およそ1.2km四方)を表示している。主要な都市施設の表示には、図記号が用いられている。 資料提供:表示灯(株) 102ページ 色覚異常の利用者に配慮した配色等 ・配色:青みの濃淡に敏感な色覚異常の利用者に配慮し、暖色系だけでなく青みの強い色と青みの少ない色を織り交ぜて使っている。 ・模様:混同しやすい一部の塗り分けの異なるパターンの文様を淡い濃淡で施し、色だけでなく塗り分けパターンでの識別を可能にしている。 ・輪郭:建物や道路には濃色の輪郭、路線の両側には白フチを施し、視認性を向上させている。 ・色名の表記:凡例には色の塗り分けの色名と各路線の路線名を表記し、色覚異常の利用者の色認識に配慮している。 103ページ 参考2-2-10:情報コーナーの表示例 ・ここでは、案内サイン類を集約的に掲出している場所(情報コーナー)を通路の延長方向から見つけやすいように設置する、情報コーナーの位置サインの表示例を示している。 参考2-2-11:近くから視認するサインの掲出高さの考え方 ・対面するものを見る場合、車椅子使用者が見やすい範囲は、立っている人よりおよそ40cmほど下がっている。 ・このことから、近くから見るサインを、立位の利用者と車椅子使用者が共通に見やすい範囲に掲出する際の高さは、床面からサイン表示面の中心までの距離を、双方の視点の中間である135cm程度と考えるのが適当である。 注)下図の通常視野は、日本建築学会編「建築設計資料集成3集」1980(丸善)による。 104ページ 参考2-2-12:運賃表の幅の考え方 ・運賃表の幅は、表示する情報量と必要な文字の大きさの判断に加えて、誤読されない視方角も考慮して設定する必要がある。文献では、視方角が45°以下になると運賃表の誤読率が高まることが指摘されている。 ・利用者は切符を購入する際、金額を未確認のまま券売機に接近しがちなので、この場合運賃表を見る視距離はかなり小さくなる。 ・視方角の限界を考慮すると、運賃表の幅は、視距離を1mと想定する場合は2m程度以内、また2mと想定する場合は4m程度以内になる。 注)野呂影勇編「図説エルゴノミクス」1990(日本規格協会)では、監視用グラフィックパネルの鉄労研のデータから、視方角が45°以下では表示内容の誤読率が増加して好ましくない、と述べている。 105ページ 参考2-2-13:可変式情報表示装置の表示例 遅延、運休などの緊急情報を表示している(東京メトロ)。 ・発車番線、発車時刻、車両種別、行き先を表示している。 ・フルカラーLED表示により色覚異常の人の見え方に配慮した配色を用いている(JR東海)。 *上記表示板において、左図は一般色覚の見え方、右図は色覚異常(2型色覚)の見え方 106ページ 参考2-2-14:可変式情報表示装置の設置例 ・ここでは、改札口に設置する可変式情報表示装置の設置例を示している。 (コラム8)運行(運航)情報の、可変式情報表示装置での情報提供のスピード ・これまでの調査によって、異常時の可変式情報表示装置での文字の表示について、当事者参加による実証実験を行った結果、もっともよいとする意見が同程度あったため、以下の2案が対応の方向性として提案された。 ■緊急時:どのように行動したらよいかがわかる情報を一定程度示す。 A案:緊急時のスクロールは、通常よりも「速い」スピード(5.2 文字/秒程度)とする。 ただし、説明が長く、読み取りにくいなどの場合は、この限りではない。 B案:緊急時のスクロールは原則として「中位」のスピード(2.6 文字/秒程度)とする。 ■運行異常時:発生原因や振替輸送などの代替手段がわかるような情報を一定程度示す。 A案:運行異常時のスクロールは原則として「中位」のスピード(2.6 文字/秒程度)とする。 B案:運行異常時のスクロールは原則として「遅い」スピード(1.7 文字/秒程度)とする。 107ページ A視覚障害者誘導案内用設備 考え方 視覚障害者誘導用ブロックは、現時点では視覚障害者の誘導に最も有効な手段であり、旅客施設の平面計画等を考慮し、歩行しやすいよう敷設することが有効である。敷設にあたっては、あらかじめ誘導動線を設定するとともに、誘導すべき箇所を明確化し、利用者動線が遠回りにならないよう配慮する必要がある。また、視覚障害者誘導用ブロックを感知しやすいよう、周囲の床材の仕上げにも配慮する必要がある。 視覚障害者の誘導手法としては、音声・音響による案内も有効である。 <鉄軌道駅の改札口> 改札口は、鉄道を利用する際の起終点となる場所であるとともに、駅員とコミュニケーションを図り、人的サポートを求めることのできる場所でもあるため、その位置を音響案内で知らせることが重要である。 なお、改札口付近においては駅職員等が勤務していることから、音量、音質、設置位置など騒音とならないよう配慮することが必要となる。 なお、複数事業者が乗り入れている駅等で異なる事業者の改札口が隣接する場合の音響案内については、音声案内を付加すること等により区別できるようにすれば、より利便性が高まる。 <エスカレーター> 視覚障害者のエスカレーター利用にあたっては、位置や進入可否、行き先、上下方向の確認が困難となっている。従って、単独でエスカレーターを利用している視覚障害者の円滑な移動を図るためには、進入可能なエスカレーター(時間帯によって上下方向が変更されるエスカレーターや自動運転エスカレーターを含む)において、音声により、その位置と行き先及び上下方向が分かることが必要である。また、逆方向のエスカレーターへの誤進入を避けるため、進入不可能なエスカレーターにおいては、音声案内を行わないこととする。なお、注意喚起案内を行っているエスカレーターについては、案内のタイミングが重ならないよう配慮することが必要である。 エスカレーターの音声案内については、視覚障害者が環境認知に音源定位を活用していること踏まえ、乗り口を特定しやすいよう、乗り口に近い位置に音源を設置すべきである。また、音声案内を行う場合には、利用者と対面する通路方向に指向性を持たせることが有効となる。 <トイレ> 視覚障害者のトイレ利用においては、設置位置及び男女別の配置を把握することが困難となっている。このため、視覚障害者に対しては、トイレ出入口付近において、位置と男女別が分かる音声案内を行うことが必要である。案内方式としては、設置場所の空間特性に応じて、常時式、人感知式、などの音声案内装置によって実施する。 なお、男子用、女子用、多機能トイレが並列している場合等、視覚障害者誘導用ブロックの誘導箇所によっては、左右の男女トイレの位置を示す音声案内だけではわかりにくい状況も考えられるため、個々の空間状況に応じて、「多機能トイレ」も案内すれば、より利便性が高まる。また、多機能トイレは入口近くに配置されていると利用しやすい。 108ページ <鉄軌道駅のプラットホーム> プラットホームにおいては、視覚障害者に対して列車降車後に出口へ通ずる退出口の方向としての階段位置を知らせるため、階段位置を示す音響案内装置を設置することが必要である。 ただし、複数ホームが並列している駅では、隣接ホームと自ホームとの音源位置の錯誤を防ぐ必要があり、また、音響案内を行うスピーカーの設置にあたっては、空間特性に応じて、音量、設置位置、ホーム長軸方向への狭指向性を十分に検討する必要がある。 なお、視覚障害者のプラットホーム上の歩行については、転落の危険性が高いため、ホームドア、可動式ホーム柵、点状ブロック等による転落防止措置によって安全対策が示されている。 <地下駅の地上出入口> 地下駅の地上出入口については、街路、建物内に設置され、視覚障害者が入口を確認することが困難となっているため、その位置を知らせることが必要とされている。地上出入口部に視覚障害者誘導用ブロックを敷設することとともに、音響案内によって地上出入口の位置を知らせることも有効な案内となる。設置場所については、視覚障害者の利用する施設方面やバスとの乗り換え口など、利用状況を考慮し音響案内の優先度の高い場所とする。 一方、地下駅の地上出入口における音響案内については、周囲への騒音となる可能性があり、道路管理者、周辺の建築物の管理者等との調整も必要となるため、音量制御などにより騒音への対応を図るなどの配慮が必要である。 なお、地下駅の地上出入口と改札口が隣接する場合の音響案内については、音声案内を付加すること等により、区別できるようにすれば、より利便性が高まる。 移動等円滑化基準 (エスカレーター) 第7条 エスカレーターには、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を音声により知らせる設備を設けなければならない。 (階段) 第8条 階段(踊り場を含む。以下同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 手すりの端部の付近には、階段の通ずる場所を示す点字をはり付けること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第9条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 109ページ 2 前項の規定により視覚障害者誘導用ブロックが敷設された通路等と第四条第七項第十号の基準に適合する乗降ロビーに設ける操作盤、第十二条第二項の規定により設けられる設備(音によるものを除く。)、便所の出入口及び第十六条の基準に適合する乗車券等販売所との間の経路を構成する通路等には、それぞれ視覚障害者誘導用ブロックを敷設しなければならない。ただし、前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。 3 階段、傾斜路及びエスカレーターの上端及び下端に近接する通路等には、点状ブロックを敷設しなければならない。  (運行情報提供設備) 第10条 車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (移動等円滑化のための主要な設備の配置等の案内) 第12条 2 公共用通路に直接通ずる出入口の付近その他の適切な場所に、旅客施設の構造及び主要な設備の配置を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備を設けなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 誘導案内の方法 ◎公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成する通路等には、視覚障害者誘導用ブロック(線状ブロック及び点状ブロックで構成)を敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する2以上の設備がある場合であって、当該2以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該2以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 ※音声その他の方法とは、以下に示すような方法を示す。 ・音響音声案内装置:音響または音声で設備等の位置・方向や車両等の運行・運航案内を示すもの ・触知案内図等:点字や触知記号等で設備等の位置や方向を示すもの ・点字表示:点字で経路の行先や運賃等を示すもの ■視覚障害者誘導用ブロック ●基本的事項 線状ブロックの敷設経路 ◎公共用通路との出入口から改札口を経て乗降口に至る経路を構成する通路等に、線状ブロックを敷設する。 ◎上記の経路上から、移動等円滑化のための主要な設備であるエレベーターの乗降ロビーに設ける操作盤、トイレの出入口、乗車券等販売所(券売機を含む)及び触知案内図等(音によるものを除く)へ分岐する経路上にも線状ブロックを敷設する。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する2以上の設備がある場合であって、当該2以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該2以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 110ページ ○上記分岐する経路では、往経路と復経路を別としない。 ○線状ブロックは、構造上やむを得ない場合等を除き、旅客の動線と交錯しないよう配慮し、安全で、できるだけ曲がりの少ないシンプルな道すじに連続的に敷設する。 ○視覚障害者の移動の際に屈曲経路が続くことにより進行方向を錯誤しないよう、短い距離にL字形、クランクによる屈曲部が連続的に配置されないよう配慮する。 ◇他社線旅客施設、公共用通路等と連続した誘導経路となるよう、誘導動線、形状、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)などを統一的連続的に敷設することが望ましい。 ○線状ブロックの敷設は、安全でシンプルな道すじを明示することを優先するとともに、一般動線に沿うことに考慮しつつ可能な限り最短経路により敷設する。また歩行できるスペースが確保できるよう、可能な限り壁面、柱や床置きの什器等から適度に離れた道すじに敷設する。 点状ブロックの敷設位置 ◎点状ブロックは、視覚障害者の継続的な移動に警告を発すべき箇所である階段、傾斜路及びエスカレーターの上端及び下端に近接する通路の、それぞれの位置に敷設する。 ○点状ブロックは、上記のほか、視覚障害者の継続的な移動に警告を発すべき箇所である出入口(戸がある場合)、触知案内図等の前、券売機その他の乗車券等販売所の前、エレベーターの前、待合所・案内所の出入口(戸がある場合)、ホームドア、可動式ホーム柵及び固定式ホーム柵の開口部、ホームの縁端付近及び線状ブロックの分岐位置・屈曲位置・停止位置の、それぞれの位置に敷設する。参考2-2-19 ○ホーム縁端を警告する点状ブロックには、ホームの内方を表示する線状突起(以下、「内方線」という。)を1本追加する(詳細な敷設位置等については、参考2-2-19、3-1-3を参照)。 形状  ○形状については、JIS T9251に合わせたものとする。 ○敷設に当たっては、JIS T9251に規定された突起高さを確保し、確実に検知できるように施工する。 ○プラットホーム縁端警告用内方表示ブロック(点状ブロックと1本の内方線を1組としたものの呼称。以下、「ホーム縁端警告ブロック」という。)の形状については、以下の通りとする。 111ページ ・点状突起の形状および配置はJIS T9251に準じる。 ・内方線の形状はJIS T9251の線状ブロックの線状突起に準じる。 ・内方線と点状突起との中心間隔は原則として9cm程度とする。 ◇JISに相当していないブロックの部分補修を行う場合は、近接したブロックをJISに合わせたブロックに交換することが望ましい。 色彩  ○黄色を原則とする。ただし周辺の床材との対比を考慮して、色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が十分に確保できず、かつ安全で連続的な道すじを明示できない場合はこの限りでない。 材質  ○十分な強度を有し、滑りにくく、耐久性、耐磨耗性に優れたものとする。 ●敷設方法の詳細 公共用通路との境界  ◇公共用通路との境界は、旅客施設内外が連続するように敷設し、色彩や形状の統一に配慮することが望ましい。 改札口  ○改札口への線状ブロックの敷設経路は、有人改札口がある場合は有人改札へ誘導する。 券売機 ○券売機その他の乗車券販売所への線状ブロックの敷設経路は、点字運賃表及び点字表示のある券売機の位置とする。この場合、改札口への線状ブロックの敷設経路からできる限り簡単で短距離となるように分岐する。 ○線状ブロックで誘導される券売機その他の乗車券販売所の前に敷設する点状ブロックの位置は、券売機の手前30cm程度の箇所とする。 ◇上記の券売機その他の乗車券販売所は、改札口に近い券売機その他の乗車券販売所とすることが望ましい。 階段  ○階段への線状ブロックの敷設経路は、手を伸ばせば手すりに触れられる程度の距離を離した位置とする。 ○階段の上端及び下端に近接する通路等に敷設する点状ブロックの位置は、階段の始終端部から30cm程度離れた箇所に全幅にわたって敷設する。 ○踊り場の長さが3.0mを超える場合、踊り場の開始部分及び終了部分において、階段の段から30cm程度離れた箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを敷設する。 ○階段の方向が180度折り返しているなど、方向が変わる踊り場では、踊り場の開始部分及び終了部分において、階段の段から30cm程度離れた箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを敷設する。なお、屈曲部から階段始点までの距離が短く、点状ブロック同士が干渉して判別困難になる場合は、危険を生じないよう敷設方法に配慮する。 112ページ エレベーター  ○エレベーターへの線状ブロックの敷設経路は、点字表示のある乗降ロビー側操作盤の位置とする。 ○エレベーター前に敷設する点状ブロックの位置は、点字表示のある乗降ロビー側操作盤から30cm程度離れた箇所とする。 エスカレーター ○エスカレーター前には、エスカレーター始終端部の点検蓋に接する箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを全幅にわたって敷設する。 傾斜路 ○傾斜路の始終端部から30cm程度離れた箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを敷設する。 ○傾斜路の方向が180度折り返しているなど、方向が変わる踊り場では、踊り場の開始部分及び終了部分において、傾斜路の始終端部から30cm程度離れた箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを敷設する。 トイレ ○トイレへの線状ブロックの敷設経路は、トイレ出入口の壁面にある触知案内図等の位置とする。 ○トイレの触知案内図等の前に敷設する点状ブロックの位置は、触知案内図等から30cm程度離れた箇所とする。 触知案内図等  ○触知案内図等への線状ブロックの敷設経路は、出入口付近又は改札口付近に設置した案内図の正面の位置とする。 ○触知案内図等の前に敷設する点状ブロックの位置は、案内図前端から30cm程度離れた箇所とする。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見やすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 113ページ 参考2-2-15:視覚障害者誘導用ブロックの形状(JIS T9251) <点状ブロックの形状・寸法及び配列> 点状突起を配列するブロック等の大きさは300mm(目地込み)四方以上で、点状突起の数は25 (5×5) 点を下限とし、点状突起を配列するブロック等の大きさに応じて増やす。ただし、このブロック等を並べて敷設する場合は、ブロック等の継ぎ目部分における点状突起の中心間距離をb寸法より10mmを超えない範囲で大きくしてもよい。 注*この寸法範囲でブロック等の大きさに応じて一つの寸法を設定する。 <線状ブロックの形状・寸法及びその配列>  線状突起の本数は4本を下限とし、線状突起を配列するブロック等の大きさに応じて増やす。 備考ブロック等の継ぎ目部分(突起の長手方向)における突起と突起の上辺部での間隔は,30mm以下とする。 114ページ 参考2-2-16:分岐部・屈曲部の敷設方法の例 115ページ 参考2-2-17:ホーム縁端警告ブロックの例 <寸法> ホーム縁端警告ブロックにおける点状突起の数は縦5個以上×横5個以上とする。 点状突起の寸法及び配列、内方線の寸法については、参考2-2-15に示すJIS T9251に準ずる。 一体化したブロックの例 2枚のブロックに分けて敷設する例 116ページ 参考2-2-18:各設備への視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法の例 <券売機> <傾斜路> <トイレ> 117ページ <階段> ■階段の上下端部及び方向が変わらない踊り場における点状ブロック敷設の一例 118ページ ■階段の方向が90度・180度変わる踊り場における点状ブロックの敷設方法例 ・踊り場の空間がある程度広く、もしくは当該踊り場において合流、分岐がある場合には、線状ブロックも敷設した方が利便性が高まる。 119ページ 参考2-2-19:可動式ホーム柵・ホームドアがある場合の開口部のブロック敷設の例 <国土交通省調査結果> ・可動式ホーム柵・ホームドア(以下、この項において「可動式ホーム柵等」という)がある場合の開口部点状ブロックについては被験者全員が必要であるとの回答を得た。また安全面と開口部の検出容易性のいずれの観点においても開口部点状ブロックの奥行きは60cmが好ましいとの回答を得た。 ・長軸方向線状ブロックについては約60%の被験者が必要であると回答を得た。また、長軸方向線状ブロックを敷設する場合の可動式ホーム柵等からの離隔は60cmが好ましいとの回答を得た。 ・開口部点状ブロックと長軸方向線状ブロックの接合部はすべて点状ブロックを敷設するパターンが好ましいとの回答を得た。  出典:国土交通省「視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書」2010をもとに加筆 120ページ ■音声・音響案内 ◎車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を音声により提供するための設備を設けなければならない。 ○音声・音響案内を提供する場合、スピーカーを主要な移動経路に向けて流す。また、スピーカーから流す案内の音量は、その移動経路の適切な地点から確認して、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい大きさとする。 ※「高齢者・障害者配慮設計指針−公共空間に設置する移動支援用音案内」は2013年度にJIS化される予定。 車両等の運行に関する案内 ○車両等の発車番線、発車時刻、行先、経由、到着、通過等のアナウンスは、聞き取りやすい音量、音質、速さで繰り返す等して放送する。 ○同一のプラットホーム上では異なる音声等で番線の違いがわかるようにする。 触知案内図等 音声案内装置 音響案内装置 「A視覚障害者誘導案内用設備 ■触知案内図等及び点字表示」(136ページ)参照 鉄軌道駅の改札口 ○改札口の位置を知らせるための音響案内装置を設置する。ただし、乗換専用改札口はこの限りではない。 ○有人改札口が併設されている場合には、有人改札口に上記音響案内装置を設置する。 エスカレーター ◎エスカレーターの行き先及び上下方向を知らせる音声案内装置を設置する。 ○なお、音声案内装置の設置にあたっては、進入可能なエスカレーターの乗り口端部に設置し、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい音量、音質とすることに留意し、音源を乗り口に近く、利用者の動線に向かって設置する。 トイレ ○視覚障害者誘導用ブロックによって誘導されたトイレ出入口付近壁面において、男女別を知らせる音声案内装置を設置する。 鉄軌道駅のプラットホーム上の階段 ○ホーム上にある出口へ通ずる階段位置を知らせるため、階段始端部の上部に音響案内装置を設置する。ただし、ホーム隙間警告音、列車接近の警告音などとの混同、隣接ホームの音源位置との錯誤によって危険が避けられない場合は、この限りではない。 ○音響案内を行うスピーカーの設置にあたっては、空間特性・周辺騒音に応じて、設置位置、音質、音量、ホーム長軸方向への狭指向性等を十分に配慮し設置する。 121ページ 地下駅の地上出入口 ◇地下駅の1以上の地上出入口において、その位置を知らせる音響案内装置を設置することが望ましい。その際、設置場所及び音量等については、駅の立地特性、周辺状況を踏まえる必要がある。なお、出入口が階段始端部となる場合には、階段区間への設置を避け、階段始端の平坦部の上部に設置する。 音響計画  ◇指向性スピーカー等の活用により、音声・音響案内の干渉・錯綜を避けた音響計画を実施することが望ましい。 参考2-2-20:改札口における音響案内の例 参考2-2-21:改札口における音響案内の標準例 「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響 (具体的な音響づくりについては、参考2-2-29に示す「音案内を行う際の基礎知識」を参照) 参考2-2-22:エスカレーター内蔵スピーカーの例 ・ エスカレーターに設置(内蔵)されたスピーカーは、対面方向に向かって音源が設置されている。 (東京地下鉄東西線行徳駅) 122ページ 参考2-2-23:エスカレーターにおける音声案内の標準例 案内文設定の 考え方 ・案内内容は、行き先方向を端的に短く伝えることが望ましい。冗長な案内はかえって混乱を招くこととなる。 ・乗車動線上であれば「ホーム方面行き」、降車動線上であれば「改札口方面行き」であることを基本とする。 ・案内間隔はできる限り短くすることが望ましい。 音声案内の案内文標準例 標準パターン 「{行き先}{上下方向}エスカレーターです」 コンコースからホームへ向かうエスカレーター ・行き先ホームの路線名などを案内する。また全ての路線名を案内することが煩雑となる場合は番線名を案内する。 「環状線下町方面ホーム行き下りエスカレーターです」 「環状線ホーム行き下りエスカレーターです」 「山手方面ホーム行き上りエスカレーターです」 「港湾線みなとまち方面、環状線山手方面ホーム行き上りエスカレーターです」 「5番線・6番線ホーム行き上りエスカレーターです」 ホームからコンコースへ向かうエスカレーター ・行き先となるコンコースから最寄の主要な改札口を行き先として案内する。 「南口改札方面下りエスカレーターです」 「東口・北口改札方面上りエスカレーターです」 「南口・市営地下鉄乗換改札方面下りエスカレーターです」 通路上途中経路に設置されたエスカレーター ・乗車動線上であれば、「乗り場方面行き」、降車動線であれば「改札口方面行き」を目安として案内を行う。 「環状線乗り場方面下りエスカレーターです」 「乗り場方面下りエスカレーターです」 「南口改札方面下りエスカレーターです」 123ページ 参考2-2-24:トイレでの音声案内装置の例(人感知式) 参考2-2-25:トイレにおける音声案内の標準例 ●男子用・女子用トイレが一体的に設置されている場合 「向かって右が男子トイレ、左が女子トイレです」 ●男子用トイレ、女子用トイレが別々に設置されている場合 男子用トイレ入口:「男子トイレです」 女子用トイレ入口:「女子トイレです」 参考2-2-26:プラットホーム上の階段における音響案内の標準例 鳥の鳴き声を模した音響 視覚障害者用付加装置(交通交差点におけるいわゆる音響信号機)の案内音(音響規格等詳細は警察庁交通局「音響式視覚障害者用交通信号付加装置仕様書」を参照)とは区別する。 (具体的な音響づくりについては、参考2-2-29に示す「音案内を行う際の基礎知識」を参照) 124ページ  参考2-2-27:地下駅地上出入口における音響案内装置の例 参考2-2-28:地下駅地上出入口における音響案内の標準例 「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響 (具体的な音響づくりについては、参考2-2-29に示す「音案内を行う際の基礎知識」を参照) 125ページ 参考2-2-29:音案内を行う際の基礎知識 ここでは、各場所で音案内を設置する際に、全般的に考慮が求められる視覚障害者の特性、音の性質、音量選択の考え方、案内範囲の考え方などを示している。 なお、ここで示した技術仕様は、2013年度発効予定のJIS T0902「高齢者・障害者配慮設計指針―公共空間に設置する移動支援用音案内」と整合している。本文中、*印で示した仕様は、このJISで定めた要求推奨事項である。また、音声以外の可聴音を使用した音案内について、本ガイドラインでは「音響案内」という用語を使用しているが、本JISでは「非音声音案内」という用語を定義している。ここでは「音響(非音声音)案内」と併記する。 1.視覚障害者の音利用特性 (1)視覚障害者の聴覚による環境認知の基礎 音情報は、視覚障害者にとって歩行中の周囲の様子を知るために非常に重要である。 視覚障害者の歩行における聴覚の基本的役割は、車両などの音を発している物体の位置を知る(これを「音源定位」という)だけではなく、壁や柱などの音を発していない構造の位置を反射音などを手がかりに知る(これを「障害物知覚」という)役割も担っている。また、室内の残響の様子などを手がかりに施設の広さや構造を知る役割も果たしている。 一般に視覚障害者は晴眼者に比べて音に敏感であるなどと言われているが、決して視覚障害者が特殊な聴覚を有しているわけではない。上述した聴覚による環境認知の技能は、あくまで訓練や学習によって獲得されたものである。獲得の度合いには個人差があり、一般に中途失明者より先天盲のほうが聴覚による環境認知を高度に修得している。また、中途失明者でも、若い時期に訓練や学習を積む機会があった者ほどしっかり修得している傾向にある。 視覚障害者の歩行における聴覚の役割は、視覚障害者の歩行訓練(Orientation & Mobility)の理論の中である程度体系づけられている。音案内による視覚障害者の誘導を考える際には、必ずその役割を理解した上で、その役割を妨害せずに必要に応じて不足している部分を補うような音響設計を心掛けなければならない。 (2)ランドマークとしての音案内の必要性 晴眼者にとっては「雑音」でしかない音情報が、視覚障害者にとっては「ランドマーク」となっていることが多い。例えば、釣り銭の音で券売機の位置が分かったり、かつての改札のハサミの音が改札口の位置を知る手がかりとなったり、水の音がトイレの位置を知らせていたり、中から聞こえてくる話声で男子トイレか女子トイレかを判断できたりする。また、雑踏の流れによって通路の方向が分かったり、壁からの反射音の変化によって壁の開口部分(つまり施設の出入口)が分かったりする。 しかしながら、これらの音情報は不確定なものであり、状況によっては利用できない場合がある。また、施設内に不必要に大きい騒音や音楽(BGM)が存在する場合は音情報そのものが利用できなくなることがある。さらには、風の強い場所などでは、風の音や気流の影響により音情報が確認しにくくなることもある。 上述のことを踏まえ、視覚障害者が確実に音情報を利用できるようにするためには、不必要な騒音や音楽(BGM)を排除した上で、確定的な音情報を人工的に配置することが望ましい。 126ページ 2.音による案内の考え方 − 音の性質 − (1)音案内に適した周波数や音色の考え方 人間の可聴域は20Hz〜20kHzと言われている。最も感度が高いのは4kHz付近である。なお、通常人間の音声の重要な部分は、ほとんどが5kHz以下の周波数帯域に含まれている。 生活環境に存在する騒音が低周波数優位な雑音であることを考えると、高い周波数の音のほうが環境騒音中では注意を引き、聞き取りやすい。しかし、加齢による聴覚機能の減退を考えると、高齢になるほど低い周波数音のほうが聞き取りやすい。両者を考慮すると、音案内として使用する周波数帯域は、基本周波数(その音の一番低い周波数成分)が100Hz〜1kHzの範囲にあることが必要である*。なお、人間の音声は、男声が100〜150Hz、女声が200〜300Hz、また現在実用化されているチャイムは770Hzと640Hzが使用されており、それぞれ基本周波数の必要条件を満たしている。 また、使用する音は、音源定位の正確さを確保するために、なるべくその周波数帯域(その音を構成する周波数成分の存在する周波数範囲)内にできるだけ多くの周波数成分をもつ音を使用する必要があり*、かつ最高周波数は8kHz以上である必要がある*。純音(単一周波数の音)や狭帯域音は使用してはならない。なお、現在実用化されている音案内(音声・チャイム共)は、最高周波数が約5〜8kHzの範囲となっており、全てが理想的とは言えず今後改善が必要である。 上記のことを踏まえ、具体的な音響(非音声音)案内を設定する際には、以下のことに配慮すると、暗騒音や残響中での音源定位により有効となる。 ・純音(単一周波数の音)は不可とし、広い周波数帯域をもつ音を用いる。最低周波数は100Hz?1kHz、最高周波数は8kHz以上とする必要がある*。また、その周波数帯域内にできるだけ多くの成分を持つ複合音とすることが望ましい*。多くの倍音(その音の基本周波数の整数倍の周波数の音)を含んだ音は利用者にとって音源定位がしやすい音となる。なお、倍音成分を間引き(例えば偶数倍音や高周波成分を削除)するなどして心地よい音色をデザインするケースがあるが、この種類の音は音源定位の性能を確保するために大音量で出力する必要があり、かえって不快感を増す結果となるので好ましくない。 ・音の時間長さは、5秒以下とすることが望ましい*。短い時間長さの音を繰り返すほうが、音の立ち上がりが頻繁に発生するので音源定位がしやすい案内となる。 ・定常音(単一の音色が継続的に流れる音)や単調に減衰する音を使用しても構わないが、もし可能なら周波数ゆらぎ(注1)や振幅ゆらぎ(注2)を持たせることが望ましい*。 ・音の立ち上がりは、0.005秒以下の急峻なものとする*。 ・鳥の鳴き声を模した音響(非音声音)などの「自然現象などから類推できる音」については、実在する自然音と区別できる音にしなければならない*。このため、実際に自然の音を録音したものをそのまま用いることは好ましくない。 ・音の繰り返し頻度は、案内音と次の案内音との間の無音時に利用者が通過してしまうことがないように、無音時間を原則2秒以下にすることが望ましい*。ただし、周辺の利用者、住民、および施設職員に不快感をもたらさないことにも配慮して無音時間を決めるものとする。 ・スピーカは、前述の周波数帯域を再生することが可能な周波数特性をもつものを用いる*。デジタル再生の場合、分解能は8bit以上が必要であり、可能なら16bit以上を用いることが望ましい*。 (注1)周波数ゆらぎ・・・案内音のサイクルの中で、周波数の組み合わせが一定ではなく、多様な周波数の組み合わせが用いられていること (注2)振幅ゆらぎ・・・案内音のサイクルの中で、一定の振幅で推移するのではなく、多様な振幅を持っていること 127ページ (2)音量選択の目安 音案内は視覚障害者にとって重要な情報源である反面、それを必要としない人にとっては騒音に過ぎないことを留意したい。音案内は必要最低限に留めることが重要である。 音のうるささや音による不快感は単純に物理的な音量だけで決まるわけではないが、環境基準では一応の騒音レベルの上限が設けられている。これによると、商工業住居併用地域における騒音は、昼間60dB以下、夜間50dB以下でなければならないとされている(騒音レベルの数値の例は下表1参照)。住居用の地域、及び療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域では、さらにこれより低い上限が設けられている(詳しくは表2参照)。旅客施設内でこの基準を満たすことは難しいが、施設周辺の住宅街などに対しては、音による案内もこの環境基準を満たすことが望まれる。また、基準を満たすだけではなく、周辺住民や近隣で働く人に不快感を与えないよう設定する必要がある。 表1 騒音レベルの数値の例 120db ジェットエンジンの音 100db 電車通過時のガード下 90db 地下鉄車内 80db 騒々しい街頭 60db 会話の音声 50db 静かな住宅街の昼 40db 図書館 30db 静かな住宅街の夜 0db 最小可聴限 表2 環境基準 療養施設、社会福祉施設等地域 昼間50db以下 夜間40db以下 住居地域 昼間55db以下 夜間45db以下 商工業住居併用地域 昼間60db以下 夜間50db以下 音案内の音量は、騒音公害の観点からはなるべく小さいことが望ましいが、その反面、周囲の環境騒音にマスクされずに正しく聞き取れるだけの大きさは確保する必要がある。基本的には、音案内の音圧レベルは、暗騒音の音圧レベルに対して約10dB以上大きいことが必要である*。周囲の環境騒音の騒音レベルは時間帯や曜日によって変化するので、音案内の音量(できれば周囲の騒音に合わせた各周波数成分毎のレベル)もこれに応じて過不足なく調整されることが望ましい。音量調整の具体的方法は、音案内を設置する施設や周辺の音環境の特性に応じて案内音の明瞭性を確保しつつ、かつ周辺住民や近隣で働く人とよく協議した上で周囲の迷惑とならないよう決定することが必要であろう。 (3)音の案内範囲の考え方 ―減衰特性と指向性の考慮― 音案内は、案内が必要な場所にのみ行うことが理想である。不必要な場所での案内は視覚障害者にとってもただの騒音となってしまうばかりか、誤った場所案内をしてしまう可能性があるので注意が必要である。 128ページ 音案内は通常、スピーカーから音を発して行う。原則として、スピーカーの音の放射方向は、利用者の主要な動線の方向を向けることとする*。現在実用化されている音案内機器の中には、施工や外観の都合上、天井や壁にスピーカーを埋め込んで、天井から真下に音を放射したり、壁に垂直に音を放射するものがある。これらは利用者の動線とは関係のない方向に音を放射しているため好ましくなく、今後改善が必要である。 通常のスピーカーから発せられた音は、一般に距離の二乗に反比例して減衰する特性を持つ。遠くまで案内音を届かせようとすると、スピーカーの近隣がうるさくなってしまうので、減衰特性がより緩慢なスピーカー(例えば線音源スピーカーや面音源スピーカーなど)を用いるとよい。 また、通常のスピーカーは広い指向性を持っているので、案内が不要な方向にまで及ぶ場合がある。特定の方向にのみ案内を行う場合には、狭指向性スピーカーを利用することができる。半径2〜3mの近距離範囲にのみ案内を行いたい場合は、通常スピーカーを小音量で用いるか、または狭指向性スピーカーを使用して案内範囲を限定し、不必要に案内音が広範囲に届かないようにする。 スピーカーを設置する高さについては、施設の位置を知らせる観点からは、利用者がアクセスしようとしている対象の位置から音が発せられていることが理想的である。スピーカー設置高さによる特性としては、天井など高過ぎる位置への取り付けは、音の水平方向が分かりにくくなる問題があり、また残響が大きくなる問題もあるため好ましくない。また逆に、床など低い位置にスピーカーを取り付けると混雑時に音源が人の陰に隠れて音案内が不明瞭になる可能性があり、混雑しやすい施設では音案内の明瞭性を十分に検証して取り付ける必要がある。なお、中程度の高さ(1〜2m)では、耳に近い高さとなるため通過時に利用者が大音量を聞かされる可能性があるため、好ましくない。原則として、スピーカーの設置高さは、0.8m以下、または2?3mの範囲である*。 現在一般に、広い範囲まで案内を行う場合は、床から2〜3mくらいの高さにスピーカーが配置されていることが多いようであるが、低い位置に設置されているアクセス対象(例えばエスカレーターなど)の位置関係が掴みにくい欠点がある。今後は可能な限り、アクセス対象と同位置にスピーカーを取り付けることが望ましい。 (4)音案内による利害 音案内は、施設利用者、特に視覚に障害を持つ利用者を対象として行われるものであるが、一方で、音案内を必要としない人にとっては騒音となってしまう可能性があるので注意したい。特に施設の職員など、長時間同じ場所で同じ案内を聞くこととなる人にとっては苦痛となることに留意しなければならない。このようなことを避けるため、不必要な音を避け、先述した音の案内範囲の考え方を踏まえて、音案内を設置することが必要となる。 3.音案内設置上の配慮事項 上記の「音案内を行う際の基礎知識」を踏まえ、本ガイドラインで示されている音案内の設置においては以下の点に配慮する必要がある。また、これらは、公共交通事業者等が、本ガイドラインを超える内容の音案内を設置する際にも十分な配慮が求められる事項である。 ・音響(非音声音)案内については、多くの音色を設定しない。本ガイドラインにおいて音響(非音声音)案内の標準例を示しているのでこれを遵守すること。また、本ガイドラインで定めた以外の方法で音案内を使用すると利用者が混乱するため、極力避けること。さらに、音案内を実施している場所では、騒音や音楽(BGM)など音案内以外の音を極力抑えること。 129ページ ・隣り合う施設(例えば階段と改札口)に同一音の音響(非音声音)案内を設置しない*。 ・案内音の音量設定にあたっては、音案内設置場所の空間特性を考慮し、環境騒音や残響の中でも聞き取れる音量を確保することが望ましい。原則として、環境騒音に対し約10dB以上を確保する*。 ・音源となるスピーカーの向きは、旅客動線上の案内が必要とされる方向に向け*、また、特定方向のみに案内を行う場合は狭指向性スピーカーを利用することが望ましい。 ・音源となるスピーカーの設置高さは、原則0.8m以下または2?3mの範囲*とし、エスカレーターなどのアクセス対象と同位置にスピーカーを取り付けることが望ましい。 ・視覚障害者が音源を特定しやすいよう、可能な限り連続的に案内することが望ましい。音案内の繰返し頻度は、音から次の音までの無音時間2秒以下が原則である*。 ・視覚障害者が僅かな音響的手がかりにも注意を払って生活していることを踏まえ、音案内を設置し音量を調整する段階においては、最初から必要以上に大音量を出力しないことが望ましい。 4.音響(非音声音)案内標準例の選定にあたって 本ガイドラインでは、改札口、プラットホームにおける階段、地下鉄地上出入口の各場所ごとに以下の考え方により音響(非音声音)案内の標準例を示した。 ●改札口:「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響(非音声音) ・既に多くの鉄軌道駅の改札口で導入されている音響(非音声音)案内であり、視覚障害者においても、この音響(非音声音)案内を頼りに改札口の位置を確認している。 ・既に普及している音響(非音声音)案内は、「音案内に適した周波数や音色の考え方」で示した音源定位しやすい配慮事項を満たしているものも多い。しかし中にはデザイン性を重視して配慮事項を満たしていない例も散見されるので、より一層の改善が望まれる。 ●プラットホーム上の階段:鳥の鳴き声を模した音響(非音声音) ・京阪電鉄、南海電鉄のホーム上の階段位置に設置され、視覚障害者からも「聞こうとする者にとって聞き取りやすく、出口方向の確認に頼りとなる」と評価が高いものとなっている。 ・隣接ホームとの音源錯誤を防ぐ上でも、隣接ホーム間で音色を変えることによって工夫を行うことができる(京阪電鉄では隣接ホームで音色を変えている)。 ・具体的な案内音の選定にあたっては、当該旅客施設周辺に生息する本物の鳴き声と区別がつくよう配慮しなければならない。実際の鳴き声を録音したものをそのまま使用することは避けなければならない。 ・既に設置されている鳥の鳴き声の音響(非音声音)案内は、「音案内に適した周波数や音色の考え方」で示した音源定位しやすい配慮事項を満たしているものもあるが、中には高い周波数成分のみで校正されているものも散見されるので、より一層の改善が望まれる。 ・鳥の鳴き声を模した音響(非音声音)を音案内として使用することについては賛否両論があり、今後もガイドラインで継続して推奨するか否か更なる検討が必要である。 130ページ ●地下鉄の地上出入口:「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響(非音声音) ・公営地下鉄の一部の駅地上出入口で導入されている音響(非音声音)案内であり、「ピン・ポーン」の案内音が駅のイメージとして視覚障害者に定着しつつある。 ・改札口との区別が容易につくため、改札口と同一音を示した。 ・既に普及している音響(非音声音)案内の現状は、上記「改札口」の最後の説明参照。 131ページ 参考2-2-30:移動支援用音案内(非音声及び音声案内)に関する計画の考え方 移動支援における「音案内(非音声及び音声案内)に関する計画の考え方」は、音案内の整備計画を立てる場合の考え方、留意点を現時点(2013年)の知見をもとに整理したものである。明瞭に聞こえ、かつ不快感を与えない音案内の実現は、周囲の騒音など旅客施設を取り巻く環境を同時に考慮しないと実現することが難しい課題であるが、利用者にとって少しでも役に立つ音案内を実現するために改善を重ねる必要がある。そのためここに示す考え方が音案内の企画、設計・施工の際の基本的な手順として理解され、整備の際の参考として活用されることを期待したい。 1. 音案内の必要性 (1)音案内の必要性と提供対象 われわれは視覚、聴覚などを通して日常的に様々な情報を取り入れている。特に視覚障害者にとって、音の情報は安全で円滑な移動のために重要である。もちろん、視覚障害者の移動支援(主にオリエンテーション情報)を提供する主要な手段は音案内単独だけではなく触覚表示(視覚障害者誘導用ブロック、点字表示など)等との組み合わせによって実現されるものである。 図1 音案内の提供対象の整理 音案内は視覚障害者を主な対象として設置されるが、視覚障害者以外の利用者の移動に対してもメリットがあると考えられる(図1)。特に今後増加する高齢者にとって、複雑化、多様化する経路の案内や誘導には音案内が有効な支援方法の一つとなると考えられる。そのような観点からも、音案内の設置に際しては多様な人が共通してそれを活用できる配慮が必要である。 132ページ (2)移動の際に役に立つ音 現状の旅客施設で移動の手がかりとして役に立つ音は、主に以下の二つが考えられる。 一つは、本整備ガイドラインで従来から提示している設備の位置や注意を促すための意図的に作り出された音、適切に提供されている自動放送が挙げられる。これらの音はいずれも、音源方向の定位(どこから音が出ているか判断できる)が旅客の誘導に役立ち、音量や設置位置が決まっているため常に安定した移動の手がかりとなる。 もう一つは、鉄道駅であれば列車の走行音、ドアの開閉音、旅客の足音など自然に発生する音であり、環境の状態の把握に役立つものである。音が持つ記号としての意味内容が様々な状況判断に有用であるが、これらの音は常に安定した質を持つものでないため二次的な手がかりとして活用される。 (3)音案内の妨げになる音 音案内を妨げてしまう環境中の音は、主に以下の三つが挙げられる。 一つ目は、旅客施設内外の不適切な案内放送で、例えば過剰に繰り返される放送、音量の大きすぎる放送、音質の悪い放送で、音案内と無関係に長く鳴り続ける音挙げられる。さらに周辺騒音、暗騒音と言われる、商業施設等で流す販売案内放送、BGMなどの誘導案内とは無関係の意図的に作り出された音である。 二つ目は、建築施設の壁面、天井などの材質や構造によって発生する反射音・残響音である。 三つ目は、複数の案内音などが重なることによる影響で、例えば近い周波数帯の音や類似する音が重なることで所定の音案内として聞こえなくなる現象、2つの音が同時に発生した場合に、長い方の音や大きい方の音が他方の音をかき消すマスキング効果等である。 (4)実態把握の必要性 音案内の有効性が損なわれるような状況を認識したうえで、利用者の立場に立った音案内の必要性を整理する必要がある。 すなわち旅客施設の特性と主要な移動経路を想定した場合、利用者にとって音案内が必要な場所・場面、視覚障害者誘導用ブロックや点字・触知図等の触覚と音の両面で対応すべき箇所などの整理が必要である。特に既設の音案内設備における効果の検証は重要である。 こうした利用者ニーズからみた音案内の有効性に関する実態把握は、現状の音案内の提供実態や音案内を妨げる要因の有無の確認を可能にし、音案内の適切性向上を意図した設備施工、運用後の評価、さらに環境改善に資するものである。 2.音案内を整備する上での留意事項と着眼点 (1)重要な3つの視点と5つのキーワード 音案内を考える上で「旅客の行動に合わせた適切な音案内」(文脈)、「音の伝えるべき情報と性能」(内容)、「音案内を行う環境の整備」(音環境)の3つの視点を合わせて考える必要がある。 133ページ 視点1:旅客の行動に合わせた適切な音案内(文脈:context) 移動する人に系統的に必要な情報を伝えるために、音案内が途絶せず連続して提供されること、すなわち”利用文脈(利用の流れ)を考慮した適切な設置”が重要である。途絶には装置の配置による装置間途絶と内容伝達の途絶の二面が考えられるが、必ずしも常に音が聞こえる状態が必須というわけではなく、実際は、視覚障害者誘導用ブロックなど触覚的設備との連動によって途絶を軽減したり、回避されていることも多い。 また、具体的な例では、利用者が頼りにしている自動放送を遮断してしまう手動放送(例えば、自動放送中の係員によるマイクの案内)、他の音源が別の音をかき消してしまう問題などへの対応が求められる。 視点2:音の伝えるべき情報と性能(内容:contents) 音声(言語)音・非音声音の役割分担、注意喚起と具体的な意味内容の伝達、音源定位(音の発生位置を特定する)、旅客の静止時・移動時の聞き取り状況等々を考慮した音の性能基準を考慮する必要がある。すなわち、多義性(1種類の音で複数の意味を持つこと)のある音の誤った場所での使用の回避、伝える内容に適した音の選択など、特に、音の質や種類の適切性を踏まえ、個々の音源を調整・制御する需要と必要性が今後は高まってくる。 視点3:音案内を行う環境の整備(音環境:circumstance) 音案内を行う環境の整備として、”音の総量規制”という概念が必要である。音の総量規制とは、すなわち音案内の背景にある必要性の低い音を制御することであり、空間における音の必要性や発生源をふまえ、全体としての情報量や音量を整理整頓(複数の音が同時に流れて聞き取れない、音が大きすぎてうるさいということを減らす)して、案内したい音が的確に伝わる環境を整えることである。 このために、周辺騒音、暗騒音を下げるための遮音・吸音対策、さらに反射・残響が発生しないような空間づくりが必要であり、特に地下等の遮蔽空間では重要である。そのためには、必要に応じて商業施設等への協力依頼を行うことも考慮する。 一方でどういう環境の時にどういう音の出し方が良いか、空間の複雑さ等に対応した目標値の整理などが今後の研究に求められている。 また、音案内自体については@「統一性」、A「類推性」、B「印象の等価性」、C「了解性」、D「非騒音性」の5つのキーワードが挙げられる。それぞれの意味を以下に示す。 @統一性:設置者、施設が異なる場合でも、同じルールに基づいた音案内が用いられていること。 A類推性:自然現象などとの類似性によって意味を推測しやすくなっていること。また、従来からの普及によって音と事象の関連が推測されやすくなっていること。 B印象の等価性:音自体の物理的特性によって生じるイメージが音サインの意味と大きく相反しないこと。すなわち、危険を伝える音は危険らしさを感じさせるようにする、垂直移動で上下どちらに向かう経路かを音高の変化で示すような例。 C了解性:確実に聞き取ることができ、意味の解釈を誤らないような状態であること。すなわち、明瞭度が十分あり、意味も周知されている状態であること。 D非騒音性:音案内がうるさく感じられてしまうことがないように設定されていること。 134ページ @〜Cについては音案内を活用する人にとっての配慮として重要であり、Dはさらに音案内を直接活用しない周囲の人への配慮も含むものである。 これらの視点とキーワードの関係性(図2)を意識して計画することが重要である。 図2 音案内における3つの視点と5つのキーワード (2)施設規模に応じた音案内の必要性 先にも述べたとおり、地域性や旅客施設の各々の音環境の違いに着目した、環境別対応という考え方が必要になる。施設内及び周辺の騒音の大きさ、騒音発生の頻度、音の反射などの相違から環境を大きく区分けして考え、今までは音案内自体の音量(増大)による対処が主であったが、騒音など音案内以外の音をコントロールする(下げる)対処や案内音の指向性制御の考え方が必要とされてくる。特に、大規模旅客施設で、案内すべき施設が多数存在する場合や暗騒音レベルが終日高い場合などに、音量を大きくしすぎるなどの対応で、結果的に案内の有効性を向上させないまま騒音の大きな状態の環境をつくり出してしまうなど、誤った整備を行わないようにする必要がある。 3.音案内の整備のあり方と方向性 音案内を実施する際は、上記の内容を考慮し以下の手順に沿って行うことが望ましい。 (1)音案内を整備する際の原則 @トータルな立場からのデザイン ・個別の装置に取り付けられている音(報知音、操作音など)、異なる施設から発せられる音を把握し、その場所での音全体を制御することを考える A音案内を行う環境の整備 ・その場所での音を一定の音量以上に大きくしないなど、背景音の制御という考え方に基づき不要な音の削減・暗騒音レベルの低減化を図る B規定以外の使用方法で音案内を用いない ・例えば改札口や地下鉄出入り口以外の場所で「ピンポン」音を使用しないなど (2)音案内を整備する際の計画 @音案内の系統的配置 ・旅客施設の中で音案内が必要な場所を系統的に特定する A意味伝達性の保障 ・適正な案内内容、適正な音の特性を確認する B過度な設備の回避 ・複数の音源が近接して設置されるなどの過度な設備を原因とする音の輻輳によるわかりにくさを回避する 135ページ C他の案内方法との機能分担、協働の整理 ・必要に応じて触知による案内・誘導(視覚障害者誘導用ブロック等)の活用を図る ・設備面だけで全て対応できない場合があることを理解し、その際は人的支援による補完を考慮する (3)個別の音案内の性能、整備水準 @個別音源の調整 2013年度発効予定のJIS T0902「高齢者・障害者配慮設計指針−公共空間に設置する移動支援用音案内」参照 A個別の音源が相互連動性をもって機能すること (4)整備効果の評価検証の留意点 @音案内の周知 ・どのような音がどのような意味で用いられているかということを視覚障害者当事者だけでなく、音案内が有効と考えられる利用者に広く周知されるよう配慮する A案内の整備効果の評価検証手順 ・個別の音の音響的特性については、2013年度発効予定のJIS T0902に則り評価する ・利用の文脈の中での案内の適切性、個別の音の内容の適切性を利用者並びに専門家の支援を得て検証し、整備後の定期的な評価(少なくとも5年に1度程度)を行い必要に応じた修正を行うと共に、可能であれば施設の改修なども視野に入れる (5)その他の課題 施設側の適切な音案内設備拡充のほか、携帯電話(スマートフォン)等の通信機器を用いた情報提供手段の可能性についても今後検討していく必要がある。また、予期できない音に対して対応しきれない利用者もおり、今後、コントロールされた音環境下で、さらに多くの人が不快を感じない音案内の提供方法の検討が必要である。 本参考資料作成にあたり下記の方々のご協力を頂いた。 秋山哲男 北星学園大学客員教授・旅客施設小委員会委員長 太田篤史 横浜国立大学大学院特別研究教員 鎌田 実 東京大学教授・車両小委員会委員長 関 喜一 産業総合技術研究所主任研究員 土田義郎 金沢工業大学教授 中野泰志 慶應義塾大学教授 永幡幸司 福島大学准教授 原 利明 鹿島建設株式会社 船場ひさお フェリス女学院大学講師 前田耕造 株式会社ジーベック 武者 圭 サウンドスケープデザイナー 鈴木孝幸 日本盲人会連合副会長 田内雅規 岡山県立大学教授 136ページ ■触知案内図等及び点字表示 触知案内図等  ◎公共用通路に直接通ずる出入口の付近その他の適切な場所に、旅客施設の構造及び主要な設備の配置を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備を設けなければならない。 ○出入口付近又は改札口付近(出入口と改札口が離れている場合)に、それぞれの箇所の移動方向にある主要な設備等の位置や方向を示す音声・音響案内がない場合は、触知案内図等により案内する。 ◇乗り換えのある旅客施設では、乗り換え経路が他の経路と分岐する位置にも触知案内図等を設置することが望ましい。 ○トイレ出入口付近の視覚障害者が分かりやすい位置に、男女別及び構造を点字等で表示する。 ○触知案内図等において、点字により表示する場合の表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、触知案内図により表示する場合の表示方法はJIS T0922にあわせたものとする。視覚障害者用と晴眼者用ではわかりやすい案内図の表現が異なるため、これを晴眼者用と兼用として設けることは適当ではないが、何が書かれているのか晴眼者が理解できるよう、JIS T0921あるいはJIS T0922にあわせて文字も併記する。 音声案内装置  ◇触知案内図等に、スピーカーを内蔵し押しボタンによって作動する音声案内装置を設置することが望ましい。 ◇この装置を設置する場合、対面して操作する利用者の「前、後、左、右」などわかりやすい言葉を用いて、簡単明瞭に施設等の方向を指示することが望ましい。 音響案内装置  ◇触知案内図等の位置を知らせるよう音響案内装置を設置することが望ましい。この場合、改札口、プラットホーム上の階段、地下駅地上出入口における音響案内とは異なるものを採用するものとする。 手すりの点字表示  ◎視覚障害者のために、手すりに階段の通ずる場所を点字で表示する。 ○上記の点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。参考2-3-16 ○その他の視覚障害者を誘導する通路や傾斜路の手すり端部にも、当該通路や傾斜路の通ずる場所を点字で表示する。 ○手すりの点字表示は、はがれにくいものとする。 ○上記手すりには、点字内容を文字で併記する。 点字運賃表  ○線状ブロックで誘導した券売機付近には、点字運賃表を設置する。点字による表示方法はJIS T0921にあわせたものとする。 137ページ ○点字運賃表の駅名の表示順序は50音順とすることを原則とし、見出しを設ける。 ◇点字運賃表は、可能な限り大きな文字でその内容を示すこと等によりロービジョン者が容易に運賃を把握できるようにすることが望ましい。 ◇点字の上に文字が重ならないように配置することが望ましい。 B緊急時の案内用設備 考え方 緊急時に高齢者、障害者等が円滑に移動及び避難等ができるよう、消防関係法令や各都道府県等の条例に基づいて施設等の整備を行う。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 誘導標識  ◇停電時などを考慮して、主要通路に蓄光式誘導標識を敷設する。(JIS Z9095参照)ただし、消防法その他の法令の規定により停電時などを考慮した誘導案内方法が整備されている場合はこの限りでない。 参考2-2-31 緊急時の案内設備  ◇視覚障害者や聴覚障害者にも配慮し、緊急事態の情報を音声・文字表示によって提供できる設備を備えることが望ましい。 138ページ 参考2-2-31 蓄光式誘導標識(JIS Z 9095) このJIS規格は、旅客施設を含む公共施設、商業施設、地下街等の建物内の照明及び誘導灯が停電などで使用できない場合に使用できる蓄光式の避難誘導システムについて規定されたものである。蓄光式の誘導案内は、誘導灯及び誘導標識に代わって設置されるものではなく、それらに加えて設置される。 <基本原則として、以下の事項が明記されている> ・視覚的に連続した視認性の高い誘導ラインを建物内から避難路の最終地点まで引いて避難路の境界線と完全に一致させなければならないこと ・設置場所、掲示の高さ、視覚的強化(ラインを太くする、ラインを増やす等)はリスク評価に基づいて決定しなければならないこと ・蓄光式の安全標識の色、形状、図記号は、JIS Z9101,JIS Z9103,JIS Z8210 及び ISO 7010 によるものとすること ・蓄光式の安全標識、誘導ラインなどは少なくとも 60 分間の使用時間中、明瞭に見えなければならないこと が明記されている。 139ページ 3.施設・設備に関するガイドライン @トイレ 考え方 トイレは利用しやすい場所に配置し、すべての利用者がアクセスしやすい構造とする。 多機能トイレ(公共交通移動等円滑化基準第13条第2項に適合するトイレ)は、高齢者、障害者、乳幼児を連れた者等が利用しやすい場所(トイレの入口近くに設置されていると利用しやすい)に設置する。また、車椅子使用者が円滑に利用できるものとする。また、障害部位により使用方法も異なることから、手すり等も右利き用、左利き用に対応したものを設置することが望ましい。車椅子使用者にとって、便座の高さが合わない場合や、フットサポートが便器にあたり近くに寄れない場合もあることから、便器の形状について配慮が必要である。 また、一般トイレと同様であるが、利用者がすべらないよう、清掃後の水はけを良くする配慮が必要である。特に、車椅子使用者は、段差があれば利用が困難となることから、アプローチにおける段差の解消が必要である。戸は電動式引き戸又は軽い力で操作できる手動式引き戸が望ましく、非常時には外部から解錠できることが必要である。非常用通報装置の位置については、転倒時を考慮しつつ、実際に手の届く範囲に設置する必要がある。 また、オストメイト(人工肛門、人工膀胱造設者)はパウチを洗ったり便の漏れを処理したりすることが必要となる場合がある。多機能トイレの普及により障害者等の社会参加が促進される一方で、1つのトイレにおいて複数の多機能トイレを設置することは困難であるという問題がある。また、ユニバーサルデザインの思想が浸透するに伴い、多機能トイレはあるが使う人がいっぱいで使えない等、多くの障害者等が多機能トイレを必要とするものの絶対数が不足している等の問題も生じている。そのような課題に対応するため、一般トイレにおいても、多機能トイレを設置した上で簡易型多機能便房の設置を推奨する。簡易型多機能便房はスペースの関係から設置が容易であり、既存の大便器の便房を改造することにより設置できる等の利点があるため、設置数を増やして絶対数の不足に対応するという意味で有効である。 (トイレ全般) 移動等円滑化基準 (便所) 第13条 便所を設ける場合は、当該便所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 便所の出入口付近に、男子用及び女子用の区別(当該区別がある場合に限る。)並びに便所の構造を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。 二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 男子用小便器を設ける場合は、一以上の床置式小便器、壁掛式小便器(受け口の高さが三十五センチメートル以下のものに限る。)その他これらに類する小便器が設けられていること。 四 前号の規定により設けられる小便器には、手すりが設けられていること。 2 便所を設ける場合は、そのうち一以上は、前項に掲げる基準のほか、次に掲げる基準のいずれかに適合するものでなければならない。 140ページ 一 便所(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれの便所)内に高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便房が設けられていること。 二 高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便所であること。 第14条 前条第二項第一号の便房が設けられた便所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 移動等円滑化された経路と便所との間の経路における通路のうち一以上は、第四条第五項各号に掲げる基準に適合するものであること。 二 出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 三 出入口には、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。ただし、傾斜路を設ける場合は、この限りでない。 四 出入口には、高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便房が設けられていることを表示する標識が設けられていること。 五 出入口に戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。   イ 幅は、八十センチメートル以上であること。   ロ 高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 六 車いす使用者の円滑な利用に適した広さが確保されていること。 2 前条第二項第一号の便房は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 出入口には、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 二 出入口には、当該便房が高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものであることを表示する標識が設けられていること。 三 腰掛便座及び手すりが設けられていること。 四 高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する水洗器具が設けられていること。 3 第一項第二号、第五号及び第六号の規定は、前項の便房について準用する。 第15条 前条第一項第一号から第三号まで、第五号及び第六号並びに同条第二項第二号から第四号までの規定は、第十三条第二項第二号の便所について準用する。この場合において、前条第二項第二号中「当該便房」とあるのは、「当該便所」と読み替えるものとする。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 配置  ◎便所を設ける場合、高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便所又は便房(多機能トイレ)は、男女共用のものを1 以上、または、男女別にそれぞれ1以上設置する。参考2-3-1  ○男女別に設置する場合、異性介助の際に入りやすい位置(一般トイレ出入口付近等)に設置する。 ○多機能トイレの利用状況を見極め、必要に応じて、男子用トイレ、女子用トイレのそれぞれに1以上の、乳幼児連れ、車椅子使用者、オストメイトに配慮した簡易型多機能便房を設置する。参考2-3-12 ◇多機能トイレや簡易型多機能便房の整備のほか、更なる機能分散を図る観点から、ベビーチェアやオストメイト設備などの簡易型機能を備えた一般便房を設置することが望ましい。 141ページ ◇車椅子使用者用便房、オストメイト用設備を有する便房、乳幼児連れに配慮した便房等の、個別機能を備えた専用便房を男女別にそれぞれ1以上設置することが望ましい。 ○複数の方面から移動等円滑化された経路が確保されている場合は、多機能トイレの利用状況を見極め、必要に応じて、移動等円滑化された経路の方面ごとに、高齢者、障害者等が利用しやすい場所に多機能トイレを男女別にそれぞれ1以上設置する。男女別に設置する場合でも、異性介助の際に入りやすい位置(一般トイレ入口付近等)に設置する。また、男女別に設置することが難しい場合は、男女共用のものを1以上設置する。参考2-3-2 ◇男女共用の多機能トイレを2か所以上設置する場合は、右まひ、左まひの車椅子使用者等の便器への移乗を考慮したものとすることが望ましい。 案内表示  ◎男女別及び構造を、便所の出入口付近の視覚障害者がわかりやすい位置に、音、点字その他の方法により示す。 ○視覚障害者誘導用ブロックは、壁面等に設置した触知案内図等の正面に誘導するよう敷設する。 ○触知案内図等において、点字により表示する場合の表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、触知案内図により表示する場合の表示方法はJIS T0922にあわせたものとする。 ○触知案内図等は、床から中心までの高さが140cmから150cmとなるよう設置する。 ○一般便所内に簡易型多機能便房、おむつ交換シート、ベビーチェアなどがある場合には、その旨がわかるように出入口付近において案内表示を行う。 また、上記の設備がある便房の外側扉にも、便房内にある設備が便房の外からわかるように案内表示を行う。 音声案内  ○視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された便所出入口付近壁面において、男女別を知らせる音声案内装置を設置する。 (設置の考え方、具体的な音声案内例は参考2-2-25を参照) 小便器 ○便所内に、男子用小便器を設けている場合、杖使用者等の肢体不自由者等が立位を保持できるように配慮した手すりを設置した床置式又はリップ高さ35cm以下の低リップの壁掛式小便器を1以上設置する。参考2-3-3 ◇上記小便器は、入口に最も近い位置に設置することが望ましい。 142ページ ○小便器の便器洗浄については、自動センサー式など操作を必要としないものとする。 ◇小便器の脇には杖や傘などを立てかけるくぼみやフック等を設け、小便器正面等に手荷物棚を設置することが望ましい。 大便器 ◎便所内に腰掛式便器を1以上設置した上、その便房の便器周辺には手すりを設置するなど高齢者・障害者等の利用に配慮したものとする。 ◇腰掛式便器を設置する場合、必要に応じ腰掛式便器を設置するすべての便房を、便器周辺に手すりを設置するなど高齢者、障害者等の利用に配慮することが望ましい。 ◇和式便器を設置する場合には、和式便器の周囲の壁に手すりを設置するなど、高齢者・障害者等の利用に配慮したものとすることが望ましい。 ◇便房内には、杖や傘などを立てかけられるフック等、手荷物を置く棚等を設置することが望ましい。 ◇ロービジョン、色覚異常の利用者等に配慮し、戸には確認しやすい大きさ、色(参考2-2-5参照)により使用可否を表示することが望ましい。また、色だけでなく「空き」、「使用中」等の文字による表示も併記することが望ましい。 ◇便房の戸の握り手は、高齢者、障害者等が操作しやすい形状とすることが望ましい。 ◇便房の戸は引き戸式又は折戸式とし、便房内の空間に余裕を作ることが望ましい。 洗面器 ○洗面器は、もたれかかった時に耐えうる強固なものとするか、又は、手すりを設けたものを1以上設置する。 ◇子供等の利用に配慮し、高さ55cm程度のものも設けることが望ましい。 乳児用設備  ○乳児連れの人の利用を考慮し、トイレ内(男女別を設けるときはそれぞれ)に1以上、大便用の便房内にベビーチェアを設置する。当該便房の戸には、ベビーチェアが設置されている旨の表示を行う。 ◇スペースに余裕がある場合には、ベビーチェアを複数の便房に設置し、洗面所付近にも設置することが望ましい。 ◇おむつ交換シートとあわせて荷物台やおむつ用のゴミ箱を設置する場合は、おむつ交換シートの近くに設置することが望ましい。 床面の仕上げ  ◎滑りにくい仕上げとする。 ◇排水溝などを設ける必要がある場合には、視覚障害者や肢体不自由者等にとって危険にならないように、配置を考慮することが望ましい。 143ページ ○床面は、高齢者、障害者等の通行の支障となる段を設けないようにする。 呼び出しボタン(通報装置)  ◇便器に腰掛けた状態、車椅子から便器に移乗しない状態、床に転倒した状態のいずれからも操作できるように呼出しボタンを設置することが望ましい。この場合、音、光等で押したことが確認できる機能を付与する。 器具等の形状・色・配置 ○視覚障害者や肢体不自由な人等の使用に配慮し、紙巻器、便器洗浄ボタン、呼出しボタンの形状、色、配置についてはJIS S0026にあわせたものとする。 簡易型多機能便房  ○簡易型多機能便房は、小型の手動車椅子(全長約85cm、全幅約60cmを想定)で利用可能なスペースを確保する(正面から入る場合は有効奥行き190cm以上、有効幅90cm以上のスペースと有効幅80cm以上の出入口の確保、側面から入る場合は有効奥行き220cm以上、有効幅90cm以上のスペースと有効幅90cm以上の出入口の確保が必要)。参考2-3-6 参考2-3-7 ◇新設の場合等でスペースが十分取れる場合は、標準型の手動車椅子(全長約120cm、全幅約70cmを想定)で利用が可能なスペースを確保することが望ましい(正面から入る場合は上記と同様であるが、側面から入る場合は奥行き220cm以上×幅120cm以上のスペースと幅90cm以上の出入口の確保が必要)。また、簡易型多機能便房に通ずるトイレ内通路には車椅子の転回スペースを確保することが望ましい。 ◇ドアの握り手は、引き戸の場合ドア内側の左右両側に設置することが望ましい。開き戸の場合、握り手は高齢者、障害者等が操作しやすい形状とすることが望ましい。 ○簡易型多機能便房には、腰掛式便器を設置する。便器の形状は、車椅子のフットサポートがあたることで使用時の障害になりにくいものとする。 ◇便器に背もたれを設置することが望ましい。 ○オストメイトのパウチ等の洗浄ができる洗浄装置を設置する。 ◇関連技術や製品開発の進展を踏まえつつ、オストメイトのパウチ等の洗浄ができる温水洗浄装置を設置することが望ましい。 ○便器の周辺には、手すりを設置するとともに、便器に腰掛けたままの状態と車椅子から便器に移乗しない状態の双方から操作できるように便器洗浄ボタン、呼出しボタン及び汚物入れを設置する。便器洗浄ボタンは、手かざしセンサー式だけの設置を避け、操作しやすい押しボタン式、靴べら式などとする。手かざしセンサー式が使いにくい人もいることから、手かざしセンサー式とする場合には押しボタン、手動式レバーハンドル等を併設する。 144ページ ○視覚障害者や肢体不自由な人等の使用に配慮し、紙巻器、便器洗浄ボタン、呼出しボタンの形状、色、配置についてはJIS S0026にあわせたものとする。 ◇便器に腰掛けた状態と車椅子から便器に移乗しない状態の双方から使用できるように紙巻器を設置することが望ましい。 ○荷物を掛けることのできるフックを設置する。このフックは、立位者、車椅子使用者の顔面に危険のない形状、位置とするとともに、1以上は車椅子に座った状態で使用できるものとする。 ○便房の床、出入口には段を設けない。 ◇状況に応じ、乳幼児連れ利用者が、本人の排せつだけでなく、乳幼児のおむつ交換や排せつ対応等が可能なスペース、及びベビーチェア、おむつ交換シート等の乳幼児向け設備を備えた便房とすることが望ましい。 緊急時通報  ◇視覚障害者や聴覚障害者にも配慮し、緊急事態の情報を音声及び光によって提供できる設備(フラッシュライト等)を備えることが望ましい。 ◇フラッシュライト等を設置する場合には、便房内の扉等にフラッシュライトの点滅が緊急事態を表す旨を表示することが望ましい。 ◇フラッシュライト等は、便房の扉を閉じた状態で、すべての便房内からその点滅が十分識別できる位置に設置することが望ましい。 145ページ 参考2-3-1:トイレの配置例 146ページ 参考2-3-2:複数の方面から移動等円滑化経路が確保されている場合の多機能トイレの複数設置例 <京浜急行 羽田空港国内線ターミナル駅> ・2方面・改札口からホームへの移動等円滑化が図られ、方面ごとに多機能トイレを設置(2箇所設置)。 注)上図は最新情況とは限りません  出典:京浜急行電鉄ホームページより <京王電鉄 京王稲田堤駅> ・交差する他鉄道路線により分断されている北口・南口の2方面・改札口からホームへの移動等円滑化が図られ、方面ごとに多機能トイレを設置(2箇所設置)。 注)上図は最新情況とは限りません 出典:京王電鉄ホームページより 147ページ 参考2-3-3:小便器の手すり例 参考2-3-4: 和式便器の手すり例 洋式便器の手すり例 参考2-3-5:杖・傘等のフック、手荷物棚の例 148ページ 参考2-3-6:簡易型多機能便房の例 149ページ (コラム9) その他の簡易型多機能便房の例 本ガイドラインでは、側面から入る場合において車椅子が90度転回できることを前提としている。一方で、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」では、斜めから移乗可能な例として180cm以上×150cm以上が示されている。 出典:「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(平成24年度) 参考2-3-7:簡易型多機能便房を可能な限り男女別に1ブースずつ設置している事例 (小田急電鉄 相模大野駅 寸法:2,470mm×1,500mm) 150ページ 参考2-3-8:JIS S0026「公共トイレにおける便房内操作部の形状・色・配置及び器具の配置」抜粋 <操作部の形状> ・便器洗浄ボタンの形状は丸形(○)とする。(主要な操作部として押しボタン式スイッチの便器洗浄ボタンを必ず設置し、センサー式は補助的な設置にとどめる(センサー式だけの設置は避ける)ことが望ましい。) ・呼び出しボタンの形状は便器洗浄ボタンと区別しやすい形状[例えば、四角形(□)又は三角形(△)]とする。操作部は、指だけでなく手のひら又は甲でも押しやすい大きさとする。 ・ボタンの高さは、目の不自由な人が触覚で認知しやすいよう、ボタン部を周辺部より突起させることが望ましい。 <操作部の色及び輝度コントラスト> ・ボタンの色:操作部の色は、相互に識別しやすい色の組み合わせとする。JIS S0033に規定する“非常に識別しやすい色の組み合わせ”から選定することが望ましい。例えば、便器洗浄ボタンの色を無彩色又は寒色系とし、呼出しボタンの色を暖色系とすることが望ましい。 ・ボタン色と周辺色の輝度コントラスト:操作部は、ボタン色と周辺色との輝度コントラストを確保する。また、ロービジョン者及び加齢による黄色変化視界の高齢者も判別しやすいよう、明度差及び輝度比にも留意する。 <操作部及び紙巻器の配置> ・呼出しボタンは、利用者が転倒した姿勢で容易に操作できる位置にも設置することが望ましい。 151ページ 表 操作部及び紙巻器の設置寸法 単位:mm 器具の種類 紙巻器 便座上面端部(基点)からの水平距離 X1:便器前方へ約0〜100  便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y1:便器上方へ約150〜400  2つの器具間距離 − 便器洗浄ボタン 便座上面端部(基点)からの水平距離 X1:便器前方へ約0〜100 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y2:便器上方へ約400〜550 2つの器具間距離 Y3:約100〜200(紙巻器との垂直距離) 呼出しボタン 便座上面端部(基点)からの水平距離 X2:便器後方へ約100〜200 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y2:便器上方へ約400〜550 2つの器具間距離 X3:約200〜300(便器洗浄ボタンとの水平距離) 注)JIS S0026では上図の配置・寸法を基本とするものの、JISの解説において“この規格に示す設置寸法以外のとなる場合”の配置例を示している(手すりを設置する場合、棚付紙巻器を設置する場合、スペア付紙巻器を設置する場合等)。上図の配置・寸法による設置が困難な場合等においてはJIS S0026解説を参照されたい。 (コラム10)多機能トイレの便器脇手すり等の配慮事項 ・重度の上肢障害のある利用者(例えば上肢の動作が困難な頸椎損傷や筋ジストロフィーの人)にとっては便器洗浄ボタン等の操作スイッチの壁面取り付け位置は低めが望ましいという結果が示されている(JIS S0026の規格制定の事前検証「ぐっどトイレプロジェクト」による)。本整備ガイドラインでは壁面に取り付ける手すりの高さの目安を65〜70cm程度と示しているが、操作スイッチ類を低めに設置するにあたり、手すりがスイッチや紙巻器類に干渉しないよう高さの決定に際しては十分な配慮が必要である。 ・JIS S0026では上図の配置・寸法を基本とするものの、JISの解説において“この規格に示す設置寸法以外となる場合”の配置例を示している(手すりを設置する場合、棚付紙巻器を設置する場合、スペア付紙巻器を設置する場合等)。上図の配置・寸法による設置が困難な場合等においてはJIS S0026解説を参照されたい。 152ページ (多機能トイレ) ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 案内表示  ◎高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便所又は便房(多機能トイレ)の出入口付近には、障害者、オストメイト、高齢者、妊産婦、乳幼児を連れた者等の使用に配慮した多機能トイレである旨を表示する。参考2-2-7 音声案内  ◇便房内の設備の配置がわかるように、音声案内を設けることが望ましい。 出入口 ◎高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便所又は便房(多機能トイレ)の出入口は、段がないようにする。ただし、傾斜路を設ける場合は、この限りでない。また、多機能トイレの位置が容易にわかるように触知案内図等を設置する。 ○点字により表示する場合の表示方法はJIS T0921にあわせたものとし、触知案内図により表示する場合の表示方法はJIS T0922にあわせたものとする。 ◎高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便所又は便房(多機能トイレ)の出入口の有効幅は、80cm以上とする。 戸  ◎有効幅80cm以上とする。 ◇有効幅90cm以上とすることが望ましい。参考2-3-9 ◎高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造の戸とする。参考2-3-10 ○電動式引き戸又は軽い力で操作のできる手動式引き戸とする。手動式の場合は、自動的に戻らないタイプとし、握り手は棒状ハンドル式のものとする。 ◇握り手はドア内側の左右両側に設置することが望ましい。 ○握り手、鍵その他の付属物の設置にあたっては、車椅子使用者の行動空間、アクセスに配慮する。 ◇出入口の戸から70cmの範囲には、壁に付属物を設置しないことが望ましい。 ○防犯上・管理上の理由等からやむを得ず常時施錠が必要となる場合には、ドア近くにインターホン等を設置し、駅係員等が速やかに解錠できるものとする。 ○車椅子使用者や指の動きが不自由な人でも容易に施錠できる構造、高さ(60cm〜70cm程度)のものとし、非常時に外から解錠できるようにする。 戸の開閉盤(開閉スイッチ)  ○戸の開閉盤(開閉スイッチ)は、電動式の戸の場合、車椅子使用者が中に入りきってから操作できるよう配慮する。 153ページ ◇戸の開閉盤は、戸から70cm以上離して設置し、その設置高さは100cm程度とすることが望ましい。 ○電動式の戸の場合、手かざしセンサー式だけの設置は避け、操作しやすい押しボタン式とする。手かざしセンサー式が使いにくい人もいることから、手かざしセンサー式とする場合には押しボタンを併設する。 ○使用中である旨を表示する装置を設置する。 大きさ ◎車椅子使用者の円滑な利用に適した広さが確保されていること。 ○手動車椅子で方向転換が可能なスペースを確保する(標準的には200cm以上×200cm以上のスペースが必要。)。 ○新設の場合等、スペースが十分取れる場合は、電動車椅子で方向転換が可能なスペースを確保する(標準的には220cm以上×220cm以上のスペースが必要。)。 便器  ◎便器は腰掛式とする。便器の形状は、車椅子のフットサポートがあたることで使用時の障害になりにくいものとする。 ○便座には便蓋を設けず、背後に背もたれを設ける。 ○便座の高さは40〜45cmとする。 ○便器に逆向きに座る場合も考慮して、その妨げになる器具等がないように配慮する。 オストメイトの利用者への対応 ◎オストメイトのパウチ等の洗浄ができる洗浄装置を設置する。 ◇上記の洗浄装置としては、パウチの洗浄や様々な汚れ物洗いに、温水が出る汚物流しを設置すると望ましい。 ◇オストメイトの利用者がペーパー等で腹部を拭う場合を考慮し、温水が出る設備を設けることが望ましい。 ◇洗浄装置の付近に、パウチなどの物を置けるスペースを設置することが望ましい。 手すり  ◎高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便房には、手すりを設置する。取り付けは堅固とし、腐触しにくい素材で、握りやすいものとする。 ○壁と手すりの間隔は5cm以上の間隔とする。 ○手すりは便器に沿った壁面側はL字形に設置する。もう一方は、車椅子を便器と平行に寄り付けて移乗する場合等を考慮し、十分な強度を持った可動式とする。可動式手すりの長さは、移乗の際に握りやすく、かつアプローチの邪魔にならないように、便器先端と同程度とする。手すりの高さは65〜70cm程度とし、左右の間隔は70〜75cmとする。 付属器具  ◎高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する水洗器具が設けられていること。 154ページ ○多機能トイレ内のすべての付属器具の設置にあたっては、車椅子の行動空間に配慮し、ドアの開閉動作等の支障とならないよう、配置に留意する。 ○便器洗浄ボタンは、便器に腰掛けたままの状態と、便器の回りで車椅子から便器に移乗しない状態の双方から操作できるように設置する。手かざしセンサー式だけの設置は避け、操作しやすい押しボタン式、靴べら式などする。手かざしセンサーが使いにくい人もいることから、手かざしセンサー式とする場合には押しボタン、手動式レバーハンドル等を併設する。 ◇小型手洗い器を便座に腰掛けたままで使用できる位置に設置することが望ましく、蛇口は操作が容易なセンサー式、押しボタン式などとする。 ○紙巻器は片手で紙が切れるものとし、便器に腰掛けたままの状態と、便器の回りで車椅子から便器に移乗しない状態の双方から使用できるように設置する。 ○荷物を掛けることのできるフックを設置する。このフックは、立位者、車椅子使用者の顔面に危険のない形状、位置とするとともに、1以上は車椅子に座った状態で使用できるものとする。 ○手荷物を置ける棚などのスペースを設置する。 洗面器 ◎車椅子から便器へ前方、側方から移乗する際に支障とならない位置、形状のものとする。 ◎車椅子での使用に配慮し、洗面器の下に床上60cm以上の高さを確保し、洗面器上面の標準的高さを80cm以下とする。よりかかる場合を考慮し、十分な取付強度を持たせる。 ○蛇口は、上肢不自由者のためにもセンサー式、レバー式などとする。 ○鏡は車椅子でも立位でも使用できるよう、低い位置から設置され十分な長さを持った平面鏡とする。 汚物入れ  ○汚物入れはパウチ、おむつも捨てることを考慮した大きさのものを設置する。 ◇汚物入れは、おむつ交換シートやオストメイト用の水洗装置から手の届く場所に設置するのが望ましい。 鏡  ◇洗面器前面の鏡とは別に、全身の映る姿見を設置することが望ましい。 おむつ交換シート  ○乳児のおむつ替え用に乳児用おむつ交換シートを設置する。ただし、一般トイレに男女別に設置してある場合はこの限りではない。 ◇重度障害者のおむつ替え用等に、折りたたみ式または収納式のおむつ交換シートを設置することが望ましい。その場合、畳み忘れであっても、車椅子での出入りが可能となるよう、車椅子に乗ったままでも畳める構造、位置とする。 155ページ 床の表面  ◎滑りにくい仕上げとする。 ◇排水溝などを設ける必要がある場合には、視覚障害者や肢体不自由者等にとって危険にならないように、配置を考慮する。 ○床面は、高齢者、障害者等の通行の支障となる段を設けないようにする。 呼出しボタン(通報装置)  ○呼出しボタンは、便器に腰掛けた状態、車椅子から便器に移乗しない状態、床に転倒した状態のいずれからも操作できるように設置する。音、光等で押したことが確認できる機能を付与する。 器具等の形状・色・配置 ○視覚障害者や肢体不自由な人等の使用に配慮し、紙巻器、便器洗浄ボタン、呼出しボタンの形状、色、配置についてはJIS S0026にあわせたものとする。参考2-3-8 156〜158ページ 参考2-3-9:多機能トイレの例1(標準的なプラン) 参考2-3-10:多機能トイレの例2(望ましいプラン) 159ページ ※上図は、手動式引き戸の例を示したものであり、電動式引き戸を設ける場合は、室内構成も含めて工夫し、ドア開閉盤(内部)の設置位置等、車椅子使用者が利用しやすくなるように配慮することが必要。 (コラム11)多機能トイレへのカーテン設置について ・介助者が多機能トイレ内で待つことに配慮すると遮断カーテンの設置が望ましい、燃やされる、破られるといった防火面やモラル面での問題点、さらには、カーテンを手すり代わりとして使用される場合は危険であるといった安全面での問題点も指摘されている。 ・多機能トイレ内にカーテンを設置する際には、上記の問題点を踏まえ、カーテンの素材、設置後の適切な管理などに十分配慮する必要がある。 160ページ 参考2-3-12:多機能トイレの複数配置、一般便房の機能強化の例 <多機能トイレの複数配置> 多機能トイレが複数配置されており、左右どちらからも移乗できるように設置されている。また、一般トイレ内にも簡易型多機能便房、オストメイトパウチの洗浄装置、おむつ交換シート等が整備されている。(東京国際空港国際線旅客ターミナルビル) 出典:東京国際空港ターミナル株式会社資料 161ページ <一般トイレへの機能分散の例・フラッシュライトを設けている例> (東京国際空港国際線旅客ターミナルビル) □設計上の配慮事項 ・一般トイレ内は、キャリーケースなどの大型の荷物を持った旅客の利用、すれ違いを考慮し、通路やブースをゆとりがある計画としている。 ・ブース内を広くしている為、標準サイズの手動車椅子使用者であれば利用することができる。 ・トイレエリアに多機能トイレが一箇所の場合には、一般トイレ内にオストメイト器具のあるブースを設け、付近にベビールームがないトイレには一般トイレ内にベビーベッドを設けた。 ・一般トイレ全てのブースに手摺を設置した。なお、1ヵ所のトイレ内に必ず右勝手、左勝手があるように計画している。 [一般的トイレ(男子)平面詳 出典:東京国際空港ターミナル株式会社資料 162ページ A乗車券等販売所・待合所・案内所 考え方 出札・案内等のカウンターは、構造上、車椅子使用者にとって利用しにくいものもある。特に、カウンターの高さや、蹴込みについて、考慮する必要がある。カウンターの下部は、車椅子使用者のひざやフットサポートなどが当たらないよう配慮する。 移動等円滑化基準 (乗車券等販売所、待合所及び案内所) 第16条 乗車券等販売所を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 カウンターを設ける場合は、そのうち一以上は、車いす使用者の円滑な利用に適した構造のものであること。ただし、常時勤務する者が容易にカウンターの前に出て対応できる構造である場合は、この限りでない。 2 前項の規定は、待合所及び案内所を設ける場合について準用する。 3 乗車券等販売所又は案内所(勤務する者を置かないものを除く。)は、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該乗車券等販売所又は案内所に表示するものとする。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容(義務)、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 出入口 「第2部旅客施設共通ガイドライン 1.移動経路に関するガイドライン B乗車券販売所、待合所、案内所の出入口」(29ページ)参照 参考2-1-3 参考2-1-4 カウンター ◎乗車券等販売所、待合所及び案内所にカウンターを設ける場合は、そのうち一以上は、車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のものとする。ただし、常時勤務する者が容易にカウンターの前に出て対応できる構造である場合は、この限りでない。参考2-3-13 ○カウンターの蹴込みの一部は高さ60cm程度以上、奥行き40p程度以上とする。 ○カウンターの一部は、車椅子使用者との対話に配慮して高さ75cm程度とする。 ○カウンターのついたてまでの奥行きは、車椅子使用者との対話に配慮して30cm〜40cmとする。 視覚障害者の誘導  ○カウンターの1か所に視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。 163ページ 聴覚障害者の案内  ◎乗車券等販売所、待合所及び案内所(勤務する者を置かないものを除く。)には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備える。 ◎この場合においては、当該設備を保有している旨を当該乗車券等販売所又は案内所に表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通が図れるように配慮する。参考2-3-14 ○手話での対応やメモなどの筆談用具を備え、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ○手話での対応が可能な場合は、その旨を当該乗車券販売所、又は案内所の見やすい場所に表示する。 コミュニケーション支援ボード ◇言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者等に配慮し、JIS T0103に適合するコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーション支援ボードを準備することが望ましい。 参考2-3-15 164〜166ページページ 参考2-3-13:カウンターの例 参考2-3-14:筆談用具がある旨の表示例 【文字表記の具体例】 ●「筆談用具を設置しています」 ●「筆談いたしますのでお申し出ください」 参考2-3-15:JIS T0103「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」に収載されている絵記号の例 【分類項目】501:乗り物・交通 (コミュニケーション支援ボードの一例) 出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団 167ページ B券売機 考え方 車椅子使用者等であっても利用しやすい高さに券売機を設置し、車椅子使用者が容易に券売機に接近できるように、蹴込みを設けるなどの配慮が必要である。 操作性についても、タッチパネル式は視覚障害者が利用できないため、テンキーを設けるなどの配慮が必要である。 移動等円滑化基準 (券売機) 第17条 乗車券等販売所に券売機を設ける場合は、そのうち一以上は、高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、乗車券等の販売を行う者が常時対応する窓口が設置されている場合は、この限りでない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 ◎1以上の券売機は、高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造とする。ただし、乗車券等の販売を行う者が常時対応する窓口が設置されている場合は、この限りでない。  高さ  ◎主要なボタン及び金銭投入口は、車椅子使用者が利用しやすい高さとする。 ○主要なボタンは、110cm程度の高さを中心に配置する。 ○金銭投入口の高さは、110cm以下とすること。なお、券売機の構造上やむを得ない場合はこの限りでない。 金銭投入口  ○金銭投入口は、硬貨を複数枚同時に入れることができるものとする。 ◇金銭投入口・カード投入口等は、周囲と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)のある縁取りなどにより識別しやすいものとすることが望ましい。参考2-3-18 蹴込み ○車椅子使用者が容易に接近できるよう、カウンター下部に高さ60cm程度以上の蹴込みを設ける。 ○車椅子使用者が券売機を操作できるように、蹴込みの奥行きは40cm程度とする。  呼出装置  ◇緊急時や故障時、問い合わせが必要な時に、駅係員に連絡できるよう、インターホン又は呼出ボタンを設けることが望ましい。 ◇高齢者、障害者等が使用しやすい構造とすることが望ましい。 ◇聴覚障害者等話し言葉によるコミュニケーションが困難な障害者の利用に配慮し、駅係員に連絡中である旨や駅係員が向かっている旨を表示する設備を設けることが望ましい。 障害者割引ボタン  ◇障害者割引切符がある場合には、当該割引切符を示すボタンを配置することが望ましい。 168ページ 画面  ◇タッチパネル式の表示画面・操作画面及びボタン表示の配色については、参考2-2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の人の利用に配慮することが望ましい。 ◇タッチパネル式の表示画面・操作画面の文字はゴシック体で、できる限り大きな表示とすることが望ましい。 ◇表示画面・操作画面は、外光・照明の反射により、見にくくならないよう配慮することが望ましい。 点字表示  「■触知案内図等及び点字表示 券売機の点字表示」(137ページ)参照 ボタン ◇主要な点字ボタンの料金表示は、周辺との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくする等してロービジョン者の利用に配慮することが望ましい。 点字運賃表  「■触知案内図等及び点字表示 点字運賃表」(136ページ)参照 テンキー  ○タッチパネル式の場合は、点字表示付きのテンキーを設置する。 ○テンキーを設置した券売機には音声案内を設置する。 ◇機器メーカーと共同して統一化を図ることが望ましい。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 169〜170ページ 参考2-3-16:券売機の例 参考2-3-17:車椅子フットサポート部分に支障のないような蹴込みを設けた券売機の例 (左図はつくばエクスプレス北千住駅、右図は仙台空港鉄道仙台空港駅) 参考2-3-18:券売機の金銭投入口等を縁取りした例 参考2-3-19:券売機の障害者割引切符を示すボタンの例 ・障害者割引切符を示す「福祉」ボタン (大阪市交通局) 171ページ C休憩等のための設備 考え方 大規模な旅客施設においては、長距離移動に配慮し、高齢者、障害者等が休憩するための設備を設置することが必要である。また、乳幼児連れの旅客のための施設を配置することが望ましい。 移動等円滑化基準 (休憩設備) 第18条 高齢者、障害者等の休憩の用に供する設備を一以上設けなければならない。ただし、旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれのある場合は、この限りでない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 ベンチ等  ◎高齢者・障害者等の長距離移動、長時間立位が困難であること、知的障害者、精神障害者及び発達障害者等の知覚面又は心理面の働きが原因で発現する疲れやすさや服薬の影響等による疲れやすさ等に配慮し、旅客の移動を妨げないよう配慮しつつ休憩のためのベンチ等を1以上設ける。ただし、旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれのある場合は、この限りでない。 ◇ベンチの形状は、巧緻な操作が困難である障害者等に配慮し、はね上げ式や折りたたみ式を避け、固定式とすることが望ましい。 待合室 ○戸のある待合室を設ける場合には、その戸の有効幅を80cm以上とする。 ◇待合室を設ける場合には、車椅子使用者、ベビーカー使用者等の利用に配慮し、室内の動線の妨げにならない位置に130cm以上×75cm以上のスペースを設けることが望ましい。 水飲み台  ○水飲み台を設ける場合は、旅客の移動を妨げないよう配慮する。 ○車椅子使用者が使いやすいよう、高さは70〜80cmとする。壁付きの場合には、蹴込みの高さは60cm程度、奥行きは35〜40cm程度とする。 授乳室等  ◇授乳室やおむつ替えのできる場所を設け、ベビーベッドや給湯設備等を配置することが望ましい。 172ページ Dその他の設備 考え方 旅客施設においては、急病の際に安静をとるための施設を配置することが望ましい。 公衆電話は、車椅子使用者にとっては金銭投入口やダイヤルの位置が高い場合には利用しにくく、また、視覚障害者や聴覚障害者、高齢者及び外国人にとっては電話機の利用が困難である。電話の設置や通信機器が利用できる環境整備については、通信事業者が行う事項であるが、電話置台、電話機種への配慮が必要となる。聴覚障害者にとっては、緊急時等において、携帯電話のメール機能・インターネット機能を利用した情報の取得や外部との連絡手段の確保が有効であることに配慮が必要である。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 救護室  ◇急病人やけが人等が休むための救護室を設けることが望ましい。 AED  ○誰もが分かりやすく使いやすい位置にAED(自動体外式除細動器)を設置するとともに、使用方法をわかりやすく表示する。 環境 明るさ  ○旅客施設内の主要な施設内は、高齢者、障害者等が見やすいよう十分な明るさとする。 電話  ○電話機を設ける場合は、旅客の移動を妨げないよう配慮する。 高さ  ○電話機の1台以上について、電話台の高さを70cm程度とし、電話置台の台下の高さを60cm程度以上とする。 ボタン等の高さ ○ダイヤルやボタンの高さは、90〜100cm程度とする。 蹴込み ○蹴込みの奥行きは45cm以上確保する。 電話機 ◇少なくとも1台は音声増幅装置付電話機を設けることが望ましい。この場合、見やすい位置にその旨を表示する。 ◇外国人の利用の多い旅客施設には、英語表示の可能な電話を設置することが望ましい。 ○補聴器利用者などが電話を利用しやすいよう、公衆電話の周辺では電磁波が発生しないよう配慮する。 FAX・通信環境等 ◇聴覚障害者が外部と連絡をとれるよう、自由に利用できる公衆FAXを設置することや、携帯電話等が利用できる環境とすることが望ましい。 173ページ 第3部 個別の旅客施設に関するガイドライン 表紙 175ページ 第3部 個別の旅客施設に関するガイドライン 1.鉄軌道駅 @ 鉄軌道駅の改札口 考え方 車椅子使用者が、改札口を通過する場合、既設の幅では利用が困難な場合が多く、荷物等の搬入口など特別なルートしかない駅があるが、一般の旅客と同様に駅係員の対応などの制約がなく単独で改札口を利用できることが望ましい。また、改札機の自動化が進んでいるが高齢者や視覚障害者、妊産婦等にとって利用困難な場合があるため有人改札口を併設することが望ましい。 改札口は、視覚障害者が鉄軌道を利用する際の起終点となる場所であるとともに、駅員とコミュニケーションを図り、人的サポートを求めることのできる場所でもあることに配慮し、その位置を知らせる音響案内を設置する。 移動等円滑化基準 (改札口) 第19条 鉄道駅において移動等円滑化された経路に改札口を設ける場合は、そのうち一以上は、幅が八十センチメートル以上でなければならない。 2 鉄道駅において自動改札機を設ける場合は、当該自動改札機又はその付近に、当該自動改札機への進入の可否を、容易に識別することができる方法で表示しなければならない。 (準用) 第22条 前節の規定は、軌道停留所について準用する。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 拡幅改札口 ◎移動等円滑化された経路に改札口を設ける場合、有効幅80cm以上の拡幅改札口を1か所以上設置する。 ◇車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とすることが望ましい。 ◇入出場双方向から利用する拡幅改札口の場合は、その内外に車椅子使用者同士がすれ違うことができるスペースを設けることが望ましい。 ◇有人改札口ではない自動改札機にある改札口に設けることが望ましい。その際、当該改札口は、車椅子使用者の問い合わせ等がある場合に対応できるよう有人改札から視認できる位置とする。 ◇有人改札口を拡幅改札口とする場合には、さらに自動改札機のある改札口のうち1か所以上を拡幅改札口とすることが望ましい。 有人改札口  視覚障害者の誘導  ○視覚障害者誘導用ブロックは、有人改札口を経由して敷設する。 176ページ 聴覚障害者の案内  ○手話での対応やメモなどの筆談用具を備え、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ○この場合、当該筆談用具を備えている旨を表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通が図れるように配慮する。 ○筆談用具がある旨の表示については、駅係員及び聴覚障害者から見やすく、かつ聴覚障害者から手の届く位置に表示する。 コミュニケーションボード  ◇言語(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者等に配慮し、JIS T0103に適合するコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーションボードを備えることが望ましい。 ローカウンターの高さの蹴込み  ◇有人改札口のカウンターの一部は、車椅子使用者等との対話に配慮して高さ75cm程度とすることが望ましい。 ◇上記高さのカウンターの蹴込みは、高さ60cm程度以上、奥行き40cm程度以上とすることが望ましい。 戸  ○案内所を兼ねている等、有人改札口に戸が設置されている場合、その戸の有効幅は80p以上とする。 ◇案内所を兼ねている等、有人改札に戸が設置されている場合、有人改札の戸外側、もしくは戸内側に車椅子使用者どうしがすれ違うことができるスペースを設けることが望ましい。 自動改札機  ◎自動改札機を設ける場合は、当該自動改札機又はその周辺において当該自動改札口への進入の可否を容易に識別することができる方法で示す。 ○自動改札口の乗車券等挿入口は、色で縁取るなど識別しやすいものとする。 ◇進入可否表示の配色については、参考2-2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の人の利用に配慮することが望ましい。 音響案内 「A視覚障害者誘導案内用設備 ■音声・音響案内」(120ページ)参照 コミュニケーション  ○無人駅・無人改札口においては、視覚障害者、聴覚障害者等からの問い合わせに対応できるよう措置を講ずる。 コラム12)視覚障害者誘導用ブロックの有人改札への案内 鉄道駅における有人改札口への視覚障害者の誘導案内は、視覚障害者が鉄道を利用する際の起終点となる場所であるとともに駅員とコミュニケーションを図り、人的サポートを求めることのできる場所であるところから視覚障害者誘導用ブロックの敷設、音案内が行われている。 177ページ 参考3-1-1:改札口の例 参考3-1-2:有人改札へのローカウンター設置事例 178ページ A鉄軌道駅のプラットホーム 考え方 プラットホームにおいては、転落等防止のための措置を重点的に行う必要がある。特に視覚障害者の転落等防止の観点から、ホームドア、可動式ホーム柵、ホーム縁端警告ブロック等の措置を講ずる。また、プラットホームと列車の段差をできる限り平らにし、隙間をできる限り小さくするとともに、やむを得ず段差や隙間が生じる場合は、段差・隙間解消装置や渡り板により対応する。その場合、迅速に対応できるよう体制を整える必要がある。段差・隙間をできる限り小さくするため、新設駅や大規模改良駅においては、その立地条件を十分に勘案し、可能な限りプラットホームを直線に近づける配慮が必要である。 移動等円滑化基準 (プラットホーム) 第20条 鉄道駅のプラットホームは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 プラットホームの縁端と鉄道車両の旅客用乗降口の床面の縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。この場合において、構造上の理由により当該間隔が大きいときは、旅客に対しこれを警告するための設備を設けること。 二 プラットホームと鉄道車両の旅客用乗降口の床面とは、できる限り平らであること。 三 プラットホームの縁端と鉄道車両の旅客用乗降口の床面との隙間又は段差により車いす使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車いす使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備が一以上備えられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 排水のための横断勾配は、一パーセントが標準であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 五 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 六 発着するすべての鉄道車両の旅客用乗降口の位置が一定しており、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができるプラットホーム(鋼索鉄道に係るものを除く。)