公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインバリアフリー整備ガイドライン 車両等編 平成30年7月 国土交通省総合政策局安心生活政策課 目  次 公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会(車両等編) 委員名簿1 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方2 1.移動等円滑化整備ガイドラインの活用にあたって2 1.1 ガイドラインの策定・改訂の背景2 1.2 ガイドラインの位置づけ2 1.3 対象施設と対象者3 2.移動等円滑化整備の基本的な考え方5 2.1 移動等円滑化の目的5 2.2 移動可能な環境づくり5 2.3 一体的・統合的な整備の方針5 3.ガイドラインにおける経路・施設配置・情報提供の具体的な考え方9 3.1 移動経路確保の考え方9 3.2 旅客施設と車両等における施設・設備設置の考え方9 3.3 情報提供の考え方10 4.移動等円滑化整備に関連した連携協力11 5.当事者参加により期待できる効果12 第2部 旅客施設共通ガイドライン 第3部 個別の旅客施設に関するガイドライン 第2部・第3部は別冊「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」をご覧下さい。 第4部 個別の車両等に関するガイドライン17 1.鉄軌道17 1.1 通勤型(短距離)鉄道・地下鉄18 1.2 都市間鉄道 54 1.3 モノレール・新交通システム74 1.4 軌道車両・低床式軌道車両74 1.5 その他の鉄道80 2.バス81 2.1 都市内路線バス81 2.2 都市間路線バス(高速・空港アクセスバス等)117 3.タクシー130 3.1 車椅子等対応131 (1)ユニバーサルデザインタクシー131 (2)大型電動車椅子・ストレッチャー(寝台)等対応(バンタイプ/リフト車)141 (3)車椅子対応(ミニバン・軽自動車タイプ/スロープ車・リフト車)150 (4)乗合タクシー 158 (5)肢体不自由者・高齢者等対応(セダンタイプ/回転シート車)162 (6)その他のタクシー車両における車椅子等対応(セダンタイプ)164 3.2 視覚障害者への対応165 3.3 聴覚障害者への対応166 3.4 知的障害者、発達障害者、精神障害者等への対応166 3.5 高齢者・障害者等その他配慮事項167 4.航空機168 バリアフリー基準・ガイドラインの今後検討すべき主な課題172 高齢者・障害者等の主な特性174 1ページ 公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会(車両等編) 委員名簿 (五十音順) 委員長 鎌田 実  東京大学大学院 新領域創成科学研究科人間環境学専攻 教授 委 員 赤城喜久代  公益社団法人全国脊髄損傷者連合会 常務理事 秋山 哲男  中央大学 研究開発機構 教授 芦田 義朗  西日本旅客鉄道株式会社 車両部車両課 担当課長 青木 邦比古  一般社団法人公営交通事業協会 業務部 部長 伊藤 勝明  東海旅客鉄道株式会社 総合企画本部投資計画部 担当部長 (江口 圭一 東海旅客鉄道株式会社 総合企画本部投資計画部 担当課長 ) 伊藤 大  国土交通省自動車局総務課企画室 財務企画調整官 衣本 啓介  国土交通省自動車局自動車技術政策課 課長補佐 井田 博敏  一般社団法人日本鉄道車輌工業会 技術部長 市川 智秀  国土交通省自動車局旅客課 バス事業活性化調整官 石島 徹  一般社団法人日本地下鉄協会 業務部 部長 大野 修一  一般社団法人日本自動車工業会 福祉車両部会 副部会長/トヨタ自動車轄蒼煌驩謨拍、品 企画室ウェルキャブグループ長 荻津 和良  社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 理事 岡野 俊豪  一般社団法人日本自動車工業会 安全環境技術委員会大型車部会 バス分科会長 小幡 恭弘  公益社団法人全国精神保健福祉会連合会 事務局長 太田 吉彦  一般社団法人日本自動車工業会 福祉車両部会 部会長/ダイハツ工業竃@人事業部商品室主査 大久保 通  一般社団法人日本自動車車体工業会 バス部会 技術委員 河合 俊宏  埼玉県総合リハビリテーションセンター 相談部福祉工学担当 川内 美彦  東洋大学 ライフデザイン学部人間環境デザイン学科 教授 菊地 隆寛  東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 運輸車両部 次長 北川 博巳  兵庫県立福祉のまちづくり研究所  主任研究員兼課長 木村 たま代  主婦連合会 消費者相談室長 小出 真一郎  一般財団法人全日本ろうあ連盟 理事 小出 骼i  全国手をつなぐ育成会連合会 副会長 斎藤 綾乃  公益財団法人鉄道総合技術研究所 人間科学研究部人間工学研究室 主任研究員 佐藤 聡  特定非営利活動法人DPI日本会議 事務局長 佐藤 宏幸  一般財団法人全国福祉輸送サービス協会 専務理事 渋谷 友次  一般社団法人日本自動車工業会 福祉車両部会 専門委員/トヨタ自動車概C製品企画 ZP 主査・次世代タクシー開発担当主査 硯川 潤   国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部 福祉機器開発室長 関 喜一   国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 人間情報研究部門  身体適応支援工学研究グループ 上級主任研究員 高橋 紀夫   国土交通省総合政策局安心生活政策課 交通バリアフリー政策室長  (平沢 善幸   国土交通省総合政策局安心生活政策課 交通バリアフリー政策室長 ) 高橋 良至   東洋大学 ライフデザイン学部人間環境デザイン学科 教授 高木 正三   社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会 副会長 津田 吉信   一般社団法人日本旅客船協会 企画部長 長井 総和   国土交通省総合政策局安心生活政策課 課長 中野 泰志   慶応義塾大学 経済学部 教授 橋口 亜希子  一般社団法人日本発達障害ネットワーク 事務局長 藤井 直人   リハビリテーション工学研究者 藤嶋 泰道   国土交通省航空局航空ネットワーク部航空事業課 専門官 福元 正武   国土交通省鉄道局技術企画課 総括課長補佐 堀口 寿広   国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部 統計解析研究室 室長 松田 妙子   特定非営利活動法人子育てひろば全国連絡協議会 理事 三星 昭宏   関西福祉科学大学 客員教授 三宅 隆    社会福祉法人日本盲人会連合情報部 部長 谷野 香    公益財団法人全国老人クラブ連合会 事務局長 山口 祥功  国土交通省海事局安全政策課 安全政策調整官 山下 和彦  一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会車両部会技術委員会車両部会 部会長会社 担当課長/西武鉄道(株) 鉄道本部 車両部車両課長 山川 一昭   公益社団法人日本バス協会 技術安全部 部長 矢澤 和也   国土交通省海事局内航課旅客航路活性化推進室 室長 脇 光次郎   定期航空協会 事務局長  ( )内は前任者 事務局 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 八千代エンジニヤリング株式会社 2ページ 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方 1.移動等円滑化整備ガイドラインの活用にあたって 1.1 ガイドラインの策定・改訂の背景 平成12年11月に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が施行され、公共交通機関の旅客施設、車両等の移動等円滑化を促進することが定められた。 その後、施策の拡充を図るため、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)と交通バリアフリー法を一体化し、平成18年12月20日に新たに「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)が施行された。この法律は、それまで対象とされていた高齢者や身体障害者のみならず、知的障害、精神障害、発達障害など全ての障害者を対象に加え、@公共交通機関(旅客施設・車両等)、道路、路外駐車場、都市公園、建築物を新設等する場合においては、一定のバリアフリー化基準(移動等円滑化基準)に適合させなければならないこと、A市町村が作成する基本構想に基づき、旅客施設、建築物等及びこれらの間の経路の移動等円滑化を重点的かつ一体的に推進すること等を内容としたものであり、同法に基づいて、公共交通事業者等が旅客施設や車両等を新たに整備・導入等する際に義務として遵守すべき基準である移動等円滑化基準(「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令」)等が定められている。 「公共交通機関の旅客施設の移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)は、昭和58年に策定された「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」以降、平成6年、平成13年、平成19年、平成25年と4回の改訂を行っており、今回は5回目の改訂となる。一方、「公共交通機関の車両等の移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン車両等編)は平成2年に策定された「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」以降、平成13年、平成19年、平成25年の改訂に続く4回目の改訂となる。 バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編及び車両等編の最後の改訂から約5年が経過し、この間、高齢化の進展はもとより、障害者数の増加、東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会の開催決定、障害者権利条約の締結及び障害者基本法等国内関係法の整備など、バリアフリー化・ユニバーサル社会の実現を取り巻く環境は大きく変化している。このような背景を踏まえて「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議」において決定された「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(平成29年2月20日)においても、公共交通分野のバリアフリー水準の底上げが掲げられ、今回の改訂に至った。 1.2 ガイドラインの位置づけ (1)ガイドラインの内容と趣旨 移動等円滑化基準は、公共交通事業者等が旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際に義務基準として遵守しなければならない内容を示したものである。 一方で、本整備ガイドラインは、公共交通事業者等が、旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際、高齢者、障害者等をはじめとした多様な利用者の多彩なニーズに応えるため、旅客施設及び車両等の整備のあり方を具体的に示した目安である。そのため、移動等円滑化基準に基づく整備内容を除いて、公共交通事業者等は本整備ガイドラインに従うことを義務付けられるものではないが、旅客施設及び車両等の新設、新造、大規模な改良の機会をとらえて、高齢者や障害者等を含む全ての人が利用しやすい公共交通機関の実現に向け、本整備ガイドラインを活用願いたい。なお、実際の整備においては、構造上の制約等から本整備ガイドラインに沿った整備が困難な場合も考えられる。上述の本整備ガイドラインの性格から、移動等円滑化基準に基づく整備内容を除き個々の 3ページ 内容ごとに例外的条項は記述していないが、各公共交通事業者等が、地域性、施設利用状況等の特性、整備財源等を勘案し、「2.移動等円滑化整備の基本的な考え方」をはじめとする本整備ガイドラインに示された考え方や根拠を理解のうえ、整備水準を主体的に判断し、利用者等の意見も十分勘案したうえで、より多くの利用者のニーズに対応できる移動環境としての公共交通インフラの実現を通じて、広く社会活動を支える有効な基盤となることを念頭に置いた移動等円滑化の促進が望まれる。 (2)ガイドラインの構成 本整備ガイドラインは、上記の趣旨に鑑み以下の構成で編集されている。 各整備箇所に関して、整備にあたっての考え方を示した上で、義務となる移動等円滑化基準、具体化にあたって考慮すべき整備の内容を「移動等円滑化基準に基づく整備内容」、これに準じて積極的に整備することが求められる「標準的な整備内容」、さらに高い水準を求める「望ましい整備内容」に分けて記載している。 「移動等円滑化基準に基づく整備内容」(◎) 移動等円滑化基準に基づく、最低限の円滑な移動を実現するための内容の記述を行ったものであり、記号“◎”(二重丸)で示す。 「標準的な整備内容」(○) 社会的な変化や利用者の要請に合わせた整備内容のうち標準的な整備内容で、積極的に整備を行うことが求められるものであり、記号“○”(丸)で示す。 「望ましい整備内容」(◇) 上記の整備を行ったうえで、移動等円滑化基準に基づく整備内容(◎)、標準的な整備内容(○)より、さらに円滑な移動等を実現するための移動等円滑化や、利用者の利便性・快適性への配慮を行った内容のものであり、記号“◇”(四角)で示す。 なお、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満の旅客施設においても、利用状況などに配慮しつつ、本整備ガイドラインに沿って移動等円滑化を進めることが望まれる。また、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満で係員が配置されていない既存の鉄軌道駅では、巻末「参考」(3,000人未満の無人鉄軌道駅における配慮事項)に示した配慮事項を踏まえた施設整備が望まれる。 1.3 対象施設と対象者 (1)対象施設及び車両等  「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)が対象とする施設は、バリアフリー法に定められた旅客施設(鉄道駅、軌道停留場、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル施設)である。車両等については、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン車両等編)に基づくこととなる。公共交通機関の移動等円滑化に関しては、それぞれのガイドラインを目安として整備し、移動等円滑化の推進に努めることが望まれる。 バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)は、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において2020年度末までの移動円滑化の目標の対象として設定されている1日平均利用者数3,000人以上の施設を念頭に記載しているが、3,000人未満の施設も含め、すべての旅客施設を対象としている。利用者数が少ない旅客施設においても、本整備ガイドラインを目安とした整備を行うことが望ましい。 車両等については、鉄軌道車両は約70%の移動円滑化の目標が設定されており、バスではノンステッ 4ページ プバスの導入目標が約70%、リフト付きバス等が約25%である。タクシーは福祉タクシー車両の導入目標約28,000台、航空機については約90%の目標値が設定されている。これらの目標値に向けた努力がなされているところであるが、達成可能なところでは目標値を超える積極的な整備が望まれる。 また、利用者数の特に多い旅客施設、複数の路線が入る旅客施設、複数事業者の旅客施設が存在する施設、旅客施設以外の施設との複合施設等では、利用者数の規模や空間の複雑さ等を勘案して、特別な配慮を行うことが求められる。具体的な内容は、旅客施設編では「第2部」(旅客施設共通ガイドライン)、「第3部」(個別の旅客施設に関するガイドライン)、車両等編では「第4部」(個別の車両等に関するガイドライン)に掲載している。一方で、利用者数が少ない旅客施設においても適切な配慮をすることが重要である。 (2)対象者  本整備ガイドラインに基づく施策の主な対象者は、高齢者、障害者等の移動制約者を念頭におきつつ、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方にも配慮している(表1-1-1)。なお、本表は主な障害等を列挙したものである。利用者の具体的な特性等については、移動の際に発生しうるニーズで整理する考え方も有効である。そのため、図1-2-1、表1-2-1に示した資料も参照し、すべての利用者にとって使いやすい旅客施設とすることが期待される。 表1-1-1 本整備ガイドラインにおける対象者 ・高齢者 ・肢体不自由者(車椅子使用者) ・肢体不自由者(車椅子使用者以外) ・内部障害者 ・視覚障害者 ・聴覚・言語障害者 ・知的障害者 ・精神障害者 ・発達障害者 ・高次脳機能障害 ・妊産婦 ・乳幼児連れ ・外国人 ・その他 注:高齢者・障害者等においては、重複障害の場合がある。 ※高齢者や各障害の特性及びそれらに応じた公共交通機関利用時の課題等を巻末に掲載した。施設整備にあたっては、それらについても配慮することが望まれる。 5ページ 2.移動等円滑化整備の基本的な考え方  本項は、移動等円滑化基準や本整備ガイドラインに沿った旅客施設、車両等整備に関連して、それらの整備に取り組むにあたって念頭に置くべき、移動等円滑化全般にわたっての考え方を記述したものである。 2.1 移動等円滑化の目的 1.2ガイドラインの位置づけでも触れたように、本整備ガイドラインは、移動等円滑化基準をベースとして、高齢者、障害者等をはじめとした利用者のニーズに応えるための旅客施設及び車両等の整備のあり方を具体的に示した目安であるが、これら移動等円滑化への対応の目的は、高齢者、障害者等移動に困難を伴う多様な人々に対して生活を支えるための移動可能な環境の整備である。 移動可能な環境の整備とは、旅客施設、車両等、その他、旅客施設周辺のビルや旅客施設前広場等との連続的移動の確保、表示や音などの情報提供等、施設・設備面の整備とともに、業務要員による接遇も含めて、高齢者、障害者等が生活に必要な移動等を達成できるようにすることである。 2.2 移動可能な環境づくり 移動可能な環境づくりの3つの要素とは、以下のとおりである。 @バリアのないルートの確保:可能な限り最短距離で、高低差が少なく、見通しがききわかりやすいルートと空間を連続的に確保すること。 Aわかりやすいルートの確保:空間構成、様々な表示サイン、音サイン、人的対応などを有効に組み合わせ、誘導を適切に行うこと。 B安全で使いやすい施設・設備:必要な施設・設備(乗車券等販売所、待合所、案内所、トイレ等)をアクセスしやすく、安全で使いやすく整備すること。 以上の3つの要素を満たすことによって、円滑に移動できる環境を作り出すことができる。 2.3 一体的・統合的な整備の方針 移動の連続性、容易性を確保するためには、利用対象者をそのニーズに基づいて統合的にとらえ、施設・車両、地域などを一体的にとらえて計画し、整備を行うことが重要である。 (1)現状の課題と方針 @多様な利用者を統合的にとらえる 肢体不自由者(車椅子使用者、杖使用者等)、視覚障害者(ロービジョン、全盲)、聴覚・言語障害者(全聾・難聴)、知的障害者、精神障害者、発達障害者、コミュニケ―ションに障害がある人など、多様な障害がある人の機能状況(動くこと、見ること、聞くこと、伝えること、理解すること等)を個別の障害ごとに縦割りにとらえるのではなく、移動の際に発生するニーズに応じてとらえることが必要である(図1-2-1)。例えば、お年寄りの困りごとについては「動くこと」「見ること」「聞くこと」「伝えること・理解すること」の全ての領域に関係する場合があり、盲ろう者では「見ること」「聞くこと」「伝えること・理解すること」に関係する。また高齢者、障害者等だけを対象とするのではなく、利用者全体を統合的にとらえることで、他の多くの利用者のニーズにも対応し、移動等円滑化につながるものである。図1-2-1に対応し、表1-2-1には先述の対象者ごとに想定される主な特性とニーズの関連をあげた。 注)ここでいう統合(integration)とは、例えば「統合教育」と言う場合、障害のある子も同じ学級、同じ環境で他の児童・生徒と同じように教育を受けることを意味するものであり、移動においては誰もが同じように施設・車両等を使用して移動することである。 6ページ A施設・車両等を一体的にとらえる 空間、施設、車両等、設備の一部だけに着目して整備を進めるのではなく、誰もがその全てを利用する可能性があるため、例えば旅客施設であれば、その出入口から車両等に至るまで、すべての移動経路、案内設備、サービス施設等を一体的にとらえて整備する。また、交通モードの結節部分については、事業者間で連携を図り移動の連続性を確保することが重要である。 なお、施設整備により事前的改善措置を図ることが基本であるが、人的な対応等と合わせて移動の連続性を確保する必要がある。 B旅客施設と周辺地域(旅客施設前広場など)を一体的にとらえる 移動の連続性から考えると、旅客施設、車両等と周辺地域(旅客施設と一体となった商業ビル、旅客施設前広場等)を一体的にとらえる必要がある。施設の大規模化や複合化に対応して、旅客施設から連続している商業施設、旅客施設前広場、バス等の乗降場、周辺街区までなど、人々が連続的に移動するエリアを一体的にとらえ、各施設設置管理者や自治体との連携の下、道路、建築物、都市公園等の移動等円滑化とも連携を図り、シームレス(継ぎ目のない状態)に整備する必要がある。(図1-2-2) 図1-2-1 多様な利用者を移動の際に発生しうるニーズに基づいて整理したイメージ図 利用者全体 (内部障害、難病等外見上わからない人も含む) a.「動くこと」に困っている人 ・車椅子を使っている人 ・杖を使っている人 ・お年寄り ・妊娠している人 ・子ども ・ベビーカーを押している人 ・大きな荷物を持った人 等 b.「見ること」に困っている人 ・全盲の人 ・ロービジョン者 ・お年寄り ・子ども等 c.「聞くこと」に困っている人 ・ろう者(全く聞こえない人) ・難聴者(聞こえにくい人) ・お年寄り等 d.「伝えること・理解すること」に困っている人 ・日本語に慣れていない人 ・知的障害のある人 ・記憶障害のある人 ・言語、読み書きに障害のある人 ・お年寄り ・子ども ・コミュニケーションが苦手な人等 図1-2-2 旅客施設と周辺地域を一体的・統合的にとらえるイメージ図 7ページ 表1-2-1 本整備ガイドラインに示す対象者の主な特性(より具体的なニーズ)の整理 対象者 高齢者 主な特性(より具体的なニーズ)  <主として図1-2-1のa、b、cのニーズ> ・階段、段差の移動が困難 ・長い距離の連続歩行や長い時間の立位が困難 ・視覚・聴覚能力の低下により情報認知やコミュニケーションが困難 など 対象者 肢体不自由者(車椅子使用者) 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、b、dのニーズ> 車椅子の使用により ・階段、段差の昇降が不可能 ・移動及び車内で一定以上のスペースを必要とする ・座位が低いため高いところの表示が見にくい ・上肢障害がある場合、手腕による巧緻な操作・作業が困難 ・脳性まひなどにより言語障害を伴う場合がある など ※車椅子の主なタイプについてはP174を参照 対象者 肢体不自由者(車椅子使用者以外) 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、bのニーズ> 杖、義足・義手、人工関節などを使用している場合 ・階段、段差や坂道の移動が困難 ・長い距離の連続歩行や長い時間の立位が困難 ・上肢障害がある場合、手腕による巧緻な操作・作業が困難 ・片マヒがある場合、トイレの戸が右開きか左開きかで使いにくことがある など 対象者 内部障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、dのニーズ> ・外見からは気づきにくい ・急な体調の変化により移動が困難 ・疲労しやすく長時間の歩行や立っていることが困難 ・オストメイト(人工肛門、人工膀胱造設者)によりトイレに専用設備が必要 ・障害によって、酸素ボンベ等の携行が必要 など 対象者 視覚障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のbのニーズ> 全盲以外に、ロービジョン(弱視)や色覚異常により見え方が多様であることから ・視覚による情報認知が不可能あるいは困難 ・空間把握、目的場所までの経路確認が困難 ・案内表示の文字情報の把握や色の判別が困難 ・白杖を使用しない場合など外見からは気づきにくいことがある など 対象者 聴覚・言語障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のc、dのニーズ> 全聾の場合、難聴の場合があり聞こえ方の差が大きいため ・音声による情報認知やコミュニケーションが不可能あるいは困難 ・音声・音響等による注意喚起がわからないあるいは困難 ・発話が難しく言語に障害がある場合があり伝えることが難しい ・外見からは気づきにくい など 対象者 知的障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のdのニーズ> 初めての場所や状況の変化に対応することが難しいため、 ・道に迷ったり、次の行動を取ることが難しい場合がある ・感情のコントロールが困難でコミュニケーションが難しい場合がある ・情報量が多いと理解しきれず混乱する場合がある ・周囲の言動に敏感になり混乱する場合がある ・読み書きが困難である場合がある ・視覚過敏や聴覚過敏である場合がある など 8ページ 対象者 精神障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のdのニーズ> 状況の変化に対応することが難しいため、 ・新しいことに対して緊張や不安を感じる ・混雑や密閉された状況に極度の緊張や不安を感じる ・周囲の言動に敏感になり混乱する場合がある ・ストレスに弱く、疲れやすく、頭痛、幻聴、幻覚が現れることがある ・服薬のため頻繁に水を飲んだりすることからトイレに頻繁に行くことがある ・外見からは気づきにくい ・視覚過敏や聴覚過敏である場合がある など 対象者 発達障害者 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のdのニーズ> ・注意欠陥多動性障害(AD/HD)等によりじっとしていられない、走り回るなどの衝動性、多動性行動が出る場合がある ・広汎性発達障害等により特定の事柄に強い興味や関心、こだわりを持つ場合がある ・反復的な行動を取る場合がある ・学習障害(LD)等により読み書きが困難である場合がある ・他人との対人関係の構築が困難 ・視覚過敏や聴覚過敏である場合がある など 対象者 高次脳機能障害 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図 1-2-1 の a、d のニーズ> ・半側空間無視や注意障害がある場合、プラットホームを移動する際に転落や人・ものにぶつかる危険がある ・注意障害などにより、必要な情報を見つけるのが難しいことがある ・失語や失認などにより、案内や表示を見ても内容が理解できないことがある ・記憶障害や地誌的障害などにより、道順や経路、目印が覚えられないことがある 対象者 妊産婦 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のaのニーズ> 妊娠していることにより、 ・歩行が不安定(特に下り階段では足下が見えにくい) ・長時間の立位が困難 ・不意に気分が悪くなったり疲れやすいことがある ・初期などにおいては外見からは気づきにくい ・産後も体調不良が生じる場合がある など 対象者 乳幼児連れ 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のaのニーズ> ベビーカーの使用や乳幼児を抱きかかえ、幼児の手をひいていることにより、 ・階段、段差などの昇降が困難(特にベビーカー、荷物、幼児を抱えながらの階段利用は困難である) ・長時間の立位が困難(子どもを抱きかかえている場合など) ・子どもが不意な行動をとり危険が生じる場合がある ・オムツ交換や授乳できる場所が必要 など 対象者 外国人 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のb、c、dのニーズ> 日本語が理解できない場合は、 ・日本語による情報取得、コミュニケーションが不可能あるいは困難 など 対象者 その他 主な特性(より具体的なニーズ) <主として図1-2-1のa、b、c、dのニーズ> ・一時的なけがの場合(松葉杖やギブスを使用している場合など含む) ・難病、一時的な病気の場合 ・重い荷物、大きな荷物を持っている場合 ・初めての場所を訪れる場合(不案内) など 注:高齢者・障害者等においては、重複障害の場合がある。 9ページ 3.ガイドラインにおける経路・施設配置・情報提供の具体的な考え方 3.1 移動経路確保の考え方 (1)自立的な移動環境の確保 高齢者、障害者等が、可能な限り単独で、健常者と同様の時間、ルート、手段によって移動できるよう、旅客施設、車両等において、連続性のある移動動線を可能な限り最短経路で確保する。 旅客移動について最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化するとともに、主動線が利用できない緊急時等も勘案し、移動等円滑化された経路(以下「移動等円滑化経路」という。)を複数確保することが望ましい(図1-3-1)。 図1-3-1 移動経路確保の基本イメージ (2)移動経路とわかりやすさ 旅客施設においても、車両等においても、高齢者、障害者等すべての人にとって快適でわかりやすい空間とすることが望ましい。 (3)大規模旅客施設等における対応 公共用通路と車両等の乗降口との間の経路ならびに乗継ぎ経路については、乗降場ごとに円滑化することが求められる。 また、以下のような場合には、移動等円滑化経路を複数確保するために積極的な整備が求められる。 @利用者数の特に多い施設、複数の路線が乗り入れている施設、複数の事業者が関わる複合施設 A上記以外の施設においても、利用者数、ピーク時の旅客の集中度、医療施設や高齢者、障害者施設が近くに立地するなど、利用者特性がある程度把握されている場合 B高齢者、障害者等の利用に加え、ベビーカー使用者など、幅広い利用者層への対応が求められる場合 (4)施設設置管理者間の連携 公共交通機関の乗り継ぎだけでなく、道路空間、隣接建築物等の施設設置管理者との連続的な移動等円滑化経路を確保することが望ましい。 3.2 旅客施設と車両等における施設・設備設置の考え方 (1)トイレ @アクセスしやすいこと 旅客施設においても、車両内においても、トイレはアクセスしやすい場所に配置し、すべての利用者が利用しやすい構造とする。 A多機能トイレの機能の分散配置 多機能トイレへの利用が集中し、車椅子使用者などから使いたい時に使えない場合があることが指摘されている。このため、機能分散の観点から、車椅子使用者用便房とオストメイト用設備を有する便房を分けた整備が可能であることが示された。車椅子使用者用便房のほか、車椅子使用者用簡易型便房、オストメイト設備を有する便房、乳幼児連れ用設備を有する便房を設置し、 10ページ こうした機能を、一般便房へ分散的に配置するなどの方策を図ること。その際には、旅客施設内におけるトイレの設置位置とその有する機能についてわかりやすい案内表示を行うことが必要である。 Bトイレの複数個所への設置 旅客施設において主要な出入口が複数ある場合、旅客施設が複数に分かれている場合、平面的あるいは立体的に空間が広がっている場合などでは、複数個所へのトイレ設置を検討する。 (2)休憩施設等 休憩施設は、旅客動線等を考慮して必要箇所を把握し、施設全体から見た配置計画、配置数を検討するとともに、高齢者の増加、ベビーカー使用者の増加等、利用者層の将来的な変化も踏まえて計画する。計画にあたっては、高齢者や、持病のある利用者、内部機能障害等、多くの休憩機会が必要な利用者や、注射、服薬などが必要となる場合も考えられるため、トイレとの関連等も含め、休憩施設の機能を勘案する。また、乳幼児連れの旅客のための施設(授乳室等)の配置も望まれる。 3.3 情報提供の考え方 (1)わかりやすく空間を整備する わかりやすい空間の整備を目標にして、情報コミュニケーションに制約のある人の特性(巻末参考資料「高齢者・障害者等の主な特性」参照)と、各種情報提供設備の特性を考慮し、旅客施設、車両等において、適切な情報の内容、方法、配置等を検討し整備する。 特に情報コミュニケーションの制約が大きいと考えられる障害等について留意事項を整理すると表1-3-1のとおりである。 