公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインバリアフリー整備ガイドライン 車両等編 平成25年10月 監修 国土交通省総合政策局安心生活政策課 発行 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 はじめに このたび「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン(略称:バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)」、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン(略称:バリアフリー整備ガイドライン車両等編)」の改訂版を発行する運びとなりました。まずは、ご尽力頂いた関係者の皆様に心からお礼申し上げます。 交通バリアフリー法が平成12年に施行され、その後ハートビル法と一体化した新法のバリアフリー法(「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」平成18年)となって8年が経過しました。この法律により旅客施設、道路、建築物などの一体的、面的な整備が進められ、高齢者、障害者を含めたより多くの人々が暮らしやすい環境を実現するための努力が交通事業者をはじめとする関係者により続けられています。 バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編は、昭和58年に策定された「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」から、平成6年、平成13年、平成19年の改訂を経て今回で5版目の発行となります。また、車両等編は平成2年の「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」を最初に平成13年、平成19年の改訂を経て、途中モデルデザインからガイドラインに名称を変更し、今回で4版目の発行となります。 このたびの見直しは、平成24年1月に国土交通省で公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会を立ち上げ、旅客施設及び車両の小委員会を経て、数次にわたる委員会での検討結果を反映したものであります。今般の改訂にあたっては、かねてから指摘されていた課題への対応、新たな技術開発や研究結果などの知見を取り入れるなど、現時点で対応すべきものをとりまとめました。一方で、クリアすべき問題点との関係では今後の更なる検討に委ねざるを得なかったものもありますが、スパイラルアップの考えに基づいて絶えず改善を重ねる中で解決されていくべきものと考えます。 この冊子は国土交通省が平成25年6月に公表したバリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編、車両等編)を国土交通省総合政策局安心生活政策課の監修のもと、小委員会を主催した当財団より発行するに至ったものです。関係者の皆様には、この冊子を活用して、引き続きより良いバリアフリー整備に取り組んで頂くことを期待したいと思います。 最後に、本ガイドライン策定に向けて終始熱心にご議論頂いた委員各位、資料の提供やヒアリング等にご協力頂いた関係各位、また検討委員会並びに旅客施設の小委員会の議論をとりまとめて頂いた秋山哲男委員長、車両の小委員会の議論をとりまとめて頂いた鎌田実委員長に改めて感謝の意を表します。 平成25年10月 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 会長 岩村 敬 公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会 委員名簿 (委員は五十音順) 委員長 秋山哲男 北星学園大学客員教授 委員 赤瀬 達三 公共デザイン学研究者・元千葉大学大学院教授 浅野義行 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会車両部会長 (豊田克孝 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会車両部会長) 阿部竜矢 国土交通省自動車局総務課企画室長 (山田輝希 国土交通省自動車局総務課企画室長) 阿部亮 東日本旅客鉄道株式会社鉄道事業本部設備部次長 (有山伸司 東日本旅客鉄道株式会社鉄道事業本部設備部担当部長) 石山齊 社団法人全国空港ビル協会常務理事 池田薫 国土交通省航空局航空ネットワーク部空港施設課長 伊藤健次 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構鉄道建設本部設備部建築課長 井上勝徳 国土交通省住宅局建築指導課長 江角直樹 国土交通省自動車局技術政策課長 (和迩健二 国土交通省自動車局技術政策課長) 岡野俊豪 一般社団法人日本自動車工業会安全環境技術委員会大型車部会バス分科会長 岡本八重子 社団法人全国乗用自動車連合会理事 鎌田実 東京大学高齢社会総合研究機構教授・機構長 川内美彦 東洋大学ライフデザイン学部教授 川村泰利 一般財団法人全国福祉輸送サービス協会副会長 瓦林康人 国土交通省海事局内航課長 北村不二夫 国土交通省鉄道局技術企画課長 栢沼史好 定期航空協会部長 (日下部稔 定期航空協会部長) 久保田雅晴 国土交通省航空局航空ネットワーク部航空事業課長 黒田憲司 国土交通省道路局路政課長 児玉芳記 一般社団法人日本自動車工業会流通委員会福祉車両部会長 齋藤秀樹 財団法人全国老人クラブ連合会理事・事務局長 鈴木昭久 国土交通省自動車局旅客課長 鈴木浩明 公益財団法人鉄道総合技術研究所人間科学研究部部長 須田義大 東京大学生産技術研究所教授 関喜一 独立行政法人産業技術総合研究所アクセシブルデザイン研究グループ主任研究員 竹下義樹 社会福祉法人日本盲人会連合会長 (笹川吉彦 社会福祉法人全日本盲人会連合会長) 高田達 社団法人日本旅客船協会業務部長 橋儀平 東洋大学ライフデザイン学部教授・学部長 竹田浩三 国土交通省鉄道局鉄道業務政策課長 田中徹二 社会福祉法人日本点字図書館理事長 妻屋明  社団法人全国脊髄損傷者連合会理事長 藤堂栄子 一般社団法人日本発達障害ネットワーク理事 仲條直樹 一般社団法人日本自動車車体工業会バス部会技術委員長 中野泰志 慶応義塾大学経済学部教授 中村豊四郎 アール・イー・アイ株式会社代表取締役 平原祐 国土交通省海事局安全基準課長 藤井直人 神奈川県立保健福祉大学非常勤講師 藤井高明 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会土木部会長 藤村賢治 社団法人公営交通事業協会業務部長 堀川洋 社団法人日本港湾協会事務局長 堀口寿広 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会精神保健研究部家族・地域研究室室長 松永康男 国土交通省港湾局技術企画課技術監理室長 (渡邊和重 国土交通省港湾局技術企画課技術監理室長) 松本紫穂 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会広報誌「ステージ」編集委員 松本正志 財団法人全日本聾唖連盟理事 (太田陽介 財団法人全日本聾唖連盟理事) 三澤了 特定非営利活動法人DPI日本会議議長 三星昭宏 関西福祉科学大学客員教授・近畿大学名誉教授 宮崎恵子 独立行政法人海上技術安全研究所運航・システム研究グループ上席研究員 森昌文 国土交通省道路局企画課長 森祐司 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会常務理事 安元杏 主婦連合会常任委員 山口一朗 国土交通省総合政策局安心生活政策課長 山下博 公益社団法人日本バス協会技術安全部長 山田稔 茨城大学工学部都市システム工学科准教授 横原寛 日本バスターミナル協会長 (福島八束 日本バスターミナル協会長) 良田かおり 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会事務局長 与田俊和 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 理事長 ( )内は前任者 公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン小委員会委員名簿 (委員は五十音順) 委員長 鎌田実 東京大学高齢社会総合研究機構教授・機構長 委員 秋山哲男 北星学園大学客員教授 井田博敏 社団法人鉄道車輌工業会技術部部長代理 今福義明 特定非営利活動法人DPI日本会議交通問題担当 大熊昭 国土交通省総合政策局安心生活政策課交通バリアフリー政策室長 岡野俊豪 一般社団法人日本自動車工業会安全環境技術委員会バス分科会長 加藤貴之 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会車両部会長会社担当課長 (瀬谷明彦 一般社団法人日本民営鉄道協会技術委員会車両部会長会社担当課長) 栢沼史好 定期航空協会部長 (日下部稔 定期航空協会部長) 川内美彦 東洋大学ライフデザイン学部教授 河村多計士 東日本旅客鉄道株式会社鉄道事業本部運輸車両部設計技術管理グループ課長 川村泰利 一般財団法人全国福祉輸送サービス協会副会長 北川博巳 兵庫県立福祉のまちづくり研究所第一研究グループグループ長 駒場玲子 埼玉県老人クラブ連合会理事・女性委員会委員長(全国老人クラブ連合会) 小出真一郎 財団法人全日本聾唖連盟理事 (太田陽介 財団法人全日本聾唖連盟理事) 児玉芳記 一般社団法人日本自動車工業会流通委員会福祉車両部会長 権藤宗高 国土交通省鉄道局技術企画課課長補佐 斎藤綾乃 公益財団法人鉄道技術総合研究所人間科学研究部主任研究員 庄司郁 国土交通省航空局航空ネットワーク部航空事業課課長補佐 菅原勝良 国土交通省海事局内航課旅客航路活性化推進室課長補佐 鈴木孝幸 社会福祉法人日本盲人会連合会副会長 須田義大 東京大学生産技術研究所教授 関喜一 独立行政法人産業技術総合研究所アクセシブルデザイン研究グループ主任研究員 高嶺研一 国土交通省海事局安全基準課課長補佐 谷口礼史 国土交通省自動車局旅客課地域交通政策企画官 武田一寧 国土交通省自動車局総務課企画室財務企画調整官 (門元政治 国土交通省自動車局総務課企画室財務企画調整官) 田中徹二 社会福祉法人日本点字図書館理事長 高田達 社団法人日本旅客船協会事業部長 妻屋明 社団法人全国脊髄損傷者連合会理事長 藤堂栄子 一般社団法人日本発達障害ネットワーク理事 仲條直樹 一般社団法人日本自動車車体工業会バス部会技術委員長 平井晃 横浜市身体障害者団体連合会理事長(日本身体障害者団体連合会)  平澤崇裕 国土交通省自動車局技術政策課課長補佐 (佐橋真人 国土交通省自動車局技術政策課課長補佐) 藤井直人 神奈川県立保健福祉大学非常勤講師 藤村賢治 社団法人公営交通事業協会業務部長 堀口寿広 国立精神・神経センター精神保健研究所室長 松本紫穂 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会広報誌「ステージ」編集委員 宮崎恵子 独立行政法人海上技術安全研究所運航・物流系運航解析技術研究グループ上席研究員 安元杏 主婦連合会常任委員 山下博 公益社団法人日本バス協会技術安全部長 山田稔 茨城大学工学部都市システム工学科准教授 良田かおり 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会事務局長 吉村幸治 社団法人全国乗用自動車連合会業務課長 ( )内は前任者 目次 公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会 委員名簿 公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン小委員会委員名簿 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方 1 1.移動等円滑化整備ガイドラインの活用にあたって3 1.1ガイドラインの策定・改訂の背景3 1.2ガイドラインの位置づけ4 1.3対象車両等と対象者5 2.移動等円滑化整備の基本的な考え方7 2.1移動等円滑化の目的7 2.2移動可能な環境づくり7 2.3一体的・統合的な整備の方針7 3.ガイドライン整備の経路・施設配置・情報提供等の具体的な考え方9 3.1移動経路確保の考え方9 3.2旅客施設と車両等における施設・設備配置の考え方9 3.3情報提供の考え方10 4.移動等円滑化整備に関連した連携協力11 第2部 旅客施設共通ガイドライン 第3部 個別の旅客施設に関するガイドライン 第2部、第3部は別冊「公共交通機関の旅客施設等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」 第4部 個別の車両等に関するガイドライン17 1.鉄軌道19 1.1通勤型(短距離)鉄道・地下鉄20 1.2都市間鉄道55 1.3モノレール・新交通システム75 1.4軌道車両・低床式軌道車両75 1.5その他の鉄道81 2.バス82 2.1都市内路線バス82 2.2都市間路線バス(高速・リムジンバス)117 3.タクシー130 3.1車椅子等対応133 (1)大型電動車椅子・ストレッチャー(寝台)等対応(バンタイプ/リフト車)133 (2)車椅子対応(ミニバン・軽自動車タイプ/スロープ車・リフト車)142 (3)ユニバーサルデザインタクシー52 (4)乗合タクシー162 (5)肢体不自由者・高齢者等対応(セダンタイプ/回転シート車)167 (6)その他のタクシー車両における車椅子等対応(セダンタイプ)170 3.2視覚障害者への対応171 3.3聴覚障害者への対応173 3.4知的障害者、発達障害者、精神障害者への対応174 3.5高齢者・障害者等その他配慮事項175 4.航空機177 5.旅客船180 参考 色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ181 高齢者・障害者の主な特性 184 おわりに 〜移動等円滑化整備の基本的な考え方に基づく整備に向けて〜183 資料編 関係法令集 ※このテキストデータの目次にあるページ番号は冊子版に合わせている。冊子版のページ番号をテキストデータの当該部分の冒頭に表示している。 ※参考図版の番号については、原則として部、章、個別番号の3ケタ表示とした。 例 参考4-1-3(=第4部・第1章鉄軌道内に示された3つ目の参考図) 本テキスト版では、参考番号、タイトル及び当該参考図版等の説明等の文字のみ掲載し、図版等は省略している。 1ページ 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方 3ページ 第1部 公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方 1.移動等円滑化整備ガイドラインの活用にあたって 1.1ガイドライン策定・改訂の背景 平成12年11月に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が施行され、公共交通機関の旅客施設、車両等の移動円滑化を促進することが定められた。 その後、施策の拡充を図るため、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)と交通バリアフリー法を一体化し、平成18年12月20日に新たに「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)が施行された。この法律は、それまで対象とされていた高齢者や身体障害者のみならず、知的障害、精神障害、発達障害など全ての障害者を対象に加え、@公共交通機関(旅客施設・車両等)、道路、路外駐車場、都市公園、建築物を新設等する場合においては、一定のバリアフリー化基準(移動等円滑化基準)に適合させなければならないこと、A市町村が作成する基本構想に基づき、旅客施設、建築物等及びこれらの間の経路の移動等円滑化を重点的かつ一体的に推進すること等を内容としたものであり、同法に基づいて、公共交通事業者等が旅客施設や車両等を新たに整備・導入等する際に義務として遵守すべき基準である「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令」(移動等円滑化基準)等が定められている。 「公共交通機関の旅客施設の移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)は、昭和58年に策定された「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」以降、平成6年、平成13年、平成19年と3回の改訂を行っており、今回は4回目の改訂となる。 一方、「公共交通機関の車両等の移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン車両等編)は、平成2年に策定された「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」以降、平成13年、平成19年の改訂に続く3回目の改訂となる。 平成23年3月31日には「移動等円滑化の促進に関する基本方針」が改正されて平成32年度末までの新たな移動等円滑化の目標(移動等円滑化された車両の割合及び台数の引き上げ等)が示された。今般の公共交通機関の旅客施設・車両等の移動等円滑化整備ガイドラインの改訂は、移動等円滑化の進展や問題点等を踏まえ、現行ガイドラインで課題となっていた事項、技術水準の向上によってより良い整備が可能になった事項、ニーズの変化等を見据え、バリアフリー法のスパイラルアップを具体化するため、必要な見直しを行うこととしたものである。 4ページ 1.2ガイドラインの位置づけ (1)ガイドラインの内容と趣旨 移動等円滑化基準は、公共交通事業者等が旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際に義務基準として遵守しなければならない内容を示したものである。 一方で、本整備ガイドラインは、公共交通事業者等が、旅客施設及び車両等を新たに整備・導入等する際、高齢者、障害者等をはじめとした多様な利用者の多彩なニーズに応えるため、旅客施設及び車両等の整備のあり方を具体的に示した目安である。そのため、移動等円滑化基準に基づく整備内容を除いて、公共交通事業者等は本整備ガイドラインに従うことを義務付けられるものではないが、旅客施設及び車両等の新設、新造、大規模な改修等の機会をとらえて、高齢者や障害者等を含む全ての人が利用しやすい公共交通機関の実現に向け、本整備ガイドラインを活用願いたい。 なお、実際の整備においては、構造上の制約等により本整備ガイドラインに沿った整備が困難な場合も考えられる。上述の本整備ガイドラインの性格から、移動等円滑化基準に基づく整備内容を除き個々の内容ごとに例外的条項は記述していないが、各公共交通事業者等が、地域性、施設利用状況等の特性、整備財源等を勘案し、「2.移動等円滑化整備の基本的な考え方」をはじめとする本整備ガイドラインに示された考え方や根拠を理解のうえ、整備水準を主体的に判断し、利用者等の意見も十分勘案したうえで、より多くの利用者のニーズに対応できる移動環境としての公共交通インフラの実現を通じて、広く社会活動を支える有効な基盤となることを念頭に置いた移動等円滑化の促進が望まれる。 (2)ガイドラインの構成 本整備ガイドラインは、上記の趣旨に鑑み以下の構成で編集されている。 各整備箇所に関して、整備にあたっての考え方を示した上で、義務となる移動等円滑化基準、具体化にあたって考慮すべき整備の内容を「移動等円滑化基準に基づく整備内容」、これに準じて積極的に整備することが求められる「標準的な整備内容」、さらに高い水準を求める「望ましい整備内容」に分けて記載している(図1-1-1)。 「移動等円滑化基準に基づく整備内容」(◎) 移動等円滑化基準に基づく最低限の円滑な移動等を実現するための内容の記述を行ったものであり、記号“◎”(二重丸)で示す。 「標準的な整備内容」(○) 社会的な変化や社会的要請に合わせた整備内容のうち標準的な整備内容で、積極的に整備を行うことが求められるものであり、記号“○”(丸)で示す。 「望ましい整備内容」(◇) 上記の整備を行ったうえで、移動等円滑化基準に基づく整備内容(◎)、標準的な整備内容(○)より、さらに円滑な移動等を実現するための移動等円滑化や、利用者の利便性・快適性への配慮を行った内容のものであり、記号“◇”(四角)で示す。 5ページ 図1-1-1 ガイドライン改訂前後の構成の比較 注)区分の仕方とは別に、整備対象によっては、「望ましい整備内容」から「標準的な整備内容」に変更になった事項、新たに「望ましい整備内容」に記述された事項(    )がある。 なお、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満の旅客施設においても、利用状況などに配慮しつつ、本整備ガイドラインに沿って移動等円滑化を進めることが望まれる。また、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満で係員が配置されていない既存の鉄軌道駅では、巻末「参考」(3,000人未満の無人鉄軌道駅における配慮事項)に示した配慮事項を踏まえた施設整備が望まれる。 