にあっては、ホームドア又は可動式ホームさく(旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれがある場合にあっては、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備)が設けられていること。 七 前号に掲げるプラットホーム以外のプラットホームにあっては、ホームドア、可動式ホームさく、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備が設けられていること。 八 プラットホームの線路側以外の端部には、旅客の転落を防止するためのさくが設けられていること。ただし、当該端部に階段が設置されている場合その他旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 九 列車の接近を文字等により警告するための設備及び音声により警告するための設備が設けられていること。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 十 照明設備が設けられていること。 179ページ 2 前項第四号及び第九号の規定は、ホームドア又は可動式ホームさくが設けられたプラットホームについては適用しない。 (車いす使用者用乗降口の案内) 第21条 鉄道駅の適切な場所において、第三十二条第一項の規定により列車に設けられる車いすスペースに通ずる第三十一条第三号の基準に適合した旅客用乗降口が停止するプラットホーム上の位置を表示しなければならない。ただし、当該プラットホーム上の位置が一定していない場合は、この限りでない。 (準用) 第22条 前節の規定は、軌道停留場について準用する。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の表面  ◎滑りにくい仕上げとする。 横断勾配  ◎排水等のため横断勾配を設ける必要がある場合、当該横断勾配は1%を標準とする。 転落防止柵 転落防止柵とは、列車の乗降が行われない箇所において設置される柵のことをいう。 ◎プラットホームの線路側以外の端部には、旅客の転落を防止するための柵が設けられていること。ただし、当該端部に階段が設置されている場合その他旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。参考3-1-4-4 ○プラットホームの線路側以外の端部には、建築限界に支障しない範囲で高さ110cm以上の転落防止柵を設置する。 ○あわせて、プラットホームの線路側以外の端部を認識できるよう点状ブロックを敷設する。なお、敷設幅は60cm程度(少なくとも40cm以上)とする。 ○プラットホームの線路側端部において、列車が停車することがない等乗降に支障のない箇所には、建築限界に支障しない範囲で高さ110cm以上の柵を設置する。 ○プラットホーム上のエレベーターの出入口付近に傾斜がある場合は、車椅子使用者等の線路への転落防止のため、傾斜に関する注意喚起の掲示とともに旅客の円滑な流動に支障を及ぼさない範囲で柵を設置する。 参考3-1-4-1 180ページ 転落防止措置  ◎発着するすべての鉄軌道車両の旅客用乗降口の位置が一定しており、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができるプラットホーム(鋼索鉄道に係るものを除く。)においては、ホームドア又は可動式ホーム柵(旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれがある場合にあっては、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備)を設ける。 ◎上記以外のプラットホームにおいては、ホームドア、可動式ホーム柵、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備を設ける。 ホームドア・可動式ホーム柵  ○旅客用乗降口との間の閉じこめやはさみこみ防止措置を図る。 ◇ホームドアや可動式ホーム柵の可動部の開閉を音声や音響で知らせることが望ましい。 ○ホームドアや可動式ホーム柵の開閉が行われる各開口部の全幅にわたって、奥行き60p程度の点状ブロックを敷設する。ドアの戸袋等の各固定部からの離隔を設けないことを基本とし、構造上やむを得ない場合であっても30p以下とする。 ○ホームドア及び可動式ホーム柵は、乗降部への徒列ライン敷設、案内板の設置、または、固定部と可動部の色を変えるなど、ロービジョン者等が乗降位置を容易に視認できるよう色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)に配慮する。 ○可動式ホーム柵は、柵から身を乗り出した場合及びスキー板、釣り竿等長いものを立てかけた場合の接触防止の観点から、柵の固定部のホーム内側の端部から車両限界までの離隔は40cm程度を基本とする。 参考2-2-19 参考3-1-3 参考3-1-5 181ページ 固定式ホーム柵 ○固定式ホーム柵から身を乗り出した場合及びスキー板、釣り竿等長いものを立てかけた場合の接触防止の観点から、ホーム内側の端部から車両限界までの離隔は40cm程度を基本とする。なお、固定式ホーム柵とは、列車の乗降が行われる各ドア位置に合わせて開口部を設けた柵のことをいう。 ○あわせて、各開口部の全幅にわたって、奥行き60cm程度の点状ブロックに内方線が付いた形状となるようホーム縁端警告ブロックを敷設する。各固定部からの離隔は設けないことを基本とし、構造上やむを得ない場合であっても30p以下とする。参考2-2-19 参考3-1-3 視覚障害者誘導用ブロック プラットホーム上の点状ブロック  ○階段等から連続して敷設された線状ブロックとホーム縁端部の点状ブロックとが交わる箇所(T字部)については、ホーム縁端部の点状ブロックの内側に点状ブロックを敷設する。 参考3-1-4-2 182ページ ホーム縁端警告ブロック ○ホーム縁端警告ブロックは、プラットホームの線路側の縁端部を警告するために敷設するものであり、プラットホーム上における、これ以外の場所には敷設しない。参考3-1-3 ○プラットホームの線路側の縁端からの離隔は80〜100cm程度とし、線路に並行して連続的に敷設する。 ○プラットホームの内側であることを認識できるよう、点状ブロックの内側に内方線が位置するものとし、JIS T9251に合わせたものを基本とする。 ○特に、ホームドア又は可動式ホーム柵が設置されていないプラットホームにおいて敷設する。 ○プラットホーム上の柱などの構造物と干渉しないよう配慮して敷設する。やむを得ずホーム縁端警告ブロックがホーム縁端付近の柱などの構造物と干渉する場合であっても、構造物を迂回して敷設するのではなく、連続して敷設し、干渉部分を切り取ることとする。ただし、ホーム縁端警告ブロックと構造物との間に隙間を設けずに敷設する。参考3-1-4-3 ◇ホーム縁端警告ブロックを連続して敷設することにより、視覚障害者がプラットホーム上の柱など構造物と衝突した際の安全性を考慮し、柱にクッションを巻くことが望ましい。 ○島式ホームにおいては、向かい合うホーム縁端警告ブロックの内方線の中心と中心との距離を60cm以上確保することを原則とする。ただし、プラットホームの幅員が確保できず、やむを得ない場合は、40cm以上確保する。なお、40cm以上確保できない場合は、点状ブロックのみとし、内方線は敷設しない。 転落時の安全確保措置  ○万が一プラットホームから旅客が転落した場合を想定し、以下の安全確保措置を講じる。 ・列車を停止させるための非常押しボタン又は転落検知マットを設置する。この場合、当該押しボタンは操作しやすい位置に設置するとともに、その位置、機能について、旅客へ周知する。 183ページ ・プラットホーム下には、列車を避けるための待避スペースまたはプラットホームに上がるためのステップを設置する。 乗降位置表示 ◎プラットホーム床面等において、車椅子スペースに近接する乗降口位置を表示する。ただし、当該プラットホーム上の位置が一定してしない場合は、この限りでない。参考3-1-6 ◇列車編成数及び停止位置が一定している場合には、プラットホームの床面において号車番号を表示することが望ましい。 ○ホームドアや可動式ホーム柵、固定式ホーム柵を設置する場合には、号車及び乗降口位置(扉番号)を文字及び点字(触知による案内を含む。)により開口部左脇に表示する。 ○なお、表示する位置については、ホームドアは、可動部のドア側面または固定部の側面(140cm〜160cm程度の高さ)、可動式ホーム柵は、上面または側面(120〜130cm程度の高さ)、固定式ホーム柵は、固定部の上面(120〜130cm程度の高さ)とする。 ◇点字(触知による案内を含む。)による乗降位置情報は、開口部の左右両側に表示することが望ましい。 連絡装置  ◇駅係員と連絡ができるよう、プラットホーム上のわかりやすい位置(案内サインの掲出位置等)にインターホンを設置することが望ましい。この場合、その設置位置の上部などにおいてわかりやすい案内表示を行う。 参考3-1-7 車両とプラットホームの段差及び隙間の解消  ◎鉄軌道車両とプラットホームの段差又は隙間について、段差はできる限り平らに、隙間はできる限り小さいものとする。参考3-1-8-1 ◎車椅子使用者の円滑な乗降のため十分な長さ、幅及び強度を有する渡り板等の設備を設ける。 ○渡り板は、速やかに使用できる場所に配備する。 ○渡り板は、幅80cm以上、使用時の傾斜は10度以下として十分な長さを有するもの、耐荷重300kg程度のものとする。ただし、構造上の理由により傾斜角10度以下の実現が困難な場合には、車椅子の登坂性能等を考慮し、可能な限り傾斜角10度に近づけるものとする。 ○渡り板のホーム側接地面には滑り止めを施し、かつ、渡り板の車両側端部にひっかかりを設けること等により、使用時にずれることのないよう配慮する。参考3-1-8-2 ○なお、渡り板の使用においては、ホームの形状に配慮し、降りたホームの反対側の線路に転落する等の事故がないよう、渡り板の長さとホームの幅に十分注意する。 ○渡り板を常備しない場合、駅係員等が速やかに操作できる構造の段差・隙間解消装置を設置する。 184ページ ◇渡り板等の設備を使用しなくても、車椅子使用者が単独で乗降できるよう措置を講ずることが望ましい。 ◇鉄軌道車両・ホーム等の構造上の理由により渡り板が長く、また、傾斜角が急(概ね10度を超える)となる場合には、脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設けることが望ましい。 隙間の警告  ◎構造上の理由により鉄軌道車両の旅客用乗降口の床面の縁端とプラットホームの縁端との隙間が大きいときは、旅客に対しこれを警告するための設備を設けること。 参考3-1-8-3 列車接近の警告・案内  ◎音声による案内で、列車の接近を警告する。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ○音声や音響による案内で、列車の接近のほか、その列車の停止・通過、乗車可否(回送の場合は回送である旨)、列車種別、行き先、次停車駅名を知らせる。 ◎文字や光による情報で、列車の接近を警告する。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ○文字や光による情報で、列車の接近のほか、その列車の停止・通過、乗車可否(回送の場合は回送である旨)、列車種別、行き先、次停車駅名を知らせる。 プラットホーム上のベンチ等  ○高齢者、障害者等の長距離移動、長時間立位が困難であること、知的障害者、精神障害者及び発達障害者等の知覚面又は心理面の働きが原因で発現する疲れやすさや服薬の影響等による疲れやすさ等に配慮し、旅客の乗降・移動を妨げないよう配慮しつつプラットホーム上にベンチ等を設ける。 待合室 ◇プラットホーム上に待合室を設ける場合には、車椅子使用者、ベビーカー使用者等の利用に配慮し、130cm以上×75cm以上のスペースを設けることが望ましい。 プラットホーム上の設置物  ○壁面や柱などに取り付ける看板などは通行の支障にならないように設置する。 ◇売店、ベンチ、ゴミ箱等を設置する場合は、車椅子使用者や視覚障害者、一般利用者等の通行の支障にならないようにすることが望ましい。 ◇ロービジョン者が各設置物を視認できるよう、プラットホームの床面と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)に配慮した色とすることが望ましい。 プラットホーム上の柱の識別  ○ロービジョン者が柱を認識できるよう、柱の色あるいは柱の下端部の色はプラットホーム床面と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保する。 185ページ 照明設備  ◎プラットホームには照明設備を設ける。 ○プラットホームの両端部まで、高齢者やロービジョン者等の円滑な乗降のため、採光や照度に配慮して照明設備を設置する。 駅名標示  ○到着する駅名を車内で標示する場合を除き、車内から視認できる高さに駅名標を表示する。 ○到着する駅名を車内で標示する場合を除き、車内のどの位置からも視認できるよう駅名標の配置間隔に配慮する。 停車駅案内  ◇コンコースからプラットホームに至る箇所等に、方面ごとに列車の種別、行き先、発車時刻等がわかるよう案内表示をすることが望ましい。 ◇列車の種別ごとの停車駅がわかるよう案内表示をすることが望ましい。 ◇列車到着時に降車した駅が旅客にわかるよう、駅名の音声案内を行うことが望ましい。 階段の音響案内 「A視覚障害者誘導案内用設備 ■音声・音響案内」(120ページ)参照  音声・音響計画 ◇指向性スピーカー等の活用により、音声・音響案内、案内放送の輻輳を避けた音声・音響計画を実施することが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 186〜187ページ 参考3-1-3:プラットホームの例 <ホームドア・可動式ホーム柵の場合の開口部の敷設例> <固定式ホーム柵の場合の開口部の敷設例> (参考2-2-19も合わせて参照) 188ページ 参考3-1-4-1:ホーム始終端部における敷設方法の例 参考3-1-4-2:T字部における敷設 参考3-1-4-3:構造物と干渉する場合の敷設 ※「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン 追補版」(平成14年12月)の策定にあたり実施した「コの字迂回敷設部分と連続敷設部分の歩行実験」の結果、被験者の90%から連続敷設を支持する回答を得たことから、上図の連続敷設方式を採用し、また構造物と衝突した際の安全性を考慮し、柱などの構造物にはクッションなどを設けることが望ましいとしている。このような敷設方法とした理由として、「@迂回すると方向や位置がわからなくなる。」、「A構造物の線路側のブロックが無くなるのは困る。」、「B連続敷設が簡潔で分かりやすい。連続敷設は構造物に触れることができる。触れることで安全を確認する。」、「Cホーム縁端からの距離が一定である。」等の意見があった。 189〜190ページ 参考3-1-4-4:ホーム終端部におけるブロックの敷設と柵の設置の例 ○ホーム終端の列車が停止しない部分の柵とブロックの例 ○ホーム終端にエレベーターやトイレ等がある場合の柵とブロックの例 <島式ホーム終端で列車が停止しない部分が左右非対称である場合の柵とブロックの例> 参考3-1-5:ホームドア・可動式ホーム柵の例 参考3-1-6:乗降位置表示の例 191ページ (コラム13)待機場所の危険防止の例 ・狭いホームで、階段近く等に待機すると危険が伴うため、注意喚起を行っている。 参考3-1-7:駅員連絡装置の例 参考3-1-8-1:ホームと車両の段差5mmを実現した例 ・ホームと車両のすき間をできる限り小さくするため、車両限界からの離れを52mm±2mmという精度で先端タイルが設置された。これは全ての駅のホームを直線で構成することにより可能となった。また、荷重条件による車両床高さの変動が少ない鉄輪式リニアモータシステムの台車の特徴を活かし、ホーム床と車両床のレベル差を±5mmに調整することでほぼ完全なフラット化が図られた。 192ページ 参考3-1-8-2:渡り板の例 参考3-1-8-3:回転灯等を設置して転落の危険に対し注意喚起している事例 参考3-1-9:ホーム床面と柱の識別しやすい事例 ・ホーム床面と柱の下端部分の色を変えることで柱の存在を目立たせている。(左写真) ・柱全体を床面と異なる色とすることで柱の存在を目立たせている。(右写真) 193ページ 参考3-1-10:駅名標の掲出高さの考え方 ・車内から車外への視界は、窓によって確保されている。したがって、車外の見やすい範囲は、車内にいる利用者の視点と窓の上端を結ぶ線より下で、座席に座る人に遮られない窓の半分程度より上の範囲になる。また、利用者の視野は、高齢者等にとって体をねじって後方を見る姿勢はとりづらいので、振り向かないでも見られる前方にあるものとして考えることが望ましい。 ・図に示す通り幅員6mと8mの島式ホームを想定すると、ホーム中心に掲出する駅名標の通勤車両から見やすい掲出高さは、床面から器具の上端までそれぞれ約2.15m、2.3mになる。また、車両から約1.5m離れた独立柱上では、床面から器具の上端まで約1.9mになる。 ・同図の対向壁側の駅名標では、器具の上端が車両客室窓の上端程度の位置が見やすい高さになる。 ・このことから、駅名標の掲出高さは車両内から見やすい高さにし、ホーム上においては利用者の円滑な移動を妨げないよう配慮しつつ、時刻表等と組み合わせた自立型や柱付型などを工夫する。 ・なお吊り下げ式の場合、旅客流動を考慮して、旅客等の頭上に十分な空間を確保する必要があることにも配慮する。 194ページ 参考3-1-11:車両窓ごとに駅名標を配置した例 ・福岡市営地下鉄七隈線では、対向壁ならびに可動式ホーム柵の内壁において、車両窓に対応して駅名標が配置されている。車両窓と駅名標の位置をあわせ、車内から駅名が確認しやすい配慮がある。 ・車両内から可動式ホーム柵内側に表示された駅名標が確認できる(左写真)。 参考3-1-12:駅番号表示・駅名標における漢字・ひらがな・アルファベット表示 ・大都市地下鉄路線では、外国人旅行者をはじめとして、誰にでもわかりやすく鉄道を利用できるよう、路線名や駅名を固有のアルファベットや番号で表記している。このような表記は、色覚異常等においても判別しやすく有効である。 ・東京メトロでは同一ホーム上において、駅名標では漢字を主としつつも、ひらがな表記を付記したもの、アルファベット表記を付記したものがそれぞれ設置されている。 ※漢字表記が分かりやすい障害者やひらがな表記が分かりやすい障害者について配慮することが必要である。 路線固有のアルファベットや番号、漢字、アルファベット、ひらがなで表記 195ページ (コラム15)BRT BRTとはBus Rapid Transit(バス高速輸送システム)と言われており、Rapid:在来の道路走行より高速、Transit:定路線の乗合交通を意味する交通システムである。 世界的には大量輸送、定時性なども十分条件とされていて、専用の軌道やレーンなどにより走行空間を持つものが多い。 わが国では道路運送法、軌道法などにより規制されることが想定され、バリアフリーを考慮すべきシステムである。先進例を見ると、以下に示す方法によりバリアフリーを達成しているが、車両とプラットホームの隙間及び段の解消はいずれも課題となっている。 @車両を高床としてプラットホームを高くし、傾斜路(スロープ)などで周辺道路等との乗降ルートを確保する A車両を低床(ノンステップ)として、プラットホームも低くする BRTの施設整備にあたっては、用いるシステムによって、本ガイドラインの、「旅客施設共通」、「鉄軌道駅」、「バスターミナル」、並びに「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令」及び「道路の移動円滑化整備ガイドライン」のうち乗合自動車停留場及び路面電車停留場等を参照のこと。 196ページ 2.バスターミナル @バスターミナルの乗降場 考え方 路線バスは、最も身近な交通手段であり高齢者や障害者等にとって利用ニーズが高い。また、ノンステップ車両の普及などにより高齢者、障害者等の利用が増加することが予想される。 乗り場や行き先、発車時刻、運行情報等については、必要性の高い情報のため、視覚障害者等に配慮した案内(音声案内、携帯電話への情報提供等)を拡充することが必要である。 なお、バスターミナルとは、「旅客の乗降のため、事業用自動車を同時に二両以上停留させることを目的として設置した施設であって、道路の路面その他一般交通の用に供する場所を停留場所として使用するもの以外のもの」として定義(自動車ターミナル法第2条)されているが、公共交通移動等円滑化基準の適合義務の対象とならないバス停が集合した箇所についても同様に、本ガイドラインに沿って対応することが期待される。 移動等円滑化基準 (乗降場) 第23条 バスターミナルの乗降場は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 二 乗降場の縁端のうち、誘導車路その他のバス車両の通行、停留又は駐車の用に供する場所(以下「バス車両用場所」という。)に接する部分には、さく、点状ブロックその他の視覚障害者のバス車両用場所への進入を防止するための設備が設けられていること。 三 当該乗降場に接して停留するバス車両に車いす使用者が円滑に乗降できる構造のものであること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 ◎当該乗降場に接して停留するバス車両に車椅子使用者が円滑に乗降できる構造のものとする。 段  ○乗降場と通路との間に高低差がある場合は、傾斜路を設置する。 ○傾斜路の勾配は、屋内では1/12以下とし、屋外では1/20以下とする。 ◇屋内においても1/20以下とすることが望ましい。 幅  ○乗降場の有効幅は180cm以上とする。 仕上げ ◎乗降場の床の表面は、滑りにくい仕上げとする。 上屋  ◇防風及び雨天を考慮し、上屋を設けることが望ましい。 197ページ 進入防止措置  ◎乗降場の縁端のうち、誘導車路その他のバス車両の通行、停留又は駐車の用に供する場所(バス車両用場所)に接する部分には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者のバス車両用場所への進入を防止するための設備を設ける。 横断歩道  ○乗降場に行くために誘導車路を横切る必要がある場合は横断歩道等を設け、歩行の安全に配慮する。 運行情報の案内 ◇乗り場ごとに、行き先などの運行情報を点字・音声で表示するとともにロービジョン者に配慮した大きさや配色の文字で表示することが望ましい。 時刻表 ◇乗降場の時刻表(バスターミナル以外のバス停のものを含む。)には、ノンステップバス等の運行時間を分かり易く表示することが望ましい。 198ページ 3.旅客船ターミナル @乗船ゲート 考え方 高齢者、障害者等の移動等円滑化に配慮し、1以上は車椅子使用者の移動に配慮した拡幅ゲートを設ける。 移動等円滑化基準 (乗降用設備) 第24条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 幅は、九十センチメートル以上であること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 乗船ゲートの幅 ◎車椅子使用者の動作の余裕を見込み、有効幅90cm以上とする。 A桟橋・岸壁と連絡橋 考え方 高齢者、障害者等すべての人が安全かつ円滑に移動できるよう、連続性のある移動動線の確保に努めることが必要である。この経路のバリアフリー化にあたっては、潮の干満があること、屋外であること等の理由から特別の配慮が必要であることから、ここに記述することとする。 経路の設定にあたっては、なるべく短距離でシンプルなものとし、また風雨雪、日射などの影響にも、配慮することとする。岸壁と浮き桟橋を結ぶ連絡橋については、潮の干満によって勾配が変動することを考慮したうえで、すべての人が安全かつ円滑に移動出来る構造とすることが必要である。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第9条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロック を敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 (乗降用設備) 199ページ 第24条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合には、この限りでない。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 (視覚障害者誘導用ブロックの設置の例外) 第25条 旅客船ターミナルにおいては、乗降用設備その他波浪による影響により旅客が転倒するおそれがある場所については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 (転落防止設備) 第26条 視覚障害者が水面に転落するおそれのある場所には、さく、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設けなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の表面  ◎桟橋、岸壁や連絡橋の床は滑りにくい仕上げとする。 段差  ◎車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。 ◎段を設けない。 ◎連絡橋と浮桟橋の間の摺動部(桟橋・岸壁と連絡橋の取り合い部等をいう。)に構造上やむを得ず段が生じる場合には、フラップ(補助板)等を設置する。 摺動部 ○摺動部は安全に配慮した構造とする。 ○フラップの端部とそれ以外の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等により摺動部を容易に識別できるものとする。 ◇フラップの端部の厚みを可能な限り平坦に近づけることとし、面取りをするなど、車椅子使用者が容易に通過できる構造とすることが望ましい。 手すり ◎連絡橋等の乗降用設備には、手すりを設置する。 ○上記手すりを両側に設置する。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)とする。 ◇始終端部においては、桟橋・岸壁と連絡橋間の移動に際し、つかまりやすい形状に配慮することが望ましい。 200ページ 勾配  ◇連絡橋の勾配は、1/12以下とすることが望ましい。 視覚障害者誘導用ブロック ◎通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 ○ターミナルビルを出て、タラップその他のすべての乗降用施設に至る経路に、敷設する。ただし、連絡橋、浮桟橋等において波浪による影響により旅客が転落するおそれのある場所及び着岸する船舶により経路が一定しない部分については、敷設しない。 ○岸壁・桟橋(浮桟橋を除く)の連絡橋への入口部分には点状ブロックを敷設する。 転落防止設備  ◎視覚障害者が水面等へ転落する恐れがある箇所には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設ける。 ひさし ◇経路上には、風雨雪及び日射を防ぐための屋根またはひさしを設置することが望ましい。 揺れ  ◇浮桟橋は、すべての人が安全に移動できるように、波浪に対し揺れにくい構造に配慮することが望ましい。 明るさ ○高齢者やロービジョン者の移動等円滑化に配慮し、充分な明るさを確保するよう、採光や照明に配慮する。 *:基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 201ページ Bタラップその他の乗降用設備 (1)タラップ 考え方 高齢者、障害者等すべての人が安全かつ円滑に移動できるよう、連続性のある移動動線の確保に努めることが必要である。タラップに設けられる手すり及び階段は、旅客施設共通の規定のほかに、特別な配慮が必要であることから、ここに記述することとする。 桟橋・岸壁とタラップ、タラップと船舶の接続部に生じる段差については、フラップ(補助板)等を設けることで、その解消を図る。 また、タラップに階段が設けられている場合は、別途、スロープや昇降装置を併設することを原則とする。タラップは船舶等の揺れの影響を受けるため、ある程度の揺れが常時発生することから、手すりや転落防止柵を設置する。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第9条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロック を敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 (乗降用設備) 第24条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合には、この限りでない。 二 幅は、九十センチメートル以上であること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 (視覚障害者誘導用ブロックの設置の例外) 第25条 旅客船ターミナルにおいては、乗降用設備その他波浪による影響により旅客が転倒するおそれがある場所については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 (転落防止設備) 202ページ 第26条 視覚障害者が水面に転落するおそれのある場所には、さく、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設けなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 表面  ◎滑りにくい仕上げとする。 幅  ◎有効幅90cm以上とする。 ◇高齢者等が安全に移動できるよう、両側の手すりにつかまることが出来る程度の有効幅とすることが望ましい。 段  ◎車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。 ◎段を設けない。 ◎桟橋・岸壁とタラップ、タラップと舷門(船舶)の間の摺動部に、構造上やむを得ず段が生じる場合には、フラップ(補助板)等を設置する。 摺動部 ○安全に配慮した構造とする。 ○フラップの端部とそれ以外の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により摺動部を容易に識別できるものとする。 ◇フラップの端部の厚みを可能な限り平坦に近づけることとし、面取りをするなど、車椅子使用者が容易に通過できる構造とすることが望ましい。 ○タラップ本体に階段を有する場合、別途スロープ又は昇降装置を設置する。 階段  ○タラップの高さが変化する構造のものを除き、蹴込み板を設ける。 手すり  ◎タラップには、手すりを設置する。 ○上記手すりを両側に設置する。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)とする。 ◇始終端部においてはタラップへ乗り移る場合に際し、つかまりやすい形状に配慮することが望ましい。 勾配  ◇1/12以下とすることが望ましい。 視覚障害者誘導用ブロック  ◎通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 203ページ 転落防止設備 ◎視覚障害者が水面等へ転落する恐れがある箇所には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設ける。 ひさし ◇風雨雪及び日射を防ぐことができる構造の屋根またはひさしを設置することが、望ましい。 *:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 参考3-3-1:タラップの例 204ページ (2)ボーディングブリッジ 考え方 高齢者、障害者等すべての人が安全かつ円滑に移動できるよう、連続性のある動線の確保に努めることが必要である。ボーディングブリッジのバリアフリー化にあたっては、特別の配慮が必要であることから、ここに記述することとする。 旅客船ターミナルとボーディングブリッジ、ボーディングブリッジと乗降口の接続部、及びボーディングブリッジ内の伸縮部に生じる段については、フラップ(補助板)等を設置することで、その解消を図る。 移動等円滑化基準 (移動等円滑化された経路) 第4条 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第9条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロック を敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない (乗降用設備) 第24条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合には、この限りでない。 二 幅は、九十センチメートル以上であること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 床の表面  ◎ボーディングブリッジの床は滑りにくい仕上げとする。 幅  乗降口  ◎有効幅90cm以上とする。 通路  ◎有効幅90cm以上とする。 ◇車椅子使用者を含めた旅客の円滑な流動を確保するため、人と車椅子使用者がすれ違うことができる有効幅又は場所を確保することが望ましい。 205ページ 段  ◎車椅子使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものとであること。 ◎段を設けない。 ◎桟橋・岸壁とボーディングブリッジ、ボーディングブリッジと舷門(船舶)の間の摺動部に構造上やむを得ず段が生じる場合には、フラップ(補助板)等を設置する。 摺動部 ○安全に配慮した構造とする。 ○フラップの端部とそれ以外の部分との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により摺動部を容易に識別できるものとする。 ◇フラップの端部の厚みを可能な限り平坦に近づけることとし、面取りをするなど、車椅子使用者が容易に通過できる構造とすることが望ましい。 ○伸縮部を除き、両側に手すりを設置する。 手すり ◎ボーディングブリッジには、手すりを設置する。 ○上記手すりを両側に設置する。 ○高齢者や杖使用者等の肢体不自由者、低身長者をはじめとした多様な利用者の円滑な利用に配慮した手すり(例えば2段手すり等)を設置する。 ◇始終端部においては、ボーディングブリッジへの移動に際し、つかまりやすい形状に配慮することが望ましい。 勾配  ◇1/12以下とすることが望ましい。 視覚障害者誘導用ブロック  ◎通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 ○傾斜部の始終端部から30cm程度離れた箇所に、点状ブロックを敷設する。 転落防止設備  ◎視覚障害者が水面等へ転落する恐れがある箇所には、柵、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設ける。 戸  ○係員による開放を行わない場合は、自動式の引き戸とする。 *:基準では「色の明度、色相又は彩度の差」とあるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 206ページ 4.航空旅客ターミナル施設 @航空旅客保安検査場の通路 考え方 車椅子使用者、その他金属探知機に反応することが明らかな器具等を使用する者については、門型の金属探知機を通過しなくて済むよう、十分な広さを有する別通路を設けるとともに、その旨の案内表示を行う。 移動等円滑化基準 (保安検査場の通路) 第27条 航空旅客ターミナル施設の保安検査場(航空機の客室内への銃砲刀剣類等の持込みを防止するため、旅客の身体及びその手荷物の検査を行う場所をいう。以下同じ。)において門型の金属探知機を設置して検査を行う場合は、当該保安検査場内に、車いす使用者その他の門型の金属探知機による検査を受けることのできない者が通行するための通路を別に設けなければならない。 