表1-3-1 特に情報コミュニケーションの制約が大きいと考えられる障害等への留意事項 障害 視覚障害 留意事項 音声・音響案内、ロービジョンの人を考慮した視覚表示装置の工夫 障害 色覚異常 留意事項 情報提供装置、路線図、地図等への色、表示方法の工夫 障害 聴覚障害 留意事項 主に音声で案内される緊急時情報等の文字情報による素早い提供等 障害 知的障害・精神障害・発達障害・高次脳機能障害・精神障害 留意事項 特に緊急時など通常と異なる情報、変化する情報、今後の見通し、代替手段等の利用について、理解しやすい情報提供のありかた、問い合わせへの対応など人的な面も配慮する (2)接近と退出双方向の情報提供 旅客施設及び車両等内において、また、旅客施設と外部とのアクセス(接近)・イグレス(退出)の経路において、高齢者、障害者等の移動を支援するため、見やすく(視覚表示設備の場合)、聞きやすく(音案内設備の場合)、内容がわかりやすい、適切な案内用設備を設置する。また、必要に応じて乗降場やその付近においても案内板等の設備を整備する。 (3)情報提供手段の役割分担 情報量が多い場合には、情報の優先順位に考慮した上で、パンフレット等による情報提供も活用することによって、案内用設備(視覚表示設備、音案内設備)による情報提供を簡潔にすることも検討する。さらに、案内用設備では対応できない高齢者、障害者等への人的な対応も考慮する。 ホームページなどによる情報提供については、障害のある利用者にとって事前の情報収集が施設や車両を円滑に利用するための有効な手段であるが、ウェブサイトやアプリのアクセシビリティにはまだ課題が多い。情報提供の際には、ウェブ利用のアクセシビリティに関するJIS(JIS X 8341-3) 11ページ 等に準拠するなど対応が必要となる。 (4)異常時の情報提供 遅延や運休(欠航)などによる振替輸送の実施など、通常と異なる経路を案内する必要がある場合は、移動等円滑化経路についても前もって把握し、速やかに案内する。また、障害の状況により情報収集の方法が異なるため、音声情報や文字情報等複数の手段で情報提供をする必要がある。 (5)情報提供の方法 視覚表示設備を設置する場合には、漢字やローマ字のほかに、かなによる表示、多言語による表示などより多くの利用者が理解できる方法で情報提供を行う。 (6)音案内に関する考え方 音案内(音声・非音声音)については、現行ガイドラインで鉄道駅を対象に改札口、エスカレーター、トイレ、プラットホーム上の階段、地下駅地上出入口の各施設の音案内設置について記載している。 実際の音案内は、施設の構造、音質、騒音など周辺環境の影響によって、必要な時に聞こえない、聞こえてもわかりにくい、うるさく感じられる等の問題が生じており、十分にその機能が発揮されていない状況が見受けられる。 本整備ガイドラインでは旅客施設編131ページに参考として、「移動支援用音案内(非音声及び音声案内)に関する計画の考え方」を記載し、音案内の必要性、音案内を整備する上での留意事項と着眼点、音案内の整備のあり方と方向性について現時点での考え方を提示し、音案内を実施する際の音質、音量、音源の位置、音の反射、音案内が伝えるべき情報、暗騒音など周辺環境の対応などいくつかの基本的な論点を挙げて解説した。 4.移動等円滑化整備に関連した連携協力 公共交通機関における移動等円滑化を図るためには、より使いやすい施設、車両等の整備実現のために、公共交通事業者のみならず、国、地方公共団体、その他施設の設置管理者等の関係者が様々な面から互いに連携協力し、総合的かつ計画的に推進していくことが必要である。 また、ハード面での移動等円滑化は、移動等円滑化基準や本整備ガイドラインに基づく整備によって、一定の役割は果たすことができるが、様々なニーズに対応するためには、ハード面の整備とともに人的な対応も移動等円滑化の両輪として行う必要があり、利用者と直接接する業務に従事する要員による移動制約者等への対応や異常時・非常時への備え、利用者へのマナーの広報等も必要である。移動制約者の特性の理解、ニーズを把握するスキル、基本的な介助等の技術、施設・車両等のバリアフリー設備等の知識を習得するための研修が必要である。その際、障害者等移動制約者が研修に参画することが望ましい。また、それらをサポートし相互理解を深めるようなマニュアルやプログラムの整備が必要となる。さらに、施設、車両等の設計、施工、管理などを行う技術的な要員が移動等円滑化の取り組み全般を適切に理解するためにも、事業者内におけるこれら要員相互の積極的な連携協力が重要である。 12ページ 例)仙台市交通局の取組 東西線整備(2015年12月開業)を機に仙台市のまちづくり関係部局と仙台市交通局、公共施設管理者が連携し、サイン表記の共通基準を策定することにより統一を図り、乗継案内におけるバリアを解消した。また、JR東日本に対してもサイン表記の統一の協力を要請し、乗継経路の案内サインの統一化が図られた。 左写真 改善前:コンコース乗換案内 右写真 改善後:コンコース乗換案内 中央写真 改善後:自由通路乗換案内 提供:仙台市交通局 5.当事者参加により期待できる効果 施設整備については、一度整備を行った後で改善を図ることは物理的な制約やコストを考慮すると対応が容易でない場合がある。また、施設や利用者の状況によりガイドライン通りに整備を行っても必ずしも十分な対応とならないことがある。 施設を新設する場合や大規模な修繕を行う場合には、障害者をはじめとする地域の利用者や専門家からの意見収集や意見交換を行い、当事者参加による整備を進めることで、より多くの利用者にとって利用しやすい施設となる。また、施設や設備のみではなく利用空間全体を視野に入れて改善を図ることで分かりやすい施設とすることは移動の連続性を確保するうえで重要な視点となる。 なお、バリアフリー設備についてはその機能や役割が発揮されるよう、清掃、調整及び補修等、適切な維持、管理を行うことが必要である。また、一度整備されたものであっても、状況の変化により利用の仕方等が変化する場合があるため、当事者参加の下で継続的な評価を行い、改善を図る必要がある 。 13ページ 参考:バリアフリー化された旅客施設のイメージ(鉄道駅) ・道路から段差なく駅に入ることができる ・駅に入ると駅施設を一望できる ・移動動線がとても短い ・移動動線上にエレベーター・トイレ・乗車券等販売所・待合所・ 案内所などが並んでいる ・改札口を入るとエレベーター、エスカレーター、階段を一時に 視認できる ・改札口からエレベーター、エスカレーター、階段までの距離が ほぼ等距離で、それらを任意に選択できる ・駅出入口・改札口・ホーム間の垂直移動が、上り線・下り線とも一度ですむ ・改札内コンコースからホームの様子を一望できる ・ホームから改札口方向を一望できる ・ホームから改札口にいたるエレベーター、エスカレーター、階段を一時に視認できる ・ホームから改札口にいたるエレベーター、エスカレーター、階段までの距離がほぼ等距離で、それらを任意に選択できる ・ホーム上に可動式ホーム柵などの安全措置が施されている 14ページ ◆本整備ガイドラインにおける基本的な寸法 ■車椅子の寸法(JIS T9201並びにT9203に示された最大寸法) ●車椅子の幅:手動車椅子及び電動車椅子を想定し、70cm ●車椅子の全長:手動車椅子及び電動車椅子を想定し、120cm ■車椅子使用者の必要寸法 ●通過に必要な最低幅:80cm ・出入りに必要な幅は、手動車椅子がハンドリムを手で回転して移動するための動作のスペースを10cmとし、車椅子の幅に加えた80cmが必要。 ・電動車椅子の場合、ハンドリムを手で回転させる動作はないが、障害の程度が手動車椅子使用者よりも重い傾向にあることや操作ボックスの設置場所に対する余裕を見込むと、同じく80cmが必要。 ●余裕のある通過に必要な最低幅:90cm ・余裕のある通過に必要な幅は、手動車椅子がハンドリムを手で回転して移動するための動作のスペースと余裕幅を20cmとし、車椅子の幅を加えた90cmが必要。 ・電動車椅子の場合、ハンドリムを手で回転させる動作はないが、障害の程度が手動車椅子使用者よりも重い傾向にあることや操作ボックスの幅を見込むと、手動車椅子と同じ余裕幅20cmが必要であり、90cmが必要。 ●車椅子の通行に必要な幅:90cm ・車椅子の通行には、車椅子の振れ幅を考慮すると、90cmが必要。 ●車椅子と人のすれ違いの最低幅:135cm ・車椅子と人がすれ違うためには、車椅子の振れ幅と人の寸法を加えた65cmの余裕幅が必要。 ●車椅子と車椅子のすれ違いの最低幅:180cm ・車椅子同士がすれ違うためには、双方の車椅子の通行に必要な余裕幅を確保した180cmが必要。 ●車椅子の回転に必要な広さ:180度回転できる最低寸法:140cm ・市販されている車椅子が切り返しを行わずに180度回転できる必要寸法としては幅140cm、長さ170cmの空間が必要。 ●車椅子の回転に必要な広さ:360度回転できる最低寸法:150cm ・市販されている車椅子が切り返しを行わずに360度回転できる必要寸法としては直径150cmの円空間が必要。 ●電動車椅子の回転に必要な広さ:360度回転できる最低寸法:180cm ・市販されている電動車椅子が切り返しを行わずに360度回転できる必要寸法としては直径180cmの円空間が必要。 ■松葉杖使用者の必要寸法 ●松葉杖使用者が円滑に通行できる幅:120cm 15ページ 参考:本ガイドラインにおける基本的な寸法 ●通過に必要な最低幅 80cm ●余裕のある通過及び通行に必要な最低幅 90cm ●車椅子と人のすれ違いの最低幅 135cm ●車椅子と車椅子のすれ違いの最低幅 180cm ●松葉杖使用者が円滑に通行できる幅 120cm ●車椅子が180度回転できる最低寸法 140cm ●車椅子が360度回転できる最低寸法 150cm ●電動車椅子が360度回転できる最低寸法 180cm (注意)手動及び電動車椅子の寸法:全幅70cm、全長120cmの場合(JIS規格最大寸法) 16ページ <ハンドル形電動車椅子の寸法(全長・全幅)及び回転性能> ■ 最大寸法 単位:mm 区分 全長(L0)最大寸法 1200 区分 全幅(W0)最大寸法 700 区分 全高(H0)最大寸法 1200 注記 全高(H0)は、ヘッドサポートを取り外した状態でバックミラーを含め床からの高さが最も高い部位で測る。 全長(L0)及び全幅(W0)は、カバー及びタイヤを含め最も外側となる部分で測る。 ■ 回転性能 1.2M形(タイプT) 幅1.2mの直角路を曲がらなければならない。 1.0M形(タイプU) a)幅0.9mの直角路を5回まで切返して曲がれなければならない。 b)幅1.0mの直角路を切返しなしで曲がれなければならない。 c)1.8m未満の幅で180°の回転ができなければならない。 出典:JIS T9208 ハンドル形電動車椅子 17ページ 第4部 個別の車両等に関するガイドライン 1.鉄軌道 平成12年に制定された交通バリアフリー法により、鉄軌道車両等の移動等円滑化が義務付けられ、同法律に基づき定められた移動等円滑化基準により、新車の導入や車両等の大規模改良に合わせて、基準に適合した車両の導入が進められている。  平成19年のガイドライン見直しにより、車椅子使用者だけでなくベビーカー使用者の増加を考慮した車椅子スペースの増加や、ホーム転落防止に効果的であるホームドアの設置促進のための、車両側における乗降口扉位置の統一、また、車椅子使用者が渡り板なしでも乗降できるような車両床面とホームとの段差解消、障害当事者だけでなく外国人等様々な利用者に配慮した情報表示装置の充実に向けた取り組みが進められている。また、平成25年の見直しでは、車両の扉位置について可能な限り統一を図ることが望ましい旨の記載、利用実態等に応じて車椅子スペースを増設することが望ましいこと、当該スペースを多様な利用者に配慮したものとする旨が記載された。さらに、プラットホームと車両の乗降口との段差縮小については、ホーム側のかさ上げ対応に加え、車両側の床面を下げることで段差縮小を図った事例も紹介したところである。 今回の改定では、車椅子スペースについては1列車2ヶ所以上設けることが基準として示された。すでに通勤型車両では全車両に車椅子スペースを確保し、ベビーカーも含めた利用が可能となっている事例が増えており、ガイドラインにおいても各車両に車椅子スペースを設けることを示したところである。都市間鉄道については車椅子スペースと通路幅確保の考え方、車椅子スペースを縦列で2ヶ所設ける場合のスペースの考え方が示された。また、多目的室や特別車両料金席へ使用可能性を広げることを示している。なお、車椅子スペースについては指定席、自由席を問わず利用を可能にすることへの要望も依然として寄せられていることから、より選択性が広がることが引き続き望まれる。 プラットホームと車両の間の段差と隙間については、一定条件下において、原則として渡り板等の設備を使用しなくても車椅子使用者が単独で乗降できる程度に解消を図っていくことが示された。車椅子使用者等の移動円滑化の観点から、今後もプラットホームと車両の間の段差と隙間解消を図る措置を進める必要があり、国による調査により一定の方向性を出すこととしている。  バリアフリー法の基本方針では、平成32年度末までに全鉄軌道車両のうち70%を移動等円滑化された車両にすることが示されている。平成28年度末では移動等円滑化基準に適合した車両の割合は67.7%となっており、目標に向けた取り組みが着実に進められているところである。今後もより一層の整備の進展が望まれている。 18ページ 1.1 通勤型(短距離)鉄道・地下鉄 【通勤型(短距離)鉄道・地下鉄車両の例】 座席/ロングシートタイプ・セミクロスシートタイプ 乗降口/両引自動ドア 6〜8カ所/両(片側3〜4カ所) 参考4-1-1:通勤型鉄道の姿図 ・ロングシートタイプの例 ※優先席、車椅子スペースを車両端部に設置した例。 ・セミクロスシートタイプの例 ※優先席、車椅子スペースを車両端部に設置した例。 19ページ @乗降口(車外) 移動等円滑化基準  (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 旅客用乗降口の床面の縁端とプラットホームの縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。 二 旅客用乗降口の床面とプラットホームとは、できる限り平らであること。 三 旅客用乗降口のうち一列車ごとに一以上は、幅が八十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。  (車体) 第33条 鉄道車両の連結部(常時連結している部分に限る。)には、プラットホーム上の旅客の転落を防止するための設備を設けなければならない。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 2 車体の側面に、鉄道車両の行き先及び種別を見やすいように表示しなければならない。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 段・隙間 ・車両とプラットホームの段・隙間について、段はできる限り平らに、隙間はできる限り小さいものとする。 乗降口の幅 ・旅客用乗降口のうち1列車に1以上は、有効幅を800mm以上とする。 行き先・車両種別表示 ・車体の側面に、当該車両の行き先及び種別を大きな文字により見やすいように表示する。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 転落防止設備の設置 ・旅客列車の車両の連結部(常時連結している部分に限る)は、プラットホーム上の旅客の転落を防止するため、転落防止用ほろ等転落防止設備を設置する。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ○:標準的な整備内容 段・隙間 ・施設側の渡り板が速やかに設置できない場合は、車両内に車椅子使用者の円滑な乗降のための渡り板の配備、段差解消装置を設置する。(欄外コラム1参照) 乗降口の幅 ・車椅子スペースの直近の旅客用乗降口は、車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、有効幅を900mm以上とする。 行き先・車両種別表示 ・車体の側面に、車両番号(号車)等を大きな文字により見やすいように表示する。ただし、車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りではない。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラストを確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) ・照明又は高輝度LED等により、夜間でも視認できるものとする。 20ページ 聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプ ・聴覚障害者等が車内外から戸の開閉のタイミングを確認できるよう、車内ランプ又は車外ランプの点滅等により戸の開閉のタイミングを表示する。 視覚障害者用ドア開案内装置 ・視覚障害者等のために、ドアが開いていることを示すための音声案内装置(音声等により常「開」状態を案内するもの)を設ける。なお、当該音声等は車外から聞き取ることができれば 良く、スピーカーの設置位置は車内外を問わない。なお、音声案内は、JIS T0902を参考とする。 戸の開閉ボタン ・戸の開閉ボタンを設けた場合は、周囲の色と輝度コントラスト*を確保し、視覚的にわかりやすいものとし、開閉を示す矢印の刻印等触れてもわかりやすい形状とする。 ◇:望ましい整備内容 段・隙間 ・地方鉄道等において段が大きい場合には、@施設側におけるホームの嵩上げ、A車両側における低床化、B段差解消装置等を設置するなどにより、段差解消することが望ましい。 隙間の警告 ・ホームが曲線の場合は車両とプラットホームの隙間が大きくなるため、音声(JIS T0902を参考)及び光で危険性を注意喚起することが望ましい。 隙間解消設備 ・乗降口の床面の縁端部には、ステップ(クツズリ)を設け、車両とプラットホームの隙間をできるだけ小さくすることが望ましい。 ・上記の隙間を小さくするための設備の縁端部は、全体にわたり十分な太さで周囲の床の色とのコントラストを確保し、当該ステップを容易に識別できるようにすることが望ましい。 自動段差解消設備 ・車椅子スペース直近の乗降口には、車椅子使用者が円滑に乗降するための自動段差解消設備を設けることが望ましい。 戸のレール ・車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、戸のレールの出っ張りを解消することが望ましい。 戸の開閉ボタン ・戸の開閉ボタンを設けた場合は、ボタン上部に点字を併記することが望ましい。 乗降口の戸の位置 ・乗降口の戸の位置は列車間で可能な限り統一を図ることが望ましい。ただし、通勤型(短距離)鉄道用車両と都市間鉄道用車両等、用途が異なる車両が混在する路線の場合は、この限りではない。 音による警告 ・運行中に車両の連結・分離などが行われるなどの理由により、転落防止設備が設置できない場合には、音声(JIS T0902を参考)による警告を行うことが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 21ページ 姿図・寸法 参考4-1-2:乗降口(車外)の例 (コラム1)渡り板・段差解消装置(バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)191〜193ページ参照) ・速やかに設置できる場所に配備する。 ・幅800mm以上、使用時の傾斜は10度以下として十分な長さを有するもの、耐荷重300kg程度のものとする。ただし、構造上の理由により傾斜角10度以下の実現が困難な場合には、車椅子の登坂性能等を考慮し、可能な限り傾斜角10度に近づけるものとする。 ・渡り板のホーム側接地面には滑り止めを施し、かつ、渡り板の車両側端部にひっかかりを設けること等により、使用時にずれることのないよう配慮する。 ・なお、渡り板の使用においては、ホームの形状に配慮し、降りたホームの反対側の線路に転落する等の事故がないよう、渡り板の長さとホームの幅に十分注意する。 ・車両・ホーム等の構造上の理由により渡り板が長く、また、傾斜角が急(概ね10度を超える)となる場合には、脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設ける。 ・無人駅などでは車両内に搭載した渡り板を使用して係員が対応するなど、速やかな乗降のための柔軟な対応を行う。 (上記によらない段差・隙間解消装置の場合) ・速やかに操作できる構造の段差・隙間解消装置を設置する。 22ページ 参考例 参考4-1-3:渡り板の例 参考例 参考4-1-4:地方鉄道において車両内に渡り板を配備している事例(長崎県 松浦鉄道) 参考例 参考4-1-5:車内外から視認できる聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプの事例 ・阪急電鉄株式会社 9000系(写真左)等 −扉上部車内側に開閉予告表示を設置、扉の開閉スイッチ操作時(操作グリップをひねる)に赤色灯が点滅。 23ページ 参考例 参考4-1-6:ドアレールの出っ張りを解消した車両の事例 ・横浜高速鉄道株式会社Y-500系 −切り欠きにより出っ張りを低減した ・香港MTR鉄道 −凹型レールにより出っ張りを解消した 24ページ 参考例 参考4-1-7:ホームとの段差、隙間を低減した事例 ・大阪市高速電気軌道株式会社:長堀鶴見緑地線 隙間の縮小対策として、ホーム嵩上げ及びホーム縁端に櫛状のゴムを設置。 段差:0〜15mm、隙間:約20mmに縮小。        提供:大阪市高速電気軌道株式会社 長堀鶴見緑地線 ・仙台市交通局:東西線全駅(新設) 隙間の縮小対策としてホーム縁端に櫛状のゴムを設置。段差:ほぼ平ら、隙間:28mm。 提供:仙台市交通局 ・福岡市交通局 隙間の縮小対策としてホーム縁端に櫛状のゴムを設置。 提供:福岡市交通局 25ページ 参考例 参考4-1-8:視覚障害者用ドア開案内装置の事例 ・各ドアの上部にスピーカーを設置し、ドアの開閉時および開いてからしばらくの間音声チャイムが鳴動。(700系以降の新幹線に適用)。 ・出入口上部の扉開閉案内器を設置し、ドアが開いている間は5秒間隔でチャイム(ポーン、ポーン)が鳴動(東武鉄道(一部車両))。 ・カモイ部または出入口下部のスピーカーより、ドア開閉時に「ピンポン音(1秒)」が1回鳴動するとともに、ドア開状態の間「ポーン(2秒)」が4秒間隔で連続鳴動する(西武鉄道(一部車両))。 ・東武鉄道株式会社50000系 参考例 参考4-1-9:戸の開閉ボタンの事例 ・相模鉄道株式会社20000系 戸の開閉ボタン(車外)                戸の開閉ボタン(車内) 26ページ A乗降口(車内) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 四 旅客用乗降口の床面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 六 車内の段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより、車内の段を容易に識別できるものであること。 (客室) 第32条 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 6 客室内の旅客用乗降口の戸又はその付近には、当該列車における当該鉄道車両の位置その他の位置に関する情報を文字及び点字により表示しなければならない。ただし、鉄道車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 床面の仕上げ ・旅客用乗降口の床の表面は滑りにくい仕上げがなされたものとする。 乗降口脇の手すり ・乗降口脇には、高齢者、障害者等が円滑に乗降できるよう、又、立位時に身体を保持しやすいように手すりを設置する。 ・手すりの高さは、高齢者、障害者、低身長者、小児等に配慮したものとする。 乗降口付近の段の識別 ・段が生じる場合は、段の端部(段鼻部)の全体にわたり十分な太さで周囲の床の色と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保し、容易に当該段を識別できるようにする。 号車及び乗降口位置(扉番号)等の点字・文字表示 ・各車両の乗降口の戸又はその付近には、号車及び乗降口位置(扉番号)を文字及び点字(触知による案内を含む。)により表示する。ただし、車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ○:標準的な整備内容 乗降口端部の識別 ・乗降口端部の床面は、周囲の床の色との輝度コントラストを確保し容易に識別できるようにする。 乗降口脇の縦手すり ・乗降口の両脇には、高齢者、障害者等が円滑に乗降できるよう、又、立位時に身体を保持しやすいように握りやすい形状の縦手すりを設置する。 ・乗降口の両脇に設置する縦手すりの径は25mm程度とする。 乗降口付近の段の識別 ・段の端部(段鼻部)の全体にわたり周囲の床の色と輝度コントラストを確保する際には、その太さを幅50mm程度以上として、容易に当該段を識別できるようにする。 車内の段付近の手すり ・車内に段がある場合には、歩行補助のため段の付近に手すりを設置する。 戸の開閉の音響案内 ・視覚障害者が円滑に乗降できるように、戸の位置及び戸の開閉が車内及び車外の乗降位置から分かるようなチャイムを戸の内側上部等に設置し、戸の開閉動作に合わせてチャイム音(JIS T0902を参考)を鳴動させる。 号車及び乗降口位置(扉番号)等の点字・文字表示 ・案内表示は、視覚障害者が指により確認しやすい高さに配慮し、床から1,400 27ページ  〜1,600mm程度の高さに設置する。 ・戸先側に表示し、両開き扉においては左側扉に表示する。 聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプ ・聴覚障害者等が車内外から戸の開閉のタイミングを確認できるよう、車内ランプ又は車外ランプの点滅等により戸の開閉のタイミングを表示する。 戸の開閉ボタン ・戸の開閉ボタンを設けた場合は、周囲の色と輝度コントラスト*を確保し、視覚的にてわかりやすいものとし、開閉を示す矢印の刻印等触れてもわかりやすい形状とする。 ◇:望ましい整備内容 戸の開閉ボタン ・戸の開閉ボタンを設けた場合は、ボタン上部に点字を併記することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-10:号車及び乗降口位置(扉番号)等の文字・点字表示例 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 28ページ 参考例 参考4-1-11:号車及び乗降口位置(扉番号)等の点字・文字表示の事例 ・首都圏新都市鉄道株式会社 ・大阪市高速電気軌道株式会社 出典:大阪市高速電気軌道株式会社ホームページ ※当該様式については、図形など様々な様式が普及しないよう大阪市高速電気軌道株式会社によって特許が取得されている(事業者が本仕様を採用する場合は実施料を請求しないため、コストの低減にも配慮されている)。 参考例 参考4-1-12:乗降口端部及び戸先を容易に識別できるようにした事例 ・東日本旅客鉄道株式会社 E233系 (戸袋側にも注意喚起のステッカーを貼付している例) 29ページ B優先席等 ○:標準的な整備内容 優先席の設置 位置 ・優先席は、乗降の際の移動距離が短くて済むよう、乗降口の近くに設置する。 優先席の表示 ・優先席は、@座席シートを他のシートと異なった配色、柄とする、A優先席付近の吊り手又は通路、壁面等の配色を周囲と異なるものにする等により車内から容易に識別できるものとする、B優先席の背後の窓や見やすい位置に優先席であることを示すステッカーを貼る等により、優先席であることが車内及び車外から容易に識別できるものとし、一般の乗客の協力が得られやすいようにする。 優先席数 ・優先席数(全座席に占める割合)については、優先席の利用の状況を勘案しつつ、人口の高齢化などに対応した増加について検討する必要がある。 弱冷房車の設置及び表示 ・高齢者、内部障害者等体温調節が困難な人のために、弱冷房車の設定温度を高めに設定した車両を1編成に1両以上設置し、車外に弱冷房車であることをステッカー等で表示する。ただし、車両編成が一定しない等の理由によりやむを得ない場合はこの限りでない。 ◇:望ましい整備内容 優先席の設置位置 ・相互直通運転を実施する場合には、事業者間で優先席の位置を統一することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-13:優先席の設置例 出典:JIS Z8210「案内用図記号」付属書JB(参考)日本規格協会 30ページ 参考例 参考4-1-14: JIS化された優先席のピクトグラム ・ピクトグラムは、高齢者、障害のある人・怪我をした人、妊産婦、乳幼児連れ、内部障害者の5つ。 参考4-1-15:ヘルプマーク ・援助や配慮を必要としている方が、身につけることで、周囲の方に配慮を必要としているを知らせることができる表示。 参考4-1-16:優先席の表示例 写真・京都市交通局                写真・東京都交通局 31ページ 参考例 参考4-1-17:優先席エリアを明確にし、かつ網棚の高さを低くしている事例(東日本旅客鉄道株式会社E235系(左写真)、E233系(右写真)) ・荷物棚(一般席1,730mm)及び吊り手(一般席1,630mm)高さを一般席と比較して、それぞれ 50mm低くしている。 ・車内から容易に識別できるよう優先席付近の吊り手、通路、壁面の配色を周囲と異なるものとしている。   参考例 参考4-1-18:優先席ではないが、乗降口近くの座席に両肘掛けを設け、高齢者、障害者等の車内の移動距離が少なく乗降・利用しやすいものとしている事例 ・近畿日本鉄道株式会社 9020系ロングシート・らくらくシート 32ページ (コラム2)乗車可能な乗客や運用の時間帯を分かりやすく明示している事例 ・女性専用車両等乗車できる乗客が限定される車両においては、乗車が可能である乗客や、運用の時間帯を分かりやすく明示することが望ましい。 ・東京都交通局 ・神戸市交通局 33ページ C手すり 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 手すりの設置 ・通路及び客室内には手すりを設置する。 ○:標準的な整備内容 つり革の設置 ・客室に立席スペースを設ける車両においては、利用者が身体を保持できるように、通路及び客室内に手すりまたはつり革を設置する。 つり革の高さ ・つり革の高さ・配置については、客室用途と利用者の身長域(特に低身長者)に配慮する。 つり革の太さ ・つり革は握りやすい太さとする。 縦手すりの配置 ・つり革の利用が困難な高齢者、障害者、低身長者、小児等に配慮し、立位時の姿勢を保持しやすいよう、また、立ち座りしやすいよう、縦手すりを配置する。 設置位置、径 ・縦手すりは、座席への移動や立ち座りが楽にできるような位置に設置する。 ・縦手すり・横手すりの径は30mm程度とする。ただし、乗降口脇に設置する縦手すりは「乗降口(車内)」の内容に準ずる。 座席手すり ・クロスシート座席には、座席への移動や立ち座り、立位時の姿勢保持に配慮し、座席肩口に手すり等を設ける。 姿図・寸法 参考4-1-19:手すりの設置例 34ページ 参考例 参考4-1-20:手すりの設置事例 ・東日本旅客鉄道株式会社E233系     ・東京地下鉄株式会社16000系 参考 参考4-1-21:つり革の高さに関する研究事例と導入事例 ・(社)人間生活工学研究センター(2003)『日本人の人体計測データ』pp142-143.−斉藤・鈴木・白戸・藤浪・松岡・平井・斉藤「通勤近郊列車のつり革高さと手すり位置の検討」.人間工学.Vol1,9-21,2006より引用  −通路つり革下辺高さは、通路としての要件から1,800mm以上とした。 −一般つり革の下辺高さは、全体の使いにくい割合が最小かつ成人男性の使いやすさが悪化しない範囲から、1,600〜1,650mmとした。 −低位つり革下辺高さは、全体の使いにくい割合が最小かつ女性・高齢者の使いやすさ重視から、1,550〜1,600mmとした。 ・2種の高さのつり革を設定している事例 35ページ D車椅子スペース 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 客室には、次に掲げる基準に適合する車椅子スペースを一列車ごとに二以上(三両以下の車両で組成する列車にあっては、一以上)、特別車両以外の車両の座席の近傍に設けなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車椅子使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車椅子使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 五 車椅子スペースである旨が表示されていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの設置数 ・客室には1列車ごとに2以上の車椅子スペースを設ける。ただし、3両編成以下の車両で組成する列車にあっては1以上とすることができる。 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子スペースは特別車両以外の車両の座席の近傍に設けること。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは、車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さを確保する。 ・車椅子スペースは1,300mm以上×750mm以上を確保する。