1.3 対象車両等と対象者 (1)対象施設及び車両等 「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン車両等編)が対象とする車両等は、バリアフリー法に定められた車両等のうち鉄道車両・軌道車両、バス車両、福祉タクシー車両、航空機である。また、バリアフリー法の対象ではない一般タクシー車両についても配慮すべき内容を記載している。なお、船舶の各部位の構造及び設備に関するガイドラインは「旅客船バリアフリーガイドライン」を目安とした移動等円滑化整備が望まれる。旅客施設については、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編)に基づくこととなる。公共交通機関の移動等円滑化に関しては、それぞれのガイドラインを目安として整備し、移動等円滑化の推進に努めることが望まれる。 なお、平成23年3月31日に「移動等円滑化の促進に関する基本方針」が改正され、平成32年度末までの新たな移動等円滑化の目標(移動等円滑化の対象旅客施設を1日平均利用者数3,000人以上に拡大すること、移動等円滑化された車両の割合及び台数の引き上げ)が示された。 バリアフリーガイドライン(旅客施設編)は、1日平均利用者数3,000人以上の施設を念頭に記載しているが、3,000人未満の施設も含め、すべての旅客施設を対象としている。利用者数が少ない旅客施設においても、本整備ガイドラインを目安とした整備を行うことが望ましい。 6ページ 車両等については、鉄軌道車両は70%を移動円滑化し、バスではノンステップバスの導入目標が70%、これまで目標値が無かったリフト付きバス等が25%となった。タクシーは福祉タクシー車両の導入目標28,000台が設定された。航空機については90%の目標値が設定された。これらの目標値に向けた努力がなされているところであるが、達成可能なところでは目標値を超える積極的な整備が望まれる。 また、利用者数の特に多い旅客施設、複数の路線が入る旅客施設、複数事業者の旅客施設が存在する施設、旅客施設以外の施設との複合施設等では、利用者数の規模や空間の複雑さ等を勘案して、特別な配慮を行うことが求められる。具体的な内容は、旅客施設編では「第2部」(旅客施設共通ガイドライン)、「第3部」(個別の旅客施設に関するガイドライン)、車両等編では「第4部」(個別の車両等に関するガイドライン)に掲載している。 (2)対象者 本整備ガイドラインに基づく施策の主な対象者は、高齢者、障害者等の移動制約者を念頭におきつつ、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方にも配慮している(表1-1-1)。なお、本表は主な障害等について属性ごとに列挙したものである。利用者の具体的な特性等については、移動等の際に発生しうるニーズで整理する考え方も有効である。そのため、図1-2-1、表1-2-1に示した資料も参照し、すべての利用者にとって使いやすい車両等を整備することが期待される。 表1-1-1 本整備ガイドラインにおける対象者 ・高齢者 ・肢体不自由者(車椅子使用者) ・肢体不自由者(車椅子使用者以外) ・内部障害者 ・視覚障害者 ・聴覚・言語障害者 ・知的障害者 ・精神障害者 ・発達障害者 ・妊産婦 ・乳幼児連れ ・外国人 ・その他 注:高齢者・障害者等においては、重複障害の場合がある。 ※高齢者や各障害の特性及びそれらの特性に応じた公共交通機関利用時の課題等を巻末に掲載した。車両等の整備にあたっては、それらについても配慮することが望まれる。 7ページ 2.移動等円滑化整備の基本的な考え方 本項は、移動等円滑化基準や本整備ガイドラインに沿った旅客施設、車両等整備に関連して、それらの整備に取り組むにあたって念頭に置くべき、移動等円滑化全般にわたっての考え方を記述したものである。 2.1 移動等円滑化の目的 1.2ガイドラインの位置付けでも触れたように、本整備ガイドラインは、移動等円滑化基準をベースとして、高齢者、障害者等をはじめとした利用者のニーズに応えるための旅客施設及び車両等の整備のあり方を具体的に示した目安であるが、これら移動等円滑化への対応の目的は、高齢者、障害者等移動に困難を伴う多様な人々に対して生活を支えるための移動可能な環境の整備である。 移動可能な環境の整備とは、旅客施設、車両等、その他、旅客施設周辺のビルや旅客施設前広場等との連続的移動の確保、表示や音などの情報提供等、施設・設備面の整備とともに、業務要員による接遇も含めて、高齢者、障害者等が生活に必要な移動等を達成できるようにすることである。 2.2 移動可能な環境等づくり 移動可能な環境づくりの3つの要素とは、以下のとおりである。 @バリアのないルートの確保:可能な限り最短距離で、高低差が少なく、見通しがききわかりやすいルートと空間を連続的に確保すること。 Aわかりやすいルートの確保:空間構成、様々な表示サイン、音サイン、人的対応などを有効に組み合わせ、誘導を適切に行うこと。 B 安全で使いやすい施設・設備:必要な施設・設備(乗車券等販売所、待合所、案内所、トイレ等)をアクセスしやすく、安全で使いやすく整備すること。 以上の3つの要素を満たすことによって、円滑に移動できる環境を作り出すことができる。 2.3 一体的・統合的な整備の方針 移動の連続性、容易性を確保するためには、利用対象者をそのニーズに基づいて統合的にとらえ、施設・車両、地域などを一体的にとらえて計画し、整備を行うことが重要である。 (1)現状の課題と方針 @多様な利用者を統合的にとらえる 肢体不自由者(車椅子使用者、杖使用者等)、視覚障害者(ロービジョン、全盲)、聴覚・言語障害者(全聾・難聴)、知的障害者、精神障害者、発達障害者、コミュニケ―ションに障害がある人など、多様な障害がある人の機能状況(動くこと、見ること、聞くこと、伝えること、理解すること等)を個別の障害ごとに縦割りにとらえるのではなく、移動の際に発生するニーズに応じてとらえることが必要である(図1-2-1)。また高齢者、障害者等だけを対象とするのではなく、利用者全体を統合的にとらえることで、他の多くの利用者のニーズにも対応し、移動等円滑化につながるものである。図1-2-1に対応し、表1-2-1(第1部の最後に掲載)には先述の対象者ごとに想定される主な特性とニーズの関連をあげた。 注)ここでいう統合(integration)とは、例えば「統合教育」と言う場合、障害のある子も同じ学級、同じ環境で他の児童・生徒と同じように教育を受けることを意味するものであり、移動においては誰もが同じように施設・車両等を使用して移動することである。 8ページ A施設・車両を一体的にとらえる 空間、施設、車両等、設備の一部だけに着目して整備を進めるのではなく、誰もがその全てを利用する可能性があるため、例えば旅客施設であれば、その出入口から車両等に至るまで、すべての移動経路、案内設備、サービス施設等を一体的にとらえて整備する。 B旅客施設と周辺地域(旅客施設前広場など)を一体的にとらえる 移動の連続性から考えると、旅客施設、車両等と周辺地域(旅客施設と一体となった商業ビル、旅客施設前広場等)を一体的にとらえる必要がある。施設の大規模化や複合化に対応して、旅客施設から連続している商業施設、旅客施設前広場、バス等の乗降場、周辺街区までなど、人々が連続的に移動するエリアを一体的にとらえ、各施設設置管理者や自治体との連携の下、道路、建築物、都市公園等の移動等円滑化とも連携を図り、シームレス(継ぎ目のない状態)に整備する必要がある(図1-2-2)。 図1-2-1 多様な利用者を移動の際に発生しうるニーズに基づいて整理したイメージ図 利用者全体 (内部障害、難病等外見上わからない人も含む) a.「動くこと」に困っている人 ・車椅子を使っている人 ・杖を使っている人 ・お年寄り ・妊娠している人  ・子ども ・ベビーカーを押している人 ・大きな荷物を持った人 など b.「見ること」に困っている人 ・全盲の人 ・ロービジョン者 ・お年寄り ・子ども など c.「聞くこと」に困っている人 ・ろう者(全く聞こえない人) ・難聴者(聞こえにくい人) ・お年寄り など d.「伝えること・理解すること」に困っている人 ・日本語になれていない人 ・発声障害のある人 ・知的障害のある人 ・記憶障害のある人 ・言語・読み書きに障害のある人 ・お年寄り ・子ども ・コミュニケーションが苦手な人など 図1-2-2 旅客施設と周辺地域を一体的・統合的にとらえるイメージ図 9ページ 3.ガイドライン整備の経路・施設配置・情報提供の具体的な考え方 3.1 移動経路確保の考え方 (1)自立的な移動環境の確保 高齢者、障害者等が、可能な限り単独で、健常者と同様の時間、ルート、手段によって移動できるよう、旅客施設、車両等において、連続性のある移動動線を可能な限り最短経路で確保する。 旅客移動について最も一般的な経路(主動線)を移動等円滑化するとともに、主動線が利用できない緊急時等も勘案し、移動等円滑化された経路を複数確保することが望ましい(図1-3-1)。 図1-3-1 移動経路確保の基本イメージ (2)移動経路とわかりやすさ 旅客施設においても、車両等においても、高齢者、障害者等すべての人にとって快適でわかりやすい空間とすることが望ましい。 (3)大規模旅客施設等における対応 以下のような場合、移動等円滑化された経路を複数確保することが望ましい。 @利用者数の特に多い施設、複数の路線が入る施設、複数の事業者施設が存在する施設 A上記以外の施設においても、利用者数、ピーク時の集中度、医療施設や高齢者、障害者施設が近く高齢者、障害者の利用が多いなど、利用者特性がある程度把握されている場合 B高齢者、障害者等の利用に加え、近年増加しているベビーカー使用者など、利用者層の変化への対応が求められる場合 (4)施設設置管理者間の連携 公共交通機関の乗り継ぎだけでなく、道路空間、隣接建築物等の施設設置管理者との連続的な移動等円滑化経路を確保することが望ましい。 3.2 旅客施設と車両等における施設・設備設置の考え方 (1)トイレ @アクセスしやすいこと 旅客施設においても、車両内においても、トイレはアクセスしやすい場所に配置し、すべての利用者が利用しやすい構造とする。 A多機能トイレの機能の分散配置 多機能トイレへの利用が集中し、車椅子使用者などから使いたい時に使えない場合があることが指摘されている。このため、機能分散の観点から、状況に応じ、多機能トイレに備える設備・機能の一部を、簡易型多機能便房、一般便房へ分散的に配置するなどの方策を図ること。その際には、旅客施設内におけるトイレの設置位置とその有する機能についてわかりやすい案内表示を行うことが必要である。 10ページ Bトイレの複数個所への設置 旅客施設において主要な出入口が複数ある場合、旅客施設が複数に分かれている場合、平面的あるいは立体的に空間が広がっている場合などでは、複数個所へのトイレ設置を検討する。 (2)休憩施設等 休憩施設は、旅客動線等を考慮して必要箇所を把握し、施設全体から見た配置計画、配置数を検討するとともに、高齢者の増加、ベビーカー使用者の増加等、利用者層の将来的な変化も踏まえて計画する。計画にあたっては、高齢者や、持病のある利用者、内部機能障害等、多くの休憩機会が必要な利用者や、注射、服薬などが必要となる場合も考えられるため、トイレとの関連等も含め、休憩施設の機能を勘案する。また、乳児連れの旅客のための施設(授乳室等)の配置も望まれる。 3.3 情報提供の考え方 (1)わかりやすく空間を整備する わかりやすい空間の整備を目標にして、情報コミュニケーションに制約のある人の特性(巻末参考資料「高齢者・障害者の主な特性」参照)と、各種情報提供設備の特性を考慮し、旅客施設、車両等において、適切な情報の内容、方法、配置等を検討し、整備する。 特に情報コミュニケーションの制約が大きいと考えられる障害等について留意事項を整理すると表1-3-1のとおりである。 表1-3-1 特に情報コミュニケーションの制約が大きいと考えられる障害等への留意事項 障害 留意事項の順 視覚障害 音声・音響案内、ロービジョンの人を考慮した視覚表示装置の工夫 色覚異常 情報提供装置、路線図、地図等への色、表示方法の工夫 聴覚障害 主に音声で案内される緊急時情報等の文字情報による素早い提供等 知的障害・発達障害・精神障害 特に緊急時など通常と異なる情報、変化する情報、今後の見通し、代替手段等の利用について、理解しやすい情報提供のありかた、問い合わせへの対応など人的な面も配慮する (2)接近と退出双方向の情報提供 旅客施設及び車両等内において、また、旅客施設と外部とのアクセス(接近)・イグレス(退出)の経路において、高齢者、障害者等の移動を支援するため、見やすく(視覚表示設備の場合)、聞きやすく(音案内設備の場合)、内容がわかりやすい、適切な案内用設備を設置する。 (3)情報提供手段の役割分担 情報量が多い場合には、情報の優先順位に考慮した上で、パンフレット等による情報提供も活用することによって、案内用設備(視覚表示設備、音案内設備)による情報提供を簡潔にすることも検討する。さらに、案内用設備では対応できない高齢者、障害者等への人的な対応も考慮する。 11ページ (4)異常時の情報提供 遅延や運休(欠航)などによる振替輸送の実施など、通常と異なる経路を案内する必要がある場合は、移動等円滑化経路についても前もって把握し、速やかに案内する。 (5)情報提供の方法 視覚表示設備を設置する場合には、漢字やローマ字のほかに、かなによる表示、多言語による表示などより多くの利用者が理解できる方法で情報提供を行う。 (6)音案内に関する考え方 音案内(音声・音響)については、現行ガイドラインで鉄道駅を対象に改札口、エスカレーター、トイレ、プラットホーム上の階段、地下駅地上出入口の各施設の音案内設置について記載している。 実際の音案内は、施設の構造、音質、騒音など周辺環境の影響によって、必要な時に聞こえない、聞こえてもわかりにくい、うるさく感じられる等の問題が生じており、十分にその機能が発揮されていない状況が見受けられる。 本整備ガイドラインでは旅客施設編131ページに参考として、「移動支援用音案内(非音声及び音声案内)に関する計画の考え方」を記載し、音案内の必要性、音案内を整備する上での留意事項と着眼点、音案内の整備のあり方と方向性について現時点での考え方を提示し、音案内を実施する際の音質、音量、音源の位置、音の反射、音案内が伝えるべき情報、暗騒音など周辺環境の対応などいくつかの基本的な論点を挙げて解説した。 4.移動等円滑化整備に関連した連携協力 公共交通機関における移動等円滑化を図るためには、より使いやすい施設、車両等の整備実現のために、公共交通事業者のみならず、国、地方公共団体、その他施設の設置管理者等の関係者が様々な面から互いに連携協力し、総合的かつ計画的に推進していくことが必要である。 また、ハード面での移動等円滑化は、移動等円滑化基準や本整備ガイドラインに基づく整備によって、一定の役割は果たすことができるが、様々なニーズに対応するためには、ハード面の整備とともに人的な対応も移動等円滑化の両輪として行う必要があり、利用者と直接接する業務に従事する要員による移動制約者等への対応や異常時・非常時への備え、利用者へのマナーの広報等も必要である。移動制約者の特性の理解、ニーズを把握するスキル、基本的な介助等の技術、施設・車両等のバリアフリー設備等の知識を習得するための研修が必要である。その際、障害者等移動制約者が研修に参画することが望ましい。また、それらをサポートし相互理解を深めるようなマニュアルやプログラムの整備が必要となる。さらに、施設、車両等の設計、施工、管理などを行う技術的な要員が移動等円滑化の取り組み全般を適切に理解するためにも、事業者内におけるこれら要員相互の積極的な連携協力が重要である。 12ページ 表1-2-1 本整備ガイドラインに示す対象者の主な特性(より具体的なニーズ)の整理 対象者 主な特性(より具体的なニーズ)の順 高齢者 <主として図1-2-1のa、b、cのニーズ> ・階段、段差の移動が困難 ・長い距離の連続歩行や長い時間の立位が困難 ・視覚・聴覚能力の低下により情報認知やコミュニケーションが困難 肢体不自由者(車椅子使用者)<主として図1-2-1のa、b、dのニーズ> 車椅子の使用により ・階段、段差の昇降が不可能 ・移動及び車内で一定以上のスペースを必要とする ・座位が低いため高いところの表示が見にくい ・上肢障害がある場合、手腕による巧緻な操作・作業が困難 ・脳性まひなどにより言語障害を伴う場合があるなど 肢体不自由者(車椅子使用者以外)<主として図1-2-1のa、b、dのニーズ> 杖、義足・義手、人工関節などを使用している場合 ・階段、段差や坂道の移動が困難 ・長い距離の連続歩行や長い時間の立位が困難 ・上肢障害がある場合、手腕による巧緻な操作・作業が困難 など 内部障害者<主として図1-2-1のa、dのニーズ> ・外見からは気づきにくい ・急な体調の変化により移動が困難 ・疲労しやすく長時間の歩行や立っていることが困難 ・オストメイト(人工肛門、人工膀胱造設者)によりトイレに専用設備が必要 ・障害によって、酸素ボンベ等の携行が必要 など 視覚障害者<主として図1-2-1のbのニーズ> 全盲以外に、ロービジョン(弱視)や色覚異常により見え方が多様であることから ・視覚による情報認知が不可能あるいは困難  ・空間把握、目的場所までの経路確認が困難 ・案内表示の文字情報の把握や色の判別が困難 ・白杖を使用しない場合など外見からは気づきにくいことがある 聴覚・言語障害者<主として図1-2-1のc、dのニーズ> 全聾の場合、難聴の場合があり聞こえ方の差が大きいため ・音声による情報認知やコミュニケーションが不可能あるいは困難 ・音声・音響等による注意喚起がわからないあるいは困難 ・発話が難しく言語に障害がある場合があり伝えることが難しい ・外見からは気づきにくい 知的障害者<主として図1-2-1のdのニーズ> 初めての場所や状況の変化に対応することが難しいため、 ・道に迷ったり、次の行動を取ることが難しい場合がある ・感情のコントロールが困難でコミュニケーションが難しい場合がある ・情報量が多いと理解しきれず混乱する場合がある 13ページ ・周囲の言動に敏感になり混乱する場合がある ・読み書きが困難である場合がある 精神障害者<主として図1-2-1のdのニーズ> 状況の変化に対応することが難しいため、 ・新しいことに対して緊張や不安を感じる ・混雑や密閉された状況に極度の緊張や不安を感じる ・周囲の言動に敏感になり混乱する場合がある ・ストレスに弱く、疲れやすく、頭痛、幻聴、幻覚が現れることがある ・服薬のため頻繁に水を飲んだりすることからトイレに頻繁に行くことがある ・外見からは気づきにくい 発達障害者<主として図1-2-1のdのニーズ> ・注意欠陥多動性障害(AD/HD)等によりじっとしていられない、走り回るなどの衝動性、多動性行動が出る場合がある ・アスペルガー症候群等により特定の事柄に強い興味や関心、こだわりを持つ場合がある ・反復的な行動を取る場合がある ・学習障害(LD)等により読み書きが困難である場合がある ・他人との対人関係の構築が困難 など 妊産婦<主として図1-2-1のaのニーズ> 妊娠していることにより、 ・歩行が不安定(特に下り階段では足下が見えにくい) ・長時間の立位が困難 ・不意に気分が悪くなったり疲れやすいことがある ・初期などにおいては外見からは気づきにくい ・産後も体調不良が生じる場合がある など 乳幼児連れ<主として図1-2-1のaのニーズ> ベビーカーの使用や乳幼児を抱きかかえ、幼児の手をひいていることにより、 ・階段、段差などの昇降が困難(特にベビーカー、荷物、幼児を抱えながらの階段利用は困難である) ・長時間の立位が困難(子どもを抱きかかえている場合など) ・子どもが不意な行動をとり危険が生じる場合がある ・オムツ交換や授乳できる場所が必要 など 外国人<主として図1-2-1のb、c、dのニーズ> 日本語が理解できない場合は、 ・日本語による情報取得、コミュニケーションが不可能あるいは困難など その他<主として図1-2-1のa、b、c、dのニーズ> ・一時的なけがの場合(松葉杖やギブスを使用している場合など含む) ・難病、一時的な病気の場合 ・重い荷物、大きな荷物を持っている場合 ・初めての場所を訪れる場合(不案内) など 注:高齢者・障害者等においては、重複障害の場合がある。 14ページ 参考:バリアフリー化された旅客施設のイメージ ・道路から段差なく駅に入ることができる ・駅に入ると駅施設を一望できる ・移動動線がとても短い ・移動動線上にエレベーター・トイレ・乗車券等販売所・待合所・案内所などが並んでいる ・改札口を入るとエレベーター、エスカレーター、階段を一時に視認できる ・改札口からエレベーター、エスカレーター、階段までの距離がほぼ等距離で、それらを任意に選択できる ・駅出入口・改札口・ホーム間の垂直移動が、上り線・下り線とも一度ですむ ・改札内コンコースからホームの様子を一望できる ・ホームから改札口方向を一望できる ・ホームから改札口にいたるエレベーター、エスカレーター、階段を一時に視認できる ・ホームから改札口にいたるエレベーター、エスカレーター、階段までの距離がほぼ等距離で、それらを任意に選択できる ・ホーム上に可動式ホーム柵などの安全措置が施されている ・駅を出るとすぐ近くにバスなど乗り継ぎ交通手段がある 15ページ 参考:本整備ガイドラインにおける基本的な寸法 ■車椅子の寸法(JIS T9201並びにT9203に示された最大寸法) ●車椅子の幅:700mm ●車椅子の全長:1,200mm ●車椅子の高さ:1,090mm ■車椅子使用者の必要寸法 ●通過に必要な最低幅:800mm ・出入りに必要な幅は、手動車椅子がハンドリムを手で回転して移動するための動作のスペースを100mmとし、車椅子の幅に加えた800mmが必要。 ・電動車椅子の場合、ハンドリムを手で回転させる動作はないが、障害の程度が手動車椅子使用者よりも重い傾向にあることや操作ボックスの設置場所に対する余裕を見込むと、同じく800mmが必要。 ●余裕のある通過に必要な最低幅:900mm ・余裕のある通過に必要な幅は、手動車椅子がハンドリムを手で回転して移動するための動作のスペースと余裕幅を200mmとし、車椅子の幅を加えた900mmが必要。 ・電動車椅子の場合、ハンドリムを手で回転させる動作はないが、障害の程度が手動車椅子使用者よりも重い傾向にあることや操作ボックスの幅を見込むと、手動車椅子と同じ余裕幅200mmが必要であり、900mmが必要。 ●車椅子の通行に必要な幅:900mm ・車椅子の通行には、車椅子の振れ幅を考慮すると、900mmが必要。 ●車椅子と人のすれ違いの最低幅:1350mm ・車椅子と人がすれ違うためには、車椅子の振れ幅と人の寸法を加えた650mmの余裕幅が必要。 ●車椅子と車椅子のすれ違いの最低幅:1800mm ・車椅子同士がすれ違うためには、双方の車椅子の通行に必要な余裕幅を確保した1800mmが必要。 ●車椅子の回転に必要な広さ:180度回転できる最低寸法:1400mm ・市販されている車椅子が切り返しを行わずに180度回転できる必要寸法としては幅1400mm、長さ1700mmの空間が必要。 ●車椅子の回転に必要な広さ:360度回転できる最低寸法:1500mm ・市販されている車椅子が切り返しを行わずに360度回転できる必要寸法としては直径1500mmの円空間が必要。 ●電動車椅子の回転に必要な広さ:360度回転できる最低寸法:1800mm ・市販されている電動車椅子が切り返しを行わずに360度回転できる必要寸法としては直径1800mmの円空間が必要。 ●車椅子スペースの広さ:750mm×1,300mm ■松葉杖使用者の必要寸法 ●松葉杖使用者が円滑に通行できる幅:1200mm 16ページ 参考:本ガイドラインにおける基本的な寸法 ●通過に必要な最低幅 80cm ●余裕のある通過及び通行に必要な最低幅 90cm ●車椅子と人のすれ違いの最低幅 135cm ●車椅子と車椅子のすれ違いの最低幅 180cm ●松葉杖使用者が円滑に通行できる幅 120cm ●車椅子が180度回転できる最低寸法 140cm ●車椅子が360度回転できる最低寸法 150cm ●電動車椅子が360度回転できる最低寸法 180cm (注意)手動車椅子の寸法:全幅70p、全長120pの場合(JIS規格最大寸法) 17ページ 第4部 表紙 個別の車両等に関するガイドライン 19ページ 第4部 個別の車両等に関するガイドライン 1 鉄軌道 平成12年に制定された交通バリアフリー法により、鉄軌道車両等の移動等円滑化が義務付けられ、同法律に基づき定められた移動等円滑化基準により、移動等円滑化のために必要な車両等の構造及び設備に関する基準が定められた。当該基準の制定を受け、新車の導入や車両等の大規模改良に合わせて、基準に適合した車両の導入が進んでいる。 前回平成19年のガイドライン見直しの時点より、車椅子使用者だけでなくベビーカー使用者の増加を考慮した車椅子スペースの増加や、ホーム転落防止に効果的であるホームドアの設置促進のための、車両側における乗降口扉位置の統一、また、車椅子使用者が渡り板なしでも乗降できるような車両床面とホームとの段差解消、障害当事者だけでなく外国人等様々な利用者に配慮した情報表示装置の充実がニーズとして上がって来たところである。 こうしたニーズがあることを踏まえ、今回のガイドラインの見直しでは、車両の扉位置について可能な限り統一を図ることが望ましい旨を記載した。また、利用実態等に応じて車椅子スペースを増設することが望ましいことや当該スペースを多様な利用者に配慮したものとする旨を記載した。さらに、プラットホーム縁端と車両の乗降口との段差縮小については、施設側でのホームかさ上げの対応だけではなく、車両側の床面を下げることで車両床面とホームとの段差縮小を図った車両について事例紹介した。 平成18年のバリアフリー法の基本方針において、平成22年度末における移動等円滑化された鉄軌道車両の割合の目標を50%に定めたが、目標設定時の平成18年度末には20%であったものが平成22年度末には約49.5%とほぼ目標通りの整備が進んでいるところである。 さらに平成22年度末には当該基本方針の見直しがなされ、新たな10年後の整備目標として、平成32年度末までに全鉄軌道車両のうち70%を移動等円滑化された車両にするように引き上げたところであり、より一層の整備の進展が望まれている。 20ページ 1.1 通勤型(短距離)鉄道・地下鉄 【通勤型(短距離)鉄道・地下鉄車両の例】 座席/ロングシートタイプ・セミクロスシートタイプ 乗降口/両引自動ドア 6〜8カ所/両(片側3〜4カ所) 参考4-1-1:通勤型鉄道の姿図 ・ロングシートタイプの例 ※優先席、車椅子スペースを車両端部に設置した例。 ・セミクロスシートタイプの例 ※優先席、車椅子スペースを車両端部に設置した例。 21ページ @乗降口(車外) 移動等円滑化基準  (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 旅客用乗降口の床面の縁端とプラットホームの縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。 二 旅客用乗降口の床面とプラットホームとは、できる限り平らであること。 三 旅客用乗降口のうち一列車ごとに一以上は、幅が八十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。  (車体) 第33条 2 車体の側面に、鉄道車両の行き先及び種別を見やすいように表示しなければならない。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 段・隙間 ・車両とプラットホームの段・隙間について、段はできる限り平らに、隙間はできる限り小さいものとする。 乗降口の幅 ・旅客用乗降口のうち1列車に1以上は、有効幅を800o以上とする。 行き先・車両種別表示 ・車体の側面に、当該車両の行き先及び種別を大きな文字により見やすいように表示する。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 ○:標準的な整備内容 段・隙間 ・施設側の渡り板が速やかに設置できない場合は、車両内に車椅子使用者の円滑な乗降のための渡り板の配備、段差解消装置を設置する。(コラム1参照) 乗降口の幅 ・スペースの直近の旅客用乗降口は、車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、有効幅を900o以上とする。 行き先・車両種別表示 ・車体の側面に、車両番号(号車)等を大きな文字により見やすいように表示する。ただし、車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りではない。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) ・照明又は高輝度LED等により、夜間でも視認できるものとする。 ◇:望ましい整備内容 段・隙間 ・地方鉄道等において段が大きい場合には、@施設側におけるホームの嵩上げ、A車両側における低床化、B段差解消装置等を設置するなどにより、段差解消することが望ましい。 隙間の警告 ・ホームが曲線の場合は車両とプラットホームの隙間が大きくなり危険であるため、音声及び光で危険性を注意喚起することが望ましい。 22ページ 隙間解消設備 ・乗降口の床面の縁端部には、ステップ(クツズリ)を設け、車両とプラットホームの隙間をできるだけ小さくすることが望ましい。 ・上記の隙間を小さくするための設備の縁端部は、全体にわたり十分な太さで周囲の床の色とのコントラストを確保し、当該ステップを容易に識別できるようにすることが望ましい。 自動段差解消設備 ・車椅子スペース直近の乗降口には、車椅子使用者が円滑に乗降するための自動段差解消設備を設けることが望ましい。 聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプ ・聴覚障害者等が車内外から戸の開閉のタイミングを確認できるよう、車内ランプ又は車外ランプの点滅等により戸の開閉のタイミングを表示することが望ましい。 戸のレール ・車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、戸のレールの出っ張りを解消することが望ましい。 視覚障害者用ドア開案内装置 ・視覚障害者等のために、ドアが開いていることを示すための音声案内装置(音声等により常時「開」状態を案内するもの)を設けることが望ましい。 戸の開閉ボタン ・戸の開閉ボタンを設けた場合は、わかりやすい形状として、周囲の色と輝度コントラスト*を確保するとともに、上部に点字を併記することが望ましい。 乗降口の戸の位置 ・乗降口の戸の位置は列車間で可能な限り統一を図ることが望ましい。ただし、通勤型(短距離)鉄道用車両と都市間鉄道用車両等、用途が異なる車両が混在する路線の場合は、この限りではない。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 23ページ 姿図・寸法 参考4-1-2:乗降口(車外)の例 (コラム1)渡り板・段差解消装置(バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)183ページ参照) ・速やかに設置できる場所に配備する。 ・幅800mm以上、使用時の傾斜は10度以下として十分な長さを有するもの、耐荷重300kg程度のものとする。ただし、構造上の理由により傾斜角10度以下の実現が困難な場合には、車椅子の登坂性能等を考慮し、可能な限り傾斜角10度に近づけるものとする。 ・渡り板のホーム側接地面には滑り止めを施し、かつ、渡り板の車両側端部にひっかかりを設けること等により、使用時にずれることのないよう配慮する。 ・渡り板の使用においては、ホームの形状に配慮し、降りたホームの反対側の線路に転落する等の事故がないよう、渡り板の長さとホームの幅に十分注意する。 ・車両・ホーム等の構造上の理由により渡り板が長く、また、傾斜角が急(概ね10度を超える)となる場合には、脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設ける。 ・無人駅などでは車両内に搭載した渡り板を使用して係員が対応するなど、速やかな乗降のための柔軟な対応を行う。 (上記によらない段差・隙間解消装置の場合) ・速やかに操作できる構造の段差・隙間解消装置を設置する。 24ページ 参考例 参考4-1-3:渡り板の例 参考例 参考4-1-4:地方鉄道において車両内に渡り板を配備している事例(長崎県 松浦鉄道) 25ページ 参考例 参考4-1-5:車内外から視認できる聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプの事例 ・阪急電鉄 9000系等 −扉上部車内側に開閉予告表示を設置、扉の開閉スイッチ操作時(操作グリップをひねる)に赤色灯が点滅。 参考例 参考4-1-6:ドアレールの出っ張りを解消した車両の事例 ・横浜高速鉄道Y-500系 −切り欠きにより出っ張りを低減した ・香港MTR鉄道 −凹型レールにより出っ張りを解消した 26ページ 参考例 参考4-1-7:ホームとの段差を低減した事例 ・車両床面高さを低くすることにより、ホームとの段差を低減した主な事例。 表中の薄字は従前、太字(青背景)は現況の段差の状況を示す。 注)JR各社の1987年3月までのデータは国鉄時代の段差の状況を示す。 JR東日本719系0番代車両(床面高さ1180mm、ホーム高さ760mm) JR東日本E721系車両(床面高さ950mm、ホーム高さ920mm) ⇒車両床面高さの引き下げ+ホーム高さのかさ上げで対応 27ページ 参考例 参考4-1-8:視覚障害者用ドア開案内装置の事例 ・各ドアの上部にスピーカーを設置し、ドアの開閉時および開いてからしばらくの間音声チャイムが鳴動。(700系新幹線)。 ・出入口上部の扉開閉案内器を設置し、ドアが開いている間は5秒間隔でチャイム(ポーン、ポーン)が鳴動(東武鉄道(一部車両))。 ・カモイ部または出入口下部のスピーカーより、ドア開閉時に「ピンポン音(1秒)」が1回鳴動するとともに、ドア開状態の間「ポーン(2秒)」が4秒間隔で連続鳴動する(西武鉄道(一部車両))。 ・カモイ部のスピーカーより、ドア開閉時に「ピンポン音(1秒)」が1回鳴動する(西武鉄道(一部車両))。 ・東武鉄道50000系 @ドア開時及び閉時に「ピンポン」が1回鳴動 Aドア開状態の間「ポーン、ポーン、...」が5秒間隔で鳴動 28ページ A乗降口(車内) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 四 旅客用乗降口の床面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 六 車内の段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより、車内の段を容易に識別できるものであること。 (客室) 第32条 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 6 客室内の旅客用乗降口の戸又はその付近には、当該列車における当該鉄道車両の位置その他の位置に関する情報を文字及び点字により表示しなければならない。ただし、鉄道車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 床面の仕上げ ・旅客用乗降口の床の表面は滑りにくい仕上げがなされたものとする。 乗降口脇の手すり ・乗降口脇には、高齢者、障害者等が円滑に乗降できるよう、又、立位時に身体を保持しやすいように手すりを設置する。 ・手すりの高さは、高齢者、障害者、低身長者、小児等に配慮したものとする。 乗降口付近の段の識別 ・段が生じる場合は、段の端部(段鼻部)の全体にわたり十分な太さで周囲の床の色と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保し、容易に当該段を識別できるようにする。 号車及び乗降口位置(扉番号)等の点字・文字表示 ・各車両の乗降口の戸又はその付近には、号車及び乗降口位置(扉番号)を文字及び点字(触知による案内を含む。)により表示する。ただし、車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ○:標準的な整備内容 乗降口端部の識別 ・乗降口端部の床面は、周囲の床の色との輝度コントラストを確保し容易に識別できるようにする。 乗降口脇の縦手すり ・乗降口の両脇には、高齢者、障害者等が円滑に乗降できるよう、又、立位時に身体を保持しやすいように縦手すりを設置する。 ・乗降口の両脇に設置する縦手すりの径は25mm程度とする。 乗降口付近の段の識別 ・段の端部(段鼻部)の全体にわたり周囲の床の色と輝度コントラストを確保する際には、その太さを幅50mm程度以上として、容易に当該段を識別できるようにする。 車内の段付近の手すり ・車内に段がある場合には、歩行補助のため段の付近に手すりを設置する。 戸の開閉の音響案内 ・視覚障害者が円滑に乗降できるように、戸の位置及び戸の開閉が車内及び車外の乗降位置から分かるようなチャイムを戸の内側上部等に設置し、戸の開閉動作に合わせてチャイム音を鳴動させる。 29ページ 号車及び乗降口位置(扉番号)等の点字・文字表示  ・案内表示は、視覚障害者が指により確認しやすい高さに配慮し、床から1,400〜1,600mm程度の高さに設置する。 ・戸先側に表示し、両開き扉においては左側扉に表示する。 ◇:望ましい整備内容 聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプ ・聴覚障害者等が車内外から戸の開閉のタイミングを確認できるよう、車内ランプ又は車外ランプの点滅等により戸の開閉のタイミングを表示することが望ましい。 戸の開閉ボタン ・戸の開閉ボタンを設けた場合は、わかりやすい形状とするとともに、周囲の色との輝度コントラストを確保し、上部に点字を併記することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-9:号車及び乗降口位置(扉番号)等の文字・点字表示例 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 30ページ 参考例 参考4-1-10:号車及び乗降口位置(扉番号)等の点字・文字表示の事例 ・つくばエクスプレス ・大阪市交通局 (出典:大阪市交通局ホームページより) ※当該様式については、図形など様々な様式が普及しないよう大阪市交通局によって特許が取得されている(事業者が本仕様を採用する場合は実施料を請求しないため、コストの低減にも配慮されている)。 参考例 参考4-1-11:乗降口端部及び戸先を容易に識別できるようにした事例 ・JR東日本E233系 31ページ B優先席等 ○:標準的な整備内容 優先席の設置 位置 ・優先席は、乗降の際の移動距離が短くて済むよう、乗降口の近くに設置する。 優先席の表示 ・優先席は、@座席シートを他のシートと異なった配色、柄とする、A優先席付近の吊り手又は通路、壁面等の配色を周囲と異なるものにする等により車内から容易に識別できるものとする、B優先席の背後の窓や見やすい位置に優先席であることを示すステッカーを貼る等により、優先席であることが車内及び車外から容易に識別できるものとし、一般の乗客の協力が得られやすいようにする。 優先席数 ・優先席数(全座席に占める割合)については、優先席の利用の状況を勘案しつつ、人口の高齢化などに対応した増加について検討する必要がある。 弱冷房車の設置及び表示 ・高齢者、内部障害者等体温調節が困難な人のために、弱冷房車として設定温度を高めに設定した車両を1編成に1両以上設置し、車外に弱冷房車であることをステッカー等で表示する。ただし、車両編成が一定しない等の理由によりやむを得ない場合はこの限りでない。 ◇:望ましい整備内容 優先席の設置 位置 ・相互直通運転を実施する場合には、事業者間で優先席の位置を統一することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-12:優先席の設置例 32ページ 参考例 参考4-1-13:内部障害者や妊産婦などさまざまな対象者に配慮した優先席マークの事例 ・京阪電鉄 ・名古屋市交通局 参考例 参考4-1-14:国際標準化機構(ISO)での標準化(2013年6月)を踏まえJIS化が予定されている優先席のピクトグラム ・ピクトグラムは、杖をついた人、障害のある人・けが人、妊産婦、乳幼児連れ、内部障害者の5つ。 33ページ 参考例 参考4-1-15:優先席エリアを明確にし、かつ網棚の高さを低くしている事例(JR東日本E233系) ・荷物棚(一般席1,730mm)及び吊り手(一般席1,630mm)高さを一般席と比較して、それぞれ50mm低くしている。 ・車内から容易に識別できるよう優先席付近の吊り手、通路、壁面の配色を周囲と異なるものとしている。 参考例 参考4-1-16:優先席ではないが、乗降口近くの座席に両肘掛けを設け、高齢者、障害者等の車内の移動距離が少なく乗降・利用しやすいものとしている事例 ・近鉄9020系ロングシート・らくらくシート 34ページ (コラム2)乗車可能な乗客や運用の時間帯を分かりやすく明示している事例 ・女性専用車両等乗車できる乗客が限定される車両においては、乗車が可能である乗客や、運用の時間帯を分かりやすく明示することが望ましい。 ・東京都交通局・神戸市交通局 35ページ C手すり 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 手すりの設置 ・通路及び客室内には手すりを設置する。 ○:標準的な整備内容 つり革の設置 ・客室に立席スペースを設ける車両においては、利用者が身体を保持できるように、通路及び客室内に手すりまたはつり革を設置する。 つり革の高さ ・つり革の高さ・配置については、客室用途と利用者の身長域(特に低身長者)に配慮する。 つり革の太さ ・つり革は握りやすい太さとする。 縦手すりの配置 ・つり革の利用が困難な高齢者、障害者、低身長者、小児等に配慮し、立位時の姿勢を保持しやすいよう、また、立ち座りしやすいよう、縦手すりを配置する。 設置位置、径 ・縦手すりは、座席への移動や立ち座りが楽にできるような位置に設置する。 ・縦手すり・横手すりの径は30mm程度とする。ただし、乗降口脇に設置する縦手すりは「乗降口(車内)」の内容に準ずる。 座席手すり ・クロスシート座席には、座席への移動や立ち座り、立位時の姿勢保持に配慮し、座席肩口に手すり等を設ける。 姿図・寸法 参考4-1-17:手すりの設置例 36ページ 参考例 参考4-1-18:手すりの設置事例 ・JR東日本E233系・東京メトロ16000系 参考 参考4-1-19:つり革の高さに関する研究事例と導入事例 ・(社)人間生活工学研究センター(2003)『日本人の人体計測データ』pp142-143.−斉藤・鈴木・白戸・藤浪・松岡・平井・斉藤「通勤近郊列車のつり革高さと手すり位置の検討」.