2 前項の通路の幅は、九十センチメートル以上でなければならない。 3 保安検査場の通路に設けられる戸については、第四条第五項第二号ロの規定は適用しない。 4 保安検査場には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該保安検査場に表示するものとする。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 通路の幅  ◎有効幅90cm以上とする。 案内表示  ○金属探知機に反応する車椅子使用者、医療器具等の使用者、妊産婦等が金属探知機を通過しなくてすむ旨の案内表示をする。 保安検査場における聴覚障害者の案内  ◎筆談用のメモなどを準備し、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ◎この場合においては、当該設備を保有している旨を保安検査場に表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通が図れるように配慮する。参考2-3-14 ○筆談用具がある旨の表示については、職員及び旅客から見やすく、かつ旅客から手の届く位置に表示する。 207ページ A航空旅客搭乗橋 考え方 搭乗橋は伸縮部分、可動部分を含む構造であるが、可能な限り移動等円滑化に配慮する。 移動等円滑化基準 (旅客搭乗橋) 第28条 航空旅客ターミナル施設の旅客搭乗橋(航空旅客ターミナル施設と航空機の乗降口との間に設けられる設備であって、当該乗降口に接続して旅客を航空旅客ターミナル施設から直接航空機に乗降させるためのものをいう。以下この条において同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、第三号及び第四号については、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 幅は、九十センチメートル以上であること。 二 旅客搭乗橋の縁端と航空機の乗降口の床面との隙間又は段差により車いす使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車いす使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備が一以上備えられていること。 三 勾配は、十二分の一以下であること。 四 手すりが設けられていること。 五 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 2 旅客搭乗橋については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 幅  ◎有効幅90cm以上とする。 参考3-4-1 勾配  ◎渡り板部分を除き、1/12以下とする。 ○渡り板部分についても、移動等円滑化に配慮し、可能な限り勾配を緩やかにする。 手すり ◎可動部分等を除き、手すりを設置する。 ○上記手すりは両側に設置する。 ◎伸縮部の渡り板部分には手すりを設置する。 ○上記手すりは両側に設置する。 床の表面  ◎床の表面は滑りにくい仕上げとする。 視覚障害者誘導用ブロック  ◎旅客搭乗橋については、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 渡り板 ◎旅客搭乗橋の縁端と航空機の乗降口の床面との隙間又は段差により車椅子使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車椅子使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備を1以上備える。 ○渡り板の表面は滑りにくい仕上げとする。 208ページ 参考3-4-1:航空旅客搭乗橋と代替設備の例 航空機に搭乗する際、搭乗橋により直接搭乗できる方式が望ましいが、物理的制約等から他の方式を取らざるを得ない場合もある。この場合、代替設備を利用した搭乗方法がある。 <航空旅客搭乗橋> 搭乗橋のつなぎ目部分の段差を解消 209ページ <パッセンジャーボーディングリフト(PBL)車> <小型機専用車椅子リフト>   <車椅子昇降装置のついたタラップ> <スロープ(米国)> B航空旅客搭乗改札口 考え方 各搭乗口の自動若しくはその他の改札口は、車椅子使用者が円滑に通過できるよう配慮する。 移動等円滑化基準 (改札口) 第29条 各航空機の乗降口に通ずる改札口のうち一以上は、幅が八十センチメートル以上でなければならない。 ガイドライン ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容 幅  ◎各航空機の乗降口に通ずる改札口のうち1以上は、有効幅80cm以上とする。 210ページ 巻末参考:3,000人未満の無人鉄軌道駅における配慮事項 1日当たりの平均的な利用者の人数が3,000人未満であって係員が配置されていない既存の鉄軌道駅については、構造的な制約、利用状況、立地特性等を踏まえつつも、次に掲げる配慮事項を考慮し施設整備を行うことが望まれる。 @移動経路の配慮事項 ・エレベーター、緩やかな傾斜路等により段差解消を図ることが望ましい。 ・階段については、高齢者や杖使用者、視覚障害者等の円滑な利用に配慮し、手すりを設置することが望ましい。 A誘導案内設備の配慮事項 ・車両等の運行の異常に関連して、遅れ状況、遅延理由、運転再開予定、到着予定時刻などの案内放送その他音声による情報提供を行うことが望ましい。 ・上記情報を常時確認できるよう、また、聴覚障害者に配慮し、インターネット、通信回線等を活用した文字情報を提供することが望ましい。(参考2-2-13のような情報提供装置を無人駅にも設置する等) ・出入口から乗降位置まで視覚障害者誘導用ブロックを敷設することが望ましい。 Bプラットホームの配慮事項 ・プラットホームにおいては、車両とホームの段差・隙間が大きいことが想定されることから、車椅子使用者の乗降のための渡り板を施設側・車両側いずれか速やかに設置できる場所に配備することが望ましい。また、渡り板の傾斜は、乗降時の介助や電動車椅子の登坂性能を考慮し、可能な限り10度以下とすることが望ましい。 ・地方鉄道等において段差が著しく大きい場合には、@施設側によるホーム嵩上げ、A車両側における低床化、B段差解消設備を設ける等により、可能な限り段差解消に努めることが望ましい。 ・転落防止措置としてホーム縁端警告ブロック、点状ブロックを敷設することが望ましい。 Cその他コミュニケーション手段の確保等 ・係員等とコミュニケーションを図ることができるようプラットホームのわかりやすい位置にインターホン等の駅員連絡装置の設置、あるいは携帯電話などにより連絡できるようわかりやすい位置に連絡先電話番号等を掲示することが望ましい。 ・視覚障害者の上記コミュニケーション手段の確保に配慮し、インターホン等の駅員連絡装置を設置する場合には、当該場所まで視覚障害者誘導用ブロックを敷設することが望ましい。また、携帯電話番号を提示する場合には、あらかじめ事業者のホームページ等に連絡先電話番号を示しておくこと(読み上げ対応)等も有効である。 ・地域のボランティア等との連携によるコミュニケーション、接遇・介助が行われることも有効と考えられる。 211ページ 高齢者・障害者等の主な特性 (1)高齢者 「平成24年版高齢社会白書」によると、昭和45年(1970年)には、7.1%であった高齢化率(65歳以上の高齢者の比率)は、平成23年(2011年)には23.3%に達しており、平成47年(2035年)には国民の3人に1人が65歳以上の高齢者となると予測されている。 高齢者は、身体機能が全般的に低下しているため、明らかに特定の障害がある場合以外は、外見上顕著な特徴が見られないこともある。しかし、程度は軽くても様々な障害が重複している可能性があり、移動全般において身体的・心理的負担を感じていることが多い。 機能低下の内容や程度は様々であり、本人が気づいていないうちに進行していることもある。身体的な機能低下はそれぞれの障害と関連して対応を考えることができる。例えば、耳が遠くなるということは聴覚障害の一部と考えることができ、白内障で視力が低下することは、視覚障害の一部ということができる。 心理面では、体力全体が低下している高齢者は、機敏な動きや、連続した歩行等に自信がなくなり(また、実際に困難になり)、心理的にも気力が低下してくることがある。 ■移動上の困難さ ・人混み、大規模な旅客施設、普段利用しない場所では不安を感じやすい。 ・若い人のように長い距離を歩いたり、素早く行動することが困難な傾向にある。 ・転倒したり、つまずきやすくなり、大きなけがにつながる可能性がある。 ・路線図、運賃表、時刻表などの小さな文字が見えにくい。 ・新しい券売機等の操作がわかりにくい。 ・階段の上り下り、車両の乗降などは、身体的負担が大きい。 ・階段の利用については、上るとき以上に下るときの身体的負担が大きく、不安に感じる。 ・トイレに頻繁に行きたくなる。 ・長時間の立位が困難であり、ベンチなどに座る必要がある。 ・屋外や空調下などでは、水分摂取が適宜行えない等から体温調整が難しい。 等 1)認知症 認知症は加齢に伴い著しく出現率が高まる疾病である。認知症の基本的な症状は単なる「もの忘れ」ではなく、脳の萎縮や血管の病変によって起こる認知・記憶機能の障害である。認知症にはいくつかの原因があり、アルツハイマー病や脳血管性認知症が代表的である。 ■移動上の困難さ ・体験の全部や少し前のことを忘れたり、忘れたことの自覚を伴わない記憶機能の障害がある。 ・自分のいる場所や行き先、時間がわからなくなる見当識の障害がある。 ・徘徊行動をとり旅客施設などに迷い込む場合がある。こうした行動は制止が困難な場合が多い。 等 212ページ (2)肢体不自由者(車いすを使用している場合) 車いす使用者は、下肢等の切断、脳血管障害、脊髄損傷、脳性麻痺、進行性筋萎縮、リウマチ性疾患等により下肢の機能が失われる(又は低下するなど)こと等により、障害に適した車いす(手動車いす、簡易式折りたたみ式電動車いす、電動車いす、ハンドル形電動車いす、(身体支持部のティルト機構やリクライニング機構等を有する)座位変換形車いす等)を使用している。また、一時的なけがによる車いすの使用も考えられる。 脳血管障害により車いすを使用している人は、左右いずれかの片麻痺の状態であることが多く、片方の手足で車いすをコントロールしている場合がある。 脊髄損傷により車いすを使用している人は、障害の状況により下半身、四肢等の麻痺が生じ、歩行が困難又は不可能になっている。また、便意を感じない、体温調整が困難、床ずれになる等、生活上多くの2次障害を抱えている場合が多い。床ずれを予防するため車いすのシートにクッションを敷いていることが多い。 脳性麻痺により車いすを使用している人は、不随意の動きをしたり、手足に硬直が生じていることがあり、細かい作業(切符の購入等)に困難をきたす場合がある。また、言語障害を伴う場合も多くあり、知的障害と重複している場合もある。 進行性筋萎縮症は進行性で筋肉が萎縮する疾患である。進行性のため、徐々に歩行が困難となり車いすを使用するに至る。首の座りや姿勢を維持するのが難しい場合もあり、筋肉が弱っていることから身体に触れる介助は十分な配慮が必要となる。 リウマチは慢性的に進行する病気で、多くは関節を動かした時に痛みを伴う。関節が破壊されていくため、特に脚などの力のかかる部分は、大きな負担に耐えられなくなる。そのため、症状が重くなると車いすを使う場合がある。 ■移動上の困難さ ・車いす使用者は、段差や坂道が移動の大きな妨げとなる。 ・移動が円滑に行えない、トイレが使用できない等の問題があることから、外出時の負担が大きい。 ・階段、段差だけでなく、極端な人混み、狭い通路、急なスロープ、長い距離のスロープ、通路の傾斜などの通過も困難となる。 ・券売機の設置位置が高かったり、車いすのフットサポートが入るスペースが十分でないなど券売機での切符の購入が困難な場合がある。 ・頭の位置が低いために人混みでは周囲の人のバッグなどが顔にあたることがある。 ・視点が常に低い位置にあり、高い位置にあるものが見えにくかったり、手が届かないことがある。 ・上肢に障害がある場合、手腕による巧緻な操作や作業が難しく、エレベーターやトイレ、券売機等の操作ボタン等の操作が困難な場合がある。 ・車いす(手動車いす、簡易式折りたたみ式電動車いす、電動車いす、ハンドル形電動車いす、座位変換形車いす等)が安定的に位置取りかつ動作できるスペースが必要なことがある。 等 213ページ (3)肢体不自由者(車いす使用以外) 杖歩行の場合、スロープでは滑りやすく、また、膝上からの義肢を装着している場合には、膝がないため下肢をまっすぐに踏ん張ることができず、勾配により歩くことが困難となる。加えて、車内では直立時の安定性が低く転倒の危険性があるため、多くの場合、座席が必要となる。 杖歩行以外でも、障害の部位や程度は様々で、その部位によって歩行機能のレベルや求められるニーズが異なる。 ■移動上の困難さ ・階段、段差だけでなく、極端な人混み、狭い通路、スロープ、通路の傾斜などの通過も困難となる。 ・肢体不自由のため杖歩行をしている人は、短距離の移動でも疲労を感じる。ベンチなど休憩する場所を必要とする。 ・松葉杖などを使用している人は、両手がふさがるため、切符の購入や料金の支払いが困難になる場合がある。 等 (4)内部障害者 「平成24年版障害者白書」によると、内部障害者は約107万人で、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の約31%を占めている。 内部障害は、普段、外見上わかりにくい障害である。全体の半数以上が1級の障害で、心臓疾患がもっとも多く、ついで腎臓疾患である。他の障害に比べ年々増加しているのが大きな特徴である。 1)心臓機能障害 不整脈、狭心症、心筋症等のために心臓機能が低下した障害で、ペースメーカー等を使用している人がいる。 2)呼吸器機能障害 呼吸器系の病気により呼吸機能が低下した障害で、酸素ボンベを携行したり、人工呼吸器(ベンチレーター)を使用している人がいる。 3)腎臓機能障害 腎機能が低下した障害で、定期的な人工透析に通院している人がいる。 4)膀胱・直腸機能障害 膀胱疾患や腸管の通過障害で、腹壁に新たな排泄口(ストーマ)を造設している人がいる。オストメイト(人工肛門や人口膀胱を持つ人)は、トイレの中に補装具(パウチ=排泄物を溜めておく袋)を洗浄できる水洗装置、温水設備等を必要とする。 5)小腸機能障害 小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている人がいる。 214ページ 6)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害 HIVによって免疫機能が低下した障害で、抗ウィルス剤を服薬している。 上記の内部障害の他にも膠原病や、パーキンソン病、ペーチェット病等の難病も、病気の進行によって、平衡を維持できない場合がある等、日常生活に著しく制約を受ける。 ■移動上の困難さ ・長時間の立位が困難な場合がある。 ・心肺機能の低下等により長い距離を連続して歩くことや階段の昇降が困難な場合がある。 ・携帯電話等の電波によるペースメーカーへの影響が懸念される。 ・障害の部位により、空気の汚染されている場所に近づけないことや、酸素ボンベの携行が必要な場合がある。 ・膀胱・直腸等の機能障害による排泄の問題がある。 ・オストメイトの人のパウチ洗浄設備など、トイレに特別の設備を必要とする場合がある。 等 (5)視覚障害者(全盲・ロービジョン・色覚異常) 「平成24年版障害者白書」によると、視覚障害者は約31万人、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の約9%を占めている。疾病等により後天的に障害となった人が80%と圧倒的に多く、年齢が高くなるほど増加している。 また、色覚異常の人は、日本人の男性の20人に1人、女性は500人に1人の割合で、全国で約320万人程度いると言われている。 視覚障害者には、主として音声による情報案内が必要となる。たとえば、運賃や乗り換え経路の案内、駅構内の案内等である。また、ホーム上での適切な誘導による安全確保等、移動の安全を確保することが重要となる。 視覚障害者は、まったく見えない全盲の人だけでなく、光を感じたり物の輪郭等を判断でき、視覚障害者誘導用ブロックや壁面・床面のラインと背景色の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)を目印に外出できるようなロービジョン(弱視とも呼ばれる)と言われる人も少なくない。全盲は視覚に障害のある方の2割程度といわれ、その他はロービジョンとなる。ロービジョンは周囲の明るさや対象物の輝度コントラスト等の状況によって、同じ物でも見え方が異なる場合がある。 ほかに、視野の一部に欠損があり、周囲の情報を十分に視覚的に捉えることができない障害や視力低下、ぼやけて見えにくい、視野狭窄により見えにくい、視野の中心の暗点により見えにくい、明暗の順応に時間がかかる、まぶしく感じて見えにくい等、様々な障害がある。 色覚異常の人は、明度や彩度の似た色の判別が困難となる。また、加齢により色覚機能が低下する人もいることから、今後、高齢化の進展により何らかの色覚異常を有する人が増えるものと見込まれる。 色覚異常の人は、一見異なった色でも同じ明度や彩度の場合見分けることが困難となることがある。例えば、「赤と緑とグレー」、「オレンジと黄緑」は明度が同じであるため、区別することが困難となる場合がある。 逆に、「緑と青緑」の2色は見分けることができる場合がある。このため、旅客施設における案内表示等について、色覚異常の人に対する配慮が必要となる。 215ページ 視覚障害者が、公共交通機関を利用して外出する時は、目的地への道順、目標物等を事前に学習してから出かけることが一般的である。しかし、日によって屋外空間の状況は変化することから、天候、人の流れ、不意な工事の実施等、いつもと違う環境に遭遇することも少なくない。また、急に初めての場所に出かける必要に迫られることもある。単独歩行に慣れている視覚障害者でも、こうした状況の変化は緊張を強いられ、ともすれば思わぬ危険に遭遇することもある。駅周辺の放置自転車や、コンコースに出店している売店等も注意しなければぶつかるため、周囲の配慮が必要となる。 ■移動上の困難さ ・経路の案内、施設設備の案内、運行情報等、主として音声・音響による情報案内が必要である。 ・視覚障害者はホーム上を歩行する際に転落の危険・不安を感じている。 ・ロービジョン者は、色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)がないと階段のステップや表示などが認識できない場合がある。また、文字表示は大きくはっきりと表示し、近づいて読めることが必要である。 ・色覚異常の人は、線路の案内図や時刻表、路線情報の表示などにおいて、明度や彩度の似た色など、色の組み合わせによりその識別が困難になる場合がある。 等 (6)聴覚・言語障害者 「平成24年版障害者白書」によると、聴覚・言語障害者は約34万人、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の約10%を占めている。 聴覚・言語障害者は、コミュニケーションをとる段階になって、初めてその障害に気がつくことが多く、普段は見かけ上わかりにくい。聴覚の障害も個人差が大きく、障害の程度が異なる。特に乳幼児期に失聴するなど、その時期によっては言葉の習得が困難になるため、コミュニケーションが十分に行えない場合もある。聞こえるレベルにより、補聴器でも会話が可能な人もいるが、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時等、うまく聞き取れないこともある。また、重度の聴覚障害の場合には補聴器をつけても人の声を聞き取ることができない場合がある。聞こえないことにより、言葉をうまく発音できない障害を伴うことがある。また、聴覚障害という認識がなくても、高齢になり耳が聞こえにくくなっている場合もある。 聴覚障害者は、公共交通機関を利用するときに、駅の案内放送、発車ベル、車内放送等が聞こえず困難を感じている。電光掲示装置や何らかの視覚的な表示機器を必要としている。アナウンスが聞き取れない、車内に電光掲示装置がない等の状況では、外を見たり、駅名、停留所名表示に常に注意しなければならない。列車の接近音、発車合図が聞こえないことにより、列車に接触しそうになったり、ドアに挟まれそうになったり、危険な思いをすることが少なくない。 聴覚・言語障害者にとって、窓口や案内時におけるコミュニケーションの取り方を習得した職員による、短く簡潔な文章による筆談、できれば簡単な手話等での対応が望まれる。 ■移動上の困難さ ・旅客施設内、ホーム、車内での案内放送が聞こえない場合がある。 216ページ ・ホーム等では列車の接近や発車合図に気がつかない場合がある。 ・事故や故障で停止・運休している時の情報が音声放送だけではすぐに得られない。 ・駅の案内放送、発車ベル、車内放送等が聞こえず困難を感じることがある。 ・可変式情報表示装置や何らかの視覚的な表示機器がない駅や車内では不便を感じる。 ・外見で判断することが難しく、周囲が気づきにくいため障害を理解されないことがある。 ・聴こえるレベルにより、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時等、うまく聞き取れないことある。 ・カウンター窓口越しの対応などで相手の表情が見えないとコミュニケーションが取りにくいことがある。 等 (7)知的障害者 「平成24年版障害者白書」によると、わが国の知的障害児・者数は、54万7千人であり、年々増加の傾向にある。在宅生活をしている知的障害者は41万9千人、施設で生活している知的障害者は12万8千人である。 知的障害とは、概ね18歳頃までの発達期に脳に何らかの障害が生じたために、「考えたり、理解したり、感情をコントロールしたり、話したり」する等の知的な能力やコミュニケーションに障害が生じ、社会生活への適応能力が同年齢の子供と比べて低いなどの課題を持つ障害である。主な原因として、ダウン症候群など染色体異常によるもの、脳性マヒやてんかんなどの脳の障害がある。また、発達障害を併せもつことが少なくない。 知的障害者は都道府県等より療育手帳(知的障害者福祉手帳)が交付されている。 1)ダウン症 ダウン症は染色体異常を伴う障害である。身体的な特性としては、成長に少し時間がかかるため、出生時から体重、身長とも平均より少なくその後も同年齢の平均に比べ小さい等の特徴がある。 ■移動上の困難さ ・利用上のルールや常識が理解できにくいことがある。 ・一度にたくさんのことを言われると混乱することがある。 ・困ったことが起きても、自分から人に助けを求めることができない人もいる。 ・コミュニケーションに際しては、ゆっくり、ていねいに、わかりやすく説明することが必要となる。 等 (8)精神障害者 「平成24年版障害者白書」によると、わが国の精神障害者は302万8千人であり、年々増加の傾向にある。在宅生活をしている精神障害者は267万5千人、施設に入所している精神障害者は35万3千人である。 217ページ 1)統合失調症  約1%の発病率で身近な病気である。日本では約67万人が治療を受け、20万人以上が入院生活を送っている。  不眠やあせりの気持ちがひどくなり、つらい気持ちになるが、治療を受け十分な休養とって規則正しい生活のリズムを作ると、回復へ向かう。 2)うつ病  うつ病は、ストレスにさらされれば誰でもなる可能性がある。大きな悲しみ、失敗等が原因で、食欲の低下や不眠を招くことがあるが、うつ病はこれが重症化し、そのまま治らなくなったり、治りにくくなった状態である。 まれに高揚状態(そう)があらわれる人もいる。 3)てんかん  脳内に正常よりも強い電気的変化が突発的に生ずることにより、意識障害やけいれんの発作が起きる病気で、規則的に服薬を続けると大部分は発作を防げるようになる。また、手術で根治する場合もある。一部に発作をコントロールできず、発作が繰り返されることがあるが、発作は通常2〜3分でおさまる。まれに発作が強くなったり、弱くなったりしながら長時間つづく「発作重積」と呼ばれる状態がある。 ■移動上の困難さ ・ひとりで外出する時や、新しいことを経験するときは、緊張し、不安を感じやすい。 ・腹痛や吐き気を催すときがあるので、トイレの近くに座るようにしている人や、喫煙によりストレスの解消を図ろうとする人がいる。 ・関係念慮(本来自分とは関係のないことを自分に関係づけて考えたり感じたりする。)が強く外出することが困難な人もいる。 ・のどの渇き、服薬のため水飲み場を必要とする人もいる。 等 (9)発達障害者 発達障害は、人口に占める割合は高い(「平成19年版障害者白書」によると、小中学校の通常学級において、全児童生徒の約6%の割合で存在することが指摘されている。)にもかかわらず、法制度もなく、十分な対応がなされていない状況であったが、平成17年4月に「発達障害者支援法」が施行され、公的支援の対象となった。同法では発達障害とは広汎性発達障害(自閉症等)、学習障害、注意欠陥多動性障害等、通常低年齢で発現する脳機能の障害とされている。 1)自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群  自閉症は、人との関わりが苦手、コミュニケーションが上手にとれない、興味や関心の範囲が狭く特定の物や行為へこだわりを示すなどの特徴がある。高機能自閉症やアスペルガー症候群は、自閉症の特徴をもちながらも知的発達の遅れを伴わないので、障害に気づくことが更に遅れやすいと言われている。これらの障害を総称して広汎性発達障害又は自閉症スペクトラムともいう。 2)学習障害(LD)  学習能力(読み・書き・計算等)の一領域のみが他に比べて著しく発達が遅れている場合、学習障害と診断される。 218ページ 3)注意欠陥・多動性障害(AD/HD)  注意欠陥・多動性障害は、適切に注意や関心を持続することが困難、外からの刺激に衝動的に反応しやすい、自分の感情や行動をうまくコントロールできないといった行動がみられる。 ■移動上の困難さ ・外見で判断することが難しく、周囲が気づきにくいため障害を理解されないことがある。 ・利用上のルールや常識が理解できにくいことがある。 ・車内で座席にずっと座っていることができないことがある。 ・大声をだしたり騒いだりする人もいる。 ・環境の変化を理解し対応することが困難なので、ごくわずかな変化にも対応できないことがあり、例えば行き先の変更や時間の遅れが合った場合に困惑する。 ・場面にあった会話や行動ができず、周囲から浮いてしまうことがある。 ・気持ちをうまく伝えられないために、コミュニケーションがとれないことがある。 ・流れる文字や情報表示の転換が早いときには情報取得が困難となる。 ・匂い、光、音、温度等に対して感覚過敏や感覚鈍麻がある場合がある。 ・聴いても理解できなかったり、時刻表が読めない人もいる。 ・「不注意」「多動性」「衝動性」の行動特徴があり、車内で座席にずっと座っていることができない人もいる。 等 (10)妊娠中・乳幼児連れ(ベビーカー使用者など)の人 妊娠中の人やベビーカーを使用している人、子どもを抱いている人は、円滑な移動のためには、さまざまな配慮が必要となる。 特に、妊娠初期の人は、赤ちゃんの成長やお母さんの健康を維持するための大切な時期であるものの、外見からはわかりにくいため特段の配慮が必要となる。また、他の人に迷惑をかけてしまうことを恐れたり、公共交通機関の利用を躊躇してしまうといった心理的なバリアが存在している場合がある。 ■移動上の困難さ ・妊娠初期は外見からはわかりにくいため、体調が優れない場合でも優先座席の利用がしにくい。 ・長時間立っているのが困難な場合がある。 ・長い距離を連続して歩くことや階段の昇降が困難な場合がある。 ・妊娠中でお腹が大きくなった人は足元が見えにくくなるため、階段を下りることが非常に困難となる。 ・人ごみの中で移動しにくい。 ・ベビーカーを畳んで子どもを抱えなくては行けない場合、特にバランスを崩しやすく危険である。 ・ベビーカーや大きな荷物を持っている場合、また子どもが不意な行動をとる場合などに他の人の迷惑になったり、危険な場合があるため、公共交通機関の利用に心理的なバリアを感じている。                                  等 219〜220ページ (11)外国人 日本語による情報を理解することが困難である。日本語によるコミュニケーションが困難である。英語表記やその他の外国語による表記、言語の違いによらない図記号(ピクトグラム)や数字・アルファベットなどを用いた表示が有効である。 (12)一時的な怪我をした人や大きな荷物を持った人 海外旅行用トランクやカートなどの大きな荷物を持ったまま、あるいは怪我をして公共交通機関を利用する場合に、階段や段差の移動、長距離の移動が困難となることがある。 (13)病気の人 病気の人は、病気の種類や状況によって身体機能が全般的に低下し、階段や段差の移動、長距離の移動が困難となることがある。また、移動中において服薬や注射などを必要とする場合がある。 (参考)上記の「高齢者・障害者の主な特性」を参照のうえ、個々の障害に対応したニーズを的確に把握し、障害の特性に応じた適切な対応が求められる。一方でWHO(世界保健機関)では、ICF(国際機能分類)という考え方が採択されている。これは、人間の生活機能と障害について「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つの次元及び影響を及ぼす「環境因子」等の因子で構成されるもので、例えばバリアフリー整備による環境評価も含めた機能分類を行うことができる。今後の新たなバリアフリー化のための技術開発など、障害の理解並びにバリアフリー促進の視点から、ICFの適切な活用方策の検討が望まれる。 (詳しくは厚生労働省資料等を参照されたい) (高齢者・障害者等の主な特性を記載するにあたって参考とした主な文献) ・内閣府編「平成24年版 障害者白書」、2012年 ・内閣府編「平成24年版 高齢社会白書」、2012年 ・シルバーサービス振興会編「ケア輸送サービス従事者研修用テキスト 平成17年7月改訂」中央法規出版、2005年 ・国土交通省「ゆっくり「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」 −知的障害、精神障害のあるお客様への応対−」、2004年 ・全国視覚障害者情報提供施設協議会編「視覚障害者介護技術シリーズ3初めてのガイド」、1999年 ・直居鉄監修「新版 視覚障害者の介護技術 −介護福祉士のために−」YNT企画、1999年 ・大倉元宏編著、村上琢磨「目の不自由な方にあなたの腕を貸してください −オリエンテーションとモビリティの理解−」財団法人労働科学研究所、2000年 ・E&Cプロジェクト編「“音”を見たことありますか?」小学館、1996年 ・厚生省大臣官房傷害保険福祉部企画課監修「障害者ケアマネジャー養成テキスト 身体障害編」中央法規出版、1999年 ・山縣文治、柏女霊峰編集委員代表「社会福祉用語辞典 第6版 −福祉新時代の新しいスタンダード」ミネルヴァ書房、2007年 ・『21世紀のろう者像』編集委員会編「21世紀のろう者像」財団法人全日本ろうあ連盟出版局、2005年 ・介護予防に関するテキスト等調査研究委員会編、厚生労働省老健局計画課監修、「介護予防研修テキスト」株式会社社会保険研究所、2001年 221ページ おわりに 〜移動等円滑化整備の基本的な考え方に基づく整備に向けて〜 本整備ガイドラインは、多様な利用者ニーズに対応するため、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方にも配慮し、公共交通機関の望ましいバリアフリー整備の内容を示したものである。 今回のガイドライン見直しでは、本整備ガイドラインに沿った公共交通機関のバリアフリー整備に取り組むにあたっての基本的な考え方を、第1部「公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方」に記載した。これは、従来のガイドラインの記載の範囲では設備ごとの整備内容を示すことができても、個々の整備内容を連携させた連続的な整備、多様な利用者の特性に配慮した対応は難しいことから、種々の整備を行うにあたって念頭に置くべき横断的な考え方として記載したものである。 旅客施設同士や隣接する施設との一体的、連続的な整備にあたっては、関係する他の公共交通事業者や施設設置管理者との調整を図り、バリアフリー化を行うべき区域の面的整備を目指す観点から、所管行政庁とも連携して、バリアフリー法に規定されている基本構想の策定によって、公共交通機関利用者、周辺地域生活者の利便性向上を企図することも重要である。 また、ガイドラインの前提となる移動等円滑化基準(省令)のスパイラルアップについて、平成24年8月に国土交通省において取りまとめられたバリアフリー法施行状況検討会の検討結果において、中長期的に取り組むべき課題にあげられている。 今回のガイドライン見直しでは、「◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容」の項目を立てて整備内容の明確化を図ったところであり、ガイドライン改訂に続いて継続的に、バリアフリー化の進展やその技術水準、利用者ニーズ、地域の実情等の把握を行ったうえで、現行の移動等円滑化基準についても見直しを検討する必要がある。 残された課題について 【全体】 高齢社会への対応 ・加齢や生活習慣が原因で足腰の機能が衰えるなど高齢者特有の課題について、高齢者の増加、超高齢社会を迎える情勢に対応した移動等円滑化を進める必要がある。 知的障害、発達障害、精神障害者への対応 ・知的障害者、精神障害者、発達障害者への対応は症状がさまざまであり、ガイドラインでは最大公約数的な対応の記述に留まっている。こうした障害を持つ利用者への対応には、施設整備のみによらず接遇、介助との連携が重要であり、今後の記述方法について検討すべきである。 ロービジョン(弱視)者、色覚異常者への対応 ・サインや照明計画において、ロービジョン者、色覚異常者への配慮は、未だ十分とは言えず、調査研究や学究的知見に基づく科学的、医学的な根拠をもとにして現状を見直し、必要な課題について対応案を拡充する必要がある。 222ページ 車椅子、補装具等への対応 ・車椅子の派生形としてのハンドル型車椅子だけではなく、さまざまな補装具が出てきており、単にJISの規定を考慮して施設や車両の仕様を決めるだけでは公共交通機関側での対応が難しい状況が生じている。一方で利用の引き受けや接遇の運用上の問題点も現時点では明確な指針を示すに至っていないことから、これら用具を使用する障害当事者が乗車できないという状況が生じており、改善に向けた取り組みが必要である。 【旅客施設編】 <鉄道> @サイン等視覚表示設備の見え方については旅客施設構内という空間特性、多くの旅客がいること、広告等の他の掲出物との関係等さまざまな条件を考慮しなければならず課題が多い。このため必要とする情報の優先順位を明確にして機能を確保する必要がある。 A旅客施設の照明の明るさ(照度)は、JISで乗降客数により規模別に3区分され大まかな照度が規定されているのみである。現状では視力に障害がある利用者の移動円滑化の観点から十分な対応ができていないことも考えられ、ガイドラインにおいて照度以外の評価方法を示すなど、照明計画手法のあり方や、節電など通常時以外の配慮事項など、再検討の必要がある。 B視覚障害者誘導用ブロックによる視覚障害者のエスカレーターへの誘導は視覚障害者のニーズが高く、現実にはすでに利用している視覚障害者も多いことを踏まえて、音声案内との組み合わせでどのような誘導方法が安全上、利便上適切か、そのあり方を検討する必要がある。 C1日あたりの乗降客数が3,000人〜5,000人未満の旅客施設における対応をどうするか、特にこの規模の駅では無人駅が多数あることを想定し、そうした状況での接遇等の対応のあり方、5,000人以上の駅と同程度の設備が必要かどうか等、新たな整備の考え方を検討する必要がある。 Dバリアフリー法では、移動等円滑化基準への適合義務は旅客施設を新設、大改良した時に限られており、既存施設における基準適合については努力義務に留まっている。旧基準のまま残っている旅客施設が多くある中で、既存不適格の状況をどのように解消していくか議論が必要である。 