ただし、車椅子使用者が同じ向きの状態で利用する車椅子スペースを2以上縦列して設ける場合にあっては、2台目以降の車椅子スペースの長さは1,100mm以上とすることができる。 車椅子スペースの通路の広さ ・車椅子スペースに隣接した通路の幅は400mm以上確保する 。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に掲出する。 手すり ・車椅子スペースには、車椅子使用者が握りやすい位置に手すりを設置する。 床面の仕上げ ・車椅子スペースの床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置数・形態 ・多数の旅客が利用し又は車椅子使用者その他の車椅子スペースを必要とする利用者が多い場合には、1車両に1以上の車椅子スペースを設ける。 ・車椅子スペースは、利用形態を限定せず、ベビーカー使用者等の多様な利用者に配慮したものとする。 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子スペースは、車椅子スペースへの移動が容易で、乗降の際の移動距離が短くて済むように、乗降口から近い位置に設置する。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは、車椅子使用者が極力進行方向を向けるよう配慮する。 36ページ 手すり ・車椅子スペースには、車椅子使用者が握りやすい位置(高さ800〜850mm程度)に横手すりを設置する。 ・上記手すりの径は30mm程度とする。 非常通報装置 ・車椅子スペース付近には、車椅子使用者の手の届く範囲に非常通報装置を設置する。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に加え車外にも掲出する。 ・ベビーカーの利用が可能なスペースにおいては、容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、ベビーカーマークを車内に加え車外にも掲出する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置数・形態 ・多数の旅客が利用し又は車椅子使用者その他の車椅子スペースを必要とする利用者が多い以外の場合であっても、1車両に1以上の車椅子スペースを設けることが望ましい。 ・1車両に1以上の車椅子スペースを設置しない場合にあっては、車椅子スペースを複数の車両に分散して設けることが望ましい。 ・各路線の利用実態を踏まえ、車椅子使用者、ベビーカー使用者の利用が多い場合には、車椅子スペース及びベビーカーが利用可能なスペースを増設することが望ましい。 ・相互直通運転を実施する場合には、事業者間で車椅子スペースの位置を統一することが望ましい。 ・車椅子スペースは、車椅子使用者、ベビーカー使用者等の円滑な乗車に配慮し、2以上の車椅子が乗車可能であることが望ましい。 ・車椅子スペースには、車外を確認できるよう窓を設けることが望ましい。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースに隣接した通路の幅は450mm以上確保することが望ましい。 ・車椅子スペースの広さは、1,400mm以上×800mm以上とすることが望ましい。この場合、車椅子が転回できるよう、前述車椅子スペースを含め、1,500mm 以上×1,500mm 以上の広さを確保することが望ましい。 ・車椅子スペースは通路にはみ出さないように設置することが望ましい。 手すり ・車椅子スペースには、車椅子使用者、低身長者、ベビーカー使用者等の利用に配慮し、2段手すりを設置することが望ましい。 37ページ 姿図・寸法 参考4-1-22:車椅子スペースの設置例 参考例 参考4-1-23:利用実態を踏まえ車椅子スペースを増設した事例 ・福岡市交通局 提供 福岡市交通局 38ページ ・仙台市交通局 提供 仙台市交通局  ・その他車椅子スペースを1両ごとに1カ所設置している列車の運行がある事業者 −東京地下鉄株式会社  −大阪市高速電気軌道株式会社  −近畿日本鉄道株式会社 −南海電気鉄道株式会社 −阪神電気鉄道株式会社     −京都市交通局 −阪急電鉄株式会社 等 参考例 参考4-1-24:車椅子スペースの形態・表示事例  ・広島電鉄   −車椅子使用者に加えベビーカー使用者も利用可能。   −車椅子スペースの表示についても、車椅子だけでなくベビーカー使用者も利用可能であることを分かりやすく表示。   −車椅子スペースの横に一般座席があり、介助者は近くに着席が可能。 39ページ 参考例 参考4-1-25:車椅子スペースの形態・表示事例 提供 東日本旅客鉄道株式会社           提供 西日本鉄道株式会社 参考4-1-26:車椅子スペースへの2段手すりの設置事例 ・当該事例では、2段手すりの芯の部分の高さが、上段950mm(ベビーカー固定や立位客の保持に適する高さ)、下段715mm(車椅子使用者の保持および車椅子介助者・ベビーカーを使用している保護者・立位客の腰置きなどに適する高さ)となっている。 40ページ Eトイレ 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 3 便所を設ける場合は、そのうち一列車ごとに一以上は、車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車椅子スペースとの間の通路のうち一以上及び一以上の車椅子スペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子対応トイレの設置 ・客室にトイレを設置する場合は、そのうち1列車ごとに1以上は、車椅子使用者の円滑な利用に適したトイレを設ける。 ・車椅子使用者の円滑な利用に適したトイレを設ける場合は、少なくとも1以上の車椅子スペースとの通路間のうち、1以上の幅は800mm以上とする。 車椅子対応トイレの出入口の戸の幅 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口の戸の有効幅は、800mm以上とする。 ○:標準的な整備内容 多機能トイレの設置 ・客室にトイレを設置する場合は、1列車に1以上車椅子での利用が可能で、かつ、付帯設備を設けた多機能トイレを設ける。 ・多機能トイレは車椅子スペースに近接した位置に配置する。  車椅子マーク ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口には、当該トイレが車椅子使用者の利用に適した構造のものであることを表示する標識を設ける。 ・表示は、車椅子使用者が見やすいよう、低めの位置に行う。 車椅子対応トイレの出入口の戸の幅 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口の戸の有効幅は、車椅子使用者の余裕ある通行を考慮し、900mm以上とする。ただし、車椅子による通路からトイレへのアクセスが直線である等、トイレへのアクセス性に配慮されている場合は、この限りでない。 車椅子対応トイレの段の解消 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口には、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 車椅子対応トイレの出入口の戸の仕様 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口の戸は、電動式引き戸又は軽い力で操作できる手動式引き戸とする。 ・手動式引き戸の場合は、握手は棒状ハンドル式、レバーハンドル式等のものとし、容易に操作できるよう取り付け高さに配慮する。 車椅子対応トイレの出入口の戸の鍵 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口の戸は、容易に施錠できる形式とし、非常時に外から解錠できるようにする。 41ページ 車椅子対応トイレの出入口の戸開閉スイッチ ・自動ドア開閉スイッチの高さは800〜900mm程度とする。  多機能トイレ内部の仕様 ・多機能トイレは、車椅子のまま出入りすることができ、車椅子から便座(腰掛け式=洋式)への移動がしやすいように、車椅子から便座への移動が可能なスペース、便座の高さ(400〜450mm)を確保する。 ・車椅子でできるだけ便器に接近できるよう、フットサポートが下に入る便器とする。 ・十分な戸の幅の確保が難しく、車椅子が戸と直角の向きでトイレに出入りする場合は、トイレの外側に車椅子の転回できるスペースを確保する。 手すり ・便器周囲の壁面に手すり(高さ650〜700mm程度)を設置する(スペースがある場合は、肘掛けタイプの可動式手すりを設置することが望ましい)。 ・手すりは、握りやすく、腐蝕しにくい素材で、径は30mm〜35mm程度とする。 床面の仕上げ ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 便器洗浄ボタン ・便器に腰掛けた状態及び便器に移乗しない状態で届く位置に設置し、操作しやすい方式(押しボタン式等)とする(視覚障害者の利用に配慮し、センサー式を用いる場合は押しボタン式あるいは靴べら式を併用することが望ましい。)。 ・センサー式水洗フラッシュバルブを用いる場合には、センサー部に突起を設ける等によりわか りやすいものとした上で、センサーの反応時間を短くする。 手洗器 ・便器に腰掛けたまま容易に利用できる位置に設置し、高齢者、障害者等の扱いやすい形状とする。 非常呼出しボタン ・便器に腰掛けたまま容易に利用できる位置に設置し、高齢者、障害者等の扱いやすい形状とする。 ・転倒時でも手の届く範囲に設置する。 付属設備 ・便器付近に棚及び着替えを考慮したフックを設ける。 トイレの点字表示 ・男女別にトイレが設けられている場合には、トイレのドア握り手・ボタン等の操作部の上側に、トイレである旨、男女別の点字を表示する。 トイレ空間の広さ ・トイレ内外、あるいはそのいずれかにおいて、車椅子が転回できる空間を確保する。 ドア開閉スイッチ ・自動ドア開閉スイッチの構造は肢体不自由な人等でも容易に操作できる押しボタン式のものとする。 器具等の形状・色・配置 ・視覚障害者や肢体不自由な人等の使用に配慮し、便房内の便器洗浄ボタン、非常通報装置、紙巻器の形状・色・配置についてはJIS S0026に合わせたものとする。 42ページ ◇:望ましい整備内容 トイレ空間の広さ ・トイレ内には介助者が介助しやすい空間を確保することが望ましい。 トイレ内設備の触知案内図等 ・すべてのトイレの出入口内側に、トイレの構造を視覚障害者に示すための触知案内図等を設けることが望ましい。 ・なお、触知案内図により表示する場合には、表示方法はJIS T0922に合わせたものとする。点字により表示する場合は、表示方法はJIS T0921に合わせたものとする。 背もたれ ・便座の後部に、体を支える背もたれ(同様の機能を持つ手すりを含む)を設置することが望ましい。 付属設備 ・オストメイトのパウチ洗浄を考慮し、便器付近にパウチ専用水洗装置(自動水栓)を設けることが望ましい。 43ページ 姿図・寸法 参考4-1-27:車椅子対応トイレの例 44ページ 参考例 参考4-1-28:車椅子対応トイレの事例 ・近畿日本鉄道株式会社 アーバンライナー・ネクスト(2扉車両) -出入口手前で車椅子が回転できるよう直径1600mmの空間を確保。正面からの進入を可能にした。また、内部においても90度程度転回可能な空間を確保。 -車椅子から便器への移乗を介助するスペースが確保されている。 参考4-1-29:車椅子使用者等の円滑な利用に配慮したトイレの例 ・東日本旅客鉄道株式会社 E721系(3扉車両) 45ページ 参考例 参考4-1-30:JIS S0026「公共トイレにおける便房内操作部の形状・色・配置」抜粋  ・操作部の形状 −便器洗浄ボタンの形状は丸形(○)とする。(主要な操作部として押しボタン式スイッチの便器洗浄ボタンを必ず設置し、センサー式は補助的な設置にとどめる(センサー式だけの設置は避ける)ことが望ましい。) −呼び出しボタンの形状は便器洗浄ボタンと区別しやすい形状[例えば、四角形(□)又は三角形(△)]とする。操作部は、指だけでなく手のひら又は甲でも押しやすい大きさとする。 −ボタンの高さは、目の不自由な人が触覚で認知しやすいよう、ボタン部を周辺部より突起させることが望ましい。 形状丸形(○)直径約25〜50mm  形状四角形(□)縦横約25〜50mm ・操作部の色及び輝度コントラスト −ボタンの色:操作部の色は、相互に識別しやすい色の組み合わせとする。JIS S0033に規定する“非常に識別しやすい色の組み合わせ”から選定することが望ましい。例えば、便器洗浄ボタンの色を無彩色又は寒色系とし、呼出しボタンの色を暖色系とすることが望ましい。 −ボタン色と周辺色の輝度コントラスト:操作部は、ボタン色と周辺色との輝度コントラスト*を確保する。また、ロービジョンの人及び加齢による黄色変化視界の高齢者も判別しやすいよう、明度差及び輝度比にも留意する。 ・操作部及び紙巻器の配置 46ページ −呼出しボタンは、利用者が転倒した姿勢で容易に操作できる位置にも設置することが望ましい。 表 操作部及び紙巻器の設置寸法  単位:mm 器具の種類 紙巻器 便座上面端部(基点)からの水平距離 X1:便器前方へ約0〜100 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y1:便器上方へ約150〜400 2つの器具間距離 − 器具の種類 便器洗浄ボタン 便座上面端部(基点)からの水平距離 X1:便器前方へ約0〜100 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y2:便器上方へ約400〜550 2つの器具間距離 −Y3:約100〜200(紙巻器 との垂直距離) 器具の種類 呼出しボタン 便座上面端部(基点)からの水平距離 X2:便器後方へ約 100〜200 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y2:便器上方へ約400〜550 2つの器具間距離 X3:約200〜300(便器洗浄ボタンとの水平距離) 注)JIS S0026では上図の配置・寸法を基本とするものの、JISの解説において“この規格に示す設置寸法以外のとなる場合”の配置例を示している(手すりを設置する場合、棚付紙巻器を設置する場合、スペア付紙巻器を設置する場合等)。上図の配置・寸法による設置が困難な場合等においてはJIS S0026解説を参照されたい。 (コラム3)多機能トイレの便器脇手すり等の配慮事項 ・重度の上肢障害のある利用者(例えば上肢の動作が困難な頸椎損傷や筋ジストロフィーの人)にとっては便器洗浄ボタン等の操作スイッチの壁面取り付け位置は低めが望ましいという結果が示されている(JIS S0026の規格制定の事前検証「ぐっどトイレプロジェクト」による)。本整備ガイドラインでは壁面に取り付ける手すりの高さの目安を650〜700mm程度と示しているが、操作スイッチ類を低めに設置するにあたり、手すりがスイッチや紙巻き器類に干渉しないよう高さの決定に際しては十分な配慮が必要である。 ・JIS S0026では上図の配置・寸法を基本とするものの、JISの解説において“この規格に示す設置寸法以外となる場合”の配置例を示している(手すりを設置する場合、棚付紙巻器を設置する場合、スペア付紙巻器を設置する場合等)。上図の配置・寸法による設置が困難な場合等においてはJIS S0026解説を参照されたい。 47ページ F通路 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車椅子スペースとの間の通路のうち一以上及び一以上の車椅子スペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び少なくとも1以上の車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、有効幅800mm以上を確保する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、有効幅900mm以上を確保することが望ましい。 G案内表示及び放送(車内) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 五 旅客用乗降口の戸の開閉する側を音声により知らせる設備が設けられていること。 (客室) 第32条 5 客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む)を文字等により表示するための設備を備える。 案内放送装置 ・客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む)を音声により提供するための車内放送装置を設ける。 ・旅客用乗降口には、旅客用乗降口の戸の開閉する側を音声により知らせる設備を設ける。 48ページ ○:標準的な整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・案内表示装置は、乗降口の戸の車内側上部、天井、連結部の扉上部、戸袋等、車両の形状に応じて見やすい位置に設置する。中吊り広告等で見えにくくならないように配慮する。 ・案内表示装置では、次駅停車駅名等に加え、次停車駅での乗換情報、次停車駅で開く戸の方向(左側か右側か)等を提供する。 ・文字情報は、確認が容易な表示方法とし、次停車駅等の基本情報は、スクロール表示などの場合は2回以上繰り返し表示する。 ・LED、液晶等で文字情報を提供する際には、わかりやすい文言を使用する。 ・可能な限り英語表記及びかな表記も併用する。 ・次駅までの距離が短く、表示時間が確保できない場合は表示項目・内容を選択する。 ・ロ−ビジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) 運行等に関する異常時の情報提供 ・車両の運行の異常に関連して、遅延状況、遅延理由、運転再開予定時刻、振替輸送状況など、利用者が次の行動を判断できるような情報を提供する。なお、可変式情報表示装置による変更内容の提供が困難な場合には、ボードその他の文字による情報提供ができる設備によって代えることができる。 案内放送の方法 ・次に停車する鉄道駅の駅名、次停車駅での乗換情報、次停車駅に開くドアの方向(左側か右側か)等の運行に関する情報は、聞き取りやすい音量、音質、速さ、回数等で放送する。 ・次停車駅名等の案内放送は、前停車駅発車直後及び次停車駅到着直前に行う。 ◇:望ましい整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・大きな文字により見やすいように表示することが望ましい。 ・路線、列車種別等を色により表示する場合は、文字を併記する等色だけに頼らない表示方法に配慮することが望ましい。 ・可能な限りひらがな表記を併用することが望ましい。 ・相互直通運転を実施する場合における他社線車両の駅名等表示については、事業者間で調整し、表示内容を充実させることが望ましい。 運行等に関する異常時の情報提供 ・ネットワークを形成する他の交通機関の運行・運航に関する情報も提供することが望ましい。 ・車両からの避難が必要となった際に、必要な情報を文字により提供することが出来る可変式情報表示装置を備えることが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 49ページ 姿図・寸法 参考4-1-31:案内表示装置の例 参考例 参考4-1-32:案内表示装置の事例 ・東日本旅客鉄道株式会社E233系の乗降口上部に設置された車内液晶表示装置 −到着駅、所要時間、到着駅ホームの出口案内・垂直移動設備位置、遅延情報、振替情報等を提供 50ページ 参考例 参考4-1-33:案内表示内容の事例 ・東京地下鉄株式会社1000系の乗降口上部に設置された車内液晶表示装置による案内表示内容の例 −行き先、次停車駅名、到着駅ホームの出口案内・垂直移動設備位置、運行情報(遅延情報等)等を提供 ・東京地下鉄株式会社1000系(写真左)、13000系(写真右)の乗降口上部に設置された車内液晶表示装置(3画面タイプ) 51ページ 参考例 参考4-1-34:座席位置から確認しやすいよう通路中央部に案内表示装置を設置した事例 ・西日本旅客鉄道株式会社321系の車内情報案内表示器 号車番号、行き先、種別、次停車駅や停車中の駅、路線図を漢字・ひらがな・英語により表示 次停車駅の乗換案内等を表示 52ページ H車両間転落防止設備 移動等円滑化基準 (車体) 第33条 鉄道車両の連結部(常時連結している部分に限る。)には、プラットホーム上の旅客の転落を防止するための設備を設けなければならない。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 転落防止設備の設置 ・旅客列車の車両の連結部(常時連結している部分に限る)は、プラットホーム上の旅客の転落を防止するため、転落防止用ほろ等転落防止設備を設置する。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ◇:望ましい整備内容 音による警告 ・運行中に車両の連結・分離などが行われるなどの理由により、転落防止設備が設置できない場合には、音声による警告を行うことが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-35:車両間転落防止設備の例 ◎転落防止用ほろ 53ページ 参考例 参考4-1-36:転落防止設備を設置できない車両連結部における音による転落防止注意喚起の事例  ・京浜急行電鉄株式会社 −転落防止設備が設置できない先頭車両同士が連結した場合に、ホーム上から連結部分への転落防止の注意喚起を図るため、注意放送を実施。 取付位置:先頭車両の連結部分床下にスピーカーを設置 放送方法:@車両が止まり、ドアが開くと注意警告音と注意放送が流れる。 Aドアが開いている間、「注意警告音」+注意放送「車両連結部です。出入口ではありません。ご注意ください」を4秒間隔でリピート再生する。  ・小田急電鉄株式会社(3000形3次車以降車両) −取付位置:先頭車両の連結部右側下部にスピーカーを設置 −放送方法:ドアが開いている間、下記「@→A→B→@に戻る」を繰り返す。 @注意警告音が数回鳴る。 A「車両連結部です。出入口ではありません。ご注意下さい。」という注意放送が流れる。 B4秒間の無音状態 54ページ 1.2 都市間鉄道 【都市間鉄道車両の例】 座席/クロスシートタイプ 乗降口/片引自動ドア 片側1〜2カ所/両 参考4-1-37:都市間鉄道の姿図 ・JR在来線、民鉄の例 ・新幹線の例 55ページ @乗降口(車外) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 旅客用乗降口の床面の縁端とプラットホームの縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。 二 旅客用乗降口の床面とプラットホームとは、できる限り平らであること。 三 旅客用乗降口のうち一列車ごとに一以上は、幅が八十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (車体) 第33条 鉄道車両の連結部(常時連結している部分に限る。)には、プラットホーム上の旅客の転落を防止するための設備を設けなければならない。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 2 車体の側面に、鉄道車両の行き先及び種別を見やすいように表示しなければならない。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 段・隙間 ・車両とプラットホームの段・隙間について、段はできる限り平らに、隙間はできる限り小さいものとする。 乗降口の幅 ・旅客用乗降口のうち一列車に一以上は、有効幅を800mm以上とする。 行き先・車両種別表示 ・車体の側面に、当該車両の行き先及び種別を大きな文字により見やすいように表示する。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 転落防止設備の設置 ・旅客列車の車両の連結部(常時連結している部分に限る)は、プラットホーム上の旅客の転落を防止するため、転落防止用ほろ等転落防止設備を設置する。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ○:標準的な整備内容 段差・隙間 ・施設側に渡り板が配備され速やかに設置できない場合、車両内に車椅子使用者の円滑な乗降のための渡り板(欄外コラム参照)の配備、段差解消装置を設置する。 乗降口の幅 ・1列車に1以上の旅客用乗降口は、車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、有効幅を900mm以上とする。 ・1列車に車椅子スペースを複数設置する場合は、車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、各車椅子スペース直近の乗降口の有効幅を900mm以上とする。 車外表示 ・車体の側面に、車両番号(号車)等を大きな文字により見やすいように表示する。ただし、車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りではない。 56ページ 行き先・車両種別表示 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚障害者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) ・照明又は高輝度LED等により、夜間でも視認できるものとする。 聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプ ・聴覚障害者等が車内外からドアの開閉のタイミングを確認できるよう、車内ランプ又は車外ランプの点滅等によりドアの開閉のタイミングを表示する。 視覚障害者用ドア開案内装置 ・視覚障害者等のために、ドアが開いていることを示すための音声案内装置(音声等により常時「開」状態を案内するもの)を設ける。なお、当該音声等は車外から聞き取ることができれば良く、スピーカーの設置位置は車内外を問わない。 ドア開閉ボタン ・ドアの開閉ボタンを設けた場合は、周囲の色と輝度コントラストを確保し、視覚的にわかりやすいものとし、開閉を示す矢印の刻印等触れてもわかりやすい形状とする。 ◇:望ましい整備内容 段差・隙間 ・地方鉄道等において段差が大きい場合には、@施設側におけるホームの嵩上げ、A車両側における低床化、B段差解消装置を設置するなどより段差解消に努めることが望ましい。 隙間の警告 ・ホームが曲線の場合は車両とプラットホームの隙間が大きくなるため、音声(JIS T0902を参考)及び光で危険性を注意喚起することが望ましい。 隙間解消装置 ・乗降口の床面の縁端部には、ステップ(クツズリ)を設け、車両とプラットホームの隙間をできるだけ小さくすることが望ましい。 ・上記の隙間を小さくするための設備の縁端部は、全体にわたり十分な太さで周囲の床の色とのコントラスト*を確保し、当該ステップを容易に識別できるようにすることが望ましい。 自動段差解消装置 ・車椅子スペース近傍の乗降口には、車椅子使用者が円滑に乗降するための補助設備を設けることが望ましい。 ドアのレール ・ドアのレールの出っ張りを解消することが望ましい。 ドア開閉ボタン ・ドアの開閉ボタンを設けた場合は、ボタン上部に点字を併記することが望ましい。 乗降口扉位置 ・乗降口の扉位置は列車間で可能な限り統一を図ることが望ましい。ただし、通勤型(短距離)鉄道用車両と都市間鉄道用車両等、用途が異なる車両が混在する路線の場合は、この限りではない。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 57ページ 姿図・寸法 参考4-1-38:乗降口(車外)の例 (コラム4)渡り板・段差解消装置(バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)191〜193参照) ・渡り板は、速やかに設置できる場所に配備する。 ・渡り板は、幅800mm以上、使用時の傾斜は10度以下として十分な長さを有するもの、耐荷重300kg程度のものとする。ただし、構造上の理由により傾斜角10度以下の実現が困難な場合には、車椅子の登坂性能等を考慮し、可能な限り傾斜角10度に近づけるものとする。 ・渡り板のホーム側接地面には滑り止めを施し、かつ、渡り板の車両側端部にひっかかりを設けること等により、使用時にずれることのないよう配慮する。 ・なお、渡り板の使用においては、ホームの形状に配慮し、降りたホームの反対側の線路に転落する等の事故がないよう、渡り板の長さとホームの幅に十分注意する。 ・鉄軌道車両・ホーム等の構造上の理由により渡り板が長く、また、傾斜角が急(概ね10度を超える)となる場合には、脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設ける。 ・無人駅などでは車両内に搭載した渡り板を使用して係員が対応するなど、速やかな乗降のための柔軟な対応を行う。 (渡り板を常備しない場合) ・駅係員等が速やかに操作できる構造の段差・隙間解消装置を設置する。 58ページ 参考例 参考4-1-39:車両乗降口における自動段差・隙間解消設備の事例 ・近畿日本鉄道 アーバンライナー・ネクスト 59ページ 参考例 参考4-1-40:視覚障害者用ドア開案内装置の事例 ・各ドアの上部にスピーカーを設置し、ドアの開閉時および開いてからしばらくの間音声チャイムが鳴動。(700系新幹線)。 ・出入口上部の扉開閉案内器を設置し、ドアが開いている間は5秒間隔でチャイム(ポーン、ポーン)が鳴動(東武鉄道(一部車両))。 ・カモイ部のスピーカーより、ドア開閉時に「ピンポン音(1秒)」が1回鳴動するとともに、ドア開状態の間「ポーン(2秒)」が4秒間隔で連続鳴動する(西武鉄道(一部車両))。 (参考)700系新幹線 60ページ A乗降口(車内) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 四 旅客用乗降口の床面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 六 車内の段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより、車内の段を容易に識別できるものであること。 (客室) 第32条 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 6 客室内の旅客用乗降口の戸又はその付近には、当該列車における当該鉄道車両の位置その他の位置に関する情報を文字及び点字により表示しなければならない。ただし、鉄道車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 床面の仕上げ ・旅客用乗降口の床の表面は滑りにくい仕上げがなされたものとする。 乗降口脇の手すり ・乗降口脇には、高齢者、障害者等が円滑に乗降できるように、手すりを設置する。 乗降口付近の段の識別 ・段が生じる場合は、段の端部(段鼻部)の全体にわたり十分な太さで周囲の床の色と輝度コントラストを確保し、容易に当該段を識別できるようにする。 号車及び乗降口位置等の点字・文字表示 ・各車両の乗降口の戸又はその付近には、号車及び乗降口位置(前方または後方位置、近接座席番号等)を文字及び点字(触知による案内を含む。)により表示する。ただし、車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ○:標準的な整備内容 乗降口脇の縦手すり ・乗降口の両脇に設置する。 ・縦手すりの径は25mm程度とする。 乗降口付近の段の識別 ・段の端部(段鼻部)の全体にわたり周囲の床の色と輝度コントラストを確保する際には、その太さを幅50mm程度以上として、容易に当該段を識別できるようにする。 車内の段付近の手すり ・車内に段がある場合には、歩行補助のため段の付近に手すりを設置する。 戸の開閉の音響案内 ・視覚障害者が円滑に乗降できるように、戸の位置及び戸の開閉が車内外乗降位置からわかるようなチャイムを戸の内側上部等に設置し、戸の開閉動作に合わせてチャイム音を鳴動させる。 号車及び乗降口位置等の点字・文字表示 ・案内表示は、視覚障害者が指により確認しやすい高さに配慮し、床から1,400〜1,600mm程度の高さに設置する。 ・戸先側に表示し、両開き戸においては左側の戸に表示する。 聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプ ・聴覚障害者等が車内外から戸の開閉のタイミングを確認できるよう、車内ラ 61ページ ンプ又は車外ランプの点滅等により戸の開閉のタイミングを表示する。 ドア開閉ボタン ・ドアの開閉ボタンを設けた場合は、周囲の色と輝度コントラストを確保し、視覚的にわかりやすいものとし、開閉を示す矢印の刻印等触れてもわかりやすい形状とする。 ◇:望ましい整備内容 乗降口端部の識別 ・乗降口端部の床面は、周囲の床の色との輝度コントラストを確保し容易に識別できるようにすることが望ましい。 ドア開閉ボタン ・ドアの開閉ボタンを設けた場合は、ボタン上部に点字を併記することが望ましい。 その他設備 ・ごみ箱など必要な設備について、当該部に点字表示することが望ましい。 