人間工学.Vol1,9-21,2006より引用 −通路つり革下辺高さは、通路としての要件から1,800mm以上とした。 −一般つり革の下辺高さは、全体の使いにくい割合が最小かつ成人男性の使いやすさが悪化しない範囲から、1,600〜1,650mmとした。 −低位つり革下辺高さは、全体の使いにくい割合が最小かつ女性・高齢者の使いやすさ重視から、1,550〜1,600mmとした。 ・2種の高さのつり革を設定している事例 37ページ D車椅子スペース 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 客室には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一列車ごとに一以上設けなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 車いす使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 五 車いすスペースである旨が表示されていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの設置数 ・客室には1列車に少なくとも1以上の車椅子スペースを設ける。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは、車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さを確保する。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に掲出する。 手すり ・車椅子スペースには、車椅子使用者が握りやすい位置に手すりを設置する。 床面の仕上げ ・車椅子スペースの床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置数・形態 ・車両編成が長い場合には、1列車に2以上の車椅子スペースを設ける。 ・車椅子スペースは、利用形態を限定せず、ベビーカー使用者等の多様な利用者に配慮したものとする。 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子スペースは、車椅子スペースへの移動が容易で、乗降の際の移動距離が短くて済むように、乗降口から近い位置に設置する。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは1,300mm以上×750mm以上を確保し、極力車椅子使用者が進行方向を向けるよう配慮する。 手すり ・車椅子スペースには、車椅子使用者が握りやすい位置(高さ800〜850mm程度)に横手すりを設置する。 ・上記手すりの径は30mm程度とする。 非常通報装置 ・車椅子スペース付近には、非常通報装置を設置する。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に加え車外にも掲出する。 38ページ ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置数・形態 ・各路線の利用実態を踏まえ、車椅子使用者、ベビーカー使用者の利用が多い場合には、車椅子スペース及びベビーカーが利用可能なスペースを増設することが望ましい。 ・相互直通運転を実施する場合には、事業者間で車椅子スペースの位置を統一することが望ましい。 ・車椅子スペースは、車椅子使用者、ベビーカー使用者等の円滑な乗車に配慮し、2以上の車椅子が乗車可能であることが望ましい。 ・車椅子スペースには、車外を確認できるよう窓を設けることが望ましい。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースの広さは、1,400mm以上×800mm以上とすることが望ましい。この場合、車椅子が転回できるよう、前述車椅子スペースを含め、1,500mm 以上×1,500mm 以上の広さを確保することが望ましい。 手すり ・車椅子スペースには、車椅子使用者、低身長者、ベビーカー使用者等の利用に配慮し、2段手すりを設置することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-20:車椅子スペースの設置例 39ページ 参考例 参考4-1-21:利用実態を踏まえ車椅子スペースを増設した事例 ・福岡市交通局 ・その他車椅子スペースを1両ごとに1カ所設置している列車の運行がある事業者 −大阪市交通局、−近畿日本鉄道、−南海電気鉄道、−阪神電気鉄道、−京都市交通局、−阪急電鉄 等 参考例 参考4-1-22:車椅子スペースの形態・表示事例 ・広島電鉄 −車椅子使用者に加えベビーカー使用者も利用可能。 −車椅子スペースの表示についても、車椅子だけでなくベビーカー使用者も利用可能であることを分かりやすく表示。 −車椅子スペースの横に一般座席があり、介助者は近くに着席が可能。 40ページ 参考例 参考4-1-23:車椅子スペースへの2段手すりの設置事例 ・当該事例では、2段手すりの芯の部分の高さが、上段950mm(ベビーカー固定や立位客の保持に適する高さ)、下段715mm(車椅子使用者の保持および車椅子介助者・ベビーカーを使用している保護者・立位客の腰置きなどに適する高さ)となっている。 41ページ Eトイレ 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 3 便所を設ける場合は、そのうち一列車ごとに一以上は、車いす使用者の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車いすスペースとの間の通路のうち一以上及び当該車いすスペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子対応トイレの設置 ・客室にトイレを設置する場合は、1列車に1以上車椅子での円滑な利用に適したトイレを設ける。 車椅子対応トイレの出入口の戸の幅 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口の戸の有効幅は、800mm以上とする。 ○:標準的な整備内容 多機能トイレの設置 ・客室にトイレを設置する場合は、1列車に1以上車椅子での利用が可能で、かつ、付帯設備を設けた多機能トイレを設ける。 ・多機能トイレは車椅子スペースに近接した位置に配置する。 車椅子マーク ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口には、当該トイレが車椅子使用者の利用に適した構造のものであることを表示する標識を設ける。 ・表示は、車椅子使用者が見やすいよう、低めの位置に行う。 車椅子対応トイレの出入口の戸の幅 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口の戸の有効幅は、車椅子使用者の余裕ある通行を考慮し、900mm以上とする。ただし、車椅子による通路からトイレへのアクセスが直線である等、トイレへのアクセス性に配慮されている場合は、この限りでない。 車椅子対応トイレの段の解消 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口には、車椅子使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 車椅子対応トイレの出入口の戸の仕様 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口の戸は、電動式引き戸又は軽い力で操作できる手動式引き戸とする。 ・手動式引き戸の場合は、握手は棒状ハンドル式、レバーハンドル式等のものとし、容易に操作できるよう取り付け高さに配慮する。 車椅子対応トイレの出入口の戸の鍵 ・車椅子での円滑な利用に適したトイレの出入口の戸は、容易に施錠できる形式とし、非常時に外から解錠できるようにする。 42ページ 車椅子対応トイレの出入口の戸開閉スイッチ ・自動ドア開閉スイッチの高さは800〜900mm程度とする。 多機能トイレ内部の仕様 ・多機能トイレは、車椅子のまま出入りすることができ、車椅子から便座(腰掛け式=洋式)への移動がしやすいように、車椅子から便座への移動が可能なスペース、便座の高さ(400〜450mm)を確保する。 ・車椅子でできるだけ便器に接近できるよう、フットサポートが下に入る便器とする。 ・十分な戸の幅の確保が難しく、車椅子が戸と直角の向きでトイレに出入りする場合は、トイレの外側に車椅子の転回できるスペースを確保する。 手すり ・便器周囲の壁面に手すり(高さ650〜700mm程度)を設置する(スペースがある場合は、肘掛けタイプの可動式手すりを設置することが望ましい)。 ・手すりは、握りやすく、腐蝕しにくい素材で、径は30mm〜35mm程度とする。 床面の仕上げ ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 便器洗浄ボタン ・便器に腰掛けた状態から届く位置に設置し、操作しやすい方式(押しボタン式等)とする(視覚障害者の利用に配慮し、センサー式を用いる場合は押しボタン式あるいは靴べら式を併用することが望ましい。)。 ・センサー式水洗フラッシュバルブを用いる場合には、センサー部に突起を設ける等によりわかりやすいものとした上で、センサーの反応時間を短くする。 手洗器 ・便器に腰掛けたまま容易に利用できる位置に設置し、高齢者、障害者等の扱いやすい形状とする。 非常呼出しボタン ・便器に腰掛けたまま容易に利用できる位置に設置し、高齢者、障害者等の扱いやすい形状とする。 付属設備 ・便器付近に棚及び着替えを考慮したフックを設ける。 トイレの点字 表示 ・男女別にトイレが設けられている場合には、トイレのドア握り手・ボタン等の操作部の上側に、トイレである旨、男女別の点字を表示する。 ◇:望ましい整備内容 トイレ空間の広さ ・トイレ内外、あるいはそのいずれかにおいて、車椅子が転回できる空間を確保することが望ましい。 ・トイレ内には介助者が介助しやすい空間を確保することが望ましい。 ドア開閉スイッチ ・自動ドア開閉スイッチの構造は肢体不自由な人等でも容易に操作できる押しボタン式のものとすることが望ましい。 便器洗浄ボタン ・便器に腰掛けた状態及び便器に移乗しない状態で届く位置に設置し、操作しやすい方式(押しボタン式等)とすることが望ましい。 43ページ トイレ内設備の触知案内図等 ・すべてのトイレの出入口内側に、トイレの構造を視覚障害者に示すための触知案内図等を設けることが望ましい。 ・なお、触知案内図により表示する場合には、表示方法はJIS T0922に合わせたものとする。点字により表示する場合は、表示方法はJIS T0921に合わせたものとする。 背もたれ非常呼出し ・便座の後部に、体を支える背もたれ(同様の機能を持つ手すりを含む)を設置することが望ましい。 ボタン ・転倒時でも手の届く範囲に設置することが望ましい。 付属設備 ・オストメイトのパウチ洗浄を考慮し、便器付近にパウチ専用水洗装置(自動水栓)を設けることが望ましい。 器具等の形状・色・配置  ・視覚障害者や肢体不自由な人等の使用に配慮し、便房内の便器洗浄ボタン、非常通報装置、紙巻器の形状・色・配置についてはJIS S0026に合わせたものとすることが望ましい。 44ページ 姿図・寸法 参考4-1-24:車椅子対応トイレの例 45ページ 参考例 参考4-1-25:車椅子対応トイレの事例  近鉄 アーバンライナー・ネクスト(2扉車両) ・出入口手前で車椅子が回転できるよう直径1600mmの空間を確保。正面からの進入を可能にした。また、内部においても90度程度転回可能な空間を確保。 ・車椅子から便器への移乗を介助するスペースが確保されている。 参考4-1-26:車椅子使用者等の円滑な利用に配慮したトイレの例 JR東日本 E721系(3扉車両) 46ページ 参考例 参考4-1-27:JIS S0026「公共トイレにおける便房内操作部の形状・色・配置」抜粋 ・操作部の形状 −便器洗浄ボタンの形状は丸形(○)とする。(主要な操作部として押しボタン式スイッチの便器洗浄ボタンを必ず設置し、センサー式は補助的な設置にとどめる(センサー式だけの設置は避ける)ことが望ましい。) −呼び出しボタンの形状は便器洗浄ボタンと区別しやすい形状[例えば、四角形(□)又は三角形(△)]とする。操作部は、指だけでなく手のひら又は甲でも押しやすい大きさとする。 −ボタンの高さは、目の不自由な人が触覚で認知しやすいよう、ボタン部を周辺部より突起させることが望ましい。 ・操作部の色及び輝度コントラスト −ボタンの色:操作部の色は、相互に識別しやすい色の組み合わせとする。JIS S0033に規定する“非常に識別しやすい色の組み合わせ”から選定することが望ましい。例えば、便器洗浄ボタンの色を無彩色又は寒色系とし、呼出しボタンの色を暖色系とすることが望ましい。 −ボタン色と周辺色の輝度コントラスト:操作部は、ボタン色と周辺色との輝度コントラストを確保する。また、ロービジョンの人及び加齢による黄色変化視界の高齢者も判別しやすいよう、明度差及び輝度比にも留意する。 ・操作部及び紙巻器の配置 47ページ −呼出しボタンは、利用者が転倒した姿勢で容易に操作できる位置にも設置することが望ましい。 表 操作部及び紙巻器の設置寸法          単位:mm 器具の種類 紙巻器  便座上面端部(基点)からの水平距離 X1:便器前方へ約0〜100 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y1:便器上方へ約150〜400 2つの器具間距離 該当なし 器具の種類 便器洗浄ボタン 便座上面端部(基点)からの水平距離 X1:便器前方へ約0〜100 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y2:便器上方へ約400〜550 2つの器具間距離 Y3:約100〜200(紙巻器との垂直距離) 器具の種類 呼出しボタン 便座上面端部(基点)からの水平距離 X2:便器後方へ約 100〜200 便座上面端部(基点)からの垂直距離 Y2:便器上方へ約400〜550 2つの器具間距離 X3:約200〜300(便器洗浄ボタンとの水平距離)    注)JIS S0026では上図の配置・寸法を基本とするものの、JISの解説において“この規格に示す設置寸法以外のとなる場合”の配置例を示している(手すりを設置する場合、棚付紙巻器を設置する場合、スペア付紙巻器を設置する場合等)。上図の配置・寸法による設置が困難な場合等においてはJIS S0026解説を参照されたい。         (コラム3)多機能トイレの便器脇手すり等の配慮事項 ・重度の上肢障害のある利用者(例えば上肢の動作が困難な頸椎損傷や筋ジストロフィーの人)にとっては便器洗浄ボタン等の操作スイッチの壁面取り付け位置は低めが望ましいという結果が示されている(JIS S0026の規格制定の事前検証「ぐっどトイレプロジェクト」による)。本整備ガイドラインでは壁面に取り付ける手すりの高さの目安を650〜700mm程度と示しているが、操作スイッチ類を低めに設置するにあたり、手すりがスイッチや紙巻き器類に干渉しないよう高さの決定に際しては十分な配慮が必要である。 ・JIS S0026では上図の配置・寸法を基本とするものの、JISの解説において“この規格に示す設置寸法以外のとなる場合”の配置例を示している(手すりを設置する場合、棚付紙巻器を設置する場合、スペア付紙巻器を設置する場合等)。上図の配置・寸法による設置が困難な場合等においてはJIS S0026解説を参照されたい。 48ページ F通路 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車いすスペースとの間の通路のうち一以上及び当該車いすスペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、有効幅800mm以上を確保する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、有効幅900mm以上を確保することが望ましい。 G案内表示及び放送(車内) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 五 旅客用乗降口の戸の開閉する側を音声により知らせる設備が設けられていること。 (客室) 第32条 5 客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備を備える。 案内放送装置 ・客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を音声により提供するための車内放送装置を設ける。 ・旅客用乗降口には、旅客用乗降口の戸の開閉する側を音声により知らせる設備を設ける。 49ページ ○:標準的な整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・案内表示装置は、乗降口の戸の車内側上部、天井、連結部の扉上部、戸袋等、車両の形状に応じて見やすい位置に設置する。中吊り広告等で見えにくくならないように配慮する。 ・案内表示装置では、次駅停車駅名等に加え、次停車駅での乗換情報、次停車駅で開く戸の方向(左側か右側か)等を提供する。 ・文字情報は、確認が容易な表示方法とし、次停車駅等の基本情報は、スクロール表示などの場合は2回以上繰り返し表示する。 ・LED、液晶等で文字情報を提供する際には、わかりやすい文言を使用する。 ・可能な限り英語表記及びかな表記も併用する。 ・次駅までの距離が短く、表示時間が確保できない場合は表示項目・内容を選択する。 ・ロ−ビジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) 案内放送の方法 ・次に停車する鉄道駅の駅名、次停車駅での乗換情報、次停車駅に開くドアの方向(左側か右側か)等の運行に関する情報は、聞き取りやすい音量、音質、速さ、回数等で放送する。 ・次停車駅名等の案内放送は、前停車駅発車直後及び次停車駅到着直前に行う。 ◇:望ましい整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・大きな文字により見やすいように表示することが望ましい。 ・路線、列車種別等を色により表示する場合は、文字を併記する等色だけに頼らない表示方法に配慮することが望ましい。 ・可能な限りひらがな表記を併用することが望ましい。 緊急時の表示等 ・車両の運行の異常に関連して、遅延状況、遅延理由、運転再開予定時刻、振替輸送状況など、利用者が次の行動を判断できるような情報を提供することが望ましい。併せてネットワークを形成する他の交通機関の運行・運航に関する情報も提供することが望ましい。 ・運休・遅延の別や運行障害発生の原因等の情報を、運休が発生した場合や事故等の要因により遅延が発生した場合に提供することが望ましい。 ・相互直通運転を実施する場合における他社線車両の駅名等表示については、事業者間で調整し、表示内容を充実させることが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 50ページ 姿図・寸法 参考4-1-28:案内表示装置の例 参考例 参考4-1-29:案内表示装置の事例 ・JR東日本E233系の乗降口上部に設置された車内液晶表示装置 −到着駅、所要時間、到着駅ホームの出口案内・垂直移動設備位置、遅延情報、振替情報等を提供 51ページ 参考例 参考4-1-30:案内表示内容の事例 ・東京メトロ1000系の乗降口上部に設置された車内液晶表示装置による案内表示内容の例 −行き先、次停車駅名、所要時間、到着駅ホームの出口案内・垂直移動設備位置、運行情報(遅延情報等)等を提供 52ページ 参考例 参考4-1-31:座席位置から確認しやすいよう通路中央部に案内表示装置を設置した事例 ・JR西日本321系の車内情報案内表示器 号車番号、行き先、種別、次停車駅や停車中の駅、路線図を漢字・ひらがな・英語により表示 次停車駅の乗換案内等を表示 53ページ H車両間転落防止設備 移動等円滑化基準 (車体) 第33条 鉄道車両の連結部(常時連結している部分に限る。)には、プラットホーム上の旅客の転落を防止するための設備を設けなければならない。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 転落防止設備の設置 ・旅客列車の車両の連結部(常時連結している部分に限る)は、プラットホーム上の旅客の転落を防止するため、転落防止用ほろ等転落防止設備を設置する。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ◇:望ましい整備内容 音による警告 ・運行中に車両の連結・分離などが行われるなどの理由により、転落防止設備が設置できない場合には、音声による警告を行うことが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-32:車両間転落防止設備の例 転落防止用ほろ 54ページ 参考例 参考4-1-33:転落防止設備を設置できない車両連結部における音による転落防止注意喚起の事例 ・京浜急行電鉄 −転落防止設備が設置できない先頭車両同士が連結した場合に、ホーム上から連結部分への転落防止の注意喚起を図るため、注意放送を実施。 