【車両等編】 <鉄軌道> ・車両内の車椅子スペースについて、多くの日本の都市間鉄道の車両は車体断面が小さいため、他の車椅子使用者や車内販売のワゴン等が通過できる通路幅を確保しながら、車椅子スペースを確保することが課題となっている。 ・通勤型車両では車椅子スペースの数、設置位置について、車椅子使用者が任意の乗車位置を選択できること、ベビーカー利用者との共用化の対応など増設の必要性が指摘されたが、座席数の減少、相互直通運転等で異なる事業者の車両が乗り入れる場合の位置の不統一、渡り板による乗降介助時に場所の間違いが生じるなどの課題も残されている。 <バス> @ノンステップバスの普及が進んでいるが、低床部が狭く十分な旅客キャパシティが確保できない。車両全体へ低床部を広げる必要があり、開発中の改善型のノンステップバスのみならずインホイールモーター式のEVバスなどの活用も視野に入れ、車両の改善を進める必要がある。 223ページ Aリムジンバス、高速バス等の都市間バスについての車椅子利用、ステップ段差の最小化など、都市間バスの移動等円滑化を促進するための方策として、リフトを設置する場合の技術課題と対応方策について検討し、必要な部分はガイドラインへ取り入れる必要がある。 Bバス車両おける車椅子固定装置は多様な車椅子に容易に対応できるものがないため、装置が十分活用されていない。衝突による二次的な被害を減らすうえでも他の乗客にとっても安全上大きな課題であり、どのような車椅子にも装着できる固定装置の開発、車椅子側の固定部の明確化、強度確保等の課題を解決する必要がある。 Cベビーカーは、折りたたまない状態でのバス車両内への乗車が進んでいるが、ベビーカーの固定はガイドラインでも触れられておらず具体的な検討が必要である。 <タクシー> ・ユニバーサルデザインタクシーを新たに記載したが、高齢者などの乗降性についてはまだ課題がある。また、乗合タクシーについては、ベースとなる車両がこれまでのワゴン車両の概念を出ないもので、革新的な仕様に基づく車両の開発を促すガイドラインの検討など、今後の改善が期待される。 <航空機> 航空サービスは機材、施設、オペレーション(接遇)が相互に連携することで有効な移動等円滑化が実現されるものであり、十分な移動等円滑化が達成されるよう全体を見て議論すべき領域である。 @通路が1つしかない航空機における車椅子対応トイレは、通常のトイレ2室を連結して使用できるタイプのトイレを備えた機種が登場間近であり、今後はこれらの動向を見つつガイドラインへの取り込みを考慮すべきである。 A小型コンテナしか搭載できない機材では電動車椅子が収納できない場合があるので、この場合の対応について考える必要がある。 【旅客施設と車両等の双方に係る課題】 <鉄道> @車両とホームの段差と隙間の解決策としてホームの部分かさ上げの要望もあるが、車両の低床化等の動向も踏まえた解決策を検討する必要がある Aホームドア、ホーム柵の整備では、これまで課題とされていた車両の扉位置に依存しない、開口部を可変できるホーム柵が試験供用される段階になり、今後の動向を見極め、整備内容の記述について検討を図るべきである。 <バス> ・バス停留所の整備主体に対して、歩道とバスの間の段差解消、バスの正着ができるような構造、ガードパイプがバス出入口に支障しない等、ガイドラインでも整備促進のための記述の検討を行う必要がある。 <航空> @搭乗時のPBB(パッセンジャーボーディングブリッジ)以外の対応可能性と仕様について、ガイドライン本文への記述の必要性を検討する必要性がある。 224ページ Aランプバスの移動円滑化(ノンステップバスの導入)を進める必要がある。 この「おわりに」は、秋山哲男公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会委員長/公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン小委員会委員長、鎌田実公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン小委員会委員長から、ガイドライン検討過程において頂いたコメントを事務局がとりまとめて記載したものである。 資料編 関係法令集 目  次 移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令 1 移動等円滑化の促進に関する基本方針 24 資料編1ページ 移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令 平成18年12月15日  国土交通省令第111号  目 次 第一章 総則(第一条・第二条) 第二章 旅客施設 第一節 総則(第三条) 第二節 共通事項 第一款 移動等円滑化された経路(第四条) 第二款 通路等(第五条―第九条) 第三款 案内設備(第十条―第十二条) 第四款 便所(第十三条―第十五条)   第五款 その他の旅客用設備(第十六条―第十八条) 第三節 鉄道駅(第十九条―第二十一条) 第四節 軌道停留場(第二十二条) 第五節 バスターミナル(第二十三条) 第六節 旅客船ターミナル(第二十四条―第二十六条) 第七節 航空旅客ターミナル施設(第二十七条― 第二十九条) 第三章 車両等 第一節 鉄道車両(第三十条―第三十三条) 第二節 軌道車両(第三十四条・第三十五条) 第三節 バス車両(第三十六条―第四十三条) 第四節 福祉タクシー車両(第四十四条・第四十五条) 第五節 船舶(第四十六条―第六十一条) 第六節 航空機(第六十二条―第六十七条) 附則 第一章 総則 (定義) 第一条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロック及び点状ブロックを適切に組み合わせて床面に敷設したものをいう。 二 線状ブロック 床面に敷設されるブロックであって、線状の突起が設けられており、かつ、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものをいう。 三 点状ブロック 床面に敷設されるブロックであって、点状の突起が設けられており、かつ、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものをいう。 資料編2ページ  四 車いすスペース 車いすを使用している者(以下「車いす使用者」という。)の用に供するため車両等に設けられる場所をいう。 五 鉄道駅 鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)による鉄道施設であって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 六 軌道停留場 軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道施設であって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 七 バスターミナル 自動車ターミナル法(昭和三十四年法律第百三十六号)によるバスターミナルであって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 八 旅客船ターミナル 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)による輸送施設(船舶を除き、同法による一般旅客定期航路事業の用に供するものに限る。)であって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 九 航空旅客ターミナル施設 航空旅客ターミナル施設であって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 十 鉄道車両 鉄道事業法による鉄道事業者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両をいう。 十一 軌道車両 軌道法による軌道経営者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両をいう。 十二 バス車両 道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による一般乗合旅客自動車運送事業者(路線を定めて定期に運行する自動車により乗合旅客の運送を行うものに限る。)が旅客の運送を行うためその事業の用に供する自動車(同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行の用に供するものに限る。)をいう。 十三 福祉タクシー車両 道路運送法による一般乗用旅客自動車運送事業者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する自動車(高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車内に乗り込むことが可能なもの及び高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則(平成十八年国土交通省令第   号)第一条に規定するものに限る。)をいう。 十四 船舶 海上運送法による一般旅客定期航路事業(日本の国籍を有する者及び日本の法令により設立された法人その他の団体以外の者が営む同法による対外旅客定期航路事業を除く。)を営む者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する船舶をいう。 十五 航空機 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)による本邦航空運送事業者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する航空機をいう。 2 前項に規定するもののほか、この省令において使用する用語は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(以下「法」という。)において使用する用語の例による。 (一時使用目的の旅客施設又は車両等) 第二条 災害等のため一時使用する旅客施設又は車両等の構造及び設備については、この省令の規定によらないことができる。 資料編3ページ 第二章 旅客施設 第一節 総則 (適用範囲) 第三条 旅客施設の構造及び設備については、この章の定めるところによる。 第二節 共通事項 第一款 移動等円滑化された経路 (移動等円滑化された経路) 第四条 公共用通路(旅客施設の営業時間内において常時一般交通の用に供されている一般交通用施設であって、旅客施設の外部にあるものをいう。以下同じ。)と車両等の乗降口との間の経路であって、高齢者、障害者等の円滑な通行に適するもの(以下「移動等円滑化された経路」という。)を、乗降場ごとに一以上設けなければならない。 2 移動等円滑化された経路において床面に高低差がある場合は、傾斜路又はエレベーターを設けなければならない。ただし、構造上の理由により傾斜路又はエレベーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター(構造上の理由によりエスカレーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター以外の昇降機であって車いす使用者の円滑な利用に適した構造のもの)をもってこれに代えることができる。 3 旅客施設に隣接しており、かつ、旅客施設と一体的に利用される他の施設の傾斜路(第六項の基準に適合するものに限る。)又はエレベーター(第七項の基準に適合するものに限る。)を利用することにより高齢者、障害者等が旅客施設の営業時間内において常時公共用通路と車両等の乗降口との間の移動を円滑に行うことができる場合は、前項の規定によらないことができる。管理上の理由により昇降機を設置することが困難である場合も、また同様とする。 4 移動等円滑化された経路と公共用通路の出入口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 二 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、百四十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、通路の末端の付近の広さを車いすの転回に支障のないものとし、かつ、五十メートル以内ごとに車いすが転回することができる広さの場所を設けた上で、幅を百二十センチメートル以上とすることができる。 資料編4ページ  二 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 五 照明設備が設けられていること。 6 移動等円滑化された経路を構成する傾斜路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 幅は、百二十センチメートル以上であること。ただし、段に併設する場合は、九十センチメートル以上とすることができる。 二 勾配は、十二分の一以下であること。ただし、傾斜路の高さが十六センチメートル以下の場合は、八分の一以下とすることができる。 三 高さが七十五センチメートルを超える傾斜路にあっては、高さ七十五センチメートル以内ごとに踏幅百五十センチメートル以上の踊り場が設けられていること。 7 移動等円滑化された経路を構成するエレベーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 かご及び昇降路の出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 二 かごの内法幅は百四十センチメートル以上であり、内法奥行きは百三十五センチメートル以上であること。ただし、かごの出入口が複数あるエレベーターであって、車いす使用者が円滑に乗降できる構造のもの(開閉するかごの出入口を音声により知らせる設備が設けられているものに限る。)については、この限りでない。 三 かご内に、車いす使用者が乗降する際にかご及び昇降路の出入口を確認するための鏡が設けられていること。ただし、前号ただし書に規定する場合は、この限りでない。 四 かご及び昇降路の出入口の戸にガラスその他これに類するものがはめ込まれていること又はかご外及びかご内に画像を表示する設備が設置されていることにより、かご外にいる者とかご内にいる者が互いに視覚的に確認できる構造であること。 五 かご内に手すり(握り手その他これに類する設備を含む。以下同じ。)が設けられていること。 六 かご及び昇降路の出入口の戸の開扉時間を延長する機能を有したものであること。 七 かご内に、かごが停止する予定の階及びかごの現在位置を表示する設備が設けられていること。 八 かご内に、かごが到着する階並びにかご及び昇降路の出入口の戸の閉鎖を音声により知らせる設備が設けられていること。 九 かご内及び乗降ロビーには、車いす使用者が円滑に操作できる位置に操作盤が設けられていること。 資料編5ページ  十 かご内に設ける操作盤及び乗降ロビーに設ける操作盤のうちそれぞれ一以上は、点字がはり付けられていること等により視覚障害者が容易に操作できる構造となっていること。 十一 乗降ロビーの幅は百五十センチメートル以上であり、奥行きは百五十センチメートル以上であること。 十二 乗降ロビーには、到着するかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられていること。ただし、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた時にかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられている場合又は当該エレベーターの停止する階が二のみである場合は、この限りでない。 8 移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、第七号及び第八号については、複数のエスカレーターが隣接した位置に設けられる場合は、そのうち一のみが適合していれば足りるものとする。 一 上り専用のものと下り専用のものをそれぞれ設置すること。ただし、旅客が同時に双方向に移動することがない場合については、この限りでない。 二 踏み段の表面及びくし板は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 昇降口において、三枚以上の踏み段が同一平面上にあること。 四 踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段相互の境界を容易に識別できるものであること。 五 くし板の端部と踏み段の色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりくし板と踏み段との境界を容易に識別できるものであること。 六 エスカレーターの上端及び下端に近接する通路の床面等において、当該エスカレーターへの進入の可否が示されていること。ただし、上り専用又は下り専用でないエスカレーターについては、この限りでない。 七 幅は、八十センチメートル以上であること。 八 踏み段の面を車いす使用者が円滑に昇降するために必要な広さとすることができる構造であり、かつ、車止めが設けられていること。 第二款 通路等 (通路) 第五条 通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 二 段を設ける場合は、当該段は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものであること。 ロ 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものであること。 (傾斜路) 第六条 傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。以下この条において同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 手すりが両側に設けられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 資料編6ページ  二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 傾斜路の勾配部分は、その接続する通路との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりその存在を容易に識別できるものであること。 四 傾斜路の両側には、立ち上がり部が設けられていること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 (エスカレーター) 第七条 エスカレーターには、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を音声により知らせる設備を設けなければならない。 (階段) 第八条 階段(踊り場を含む。以下同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 手すりが両側に設けられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 二 手すりの端部の付近には、階段の通ずる場所を示す点字をはり付けること。 三 回り段がないこと。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 踏面の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものであること。 六 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものであること。 七 階段の両側には、立ち上がり部が設けられていること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 八 照明設備が設けられていること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第九条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 2 前項の規定により視覚障害者誘導用ブロックが敷設された通路等と第四条第七項第十号の基準に適合する乗降ロビーに設ける操作盤、第十二条第二項の規定により設けられる設備(音によるものを除く。)、便所の出入口及び第十六条の基準に適合する乗車券等販売所との間の経路を構成する通路等には、それぞれ視覚障害者誘導用ブロックを敷設しなければならない。ただし、前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。 3 階段、傾斜路及びエスカレーターの上端及び下端に近接する通路等には、点状ブロックを敷設しなければならない。 資料編7ページ 第三款 案内設備 (運行情報提供設備) 第十条 車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (標識) 第十一条 エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備(以下「移動等円滑化のための主要な設備」という。)又は次条第一項に規定する案内板その他の設備の付近には、これらの設備があることを表示する標識を設けなければならない。 2 前項の標識は、日本工業規格Z八二一〇に適合するものでなければならない。 (移動等円滑化のための主要な設備の配置等の案内) 第十二条 公共用通路に直接通ずる出入口(鉄道駅及び軌道停留場にあっては、当該出入口又は改札口。次項において同じ。)の付近には、移動等円滑化のための主要な設備(第四条第三項前段の規定により昇降機を設けない場合にあっては、同項前段に規定する他の施設のエレベーターを含む。以下この条において同じ。)の配置を表示した案内板その他の設備を備えなければならない。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 2 公共用通路に直接通ずる出入口の付近その他の適切な場所に、旅客施設の構造及び主要な設備の配置を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備を設けなければならない。 第四款 便所 (便所)  第十三条 便所を設ける場合は、当該便所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 便所の出入口付近に、男子用及び女子用の区別(当該区別がある場合に限る。)並びに便所の構造を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。 二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 男子用小便器を設ける場合は、一以上の床置式小便器、壁掛式小便器(受け口の高さが三十五センチメートル以下のものに限る。)その他これらに類する小便器が設けられていること。 四 前号の規定により設けられる小便器には、手すりが設けられていること。 2 便所を設ける場合は、そのうち一以上は、前項に掲げる基準のほか、次に掲げる基準のいずれかに適合するものでなければならない。 一 便所(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれの便所)内に高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便房が設けられていること。 二 高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便所であること。 資料編8ページ 第十四条 前条第二項第一号の便房が設けられた便所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 移動等円滑化された経路と便所との間の経路における通路のうち一以上は、第四条第五項各号に掲げる基準に適合するものであること。 二 出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 三 出入口には、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。ただし、傾斜路を設ける場合は、この限りでない。 四 出入口には、高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便房が設けられていることを表示する標識が設けられていること。 五 出入口に戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。 ロ 高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 六 車いす使用者の円滑な利用に適した広さが確保されていること。 2 前条第二項第一号の便房は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 出入口には、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 二 出入口には、当該便房が高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものであることを表示する標識が設けられていること。 三 腰掛便座及び手すりが設けられていること。 四 高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する水洗器具が設けられていること。 3 第一項第二号、第五号及び第六号の規定は、前項の便房について準用する。 第十五条 前条第一項第一号から第三号まで、第五号及び第六号並びに同条第二項第二号から第四号までの規定は、第十三条第二項第二号の便所について準用する。この場合において、前条第二項第二号中「当該便房」とあるのは、「当該便所」と読み替えるものとする。 第五款 その他の旅客用設備 (乗車券等販売所、待合所及び案内所) 第十六条 乗車券等販売所を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 移動等円滑化された経路と乗車券等販売所との間の経路における通路のうち一以上は、第四条第五項各号に掲げる基準に適合するものであること。 二 出入口を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。 ロ 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 (1) 幅は、八十センチメートル以上であること。 (2) 高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 ハ ニに掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 ニ 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 資料編9ページ  三 カウンターを設ける場合は、そのうち一以上は、車いす使用者の円滑な利用に適した構造のものであること。ただし、常時勤務する者が容易にカウンターの前に出て対応できる構造である場合は、この限りでない。 2 前項の規定は、待合所及び案内所を設ける場合について準用する。 3 乗車券等販売所又は案内所(勤務する者を置かないものを除く。)は、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該乗車券等販売所又は案内所に表示するものとする。 (券売機) 第十七条 乗車券等販売所に券売機を設ける場合は、そのうち一以上は、高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、乗車券等の販売を行う者が常時対応する窓口が設置されている場合は、この限りでない。 (休憩設備) 第十八条 高齢者、障害者等の休憩の用に供する設備を一以上設けなければならない。ただし、旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれのある場合は、この限りでない。 第三節 鉄道駅  (改札口) 第十九条 鉄道駅において移動等円滑化された経路に改札口を設ける場合は、そのうち一以上は、幅が八十センチメートル以上でなければならない。 2 鉄道駅において自動改札機を設ける場合は、当該自動改札機又はその付近に、当該自動改札機への進入の可否を、容易に識別することができる方法で表示しなければならない。 (プラットホーム) 第二十条 鉄道駅のプラットホームは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 プラットホームの縁端と鉄道車両の旅客用乗降口の床面の縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。この場合において、構造上の理由により当該間隔が大きいときは、旅客に対しこれを警告するための設備を設けること。 二 プラットホームと鉄道車両の旅客用乗降口の床面とは、できる限り平らであること。 三 プラットホームの縁端と鉄道車両の旅客用乗降口の床面との隙間又は段差により車いす使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車いす使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備が一以上備えられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 排水のための横断勾配は、一パーセントが標準であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 五 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 資料編10ページ  六 発着するすべての鉄道車両の旅客用乗降口の位置が一定しており、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができるプラットホーム(鋼索鉄道に係るものを除く。)にあっては、ホームドア又は可動式ホームさく(旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれがある場合にあっては、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備)が設けられていること。 七 前号に掲げるプラットホーム以外のプラットホームにあっては、ホームドア、可動式ホームさく、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備が設けられていること。 八 プラットホームの線路側以外の端部には、旅客の転落を防止するためのさくが設けられていること。ただし、当該端部に階段が設置されている場合その他旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 九 列車の接近を文字等により警告するための設備及び音声により警告するための設備が設けられていること。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 十 照明設備が設けられていること。 2 前項第四号及び第九号の規定は、ホームドア又は可動式ホームさくが設けられたプラットホームについては適用しない。 (車いす使用者用乗降口の案内) 第二十一条 鉄道駅の適切な場所において、第三十二条第一項の規定により列車に設けられる車いすスペースに通ずる第三十一条第三号の基準に適合した旅客用乗降口が停止するプラットホーム上の位置を表示しなければならない。ただし、当該プラットホーム上の位置が一定していない場合は、この限りでない。 第四節 軌道停留場 (準用)  第二十二条 前節の規定は、軌道停留場について準用する。 第五節 バスターミナル (乗降場) 第二十三条 バスターミナルの乗降場は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 二 乗降場の縁端のうち、誘導車路その他のバス車両の通行、停留又は駐車の用に供する場所(以下「バス車両用場所」という。)に接する部分には、さく、点状ブロックその他の視覚障害者のバス車両用場所への進入を防止するための設備が設けられていること。 三 当該乗降場に接して停留するバス車両に車いす使用者が円滑に乗降できる構造のものであること。 第六節 旅客船ターミナル (乗降用設備) 第二十四条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 資料編11ページ  一 車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合には、この限りでない。 二 幅は、九十センチメートル以上であること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 (視覚障害者誘導用ブロックの設置の例外) 第二十五条 旅客船ターミナルにおいては、乗降用設備その他波浪による影響により旅客が転倒するおそれがある場所については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 (転落防止設備) 第二十六条 視覚障害者が水面に転落するおそれのある場所には、さく、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設けなければならない。 第七節 航空旅客ターミナル施設 (保安検査場の通路) 第二十七条 航空旅客ターミナル施設の保安検査場(航空機の客室内への銃砲刀剣類等の持込みを防止するため、旅客の身体及びその手荷物の検査を行う場所をいう。以下同じ。)において門型の金属探知機を設置して検査を行う場合は、当該保安検査場内に、車いす使用者その他の門型の金属探知機による検査を受けることのできない者が通行するための通路を別に設けなければならない。 2 前項の通路の幅は、九十センチメートル以上でなければならない。 3 保安検査場の通路に設けられる戸については、第四条第五項第二号ロの規定は適用しない。 4 保安検査場には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該保安検査場に表示するものとする。 (旅客搭乗橋) 第二十八条 航空旅客ターミナル施設の旅客搭乗橋(航空旅客ターミナル施設と航空機の乗降口との間に設けられる設備であって、当該乗降口に接続して旅客を航空旅客ターミナル施設から直接航空機に乗降させるためのものをいう。以下この条において同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、第三号及び第四号については、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 幅は、九十センチメートル以上であること。 二 旅客搭乗橋の縁端と航空機の乗降口の床面との隙間又は段差により車いす使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車いす使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備が一以上備えられていること。 資料編12ページ  三 勾配は、十二分の一以下であること。 四 手すりが設けられていること。 五 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 2 旅客搭乗橋については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 (改札口) 第二十九条 各航空機の乗降口に通ずる改札口のうち一以上は、幅が八十センチメートル以上でなければならない。 第三章 車両等 第一節 鉄道車両 (適用範囲) 第三十条 鉄道車両の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (旅客用乗降口) 第三十一条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 旅客用乗降口の床面の縁端とプラットホームの縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。 