参考例 参考4-1-41:号車及び乗降口位置などの表示の例  ・東日本旅客鉄道株式会社E5系 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 62ページ B車椅子スペースと座席 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 客室には、次に掲げる基準に適合する車椅子スペースを一列車ごとに二以上(三両以下の車両で組成する列車にあっては、一以上)、特別車両以外の車両の座席の近傍に設けなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車椅子使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車椅子使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 五 車椅子スペースである旨が表示されていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの設置数 ・客室には1 列車に2以上の車椅子スペースを設ける。ただし、3両以下の列車については1以上とすることができる。 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子スペースは特別車両以外の車両の座席の近傍に設けること。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは、車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さを確保する。 ・車椅子スペースは1,300mm以上×750mm以上を確保する。ただし、車椅子使用者が同じ向きの状態で利用する車椅子スペースを2以上縦列して設ける場合にあっては、2台目以降の車椅子スペースの長さは1,100mm以上とすることができる。 車椅子スペースの通路の広さ ・車椅子スペースに隣接する通路の幅は400mm以上確保する 。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に掲出する。 車椅子スペースの手すり ・車椅子スペースには、車椅子使用者が握りやすい位置に手すりを設置する。 床面の仕上げ ・車椅子スペースの床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子スペースは、  @ 乗降の際の移動距離を短くする。  A 都市間鉄道のクロスシートでは、車椅子使用者が円滑に通行するための十分な車内通路幅の確保が困難な場合も多いことから、客室仕切扉から入ってすぐの座席の脇にスペースを設けること(参考例参照)。  ・車椅子使用者の数、車椅子の大きさ等から車椅子に乗車したまま客室内にとどまるスペースが不足する場合は、円滑に利用できるように車椅子スペース近くに多目的室等を設置する。 63ページ 移乗する座席 ・都市間鉄道は長時間の乗車となる場合が多いので、車椅子スペースの近くに、移乗がしやすいようにスペース側のひじ掛けがはね上がる座席または回転シートを用意する。 固定装置 ・移乗後、折りたたんだ車椅子を固定するためのバンド、ロープ等を設ける。 車椅子スペースの増設 ・利用の状況、車両編成に応じ、車椅子スペースの増設について取り組む。 ・各路線の利用実態を踏まえ、車椅子使用者等の利用が多い場合には、車椅子スペースを増設する。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に加え車外にも掲出する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの増設 ・車椅子スペースを設ける際には、座席種別(指定席・自由席・グリーン席等)ごとに設けることが望ましい。 ・車椅子使用者の利用が可能な多目的室について整備を行うことが望ましい。 ・複数の車椅子使用者や同行者が並んで利用できる車椅子スペースや座席配置とすることが望ましい。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースの通路幅は450mm以上確保することが望ましい。 ・車椅子スペースの広さは、1,400mm以上×800mm以上とすることが望ましい。この場合、車椅子が転回できるよう、前述車椅子スペースを含め、1,500mm 以上×1,500mm 以上の広さを確保することが望ましい。 ・車椅子スペースを2以上縦列して設ける場合であっても、車椅子スペースの長さはそれぞれ1,300mm以上ずつ確保することが望ましい。 ・車椅子スペースは通路にはみ出さないように設置することが望ましい。 座席 ・可能な限り通路側の肘掛けを可動式とすることが望ましい。 64ページ 参考例 参考4-1-42:車椅子スペースの例 台湾新幹線の例 ※自動扉センサーへ干渉しないよう配慮が必要。 ※JIS規格内の幅の車椅子で乗車している場合、通路の通行に支障がなく、車内販売のワゴンが通行できるよう配慮が必要。 65ページ 参考例 参考4-1-43:車椅子スペースを複数設置した例 ・京成スカイライナーの例 5号車車椅子スペースを1⇒2に増設(2017年10月21日より)。非常通報装置や手すり等も設置し、利便性や安全性に配慮。  提供:京成電鉄株式会社 ・小田急電鉄株式会社・特急の例 新型特急車両70000形では、一部座席取外しが可能な仕様としている。(複数のスペースを確保) 提供:小田急電鉄株式会社 66ページ 参考4-1-44:車椅子スペースの工夫  ・東日本旅客鉄道株式会社【新幹線】:E7系新幹線のバリアフリー設備   −普通車は可動式肘掛、グリーン車は座席回転により、移乗しやすくしている。   提供:東日本旅客鉄道株式会社 (コラム5)多目的室  ・都市間鉄道において様々な利用形態を想定して多目的室を設置している事例がある。  ・利用形態としては、予約して占用するケースと、座席を別途確保している乗客が一時的に利用するケースが存在する。また、プライバシーを確保するケースとオープンなケースがある。  ・利用者としては、通常の座席の使用が難しい乗客、気分が悪くなった乗客、急病人、怪我人、介助が必要な乗客、乳幼児連れの乗客(授乳等を行いたい乗客)等が想定される。  ・多目的室の設置にあたっては、車椅子使用者が利用することも想定し、車椅子でのアクセスが可能な仕様が求められる。  Cトイレ ○:標準的な整備内容 ※都市間鉄道のトイレは、通勤型鉄道のトイレに関するガイドライン及び姿図・寸法等に準じるものとする。 D洗面所 ○:標準的な整備内容 車椅子対応洗面所 ・車椅子対応の洗面所においては、洗面器の高さは760mm程度とし、また、洗面器の下部に車椅子のフットサポートが入る空間を設ける。 水洗金具 ・視覚障害者の利用に配慮し、センサー式のみの設置は避けることが望ましい。センサー式の水洗金具を用いる場合には、センサー部は蛇口の下側に統一する。 鏡 ・蛇口付近の高さまで鏡を設置する。 67ページ 姿図・寸法 参考4-1-45:洗面所の例 N700系新幹線の洗面所 68ページ E車内通路 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 四 旅客用乗降口の床面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 六 車内の段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより、車内の段を容易に識別できるものであること。 (客室) 第32条 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車椅子スペースとの間の通路のうち一以上及び一以上の車椅子スペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、有効幅800mm以上を確保する。 床面の仕上げ ・床の表面は滑りにくい仕上げがなされたものであること。 手すり ・通路及び客室内には手すりを設ける。 ○:標準的な整備内容 車内の段・階段 ・2階建て車両等でやむを得ず段が生じる場合は、段端部(段鼻部)の全体にわたり幅50mm程度の太さで周囲の床の色との輝度コントラスト*を確保し、容易に当該段を識別しやすいものとする。 ・車内に階段がある場合には、高さは200mm以下、奥行きは300mm程度、通路の幅は800mm以上とする。 手すり ・車内に段・階段がある場合には、当該段・階段の付近に手すりを設ける。 ・手すりの高さは、800〜850mm程度。手すりの径は30mm程度とする。 座席手すり ・クロスシート座席には、座席への移動や立ち座り、立位時の姿勢保持に配慮し、座席肩口に手すり等を設ける。 ◇:望ましい整備内容 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、有効幅900mm以上を確保することが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 69ページ 姿図・寸法 参考4-1-46:車内通路の例 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 70ページ F座席番号 ○:標準的な整備内容 座席番号の表示 ・座席番号は、できるだけ大きく、周囲との輝度コントラストを確保し、明確かつわかりやすい表示とする。 ◇:望ましい整備内容 点字表示 ・座席の肩口など、通路に面した適切な位置に、座席番号の点字表示並びに文字表示を行うことが望ましい。点字の形状や表記法はJIS T0921にあわせたものとする。 参考例 参考4-1-47:座席番号の大型表示の事例 ・近畿日本鉄道株式会社 アーバンライナー・ネクスト −文字高80mm、文字色:黒 ・東海道・山陽新幹線N700系新幹線 −文字高36mm、文字色:ダークグレー+白 参考4-1-48:座席番号を点字表示している事例 ・E7系新幹線 −座席番号を座席の上部取手部に点字表示。 71ページ G案内表示及び放送(車内) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 五 旅客用乗降口の戸の開閉する側を音声により知らせる設備が設けられていること。 (客室) 第32条 5 客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・車内には、聴覚障害者等のために、客室仕切扉の客室側上部等の見やすい位置に、次停車駅名等の必要な情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む)を、文字等の視覚情報により提供する装置を設ける。 案内放送装置 ・車内には、次停車駅名やその際戸の開閉する側その他の運行に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む)を音声により提供するための車内放送装置を設ける。 ○:標準的な整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・案内表示装置では、次駅停車駅名等に加え、次停車駅での乗換情報、次停車駅で開くドアの方向(左側か右側か)を提供する。 ・文字情報は、確認が容易な表示方法とし、次停車駅等の基本情報は、スクロール表示などの場合は2回以上繰り返し表示する。 ・LED、液晶等で文字情報を提供する際には、わかりやすい文言を使用する。 ・可能な限り英語表記及びかな表記も併用する。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) 運行等に関する異常時の情報提供 ・車両の運行の異常に関連して、遅延状況、遅延理由、運転再開予定時刻、振替輸送状況など、利用者が次の行動を判断できるような情報を提供する。なお、可変式情報表示装置による変更内容の提供が困難な場合には、ボードその他の文字による情報提供ができる設備によって代えることができる。 案内放送の方法 ・次停車駅名、次停車駅での乗換情報、次停車駅に開くドアの方向(左側か右側か)等の運行に関する情報は、聞き取りやすい音量、音質、速さ、回数等で放送する。 ・次停車駅名等の案内放送は、前停車駅発車直後及び次停車駅到着直前に行う。 72ページ ◇:望ましい整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・大きな文字により見やすいように表示することが望ましい。 ・路線、列車種別等を色により表示する場合は、文字を併記する等色だけに頼らない表示方法に配慮することが望ましい。 ・可能な限りひらがな表記を併用することが望ましい。 ・相互直通運転を実施する場合における他社線車両の駅名等表示については、事業者間で調整し、表示内容を充実させることが望ましい。 運行等に関する異常時の情報提供 ・ネットワークを形成する他の交通機関の運行・運航に関する情報も提供することが望ましい。  ・車両からの避難が必要となった際に、必要な情報を文字により提供することが出来る可変式情報表示装置を備えることが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-49:案内表示(車内)の例 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 73ページ H車両間転落防止設備 移動等円滑化基準 (車体) 第33条 鉄道車両の連結部(常時連結している部分に限る。)には、プラットホーム上の旅客の転落を防止するための設備を設けなければならない。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 転落防止設備の設置 ・旅客列車の車両の連結部(常時連結している部分に限る)は、プラットホーム上の旅客の転落を防止するため、転落防止用ほろ等転落防止設備を設置する。ただし、プラットホーム設備等の状況により旅客の転落のおそれがない場合はこの限りではない。 ◇:望ましい整備内容 音による警告 ・運行中に車両の連結・分離などが行われるなどの理由により、転落防止設備が設置できない場合には、音声による警告を行うことが望ましい。ただし、プラットホーム設備等の状況により旅客の転落のおそれがない場合はこの限りではない。 姿図・寸法 参考4-1-50:車両間転落防止設備の例 ◎転落防止用ほろ 74ページ 1.3 モノレール・新交通システム  各部位、設備のデザインは、「通勤型(短距離)鉄道・地下鉄」に準ずる。 1.4 軌道車両・低床式軌道車両 (1)軌道車両(路面電車)  各部位、設備のデザインは、「通勤型(短距離)鉄道・地下鉄」及び「都市内路線バス」に準ずる。  @通勤型(短距離)鉄道・地下鉄に準ずる部位、設備   ・乗降口   ・優先席   ・吊り手、手すり   ・車椅子スペース   ・トイレ(設ける場合)   ・案内表示(車内)   ・案内放送(車内)   ・通路   ・行先表示(車外)  A都市内路線バスに準ずる部位、設備   ・降車ボタン(設ける場合)   ・運賃箱   ・車内放送装置   ・車外放送装置   ・整理券発行機(設ける場合) 75ページ (2)低床式軌道車両 公共交通移動等円滑化基準に規定されている低床式軌道車両については、(1)の「軌道車両(路面電車)」に準ずるとともに、加えて求められる項目を以下に示す。なお、低床式軌道車両とは、乗降口部分の床面高さが軌条面から400mm以下の軌道車両であり、旅客用乗降口から客室の主要部分までの通路の床面に段がない軌道車両のことである。 参考例 参考4-1-51:低床式軌道車両の姿図(例) @車内通路、車椅子スペース、トイレ 移動等円滑化基準 (準用) 第34条 前節の規定は、軌道車両(次条に規定する低床式軌道車両を除く。)について準用する。 (低床式軌道車両) 第35条 前節(第三十一条第三号ただし書並びに第三十二条第一項ただし書、第三項ただし書及び第四項ただし書を除く。)の規定は、低床式軌道車両(旅客用乗降口の床面の軌条面からの高さが四十センチメートル以下の軌道車両であって、旅客用乗降口から客室の主要部分までの通路の床面に段がないものをいう。)について準用する。 【参考(前節(鉄道車両)の規定のうち、ただし書きを適用しない条文)】 第31条 3 旅客用乗降口のうち一列車ごとに一以上は、幅が八十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 第32条 1 客室には、次に掲げる基準に適合する車椅子スペースを一列車ごとに一以上設けなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車椅子使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車椅子使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 76ページ 五 車椅子スペースである旨が表示されていること。 第32条 3 便所を設ける場合は、そのうち一列車ごとに一以上は、車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車椅子スペースとの間の通路のうち一以上及び一以上の車椅子スペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 ※以下に記載の無い項目は、通勤型(短距離)鉄道・地下鉄、都市内路線バスに準ずる。 乗降口の幅 ・1列車に1以上の旅客用乗降口は、有効幅を800mm以上とする。 車椅子スペースの設置数 ・客室には1 列車に2以上の車椅子スペースを設ける。ただし、3両以下の車両については1以上とすることができる。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは、車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さを確保する。 ・車椅子スペースは1,300mm以上×750mm以上を確保する。ただし、車椅子使用者が同じ向きの状態で利用する車椅子スペースを2以上縦列して設ける場合にあっては、2台目以降の車椅子スペースの長さは1,100mm以上とすることができる。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に掲出する。 手すり ・通路及び客室内には、手すりを設置する。 トイレの設置 ・客室にトイレを設置する場合は、1列車に1以上車椅子での利用が可能なトイレを設ける。この場合、通勤型鉄道のトイレに関するガイドライン及び姿図・寸法等に準ずるものとする。 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、幅800mm以上を確保する。 ○:標準的な整備内容 乗降口の幅 ・1列車に1以上の旅客用乗降口は、車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、有効幅を900mm以上とする。 車内スロープ ・乗降口の床面から客室の主要部分(車椅子スペース)までの通路の床面は平らであること。 ・構造上の理由により、上記箇所の通路の床面にスロープを設ける場合は、勾配は5度(約9%・約1/12)以下とする。 手すり ・車椅子使用者が握りやすい位置に手すりを設置する。 多機能トイレの設置 ・客室にトイレを設置する場合は、1列車に1以上車椅子での利用が可能で、かつ、付帯設備を設けた多機能トイレを設ける。 77ページ 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に加え車外にも掲出する。 ◇:望ましい整備内容 車内スロープ ・車椅子により通行が想定される全ての床面は、平らであることが望ましい。 ・構造上の理由により、上記箇所の通路の床面にスロープを設ける場合は、勾配は5度(約9%・約1/12)以下とする。 通路幅 ・車椅子により通行が想定される全ての通路は、幅900mm以上(狭軌を採用する場合等構造上困難な場合は可能な限り広い幅)を確保することが望ましい。 車椅子スペース ・車椅子スペースは、車椅子使用者、ベビーカー使用者等の円滑な乗車に配慮し、2以上の車椅子が乗車可能であることが望ましい。 参考例 参考4-1-52:車椅子スペースの事例 *左図は座席を設置せず、常に車椅子スペースとして使用する形態、右図は通常車椅子スペースとして使用され、はね上げ機構の座席により必要に応じて座席を引き出せる形態の車椅子スペースである(自ら座席を跳ね上げることが困難な車椅子使用者に配慮)。 参考例 参考4-1-53:富山ライトレールの外観 78ページ 参考例 参考4-1-54:段・隙間の小さい昇降口及び勾配の少ないスロープの事例 ・富山ライトレール 参考例 参考4-1-55:車内スロープの事例 ・富山ライトレール 参考例 参考4-1-56:車内空間の事例 ・長崎電気軌道3000形   79ページ 参考例 参考4-1-57:運賃箱・ICカードリーダーの事例 ・富山ライトレール 参考例 参考4-1-58:運行情報を示す液晶表示装置の事例 ・富山ライトレール 80ページ 1.5 その他の鉄道  各部位、設備のデザインは、「通勤型(短距離)鉄道・地下鉄」に準ずる。 (コラム6)鋼索鉄道(ケーブルカー)におけるバリアフリー化 ・鋼索鉄道(ケーブルカー)は、主に山麓から山頂までを移動するための交通手段として敷設されており、走行する斜面に合わせて車内の通路や乗降場が階段状になっていることが特徴である。こういった特殊性があるものの、車椅子使用者が乗降できるように乗降口の幅を確保して車椅子での乗車を可能にする等、できるだけ障害当事者に配慮した移動等円滑化を図っている事例がある。 参考4-1-59:車椅子使用者に配慮したケーブルカーの事例 ・高野山ケーブルカー (コラム7)BRT(Bus Rapid Transit) ・BRTは、専用の走行空間を有して大量輸送かつ定時輸送を行う輸送システムである。車両はバス車両と同等の車両を用いることが多い。 ・ブラジルのクリチバやイギリス・アメリカなどで導入事例があり、国内でも一部区間で専用の走行空間を有したバス運行システムが実現している。 ・BRTの車両として低床式軌道車両に準ずる車両を用いる場合は、「第1章鉄軌道」の「4.軌道車両・低床式軌道車両」を参照のこと。バス車両に準ずる車両を用いる場合は、「第2章バス」の「1.都市内路線バス」を参照のこと。 参考4-1-60:BRT(Bus Rapid Transit) ブラジル・クリチバの事例 81ページ 2.バス 2.1 都市内路線バス  平成12 年に制定された交通バリアフリー法により、路線バスには新たに事業の用に供する場合において、車椅子スペースを設けることや床面の地上面からの高さを65cm 以下とすること等が義務付けられた。ノンステップバスは、本格的に登場してから約20 年が経過し、平成15年3 月には次世代普及型と称して標準仕様が策定される等、機能向上とコストダウンが図られてきた。直近では平成27年に2015年版の新しい標準仕様(いわゆる15認定)が定められ、低床部分の拡大、車椅子固定装置の改善、反転式スロープの採用、ベビーカー等も利用しやすいフリースペースの設定、優先席の改善等が進められている。  平成32 年度末までのノンステップバスの整備率は、目標値約70%に対して、平成28年度末の実績は53.3%となっている。大都市部では導入率100%の事業者がある一方で、地方では導入がなかなか進まない状況も見られる。  すでに、平成23 年度の国土交通省による「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係るバリアフリー車両の開発検討会」では、多少の数値的緩和を許容してノンステップバスでもワンステップバス並みの走破性を確保した上で、ノンステップバスに一本化することが望ましいと判断され、中期目標の車両イメージがとりまとめられた。これに対応して、平成28年にはこの中期対応の車型が発売され、そのメーカーではノンステップバスへの一本化がなされた。しかしながら、地方部では新車導入が進まず、都市部で使用した車両を中古購入しているのが実情であり、都市部での車両使用年数も延びていることから、バリアフリー化が極めて遅れている現状がある。また、長期的には、フルフラットタイプなどの開発・導入も期待されているが、欧州型の車両では日本の使い方にマッチしないという事業者の声もあり、日本のニーズに応じた仕様の検討も必要と考えられる。  一方で、地方の過疎地域では、バス路線の廃止に伴い乗合タクシー等への転換も進んできている。前回のガイドライン改定時にも指摘したが、車両のダウンサイジングが顕著な中、定員10〜20 人程度の車椅子での乗降にも対応した乗合仕様の低床車両が求められているものの、現状では適切な車両が存在していない。引き続きこのような車両開発への取り組みが求められる。  また、乗降時の安全性や利用しやすさの向上を図るためには、車両のバリアフリー化のみならず、停留所のバリアフリー化も進める必要があり、幅員の確保、上屋の設置等、道路管理者、バス事業者等の関係者間での協議、連携を図り、「道路の移動等円滑化整備ガイドライン」等を踏まえた上で環境設備を行っていく必要がある。さらにバス停での正着性を高めるためには違法駐車の排除なども必要で、総合的な対策が求められる。  最後に、車両や停留所のハード面の取り組みに加え、乗務員による車椅子使用者の乗降や車椅子の固定のための設備の使用方法の習熟、その他の高齢者、障害者等への適切な対応のため、接遇研修のさらなる充実が必要である。 82ページ (1) 大型ノンステップバス 全長/9m以上 全幅/約2.5m(2.5m未満) 全高/約3.8〜約2.9m(3.8m未満) 参考4-2-1:大型ノンステップバスの平面図 (2) 中型ノンステップバス 全長/7m以上9m未満 全幅/約2.3m 全高/約3.1〜約2.8m 参考4-2-2:中型ノンステップバスの平面図 (3) 小型ノンステップバス 全長/7m未満 全幅/約2.1〜約2.0m 全高/約2.7〜約2.4m 参考4-2-3:小型ノンステップバスの平面図 83ページ @乗降口 移動等円滑化基準 (乗降口) 第37条 乗降口の踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものでなければならない。 2 乗降口のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 (床面) 第38条 国土交通大臣の定める方法により測定した床面の地上面からの高さは、六十五センチメートル以下でなければならない。 2 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものでなければならない。 ○移動等円滑化のために必要なバス車両の構造及び設備に関する細目を定める告示 (平成12年11月1日 運輸省告示第349号)抄 第3条 省令第三十八条第一項の国土交通大臣の定める方法は、次のとおりとする。  一 省令第三十七条第二項の基準に適合する乗降口附近の床面(すべり止めを除く。以下同じ。)の地上面からの高さを測定すること。  二 道路運送車両の保安基準(昭和二十六年運輸省令六十七号)第一条第六号の空車状態で測定すること。ただし、車高調整装置(旅客が乗降するときに作動できるものに限る。)を備えているバス車両にあっては、当該装置を作動させた状態で床面の地上面からの高さを測定することができる。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 踏み段の識別 ・乗降口の踏み段(ステップ)の端部は周囲の部分及び路面と輝度コントラスト*が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものとする。 乗降口の幅 ・1以上の乗降口の有効幅は800mm以上とする。 床の表面 ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものとする。 ○:標準的な整備内容 乗降口の高さ ・乗降時における乗降口の踏み段(ステップ)高さは270mm以下とする。 ・傾斜は極力少なくする。 踏み段の識別 ・乗降口に照射灯などの足下照明を設置し、踏み段の夜間の視認性を向上させる。 乗降口の幅 ・車椅子使用者による乗降を考慮し、1以上の乗降口の有効幅は900mm以上とする。(小型は800mm以上) ・大量乗降を想定する車両の場合には、少なくとも一つの乗降口の有効幅は1,000mm以上とする。 ドア開閉の音響案内 ・視覚障害者等の安全のために、運転席から離れた乗降口には、ドアの開閉動作開始ブザーを設置する。 手すりの設置 ・乗降口の両側(小型では片側)に握りやすくかつ姿勢保持しやすい手すりを設置する。 ・手すりの出っ張り等により、乗降口の有効幅を支障しないよう配慮して設置 84ページ する。 ・乗降口に設置する手すりの径は25mm程度とする。 ・手すりの表面は滑りにくい素材や仕上げとする。 ◇:望ましい整備内容 乗降口の幅 ・全ての乗降口から車椅子使用者等が乗降できるよう、全ての乗降口の有効幅を900mm以上とすることが望ましい。 乗降口の高さ ・乗降時における乗降口の踏み段(ステップ)高さは200mm以下とすることが望ましい。 ・傾斜は排除することが望ましい。 手すりの設置 ・乗降時に車体の外側に張り出す手すりが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 参考例 参考4-2-4:乗降口の床面、手すり等の事例 ・識別しやすい乗降口踏み段端部 ・乗降口の両側に握りやすく姿勢保持しやすい手すりを設置 ・乗降口の手すりの径は25mm程度 ・手すりの表面を滑りにくい素材や仕上げ ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 85ページ 参考例 参考4-2-5:車椅子で乗降できる乗降口の事例 ・乗務員の混乱防止、スロープ板の出し入れの迅速化のため、反転式スロープ板 ・乗降口にステップ照射灯など足下照明を設置 ・車椅子使用者を乗降させる乗降口幅900mm以上 ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 反転式スロープ板             参考例 参考4-2-6:乗降時乗降口の踏み段(ステップ)高さを低くした事例 ・乗降時乗降口の踏み段(ステップ)の高さ270mm以下(ニーリング時) ・傾斜を極力なくしている ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 86ページ Aスロープ板 移動等円滑化基準 (乗降口) 第37条 2 乗降口のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 スロープ板その他の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備(国土交通大臣の定める基準に適合しているものに限る。)が備えられていること。 ○移動等円滑化のために必要なバス車両の構造及び設備に関する細目を定める告示 (平成12年11月1日 運輸省告示第349号)抄 (乗降設備) 第2条 省令第三十七条第二項第二号の国土交通大臣の定める基準は、次のとおりとする。 一 スロープ板の幅は、七十二センチメートル以上であること。 二 スロープ板の一端を縁石(その高さが十五センチメートルのもの。)に乗せた状態において、スロープ板と水平面とのなす角度は、十四度以下であること。 三 携帯式のスロープ板は、使用に便利な場所に備えられたものであること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 スロープ板の設置 ・車椅子使用者等を乗降させる乗降口のうち1以上には、車椅子使用者等の乗降を円滑にするためのスロープ板等を設置する。 容易に乗降できるスロープ ・車椅子使用者等の乗降を円滑にするためのスロープ板の幅は720mm以上とする。 ・スロープ板の一端を地上高150mmのバスベイに乗せた状態における、スロープ板の角度は14度以下とする。 ・スロープ板は、容易に使用できる場所に設置又は格納する。 ○:標準的な整備内容 容易に乗降できるスロープ ・車椅子使用者等を乗降させるためのスロープ板の幅は800mm以上とする。 ・地上高150mmのバスベイより車椅子使用者等を乗降させる際のスロープ板の角度は7度(約12%勾配・約1/8)以下とし、スロープ板の長さは1,050mm以下とする。 ・耐荷重については、電動車椅子本体(80〜100kg)、車椅子使用者本人、介助者の重量を勘案し、300kg程度とする。 ・スロープ板は、使用時にはフック等で車体に固定できる構造とする。 ・車椅子の脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設ける。 ・スロープ板の表面は滑りにくい材質又は仕上げとする。 ・乗務員の混乱防止、スロープ板の出し入れの迅速化のため、反転式スロープ板等の取り扱いが簡易なスロープ板を採用する。 ◇:望ましい整備内容 容易に乗降できるスロープ ・車椅子使用者等を乗降させる際のスロープ板の角度は5度(約9%勾配・約1/12)以下とすることが望しい。また、自動スロープ板、バス停側の改良等により、さらに乗降しやすい方法を採用することが望ましい。 