取付位置:先頭車両の連結部分床下にスピーカーを設置 放送方法:@車両が止まり、ドアが開くと注意警告音と注意放送が流れる。      Aドアが開いている間、「注意警告音」+注意放送「車両連結部です。出入口ではありません。ご注意ください」を4秒間隔でリピート再生する。 ・小田急電鉄(3000形3次車以降車両) −取付位置:先頭車両の連結部右側下部にスピーカーを設置 −放送方法:ドアが開いている間、下記「@→A→B→@に戻る」を繰り返す。 @注意警告音が数回鳴る。 A「車両連結部です。出入口ではありません。ご注意下さい。」という注意放送が流れる。 B4秒間の無音状態 先頭連結部右側下部 床下取り付け位置 スピーカーを設置 55ページ 1.2 都市間鉄道 【都市間鉄道車両の例】 座席/クロスシートタイプ 乗降口/片引自動ドア 片側1〜2カ所/両 参考4-1-34:都市間鉄道の姿図 ・JR在来線、民鉄の例 ・新幹線の例 56ページ @乗降口(車外) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 旅客用乗降口の床面の縁端とプラットホームの縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。 二 旅客用乗降口の床面とプラットホームとは、できる限り平らであること。 三 旅客用乗降口のうち一列車ごとに一以上は、幅が八十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (車体) 第33条 2 車体の側面に、鉄道車両の行き先及び種別を見やすいように表示しなければならない。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 段・隙間 ・車両とプラットホームの段・隙間について、段はできる限り平らに、隙間はできる限り小さいものとする。 乗降口の幅 ・旅客用乗降口のうち一列車に一以上は、有効幅を800o以上とする。 行き先・車両種別表示 ・車体の側面に、当該車両の行き先及び種別を大きな文字により見やすいように表示する。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 ○:標準的な整備内容 段差・隙間 ・施設側に渡り板が配備され速やかに設置できない場合、車両内に車椅子使用者の円滑な乗降のための渡り板(欄外コラム参照)の配備、段差解消装置を設置する。 乗降口の幅 ・1列車に1以上の旅客用乗降口は、車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、有効幅を900o以上とする。 ・1列車に車椅子スペースを複数設置する場合は、車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、各車椅子スペース直近の乗降口の有効幅を900mm以上とする。 車外表示 ・車体の側面に、車両番号(号車)等を大きな文字により見やすいように表示する。ただし、車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りではない。 行き先・車両種別表示 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚障害者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) ・照明又は高輝度LED等により、夜間でも視認できるものとする。 57ページ ◇:望ましい整備内容 段差・隙間 ・地方鉄道等において段差が大きい場合には、@施設側におけるホームの嵩上げ、A車両側における低床化、B段差解消装置を設置するなどより段差解消に努めることが望ましい。 隙間の警告 ・ホームが曲線の場合は車両とプラットホームの隙間が大きくなり危険であるため、音声及び光で危険性を注意喚起することが望ましい。 隙間解消装置 ・乗降口の床面の縁端部には、ステップ(クツズリ)を設け、車両とプラットホームの隙間をできるだけ小さくすることが望ましい。 ・上記の隙間を小さくするための設備の縁端部は、全体にわたり十分な太さで周囲の床の色とのコントラスト*を確保し、当該ステップを容易に識別できるようにすることが望ましい。 自動段差解消装置 ・車椅子スペース近傍の乗降口には、車椅子使用者が円滑に乗降するための補助設備を設けることが望ましい。 ドアのレール ・ドアのレールの出っ張りを解消することが望ましい。 聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプ ・聴覚障害者等が車内外からドアの開閉のタイミングを確認できるよう、車内ランプ又は車外ランプの点滅等によりドアの開閉のタイミングを表示することが望ましい。 視覚障害者用ドア開案内装置 ・視覚障害者等のために、ドアが開いていることを示すための音声案内装置(音声等により常時「開」状態を案内するもの)を設けることが望ましい。 ドア開閉ボタン ・ドア開閉ボタンを設けた場合は、わかりやすい形状として、周囲との輝度コントラストを確保するとともに、上部に点字を併記することが望ましい。 乗降口扉位置 ・乗降口の扉位置は列車間で可能な限り統一を図ることが望ましい。ただし、通勤型(短距離)鉄道用車両と都市間鉄道用車両等、用途が異なる車両が混在する路線の場合は、この限りではない。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 58ページ 姿図・寸法 参考4-1-35:乗降口(車外)の例 (コラム4)渡り板・段差解消装置(バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)183ページ参照) ・渡り板は、速やかに設置できる場所に配備する。 ・渡り板は、幅800mm以上、使用時の傾斜は10度以下として十分な長さを有するもの、耐荷重300kg程度のものとする。ただし、構造上の理由により傾斜角10度以下の実現が困難な場合には、車椅子の登坂性能等を考慮し、可能な限り傾斜角10度に近づけるものとする。 ・渡り板のホーム側接地面には滑り止めを施し、かつ、渡り板の車両側端部にひっかかりを設けること等により、使用時にずれることのないよう配慮する。 ・渡り板の使用においては、ホームの形状に配慮し、降りたホームの反対側の線路に転落する等の事故がないよう、渡り板の長さとホームの幅に十分注意する。 ・鉄軌道車両・ホーム等の構造上の理由により渡り板が長く、また、傾斜角が急(概ね10度を超える)となる場合には、脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設ける。 ・無人駅などでは車両内に搭載した渡り板を使用して係員が対応するなど、速やかな乗降のための柔軟な対応を行う。 (渡り板を常備しない場合) ・駅係員等が速やかに操作できる構造の段差・隙間解消装置を設置する。 59ページ 参考例 参考4-1-36:車両乗降口における自動段差・隙間解消設備の事例 ・近畿日本鉄道 アーバンライナー・ネクスト 60ページ 参考例 参考4-1-37:視覚障害者用ドア開案内装置の事例 ・各ドアの上部にスピーカーを設置し、ドアの開閉時および開いてからしばらくの間音声チャイムが鳴動。(700系新幹線)。 ・出入口上部の扉開閉案内器を設置し、ドアが開いている間は5秒間隔でチャイム(ポーン、ポーン)が鳴動(東武鉄道(一部車両))。 ・カモイ部のスピーカーより、ドア開閉時に「ピンポン音(1秒)」が1回鳴動するとともに、ドア開状態の間「ポーン(2秒)」が4秒間隔で連続鳴動する(西武鉄道(一部車両))。 (参考)700系新幹線 @ドア開時及び閉時に「ピンポンピンポン」が1回鳴動 Aドア開状態の間「ポーン、ポーン、...」が4秒間隔で15回鳴動 61ページ A乗降口(車内) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 四 旅客用乗降口の床面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 六 車内の段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより、車内の段を容易に識別できるものであること。 (客室) 第32条 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 6 客室内の旅客用乗降口の戸又はその付近には、当該列車における当該鉄道車両の位置その他の位置に関する情報を文字及び点字により表示しなければならない。ただし、鉄道車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 床面の仕上げ ・旅客用乗降口の床の表面は滑りにくい仕上げがなされたものとする。 乗降口脇の手すり ・乗降口脇には、高齢者、障害者等が円滑に乗降できるように、手すりを設置する。 乗降口付近の段の識別 ・段が生じる場合は、段の端部(段鼻部)の全体にわたり十分な太さで周囲の床の色と輝度コントラスト*を確保し、容易に当該段を識別できるようにする。 号車及び乗降口位置等の点字・文字表示 ・各車両の乗降口の戸又はその付近には、号車及び乗降口位置(前方または後方位置、近接座席番号等)を文字及び点字(触知による案内を含む。)により表示する。ただし、車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ○:標準的な整備内容 乗降口脇の縦手すり ・乗降口の両脇に設置する。 ・縦手すりの径は25mm程度とする。 乗降口付近の段の識別 ・段の端部(段鼻部)の全体にわたり周囲の床の色と輝度コントラスト*を確保する際には、その太さを幅50mm程度以上として、容易に当該段を識別できるようにする。 車内の段付近の手すり ・車内に段がある場合には、歩行補助のため段の付近に手すりを設置する。 戸の開閉の音響案内 ・視覚障害者が円滑に乗降できるように、戸の位置及び戸の開閉が車内外乗降位置からわかるようなチャイムを戸の内側上部等に設置し、戸の開閉動作に合わせてチャイム音を鳴動させる。 号車及び乗降口位置等の点字・文字表示 ・案内表示は、視覚障害者が指により確認しやすい高さに配慮し、床から1,400〜1,600mm程度の高さに設置する。 ・戸先側に表示し、両開き戸においては左側の戸に表示する。 62ページ ◇:望ましい整備内容 乗降口端部の識別 ・乗降口端部の床面は、周囲の床の色との輝度コントラスト*を確保し容易に識別できるようにすることが望ましい。 聴覚障害者用ドア開閉動作開始ランプ ・聴覚障害者等が車内外からドアの開閉のタイミングを確認できるよう、車内ランプ又は車外ランプの点滅等によりドアの開閉のタイミングを表示することが望ましい。 ドア開閉ボタン ・ドア開閉ボタンを設けた場合は、わかりやすい形状とするとともに、周囲の色との輝度コントラスト*を確保し、上部に点字を併記することが望ましい。 その他設備 ・ごみ箱など必要な設備について、当該部に点字表示することが望ましい。 参考例 参考4-1-38:号車及び乗降口位置などの表示の例 ・JR東日本E5系 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 63ページ B車椅子スペースと座席 移動等円滑化基準 (客室) 第32条 客室には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一列車ごとに一以上設けなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 車いす使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 五 車いすスペースである旨が表示されていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの設置数 ・客室には1 列車に1以上の車椅子スペースを設ける。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは、車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さを確保する。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に掲出する。 車椅子スペースの手すり ・車椅子スペースには、車椅子使用者が握りやすい位置に手すりを設置する。 床面の仕上げ ・車椅子スペースの床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置数 ・車両編成が長い場合には、1列車に2以上の車椅子スペース(多目的室が利用できる場合も含む)を設ける。 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子スペースは、 @ 乗降の際の移動距離を短くする。 A 都市間鉄道のクロスシートでは、車椅子使用者が円滑に通行するための十分な車内通路幅の確保が困難な場合も多いことから、客室仕切扉から入ってすぐの座席の脇にスペースを設けること(参考例参照)。  ・車椅子使用者の数、車椅子の大きさ等から車椅子に乗車したまま客室内にとどまるスペースが不足する場合は、円滑に利用できるように車椅子スペース近くに多目的室等を設置する。 車椅子スペースの広さ ・1,300mm以上×750mm以上とする(標準型車椅子の最大寸法に一定の余裕幅を考慮)。 ・車椅子スペースは、車内の通行に支障がない形態で確保する。 移乗する座席 ・都市間鉄道は長時間の乗車となる場合が多いので、車椅子スペースの近くに、移乗がしやすいようにスペース側のひじ掛けがはね上がる座席または回転シートを用意する。 64ページ 固定装置 ・移乗後、折りたたんだ車椅子を固定するためのバンド、ロープ等を設ける。 車椅子スペースの増設 ・利用の状況、車両編成に応じ、車椅子スペースの増設について取り組む。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内に加え車外にも掲出する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置数・配分 ・各路線の利用実態を踏まえ、車椅子使用者等の利用が多い場合には、車椅子スペースを増設することが望ましい。 ・車椅子スペースを設ける際には、列車の編成両数や利用状況を勘案し、座席種別(例えば、指定席・自由席等)の配分にも考慮することが望ましい。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースの広さは、1,400mm以上×800mm以上とすることが望ましい。この場合、車椅子が転回できるよう、前述車椅子スペースを含め、1,500mm 以上×1,500mm 以上の広さを確保することが望ましい。 65〜66ページ 参考例 参考4-1-39:車椅子スペースの例 ・横2座席分の例 (南海ラピートの例)(京成スカイライナーの例) ・縦2座席分の例 (N700系新幹線の例) ・縦2座席分×横2座席分の例 (台湾新幹線の例) ※自動扉センサーへ干渉しないよう配慮が必要。 ※JIS規格内の幅の車椅子で乗車している場合、通路の通行に支障がなく、車内販売のワゴンが通行できるよう配慮が必要。 67ページ 参考例 参考4-1-40:車椅子スペースの工夫 下記のような使い方が想定される。 −車椅子から一般座席への移乗対応のために横1席のみ設置するケース。 −移乗しない場合のために車椅子のまま利用できるスペースを確保したケース。 −車椅子使用者と一般利用者の同乗に対応したケース。 (コラム5)多目的室 ・都市間鉄道において様々な利用形態を想定して多目的室を設置している事例がある。 ・利用形態としては、予約して使用するケースと、座席を別途確保している乗客が一時的に利用するケースが存在する。また、プライバシーを確保するケースとオープンなケースがある。 ・利用者としては、通常の座席の使用が難しい乗客、気分が悪くなった乗客、急病人、けが人、介助が必要な乗客、乳幼児連れの乗客(授乳等を行いたい乗客)等が想定される。 ・多目的室の設置にあたっては、車椅子使用者が利用することも想定し、車椅子でのアクセスが可能な仕様が求められる。 Cトイレ ○:標準的な整備内容 ※都市間鉄道のトイレは、通勤型鉄道のトイレに関するガイドライン及び姿図・寸法等に準じるものとする。 D洗面所 ○:標準的な整備内容 車椅子対応 洗面所 ・車椅子対応の洗面所においては、洗面器の高さは760mm程度とし、また、洗面器の下部に車椅子のフットサポートが入る空間を設ける。 水洗金具 ・視覚障害者の利用に配慮し、センサー式のみの設置は避けることが望ましい。センサー式の水洗金具を用いる場合には、センサー部は蛇口の下側に統一する。 鏡 ・蛇口付近の高さまで鏡を設置する。 68ページ 姿図・寸法 参考4-1-41:洗面所の例 700系新幹線の洗面所 69ページ E車内通路 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 四 旅客用乗降口の床面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 六 車内の段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより、車内の段を容易に識別できるものであること。 (客室) 第32条 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車いすスペースとの間の通路のうち一以上及び当該車いすスペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、有効幅800mm以上を確保する。 床面の仕上げ ・床の表面は滑りにくい仕上げがなされたものであること。 手すり ・通路及び客室内には手すりを設ける。 ○:標準的な整備内容 車内の段・階段 ・2階建て車両等でやむを得ず段が生じる場合は、段端部(段鼻部)の全体にわたり幅50mm程度の太さで周囲の床の色との輝度コントラスト*を確保し、容易に当該段を識別しやすいものとする。 ・車内に階段がある場合には、高さは200mm以下、奥行きは300mm程度、通路の幅は800mm以上とする。 手すり ・車内に段・階段がある場合には、当該段・階段の付近に手すりを設ける。 ・手すりの高さは、800〜850mm程度。手すりの径は30mm程度とする。 座席手すり ・クロスシート座席には、座席への移動や立ち座り、立位時の姿勢保持に配慮し、座席肩口に手すり等を設ける。 ◇:望ましい整備内容 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、有効幅900mm以上を確保することが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 70ページ 姿図・寸法 参考4-1-42:車内通路の例 71ページ F座席番号 ○:標準的な整備内容 座席番号の表示 ・座席番号は、できるだけ大きく、周囲との輝度コントラストを確保し、明確かつわかりやすい表示とする。 ◇:望ましい整備内容 点字表示 ・座席の肩口など、通路に面した適切な位置に、座席番号の点字表示並びに文字表示を行うことが望ましい。点字の形状や表記法はJIS T0921にあわせたものとする。 参考例 参考4-1-43:座席番号の大型表示の事例 ・近畿日本鉄道 アーバンライナー・ネクスト −文字高80mm、文字色:黒 200〜276mm(大きさの違いは2桁表示との違い) ・700系新幹線 −文字高27mm、文字色:ダークグレー+ベージュ 参考4-1-44:座席番号を点字表示している事例 ・JR北海道の一部車両 −一部の車両において、座席番号を座席の上部取手部にプレートを彫り込み設置。 72ページ G案内表示及び放送(車内) 移動等円滑化基準 (旅客用乗降口) 第31条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 五 旅客用乗降口の戸の開閉する側を音声により知らせる設備が設けられていること。 (客室) 第32条 5 客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・車内には、聴覚障害者等のために、客室仕切扉の客室側上部等の見やすい位置に、次停車駅名等の必要な情報を、文字等の視覚情報により提供する装置を設ける。 案内放送装置 ・車内には、次停車駅名やその際戸の開閉する側その他の運行に関する情報を音声により提供するための車内放送装置を設ける。 ○:標準的な整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・案内表示装置では、次駅停車駅名等に加え、次停車駅での乗換情報、次停車駅で開くドアの方向(左側か右側か)を提供する。 ・文字情報は、確認が容易な表示方法とし、次停車駅等の基本情報は、スクロール表示などの場合は2回以上繰り返し表示する。 ・LED、液晶等で文字情報を提供する際には、わかりやすい文言を使用する。 ・可能な限り英語表記及びかな表記も併用する。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) 案内放送の方法 ・次停車駅名、次停車駅での乗換情報、次停車駅に開くドアの方向(左側か右側か)等の運行に関する情報は、聞き取りやすい音量、音質、速さ、回数等で放送する。 ・次停車駅名等の案内放送は、前停車駅発車直後及び次停車駅到着直前に行う。 ◇:望ましい整備内容 案内表示装置(LED、液晶等) ・大きな文字により見やすいように表示することが望ましい。 ・路線、列車種別等を色により表示する場合は、文字を併記する等色だけに頼らない表示方法に配慮することが望ましい。 ・可能な限りひらがな表記を併用することが望ましい。 73ページ 緊急時の表示等 ・車両の運行の異常に関連して、遅延状況、遅延理由、運転再開予定時刻、振替輸送状況など、利用者が次の行動を判断できるような情報を提供することが望ましい。併せて、ネットワークを形成する他の交通機関の運行・運航に関する情報も提供することが望ましい。  ・運休・遅延の別や運行障害発生の原因等の情報を、運休が発生した場合や事故等の要因により遅延が発生した場合に提供することが望ましい。 ・相互直通運転を実施する場合における他社線車両の駅名等表示については、事業者間で調整し、表示内容を充実させることが望ましい。 姿図・寸法 参考4-1-45:案内表示(車内)の例 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 74ページ H車両間転落防止設備 移動等円滑化基準 (車体) 第33条 鉄道車両の連結部(常時連結している部分に限る。)には、プラットホーム上の旅客の転落を防止するための設備を設けなければならない。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 転落防止設備の設置 ・旅客列車の車両の連結部(常時連結している部分に限る)は、プラットホーム上の旅客の転落を防止するため、転落防止用ほろ等転落防止設備を設置する。ただし、プラットホーム設備等の状況により旅客の転落のおそれがない場合はこの限りではない。 ◇:望ましい整備内容 音による警告 ・運行中に車両の連結・分離などが行われるなどの理由により、転落防止設備が設置できない場合には、音声による警告を行うことが望ましい。ただし、プラットホーム設備等の状況により旅客の転落のおそれがない場合はこの限りではない。 姿図・寸法 参考4-1-46:車両間転落防止設備の例 転落防止用ほろ 75ページ 1.3 モノレール・新交通システム 各部位、設備のデザインは、「通勤型(短距離)鉄道・地下鉄」に準ずる。 1.4 軌道車両・低床式軌道車両 (1)軌道車両(路面電車) 各部位、設備のデザインは、「通勤型(短距離)鉄道・地下鉄」及び「都市内路線バス」に準ずる。 @通勤型(短距離)鉄道・地下鉄に準ずる部位、設備 ・乗降口 ・優先席 ・吊り手、手すり ・車椅子スペース ・トイレ(設ける場合) ・案内表示(車内) ・案内放送(車内) ・通路 ・行先表示(車外) A都市内路線バスに準ずる部位、設備 ・降車ボタン(設ける場合) ・運賃箱 ・車内放送装置 ・車外放送装置 ・整理券発行機(設ける場合) 76ページ (2)低床式軌道車両 公共交通移動等円滑化基準に規定されている低床式軌道車両については、(1)の「軌道車両(路面電車)」に準ずるとともに、加えて求められる項目を以下に示す。なお、低床式軌道車両とは、乗降口部分の床面高さが軌条面から400o以下の軌道車両であり、旅客用乗降口から客室の主要部分までの通路の床面に段がない軌道車両のことである。 参考例 参考4-1-47:低床式軌道車両の姿図(例) @車内通路、車椅子スペース、トイレ 移動等円滑化基準 (準用) 第34条 前節の規定は、軌道車両(次条に規定する低床式軌道車両を除く。)について準用する。 (低床式軌道車両) 第35条 前節(第三十一条第三号ただし書並びに第三十二条第一項ただし書、第三項ただし書及び第四項ただし書を除く。)の規定は、低床式軌道車両(旅客用乗降口の床面の軌条面からの高さが四十センチメートル以下の軌道車両であって、旅客用乗降口から客室の主要部分までの通路の床面に段がないものをいう。)について準用する。 【参考(前節(鉄道車両)の規定のうち、ただし書きを適用しない条文)】 第31条第3号 ・旅客用乗降口のうち一列車ごとに一以上は、幅が八十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 第32条第1項 ・客室には、次に掲げる基準に適合する車椅子スペースを一列車ごとに一以上設けなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 車いす使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 77ページ 五 車椅子スペースである旨が表示されていること。 第32条第3項 ・便所を設ける場合は、そのうち一列車ごとに一以上は、車いす使用者の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 第32条第4項 ・前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車椅子スペースとの間の通路のうち一以上及び当該車いすスペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 ※以下に記載の無い項目は、通勤型(短距離)鉄道・地下鉄、都市内路線バスに準ずる。 乗降口の幅 ・1列車に1以上の旅客用乗降口は、有効幅を800o以上とする。 車椅子スペースの設置数 ・客室には1列車に少なくとも1カ所以上車椅子スペースを設ける。 車椅子スペース広さ ・車椅子スペースは、車椅子使用者が円滑に利用するために十分な広さを確保する。 車椅子スペースの表示 ・車椅子スペースであることが容易に識別しやすく、かつ、一般の乗客の協力が得られやすいように、車椅子用スペースであることを示す車椅子マークを車内及び車外に掲出する。 手すり ・通路及び客室内には、手すりを設置する。 トイレの設置 ・客室にトイレを設置する場合は、1列車に1以上車椅子での利用が可能なトイレを設ける。この場合、通勤型鉄道のトイレに関するガイドライン及び姿図・寸法等に準ずるものとする。 車椅子用設備間の通路幅 ・旅客用乗降口から車椅子スペースへの通路のうち1以上、及び車椅子スペースから車椅子で利用できる構造のトイレ(トイレが設置される場合に限る)への通路のうち1以上は、幅800mm以上を確保する。 ○:標準的な整備内容 乗降口の幅 ・1列車に1以上の旅客用乗降口は、車椅子使用者等が円滑に乗降できるように、有効幅を900o以上とする。 車内スロープ ・乗降口の床面から客室の主要部分(車椅子スペース)までの通路の床面は平らであること。 ・構造上の理由により、上記箇所の通路の床面にスロープを設ける場合は、勾配は5度(約9%・約1/12)以下とする。 手すり ・車椅子使用者が握りやすい位置に手すりを設置する。 多機能トイレの設置 ・客室にトイレを設置する場合は、1列車に1以上車椅子での利用が可能で、かつ、付帯設備を設けた多機能トイレを設ける。 78〜80ページ ◇:望ましい整備内容 車内スロープ ・車椅子により通行が想定される全ての床面は、平らであることが望ましい。        ・構造上の理由により、上記箇所の通路の床面にスロープを設ける場合は、勾配は5度(約9%・約1/12)以下とする。 通路幅 ・車椅子により通行が想定される全ての通路は、幅900mm以上(狭軌を採用する場合等構造上困難な場合は可能な限り広い幅)を確保することが望ましい。 車椅子スペース ・車椅子スペースは、車椅子使用者、ベビーカー使用者等の円滑な乗車に配慮し、2以上の車椅子が乗車可能であることが望ましい。 参考例 参考4-1-48:車椅子スペースの事例 *左図は座席を設置せず、常に車椅子スペースとして使用する形態、右図は通常車椅子スペースとして使用され、はね上げ機構の座席により必要に応じて座席を引き出せる形態の車椅子スペースである(自ら座席を跳ね上げることが困難な車椅子使用者に配慮)。 参考例 参考4-1-49:富山ライトレールの外観     参考例 参考4-1-50:段・隙間の小さい昇降口及び勾配の少ないスロープの事例 ・富山ライトレール   参考例 参考4-1-51:車内スロープの事例 ・富山ライトレール   参考例 参考4-1-52:車内空間の事例 ・長崎電気軌道3000形   参考例 参考4-1-53:運賃箱・ICカードリーダーの事例 ・富山ライトレール   参考例 参考4-1-54:運行情報を示す液晶表示装置の事例 ・富山ライトレール 81ページ 1.5 その他の鉄道 各部位、設備のデザインは、「通勤型(短距離)鉄道・地下鉄」に準ずる。 (コラム6)鋼索鉄道(ケーブルカー)におけるバリアフリー化 ・鋼索鉄道(ケーブルカー)は、主に山麓から山頂までを移動するための交通手段として敷設されており、走行する斜面に合わせて車内の通路や乗降場が階段状になっていることが特徴である。こういった特殊性があるものの、車椅子使用者が乗降できるように乗降口の幅を確保して車椅子での乗車を可能にする等、できるだけ障害当事者に配慮した移動等円滑化を図っている事例がある。 参考4-1-55:車椅子使用者に配慮したケーブルカーの事例 ・高野山ケーブルカー (コラム7)BRT(Bus Rapid Transit) ・BRTは、専用の走行空間を有して大量輸送かつ定時輸送を行う輸送システムである。車両はバス車両と同等の車両を用いることが多い。 ・ブラジルのクリチバやイギリス・アメリカなどで導入事例があり、国内でも一部区間で専用の走行空間を有したバス運行システムが実現している。 ・BRTの車両として低床式軌道車両に準ずる車両を用いる場合は、「1鉄軌道」の「1.4軌道車両・低床式軌道車両」を参照のこと。バス車両に準ずる車両を用いる場合は、「2バス」の「2.1都市内路線バス」を参照のこと。 参考4-1-56:BRT(Bus Rapid Transit) ブラジル・クリチバの事例 82ページ 2 バス 2.1 都市内路線バス 平成12年に制定された交通バリアフリー法により、路線バスには新たに事業の用に供する場合において、車椅子スペースを設けることや床面の地上面からの高さを65cm以下とすること等の措置が義務付けられた。ノンステップバスは、本格的に登場してから約15年が経過し、平成15年3月には次世代普及型と称して標準仕様が策定される等、機能向上とコストダウンが図られてきたところである。 平成22年度末までのノンステップバスの整備目標30%に対して、同年度末の実績は27.9%とやや目標に到達していないものの順調に整備が進んでいるところである。一方、ワンステップバスも含めたバリアフリー化については、平成22年度末までに100%という目標に対して、平成22年度末での実績が49.4%にすぎず、特に地方でのバリアフリー化が進んでいない。なお、平成22年度末には平成32年度末までの整備目標として、適用除外認定車両を除いたバス車両のうち、70%をノンステップバスとすることとなった。 また、平成23年度、「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係るバリアフリー車両の開発検討会」では、多少の数値的緩和を許容してノンステップバスでもワンステップバス並みの走破性とした上で、ノンステップバスに一本化することが望ましいと判断され、中期目標の車両イメージがとりまとめられた。これによってノンステップバスのより一層の普及が望まれる。(一方、車両の代替を都市部からの中古車に依存する傾向が強い地方の事業者においても、今後、低床の中古車の導入によるバリアフリー化が進むと考えられるが、都市部の事業者における排ガス規制に対応するための車両の早期代替の動きが事実上終了し、今後、都市部の事業者の車両の使用期間も長期化することが予想されるため、地方のバリアフリー化をより促進するような施策が望まれる。) 長期的には、より改良されたノンステップバスの登場が期待されるが、欧州型のような後ろ向き座席を受容しない日本において、上記開発検討会ではイメージが描ききれなかった。最近試作された電動フルフラットバスのような形態に一気に進むか、コスト面での課題をどのようにクリアしていくのか、今後の議論が望まれる。 さらに地方の過疎地域では、バス路線の廃止に伴い乗合タクシーへの転換も進んできている。車両のダウンサイジングが顕著な中、定員10〜20人程度の車椅子での乗降にも対応した乗合仕様の低床車両が求められているものの、現状では存在していない。生産数、コストの点で開発が進まないと言われているが、このような車両への期待も高まっており、今後の積極的な取り組みが望まれる。 一方で、車椅子使用者が利用可能なバス停留所を増加させるとともに、乗降時の安全性や利用しやすさの向上を図るためには、車両のバリアフリー化のみならず、停留所のバリアフリー化も進める必要があり、道路管理者、バス事業者等の関係者間での協議、連携を図り、「道路の移動等円滑化整備ガイドライン」等を踏まえた上で環境設備を行っていく必要がある。 また、ハード面での取り組みに加え、乗務員による車椅子使用者の乗降や車椅子の固定のための設備の使用方法の習熟などのソフト面での取り組みについても適切に進めることが必要である。 83ページ (1)大型ノンステップバス 全長/9m以上 全幅/約2.5m(2.5m未満) 全高/約3.8〜約2.9m(3.8m未満) 参考4-2-1:大型ノンステップバスの平面図 (2)中型ノンステップバス 全長/7m以上9m未満 全幅/約2.3m 全高/約3.1〜約2.8m 参考4-2-2:中型ノンステップバスの平面図 (3)小型ノンステップバス 全長/7m未満 全幅/約2.1〜約2.0m 全高/約2.7〜約2.4m 参考4-2-3:小型ノンステップバスの平面図 84ページ @乗降口 移動等円滑化基準 (乗降口) 第37条 乗降口の踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものでなければならない。 2 乗降口のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 (床面) 第38条 国土交通大臣の定める方法により測定した床面の地上面からの高さは、六十五センチメートル以下でなければならない。 2 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものでなければならない。 ○移動等円滑化のために必要なバス車両の構造及び設備に関する細目を定める告示 (平成12年11月1日 運輸省告示第349号)抄 第3条 省令第三十八条第一項の国土交通大臣の定める方法は、次のとおりとする。 一 省令第三十七条第二項の基準に適合する乗降口附近の床面(すべり止めを除く。以下同じ。)の地上面からの高さを測定すること。 二 道路運送車両の保安基準(昭和二十六年運輸省令六十七号)第一条第六号の空車状態で測定すること。ただし、車高調整装置(旅客が乗降するときに作動できるものに限る。)を備えているバス車両にあっては、当該装置を作動させた状態で床面の地上面からの高さを測定することができる。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 踏み段の識別 ・乗降口の踏み段(ステップ)の端部は周囲の部分及び路面と輝度コントラスト*が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものとする。 乗降口の幅 ・1以上の乗降口の有効幅は800mm以上とする。 床の表面 ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものとする。 ○:標準的な整備内容 乗降口の高さ ・乗降時における乗降口の踏み段(ステップ)高さは270mm以下とする。 ・傾斜は極力少なくする。 踏み段の識別 ・乗降口に照射灯などの足下照明を設置し、踏み段の夜間の視認性を向上させる。 乗降口の幅 ・車椅子使用者による乗降を考慮し、1以上の乗降口の有効幅は900mm以上とする。(小型は800mm以上) ・大量乗降を想定する車両の場合には、1以上の乗降口の有効幅は1,000mm以上とする。 ドア開閉の音響案内 ・視覚障害者等の安全のために、運転席から離れた乗降口には、ドアの開閉動作開始ブザーを設置する。 85ページ 手すりの設置 ・乗降口の両側(小型では片側)に握りやすくかつ姿勢保持しやすい手すりを設置する。 ・手すりの出っ張り等により、乗降口の有効幅を支障しないよう配慮して設置する。 ・乗降口に設置する手すりの径は25mm程度とする。 ・手すりの表面は滑りにくい素材や仕上げとする。 ◇:望ましい整備内容 乗降口の幅 ・全ての乗降口から車椅子使用者等が乗降できるよう、全ての乗降口の有効幅を900mm以上とすることが望ましい。 乗降口の高さ ・乗降時における乗降口の踏み段(ステップ)高さは200mm以下とすることが望ましい。 ・傾斜は排除することが望ましい。 手すりの設置 ・乗降時に車体の外側に張り出す手すりが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 86ページ 参考例 参考4-2-4:乗降口の床面、手すり等の事例 ・識別しやすい乗降口踏み段端部 ・乗降口の両側に握りやすく姿勢保持しやすい手すりを設置 ・乗降口の手すりの径は25mm程度 ・手すりの表面を滑りにくい素材や仕上げ ・東京都交通局(2005年度以降ノンステップバス標準仕様)   参考例 参考4-2-5:車椅子で乗降できる乗降口の事例 ・乗降口にステップ照射灯など足下照明を設置 ・車椅子使用者を乗降させる乗降口幅900mm以上 ・東京都交通局(2005年度以降ノンステップバス標準仕様) 参考例 参考4-2-6:乗降時乗降口の踏み段(ステップ)高さを低くした事例 ・乗降時乗降口の踏み段(ステップ)の高さ270mm以下(ニーリング時) ・傾斜を極力なくしている ・東京都交通局(2005年度以降ノンステップバス標準仕様) 87ページ Aスロープ板 移動等円滑化基準 (乗降口) 第37条 2 乗降口のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 スロープ板その他の車いす使用者の乗降を円滑にする設備(国土交通大臣の定める基準に適合しているものに限る。)が備えられていること。 ○移動等円滑化のために必要なバス車両の構造及び設備に関する細目を定める告示 (平成12年11月1日 運輸省告示第349号)抄 (乗降設備) 第2条 省令第三十七条第二項第二号の国土交通大臣の定める基準は、次のとおりとする。 一 スロープ板の幅は、七十二センチメートル以上であること。 二 スロープ板の一端を縁石(その高さが十五センチメートルのもの。)に乗せた状態において、スロープ板と水平面とのなす角度は、十四度以下であること。 三 携帯式のスロープ板は、使用に便利な場所に備えられたものであること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 スロープ板の設置 ・車椅子使用者等を乗降させる乗降口のうち1以上には、車椅子使用者等の乗降を円滑にするためのスロープ板等を設置する。 容易に乗降できるスロープ ・車椅子使用者等の乗降を円滑にするためのスロープ板の幅は720mm以上とする。 ・スロープ板の一端を地上高150mmのバスベイに乗せた状態における、スロープ板の角度は14度以下とする。 ・スロープ板は、容易に取り出せる場所に格納する。 ○:標準的な整備内容 容易に乗降できるスロープ ・車椅子使用者等を乗降させるためのスロープ板の幅は800mm以上とする。 ・地上高150mmのバスベイより車椅子使用者等を乗降させる際のスロープ板の角度は7度(約12%勾配・約1/8)以下とし、スロープ板の長さは1,050mm以下とする。 ・耐荷重については、電動車椅子本体(80〜100kg)、車椅子使用者本人、介助者の重量を勘案し、300kg程度とする。 ・スロープ板は、使用時にはフック等で車体に固定できる構造とする。 ・車椅子の脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設ける。 ・スロープ板の表面は滑りにくい材質又は仕上げとする。 ◇:望ましい整備内容 容易に乗降できるスロープ ・車椅子使用者等を乗降させる際のスロープ板の角度は5度(約9%勾配・約1/12)以下とすることが望ましい。また、自動スロープ板、バス停側の改良等により、さらに乗降しやすい方法を採用することが望ましい。 ・乗務員の混乱防止、スロープ板の出し入れの迅速化のため、反転式スロープ板等の取り扱いが簡易なスロープ板の採用が望ましい。 88ページ 参考例 参考4-2-7:スロープ板の事例 ・車椅子使用者等を乗降させるためのスロープ板の幅が800mm以上 ・スロープ板の表面は滑りにくい仕上げ ・スロープ板をフックで固定 ・車椅子の脱輪を防止するよう左右に立ち上がりを設置 ・東京都交通局(2005年度以降ノンステップバス標準仕様) 89ページ 参考例 参考4-2-8:コミュニティバス等において、長いスロープも併せて装備し、長いスロープの設置可能な場所では緩やかな傾斜により対応している事例 ・荒川区コミュニティバス「さくら」−京成バス B床 移動等円滑化基準 (床面) 第38条 2 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものでなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 床の表面 ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものとする。 90ページ C車椅子スペース 移動等円滑化基準 (車いすスペース) 第39条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一以上設けなければならない。 