二 旅客用乗降口の床面とプラットホームとは、できる限り平らであること。 三 旅客用乗降口のうち一列車ごとに一以上は、幅が八十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 旅客用乗降口の床面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 旅客用乗降口の戸の開閉する側を音声により知らせる設備が設けられていること。 六 車内の段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより、車内の段を容易に識別できるものであること。 (客室)  第三十二条 客室には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一列車ごとに一以上設けなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 車いす使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 五 車いすスペースである旨が表示されていること。 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 3 便所を設ける場合は、そのうち一列車ごとに一以上は、車いす使用者の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 資料編13ページ 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車いすスペースとの間の通路のうち一以上及び当該車いすスペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 5 客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 6 客室内の旅客用乗降口の戸又はその付近には、当該列車における当該鉄道車両の位置その他の位置に関する情報を文字及び点字により表示しなければならない。ただし、鉄道車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (車体)  第三十三条 鉄道車両の連結部(常時連結している部分に限る。)には、プラットホーム上の旅客の転落を防止するための設備を設けなければならない。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 2 車体の側面に、鉄道車両の行き先及び種別を見やすいように表示しなければならない。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 第二節 軌道車両 (準用) 第三十四条 前節の規定は、軌道車両(次条に規定する低床式軌道車両を除く。)について準用する。 (低床式軌道車両) 第三十五条 前節(第三十一条第三号ただし書並びに第三十二条第一項ただし書、第三項ただし書及び第四項ただし書を除く。)の規定は、低床式軌道車両(旅客用乗降口の床面の軌条面からの高さが四十センチメートル以下の軌道車両であって、旅客用乗降口から客室の主要部分までの通路の床面に段がないものをいう。)について準用する。 第三節 バス車両 (適用範囲) 第三十六条 バス車両の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (乗降口) 第三十七条 乗降口の踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものでなければならない。 2 乗降口のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 資料編14ページ  一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 スロープ板その他の車いす使用者の乗降を円滑にする設備(国土交通大臣の定める基準に適合しているものに限る。)が備えられていること。 (床面)  第三十八条 国土交通大臣の定める方法により測定した床面の地上面からの高さは、六十五センチメートル以下でなければならない。 2 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものでなければならない。 (車いすスペース) 第三十九条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一以上設けなければならない。 一 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 二 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 三 車いすを固定することができる設備が備えられていること。 四 車いすスペースに座席を設ける場合は、当該座席は容易に折り畳むことができるものであること。 五 他の法令の規定により旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーその他の装置を備えることとされているバス車両である場合は、車いす使用者が利用できる位置に、当該ブザーその他の装置が備えられていること。 六 車いすスペースである旨が表示されていること。 七 前各号に掲げるもののほか、長さ、幅等について国土交通大臣の定める基準に適合するものであること。 (通路)  第四十条 第三十七条第二項の基準に適合する乗降口と車いすスペースとの間の通路の幅(容易に折り畳むことができる座席が設けられている場合は、当該座席を折り畳んだときの幅)は、八十センチメートル以上でなければならない。 2 通路には、国土交通大臣が定める間隔で手すりを設けなければならない。 (運行情報提供設備等) 第四十一条 バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 2 バス車両には、車外用放送設備を設けなければならない。 3 バス車両の前面、左側面及び後面に、バス車両の行き先を見やすいように表示しなければならない。 資料編15ページ (意思疎通を図るための設備) 第四十二条 バス車両内には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該バス車両内に表示するものとする。 (基準の適用除外) 第四十三条 地方運輸局長が、その構造により又はその運行の態様によりこの省令の規定により難い特別の事由があると認定したバス車両については、第三十七条から前条まで(第三十七条第一項、第三十八条第二項及び前条を除く。)に掲げる規定のうちから当該地方運輸局長が当該バス車両ごとに指定したものは、適用しない。 2 前項の認定は、条件又は期限を付して行うことができる。 3 第一項の認定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を地方運輸局長に提出しなければならない。 一 氏名又は名称及び住所 二 車名及び型式 三 車台番号 四 使用の本拠の位置 五 認定により適用を除外する規定 六 認定を必要とする理由 4 地方運輸局長は、次の各号のいずれかに該当する場合には、第一項の認定を取り消すことができる。 一 認定の取消しを求める申請があったとき。 二 第二項の規定による条件に違反したとき。 第四節 福祉タクシー車両 (適用範囲) 第四十四条 福祉タクシー車両の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (福祉タクシー車両) 第四十五条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車いす使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 二 車いす又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 三 車いす又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 資料編16ページ  四 事業者名、車両番号、運賃及び料金その他の情報を音又は点字により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 五 聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。 2 回転シート車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則第一条に規定する設備を備えたものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 折り畳んだ車いすを備えておくスペースが一以上設けられていること。 二 事業者名、車両番号、運賃及び料金その他の情報を音又は点字により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 三 聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。 第五節 船舶 (適用範囲) 第四十六条 船舶の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (乗降用設備) 第四十七条 船舶に乗降するためのタラップその他の設備を備える場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。 二 幅は、八十センチメートル以上であること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 (出入口) 第四十八条 旅客が乗降するための出入口(舷門又は甲板室の出入口をいう。)のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 スロープ板その他の車いす使用者が円滑に通過できるための設備が備えられていること。 2 車両区域の出入口のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 スロープ板その他の車いす使用者が円滑に通過できるための設備が備えられていること。 三 高齢者、障害者等が車両から乗降するための場所であって、次に掲げる基準に適合するもの(以下「乗降場所」という。)が設けられていること。 イ 幅は、三百五十センチメートル以上であること。 ロ 車両区域の出入口に隣接して設けられていること。ただし、乗降場所と車両区域の出入口との間に幅が八十センチメートル以上である通路を一以上設ける場合は、この限りでない。 ハ 乗降場所であることを示す表示が設けられていること。 資料編17ページ (客席)  第四十九条 航行予定時間が八時間未満の船舶の客席のうち旅客定員二十五人ごとに一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 いす席、座席又は寝台であること。 二 高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものであること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 2 航行予定時間が八時間以上の船舶の客席のうち旅客定員二十五人ごとに一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 いす席、座席又は寝台であること。 二 いす席が設けられる場合は、その収容数二十五人ごとに一以上は、前項第二号から第四号までに掲げる基準に適合するものであること。 三 座席又は寝台が設けられる場合は、その収容数二十五人ごとに一以上は、前項第二号から第四号までに掲げる基準に適合するものであること。 (車いすスペース) 第五十条 旅客定員百人ごとに一以上の割合で、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを車いす使用者が円滑に利用できる場所に設けなければならない。ただし、航行予定時間が八時間以上であり、かつ、客席として座席又は寝台のみが設けられている船舶については、この限りでない。 一 車いす使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 五 車いすを固定することができる設備が設けられていること。 六 車いすスペースである旨が表示されていること。 (通路)  第五十一条 第四十八条第一項の基準に適合する出入口及び同条第二項の基準に適合する車両区域の出入口と第四十九条第一項又は第二項の基準に適合する客席(以下「基準適合客席」という。)及び前条の規定により設けられた車いすスペース(以下「船内車いすスペース」という。)との間の通路のうちそれぞれ一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 手すりが設けられていること。 三 手すりの端部の付近には、通路の通ずる場所を示す点字をはり付けること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 スロープ板その他の車いす使用者が円滑に通過できるための設備が備えられていること。 六 通路の末端の付近の広さは、車いすの転回に支障のないものであること。 資料編18ページ 2 前項の規定は、基準適合客席及び船内車いすスペースと船内旅客用設備(便所(第五十四条第三項の規定により準用される第十三条第二項の基準に適合する便所に限る。)、第五十五条の基準に適合する食堂、第五十六条の基準に適合する売店及び総トン数二十トン以上の船舶の遊歩甲板(通常の航行時において旅客が使用する暴露甲板(通路と兼用のものは除く。)であって、基準適合客席と同一の甲板上にあるものをいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)との間の通路のうちそれぞれ一以上について準用する。この場合において、前項第一号中「八十センチメートル」とあるのは「百二十センチメートル」と、同項第六号中「支障のないものであること」とあるのは「支障のないものであり、かつ、五十メートル以内ごとに車いすが転回し及び車いす使用者同士がすれ違うことができる広さの場所が設けられていること」と読み替えるものとする。 3 前二項の通路に戸(暴露されたものを除く。)を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 (階段)  第五十二条 第八条(同条第一号ただし書、第三号ただし書及び第八号を除く。)の規定は、前条第一項及び第二項の通路に設置される階段について準用する。この場合において、第八条第一号中「手すりが両側に」とあるのは、「手すりが」と読み替えるものとする。 (昇降機) 第五十三条 第四十八条第一項の基準に適合する出入口及び同条第二項の基準に適合する車両区域の出入口と基準適合客席又は船内車いすスペースが別甲板にある場合には、第五十一条第一項の基準に適合する通路に、エレベーター、エスカレーターその他の昇降機であって高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものを一以上設けなければならない。 2 前項の規定により設けられるエレベーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 かごの広さは、車いす使用者が乗り込むのに十分なものであること。 二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 3 第四条第七項第一号、第五号、第七号及び第十一号の規定は、第一項の規定により設けられるエレベーターについて準用する。この場合において、同号中「幅は百五十センチメートル以上」とあるのは「幅は百四十センチメートル以上」と、「奥行きは百五十センチメートル以上」とあるのは「奥行きは百三十五センチメートル以上」と読み替えるものとする。 4 第一項の規定により設けられるエスカレーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 エスカレーターが一のみ設けられる場合にあっては、昇降切換装置が設けられていること。 二 勤務する者を呼び出すための装置が設けられていること。 資料編19ページ 5 第四条第八項(同項第一号及び第六号を除く。)の規定は、第一項の規定により設けられるエスカレーターについて準用する。 6 基準適合客席又は船内車いすスペースと船内旅客用設備が別甲板にある場合には、第五十一条第二項の基準に適合する通路にエレベーターを一以上設けなければならない。 7 第四条第七項(同項第四号を除く。)及び第二項第二号の規定は、前項の規定により設けられるエレベーターについて準用する。 (便所)  第五十四条 便所を設ける場合は、腰掛便座及び手すりが設けられた便房を一以上設けなければならない。 2 第十三条第一項の規定は、船舶に便所を設ける場合について準用する。 3 第十三条第二項、第十四条(同条第一項第一号及び第三号ただし書並びに第二項第三号を除く。)及び第十五条の規定は、他の法令の規定により便所を設けることとされている船舶の便所について準用する。この場合において、第十四条第二項第四号中「水洗器具」とあるのは「手を洗うための水洗器具」と、第十五条中「前条第一項第一号から第三号まで」とあるのは「前条第一項第二号、第三号(ただし書を除く。)」と、「同条第二項第二号から第四号まで」とあるのは「同条第二項第二号及び第四号」と読み替えるものとする。 (食堂)  第五十五条 もっぱら旅客の食事の用に供する食堂を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 二 出入口には段がないこと。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 いすの収容数百人ごとに一以上の割合で、車いす使用者の円滑な利用に適した構造を有するテーブルを配置すること。 五 聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該食堂に表示すること。 (売店) 第五十六条 一以上の売店(もっぱら人手により物品の販売を行うための設備に限る。)には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該売店に表示するものとする。 (遊歩甲板) 第五十七条 総トン数二十トン以上の船舶の遊歩甲板は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 資料編20ページ  一 出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 二 段を設ける場合は、スロープ板その他の車いす使用者が円滑に通過できるための設備が備えられていること。 三 戸(遊歩甲板の出入口の戸を除く。)を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 手すりが設けられていること。 (点状ブロック) 第五十八条 階段及びエスカレーターの上端及び下端並びにエレベーターの操作盤に近接する通路には、点状ブロックを敷設しなければならない。 (運航情報提供設備) 第五十九条 目的港の港名その他の当該船舶の運航に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 (基準適合客席、船内車いすスペース、昇降機、船内旅客用設備及び非常口の配置の案内) 第六十条 基準適合客席、船内車いすスペース、昇降機、船内旅客用設備及び非常口の配置を表示した案内板その他の設備を設けなければならない。 2 基準適合客席、船内車いすスペース、昇降機、船内旅客用設備及び非常口の配置を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備を設けなければならない。 (基準の適用除外) 第六十一条 総トン数五トン未満の船舶については、この省令の規定によらないことができる。 2 地方運輸局長(運輸監理部長を含む。以下この条において同じ。)が、その構造又は航行の態様によりこの省令の規定により難い特別の事由があると認定した船舶については、第四十七条から前条までに掲げる規定のうちから当該地方運輸局長が当該船舶ごとに指定したものは、適用しない。 3 第四十三条第二項から第四項まで(同条第三項第二号を除く。)の規定は、前項の認定について準用する。この場合において、同条第三項第三号中「車台番号」とあるのは「船名及び船舶番号又は船舶検査済票の番号」と、同項第四号中「使用の本拠の位置」とあるのは「就航航路」と読み替えるものとする。 資料編21ページ 4 前項の規定により準用される第四十三条第三項の申請書は、運輸支局長又は海事事務所長を経由して提出することができる。 第六節 航空機 (適用範囲) 第六十二条 航空機の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (通路)  第六十三条 客席数が六十以上の航空機の通路は、第六十五条の規定により備え付けられる車いすを使用する者が円滑に通行することができる構造でなければならない。 (可動式のひじ掛け) 第六十四条 客席数が三十以上の航空機には、通路に面する客席(構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものを除く。)の半数以上について、通路側に可動式のひじ掛けを設けなければならない。 (車いすの備付け) 第六十五条 客席数が六十以上の航空機には、当該航空機内において利用できる車いすを備えなければならない。 (運航情報提供設備) 第六十六条 客席数が三十以上の航空機には、当該航空機の運航に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 (便所)  第六十七条 通路が二以上の航空機には、車いす使用者の円滑な利用に適した構造を有する便所を一以上設けなければならない。 附 則 (施行期日) 第一条 この省令は、法の施行の日(平成十八年十二月二十日)から施行する。 (移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準の廃止) 第二条 移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準(平成十二年運輸省建設省令第十号)は、廃止する。 資料編22ページ (経過措置) 第三条 この省令の施行前に法附則第二条第二号による廃止前の高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成十二年法律第六十八号)第五条第二項の規定による届出をした旅客施設の建設又は改良については、第四条第五項第五号、第六条第三号、第七条、第八条第八号、第十一条、第十九条第二項並びに第二十条第一項第六号及び第十号の規定は適用せず、なお従前の例による。 2 この省令の施行の日から起算して六月を経過する日までの間に公共交通事業者等が新たにその事業の用に供する鉄道車両又は軌道車両については、第三十二条第六項(第三十四条及び第三十五条において準用する場合を含む。)の規定は適用せず、なお従前の例による。 3 平成十四年五月十五日前に製造された鉄道車両であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するもののうち、地方運輸局長が認定したものについては、この省令の規定のうちから当該地方運輸局長が当該鉄道車両ごとに指定したものは、適用しない。 4 前項の認定は、条件又は期限を付して行うことができる。 5 第三項の認定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を地方運輸局長に提出しなければならない。 一 氏名又は名称及び住所 二 車種及び記号番号 三 車両番号 四 使用区間 五 製造年月日 六 認定により適用を除外する規定 七 認定を必要とする理由 6 地方運輸局長は、次の各号のいずれかに該当する場合には、第三項の認定を取り消すことができる。 一 認定の取消しを求める申請があったとき。 二 第四項の規定による条件に違反したとき。 7 第三項から前項までの規定は、平成十四年五月十五日前に製造された軌道車両であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するものについて準用する。この場合において、第三項、第五項及び前項中「地方運輸局長」とあるのは、「国土交通大臣」と読み替えるものとする。 8 第三項から第六項までの規定は、平成十二年十一月十五日前に道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第五十八条第一項に規定する自動車検査証の交付を受けたバス車両であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するものについて準用する。この場合において、第五項第二号中「車種及び記号番号」とあるのは「車名及び型式」と、同項第三号中「車両番号」とあるのは「車台番号」と、同項第四号中「使用区間」とあるのは「使用の本拠の位置」と、同項第五号中「製造年月日」とあるのは「自動車検査証の交付を受けた年月日」と読み替えるものとする。 資料編23ページ 9 第三項から第六項まで(第五項第二号を除く。)の規定は、平成十四年五月十五日前に船舶安全法(昭和八年法律第十一号)第九条第一項に規定する船舶検査証書の交付を受けた船舶であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するものについて準用する。この場合において、第三項及び第五項各号列記以外の部分中「地方運輸局長」とあるのは「地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)」と、同項第三号中「車両番号」とあるのは「船名及び船舶番号又は船舶検査済票の番号」と、同項第四号中「使用区間」とあるのは「就航航路」と、同項第五号中「製造年月日」とあるのは「船舶検査証書の交付を受けた年月日」と、第六項中「地方運輸局長」とあるのは「地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)」と読み替えるものとする。 10 前項の規定により準用される第五項の申請書は、運輸支局長又は海事事務所長を経由して提出することができる。 11 第三項から第六項まで(第五項第四号を除く。)の規定は、平成十四年五月十五日前に航空法第十条第一項に規定する耐空証明又は国際民間航空条約の締約国たる外国による耐空証明を受けた航空機その他これに準ずるものとして国土交通大臣が認める航空機であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するものについて準用する。この場合において、第三項及び第五項各号列記以外の部分中「地方運輸局長」とあるのは「国土交通大臣」と、同項第二号中「車種及び記号番号」とあるのは「種類及び型式」と、同項第三号中「車両番号」とあるのは「国籍記号及び登録記号」と、同項第五号中「製造年月日」とあるのは「耐空証明を受けた年月日(これに準ずるものとして国土交通大臣が認める航空機にあっては、その準ずる事由及び当該準ずる事由が生じた年月日)」と、第六項中「地方運輸局長」とあるのは「国土交通大臣」と読み替えるものとする。 資料編24ページ 移動等円滑化の促進に関する基本方針 平成18年12月15日 国家公安委員会、 総務省  国土交通省 告示第1号 改正 平成23年3月31日 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号。以下「法」という。)第三条第一項の規定に基づき、高齢者、障害者等の移動又は施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動上又は施設の利用上の利便性及び安全性を向上すること(以下「移動等円滑化」という。)の促進に関する基本方針について、国、地方公共団体、高齢者、障害者等、施設設置管理者その他の関係者が互いに連携協力しつつ移動等円滑化を総合的かつ計画的に推進していくため、以下のとおり定める。 一 移動等円滑化の意義及び目標に関する事項 1 移動等円滑化の意義 我が国においては、世界のどの国もこれまで経験したことのない本格的な高齢社会を迎え、今後更なる高齢化が進展すると見込まれており、高齢者の自立と社会参加による、健全で活力ある社会の実現が求められている。また、今日、障害者が障害のない者と同等に生活し活動する社会を目指す、ノーマライゼーションの理念の社会への浸透が進み、自立と共生の理念の下、障害の有無にかかわらず国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現が求められている。 このような社会の実現のためには、高齢者、障害者等が自立した日常生活及び社会生活を営むことができる社会を構築することが重要であり、そのための環境の整備を一刻も早く推進していくことが求められている。移動及び施設の利用は、高齢者、障害者等が社会参加をするための重要な手段であることから、移動等円滑化を促進することは、このような社会の実現のために大きな意義を持つものである。 また、移動等円滑化の促進は、高齢者、障害者等の社会参加を促進するのみでなく、「どこでも、誰でも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づき、全ての利用者に利用しやすい施設及び車両等の整備を通じて、国民が生き生きと安全に暮らせる活力ある社会の維持に寄与するものである。  なお、法にいう障害者には、身体障害者のみならず、知的障害者、精神障害者及び発達障害者を含む全ての障害者で身体の機能上の制限を受ける者は全て含まれること並びに身体の機能上の制限には、知的障害者、精神障害者及び発達障害者等の知覚面又は心理面の働きが原因で発現する疲れやすさ、喉の渇き、照明への反応、表示の分かりにくさ等の負担の原因となる様々な制約が含まれることから、法が促進することとしている移動等円滑化には、このような負担を軽減することによる移動上又は施設の利用上の利便性及び安全性を向上することも含まれることに留意する必要がある。  また、移動等円滑化を進めるに当たっては、高齢者、障害者等の意見を十分に聴き、それを反映させることが重要である。 資料編25ページ 2 移動等円滑化の目標  移動等円滑化を実現するためには、高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する施設について移動等円滑化のための措置が講じられることが重要である。  したがって、法では、これらの施設を設置し、又は管理する者に対して移動等円滑化のために必要な措置を講ずるよう努める一般的な責務を課すとともに、これらの施設の中で、特に日常生活及び社会生活において通常移動手段として用いられ、又は通常利用される旅客施設及び車両等、一定の道路、路外駐車場、公園施設並びに建築物の各々について、新設等に際し各々に対応した移動等円滑化基準への適合を義務付けることとしている。  また、市町村が定める重点整備地区において、移動等円滑化に係る特定事業その他の事業が法第二十五条第一項の移動等円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想(以下「基本構想」という。)に即して重点的かつ一体的に実施されることとしている。 移動等円滑化の促進に当たっては、国、地方公共団体、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者が必要に応じて緊密に連携しながら、法に基づく枠組みの活用等により、次に掲げる事項を達成することを目標とする。 (1) 旅客施設 @ 鉄道駅及び軌道停留場  一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上である鉄道駅及び軌道停留場(以下「鉄軌道駅」という。)については、平成三十二年度までに、原則として全てについて、エレベーター又はスロープを設置することを始めとした段差の解消、ホームドア、可動式ホーム柵、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備の整備、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施する。この場合、地域の要請及び支援の下、鉄軌道駅の構造等の制約条件を踏まえ可能な限りの整備を行うこととする。また、これ以外の鉄軌道駅についても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、移動等円滑化を可能な限り実施する。 ホームドア又は可動式ホーム柵については、視覚障害者の転落を防止するための設備として非常に効果が高く、その整備を進めていくことが重要である。そのため、車両扉の統一等の技術的困難さ、停車時分の増大等のサービス低下、膨大な投資費用等の課題について総合的に勘案した上で、優先的に整備すべき駅を検討し、地域の支援の下、可能な限り設置を促進する。 A バスターミナル 一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上であるバスターミナルについては、平成三十二年度までに、原則として全てについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施する。また、これ以外のバスターミナルについても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、移動等円滑化を可能な限り実施する。 B 旅客船ターミナル 一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上である旅客船ターミナルについては、平成三十二年度までに、原則として全てについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施する。また、高齢化の進む離島との間の航路等に利用する公共旅客船ターミナルについては、地域の実情を踏まえて順次、移動等円滑化を実施する。また、これ以外の旅客船ターミナルについても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、移動等円滑化を可能な限り実施する。 資料編26ページ C 航空旅客ターミナル施設 一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上である航空旅客ターミナル施設については、平成三十二年度までに、原則として全てについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施する。また、これ以外の航空旅客ターミナル施設についても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、移動等円滑化を可能な限り実施する。 (2) 車両等 @ 鉄道車両及び軌道車両  総車両数約五万二千両のうち約七十パーセントに当たる約三万六千四百両について、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 A バス車両  総車両数約六万台からバス車両の構造及び設備に関する移動等円滑化基準の適用除外認定車両(以下「適用除外認定車両」という。)約一万台を除いた約五万台のうち、約七十パーセントに当たる約三万五千台について、平成三十二年度までに、ノンステップバスとする。適用除外認定車両については、平成三十二年度までに、その約二十五パーセントに当たる約二千五百台をリフト付きバス又はスロープ付きバスとする等、高齢者、障害者等の利用の実態を踏まえて、可能な限りの移動等円滑化を実施する。 B タクシー車両  平成三十二年度までに、約二万八千台の福祉タクシー(ユニバーサルデザインタクシー(流し営業にも活用されることを想定し、身体障害者のほか、高齢者や妊産婦、子供連れの人等、様々な人が利用できる構造となっている福祉タクシー車両をいう。)