87ページ 参考例 参考4-2-7:スロープ板の事例 ・乗務員の混乱防止、スロープ板の出し入れの迅速化のため、反転式スロープ板 ・車椅子使用者等を乗降させるためのスロープ板の幅が800mm以上 ・スロープ板の表面は滑りにくい仕上げ ・車椅子の脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設置 ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 反転式スロープ板           88ページ 参考例 参考4-2-8:コミュニティバス等において、長いスロープも併せて装備し、長いスロープの設置可能な場所では緩やかな傾斜により対応している事例 ・荒川区コミュニティバス「さくら」−京成バス B床 移動等円滑化基準 (床面) 第38条 2 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものでなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 床の表面 ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものとする。 89ページ C車椅子スペース 移動等円滑化基準 (車椅子スペース) 第39条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車椅子スペースを一以上設けなければならない。 一 車椅子使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 二 車椅子使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 三 車椅子を固定することができる設備が備えられていること。 四 車椅子スペースに座席を設ける場合は、当該座席は容易に折り畳むことができるものであること。 五 他の法令の規定により旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーその他の装置を備えることとされているバス車両である場合は、車椅子使用者が利用できる位置に、当該ブザーその他の装置が備えられていること。 六 車椅子スペースである旨が表示されていること。 七 前各号に掲げるもののほか、長さ、幅等について国土交通大臣の定める基準に適合するものであること。 ○移動等円滑化のために必要なバス車両の構造及び設備に関する細目を定める告示 (平成12年11月1日 運輸省告示第349号)抄 第4条 省令第三十九条第七号の国土交通大臣の定める基準は、次のとおりとする。 一 車椅子スペースの長さは、百三十センチメートル(床面からの高さが三十五センチメートル以上の部分にあっては、百十五センチメートル)以上であること。ただし、車椅子使用者が同じ向きの状態で利用する車椅子スペースを二以上縦列して設ける場合にあっては、車椅子スペース(車椅子使用者が向く方向の最前に設けられるものを除く。)の長さは、百十センチメートル以上であればよい。   二 車椅子スペースの幅は、七十五センチメートル以上であること。   三 車椅子使用者が利用する際に支障とならない場合にあっては、車椅子スペースの前部及び後部の側端部は、平たんでなくてもよい。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの確保 ・バスには車椅子スペースを1以上確保する。 ・車椅子スペースには、車椅子使用者が利用する際に支障となる段は設けない。 車椅子スペースの広さ ・車椅子を固定する場合のスペースは(長さ)1,300mm以上×(幅)750mm以上×(高さ)1,300mm以上とする。ただし2脚の車椅子を前向きに縦列に設ける場合には2脚目の長さは1,100mm以上で良い。 手すりの設置 ・車椅子スペースには、車椅子使用者が円滑に利用できる位置に手すりを設置する。 車椅子固定装置 ・車椅子スペースには、車椅子固定装置を備える。 車椅子スペースに設置する座席 ・車椅子スペースに座席を設置する場合には、その座席は容易に折り畳むことができる構造とする。 降車ボタン ・車椅子スペースには、車椅子使用者が容易に使用できる押しボタンを設置する。 90ページ 車椅子スペースの表示 ・乗降口(車外)に、車椅子マークステッカーを貼り、車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・車椅子スペースの付近(車内)にも、車椅子マークステッカーを貼り、車椅子スペースであることが容易に分かるとともに、一般乗客の協力が得られやすいようにする。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの2脚分確保 ・バスには2脚分以上の車椅子スペースを確保する。 ・ただし、車椅子を取り回すためのスペースが少ない小型バスなどの場合や車椅子使用者の利用頻度が少ない路線にあっては1脚分でもやむを得ない。 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子使用者がバスを利用しやすい位置に車椅子スペースを設置する。 ・乗降口から3,000mm以内に設置する。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは、車椅子が取り回しできる広さとする。 ・後向きに車椅子を固定する場合には、車椅子スペース以外に車椅子の回転スペースを確保する。 車椅子固定装置 ・車椅子固定装置は、短時間で確実に様々なタイプの車椅子が固定できる巻き取り式等の構造とする。 ・前向きの場合には、3点ベルトにより車椅子を床又は車体に固定する。車椅子使用者のベルトを用意しておき、希望によりこれを装着する。 ・後ろ向きの場合は背もたれ板を設置し、横ベルトで車椅子を固定する。また、姿勢保持ベルトを用意しておき、希望によりこれを装着する。 降車ボタン ・押しボタンは手の不自由な乗客でも使用できるものとする。 乗務員の接遇、介助 ・車椅子の固定、解除、人ベルトの着脱は、乗務員の適切な接遇・介助によって行う。 フリースペース ・フリースペースを設ける場合には、ベビーカーを折りたたまず乗車できるフリースペースを設けることができる。この場合において車椅子スペースと共用とすることができる。 ・フリースペースに備える座席は、常時跳ね上げ可能な座席とする。 ・フリースペースにはベビーカーを固定するベルトを用意する。 ・フリースペースにはベビーカーを折りたたまず使用できることを示すピクトグラムを貼付する。(ストラップの使用方法、車椅子乗車の際の優先も記載する。) ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの数 ・ノンステップバスの普及に合わせ、車椅子スペースの数の再検討が望まれる。 車椅子固定装置 ・腰ベルトを使用する場合は、腰骨に正しく装着されることが望ましい。 ・方式の多様化による乗務員の混乱を避けるため、仕様の統一が望ましい。 手すりの設置 ・安全ベルトに代わり得る手すり(安全バー等)の開発が望ましい。 車椅子スペースの使用表示 ・車椅子スペースの使用の有無、車椅子使用者からの降車合図は運転席に表示されることが望ましい。 車椅子スペースに設置する座席 ・車椅子使用者が利用しやすいように、車椅子スペースに座席を設置する場合には、その座席は常時跳ね上げ可能な構造とすることが望ましい。 91ページ 参考4-2-9:車椅子スペース、車椅子固定装置の事例 ・車内表記を可能な限りピクトグラムにより表示 ・2脚分以上の車椅子スペースを確保 ・車椅子使用者が利用しやすい位置に車椅子スペースを設置 ・車椅子が取り回しできる広さを確保 ・車椅子を固定する場合のスペースを1,300mm×750mm×1,500mm以上確保 ・車椅子固定装置は、短時間で確実に様々なタイプの車椅子が固定できる巻き取り式等の構造 ・前向きの場合、3点ベルトにより床に固定し、固定装置付属の人ベルトを装着 ・車椅子使用者がバス乗車中に利用できる手すりを設置 ・車椅子使用者が容易に使用できる押しボタンを設置 ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定))    車椅子スペース    車椅子固定装置(巻き取り式) 92ページ 参考例 参考4-2-10:フリースペースの事例 ・フリースペースを設置。 ・広島電鉄バス(フリースペース設置車両) 参考例 参考4-2-11:タイヤハウスを小さくするとともに後部まで床がフラットな車両の事例 ・慶應義塾大学で製作した床がフルフラットな電気バス 93ページ 参考例 参考4-2-12:ベビーカーが利用可能なステッカーの事例 ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) D低床部通路 移動等円滑化基準 (通路) 第40条 第三十七条第二項の基準に適合する乗降口と車椅子スペースとの間の通路の幅(容易に折り畳むことができる座席が設けられている場合は、当該座席を折り畳んだときの幅)は、八十センチメートル以上でなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 低床部通路の幅 ・乗降口と車椅子スペースとの通路の有効幅(容易に折り畳むことができる座席が設けられている場合は、 当該座席を折り畳んだときの幅)は800mm以上とする。 ○:標準的な整備内容 低床部通路の幅 ・乗降口付近を除く低床部分の通路には段やスロープを設けない。 ・低床部の座席配列が左右それぞれ1 列のもの(いわゆる都市型バス)にあっては前輪等による車内への干渉部から後方の低床部の全ての通路幅を800mm 以上とする。(ただし、都市型以外の座席配列のもの(いわゆる郊外型)及び全幅が2.3m 級以下のバスであって、構造上、基準を満たすことが困難なものについてはやむを得ない。)。 ◇:望ましい整備内容 低床部通路の幅 ・低床部分には段やスロープを設けないことが望ましい。 94ページ 参考例 参考4-2-13:低床部通路の事例 ・低床部分の通路には段やスロープを設けていない。 ・前輪等による車内への干渉部から後方の低床部の全ての通路幅を800mm 以上確保。 ・後部シングルシート採用により後部通路幅を確保(ラッシュ時対応型) ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 95ページ E後部の段 ○:標準的な整備内容 安全への配慮 ・段の端部は周囲の床と輝度コントラスト*が大きいことにより明確に識別する。 ・低床部と高床部の間の通路に段を設ける場合には、その高さは1段あたり200mm以下とする。 ・低床部と高床部の間の通路にスロープを設ける場合には、その角度は5度(約9%勾配)以下とする。ただし、後部座席の床と通路の間に段を設けない場合にあっては、低床部と高床部の間の通路に設ける段の高さとスロープの角度の関係は、下図の範囲にあればよい。 ・スロープと階段の間には300mm程度の水平部分を設ける。 ・段差部には手すり等をつける。 ◇:望ましい整備内容 安全への配慮 ・段の上の立席乗客の安全に配慮し、一層の段の高さ、傾斜の減少が望ましい。 参考例 参考4-2-14:後部の段と段の端部の事例 ・段の端部を周囲の床と明確に識別。 ・低床部と高床部の間の通路の段の高さ200mm以下。 ・LEDの注意喚起灯が赤と緑色に点灯。 ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 96ページ *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 参考例 参考4-2-15-1:フルフラットバスの事例(東京都交通局で導入予定の車両) ノンステップバスの後部の段差を解消 外観(中扉はアウトスライドドア) (注)写真は2018年6月時点。実際の運行時には仕様が変更になる場合があります。 提供:東京都交通局 97ページ 参考例 参考4-2-15-2:車内後部の段を解消し、フルフラット化を実現した事例 ・メルセデスベンツ ノンステップバス ※後部乗降口 Citaro K ※図はノンスケール。メルセデスベンツ・シターロウェブサイトより。 参考例 参考4-2-15-2:車内後部の段を解消し、フルフラット化を実現した事例 外観 提供:神奈川中央交通株式会社 98ページ F手すり 移動等円滑化基準 (車椅子スペース) 第39条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車椅子スペースを一以上設けなければならない。 一 車椅子使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 (通路) 第40条 2 通路には、国土交通大臣が定める間隔で手すりを設けなければならない。 ○移動等円滑化のために必要なバス車両の構造及び設備に関する細目を定める告示 (平成12年11月1日運輸省告示第349号)抄 (手すりの間隔) 第5条 省令第四十条第二項の国土交通大臣が定める間隔は、手すりを連続する座席三列(横向きに備えられた座席にあっては、三席)ごとに一以上含むものとする。この場合において、当該手すりは床面に垂直な握り棒でなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 手すりの間隔 ・車椅子スペースには、車椅子使用者が円滑に利用できる手すりを配置する。 ・通路には、縦手すりを座席3列(横向きの場合は3席)ごとに1以上配置する。 ○:標準的な整備内容 手すりの間隔 ・高齢者、障害者などの伝い歩きを考慮した手すりなどを設置する。 ・縦握り棒は低床部にあっては座席1列(横向き座席の場合は2席、車椅子スペースに備える前向き跳ね上げ座席にあっては2席、3人掛け横向き跳ね上げ座席にあっては3席に1本)ごとに通路に面した左右両方に1本配置し、高床部にあっては座席1列ごとに通路に面した左右いずれかに1本配置する。(ただし、非常口付近の脱出の妨げとならないように、取り外し又は折りたたむことができる構造の座席についてはこの限りでない。) ・車椅子スペースについては、車椅子の移動に支障をきたさないように手すり などを配置するとともに立席者用の天井握り棒や吊り手などを設置する。 ・タイヤハウスには高さ800mm程度の位置に水平手すりを設置する。 手すりの素材 ・手すりなどは、乗客が握り易い形状とする。 ・手すりの太さは30mm程度とする。 ・手すりの表面は滑りにくい素材や仕上げとする。【色については「室内色彩」の項目にて記載】 ◇:望ましい整備内容 手すりの間隔 ・車椅子スペースを除く通路には握り棒を座席1列ごとに配置することが望ましい。 ・車椅子スペースには天井握り棒や吊り革を設置することが望ましい。 99ページ 参考例 参考4-2-16:手すりの事例 ・車内通路、段差部に径30mm程度の手すりを設置 ・高齢者、障害者等の伝い歩きを考慮した手すりを設置 ・車椅子スペースについては移動に支障を来さないように手すりを設置 ・縦手すりを座席2列ごとに設置(可能な限り1列に1本の手すりを設定) ・タイヤハウスから優先席周辺まで高さ800mm程度の位置に水平手すりを設置 ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) ・座席1列に1本の手すりを設置している例(写真は05認定車両) 100ページ 参考例 参考4-2-17:縦手すりを座席1列ごとに設置した事例 ・座席の立ち上がり、立位時に身体を保持しやすくするため、縦手すりを座席1列ごとに設置 ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) G室内色彩 ○:標準的な整備内容 白内障や色覚異常者に配慮 ・座席、手すり、通路及び注意箇所などは高齢者や視覚障害者にもわかりやすい配色とする。 ・高齢者および色覚異常者でも見えるよう、手すり、押しボタンなど、明示させたい部分には朱色または黄赤等を用いる。 ・天井、床、壁面など、これらの背景となる部分は、座席、手すり、通路及び注意箇所などに対して十分な明度差をつける。 ◇:望ましい整備内容 白内障や色覚異常者に配慮 ・眩しさを与える色、材質の使用を控えることが望ましい。 101ページ 参考例 参考4-2-18:室内色彩の事例 ・天井、床、壁面などの背景となる部分と座席、手すり、通路及び注意箇所などに対して十分な明度差を確保。      ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 102ページ 参考例 参考4-2-19:室内色彩  ・明度差の組み合わせの例  ・一般社団法人日本自動車車体工業会のWebサイトに「NSバス標準規格床上張材登録一覧表」が掲載されているので適宜参考にされたい。   (http://www.jabia.or.jp/content/activity/material/pdf/ns_boukatusei.pdf) H座席 ○:標準的な整備内容 座りやすい座席 ・床面からの高さ、奥行、背当ての角度、座面の角度等を配慮し、座りやすく、立ち上がりやすいものとする。 床面から座面までの高さ ・400〜430mm程度。 シートの横幅 ・1人掛け:450mm±10mm  ・2人掛け:810mm±10mm 103ページ 座面の奥行き ・410mm程度±10mm 手すり ・手すりは、握りやすく、立ち座りしやすいものとする。  【「手すり」の項目に掲載】 ◇:望ましい整備内容 シートの横幅 ・2人掛けのシートの横幅は900mmが望ましい。 I優先席 ○:標準的な整備内容 乗降口近くに配置 ・優先席は乗降口に近い位置に3席以上(中型では2席以上、小型では1席以上)を原則として前向きに設置する。 立ち座りのしやすさを向上 ・優先席は対象乗客が安全に着座でき、かつ立ち座りに配慮した構造とする。  ・乗客の入れ替わりが頻繁な路線では、優先席は少し高め(400〜430mm)の座面とする。 シートの色 優先席の表示 ・優先席は、@座席シートを他の座席シートと異なった配色とする、A優先席の背後の窓に優先席であることを示すステッカーを貼る等により、優先席であることが車内及び車外から容易に分かるとともに、一般の乗客の協力が得られやすいようにする。 ※「室内色彩」の項目を参照のこと。 操作しやすい降車ボタン ・優先席には、乗客が利用しやすい位置にわかりやすい降車ボタンを設置する。 ・降車ボタンは手の不自由な人等でも使用できるものとする。 ・乗客が体を大きく捻ったり、曲げたりするような位置への降車ボタンの配置は避ける。 参考例 参考4-2-20:優先席(前向き)の事例 ・優先席を乗降口に近い位置に3席、前向きに設置している。      ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 104ページ J降車ボタン 移動等円滑化基準 (車椅子スペース) 第39条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車椅子スペースを一以上設けなければならない。 五 他の法令の規定により旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーその他の装置を備えることとされているバス車両である場合は、車椅子使用者が利用できる位置に、当該ブザーその他の装置が備えられていること。  ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 降車ボタン ・車椅子スペースには、車椅子使用者が容易に使用できる位置に、旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーの押しボタン等を設置する。 ○:標準的な整備内容 降車ボタン ・ブザーの押しボタン等は、手の不自由な乗客でも使用できるものとする。 位置の統一 ・降車ボタンは、わかりやすく押し間違えにくい位置に設置する。 ・視覚障害者に配慮し、降車ボタンの高さを統一する。ただし、優先席及び車椅子スペースに設置する降車ボタンはこの限りではない。 (ガイドラインの内容を満たす限りにおいて、座席の背もたれや肘掛けに降車ボタンを追加することを妨げるものではない。) 高さ ・縦手すりに配置する降車ボタンは、床面より1,400mmの高さとする。 ・座席付近の壁面に配置する押しボタンは、床面より1,200mmの高さとする。 形状 ・降車ボタンは、停車確認ランプと一体型とする。 ・高齢者及び肢体不自由者な人等のために、車椅子用スペースの近くの低めの位置等に、タッチ部分の大きい降車ボタンを設置する。 105ページ 参考例 参考4-2-21:降車ボタンの事例 ・降車ボタンを分かり易く、押し間違え難い位置に設置。 ・視覚障害者に配慮し降車ボタンの高さを統一。 ・縦手すりに配置する降車ボタンを床面より1,400mmの高さに設置。 ・東京都交通局  106ページ K運賃箱・整理券発行機 ○:標準的な整備内容 わかりやすく 使いやすく ・運賃箱には、釣り銭が自動で出るのか、事前に両替が必要かの案内を表示する。 ・カードリーダーの位置はわかりやすく示す。 ・運賃箱は、乗客に利用し易い形状とし、乗客の通行に影響を与えない位置に設置する。 ・釣銭受け皿等、低い位置に設置する場合は床から600mm以上の位置に設置する。 ・運賃箱は、投入口、釣銭受け皿、両替機、カード挿入口等がわかりやすい案内表示をつけるとともに、縁取りなどにより識別しやすいものとする。 ・料金表示は、大きな文字により、背景色との輝度コントラストを確保したわかりやすい表示とする。 整理券発行機の音声案内、設置位置 ・視覚障害者が整理券を取りやすいように、行先案内を含む整理券発行機の音声による案内は、発券口付近から行う。 ・整理券発行機は、乗降に支障のない位置に設置する。 ◇:望ましい整備内容 わかりやすく使いやすく ・運賃の収受方法の整理、統一化等を検討し、さらに使いやすく形状や配置が統一化されたコンパクトな運賃箱・カードリーダー・整理券発行機を開発し採用することが望ましい。また、これらの設置位置も統一するとともに、障害者等の通行に支障のないよう運賃箱・整理券発行機周辺の通路の幅を十分に確保することが望ましい。 107ページ L車内表記 ○:標準的な整備内容 わかりやすい表記 ・車内表記は、わかりやすい表記とする。 ・車内表記は可能な限りピクトグラムによる表記とする。 ・ピクトグラム及びその大きさは参考2-23を参照する。 ・認知度の低いピクトグラムについては、最小限の文字表記を併用する。 ◇:望ましい整備内容 わかりやすい表記 ・文字表記には英語やひらがなを併記することが望ましい。 参考例 参考4-2-22:推奨するピクトグラム及び寸法(標準仕様ノンステップバス認定要領から抜粋) 参考4-2-23:ヘルプマーク -援助や配慮を必要としている方が、身につけることで、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることができる表示 108ページ M車内表示 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 文字による次停留所案内 ・バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む)を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備える。 ・乗客が次停留所名等を容易に確認できるよう次停留所名表示装置を車内の見やすい位置に設置にする。 ○:標準的な整備内容 文字による次停留所案内 ・表示装置は大きな文字で表示し、ひらがな及び英語を併記または連続表示する。 ・次停留所名は、可能なかぎり前部以外の場所にも表示する。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) ◇:望ましい整備内容 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を車内のどの場所からも確認できるようにすることが望ましい。  経路、行先等表示装置 ・経路、停留所名、行先等がわかるような車内表示を行うことが望ましい。 緊急時の情報提供 ・聴覚障害者等が緊急時に正確な情報を把握できることに配慮し、緊急時の情報を文字により提供する。また、緊急情報内容のうち定型化可能なものは表示メニューを用意することが望ましい。  *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 109ページ 参考例 参考4-2-24:車内表示の事例 ・乗客が次停留所名等を容易に確認できるように次停留所表示装置を車内の見やすい位置に設置。 ・東京都交通局   ・北九州市交通局 車内中間部に車内表示器を設置することで 車内後方部からも車内表示が容易に確認 出来るよう設置。 参考例 参考4-2-25:マルチディスプレイの事例  ・マルチディスプレイでひらがなや外国語表示(多言語表示)を行っている。  ・停留所案内、次停留所の停車案内を行っている。 ※画像はサンプルであり実際の停留所名や運賃とは異なる。 提供 株式会社レシップ ※車内表示の工夫として、降車後の施設位置の案内を文字や平面図等で行っている事例もある。 110ページ N車外表示 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 3 バス車両の前面、左側面及び後面に、バス車両の行き先を見やすいように表示しなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 文字による行き先表示 ・行き先が車外から容易に確認できるように、車両の前面、左側面、後面に表示する。 ○:標準的な整備内容 文字による行き先表示 ・行き先に加え、経路、系統、車椅子マーク、ベビーカーマーク等においても、車外から容易に確認できるようにする。 ・寸法は300mm以上×1,400mm以上(前方)、400mm以上×700mm以上(側方)、200mm以上×900mm以上(後方)(ただし、2m幅の車両の場合は125mm以上×900mm以上(前方および後方)、180mm以上×500mm 以上(側方))とする。 ・表示機は、直射日光のもとでも夜間でも視認可能なものとする。 ・大きな文字で表示し、ひらがな及び英語を併記または連続表示する。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) ノンステップバスであることの表示 ・ノンステップバスであることを車両の前面、左側面、後面からわかるよう表示する。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 111ページ 参考例 参考4-2-26:車外表示(行き先、車椅子マーク等)の事例 ・行き先、経路、系統、車椅子マーク等を車外から容易に確認できるようにしている ・夜間でも視認可能な表示機 ・車外表示装置の寸法:前部300mm×1,400mm、側部400mm×700mm、後方200mm×900mm以上 ・東京都交通局(標準仕様ノンステップバス(15認定)) 参考4-2-27:車外表示(行き先、車椅子マーク、ベビーカーマーク等)の事例 夜間でも視認可能な表示機の事例 ・川崎鶴見臨港バス 112ページ O車内放送 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 次停留所等の案内放送 ・バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む)を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備える。 ・車内には、次停留所、乗換案内等の運行に関する情報を音声により提供するための放送装置を設ける。 ○:標準的な整備内容 次停留所等の案内放送 ・車内放送により次停留所、乗換案内などを優先的に行い、その際には聞き取りやすい音量、音質、速さで行う。 ・降車ボタンに反応し、「次停まります」の音声が流れるようにする。 ・次停留所名の放送は、前停留所発車又は通過直後、及び次停留所停車直前に行う。 ・基本的な運行案内と案内以外の広告等の内容が区別して分かるよう配慮する。 P車外放送 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 2 バス車両には、車外用放送設備を設けなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 行き先、経路等の案内放送 ・行き先、経路、系統等の案内を行うための車外用放送装置を設ける。 ○:標準的な整備内容 行き先、経路等の案内放送 ・車外の利用者とバス乗務員とが容易に情報交換できるようにする。 ・視覚障害者の乗降に配慮し、ノンステップバスである旨、前乗り、中乗り、後乗りの別を音声で案内する。 ・バス車体規格集等に準じ、車外スピーカー、インターホンマイクの取り付け位置を統一する。 113ページ Qコミュニケーション設備 移動等円滑化基準 (意思疎通を図るための設備) 第42条 バス車両内には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該バス車両内に表示するものとする。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 聴覚障害者用コミュニケーション設備 ・バス車両内には、筆談用具など聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を準備し、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ・この場合においては、当該設備を保有している旨を車両内に表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通が図れるように配慮する。 ○:標準的な整備内容 聴覚障害者用コミュニケーション設備 ・筆談用具などの対応がある旨の表示については、乗務員席付近であって、乗務員及び乗客から見やすく、かつ乗客から手の届く位置に表示する。 コミュニケーション支援ボード ・言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者・外国人等に配慮し、JIS T0103で規定されたコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーション支援ボードを準備する。 車内安全確認設備 ・運転者から車内の大部分が確認できるミラー、モニター等を設置する。 ・ミラー、モニター等は運転者席から容易に確認できる位置に設置する。 注:知的障害者・発達障害者・精神障害者、また日本語のわからない外国人など、利用者の中には文字や話し言葉での意思疎通が難しい人が含まれる。また、利用者のその時の体調等にも影響され、うまく発話できないなどの状況も考えられることから、コミュニケーション手段を複数用意しておくことは有効である。 114〜116ページ 参考例 参考4-2-28:筆談用具がある旨の表示例 参考例 参考4-2-29:JIS T0103「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」に収載されている絵記号の例 【分類項目】501:乗り物・交通 参考例 参考4-2-30:コミュニケーション支援ボードの例 出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団 117ページ 2.2 都市間路線バス(高速・空港アクセスバス等) バリアフリー法では、路線バスのバリアフリー化を義務付けているが、その構造や運行の様態により対応困難な事由があるものについては、移動等円滑化基準の適用除外を認めている。このうち、都市間路線バス(高速バス、空港アクセスバス等)については、一般には旅客の手荷物を収納する荷物室等が設けられた床の高いタイプの車両(ハイデッカー)が用いられていることから、床高さに係る基準(65cm 以下)を満たせず、適用除外車両という位置づけになっている。 一方で、先進国ではこのようなバスについても乗降用リフトの設置等によりバリアフリー化するのが一般的になりつつあり、例えば、2012年にロンドンオリンピック・パラリンピックを開催したイギリスでは、都市間を運行するいわゆるコーチ車両について、法律で2020年までのリフト設置が義務付けられ、事業者の中には100%リフト化を五輪の会期までに前倒しで達成したところもある。(しかしながら、既存停留所の半数程度がバリアフリー化されておらず、道路側の環境整備が課題と言われている。) 車椅子使用者は以前から都市間路線バスのバリアフリー化を強く求めており、これまでにも国土交通省の「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係るバリアフリー車両開発の検討会」において、空港リムジンバスへの乗降用リフト設置に関して議論し、課題の抽出と解決の方向性について検討してきた経緯がある。 また、平成23 年に改定された「移動等円滑化の促進に関する基本方針」では、適用除外認定車両についても約25%を目標に平成32 年までにバリアフリー化を進めることになっている。この目標は都市間路線バスだけでなく、小型バスなども含む適用除外認定車両すべての目標ではあるが、オリンピック・パラリンピックを控えた日本では、訪日客の利用も想定し、空港からの都市間路線バスについても早期にバリアフリー化を進めていくことが求められている。 都市間路線におけるリフト付きバスの導入については、羽田・成田空港から都心部を結ぶ路線において実証運行がなされているところであり、現在各事業者で車両数や運行路線の拡大の取り組みの検討が進められているところである。運用面において、定時性の確保、乗車定員・荷物室の減少、車椅子使用者の固定などの安全確保、停車スペースや停留所における停車可能時間の制約、車両価格の上昇などの諸課題が存在するが、今後は空港アクセス路線を中心に、都市間路線バスのバリアフリー化を推進するため、関係者を挙げた取り組みが求められている。 118ページ 参考4-2-31:都市間路線バスの姿図及び平面図 4列シート車 3列シート車 119ページ 都市間路線バスのバリアフリー化の推進について 前述の通り、2020年に東京オリンピック・パラリンピック大会を控え、また、そのレガシーである共生社会の実現に向け、都市間路線バス、とりわけ空港アクセスバスのバリアフリー化は急務であるが、現時点ではリフト付きバスの導入は進んでいない状況である。一方、荷物室を従来より確保できる新型リフト付きバス、一般路線バスと同様の停留所で乗降できるエレベーター付きバスの発売や、乗降時間が一般路線のノンステップバスと同じスロープ付ダブルデッカーの導入といった前述の課題に対応する動きも見られる。 こうした状況を踏まえ、課題が相対的に小さく、かつ利用者ニーズの高い空港と都心部を結ぶ直行路線においては、リフト付きバス等のバリアフリー車両を導入することとし、また、これによることが難しい場合であっても人的支援の実施等のソフト対策を講じること等により、バリアフリー対応を優先的に推進していくべきである。 @乗降口 移動等円滑化基準 (乗降口) 第37条 乗降口の踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものでなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 踏み段(ステップ)の識別 ・乗降口の踏み段(ステップ)端部の全体がその周囲の部分及び路面と輝度コントラストが大きいことにより、踏み段を容易に識別できるものとする。 ○:標準的な整備内容 乗降口の幅 ・1以上の乗降口の有効幅は、800mm以上とする。 踏み段(ステップ)の識別 ・高齢者等が乗降しやすいように、一段目の踏み段(ステップ)が高い場合には、車高を下げる等、乗降時の段差を解消する。 ・踏み段(ステップ)各段の段差は等間隔とする。 ・踏み段(ステップ)の奥行きは、300mm以上とする。 踏み段(ステップ)の材質 ・踏み段(ステップ)には滑りにくい素材を使用する。 乗降用手すり ・乗降口には、乗降用の手すりを乗降口両側に設置する。 足下照明灯 ・また、夜間でも足下の踏み段(ステップ)が見やすいように、足下照明灯(フットライト)を設置する。 ◇:望ましい整備内容 乗降口の幅 ・乗降口の有効幅は、十分な幅(900mm以上)を確保することが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 120ページ 姿図・寸法 参考4-2-32:乗降口の例   車高を下げ乗降時の段差を解消する乗降口の事例 出典:いすゞ自動車株式会社ホームページより http://www.isuzu.co.jp/product/bus/gala_ss/approach.html 121ページ A座席 ○:標準的な整備内容 座席の仕様 ・高齢者や障害者が座りやすいように、通路側のひじ掛けがはね上がる等の仕様の座席を設け、その機能が容易にわかるように表示する。 ・床面からの高さ、奥行、背当ての角度、座面の角度等を配慮し、座りやすく、立ち上がりやすいものとする。  座席番号 ・ロービジョン者に配慮し、できるだけ大きく、また、周囲とのコントラストを確保した色で表示する。 座席番号の点字表示 ・座席の通路側の肩口の端には、視覚障害者が利用しやすいようにJIS T0921に基づいた座席番号識別のための点字シール等を貼付する。 姿図・寸法 参考4-2-33:座席(3列シート)の例 122ページ B乗降用リフト等 ○:標準的な整備内容 乗降用リフトの設置 ・乗客の利便のために乗降用リフトを設置する場合には、次の構造のものを採用する。ただし、乗降場所が限られている場合は、地上に乗降用リフトを設置しても良い。 @リフトの左右両側への手すりの設置その他の乗降時に車椅子の落下を防止する装置の設置されている又はそれと同等の措置が講じられているものである。 Aサイドブレーキがかかっていないとリフトが作動しない、リフト昇降時に障害物を検知した場合には自動停止する等のリフトの誤作動を防止する、昇降中に転落しないための措置が講じられているものであり、転落防止板(ストッパ)とリフトの昇降とが連動して作動するものである。  Bリフトにトラブルが生じた場合、手動でリフトを操作すること等により対処可能な構造である。 スロープ板の設置 ・乗客の利便のためにスロープ板を設置する場合には、都市内路線バスのスロープ板の要件に準じたものを採用する。ただし、低床車両以外の車両の場合は、スロープ角度の基準は当該要件に依らないことができる。 ◇:望ましい整備内容 乗降用リフトの設置 ・次の構造の乗降用リフトを整備することが望ましい。 (ただし、乗降場所が限られている場合は、地上に乗降用リフトを設置しても良い) @リフトを荷室に格納した状態で当該荷室に折りたたんだ車椅子が格納できる等、乗降の利便性と運搬能力の両立を図ることができる構造である。(参考例参照)  A全長1,200mm程度×全幅780mm程度とする。  B耐荷重については、電動車椅子本体(80〜100kg)、本人、介助者の重量を勘案し、300kg程度とする。 スロープ板の設置 ・乗降用リフトによらず、傾斜角7度(約1/8)以下によりスロープ板を設置できる場合は、都市内路線バスのスロープ板の要件に準じたものを採用することが望ましい。 123ページ 参考例 参考4-2-34:リフト付きバスの例   出典:東京空港交通株式会社 https://www.limousinebus.co.jp/news/news20171219.pdf 参考4-2-35:スロープ付きダブルデッカー車両の例 - 一般のノンステップバスと乗降時間が同じスロープ付きダブルデッカー車両。 - スロープを設置し、2階建てバスの1階に車椅子使用者が乗車。 提供:京成バス株式会社 124ページ 参考例 参考4-2-36:リフト付きバスの例 ・リフト付きバス(日野 セレガ) -リフトをコンパクトに収納することで荷物スペースを確保した新型車両  提供:一般社団法人日本自動車工業会 参考4-2-37:エレベーター付きバスの例 ・エレベーター付きバス(三菱ふそう)  -通常のバスと同様に停留所で乗降可能 提供:一般社団法人日本自動車工業会 125ページ C車椅子スペース 参考:移動等円滑化基準(乗合バスが対象) (車椅子スペース) 第39条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車椅子スペースを一以上設けなければならない。 一 車椅子使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 二 車椅子使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 三 車椅子を固定することができる設備が備えられていること。 四 車椅子スペースに座席を設ける場合は、当該座席は容易に折り畳むことができるものであること。 五 他の法令の規定により旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーその他の装置を備えることとされているバス車両である場合は、車椅子使用者が利用できる位置に、当該ブザーその他の装置が備えられていること。 六 車椅子スペースである旨が表示されていること。 (通路) 第40条 第三十七条第二項の基準に適合する乗降口と車椅子スペースとの間の通路の幅(容易に折り畳むことができる座席が設けられている場合は、当該座席を折り畳んだときの幅)は、八十センチメートル以上でなければならない。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子スペースは、乗降しやすい位置(乗降用リフトの近く)に設けることが望ましい。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースの広さは、長さ1,500mm以上、幅800mm以上、高さ1,500mm以上とすることが望ましい。 ・車椅子スペースは、車椅子が取り回しできる広さとすることが望ましい。 車椅子固定装置の設置 ・車椅子スペースには、車椅子固定装置(4点式固定ベルト、ラチェット、クランプ、ひじ掛け止めのベルト等)及び車椅子用人ベルトを設置して、安全に配慮することが望ましい。 人ベルト ・車椅子使用者自身の安全を確保するため、安全ベルト(2点式、又は3点式)を着用することが望ましい。 手すり ・車椅子使用者がバス乗車中に利用できる手すりを設置することが望ましい。 シートへの移乗 ・長時間の乗車となる際には、車椅子からシートに移乗してもらうことが望ましい。 ・シートへ移乗しやすいスペースが確保され、座席はひじ掛けはね上げ式等であることことが望ましい。 乗務員の接遇、介助 ・車椅子の固定、解除は、乗務員が行うことが望ましい。 126ページ Dトイレ ○:標準的な整備内容 トイレの設置 ・慢性的疾患のため利尿性のある薬を服用する者等もいるので、長時間の乗車となる場合の多い都市間バスにおいては、車内にトイレを設置する。 鍵 ・容易に施錠できる形式とし、非常時に外から解錠できるようにする。 ドアの仕様 ・ドアは、軽い力で操作できる仕様とする。 ・開き戸の場合は外開きとする(車椅子対応トイレの場合は、引き戸(「車椅子対応トイレ」の「ドアの仕様」の項目を参照)とする)。 ・ドア開閉ノブ等の高さは800〜850mm程度とする。 手すり ・便器周囲の壁面に手すり(高さ650〜700mm程度)を設置する。 ・手すりは、握りやすく、腐蝕しにくい素材で、径は30mm程度とする。 床面の仕上げ ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 便器洗浄ボタン・紙巻器 ・便器洗浄ボタンは手の届きやすい位置に設置し、操作しやすい方式(押しボタン式等)とする。 ・便器洗浄ボタン、紙巻器の形状・色・配置についてはJIS S0026に合わせたものとする。 手洗器 ・便器に腰掛けたまま容易に利用できる位置に設置し、障害者、高齢者等の扱いやすい形状とする(スペースがある場合は、便座の横に設置することが望ましい)。 呼出しボタン緊急通報装置 ・便房内の呼出しボタン操作部の形状・色・配置についてはJIS S0026に合わせたものとする。 ◇:望ましい整備内容 車椅子対応 トイレ ・車椅子使用者が利用可能なトイレを設けることが望ましい。 呼出しボタン・非常通報装置 ・転倒時でも手の届く範囲にも設置することが望ましい。 トイレ内設備の触知図案内図等 ・トイレの出入口内側に、トイレの構造を視覚障害者に示すための触知案内図等が設けられていることが望ましい。 ・触知案内図により表示する場合には表示方法はJIS T0922にあわせたものとし、点字により表示する場合は、表示方法はJIS T0921に合わせるものとすることが望ましい。 運行計画上の配慮 ・車椅子対応トイレを設置しない車両の運行に際しては、高速道路サービスエリア等の公衆トイレを利用できるような運行計画を立てることが望ましい。 127ページ 姿図・寸法 参考4-2-38:車椅子対応トイレの例 Eトランクルーム、車椅子収納スペース ○:標準的な整備内容 トランクルーム ・トランクルームは、車椅子が収納できるスペースを確保する。 (車椅子のJIS最大値は長さ1,200mm、幅700mm。折り畳んだ時の幅は300mm×高さ1,090mm) ◇:望ましい整備内容 車内車椅子収納スペース ・車内の車椅子固定スペース付近に車椅子を折り畳んで収納できるスペースを設けることが望ましい。 F床面の仕上げ 移動等円滑化基準 (床面) 第38条 2 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものでなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 床面の仕上げ ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものとする。 128ページ G車内放送・車内表示 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 次停留所等の案内放送 ・バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報(行き先及び種別。これらが運行開始後に変更される場合は、その変更後のものを含む)を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備える。 ・車内には、次停留所、乗換案内等の運行に関する情報を音声により提供するための放送装置を設ける。 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を容易に確認できるよう次停留所名表示装置を車内の見やすい位置に設置する。 ○:標準的な整備内容 次停留所等の案内放送 ・車内放送により次停留所、乗り換え案内などを優先的に行い、その際には聞き取りやすい音量、音質、速さで行う。 ・降車ボタンに反応し、「次停まります」の音声が流れるようにする。 ・次停留所名の放送は、前停留所発車又は通過直後、及び次停留所停車直前に行う。 文字による次停留所案内 ・表示装置は大きな文字で表示し、ひらがな及び英語を併記または連続表示する。 ◇:望ましい整備内容 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を車内のどの場所からも確認できるようにすることが望ましい。 経路、行き先等表示装置 ・経路、停留所名、行き先等がわかるような車内表示を行うことが望ましい。 緊急時の情報提供 ・聴覚障害者等が緊急時に正確な情報を把握できることに配慮し、緊急時の情報を文字により提供する。また、緊急情報内容のうち定型化可能なものは表示メニューを用意することが望ましい。 Hコミュニケーション設備 移動等円滑化基準 (意思疎通を図るための設備) 第42条 バス車両内には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該バス車両内に表示するものとする。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 聴覚障害者用ココミュニケーション設備 ・バス車両内には、筆談用具など聴覚障害者が文字により意思疎通を図るため 129ページ の設備を準備し、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ・この場合においては、当該設備を保有している旨を車両内に表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通を図れるように配慮する。 ○:標準的な整備内容 聴覚障害者用コミュニケーション設備 ・筆談用具などの対応がある旨の表示については、乗務員席付近であって、乗務員及び乗客から見やすく、かつ乗客から手の届く位置に表示する。 コミュニケーション支援ボード ・言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者・外国人等に配慮し、JIS T0103で規定されたコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーション支援ボードを準備する。 ※1「筆談用具がある旨の表示例」、「JIS T0103「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」」に収載されている絵記号の例」、「コミュニケーション支援ボードの例」は、都市内路線バスのコミュニケーション設備の項(114〜116ページ)を参照。 ※2知的障害者・発達障害者・精神障害者、また日本語のわからない外国人など、利用者の中には文字や話し言葉での意思疎通が難しい人が含まれる。また、利用者のその時の体調等にも影響され、うまく発話できないなどの状況も考えられることから、コミュニケーション手段を複数用意しておくことは有効である。 130ページ 3.タクシー タクシーについては、平成12年に制定した交通バリアフリー法においては対象とされていなかったが、平成18年に制定したバリアフリー法においては、福祉タクシー車両が新たに適合義務の対象として含まれた。平成22年度末に改定された「移動等円滑化の促進に関する基本方針」においては、平成32年度末までの整備目標値が新たに約28,000台まで引き上げられ、平成28年度末の実績は全国で15,128台となっている。 ユニバーサルデザインタクシー(以下UDタクシー)については、平成20年度、21年度の国土交通省自動車交通局(当時)による「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係るバリアフリー車両の開発」の検討結果をもとに標準的な仕様が定められた。さらに平成23年度より「標準仕様ユニバーサルデザインタクシーの認定制度」が導入され、UDタクシーを表すマークも制定された。 当初、一般に販売されていたのは日産NV200の1車型のみであったが、平成29年10月に、トヨタJPN TAXIが発売され、車椅子使用者の乗降については両車スロープ仕様であるが、NV200は後ろから乗降、JPN TAXIは横から乗降という特徴があり、地域や用途に応じて事業者が選択できるバリエーションが出そろったことになる。 2020東京オリンピック・パラリンピックを機会に、UDタクシー導入支援を行う自治体もあり、今後全国にさらなる普及を期待したい。 UDタクシーが一定程度普及し、利用者も増えるにつれて新たな改良も生じると考えられ、より良い車両づくりのために今後も継続的に改善を行うことが求められる。また、利用者に対応する乗務員の教育訓練も、こうした車両の安全性、快適性の向上には欠かせない要素となっており、今後も導入事業者の継続的な努力が期待される。 今回の改定では、UDタクシーが今後の標準的な車型として積極的導入がなされることが重要と考え、本ガイドラインのタクシーの単元において、UDタクシーを冒頭に記載することとした。 131ページ 3.1 車椅子等対応 (1)ユニバーサルデザインタクシー ・車椅子使用者に限らずその他の高齢者、障害者等が他の旅客と同じように利用し、予約制の福祉限定による利用に限らず流しの運行による利用も想定する。 ・窓ガラス部分以外の車体の前面、左側面、及び後面にユニバーサルデザインタクシーマークを表示し、車体前面方向からユニバーサルデザインタクシーであることを視認できるようにする。 ・車椅子使用者が乗り込めるドア開口部の高さ、間口の広いドアを確保。 ・低床、フラットな床であり、スロープを備え、車椅子使用者以外の障害者、高齢者等も乗降しやすいものとする。 ・近年、ユニバーサルデザインタクシーの実車モデルの開発が進んでおり、それらの開発動向も踏まえ、具体例を示している。 ・今後、ユニバーサルデザインタクシーの普及を図る上で、タクシーとして利用可能なユニバーサルデザイン車両の開発をより一層促進することが望まれる。 参考例 参考4-3-1:ユニバーサルデザインタクシーの事例 ・トヨタJPN TAXI 提供 一般社団法人日本自動車工業会 132ページ ・日産NV200 提供 一般社団法人日本自動車工業会 133ページ @乗降口 ○:標準的な整備内容 乗降口の広さ ・乗降口のうち1カ所は、スロープ板その他の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備を備える。 ・車椅子のまま乗車できる乗降口を1以上設け、その有効幅は700mm以上、高さは1,300mm以上とする。 車椅子対応の室内高 ・車椅子のまま乗車できる車両の室内高は、1,350mm以上とする。 乗降口地上高 ・停車時の乗降口地上高は、350mm以下とする。ただし、350mmを超える地上高の場合であって、備付けまたは別体の補助ステップ等を備えるときは、この限りでない。なお、補助ステップ等を設置する場合は、高齢者、松葉杖使用者等の乗降補助のために、1段の高さが260mm以下、奥行150mm以上となるような補助ステップ等を設置すること。また、補助ステップ等は2段以内に限る。 スロープの勾配(詳細はAスロープを参照) ・横から乗車:スロープ板を設置する場合、スロープ板の勾配は、14度(約1/4)以下とする。 ・後部から乗車:同上。 乗降口の端部 ・乗降口の端部(補助ステップ、手すりを含む)は、その周囲の部分や路面との輝度コントラスト*が大きいこと等により、高齢者、障害者等が端部を容易に識別しやすいようにする。 床面の材質 ・乗降口付近の床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 足下照明灯 ・夜間においても足下が見やすいように、乗降口にはドア開口時に点灯する足下照明灯を設置する。 ◇:望ましい整備内容 乗降口の広さ ・有効幅は800mm以上、高さは1,350mm以上が望ましい。 車椅子対応の室内高 ・車椅子のまま乗車できる車両の室内高は1,400mm以上が望ましい。 乗降口地上高 ・停車時の乗降口地上高は、300mm以下が望ましい。 ・備付けまたは別体の補助ステップ等を設置する場合は、1段の高さが200mm以下、奥行200mm以上となるように設置することが望ましい。 スロープ板の勾配(詳細はAスロープ板を参照) ・横から乗車:スロープ板の勾配は、10度(約1/6)以下が望ましい。 ・後部から乗車:同上。 車椅子後退防止機能 ・車椅子固定スペースに傾斜がある場合は、車椅子乗車時に後退を防止する機構が設けられていることが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 134ページ 姿図・寸法 参考4-3-2:乗降口の例 <横から乗車の場合> 解説:歩道の幅が2メートル以上、スロープの長さ1メートル以下の場合、側面からの車椅子の乗降が可能。 歩道のない場合、道路幅員4メートル以上で、かつスロープの長さ1メートル以下の場合、車椅子の乗降が可能。 135ページ Aスロープ板 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車椅子使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 スロープ板の設置 ・乗降口のうち1カ所は、スロープ板その他の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備を備える。 ○:標準的な整備内容 スロープ板の勾配 ・横から乗車:スロープ板の勾配は、14度(約1/4)以下とする。 ・後部から乗車:同上。 スロープ板の幅 ・スロープ板の幅は700mm以上とする。 ・車椅子のスロープ板からの脱輪防止のためエッジのある構造とする。エッジの高さは車椅子のハンドルリムと干渉しないように留意する。 スロープ板表面の材質 ・スロープ板の表面は滑りにくい素材とする。 スロープ板の耐荷重 ・スロープ板の耐荷重は、電動車椅子本体(80〜100kg程度)、車椅子使用者本人の重量を勘案し200kg以上とする。 スロープ板の設置方法 ・スロープ板は乗降口から脱落しない構造とする。 ・スロープ板と床面に段差ができないような構造とする。 スロープ板の格納方法 ・スロープ板は使用に便利で、乗客にとって安全な場所に備える。 ◇:望ましい整備内容 スロープ板の勾配 ・横から乗車:スロープ板の勾配は、10度(約1/6)以下が望ましい。 スロープ板の幅 ・スロープ板の幅は800mm以上が望ましい。 スロープ板の耐荷重 ・スロープ板の耐荷重は、300kg以上が望ましい。 B乗降用手すり ○:標準的な整備内容 手すりの設置 ・高齢者、障害者等の乗降の円滑化、姿勢保持、立ち座り、安全確保のために、乗降口には手すり等を設置する。 手すりの色 ・夜間や薄暗い時、又は高齢者、ロービジョン者の安全のために、手すりは容易に識別できる配色とする。 136ページ ・手すりの色は朱色又は黄赤とする。 ・手すりとその周囲の部分との色の明度差をつける。 手すりの形状 ・高齢者、障害者等が握りやすい形状とする。 手すりの材質 ・高齢者、障害者等が握りやすいように、手すりの表面はすべりにくい材質や仕上げとする。 C床の材質、形状 ○:標準的な整備内容 床の材質 ・床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 床の形状 ・車椅子使用者が安楽で適正な座位姿勢を保てるように、固定スペースの床面の傾斜を10度(約1/6)以下とする。 ◇:望ましい整備内容 床の形状 ・固定スペースの床面は水平とすることが望ましい。 D車椅子スペース 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 車椅子又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子のスペースを1つ以上設ける。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置 ・次に掲げる規格に適合する車椅子スペースを1以上設置する。 位置 ・車椅子スペースは、車椅子の進入しやすい位置に設ける。 広さ ・車椅子を固定するスペースは、長さ1,300mm以上、幅750mm以上、高さ1,350mm以上とする。 車椅子使用者の視界の確保 ・車椅子使用者の外への視界を、座席利用者同様に確保する。 車椅子の方向転換に必要なスペース ・側方から乗車する場合、車内には車椅子使用者等が介助により転回できるスペースを確保する。ただし、回転盤を使用する場合はこの限りではない。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置 ・次に掲げる規格に適合する車椅子スペースを設けることが望ましい。 広さ ・車椅子を固定するスペースの高さは、1,400mm以上とする。 手すりの設置 ・車椅子使用者が乗車中に利用できる手すりなどを設置することが望ましい。 137ページ 介助者用の座席の設置 ・車椅子使用者乗車時に、車椅子スペースの横に介助者(付添人)用の座席を設置することが望ましい。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づける。 姿図・寸法 参考4-3-3:車椅子スペースの例 <横から乗車の場合> <後ろから乗車の場合> 138ページ E室内座席 ○:標準的な整備内容 乗車可能な人数 ・4名以上の乗客が乗車できることとする。車椅子使用者乗車時には、車椅子使用者以外の乗客1名以上が乗車できることとする。 ◇:望ましい整備内容 乗車可能な人数 ・車椅子使用者乗車時には、車椅子使用者以外の乗客2名以上が乗車できることが望ましい。 F車椅子固定方法 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 車椅子又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子固定装置 ・車椅子を固定することができる設備を備える。 ○:標準的な整備内容 車椅子固定装置 ・固定装置は、固縛、開放に要する時間が短く、かつ確実に固定できるものとする。 シートベルト ・車椅子使用者の安全を確保するために、3点式シートベルトを設置する。 姿図・寸法 参考4-3-14:<4点式車椅子固定ベルト、3点式シートベルトの例> ※参考4-3-5 車椅子固定装置の例(137ページ)参照 G車椅子、補装具収納場所 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保する。 ・収納スペースは、長さ1,050mm以上×幅350mm以上×高さ900mm以上とする(標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法に対応できる収納スペース。)。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを設置する。 139ページ Hユニバーサルデザインタクシーマークの表示 ○:標準的な整備内容 ユニバーサルデザインタクシーマークの表示による乗車案内 ・窓ガラス部分以外の車体の前面、左側面及び後面に、ユニバーサルデザインタクシーマークを表示し、車椅子による乗車が可能であることを明示する。乗車可能な車椅子の大きさ、形状等について車外に明示する。ただし、福祉限定のタクシーでは、ユニバーサルデザインタクシーと同一の車両であっても車椅子マークを表示する。 参考例 参考4-3-4:ユニバーサルデザインタクシーマーク  ・平成23年9月にユニバーサルデザインタクシーマークが決定された。  ・平成24年3月にユニバーサルデザインタクシーの認定車両に係る車体表示について、通達により義務化された。  ・標準仕様ユニバーサルデザインタクシーの認定レベルは、以下のとおり。 レベル2 ・レベル1と比して、より利用しやすさに配慮されている等より良い構造を有するユニバーサルデザインタクシー レベル1 ・車椅子使用者や高齢者をはじめとしたすべての利用者にとって利用しやすい構造として標準的な内容を満足するユニバーサルデザインタクシー その他のユニバーサルデザインタクシー ・認定を受けていないものの車椅子用スロープ又はリフトを備えたユニバーサルデザインタクシー   140ページ 参考例 参考4-3-5:ユニバーサルデザインタクシーマークの表示例 141ページ (2)大型電動車椅子・ストレッチャー(寝台)等対応(バンタイプ/リフト車) ・乗車定員:8〜10名程度 ・全長:約4.5m〜約5.4m 参考4-3-6:大型電動車椅子・ストレッチャー(寝台)等対応車両の事例 (標準ボディ) (ワイドボディ) 出典:トヨタwebカタログより 142ページ @乗降口 ○:標準的な整備内容 乗降口の広さ ・後部乗降口には、車椅子使用者・ストレッチャー(寝台)等使用者の乗降を円滑にする乗降用リフト設備等を備える。 ・車椅子のまま及びストレッチャー(寝台)のままで乗車できる乗降口を1以上設け、その幅は800mm以上、高さは1,400mm以上とする。 車椅子対応の室内高 ・室内高は、1,500mm以上とする。 乗降口の端部 ・乗降口の端部は、その周囲の部分や路面との明度差が大きいこと等により、高齢者、障害者等が端部を容易に識別しやすいようにする。 床面の材質 ・乗降口付近の床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 足下照明灯 ・夜間においても足下が見やすいように、乗降口にはドア開口時に点灯する足下照明灯を設置する。 ◇:望ましい整備内容 乗降口の広さ ・乗降口の幅は900mm以上、高さは1,500mm以上が望ましい。 乗降口の高さ ・停車時の乗降口地上高は、300mm以下とすることが望ましい。 ・ただし、高齢者、松葉杖使用者等の乗降補助のために、1段の高さを200mm未満とするために補助ステップ等を設置する場合はこの限りではない。 姿図・寸法 参考4-3-7:乗降口の事例 出典:右写真トヨタwebカタログ 143ページ Aリフト 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車椅子使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 リフトの設置 ・乗降口には、ストレッチャー(寝台)・担架・車椅子使用者の乗降を円滑にするスロープ板、リフト設備等その他の車椅子使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備を備える。 ○:標準的な整備内容 リフト面の広さ ・リフトは、使用できるリフト面(プラットフォーム)の広さが全長1,200mm以上、全幅750mm以上とし、ストレッチャー(寝台)(寝台面の全長1,900mm程度)が利用できる大きさとする。 リフト面の材質 ・リフト面(プラットフォーム)は滑りにくい素材とする。 リフトの耐荷重 ・リフトの耐荷重は、電動車椅子本体(80〜100kg程度)、車椅子使用者本人、介助者の重量を勘案し300kg以上とする。ただし、介助者が同時に利用しない場合は200kg以上とする。 リフトの格納場所 ・リフトは使用に便利で、乗客にとって安全な場所に備える。 リフト作動時の安全 ・リフトの左右両側に、リフト昇降中に車椅子使用者がつかまれるように手すりを設置するとともに、転落防止板(後退防止用ストッパ)を設置する。リフトの誤作動防止のため、安全装置(サイドブレーキを引いていないとリフトが動かない等)を必ず取り付ける。 ◇:望ましい整備内容 リフト面の広さ ・全幅800mm以上が望ましい。 144ページ 姿図・寸法 参考4-3-8:リフトの例 B床の材質、形状 ○:標準的な整備内容 床の材質 ・床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 床の形状 ・ストレッチャー(寝台)等が適正に定置でき、車椅子使用者が安楽で適正な座位姿勢を保てるように、固定スペースの床面は水平にする。 Cストレッチャー、車椅子スペース 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 車椅子又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 ストレッチャー等または車椅子のスペースの設置 ・ストレッチャー(寝台)、担架スペース又は車椅子スペースを1以上設ける。 ○:標準的な整備内容 ストレッチャー等スペースの設置 ・ストレッチャー(寝台)等のスペースを設ける場合は、次に掲げる規格に適合するものを1以上設置する。 広さ ・ストレッチャー(寝台)等のスペースは、長さ2,000mm以上、幅750mm以上とする。(ストレッチャーの全長1,800〜1,900mm程度、全幅500〜650mm程度に一定の余裕幅を考慮) 145ページ 車椅子スペースの設置 ・車椅子スペースを設ける場合は、次に掲げる規格に適合する車椅子スペースを1以上設置する。