を含む。)を導入する。 C 船舶  総隻数約八百隻のうち約五十パーセントに当たる約四百隻について、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。また、一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上である旅客船ターミナルに就航する船舶については、平成三十二年度までに、原則として全て移動等円滑化を実施する。  さらに、これ以外の船舶についても、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、可能な限りの移動等円滑化を実施する。 D 航空機  総機数約五百三十機のうち約九十パーセントに当たる約四百八十機について、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 (3) 道路  原則として重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する全ての道路について、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 資料編27ページ (4) 都市公園 @ 園路及び広場    園路及び広場(特定公園施設であるものに限る。以下同じ。)の設置された都市公園の約六十パーセントについて、平成三十二年度までに、園路及び広場の移動等円滑化を実施する。 A 駐車場   駐車場の設置された都市公園の約六十パーセントについて、平成三十二年度までに、駐車場の移動等円滑化を実施する。 B 便所   便所の設置された都市公園の約四十五パーセントについて、平成三十二年度までに、便所の移動等円滑化を実施する。 (5) 路外駐車場  特定路外駐車場の約七十パーセントについて、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 (6) 建築物 二千平方メートル以上の特別特定建築物の総ストックの約六十パーセントについて、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 (7) 信号機等  重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路に設置されている信号機等については、平成三十二年度までに、原則として全ての当該道路において、音響信号機、高齢者等感応信号機等の信号機の設置、歩行者用道路であることを表示する道路標識の設置、横断歩道であることを表示する道路標示の設置等の移動等円滑化を実施する。 二 移動等円滑化のために施設設置管理者が講ずべき措置に関する基本的な事項 施設設置管理者は、利用者の利便性及び安全性の向上を図る観点から、施設及び車両等の整備、適切な情報の提供並びに職員等関係者に対する適切な教育訓練について関係者と連携しながら、1から3までに掲げる各々の措置を適切に講ずることにより、移動等円滑化を進めることが必要である。 施設設置管理者がこれらの措置を実施するに当たっては、その措置が効果的に実施されるよう、地域の実情を把握している市町村等の関係者と連携することにより、可能な限り利便性の高い動線の確保等他の施設との連続性に配慮した措置を実施し、かつ、自らが設置し、又は管理する施設に設置される設備について、施設の特性に応じて可能な限り時間的な制約がなく利用できる等移動等円滑化のために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、公共交通事業者等にあっては、複数の事業者間又は鉄道及びバス等複数の交通機関間を乗り継ぐ際の旅客施設内の移動等円滑化にも十分配慮することが重要である。 また、施設設置管理者は、施設及び車両等の整備に当たっては、移動等円滑化のために講ずる措置について具体的な実施計画を策定すること等により順次計画的に移動等円滑化を進めていくこと、高齢者、障害者等が障害のない者と共に利用できる形での施設整備を図るユニバーサルデザインの考え方に十分留意すること、高齢者、障害者等の意見を反映させるために可能な限り計画策定等への参画を得ること等必要な措置を講ずるよう努めることが重要である。 資料編28ページ 1 施設及び車両等の整備  移動等円滑化を図るためには、まず、施設及び車両等についてのハード面の整備が必要である。したがって、法では、施設設置管理者が、自らが設置し、又は管理する旅客施設及び車両等、一定の道路、路外駐車場、公園施設並びに建築物を新設等するときは、当該施設及び車両等の移動等円滑化基準への適合が義務付けられており、また、既存の施設及び車両等については、施設設置管理者は、当該施設及び車両等を移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めることとされている。  施設設置管理者が、施設及び車両等について移動等円滑化のために必要な措置を講ずる際には、次に掲げる観点が重要である。 イ 高齢者、障害者等が施設内外の移動及び施設の利用を円滑に行うために必要な施設及び設備を整備し、連続した移動経路を一以上確保すること。また、経路確保に当たっては、高齢者、障害者等の移動上の利便性及び安全性の確保に配慮すること。 ロ 便所等附属する設備を設置する場合は、一以上は障害者対応型にするなど、高齢者、障害者等の利用に配慮したものにすること。 ハ 車両等にあっては、高齢者、障害者等の乗降及び車内での移動が容易にできるように必要な措置を講ずること。 ニ 旅客施設及び車両等にあっては、運行情報等公共交通機関を利用する上で必要な情報を提供するために必要な設備を整備すること。  なお、移動等円滑化基準に定められていない内容であっても、上記の観点等から移動等円滑化に資すると考えられる措置については、施設設置管理者はこれを積極的に実施していくよう努力することが望ましい。  特に、建築物の移動等円滑化に関しては、移動等円滑化が義務化されていない特定建築物の移動等円滑化にも積極的に取り組むことが望ましい。特定建築物の新築時等における移動等円滑化に当たっては、ユニバーサルデザインの考え方に配慮した整備が求められているとともに、建築物ストックの長寿命化等その有効活用が求められていることから、誘導的な建築物移動等円滑化基準に適合する特定建築物について容積率の特例及び表示制度等を措置している認定特定建築物制度を積極的に活用することが望ましい。 2 適切な情報の提供  移動等円滑化を図るためには、施設及び車両等についてのハード面の整備のみならず、施設設置管理者が利用者に対して必要な情報を適切に提供することが必要である。  その際には、利用する高齢者、障害者等のニーズ、施設及び設備の用途等に応じて、例えば、路線案内、運賃案内及び運行情報等利用に当たって必要となる情報並びに緊急時の情報について、視覚情報として大きな文字又は適切な色の組合せを用いて見やすく表示すること、また、聴覚情報としてはっきりした音声により聞き取りやすく放送すること、その他図記号又は平仮名による表示の併記等を行うこと等、分かりやすく提供することに留意する必要がある。さらに、必要な情報について事前に把握できるよう、施設及び設備等に関する情報についてインターネットやパンフレット等により提供することが望ましい。  資料編29ページ 3 職員等関係者に対する適切な教育訓練  移動等円滑化を図るためには、施設及び車両等についてのハード面の整備のみならず、職員等関係者による適切な対応が必要であることに鑑み、施設設置管理者は、その職員等関係者が高齢者、障害者等の多様なニーズ及び特性を理解した上で、正当な理由なくこれらの者による施設及び車両等の利用を拒むことなく、円滑なコミュニケーションを確保する等適切な対応を行うよう継続的な教育訓練を実施する必要がある。 そのため、施設設置管理者は、高齢者、障害者等の意見を反映した対応マニュアルの整備及び計画的な研修の実施等をPDCAサイクルとして実施することにより、職員等関係者の教育訓練を更に充実させるよう努めるべきである。なお、その過程において、高齢者、障害者等の参画を得ることが望ましい。 三 基本構想の指針となるべき事項  市町村は、基本構想を作成する場合には、次に掲げる事項に基づいて作成する必要があり、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者は、これらの事項に留意する必要がある。 1 重点整備地区における移動等円滑化の意義に関する事項 (1) 重点整備地区における移動等円滑化の意義 地域における高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するためには、高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する旅客施設、建築物等の生活関連施設及びこれらの間の経路を構成する道路、駅前広場、通路その他の施設について、一体的に移動等円滑化が図られていることが重要である。そのため、基本構想において、生活関連施設が集積し、その間の移動が通常徒歩で行われる地区を重点整備地区として定め、生活関連施設及び生活関連経路の移動等円滑化に係る各種事業を重点的かつ一体的に推進することが必要である。 (2) 基本構想に即した各種事業の重点的かつ一体的な推進のための基本的視点 基本構想に即した各種事業の推進については、次に掲げる基本的視点が重要である。 @ 市町村の基本構想作成による事業の効果的な推進 重点整備地区における移動等円滑化に対する取組は、当該地区に最も身近な行政主体でありその地区における特性を十分に把握している市町村が、施設設置管理者、都道府県公安委員会等事業を実施すべき主体はもとより、高齢者、障害者等の関係者と協議等を行いながら基本構想を作成することにより、これらの事業の効果的な推進が図られることが重要である。 A 基本構想作成への関係者の積極的な協力による事業の一体的な推進  移動等円滑化に係る事業の実施主体となる施設設置管理者、都道府県公安委員会等及び高齢者、障害者等の関係者は基本構想の作成に積極的に協力し、各種事業を一体的に推進していくことが必要である。 B 地域住民等の理解及び協力 重点整備地区における移動等円滑化を図るに当たり、基本構想に位置付けられた各種事業が円滑に実施されるためには、地域住民等の理解及び協力が重要である。 資料編30ページ (3) 基本構想作成に当たっての留意事項  市町村は、効果的に移動等円滑化を推進するため、次に掲げる事項に留意して基本構想を作成する必要がある。 @ 目標の明確化 各種事業の実施に当たっては、当該重点整備地区における移動等円滑化について、市町村を始め、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者の施策を総合的に講ずる必要があることから、各者間で共通認識が醸成されることが重要である。したがって、基本構想には、地域の実情に応じ、可能な限り具体的かつ明確な目標を設定する。 A 都市計画との調和 基本構想の作成に当たっては、都市計画及び都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第十八条の二第一項に規定する市町村の都市計画に関する基本的な方針(以下「市町村マスタープラン」という。)との調和が保たれている必要がある。 B 地方自治法に規定する基本構想との整合性 市町村は、その事務を処理するに当たっては、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第四項に規定する基本構想に即して行う必要があるため、基本構想もこの基本構想に即していなければならない。 C 地方公共団体の移動等円滑化に関する条例、計画、構想等との調和 地方公共団体において、移動等円滑化に関する条例、計画、構想等を有している場合は、基本構想はこれらとの調和が保たれている必要がある。特に、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第九条第三項に規定する市町村障害者計画、障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第八十八条第一項に規定する市町村障害福祉計画、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十条の八第一項に規定する市町村老人福祉計画等の市町村が定める高齢者、障害者等の福祉に関する計画及び中心市街地の活性化に関する法律(平成十年法律第九十二号)第九条に規定する基本計画等都市機能の増進に関する計画との調和が保たれていることに留意する必要がある。 D 各種事業の連携と集中実施 移動等円滑化に係る各種の事業が相互に連携して相乗効果を生み、連続的な移動経路の確保が行われるように、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者間で必要に応じて十分な調整を図って整合性を確保するとともに、事業の集中的かつ効果的な実施を確保する。  また、複数の事業者間又は鉄道及びバス等複数の交通機関間を乗り継ぐ際の旅客施設内の移動等円滑化並びに当該市町村においてタクシー事業者、自家用有償旅客運送者等が行っているスペシャル・トランスポート・サービス(要介護者等であって単独では公共交通機関を利用することが困難な移動制約者を対象に、必要な介護などと連続して、又は一体として行われる個別的な輸送サービスをいう。)の在り方にも十分配慮する。  さらに、特定事業に係る費用の負担については、当該事業の性格を踏まえた適切な役割分担に応じた関係者間の負担の在り方について十分な調整を図って関係者間の共通認識を確保する。 E 高齢者、障害者等の提案及び意見の反映 施設及び車両等の利用者である高齢者、障害者等を始め関係者の参画により、関係者の意見が基本構想に十分に反映されるよう努める。このため、基本構想の作成に当たっては、法第二十六条に規定する協議会(以下「協議会」という。)を積極的に活用し、高齢者、障害者等の参画を得ることが求められる。この際、既に同条第二項各号に掲げる構成員からなる協議体制度を運用している場合、又は、他の法令に基づいて同項各号に掲げる構成員からなる協議体制度を運用しようとする場合は、当該協議体制度を協議会と位置付けることも可能である。なお、意見を求めるべき障害者には、視覚、聴覚、内部障害等の身体障害者のみならず、知的障害者、精神障害者及び発達障害者も含まれることに留意する必要がある。 また、法第二十七条に規定する基本構想の作成等に係る提案制度が積極的に活用されるよう環境の整備に努めるとともに、当該提案を受けた際には、その内容について十分な検討を加えることが求められる。 資料編31ページ F 段階的かつ継続的な発展(スパイラルアップ) 移動等円滑化の内容については、基本構想作成に係る事前の検討段階から事後の評価の段階に至るまで、高齢者、障害者等の利用者及び住民が積極的に参加し、この参加プロセスを経て得られた知見を共有化し、スパイラルアップを図ることが望まれる。 そのため、市町村は、基本構想が作成された後も、施設を利用する高齢者、障害者等の利用の状況並びに重点整備地区における移動等円滑化のための施設及び車両等の整備状況等を把握するとともに、協議会の活用等により基本構想に基づき実施された事業の成果について評価を行い、それに基づき、必要に応じ、基本構想の見直し及び新たな基本構想の作成を行うことが望ましい。 また、法附則第二条第二号の規定による廃止前の高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成十二年法律第六十八号)第六条第一項の規定により作成された基本構想については、法の趣旨を踏まえ、見直しを行うことが重要であることに留意する必要がある。 2 重点整備地区の位置及び区域に関する基本的な事項 (1) 重点整備地区の要件  法では、市町村は、法第二条第二十一号イからハまでに掲げる要件に該当するものを、移動等円滑化に係る事業を重点的かつ一体的に推進すべき重点整備地区として設定することができることとされている。また、重点整備地区の区域を定めるに当たっては、次に掲げる要件に照らし、市町村がそれぞれの地域の実情に応じて行うことが必要である。 @ 「生活関連施設(高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する旅客施設、官公庁施設、福祉施設その他の施設をいう。以下同じ。)の所在地を含み、かつ、生活関連施設相互間の移動が通常徒歩で行われる地区であること。」(法第二条第二十一号イ)  生活関連施設に該当する施設としては、相当数の高齢者、障害者等が利用する旅客施設、官公庁施設、福祉施設、病院、文化施設、商業施設、学校等多岐にわたる施設が想定されるが、具体的にどの施設を含めるかは施設の利用の状況等地域の実情を勘案して選定することが必要である。  また、生活関連施設相互間の移動が通常徒歩で行われる地区とは、生活関連施設が徒歩圏内に集積している地区をいい、地区全体の面積がおおむね四百ヘクタール未満の地区であって、原則として、生活関連施設のうち特定旅客施設又は官公庁施設、福祉施設等の特別特定建築物に該当するものがおおむね三以上所在し、かつ、当該施設を利用する相当数の高齢者、障害者等により、当該施設相互間の移動が徒歩で行われる地区であると見込まれることが必要である。  なお、重点整備地区を設定する際の要件として、特定旅客施設が所在することは必ずしも必須とはならないが、連続的な移動に係る移動等円滑化の確保の重要性に鑑み、特定旅客施設を含む重点整備地区を設定することが引き続き特に求められること、及び特定旅客施設の所在地を含む重点整備地区を設定する場合には、法第二十五条第三項の規定に基づき当該特定旅客施設を生活関連施設として定めなければならないとされていることに留意する必要がある。 資料編32ページ A 「生活関連施設及び生活関連経路(生活関連施設相互間の経路をいう。以下同じ。)を構成する一般交通用施設(道路、駅前広場、通路その他の一般交通の用に供する施設をいう。以下同じ。)について移動等円滑化のための事業が実施されることが特に必要であると認められる地区であること。」(法第二条第二十一号ロ)  重点整備地区は、重点的かつ一体的に移動等円滑化のための事業を実施する必要がある地区であることが必要である。  このため、高齢者、障害者等の徒歩若しくは車椅子による移動又は施設の利用の状況、土地利用及び諸機能の集積の実態並びに将来の方向性、想定される事業の実施範囲、実現可能性等の観点から総合的に判断して、当該地区における移動等円滑化のための事業に一体性があり、当該事業の実施が特に必要であると認められることが必要である。 B 「当該地区において移動等円滑化のための事業を重点的かつ一体的に実施することが、総合的な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切であると認められる地区であること。」(法第二条第二十一号ハ)  高齢者、障害者等に交流と社会参加の機会を提供する機能、消費生活の場を提供する機能、勤労の場を提供する機能など都市が有する様々な機能の増進を図る上で、移動等円滑化のための事業が重点的に、かつ、各事業の整合性を確保して実施されることについて、実現可能性及び集中的かつ効果的な事業実施の可能性等の観点から判断して、有効かつ適切であると認められることが必要である。 (2) 留意事項  市町村は、重点整備地区を定めるに当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。 @ 重点整備地区の数 市町村内に特定旅客施設が複数ある場合等、生活関連施設の集積の在り方によっては、複数の重点整備地区を設定することも可能であるが、当該生活関連施設相互間の距離、移動の状況等地域の実情から適当と判断される場合には、一つの重点整備地区として設定することも可能である。 A 複数の市町村及び都道府県の協力 生活関連施設の利用者が複数の市町村にまたがって移動しており、重点整備地区の範囲が複数の市町村にまたがる場合など、当該市町村が利用者の移動の実態に鑑み適当であると認めるときは、共同して基本構想を作成し、一体的に推進していくことが重要である。  また、これらの施設が大規模であり、利用者が広域にわたり、かつ、関係者間の調整が複雑となるような場合には、協議会への参加を求める等により都道府県の適切な助言及び協力を求めることが重要である。 B 重点整備地区の境界  重点整備地区の境界は、可能な限り市町村の区域内の町境・字境、道路、河川、鉄道等の施設、都市計画道路等によって、明確に表示して定めることが必要である。 3 生活関連施設及び生活関連経路並びにこれらにおける移動等円滑化に関する事項   重点整備地区において長期的に実現されるべき移動等円滑化の姿を明らかとする観点から、生活関連施設、生活関連経路等については次に掲げるとおり記載することが望ましい。 資料編33ページ (1) 生活関連施設  生活関連施設を選定するに当たっては、2(1)に留意するほか、既に移動等円滑化されている施設については、当該施設内の経路について、生活関連経路として移動等円滑化を図る場合等、一体的な移動等円滑化を図る上で対象と位置付けることが必要な施設につき記載するものとする。また、当面移動等円滑化のための事業を実施する見込みがない施設については、当該施設相互間の経路について、生活関連経路として移動等円滑化を図る場合等、一体的な移動等円滑化を図る上で対象と位置付けることが必要な施設につき、生活関連施設として、長期的展望を示す上で必要な範囲で記載することにも配慮する。 (2) 生活関連経路  生活関連経路についても(1)同様、既に移動等円滑化されている経路については、一体的な移動等円滑化を図る上で対象として位置付けることが必要な経路につき記載するものとする。また、当面移動等円滑化のための事業実施の見込みがない経路については、長期的展望を示す上で必要な範囲で記載することにも配慮する。 (3) 移動等円滑化に関する事項  基本構想の対象となる施設及び車両等において実施される移動等円滑化の内容について記載するものとする。当面具体的な事業実施に見込みがないものについては、事業実施の見込みが明らかになった段階で記載内容を追加又は変更する等基本構想を見直し、移動等円滑化の促進を図るものとする。 4 生活関連施設、特定車両及び生活関連経路を構成する一般交通用施設について移動等円滑化のために実施すべき特定事業その他の事業に関する基本的な事項 (1) 特定事業  特定事業としては、公共交通特定事業、道路特定事業に加え、路外駐車場特定事業、都市公園特定事業、建築物特定事業、交通安全特定事業があり、各々の事業の特性を踏まえ、必要となる事業について基本構想に記載するものとする。  なお、法第二十五条第二項第四号括弧書に規定されているとおり、旅客施設の所在地を含まない重点整備地区にあっては、当該重点整備地区と同一の市町村の区域内に所在する特定旅客施設との間の円滑な移動を確保するために、当該特定旅客施設の移動等円滑化を図る事業及び当該重点整備地区と当該特定旅客施設を結ぶ特定車両の移動等円滑化を図る事業についても、公共交通特定事業として記載することが可能である。  一般的には、建築物特定事業の対象となり得る生活関連施設である建築物が多数存在することから、基本構想作成時の協議及び事業実施を確実かつ円滑に行うためには、対象となる生活関連施設の規模及び利用状況等、他の特定事業との関連等について、当該地域の実情に照らして判断し、必要性等の高いものから基本構想に順次位置付けていくことが望ましい。  また、事業の着手予定時期、実施予定期間について可能な限り具体的かつ明確に記載することとし、当面事業の実施の見込みがない場合にあっては、事業の具体化に向けた検討の方向性等について記載し、事業が具体化した段階で、基本構想を適宜変更して事業の内容について記載を追加するものとする。 資料編34ページ (2) その他の事業  その他の事業としては、特定旅客施設以外の旅客施設、生活関連経路を構成する駅前広場、通路等(河川施設、港湾施設、下水道施設等が生活関連経路を構成する場合にあっては、これらの施設を含む。)の整備があり、おおむねの事業内容を基本構想に記載するものとする。 (3) 留意事項  市町村は、基本構想を作成しようとするときは、これに定めようとする特定事業その他の事業に関する事項について、関係する施設設置管理者、都道府県公安委員会等と十分に協議することが必要であり、事業の記載に当たっては、高齢者、障害者等の移動又は施設の利用の状況、都市計画及び市町村マスタープランの位置付け、事業を実施することとなる者の意向等を踏まえることが重要である。  また、特定事業を記載するに当たっては、事業を実施することとなる者の意向等を踏まえること並びに関連する特定事業間の連携及び調整を図ることが必要不可欠であることから、協議会制度を有効に活用し、基本構想の作成及び事業実施の円滑化を図ることが求められる。なお、協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員はその協議の結果を尊重しなければならないこととされていることに留意する必要がある。 特定事業その他の事業については、合理的かつ効率的な施設及び車両等の整備及び管理を行うことを念頭に、生活関連施設及び生活関連経路の利用者、利用状況及び移動手段並びに生活関連経路周辺の道路交通環境及び居住環境を勘案して記載することが必要である。この際、特定事業その他の事業の実施に当たっては、交通の安全及び円滑の確保並びに生活環境の保全についても配慮する必要があることに留意する必要がある。また、交通安全特定事業のうち違法駐車行為の防止のための事業に関しては、歩道及び視覚障害者誘導用ブロック上等の自動二輪車等の違法駐車、横断歩道及びバス停留所付近の違法駐車等、移動等円滑化を特に阻害する違法駐車行為の防止に資する事業が重点的に推進されるとの内容が基本構想に反映されるよう留意する必要がある。 5 4に規定する事業と併せて実施する土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業に関し移動等円滑化のために考慮すべき基本的な事項、自転車その他の車両の駐車のための施設の整備に関する事項その他の重点整備地区における移動等円滑化に資する市街地の整備改善に関する基本的な事項その他重点整備地区における移動等円滑化のために必要な事項 (1) 土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業に関する基本的な事項  重点整備地区における重点的かつ一体的な移動等円滑化を図るために実施される4に規定する事業を実施する場合、重点整備地区における市街地の状況並びに生活関連施設及び生活関連経路の配置の状況によっては、これらの事業を単独で行うのではなく、土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業と併せて行うことが効果的な場合がある。 @ 具体的事業の内容  4に規定する事業と併せて行う事業の選択に当たっては、高齢者、障害者等の移動又は施設の利用の状況、都市計画及び市町村マスタープランの位置付け等を踏まえて判断することが重要である。 A 記載事項  基本構想には、事業の種類、おおむねの位置又は区域等をそれぞれ記載するものとする。  なお、土地区画整理事業の換地計画において定める保留地の特例を活用し、土地区画整理事業と併せて生活関連施設又は一般交通用施設(土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)第二条第五項に規定する公共施設を除く。)であって基本構想において定められた施設を整備しようとする場合には、それぞれの施設の主な用途、おおむねの位置等についても記載する必要がある。 資料編35ページ (2) 自転車その他の車両の駐車のための施設の整備に関する事項その他の重点整備地区における移動等円滑化に資する市街地の整備改善に関する基本的な事項   移動等円滑化の妨げとなっている自転車その他の車両の放置及び違法駐車を防止するための抜本的な施策として、駐輪場等自転車その他の車両の駐車のための施設を特定事業その他の事業と一体的に整備することは極めて有効であることから、具体的な位置等これらの整備に関するおおむねの内容を記載するほか、その他の重点整備地区における移動等円滑化に資する市街地の整備改善に関する事項について記載することとする。 (3) その他重点整備地区における移動等円滑化のために必要な事項 @ 推進体制の整備 基本構想に位置付けられた各種の事業を円滑かつ効果的に実施していくためには、基本構想の作成段階又は基本構想に基づく各種の事業の準備段階から、関係者が十分な情報交換を行いつつ連携を図ることが必要であり、協議会を有効に活用することが求められる。 A 事業推進上の留意点 イ 地域特性等の尊重及び創意工夫 各種の事業の実施に当たっては、事業効果を高めるため、地域特性等を尊重して、様々な創意工夫に努めることが重要である。 ロ 積雪及び凍結に対する配慮  積雪及び凍結により移動の利便性及び安全性が損なわれる可能性がある場合は、積雪時及び路面凍結時の安全かつ円滑な移動のための措置を講ずるよう努めることが必要である。 ハ 特定事業に関する公的な支援措置の内容 基本構想に即して特定事業を円滑に実施するため公的な支援措置が講じられる場合には、その内容を明確にすることが重要である。 ニ 基本構想に即した特定事業計画の作成上の留意事項 施設設置管理者及び都道府県公安委員会が基本構想に即して特定事業計画を作成するに当たっては、早期作成の重要性を十分認識するとともに、協議会を活用することによって当事者である高齢者、障害者等を始め関係者の参画を図ること等により、関係者の意見が特定事業計画に十分に反映されるよう努めることが重要である。 ホ 基本構想作成後の特定事業その他の事業の実施状況の把握等   基本構想作成後、特定事業その他の事業が早期に、かつ、当該基本構想で明記された目標に沿って順調に進展するよう、市町村は、事業の実施状況の把握、これに係る情報提供、協議会の活用等による事業を実施すべき者との連絡調整の適切な実施等事業の進展に努めることが必要である。 ヘ 高齢者、障害者等への適切な情報提供 施設設置管理者及び都道府県公安委員会は、高齢者、障害者等に対して、重点整備地区における移動等円滑化のために必要な情報を適切に提供するよう努めることが重要である。 資料編36ページ B その他基本構想の作成及び事業の実施に当たっての留意事項  基本構想は、市町村の発意及び主体性に基づき自由な発想で作成されるものであるので、この基本方針の三に定めのない事項についても基本構想に記載することが望ましい。 四 移動等円滑化の促進のための施策に関する基本的な事項その他移動等円滑化の促進に関する事項 1 国の責務及び講ずべき措置   (1) 国の責務(スパイラルアップ及び心のバリアフリー) 国は、高齢者、障害者等、地方公共団体、施設設置管理者その他の者と協力して、基本方針及びこれに基づく施設設置管理者の講ずべき措置の内容その他の移動等円滑化の促進のための施策の内容について、移動等円滑化の進展の状況等を勘案しつつ、これらの者の意見を反映させるために必要な措置を講じた上で、適時に、かつ、適切な方法により検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めることにより、スパイラルアップを図るものとする。  また、移動等円滑化を進めるためには、施設及び車両等の整備のみならず、国民の高齢者、障害者等に対する理解及び協力、すなわち国民の「心のバリアフリー」が不可欠であることを踏まえ、国は広報活動、啓発活動、教育活動等を通じて、移動等円滑化の促進に関する関係者の連携及び国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努める。 (2) 設備投資等に対する支援、情報提供の確保及び研究開発等 施設設置管理者等による移動等円滑化のための措置を促進するため、設備投資等に対する必要な支援措置を講ずる。 また、高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を確保するためには、施設設置管理者等による移動等円滑化のための事業の実施状況に関する情報が利用しやすい形で提供される必要があることから、国は、施設設置管理者等による移動等円滑化のための事業の実施状況に関する情報が確実に収集され、利用しやすいよう加工された上で、利用者に提供されるような環境の確保に努めることとする。 さらに、国は、移動等円滑化を目的とした施設及び車両等に係る新たな設備等(情報を提供する手法に係るものを含む。以下同じ。)の実用化及び標準化、既存の設備等の利便性及び安全性の向上、新たな設備等の導入に係るコストの低減化等のための調査及び情報通信技術等の研究開発の促進を図るとともに、それらの成果が幅広く活用されるよう、施設設置管理者等に提供するほか、地方公共団体による移動等円滑化のための施設の整備に対する主体的な取組を尊重しつつ、地方公共団体が選択可能な各種支援措置の整備を行う。 2 地方公共団体の責務及び講ずべき措置  地方公共団体は、地域住民の福祉の増進を図る観点から、国の施策に準じ、1に掲げる責務を果たすとともに、措置を講ずることが必要である。特に、地域の実情に即して、移動等円滑化のための事業に対する支援措置、移動等円滑化に関する地域住民の理解を深めるための広報活動等移動等円滑化を促進するために必要な措置を総合的かつ計画的に講ずるよう努めることが必要である。 資料編37ページ   なお、建築物の移動等円滑化に関しては、地方公共団体が所要の事項を条例に定めることにより、地域の実情に応じた建築物の移動等円滑化を図ることが可能な仕組みとなっているので、積極的な活用に努めることが必要である。また、建築物の部分のうち駅等に設けられる一定の要件を満たす通路等については、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第五十二条第十四項第一号の規定による容積率制限の特例を受けることが可能であるので、同法に規定する特定行政庁は、当該規定の適切な運用に努めることが重要である。 3 施設設置管理者以外の高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する施設を設置又は管理する者の責務   高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を実現するために、地下街、自由通路、駅前広場その他の高齢者、障害者等が日常生活及び社会生活において移動手段として利用し得る施設を設置し、又は管理する者においても、移動等円滑化のために必要な措置を講ずるよう努めることが必要である。 4 国民の責務(心のバリアフリー) 国民は、高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性並びにそのために高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を実現することの必要性について理解を深めるよう努めなければならない。その際、外見上分かりづらい聴覚障害、内部障害、精神障害、発達障害など、障害には多様な特性があることに留意する必要がある。  また、視覚障害者誘導用ブロック上への駐輪、車椅子使用者用駐車施設への駐車等による高齢者、障害者等の施設の利用等を妨げないことのみならず、必要に応じ高齢者、障害者等の移動及び施設の利用を手助けすること等、高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を確保することに積極的に協力することが求められる。 附 則 この告示は、公布の日から施行する。 公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン (バリアフリー整備ガイドライン―旅客施設編―) 平成25年10月(October,2013) 監修 国土交通省総合政策局安心生活政策課 編集発行人 岩村 敬  発行 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 〒102-0076 東京都千代田区五番町10 五番町KUビル3階 電話 03-3221-6673(バリアフリー推進部) ファクシミリ 03-3221-6674 URL http://www.ecomo.or.jp/ The ECOMO Foundation