ただし、ストレッチャー専用車両の場合はこの限りではない。 位置 ・車椅子スペースは、車椅子の進入しやすい位置に設ける。 広さ ・車椅子を固定するスペースは、長さ1,300mm以上、幅750mm以上、高さ1,500mm以上とする。(注1) 車椅子使用者の視界の確保 ・車椅子使用者の外への視界を、座席利用者同様に確保する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子スペースを2以上設置することが望ましい。 ・車椅子使用者とストレッチャー等使用者がそれぞれ1以上同時に乗車できることが望ましい。 注1:障害の状況によっては、JIS最大値(1,200mm×700mm)を超える車椅子を使用している場合もあり、また体位によっては後部からつま先まで一定の長さを必要とする場合もあることから、可能な限り車椅子スペースを大きく確保することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-3-9:ストレッチャースペース及び車椅子スペースの例 146ページ Dストレッチャー等固定方法 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 車椅子又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 ストレッチャー固定装置 ・ストレッチャー(寝台)や担架を固定することができる設備を備える。 ○:標準的な整備内容 ストレッチャー固定装置 ・固定装置は、固縛、開放に要する時間が短く、かつ確実に固定できるものとする。 147ページ 姿図・寸法 参考4-3-10:車椅子固定装置の例 <4点式車椅子固定ベルト、3点式シートベルトの例> 148ページ E車椅子固定方法 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 車椅子又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子固定装置 ・車椅子を固定することができる設備を備える。 ○:標準的な整備内容 車椅子固定装置 ・固定装置は、固縛、開放に要する時間が短く、かつ確実に固定できるものとする。 車椅子側の安全性、固定装置取り付け ・車椅子側にフック等の固定場所を明示する。 ヘッドレスト(頭部後傾抑止装置) ・車椅子使用者向けのヘッドレストを用意する(注1)。  前向き固定、後ろ向き固定を問わず、ヘッドレストの高さ、角度等の調整ができるようにする(注2)。 シートベルト ・車椅子使用者の安全を確保するために、シートベルトを設置する。 ・前向き固定:3点式とする。後向き固定:3点又は2点式とする。 ◇:望ましい整備内容 車椅子側の安全性、固定装置取り付け ・車椅子側の装置と車両側の装置がワンタッチで固定できる装置を開発することが望ましい。 注1:ヘッドレストは、車椅子、車両側のいずれかに用意されていること。 注2:車椅子使用者の後頭部が最も突出した部分の少し下から、頚の少し上を支えられるよう、位置調整ができるようにする。 F車椅子、補装具収納場所 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 車椅子又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 ストレッチャー等収納スペース ・車椅子等対応車には、車椅子やストレッチャー(寝台)、担架を備えておくスペースを一以上確保する。 ○:標準的な整備内容 149ページ 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保する。 ・収納スペースは、長さ1,050mm以上×幅350mm以上×高さ900mm以上とする(注1)。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを設置する。 注1:標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法に対応できる収納スペース。 G車椅子マーク表示 ○:標準的な整備内容 車椅子マークの表示による乗車案内 ・車外に、車椅子マークを表示し、移乗又は車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・乗車可能な車椅子の大きさ、形状等について車外等に明示する。 150ページ (3)車椅子対応(ミニバン・軽自動車タイプ/スロープ車・リフト車) ・乗車定員:3〜8名程度 ・全長:約3.4m〜約4.6m 参考4-3-11:車椅子対応車両の事例 出典:左上からトヨタ、日産、ダイハツ各社ホームページ なお、上記車両タイプにおいてストレッチャー等に対応する場合には、大型電動車椅子・ストレッチャー等対応の次の部位・設備に準ずる。 ・ストレッチャースペース ・ストレッチャー固定方法 151ページ @乗降口 ○:標準的な整備内容 乗降口の広さ ・乗降口のうち1カ所は、スロープ板、リフトその他の車椅子使用者等の乗降を円滑にする設備を備える。 ・車椅子のまま乗車できる乗降口を1以上設け、その幅は750mm以上、高さは1,300mm以上とする(注1)。 車椅子対応の室内高 ・車椅子のまま乗車できる車両の室内高は、1,350mm以上とする(注1)。 乗降口の高さ ・高齢者、障害者等の円滑な乗降、車椅子使用者が車椅子のまま乗車する際のスロープの勾配を緩やかにするため、停車時の乗降口地上高はできる限り低くする(停車時の乗降口地上高を低くするため、ニーリング機構を設けても良い。)。 スロープ板の勾配(詳細はAスロープ板を参照) ・横から乗車:スロープ板を設置する場合、スロープ板の勾配は、14度(約1/4)以下とする。 ・後部から乗車:同上 乗降口の端部 ・乗降口の端部は、その周囲の部分や路面との明度差が大きいこと等により、高齢者、障害者等が端部を容易に識別しやすいようにする。 床面の材質 ・乗降口付近の床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 足下照明灯 ・夜間においても足下が見やすいように、乗降口にはドア開口時に点灯する足下照明灯を設置する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子を使用したまま乗車できる乗降口の広さ ・幅は800mm以上、高さは1,350mm以上が望ましい。 乗降口の高さ ・高齢者、障害者等の乗降を円滑にするために、停車時の乗降口地上高は、200mm以下とすることが望ましい。 スロープ板の勾配(詳細はAスロープ板を参照) ・横から乗車:スロープ板の勾配は、電動車椅子の登坂性能等を考慮し10度(約1/6)以下が望ましい。 ・後部から乗車:同上。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づける。 152ページ スロープ板の設置方法 ・スロープ板は乗降口から脱落しない構造とする。 153ページ ・スロープ板と床面に段差ができないような構造とする。 スロープ板の格納方法 ・スロープ板は使用に便利で、乗客にとって安全な場所に備える。 ◇:望ましい整備内容 スロープ板の勾配 ・横から乗車:スロープ板の勾配は、電動車椅子の登坂性能、介助者による手動車椅子の介助を考慮すると10度(約1/6)以下が望ましい。 ・後部から乗車:同上。 スロープ板の幅 ・スロープ板の幅は800mm以上が望ましい。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づける。 姿図・寸法 参考4-3-13:スロープ板の長さの例 154ページ Bリフト 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車椅子使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 二 車椅子又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 三 車椅子又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 リフトの設置 ・乗降口のうち1カ所は、リフトその他の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備を備える。 ○:標準的な整備内容 リフト面の広さ ・使用できるリフト面(プラットフォーム)の広さは全長1,000mm以上、全幅720mm以上とする(ただし、車椅子スペースの全長は1,300mmとする。)(注1)。 リフト面の材質 ・リフト面(プラットフォーム)は滑りにくい素材とする。 リフトの耐荷重 ・リフトの耐荷重は、電動車椅子本体(80〜100kg程度)、車椅子使用者本人、介助者の重量を勘案し300kg以上とする。ただし、介助者が同時に利用しない場合は200kg以上とする。 リフトの格納場所 ・リフトは使用に便利で、乗客にとって安全な場所に備える。 リフト作動時の安全 ・リフトの左右両側に、リフト昇降中に車椅子使用者がつかまっていられるように手すりを設置するとともに、転落防止板(後退防止用ストッパー)を設置する。リフトの誤作動防止のため、安全装置(サイドブレーキを引いていないとリフトが動かない等)を必ず取り付ける。 ◇:望ましい整備内容 リフト面の広さ ・全長1,200mm以上、全幅800mm以上が望ましい。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づけることが望ましい。 155ページ 姿図・寸法 参考4-3-14:リフトの例 C床の材質、形状 ○:標準的な整備内容 床の材質 ・床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 床の形状 ・車椅子使用者が安楽で適正な座位姿勢を保てるように、車椅子スペースの床面は水平にする。 D車椅子スペース 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 車椅子又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子スペースを1以上設ける。 ○:標準的な整備内容 156ページ 車椅子スペースの設置 ・次に掲げる規格に適合する車椅子スペースを1以上設置する。 位置 ・車椅子スペースは、車椅子の進入しやすい位置に設ける。 広さ ・車椅子を固定するスペースは、長さ1,300mm以上、幅750mm以上、高さ1,350mm以上とする(注1)。 車椅子使用者の視界の確保 ・車椅子使用者の外への視界を、座席利用者同様に確保する。 車椅子の方向転換に必要なスペース ・側方からの乗車の場合、車内には車椅子使用者が介助により転回できるスペースを確保する。ただし、回転盤を使用する場合や、軽自動車はこの限りでない。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づける。 姿図・寸法 参考4-3-15:車椅子スペースの例 *上図では実際の寸法の相対比は反映されていない。 出典:三菱自動車webカタログ E車椅子固定方法 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 車椅子又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子固定装置 ・車椅子を固定することができる設備を備える。 ○:標準的な整備内容 車椅子固定装置 ・固定装置は、固縛、開放に要する時間が短く、かつ確実に固定できるものとする。 ・車椅子使用者が走行中も車椅子に着座する場合には、前向き固定、後ろ向き固定を問わず、車両内の固定装置は20Gの衝撃に耐えられる強度とする。 車椅子側の安全性、固定装置取り付け ・車椅子使用者が走行中も車椅子に着座する場合には、前向き固定、後ろ向き固定を問わず、車椅子が20Gの衝撃に耐えられる強度とする。 ・車椅子側にフック等の固定場所を明示する。 157ページ ヘッドレスト(頭部後傾抑止装置) ・車椅子使用者向けのヘッドレストを用意する(注1)。  前向き固定、後ろ向き固定を問わず、ヘッドレストの高さ、角度等の調整ができるようにする(注2)。 シートベルト ・車椅子使用者の安全を確保するために、シートベルトを設置する。 ・前向き固定:3点式とする。後向き固定:3点又は2点式とする。 ◇:望ましい整備内容 車椅子側の安全性、固定装置取り付け ・車椅子側の装置と車両側の装置がワンタッチで固定できる装置を開発することが望ましい。 注1:ヘッドレストは、車椅子、車両側のいずれかに用意されていること。 注2:車椅子使用者の後頭部が最も突出した部分の少し下から、頚の少し上を支えられるよう、位置調整ができるようにする。 F車椅子、補装具収納場所 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保する。 ・収納スペースは、長さ1,050mm以上×幅350mm以上×高さ900mm以上とする(注1)。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを設置する。 注1:標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法に対応できる収納スペース。 G車椅子マークの表示 ○:標準的な整備内容 車椅子マークの表示による乗車案内 ・車外に、車椅子マークを表示し、移乗又は車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・車外に車椅子マークステッカーを貼り、車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・乗車可能な車椅子の大きさ、形状等について車外等に明示する。 158ページ (4)乗合タクシー @シートレイアウト ○:標準的な整備内容 シートレイアウト ・最大10 人(乗務員を含む)が同時に乗車できることとする。 ・高齢者や障害者等が立ち座りがしやすいように、車内(運転席除く)に横向き座席を設置する。なお車椅子乗降時には後側の一部を跳ね上げとすること。また、横向きシートでは、立ち座りしやすいよう2 席ごとに縦手すりを1 本配置する。 ・郊外において長距離輸送する路線等で用いる場合には、乗車性に鑑み、シートを前向きに配置してもよい。 ◇:望ましい整備内容 シートレイアウト ・乗降ドア直後の座席について、立ち座りしやすいよう縦手すりを1 本配置することが望ましい。 参考例 参考4-3-16:シートレイアウトの事例 159ページ A乗降口 移動等円滑化基準 (乗降口) 第37条  乗降口の踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものでなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 乗降ステップ ・乗降口の踏み段(ステップ)の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいことにより踏み段(ステップ)を容易に識別できるものとする。 ○:標準的な整備内容 乗降ステップ ・踏み段(ステップ)の奥行きは200mm 以上とする。 ・補助ステップと通常ステップの2 段を設け、ステップ高さの差を300mm 以内とする。 ◇:望ましい整備内容 乗降ステップ ・踏み段(ステップ)の奥行きは300mm 以上とすることが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 B乗降口の手すり ○:標準的な整備内容 乗降口の手すり ・乗降口の左右に高齢者、障害者等が両手でつかめる間隔で手すりを設ける。また、横向きシートでは、立ち座りしやすいよう2席ごとに縦手すりを1本配置する。 Cリフト ○:標準的な整備内容 リフト ・乗降口のうち1カ所は、リフト等の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 ・リフトは、使用できるリフト面(プラットフォーム)の広さが、全長1200mm 以上、全幅750mm 以上とする。 ・乗降時に車椅子の落下を防止する装置の設置または同等の対応をする。 ・リフトの誤作動を防止するための安全装置(サイドブレーキを引いていないとリフトが作動しない、リフトの昇降時に障害物検知により自動停止など)を設置する。 ◇:望ましい整備内容 リフト ・車内に車椅子固定場所前方に横の手すりを設置することが望ましい。 ・使用できるリフト面の全幅は800mm 以上が望ましい。 160ページ D室内高さ ○:標準的な整備内容 室内高さ ・容易に移動できるように1500mm 以上とする。 E運賃箱 ◇:望ましい整備内容 運賃箱 ・運賃箱を設置できるようなスペースを確保することが望ましい。 F室内色彩 ○:標準的な整備内容 室内色彩 ・手すり、注意箇所等は高齢者、障害者等にも分かりやすい配色とする。 Gコミュニケーション設備 移動等円滑化基準 (意思疎通を図るための設備) 第42条 バス車両内には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該バス車両内に表示するものとする。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 コミュニケーション設備 ・聴覚・言語障害者とのコミュニケーションの円滑化のために、筆談用具を備える。 H車椅子スペース ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子のスペースを一つ以上設ける。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子のスペースを二つ以上設けることが望ましい。 I車椅子収納場所 ◇:望ましい整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保することが望ましい。 J自動ドア ◇:望ましい整備内容 自動ドア ・乗客の安全性確保のため、自動ドアの作動中にドアノブにふれると自動ドアが閉まる機能が解除されることが望ましい。 161ページ K降車ボタン等 ◇:望ましい整備内容 降車ボタン等 ・降車合図用ブザーを備え、床面1200mm の高さで旅客の手近な位置に備えることが望ましい。 ・車椅子使用者の降車合図用のブザーを車椅子使用者が利用できる位置に備えること。なお、押しボタンは手の不自由な乗客でも使用できるものとすることが望ましい。 L車内表示 ◇:望ましい整備内容 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を容易に確認できるよう次停留所名を表示する装置を車内の見やすい位置に設置することが望ましい。 M車外表示 ◇:望ましい整備内容 車外表示 ・昼間夜間とも視認可能な行き先表示用車外表示装置を車両前面に設置することが望ましい。 N車内放送 ◇:望ましい整備内容 次停留所等の案内放送 ・視覚障害者等に配慮し、次停留所等の情報を音声で得られるようにすることが望ましい。 ・降車ボタンに反応し、停車することが分かるように音声が流れるようにすることが望ましい。 O乗合タクシーマークの表示 ◇:望ましい整備内容 乗合タクシーマークの表示による乗車案内 ・@シートレイアウト、A乗降口、B乗降口の手すり、Cリフト、D室内高さ、F室内色彩、Gコミュニケーション設備、H車椅子スペースにおいて、◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容及び○:標準的な整備内容に適合する乗合タクシー車両については、以下のマークを外部より見やすいように表示することが望ましい。 162ページ (5)肢体不自由者・高齢者等対応(セダンタイプ/回転シート車) ・乗車定員:4〜5名程度 ・車椅子使用者・杖使用者などの肢体不自由者、高齢者などが安全かつ円滑に座席に移乗できるよう回転シートを装備。 ・車椅子、杖、歩行器、歩行車等の補装具はトランクなどに収納。 163ページ @乗降口(セダン) ○:標準的な整備内容 乗降口の広さ ・高齢者、障害者等の乗降の円滑化を図るため、乗降口を可能な限り広くする。 ・乗降補助用ルーフハッチを設置しても良い。 乗降口下の段差 ・後部ドア開口部下部の、床面との段差を少なくする。 乗降口の端部 ・乗降口の端部は、その周囲の部分や路面との明度差が大きいこと等により、高齢者、障害者等が端部を容易に識別しやすいようにする。 床面の材質 ・乗降口付近の床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 足下照明材 ・夜間においても足下が見やすいように、乗降口にはドア開口時に点灯する足下照明灯を設置する。 回転シート ・肢体不自由者の車椅子からの移乗、高齢者等の乗車がしやすいように、シートが回転して車外に出る装置を設置する。 ◇:望ましい整備内容 回転シート ・高齢者、障害者等の利用に配慮し、余裕を持ったレッグスペースを確保することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-3-17:回転シートの例 164ページ A車椅子、補装具収納場所 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条  2 回転シート車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則第一条に規定する設備を備えたものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 折り畳んだ車椅子を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを一以上確保する。 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子を収納するスペースは、折りたたんだ車椅子(標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法は、長さ1,050mm×幅350mm×高さ900mm)が収納できるスペースを確保する。ただし、構造上の理由により十分なスペースを確保できない場合には、折りたたんだ車椅子をトランクに収納した際にトランクの蓋を固定できる用具を設ける。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを確保する。 B車椅子表示 ○:標準的な整備内容 車椅子マークの表示による乗車案内 ・車外に、車椅子マークを表示し、移乗又は車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・乗車可能な車椅子の大きさ、形状等について車外に明示する。 (6)その他のタクシー車両における車椅子等対応(セダンタイプ) @車椅子、補装具収納場所 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保する。 ・ 折りたたんだ車椅子を収納できるスペースが十分に確保できない場合は、折りたたんだ車椅子をトランクに収納した際にトランクの蓋を固定できる用具を設ける。 ◇:望ましい整備内容 車椅子収納スペース ・雨天時に車椅子が濡れないよう配慮することが望ましい。 ・車椅子を収納するスペースは、折りたたんだ車椅子(標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法は、長さ1,050mm×幅350mm×高さ900mm)が収納できるスペースを確保することが望ましい。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを設置することが望ましい。 165ページ 3.2 視覚障害者への対応 @点字表示・音声案内等 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 四 事業者名、車両番号、運賃及び料金その他の情報を音又は点字により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 2  回転シート車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則第一条 に規定する設備を備えたものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 事業者名、車両番号、運賃及び料金その他の情報を音又は点字により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 運賃の点字表示等 ・視覚障害者に配慮し、運賃及び料金その他の情報を点字案内や音案内を行う。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 車両番号の表示等 ・視覚障害者に配慮し、事業者名、車両番号を知らせるため、これらの情報の点字案内や音案内を行う。 注:乗車した車両番号は、忘れ物の問い合わせ等の際に活用できる。 ○:標準的な整備内容 タクシーメーター表示 ・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラストを確保した大きな表示とする。(※「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) 空車表示 ・タクシーの空車ランプ表示は、夜間でも視認可能なものとする。 ・LED表示器の場合は直射日光のもとでも視認可能なものとする。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した大きな表示とする。(※巻末「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) 運賃の音声案内 ・視覚障害者のために、音声によって運賃が確認できるような装置を設置する。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 166ページ 3.3 聴覚障害者への対応 ・聴覚障害者は音声・言語によるコミュニケーションが困難となることから、乗務員とのコミュニケーションに際しては筆談用具などを備える。 @その他の設備、表示 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 五 聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。 2 回転シート車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則第一条 に規定する設備を備えたものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三  聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 聴覚障害者コミュニケーション設備 ・聴覚障害者とのコミュニケーション円滑化のために、筆談用具など文字により意思疎通を図るための設備を備える。 ◇:望ましい整備内容 聴覚障害者コミュニケーション設備 ・使用頻度の高い手話は習得することが望ましい。例:「ありがとうございます」「お待ち下さい」等。 3.4 知的障害者、発達障害者、精神障害者等への対応 @その他の設備、表示 ○:標準的な整備内容 コミュニケーション支援ボード ・言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者・外国人等に配慮し、JIS T0103で 規定されたコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーション支援ボードを準備する。 ※「筆談用具がある旨の表示例」、「JIS T0103 「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」に収載されている絵記号の例」、「コミュニケーションボードの例」は、都市内路線バスのコミュニケーション設備の項(115〜116ページ)を参照。 167ページ 3.5 高齢者・障害者等その他配慮事項 @座席 ○:標準的な整備内容 座席の仕様 ・床面からの高さ、奥行き、背当ての角度、座面の角度等を配慮し、座りやすく、立ち上がりやすいものとする。 A車内の手すり ○:標準的な整備内容 手すりの設置 ・高齢者、障害者等の走行中の安全確保のために、車内に手すりを設置する。 手すりの色 ・夜間や薄暗い時、又は高齢者、ロービジョン者の安全のために、手すりは容易に識別できる配色であること。 ・手すりの色は朱色又は黄赤とする。手すりとその周囲の部分との色の明度差をつける。 手すりの形状 ・高齢者、障害者等が握りやすい形状とする。 ・手すりの径は20〜30mm程度とする。 手すりの材質 ・高齢者、障害者等が握りやすいように、手すりの表面はすべりにくい材質や仕上げとする。 B運賃案内 ○:標準的な整備内容 タクシーメーターの位置 ・タクシーメーターは、後部座席からも見やすい位置に設置する。 ・肢体及び体幹機能障害者の利用者の着座位置からも特段の動作を要することなく視認できる位置にも料金表示 を設置する。 姿図・寸法 参考4-3-18:タクシーメーターの位置の例 168ページ 4.航空機 @可動式ひじ掛け 移動等円滑化基準 (可動式のひじ掛け) 第64条 客席数が三十以上の航空機には、通路に面する客席(構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものを除く。)の半数以上について、通路側に可動式のひじ掛けを設けなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 可動式ひじ掛け ・客席数が30以上の航空機には、通路に面する客席の半数以上について、通路側に可動式のひじ掛けを設ける。(構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものはこの限りではない。) ○:標準的な整備内容 可動式ひじ掛け ・構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものを除き、必要に応じ、通路に面する全ての客席について、可動式のひじ掛けを設ける。ただし、上級クラスの座席において、周辺に十分な移乗スペースがある場合はこの限りではない。 参考例 参考4-4-1:通路側に設置された可動式のひじ掛けの事例 169ページ A機内用車椅子 移動等円滑化基準 (通路) 第63条 客席数が六十以上の航空機の通路は、第六十五条の規定により備え付けられる車椅子を使用する者が円滑に通行することができる構造でなければならない。 (車椅子の備付け) 第65条 客席数が六十以上の航空機には、当該航空機内において利用できる車椅子を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 機内用車椅子の設置 ・客席数が60以上の航空機には、当該航空機内において利用できる車椅子を備える。 参考例 参考4-4-2:航空機の通路を円滑に通行することができる構造の車椅子(アイルチェア)の事例 提供:定期航空協会 B運航情報提供設備 移動等円滑化基準 (運航情報提供設備) 第66条 客席数が三十以上の航空機には、当該航空機の運航に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 運航情報提供設備の設置 ・客席数が30以上の航空機には、当該航空機の運航に関する情報を離着陸時、緊急時等に文字等により表示するための設備及び音声により提供する機内放送設備を備える。 170ページ Cトイレ 移動等円滑化基準 (便所) 第67条 通路が二以上の航空機には、車椅子使用者の円滑な利用に適した構造を有する便所を一以上設けなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子対応トイレの設置 ・通路が2以上の航空機には、車椅子対応トイレを1以上設ける。 ○:標準的な整備内容 ドアの幅 ・ドア幅は、航空機に設置している車椅子の通行を考慮したものとする。 トイレ内部の仕様 ・車椅子対応トイレは、航空機に設置している車椅子のまま出入りすることができ、車椅子から便座(腰掛け式=洋式)への移動を考慮する。 ・車椅子から便座への移動が可能なスペースを確保する。 非常通報装置 ・手の届く範囲に設置する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子使用者が利用可能なトイレの設置 ・通路が1、かつ客席数60以上の航空機には、車椅子使用者が利用可能なトイレを設けることが望ましい。 ドアの幅 ・ドア幅は、航空機に設置している車椅子の通行を考慮したものとする。 トイレ内部の仕様 ・車椅子使用者が利用可能なトイレは、車椅子使用者が(独力又は介助者の介助により)車椅子から便座(腰掛け式=洋式)へ移動できるよう考慮する。 非常通報装置 ・手の届く範囲に設置する。 参考例 参考4-4-3:車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のトイレの事例 171ページ (コラム8) <パッセンジャーボーディングリフト(PBL)車>(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編より) <小型機専用車椅子リフト> <車椅子昇降装置のついたタラップ> <ランプ> <屋根を設置したランプ> 提供:日本エアコミューター株式会社 172ページ バリアフリー基準・ガイドラインの今後検討すべき主な課題  平成28年度及び29年度に「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準等検討委員会」を設置し、学識経験者、高齢者、障害者等関係団体、事業者団体等の参画を得て、バリアフリー基準の改正内容、ガイドライン改訂の主たる検討項目について検討を行った。これを踏まえ、平成29年度に交通エコロジー・モビリティ財団において「バリアフリー整備ガイドライン改訂検討委員会(旅客施設編・車両等編)」を設置し、ガイドライン改訂内容の具体的な検討を行ったところである。  それぞれの委員会の議論の中では、「地方のバリアフリー化」、「誘導案内設備の表示方法」、「ホームと車両の段差・隙間の解消」、「車両の車椅子スペース」、「リフト付きバス」等について多くの意見が出されたが、時間の関係で議論が十分できなかったものもある。 下記に示した主な課題は、今後、見直しを行うにあたって念頭に置くべき事項として記載したものであり、何らかの機会を捉えて検討することが望まれる。 【旅客施設】 1.1日の利用者数3,000人未満の駅のバリアフリー化について 2.誘導案内設備の表示方法等について @サインを表示する際のより適切な書体について Aサインの大きさとロービジョン者が接近して確認できる位置の関係 B床サインの用途と表示方法 C駅等におけるバリアフリールートの適切な表示方法 D駅等の出入口におけるバリアフリールートへの誘導経路の表示 E他事業者・他交通モード間のバリアフリールートの一体的な表示方法 F視覚障害者のエスカレーターへの誘導 Gプラットホームにおける歩行空間の確保と誘導ブロックの敷設方法の考え方(プラットホーム中央に誘導用ブロックを敷設すること等について) H触知案内図のあり方の検討(出入口、改札口近くの触知案内図は視覚障害者にとって有益性が低いという指摘について) 3.情報バリアフリーについて @Webやアプリを作成する際のアクセシビリティへの配慮(分かりやすさの確保(不要な広告の不掲載、用語の統一、インターフェース、音声読み上げ対応等)) A旅客施設並びに鉄道やバス車両内にヒアリングループ(磁気誘導ループ)を導入することについて Bヒアリングループが利用できるエリアを示す統一的な案内用図記号 4.トイレ機能の分散について   @各便房の機能を分かりやすく表示するための案内用図記号 5.拡幅改札口を2カ所設置(入場と出場を別にする)することについて 173ページ 【車両等】 (鉄軌道) 1.プラットホームと車両の段差・隙間の解消について 2.2台目以降の車椅子スペースの長さについて(都市間鉄道) 3.グリーン席にも車椅子スペースを設けることについて(現在は望ましい整備内容)(都市間鉄道) 4.座席の肘掛けを可動式にすることを標準的な整備内容とすることについて(都市間鉄道) (バス) 1.都市内路線バスの運賃箱・カードリーダーの設置位置の検討について(都市内路線バス) 2.リフト付きバスの導入の推進について(都市間路線バス) (航空機) 1.通路が1かつ旅客定員100名以上の航空機の車椅子対応トイレの設置について 174ページ 高齢者・障害者等の主な特性 (1)高齢者  「平成29年版高齢社会白書」によると、1970年には7.1%であった高齢化率(65歳以上の高齢者の比率)は、2016年には27.3%に達しており、2036年には33.3%で国民の3人に1人が65歳以上の高齢者となると予測されている。  高齢者は、身体機能が全般的に低下しているため、明らかに特定の障害がある場合以外は、外見上顕著な特徴が見られないこともある。しかし、程度は軽くても様々な障害が重複している可能性があり、移動全般において身体的・心理的負担を感じていることが多い。  機能低下の内容や程度は様々であり、本人が気づいていないうちに進行していることもある。身体的な機能低下はそれぞれの障害と関連して対応を考えることができる。例えば、耳が遠くなるということは聴覚障害の一部と考えることができ、白内障で視力が低下することは、視覚障害の一部ということができる。  心理面では、体力全体が低下している高齢者は、機敏な動きや、連続した歩行等に自信がなくなり(また、実際に困難になり)、心理的にも気力が低下してくることがある。 ■移動上の困難さ ・人混み、大規模な旅客施設、普段利用しない場所では不安を感じやすい。 ・若い人のように長い距離を歩いたり、素早く行動することが困難な傾向にある。 ・転倒したり、つまずきやすくなり、大きなけがにつながる可能性がある。 ・路線図、運賃表、時刻表などの小さな文字が見えにくい。 ・新しい券売機等の操作がわかりにくい。 ・階段の上り下り、車両の乗降などは、身体的負担が大きい。 ・階段の利用については、上るとき以上に下るときの身体的負担が大きく、不安に感じる。 ・トイレに頻繁に行きたくなる。 ・長時間の立位が困難であり、ベンチなどに座る必要がある。 ・屋外や空調下などでは、水分摂取が適宜行えない等から体温調整が難しい。 等 1)認知症  認知症は加齢に伴い著しく出現率が高まる疾病である。認知症の基本的な症状は単なる「もの忘れ」ではなく、脳の萎縮や血管の病変によって起こる認知・記憶機能の障害である。認知症にはいくつかの原因があり、アルツハイマー病や脳血管性認知症が代表的である。 ■移動上の困難さ ・体験の全部や少し前のことを忘れたり、忘れたことの自覚を伴わない記憶機能の障害がある。 ・自分のいる場所や行き先、時間がわからなくなる見当識の障害がある。 ・徘徊行動をとり旅客施設などに迷い込む場合がある。こうした行動は制止が困難な場合が多い。 等 (2)肢体不自由者(車椅子を使用している場合)  車椅子使用者は、下肢等の切断、脳血管障害、脊髄損傷、脳性麻痺、進行性筋萎縮、リウマ 175ページ チ性疾患等により下肢の機能が失われる(又は低下するなど)こと等により、障害に適した車椅子(手動車椅子、簡易式折りたたみ式電動車椅子、電動車椅子、ハンドル形電動車椅子、(身体支持部のティルト機構やリクライニング機構等を有する)座位変換形車椅子、バギータイプの車椅子等)を使用している。また、一時的なけがによる車椅子の使用も考えられる。 @手動車椅子 A簡易型折りたたみ式電動車椅子 B電動車椅子 Cハンドル形電動車椅子 D座位変換型車椅子 E子供用車椅子(福祉バギー・バギーカー) Fバギータイプの車椅子 周知ポスターの例 @ABDE提供:日進医療器 C提供:電動車いす安全普及協会 F提供:大阪市交通局(現:大阪市高速電気軌道株式会社)    脳血管障害により車椅子を使用している人は、左右いずれかの片麻痺の状態であることが多く、片方の手足で車椅子をコントロールしている場合がある。  脊髄損傷により車椅子を使用している人は、障害の状況により下半身、四肢等の麻痺が生じ、歩行が困難又は不可能になっている。また、便意を感じない、体温調整が困難、床ずれになる等、生活上多くの2次障害を抱えている場合が多い。床ずれを予防するため車椅子のシートにクッションを敷いていることが多い。  脳性麻痺により車椅子を使用している人は、不随意の動きをしたり、手足に硬直が生じていることがあり、細かい作業(切符の購入等)に困難をきたす場合がある。また、言語障害を伴う場合も多くあり、知的障害と重複している場合もある。  進行性筋萎縮症は進行性で筋肉が萎縮する疾患である。進行性のため、徐々に歩行が困難と 176ページ なり車椅子を使用するに至る。首の座りや姿勢を維持するのが難しい場合もあり、筋肉が弱っていることから身体に触れる介助は十分な配慮が必要となる。  リウマチは慢性的に進行する病気で、多くは関節を動かした時に痛みを伴う。関節が破壊されていくため、特に脚などの力のかかる部分は、大きな負担に耐えられなくなる。そのため、症状が重くなると車椅子を使う場合がある。なお、肢体不自由児はバギータイプの車椅子を使用する場合があるため、ベビーカーと混同しないようにする必要がある。 ■移動上の困難さ ・車椅子使用者は、段差や坂道が移動の大きな妨げとなる。 ・移動が円滑に行えない、トイレが使用できない等の問題があることから、外出時の負担が大きい。 ・階段、段差だけでなく、極端な人混み、狭い通路、急なスロープ、長い距離のスロープ、通路の傾斜などの通過も困難となる。 ・券売機の設置位置が高かったり、車椅子のフットサポートが入るスペースが十分でないなど券売機での切符の購入が困難な場合がある。 ・頭の位置が低いために人混みでは周囲の人のバッグなどが顔にあたることがある。 ・視点が常に低い位置にあり、高い位置にあるものが見えにくかったり、手が届かないことがある。 ・上肢に障害がある場合、手腕による巧緻な操作や作業が難しく、エレベーターやトイレ、券売機等の操作ボタン等の操作が困難な場合がある。 ・車椅子(手動車椅子、簡易式折りたたみ式電動車椅子、電動車椅子、ハンドル形電動車椅子、座位変換形車椅子等)が安定的に位置取りかつ動作できるスペースが必要なことがある。  等 (3)肢体不自由者(車椅子使用以外)  杖歩行の場合、スロープでは滑りやすく、また、膝上からの義肢を装着している場合には、膝がないため下肢をまっすぐに踏ん張ることができず、勾配により歩くことが困難となる。加えて、車内では直立時の安定性が低く転倒の危険性があるため、多くの場合、座席が必要となる。  杖歩行以外でも、障害の部位や程度は様々で、その部位によって歩行機能のレベルや求められるニーズが異なる。 ■移動上の困難さ ・階段、段差だけでなく、極端な人混み、狭い通路、スロープ、通路の傾斜などの通過も困難となる。 ・肢体不自由のため杖歩行をしている人は、短距離の移動でも疲労を感じる。ベンチなど休憩する場所を必要とする。 ・松葉杖などを使用している人は、両手がふさがるため、切符の購入や料金の支払いが困難になる場合がある。 等 (4)内部障害者  「平成23年生活のしづらさなどに関する調査結果(厚生労働省)」によると、内部障害者は 177ページ 約93万3百人で、身体障害者386万4千人(知的障害、精神障害を除く)のうち全体の24.1%を占めている。  内部障害は、普段、外見上わかりにくい障害である。全体の半数以上が1級の障害で、心臓疾患がもっとも多く、ついで腎臓疾患である。他の障害に比べ年々増加しているのが大きな特徴である。 1)心臓機能障害  不整脈、狭心症、心筋症等のために心臓機能が低下した障害で、ペースメーカー等を使用している人がいる。 2)呼吸器機能障害  呼吸器系の病気により呼吸機能が低下した障害で、酸素ボンベを携行したり、人工呼吸器(ベンチレーター)を使用している人がいる。 3)腎臓機能障害  腎機能が低下した障害で、定期的な人工透析に通院している人がいる。 4)膀胱・直腸機能障害  膀胱疾患や腸管の通過障害で、腹壁に新たな排泄口(ストーマ)を造設している人がいる。オストメイト(人工肛門や人口膀胱を持つ人)は、トイレの中に補装具(パウチ=排泄物を溜めておく袋)を洗浄できる水洗装置、温水設備等を必要とする。 5)小腸機能障害  小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている人がいる。 6)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害  HIVによって免疫機能が低下した障害で、抗ウィルス剤を服薬している。  上記の内部障害の他にも膠原病や、パーキンソン病、ペーチェット病等の難病も、病気の進行によって、平衡を維持できない場合がある等、日常生活に著しく制約を受ける。 ■移動上の困難さ ・長時間の立位が困難な場合がある。 ・心肺機能の低下等により長い距離を連続して歩くことや階段の昇降が困難な場合がある。 ・携帯電話等の電波によるペースメーカーへの影響が懸念される。 ・障害の部位により、空気の汚染されている場所に近づけないことや、酸素ボンベの携行が必要な場合がある。 ・膀胱・直腸等の機能障害による排泄の問題がある。 ・オストメイトの人のパウチ洗浄設備など、トイレに特別の設備を必要とする場合がある。 等 (5)視覚障害者(全盲・ロービジョン・色覚異常)  「平成23年生活のしづらさなどに関する調査結果(厚生労働省)」によると、視覚障害者は約31万6千人、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の8.2%を占めている。疾病等により後天的に障害となった人が80%と圧倒的に多く、年齢が高くなるほど増加している。  また、色覚異常の人は、日本人の男性の20人に1人、女性は500人に1人の割合で、全国で約320万人程度いると言われている。 178ページ 視覚障害者には、主として音声による情報案内が必要となる。たとえば、運賃や乗り換え経路の案内、駅構内の案内等である。また、ホーム上での適切な誘導による安全確保等、移動の安全を確保することが重要となる。  視覚障害者は、まったく見えない全盲の人だけでなく、光を感じたり物の輪郭等を判断でき、視覚障害者誘導用ブロックや壁面・床面のラインと背景色の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)を目印に外出できるようなロービジョン(弱視とも呼ばれる)と言われる人も少なくない。全盲は視覚に障害のある方の2割程度といわれ、その他はロービジョンとなる。ロービジョンは周囲の明るさや対象物の輝度コントラスト等の状況によって、同じ物でも見え方が異なる場合がある。  ほかに、視野の一部に欠損があり、周囲の情報を十分に視覚的に捉えることができない障害や視力低下、ぼやけて見えにくい、視野狭窄により見えにくい、視野の中心の暗点により見えにくい、明暗の順応に時間がかかる、まぶしく感じて見えにくい等、様々な障害がある。  色覚異常の人は、明度や彩度の似た色の判別が困難となる。また、加齢により色覚機能が低下する人もいることから、今後、高齢化の進展により何らかの色覚異常を有する人が増えるものと見込まれる。 色覚異常の人は、一見異なった色でも同じ明度や彩度の場合見分けることが困難となることがある。例えば、「赤と緑とグレー」、「オレンジと黄緑」は明度が同じであるため、区別することが困難となる場合がある。 逆に、「緑と青緑」の2色は見分けることができる場合がある。このため、旅客施設における案内表示等について、色覚異常の人に対する配慮が必要となる。  視覚障害者が、公共交通機関を利用して外出する時は、目的地への道順、目標物等を事前に学習してから出かけることが一般的である。しかし、日によって屋外空間の状況は変化することから、天候、人の流れ、不意な工事の実施等、いつもと違う環境に遭遇することも少なくない。また、急に初めての場所に出かける必要に迫られることもある。単独歩行に慣れている視覚障害者でも、こうした状況の変化は緊張を強いられ、ともすれば思わぬ危険に遭遇することもある。駅周辺の放置自転車や、コンコースに出店している売店等も注意しなければぶつかるため、周囲の配慮が必要となる。 ■移動上の困難さ ・経路の案内、施設設備の案内、運行情報等、主として音声・音響による情報案内が必要である。 ・視覚障害者はホーム上を歩行する際に転落の危険・不安を感じている。 ・ロービジョン者は、色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)がないと階段のステップや表示などが認識できない場合がある。また、文字表示は大きくはっきりと表示し、近づいて読めることが必要である。 ・色覚異常の人は、線路の案内図や時刻表、路線情報の表示などにおいて、明度や彩度の似た色など、色の組み合わせによりその識別が困難になる場合がある。              等 (6)聴覚・言語障害者  「平成23年生活のしづらさなどに関する調査結果(厚生労働省)」によると、聴覚・言語障害者は約32万4千人、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の8.4%を占めている。 179ページ 聴覚・言語障害者は、コミュニケーションをとる段階になって、初めてその障害に気がつくことが多く、普段は見かけ上わかりにくい。聴覚の障害も個人差が大きく、障害の程度が異なる。特に乳幼児期に失聴するなど、その時期によっては言葉の習得が困難になるため、コミュニケーションが十分に行えない場合もある。聞こえるレベルにより、補聴器でも会話が可能な人もいるが、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時等、うまく聞き取れないこともある。また、重度の聴覚障害の場合には補聴器をつけても人の声を聞き取ることができない場合がある。聞こえないことにより、言葉をうまく発音できない障害を伴うことがある。また、聴覚障害という認識がなくても、高齢になり耳が聞こえにくくなっている場合もある。  聴覚障害者は、公共交通機関を利用するときに、駅の案内放送、発車ベル、車内放送等が聞こえず困難を感じている。電光掲示装置や何らかの視覚的な表示機器を必要としている。アナウンスが聞き取れない、車内に電光掲示装置がない等の状況では、外を見たり、駅名、停留所名表示に常に注意しなければならない。列車の接近音、発車合図が聞こえないことにより、列車に接触しそうになったり、ドアに挟まれそうになったり、危険な思いをすることが少なくない。  聴覚・言語障害者にとって、窓口や案内時におけるコミュニケーションの取り方を習得した職員による、短く簡潔な文章による筆談、できれば簡単な手話等での対応が望まれる。 ■移動上の困難さ ・旅客施設内、ホーム、車内での案内放送が聞こえない場合がある。 ・ホーム等では列車の接近や発車合図に気がつかない場合がある。 ・事故や故障で停止・運休している時の情報が音声放送だけではすぐに得られない。 ・駅の案内放送、発車ベル、車内放送等が聞こえず困難を感じることがある。 ・可変式情報表示装置や何らかの視覚的な表示機器がない駅や車内では不便を感じる。 ・外見で判断することが難しく、周囲が気づきにくいため障害を理解されないことがある。 ・聴こえるレベルにより、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時等、うまく聞き取れないことある。 ・カウンター窓口越しの対応などで相手の表情が見えないとコミュニケーションが取りにくいことがある。                                   等 (7)知的障害者  「平成29年版障害者白書」によると、わが国の知的障害児・者数は、74万1千人であり、年々増加の傾向にある。在宅生活をしている知的障害者は62万2千人である。  知的障害とは、概ね18歳頃までの発達期に脳に何らかの障害が生じたために、「考えたり、理解したり、感情をコントロールしたり、話したり」する等の知的な能力やコミュニケーションに障害が生じ、社会生活への適応能力が同年齢の子供と比べて低いなどの課題を持つ障害である。主な原因として、ダウン症候群など染色体異常によるもの、脳性マヒやてんかんなどの脳の障害がある。また、発達障害を併せもつことが少なくない。  知的障害者は都道府県等より療育手帳(知的障害者福祉手帳)が交付されている。 1)ダウン症  ダウン症は染色体異常を伴う障害である。身体的な特性としては、成長に少し時間がかかる 180ページ ため、出生時から体重、身長とも平均より少なくその後も同年齢の平均に比べ小さい等の特徴がある。 ■傾向 ・利用上のルールや常識が理解できにくいことがある。 ・一度にたくさんのことを言われると混乱することがある。 ・困ったことが起きても、自分から人に助けを求めることができない人もいる。 ・コミュニケーションに際しては、ゆっくり、ていねいに、わかりやすく説明することが必要となる。 等 (8)精神障害者  「平成29年版障害者白書」によると、わが国の精神障害者は392万4千人であり、年々増加の傾向にある。在宅生活をしている精神障害者は267万5千人、施設に入所している精神障害者は392万4千人である。 1)統合失調症  約1%の発病率で身近な病気である。日本では約67万人が治療を受け、20万人以上が入院生活を送っている。  不眠やあせりの気持ちがひどくなり、つらい気持ちになるが、治療を受け十分な休養とって規則正しい生活のリズムを作ると、回復へ向かう。 2)うつ病  うつ病は、ストレスにさらされれば誰でもなる可能性がある。大きな悲しみ、失敗等が原因で、食欲の低下や不眠を招くことがあるが、うつ病はこれが重症化し、そのまま治らなくなったり、治りにくくなった状態である。 まれに高揚状態(そう)があらわれる人もいる。 3)てんかん  脳内に正常よりも強い電気的変化が突発的に生ずることにより、意識障害やけいれんの発作が起きる病気で、規則的に服薬を続けると大部分は発作を防げるようになる。また、手術で根治する場合もある。一部に発作をコントロールできず、発作が繰り返されることがあるが、発作は通常2〜3分でおさまる。まれに発作が強くなったり、弱くなったりしながら長時間つづく「発作重積」と呼ばれる状態がある。 ■傾向 ・ひとりで外出する時や、新しいことを経験するときは、緊張し、不安を感じやすい。 ・腹痛や吐き気を催すときがあるので、トイレの近くに座るようにしている人や、喫煙によりストレスの解消を図ろうとする人がいる。 ・関係念慮(本来自分とは関係のないことを自分に関係づけて考えたり感じたりする。)が強く外出することが困難な人もいる。 ・のどの渇き、服薬のため水飲み場を必要とする人もいる。 等 (9)発達障害者  ここでは発達障害者支援法の定義に拠る。 181ページ 発達障害は、平成 17 年 4 月に「発達障害者支援法」が施行され、公的支援の対象となった。同法では発達障害とは広汎性発達障害(自閉症等)、学習障害、注意欠陥多動性障害等、通常低年齢で発現する脳機能の障害とされている。 1)広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー症候群) 自閉症は、人との関わりが苦手、コミュニケーションが上手にとれない、興味や関心の範囲が狭く特定の物や行為へこだわりを示すなどの特徴がある。高機能自閉症やアスペルガー症候群は、自閉症の特徴をもちながらも言葉の遅れを伴わないので、障害に気づくことが更に遅れやすいと言われている。これらの障害を総称して広汎性発達障害又は自閉症スペクトラムともいう。 2)学習障害(LD) 学習能力(読み・書き・計算等)の一領域のみが他に比べて著しく発達が遅れている場合、学習障害と診断される。 3)注意欠陥多動性障害(AD/HD)  注意欠陥多動性障害は、適切に注意や関心を持続することが困難、外からの刺激に衝動的に反応しやすい、自分の感情や行動をうまくコントロールできないといった行動がみられる。 ■移動上の困難さ ・外見で判断することが難しく、周囲が気づきにくいため障害を理解されないことがある。 ・利用上のルールや常識が理解できにくいことがある。 ・大声をだしたり騒いだりする人もいる。 ・環境の変化を理解し対応することが困難なので、ごくわずかな変化にも対応できないことがあり、例えば行き先の変更や時間の遅れがあった場合に困惑する。 ・場面にあった会話や行動ができず、周囲から浮いてしまうことがある。 ・気持ちをうまく伝えられないために、コミュニケーションがとれないことがある。 ・流れる文字や情報表示の転換が早いときには情報取得が困難となる。 ・匂い、光、音、温度等に対して感覚過敏や感覚鈍麻がある場合がある。 ・聴いても理解できなかったり、時刻表が読めない人もいる。 ・「不注意」「多動性」「衝動性」の行動特徴があり、車内で座席にずっと座っていることができない人もいる。 ■困りごとが生じる具体的な状況と求められる対応 @情報提供方法の配慮事項 ・案内表示などが連続して提示されていないと迷ってしまうことがある。また、サインが複雑に感じられると混乱し、理解しづらい人がいる。例えば、文字や音声など異なる方法で情報が提示され、それらが重なり合っている場合、それぞれの表記や表現の仕方が一致しない場合に、どちらが正しいか判断に迷い混乱してしまう人がいる。 ・案内文が長い、表現の一部が省略されている、LEDを用いて文字をスクロールさせているなどの場合には、情報を適切に把握できない人がいる。 ・一方で、情報を得るために用いる方法には個人差があり、情報提供の方法が限られていると、適切に情報を得られない人がいる。 ・電車の遅延などで通常と異なる状況の時には何が起きたか把握できず、どのような行動をとるべきかわからずに混乱してしまう人がいる。 182ページ 対応として】 ・サインが発見しやすいように表示の内容や設置する間隔を適切なものとすること、職員の配置を工夫すること等により、移動の連続性を確保する。 ・人により情報を得るための方法が異なるため、複数の方法で簡潔な情報を提供する。 ・必要な情報が確実に伝わるようにするためには、簡潔な情報を繰り返し提供することが有効である。また、同じ情報を伝える場合に、文字と音声で表記・表現が異なると理解しにくいため、提供する情報の表現は一致させることが望ましい。 A錯覚を生じさせやすいデザインや誤解につながるデザインを回避する配慮事項 ・通路の床面の色やデザインによっては錯覚(段や溝に見える)を起こして、不安を感じるため、その場で立ち止まってしまう人がいる。 【対応として】 ・色や模様の採用に当たり、錯覚を生じないか確認する。 B音・光環境の配慮事項 ・音量や提示速度の異なる音声案内が重なる、高い輝度や多彩な色で画像や動画を表示する商業広告は、耳や目から一度に入る情報量が過多となりストレスを感じる人がいる。 【対応として】 ・音の重なりや反響を考慮した機器の選択や配置、それらを軽減する素材を建築材に使用することを検討する。 ・目から入る刺激が混乱の原因とならないように、照明や広告表示の輝度や配置に配慮する。 Cカームダウン(クールダウン)の配慮事項 ・発達障害者は、周囲から理解されにくく、注意・叱責を受けることがある。本人が状況を理解できないまま、反復して注意されると興奮してしまうことがある。この場合、しばらく時間をおき、気持ちが落ち着いてから、「どうしたのか?」と尋ねることで、冷静に自分の行動を振り返ることができる。この対応をカームダウン(クールダウン)という。 ・旅客施設の利用時は、様々な視覚情報、音声情報及び騒音・雑音などが重なることで感覚に対する反応が過敏となること、天候の影響や事故の影響による電車の遅延など不測の事態が生じた場合等にパニックになることがある。そのような場合においてもカームダウン(クールダウン)の対応が有効となる。 【対応として】 ・カームダウン(クールダウン)のスペースを用意することが効果的な場合がある。駅事務室等の活用の他、パーティション等で視線を遮れるような空間があるだけでも有効な場合がある。 (10)高次脳機能障害 交通事故や病気等により脳に損傷を受け、その後遺症等として記憶、注意、社会的行動といった認知機能(高次脳機能)が低下した状態を高次脳機能障害という。高次脳機能障害は日常生活の中で現れ、外見からは障害があると分かりにくく、「見えない障害」や「隠れた障害」などと言われている。(出典:障害者白書より) 183ページ ■移動上の困難さ ・注意障害や身体失認等による狭いホームの移動時に転落の危険がある。 ・降りる駅に気づけずに乗り過ごしてしまう。 ・乗り過ごしたことに気づいても対処することが難しい。 ・停車している駅がどこだか分からない。 ・必要な表示や案内を見つけられない。探すのに時間がかかる。 ・案内表示を見ても理解できないことがある。 ・緊急時のアナウンス等を理解することが困難な場合があり、状況が把握できずに混乱する。 等 (国リハヒアリングの内容より) ■困りごとが生じる具体的な状況と求められる対応 @ホーム上での配慮事項 ・半側空間無視、注意障害の症状がある場合、プラットホームを移動する際に転落や人・ものにぶつかる危険や人ごみの合間を縫って歩くことが難しいことによる転倒の危険がある。 【対応として】 ・ホームドアや柵の整備が有効である。 A情報提供の配慮事項 ・サインそのものを見つけることの難しい人がいる。また、注意障害、半側空間無視、失語、失認等の症状によりサインを見つけたあとに内容を読み取ることの難しさがある。例えば、失語では、言語(文字言語・音声言語)が苦手な人が多く、失認では、図(路線図、矢印や絵文字等)が苦手な人が多い。 ・電車の遅延などで通常と異なる状況の時には何が起きたか把握できなかったり、どのようにすればよいかわからなかったりして混乱してしまう人がでることがある。 【対応として】 ・注意障害、半側空間無視、失語、失認の症状がある場合、サインを統一的なデザインとすること、見つけやすい配置とすることが重要である。また、遂行機能障害の症状がある場合、見通しを立てることが難しいことが多いため、目的地までの距離の併記は有効である。 ・必要な情報が確実に伝わるようにするためには、簡潔に要点をまとめ、繰り返し情報を提供する方法が有効である。また、情報の内容が同じ場合でも文字と音声で表記・表現が異なると把握が難しくなる人がいるため、提供する情報の表現は一致させる。 等 (11)妊娠中・乳幼児連れ(ベビーカー使用者など)の人  妊娠中の人やベビーカーを使用している人、子どもを抱いている人は、円滑な移動のためには、さまざまな配慮が必要となる。  特に、妊娠初期の人は、赤ちゃんの成長やお母さんの健康を維持するための大切な時期であるものの、外見からはわかりにくいため特段の配慮が必要となる。また、他の人に迷惑をかけてしまうことを恐れたり、公共交通機関の利用を躊躇してしまうといった心理的なバリアが存在している場合がある。 ■移動上の困難さ ・妊娠初期は外見からはわかりにくいため、体調が優れない場合でも優先座席の利用がしにくい。 ・長時間立っているのが困難な場合がある。 ・長い距離を連続して歩くことや階段の昇降が困難な場合がある。 ・妊娠中でお腹が大きくなった人は足元が見えにくくなるため、階段を下りることが非常に 184ページ 困難となる。 ・人ごみの中で移動しにくい。 ・ベビーカーを畳んで子どもを抱えなくては行けない場合、特にバランスを崩しやすく危険である。 ・ベビーカーや大きな荷物を持っている場合、また子どもが不意な行動をとる場合などに他の人の迷惑になったり、危険な場合があるため、公共交通機関の利用に心理的なバリアを感じている。 等 (12)外国人  日本語による情報を理解することが困難である。日本語によるコミュニケーションが困難である。日本政府観光庁より、2018年1月の訪日外客数は250万1千人であり、2020年の東京オリンピック・パラリピックも考慮すると更なる増客が見込まれる。英語表記やその他の外国語による表記、言語の違いによらない図記号(ピクトグラム)や数字・アルファベットなどを用いた表示が有効である。 (13)一時的な怪我をした人や大きな荷物を持った人  海外旅行用トランクやカートなどの大きな荷物を持ったまま、あるいは怪我をして公共交通機関を利用する場合に、階段や段差の移動、長距離の移動が困難となることがある。 (14)病気の人 病気の人は、病気の種類や状況によって身体機能が全般的に低下し、階段や段差の移動、長距離の移動が困難となることがある。また、移動中において服薬や注射などを必要とする場合がある。 (参考)上記の「高齢者・障害者の主な特性」を参照のうえ、個々の障害に対応したニーズを的確に把握し、障害の特性に応じた適切な対応が求められる。一方でWHO(世界保健機関)では、ICF(国際機能分類)という考え方が採択されている。これは、人間の生活機能と障害について「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つの次元及び影響を及ぼす「環境因子」等の因子で構成されるもので、例えばバリアフリー整備による環境評価も含めた機能分類を行うことができる。今後の新たなバリアフリー化のための技術開発など、障害の理解並びにバリアフリー促進の視点から、ICFの適切な活用方策の検討が望まれる。 (詳しくは厚生労働省資料等を参照されたい) (高齢者・障害者等の主な特性を記載するにあたって参考とした主な文献) ・内閣府編「平成29年版 障害者白書」、2017年 ・内閣府編「平成29年版 高齢社会白書」、2017年 ・シルバーサービス振興会編「ケア輸送サービス従事者研修用テキスト 平成17年7月改訂」中央法規出版、2005年 ・国土交通省「ゆっくり「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」 −知的障害、精神障害のあるお客様への応対−」、2004年 ・全国視覚障害者情報提供施設協議会編「視覚障害者介護技術シリーズ3 初めてのガイド」、1999年 185ページ ・直居鉄監修「新版 視覚障害者の介護技術 −介護福祉士のために−」YNT企画、1999年 ・大倉元宏編著、村上琢磨「目の不自由な方にあなたの腕を貸してください −オリエンテーションとモビリティの理解−」財団法人労働科学研究所、2000年 ・E&Cプロジェクト編「“音”を見たことありますか?」小学館、1996年 ・厚生省大臣官房傷害保険福祉部企画課監修「障害者ケアマネジャー養成テキスト 身体障害編」中央法規出版、1999年 ・山縣文治、柏女霊峰編集委員代表「社会福祉用語辞典 第6版 −福祉新時代の新しいスタンダード」ミネルヴァ書房、2007年 ・『21世紀のろう者像』編集委員会編「21世紀のろう者像」財団法人全日本ろうあ連盟出版局、2005年 ・介護予防に関するテキスト等調査研究委員会編、厚生労働省老健局計画課監修、「介護予防研修テキスト」株式会社社会保険研究所、2001年 186ページ 公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン (バリアフリー整備ガイドライン 車両等編) 平成30年(2018年)7月 発行 国土交通省総合政策局安心生活政策課 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 電話:03-5253-8111(代表) FAX:03-5253-1552