一 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 二 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 三 車いすを固定することができる設備が備えられていること。 四 車いすスペースに座席を設ける場合は、当該座席は容易に折り畳むことができるものであること。 五 他の法令の規定により旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーその他の装置を備えることとされているバス車両である場合は、車いす使用者が利用できる位置に、当該ブザーその他の装置が備えられていること。 六 車いすスペースである旨が表示されていること。 七 前各号に掲げるもののほか、長さ、幅等について国土交通大臣の定める基準に適合するものであること。 ○移動等円滑化のために必要なバス車両の構造及び設備に関する細目を定める告示 (平成12年11月1日 運輸省告示第349号)抄 第4条 省令第三十九条第七号の国土交通大臣の定める基準は、次のとおりとする。 一 車いすスペースの長さは、百三十センチメートル(床面からの高さが三十五センチメートル以上の部分にあっては、百十五センチメートル)以上であること。ただし、車いす使用者が同じ向きの状態で利用する車椅子スペースを二以上縦列して設ける場合にあっては、車いすスペース(車いす使用者が向く方向の最前に設けられるものを除く。)の長さは、百十センチメートル以上であればよい。 二 車いすスペースの幅は、七十五センチメートル以上であること。 三 車いす使用者が利用する際に支障とならない場合にあっては、車いすスペースの前部及び後部の側端部は、平たんでなくてもよい。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの確保 ・バスには車椅子スペースを1以上確保する。 ・車椅子スペースには、車椅子使用者が利用する際に支障となる段は設けない。 手すりの設置 ・車椅子スペースには、車椅子使用者が円滑に利用できる位置に手すりを設置する。 車椅子固定装置 ・車椅子スペースには、車椅子固定装置を備える。 車椅子スペースに設置する座席 ・車椅子スペースに座席を設置する場合には、その座席は容易に折り畳むことができる構造とする。 降車ボタン ・車椅子スペースには、車椅子使用者が容易に使用できる押しボタンを設置する。 91ページ 車椅子スペースの表示 ・乗降口(車外)に、車椅子マークステッカーを貼り、車椅子による乗車が可能であることを明示する。            ・車椅子スペースの付近(車内)にも、車椅子マークステッカーを貼り、車椅子スペースであることが容易に分かるとともに、一般乗客の協力が得られやすいようにする。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの2脚分確保 ・バスには2脚分以上の車椅子スペースを確保する。 ・ただし、車椅子を取り回すためのスペースが少ない小型バスなどの場合や車椅子使用者の利用頻度が少ない路線にあっては1脚分でもやむを得ない。 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子使用者がバスを利用しやすい位置に車椅子スペースを設置する。 ・乗降口から3,000mm以内に設置する。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースは、車椅子が取り回しできる広さとする。 ・車椅子を固定する場合のスペースは(長さ)1,300mm以上×(幅)750mm以上×(高さ)1,300mm以上とする。ただし2脚の車椅子を前向きに縦列に設ける場合には2脚目の長さは1,100mm以上で良い。 ・後向きに車椅子を固定する場合には、車椅子スペース以外に車椅子の回転スペースを確保する。 車椅子固定装置 ・車椅子固定装置は、短時間で確実に車椅子が固定できる構造とする。 ・前向きの場合は、3点ベルトにより車椅子を床に固定する。また、固定装置付属の人ベルトを装着する。 ・後ろ向きの場合は背もたれ板を設置し、横ベルトで車椅子を固定する。また、姿勢保持ベルトを用意しておき、希望によりこれを装着する。 降車ボタン ・押しボタンは手の不自由な乗客でも使用できるものとする。 乗務員の接遇、介助 ・車椅子の固定、解除、人ベルトの着脱は、乗務員の適切な接遇・介助によって行う。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの数 ・ノンステップバスの普及に合わせ、車椅子スペースの数の再検討が望まれる。 車椅子固定装置 ・一層の車椅子固定の迅速化を図るため、前向きの場合には巻取り式のような装置を用いることが望ましい。また、腰ベルトを使用する場合は、腰骨に正しく装着されることが望ましい。 ・方式の多様化による乗務員の混乱を避けるため、仕様の統一が望ましい。 手すりの設置 ・安全ベルトに代わり得る手すり(安全バー等)の開発が望ましい。 車椅子スペースの使用表示 ・車椅子スペースの使用の有無、車椅子使用者からの降車合図は運転席に表示されることが望ましい。 車椅子スペースに設置する座席 ・車椅子使用者が利用しやすいように、車椅子スペースに座席を設置する場合には、その座席は常時跳ね上げ可能な構造とすることが望ましい。 車椅子スペースの表示 ・車椅子マークと併せてベビーカーも利用可能であることを表示することが望ましい。 92ページ 参考例 参考4-2-9:車椅子スペース、車椅子固定装置の事例 ・車内表記を可能な限りピクトグラムにより表示 ・2脚分以上の車椅子スペースを確保 ・車椅子使用者が利用しやすい位置に車椅子スペースを設置 ・車椅子が取り回しできる広さを確保 ・車椅子を固定する場合のスペースを1,300mm×750mm×1,500mm以上確保 ・車椅子固定装置は、短時間で確実に車椅子が固定できる構造 ・前向きの場合、3点ベルトにより床に固定し、固定装置付属の人ベルトを装着 ・車椅子使用者がバス乗車中に利用できる手すりを設置 ・車椅子使用者が容易に使用できる押しボタンを設置 ・東京都交通局(2005年度以降ノンステップバス標準仕様) 93ページ    参考例 参考4-2-10:フリースペースの事例 ・座席はね上げ式車椅子スペース以外にフリースペースを設置。 ・東京都交通局(フリースペース設置車両) 参考例 参考4-2-11:タイヤハウスを小さくするとともに後部まで床がフラットな車両の事例 ・慶應義塾大学で製作した床がフルフラットな電気バス 参考例 参考4-2-12:ベビーカーが利用可能なステッカーの事例 ・横浜市交通局/京都市交通局 94ページ (コラム8)フリースペースの設置について ・国土交通省ではフリースペースの設置のあり方について、モックアップの作成を行った。 参考4-2-13:フリースペースの設置検討事例 出典:国土交通省「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係るバリアフリー車両の開発」報告書(平成21年度) (コラム9)車椅子固定装置について ・日本自動車工業会バス分科会で都市内路線バス車両の検討・試作を実施し、車椅子固定装置も検討。 参考4-2-14:車椅子固定装置の検討事例 95ページ D低床部通路 移動等円滑化基準 (通路) 第40条 第三十七条第二項の基準に適合する乗降口と車いすスペースとの間の通路の幅(容易に折り畳むことができる座席が設けられている場合は、当該座席を折り畳んだときの幅)は、八十センチメートル以上でなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 低床部通路の幅 ・乗降口と車椅子スペースとの通路の有効幅(容易に折り畳むことができる座席が設けられている場合は、当該座席を折り畳んだときの幅)は800mm以上とする。 ○:標準的な整備内容 低床部通路の幅 ・乗降口付近を除く低床部分の通路には段やスロープを設けない。 ・低床部の全ての通路の有効幅を600mm以上とする。ただし、全幅が2.3m級以下のバスであって、構造上、基準を満たすことが困難なものについてはこの限りでない。 ◇:望ましい整備内容 低床部通路の幅 ・低床部分には段やスロープを設けないことが望ましい。 ・小型バスを除き、低床部の全ての通路の有効幅を800mm以上とすることが望ましい。 参考例 参考4-2-15:低床部通路の事例 ・低床部分の通路には段やスロープを設けていない。 ・車椅子が移動する部分の通路を800mm確保。 ・低床部分の全ての通路において600mm以上を確保。 ・東京都交通局 96ページ   E後部の段 ○:標準的な整備内容 安全への配慮 ・段の端部は周囲の床と輝度コントラスト*が大きいことにより明確に識別する。 ・低床部と高床部の間の通路に段を設ける場合には、その高さは1段あたり200mm以下とする。 ・低床部と高床部の間の通路にスロープを設ける場合には、その角度は5度(約9%勾配)以下とする。ただし、後部座席の床と通路の間に段を設けない場合にあっては、低床部と高床部の間の通路に設ける段の高さとスロープの角度の関係は、下図の範囲にあればよい。 ・スロープと階段の間には300mm程度の水平部分を設ける。 ・段差部には手すりをつける。 ◇:望ましい整備内容 安全への配慮 ・段の上の立席乗客の安全に配慮し、一層の段の高さ、傾斜の減少が望ましい。 参考例 参考4-2-16:後部の段と段の端部の事例 ・段の端部を周囲の床と明確に識別。 ・低床部と高床部の間の通路の段の高さ200mm以下。 ・東京都交通局 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 97ページ 参考例 参考4-2-17:車内後部の段を解消し、フルフラット化を実現した事例 ・メルセデスベンツ ノンステップバス ※後部乗降口 98ページ      F手すり 移動等円滑化基準 (車いすスペース) 第39条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一以上設けなければならない。 一 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 (通路) 第40条 2 通路には、国土交通大臣が定める間隔で手すりを設けなければならない。 ○移動等円滑化のために必要なバス車両の構造及び設備に関する細目を定める告示 (平成12年11月1日運輸省告示第349号)抄 (手すりの間隔) 第5条 省令第四十条第二項の国土交通大臣が定める間隔は、手すりを連続する座席三列(横向きに備えられた座席にあっては、三席)ごとに一以上含むものとする。この場合において、当該手すりは床面に垂直な握り棒でなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 手すりの間隔 ・車椅子スペースには、車椅子使用者が円滑に利用できる手すりを配置する。 ・通路には、縦手すりを座席3列(横向きの場合は3席)ごとに1以上配置する。 ○:標準的な整備内容 手すりの間隔 ・高齢者、障害者などの伝い歩きを考慮した手すりなどを設置する。 ・縦手すりは、座席2列(横向き座席の場合は2席、車椅子スペースの横向き座席が3人掛け跳ね上げ式シート部は3席に1本)ごとに1本配置する。 ・車椅子スペースについては、吊り手などを併用する。 ・タイヤハウスから優先席周辺まで高さ800mm程度の位置に水平手すりを設置する。 手すりの素材 ・手すりは、乗客が握り易い形状とする。 ・手すりの径は30mm程度とする。 ・手すりの表面は滑りにくい素材や仕上げとする。(色については「室内色彩」の項目にて記載) ◇:望ましい整備内容 手すりの間隔 ・車椅子スペースを除く通路には握り棒を座席1列ごとに配置することが望ましい。 ・車椅子スペースには天井握り棒や吊り革を設置することが望ましい。 99ページ 参考例 参考4-2-18:手すりの事例 ・車内通路、段差部に径30mm程度の手すりを設置 ・高齢者、障害者等の伝い歩きを考慮した手すりを設置 ・車椅子スペースについては移動に支障を来さないように手すりを設置 ・縦手すりを座席2列ごとに設置 ・タイヤハウスから優先席周辺まで高さ800mm程度の位置に水平手すりを設置 ・東京都交通局 100ページ 参考例 参考4-2-19:縦手すりを座席1列ごとに設置した事例 ・座席の立ち上がり、立位時に身体を保持しやすくするため、縦手すりを座席1列ごとに設置 ・東京都交通局    G室内色彩 ○:標準的な整備内容 高齢者や色覚異常者に配慮 ・座席、手すり、通路及び注意箇所などは高齢者や視覚障害者にもわかりやすい配色とする。 ・高齢者および色覚異常者でも見えるよう、手すり、押しボタンなど、明示させたい部分には朱色または黄赤を用いる。 ・天井、床、壁面など、これらの背景となる部分は、座席、手すり、通路及び注意箇所などに対して十分な明度差をつける。 ◇:望ましい整備内容 高齢者や色覚異常者に配慮 ・眩しさを与える色、材質の使用を控えることが望ましい。 101ページ 参考例 参考4-2-20:室内色彩の事例 ・天井、床、壁面などの背景となる部分と座席、手すり、通路及び注意箇所などに対して十分な明度差を確保。         ・東京都交通局 102ページ 参考例 参考4-2-21:室内色彩 ・明度差の組み合わせの例 ・一般社団法人日本自動車車体工業会のWebサイトに「NSバス標準規格床上張材登録一覧表」が掲載されているので適宜参考にされたい。 (http://www.jabia.or.jp/content/activity/material/pdf/ns_boukatusei.pdf) 103ページ H座席 ○:標準的な整備内容 座りやすい座席 ・床面からの高さ、奥行、背当ての角度、座面の角度等を配慮し、座りやすく、立ち上がりやすいものとする。 床面から座面までの高さ ・400〜430o程度。 シートの横幅 ・1人掛け:450o±10o ・2人掛け:810o±10o 座面の奥行き ・410o程度±10o 手すり ・手すりは、握りやすく、立ち座りしやすいものとする。 (「手すり」の項目に掲載) ◇:望ましい整備内容 シートの横幅 ・2人掛けのシートの横幅は900mmが望ましい。   I優先席 ○:標準的な整備内容 乗降口近くに配置 ・優先席は乗降口に近い位置に3席以上(中型では2席以上、小型では1席以上)設置する。 立ち座りのしやすさを向上 ・優先席は対象乗客が安全に着座でき、かつ立ち座りに配慮した構造とする。 ・乗客の入れ替わりが頻繁な路線では、優先席は少し高め(400〜430mm)の座面とする。 シートの色優先席の表示 ・優先席は、@座席シートを他の座席シートと異なった配色とする、A優先席の背後の窓に優先席であることを示すステッカーを貼る等により、優先席であることが車内及び車外から容易に分かるとともに、一般の乗客の協力が得られやすいようにする。(室内色彩」の項目を参照のこと) 操作しやすい降車ボタン ・優先席には、乗客が利用しやすい位置にわかりやすい降車ボタンを設置する。 ・降車ボタンは手の不自由な人等でも使用できるものとする。 ・乗客が体を大きく捻ったり、曲げたりするような位置への降車ボタンの配置は避ける。 ◇:望ましい整備内容 立ち座りのしやすさを向上 ・優先席は原則として前向きとすることが望ましい。 104ページ J降車ボタン 移動等円滑化基準 (車いすスペース) 第39条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一以上設けなければならない。 五 他の法令の規定により旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーその他の装置を備えることとされているバス車両である場合は、車いす使用者が利用できる位置に、当該ブザーその他の装置が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 降車ボタン ・車椅子スペースには、車椅子使用者が容易に使用できる位置に、旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーの押しボタン等を設置する。 ○:標準的な整備内容 降車ボタン ・ブザーの押しボタン等は、手の不自由な乗客でも使用できるものとする。 位置の統一 ・降車ボタンは、わかりやすく押し間違えにくい位置に設置する。 ・視覚障害者に配慮し、降車ボタンの高さを統一する。ただし、優先席及び車椅子スペースに設置する降車ボタンはこの限りではない。 (ガイドラインの内容を満たす限りにおいて、座席の背もたれや肘掛けに降車ボタンを追加することを妨げるものではない。) 高さ ・縦手すりに配置する降車ボタンは、床面より1,400mmの高さとする。 ・座席付近の壁面に配置する押しボタンは、床面より1,200mmの高さとする。 形状 ・降車ボタンは、停車確認ランプと一体型とする。 ・高齢者及び肢体不自由者な人等のために、車椅子用スペースの近くの低めの位置等に、タッチ部分の大きい降車ボタンを設置する。 105ページ 参考例 参考4-2-22:降車ボタンの事例 ・降車ボタンを分かり易く、押し間違え難い位置に設置。 ・視覚障害者に配慮し降車ボタンの高さを統一。 ・縦手すりに配置する降車ボタンを床面より1,400mmの高さに設置。 ・東京都交通局 106ページ   K運賃箱・整理券発行機 ○:標準的な整備内容 わかりやすく使いやすく ・運賃箱には、釣り銭が自動で出るのか、事前に両替が必要かの案内を表示する。 ・カードリーダーの位置はわかりやすく示す。 ・運賃箱は、乗客に利用し易い形状とし、乗客の通行に影響を与えない位置に設置する。 ・釣銭受け皿等、低い位置に設置する場合は床から600mm以上の位置に設置する。 ・運賃箱は、投入口、釣銭受け皿、両替機、カード挿入口等がわかりやすい案内表示をつけるとともに、縁取りなどにより識別しやすいものとする。 ・料金表示は、大きな文字により、背景色との輝度コントラストを確保したわかりやすい表示とする。 整理券発行機の音声案内、 設置位置 ・視覚障害者が整理券を取りやすいように、行先案内を含む整理券発行機の音声による案内は、発券口付近から行う。 ・整理券発行機は、乗降に支障のない位置に設置する。 ◇:望ましい整備内容 わかりやすく使いやすく ・運賃の収受方法の整理、統一化等を検討し、さらに使いやすく形状や配置が統一化されたコンパクトな運賃箱・カードリーダー・整理券発行機を開発し採用することが望ましい。また、これらの設置位置も統一するとともに、障害者等の通行に支障のないよう運賃箱・整理券発行機周辺の通路の幅を十分に確保することが望ましい。 107ページ  L車内表記 ○:標準的な整備内容 わかりやすい表記 ・車内表記は、わかりやすい表記とする。 ・車内表記は可能な限りピクトグラムによる表記とする。 ・ピクトグラム及びその大きさは参考4-2-23を参照する。 ・認知度の低いピクトグラムについては、最小限の文字表記を併用する。 ◇:望ましい整備内容 わかりやすい表記 ・文字表記には英語やひらがなを併記することが望ましい。 参考例 参考4-2-23:推奨するピクトグラム及び寸法(標準仕様ノンステップバス認定要領から抜粋) 108ページ M車内表示 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を容易に確認できるよう次停留所名表示装置を車内の見やすい位置に設置にする。 ○:標準的な整備内容 文字による次停留所案内 ・表示装置は大きな文字で表示し、ひらがな及び英語を併記または連続表示する。 ・次停留所名は、可能なかぎり前部以外の場所にも表示する。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) ◇:望ましい整備内容 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を車内のどの場所からも確認できるようにすることが望ましい。 経路、行先等表示装置 ・経路、停留所名、行先等がわかるような車内表示を行うことが望ましい。 緊急時の情報提供 ・聴覚障害者等が緊急時に正確な情報を把握できることに配慮し、緊急時の情報を文字により提供する。また、緊急情報内容のうち定型化可能なものは表示メニューを用意することが望ましい。  *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 109ページ 参考例 参考4-2-24:車内表示の事例 ・乗客が次停留所名等を容易に確認できるように次停留所表示装置を車内の見やすい位置に設置。 ・東京都交通局 参考例 参考4-2-25:マルチディスプレイの事例 ・マルチディスプレイでひらがなや英語表示を行っている。 ※画像はサンプルであり実際の停留所名や運賃とは異なる。 出典:株式会社レシップ 110ページ N車外表示 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 3 バス車両の前面、左側面及び後面に、バス車両の行き先を見やすいように表示しなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 文字による行き先表示 ・行き先が車外から容易に確認できるように、車両の前面、左側面、後面に表示する。 ○:標準的な整備内容 文字による行き先表示 ・行き先に加え、経路、系統、車椅子マーク等においても、車外から容易に確認できるようにする。  ・寸法は300mm以上×1,400mm以上(前方)、400mm以上×700mm以上(側方)、200mm以上×900mm以上(後方)(ただし、2m幅の車両の場合は125mm以上×900mm以上(前方および後方)、180mm以上×500mm以上(側方))とする。 ・表示機は、直射日光のもとでも夜間でも視認可能なものとする。 ・大きな文字で表示し、ひらがな及び英語を併記または連続表示する。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した表示とする。(※巻末の「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) ノンステップバスであることの表示 ・ノンステップバスであることを車両の前面、左側面、後面からわかるよう表示する。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 111ページ 参考例 参考4-2-26:車外表示(行き先、車椅子マーク等)の事例 ・行き先、経路、系統、車椅子マーク等を車外から容易に確認できるようにしている ・夜間でも視認可能な表示機 ・車外表示装置の寸法:前部300mm×1,400mm、側部400mm×700mm、後方200mm×900mm以上 ・東京都交通局(2005年ノンステップバス標準仕様)   参考例 参考4-2-27:夜間でも視認可能な表示機の事例 112ページ  O車内放送 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 次停留所等の案内放送 ・車内には、次停留所、乗換案内等の運行に関する情報を音声により提供するための放送装置を設ける。 ○:標準的な整備内容 次停留所等の案内放送 ・車内放送により次停留所、乗換案内などを優先的に行い、その際には聞き取りやすい音量、音質、速さで行う。 ・降車ボタンに反応し、「次停まります」の音声が流れるようにする。 ・次停留所名の放送は、前停留所発車又は通過直後、及び次停留所停車直前に行う。 ・基本的な運行案内と案内以外の広告等の内容が区別して分かるよう配慮する。   P車外放送 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 2 バス車両には、車外用放送設備を設けなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 行き先、経路等の案内放送 ・行き先、経路、系統等の案内を行うための車外用放送装置を設ける。 ○:標準的な整備内容 行き先、経路等の案内放送 ・車外の利用者とバス乗務員とが容易に情報交換できるようにする。 ・視覚障害者の乗降に配慮し、ノンステップバスである旨、前乗り、中乗り、後乗りの別を音声で案内する。 ・バス車体規格集等に準じ、車外スピーカー、インターホンマイクの取り付け位置を統一する。 113ページ Qコミュニケーション設備 移動等円滑化基準 (意思疎通を図るための設備) 第42条 バス車両内には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該バス車両内に表示するものとする。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 聴覚障害者用コミュニケーション設備 ・バス車両内には、筆談用具など聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を準備し、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ・この場合においては、当該設備を保有している旨を車両内に表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通が図れるように配慮する。 ○:標準的な整備内容 聴覚障害者用コミュニケーション設備 ・筆談用具がある旨の表示については、乗務員席付近であって、乗務員及び乗客から見やすく、かつ乗客から手の届く位置に表示する。 ◇:望ましい整備内容 コミュニケーション支援ボード ・言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者・外国人等に配慮し、JIS T0103で規定されたコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーション支援ボードを準備することが望ましい。 注:知的障害者・発達障害者・精神障害者、また日本語のわからない外国人など、利用者の中には文字や話し言葉での意思疎通が難しい人が含まれる。また、利用者のその時の体調等にも影響され、うまく発話できないなどの状況も考えられることから、コミュニケーション手段を複数用意しておくことは有効である。 114〜116ページ 参考例 参考4-2-28:筆談用具がある旨の表示例 参考例 参考4-2-29:JIS T0103「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」に収載されている絵記号の例 【分類項目】501:乗り物・交通 参考例 参考4-2-30:コミュニケーション支援ボードの例 出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団 117ページ 2.2 都市間路線バス(高速・リムジンバス) バリアフリー法では、路線バスのバリアフリー化を義務付けているが、その構造や運行の様態により対応困難な事由があるものについては、移動等円滑化基準の適用除外を認めている。このうち、都市間路線バス(いわゆる高速・リムジンバス)については、旅客の手荷物が多いことから、荷物室等が設けられた床の高いタイプの車両が用いられており、床高さに係る基準(65cm以下)を満たすことが困難であるため、この基準の適用除外車両という位置づけになっている。 一方で、先進国ではこのようなバスについても乗降用リフトの設置等によりバリアフリー化するのが一般的になりつつあり、車椅子使用者からも都市間路線バスのバリアフリー化が強く求められている。「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係るバリアフリー車両の検討会」では、空港リムジンバスへの乗降用リフト設置に関して議論し、課題の抽出と解決の方向性について検討してきた。 平成23年に改定された「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、適用除外認定車両についても25%を目標に平成32年までにバリアフリー化を進めることになった。この目標は都市間路線バスだけでなく、小型バスなども含む適用除外認定車両すべての目標であるが、都市間路線バスについてもバリアフリー化を進めていくことが求められている。 ただし、乗降用リフトの設置は、軸重規定による構造設計上の制約、乗車定員・荷物室の減少、車椅子使用者の安全の確保といった車両面・運用面の課題の他、停車スペースや停車可能時間の制約、乗車定員の減少に伴う続行便の発生、車両のコストアップ等の諸課題が存在し、都市間路線バスのバリアフリー化を進展させるためには、関係者による検討を進め、ハード・ソフト両面でのこれらの課題を着実に解決していく必要がある。 118ページ 参考4-2-31:都市間路線バスの姿図及び平面図 4列シート車 3列シート車 119ページ @乗降口 移動等円滑化基準 (乗降口) 第37条 乗降口の踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものでなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 踏み段(ステップ)の識別 ・乗降口の踏み段(ステップ)端部の全体がその周囲の部分及び路面と輝度コントラスト*が大きいことにより、踏み段を容易に識別できるものとする。 ○:標準的な整備内容 乗降口の幅 ・1以上の乗降口の有効幅は、800mm以上とする。 踏み段(ステップ)の識別 ・高齢者等が乗降しやすいように、一段目の踏み段(ステップ)が高い場合には、車高を下げる等、乗降時の段差を解消する。 ・踏み段(ステップ)各段の段差は等間隔とする。 ・踏み段(ステップ)の奥行きは、300mm以上とする。 踏み段(ステップ)の材質 ・踏み段(ステップ)には滑りにくい素材を使用する。 乗降用手すり ・乗降口には、乗降用の手すりを乗降口両側に設置する。 足下照明灯 ・また、夜間でも足下の踏み段(ステップ)が見やすいように、足下照明灯(フットライト)を設置する。 ◇:望ましい整備内容 乗降口の幅 ・乗降口の有効幅は、十分な幅(900mm以上)を確保することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-2-32:乗降口の例 車高を下げ乗降時の段差を解消する乗降口の事例 (出典:いすゞ自動車株式会社ホームページより ttp://www.isuzu.co.jp/product/bus/gala_ss/approach.html) *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 120ページ A座席 ○:標準的な整備内容 座席の仕様 ・高齢者や障害者が座りやすいように、通路側のひじ掛けがはね上がる等の仕様の座席を設け、その機能が容易にわかるように表示する。 ・床面からの高さ、奥行、背当ての角度、座面の角度等を配慮し、座りやすく、立ち上がりやすいものとする。 座席番号 ・ロービジョン者に配慮し、できるだけ大きく、また、周囲とのコントラストを確保した色で表示する。 座席番号の点字表示 ・座席の通路側の肩口の端には、視覚障害者が利用しやすいようにJIS T0921に基づいた座席番号識別のための点字シール等を貼付する。 姿図・寸法 参考4-2-33:座席(3列シート)の例 121ページ B乗降用リフト等 ○:標準的な整備内容 乗降用リフトの設置 ・乗客の利便のために乗降用リフトを設置する場合には、次の構造のものを採用する。ただし、乗降場所が限られている場合は、地上に乗降用リフトを設置しても良い。 @リフトの左右両側への手すりの設置その他の乗降時に車椅子の落下を防止する装置の設置されている又はそれと同等の措置が講じられているものである。 Aサイドブレーキがかかっていないとリフトが作動しない、リフト昇降時に障害物を検知した場合には自動停止する等のリフトの誤作動を防止する、昇降中に転落しないための措置が講じられているものであり、転落防止板(ストッパ)とリフトの昇降とが連動して作動するものである。 Bリフトにトラブルが生じた場合、手動でリフトを操作すること等により対処可能な構造である。 スロープ板の設置 ・乗客の利便のためにスロープ板を設置する場合には、都市内路線バスのスロープ板の要件に準じたものを採用する。ただし、低床車両以外の車両の場合は、スロープ角度の基準は当該要件に依らないことができる。 ◇:望ましい整備内容 乗降用リフトの設置 ・次の構造の乗降用リフトを整備することが望ましい。 (ただし、乗降場所が限られている場合は、地上に乗降用リフトを設置しても良い) @リフトを荷室に格納した状態で当該荷室に折りたたんだ車椅子が格納できる等、乗降の利便性と運搬能力の両立を図ることができる構造である。(参考例参照) A全長1,200o程度×全幅780o程度とする。 B耐荷重については、電動車椅子本体(80〜100kg)、本人、介助者の重量を勘案し、300kg程度とする。 スロープ板の設置 ・乗降用リフトによらず、傾斜角7度(約1/8)以下によりスロープ板を設置できる場合は、都市内路線バスのスロープ板の要件に準じたものを採用することが望ましい。 122〜124ページ 姿図・寸法 参考4-2-34:乗降用リフトの例 (リフトが着地している状態)      参考例 参考4-2-35:都市間バスに設置された乗降用リフトの事例 ・カナダ オンタリオ州交通局の都市間バス 参考4-2-36:ヨーロッパで開発されている前扉部乗降用リフト対応バス車両 提供:バスラマインターナショナル 参考例 参考4-2-37:荷室スペースの占有を小さくした新しいタイプのリフト設置事例 125ページ C車椅子スペース 参考:移動等円滑化基準(乗合バスが対象) (車いすスペース) 第39条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一以上設けなければならない。 一 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 二 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 三 車いすを固定することができる設備が備えられていること。 四 車いすスペースに座席を設ける場合は、当該座席は容易に折り畳むことができるものであること。 五 他の法令の規定により旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーその他の装置を備えることとされているバス車両である場合は、車いす使用者が利用できる位置に、当該ブザーその他の装置が備えられていること。 六 車いすスペースである旨が表示されていること。 (通路) 第40条 第三十七条第二項の基準に適合する乗降口と車いすスペースとの間の通路の幅(容易に折り畳むことができる座席が設けられている場合は、当該座席を折り畳んだときの幅)は、八十センチメートル以上でなければならない。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置位置 ・車椅子スペースは、乗降しやすい位置(乗降用リフトの近く)に設けることが望ましい。 車椅子スペースの広さ ・車椅子スペースの広さは、長さ1,500mm以上、幅800mm以上、高さ1,500mm以上とすることが望ましい。 ・車椅子スペースは、車椅子が取り回しできる広さとすることが望ましい。 車椅子固定装置の設置 ・車椅子スペースには、車椅子固定装置(4点式固定ベルト、ラチェット、クランプ、ひじ掛け止めのベルト等)及び車椅子用人ベルトを設置して、安全に配慮することが望ましい。 人ベルト ・車椅子使用者自身の安全を確保するため、安全ベルト(2点式、又は3点式)を着用することが望ましい。 手すり ・車椅子使用者がバス乗車中に利用できる手すりを設置することが望ましい。 シートへの移乗 ・長時間の乗車となる際には、車椅子からシートに移乗してもらうことが望ましい。 ・シートへ移乗しやすいスペースが確保され、座席はひじ掛けはね上げ式等であることことが望ましい。 乗務員の接遇介助 ・車椅子の固定、開放は、乗務員が行うことが望ましい。 126ページ Dトイレ ○:標準的な整備内容 トイレの設置 ・慢性的疾患のため利尿性のある薬を服用する者等もいるので、長時間の乗車となる場合の多い都市間バスにおいては、車内にトイレを設置する。 鍵 ・容易に施錠できる形式とし、非常時に外から解錠できるようにする。 ドアの仕様 ・ドアは、軽い力で操作できる仕様とする。 ・開き戸の場合は外開きとする(車椅子対応トイレの場合は、引き戸(「車椅子対応トイレ」の「ドアの仕様」の項目を参照)とする)。 ・ドア開閉ノブ等の高さは800〜850mm程度とする。 手すり ・便器周囲の壁面に手すり(高さ650〜700mm程度)を設置する。 ・手すりは、握りやすく、腐蝕しにくい素材で、径は30mm程度とする。 床面の仕上げ ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 便器洗浄ボタン・紙巻器 ・便器洗浄ボタンは手の届きやすい位置に設置し、操作しやすい方式(押しボタン式等)とする。 ・便器洗浄ボタン、紙巻器の形状・色・配置についてはJIS S0026に合わせたものとする。 手洗器 ・便器に腰掛けたまま容易に利用できる位置に設置し、障害者、高齢者等の扱いやすい形状とする(スペースがある場合は、便座の横に設置することが望ましい)。 呼出しボタン緊急通報装置 ・便房内の呼出しボタン操作部の形状・色・配置についてはJIS S0026に合わせたものとする。 ◇:望ましい整備内容 車椅子対応トイレ ・車椅子使用者が利用可能なトイレを設けることが望ましい。 呼出しボタン・非常通報装置 ・転倒時でも手の届く範囲にも設置することが望ましい。 トイレ内設備の触知図案内図等 ・トイレの出入口内側に、トイレの構造を視覚障害者に示すための触知案内図等が設けられていることが望ましい。 ・触知案内図により表示する場合には表示方法はJIS T0922にあわせたものとし、点字により表示する場合は、表示方法はJIS T0921に合わせるものとすることが望ましい。 運行計画上の配慮 ・車椅子対応トイレを設置しない車両の運行に際しては、高速道路サービスエリア等の公衆トイレを利用できるような運行計画を立てることが望ましい。 127ページ 姿図・寸法 参考4-2-38:車椅子対応トイレの例 Eトランクルーム、車椅子収納スペース ○:標準的な整備内容 トランクルーム ・トランクルームは、車椅子が収納できるスペースを確保する。 (車椅子のJIS最大値は長さ1,200mm、幅700mm。折り畳んだ時の幅は300mm×高さ1,090mm) ◇:望ましい整備内容 車内車椅子収納スペース ・車内の車椅子固定スペース付近に車椅子を折り畳んで収納できるスペースを設けることが望ましい。 128ページ F床面の仕上げ 移動等円滑化基準 (床面) 第38条 2 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものでなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 床面の仕上げ ・床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものとする。 G車内放送・車内表示 移動等円滑化基準 (運行情報提供設備等) 第41条 バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 次停留所等の案内放送 ・車内には、次停留所、乗換案内等の運行に関する情報を音声により提供するための放送装置を設ける。 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を容易に確認できるよう次停留所名表示装置を車内の見やすい位置に設置する。 ○:標準的な整備内容 次停留所等の案内放送 ・車内放送により次停留所、乗り換え案内などを優先的に行い、その際には聞き取りやすい音量、音質、速さで行う。 ・降車ボタンに反応し、「次停まります」の音声が流れるようにする。 ・次停留所名の放送は、前停留所発車又は通過直後、及び次停留所停車直前に行う。 文字による次停留所案内 ・表示装置は大きな文字で表示し、ひらがな及び英語を併記または連続表示する。 ◇:望ましい整備内容 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を車内のどの場所からも確認できるようにすることが望ましい。 経路、行き先等表示装置 ・経路、停留所名、行き先等がわかるような車内表示を行うことが望ましい。 緊急時の情報提供 ・聴覚障害者等が緊急時に正確な情報を把握できることに配慮し、緊急時の情報を文字により提供する。また、緊急情報内容のうち定型化可能なものは表示メニューを用意することが望ましい。 129ページ Hコミュニケーション設備 移動等円滑化基準 (意思疎通を図るための設備) 第42条 バス車両内には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該バス車両内に表示するものとする。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 聴覚障害者用コミュニケーション設備 ・バス車両内には、筆談用具など聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を準備し、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮する。 ・この場合においては、当該設備を保有している旨を車両内に表示し、聴覚障害者がコミュニケーションを図りたい場合において、この表示を指差しすることにより意思疎通を図れるように配慮する。 ○:標準的な整備内容 聴覚障害者用コミュニケーション設備 ・筆談用具がある旨の表示については、乗務員席付近であって、乗務員及び乗客から見やすく、かつ乗客から手の届く位置に表示する。 ◇:望ましい整備内容 コミュニケーション支援ボード ・言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者・外国人等に配慮し、JIS T0103で規定されたコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーション支援ボードを準備することが望ましい。 ※1「筆談用具がある旨の表示例」、「JIS T0103「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」」に収載されている絵記号の例」、「コミュニケーション支援ボードの例」は、都市内路線バスのコミュニケーション設備の項(113〜116ページ)を参照。 ※2知的障害者・発達障害者・精神障害者、また日本語のわからない外国人など、利用者の中には文字や話し言葉での意思疎通が難しい人が含まれる。また、利用者のその時の体調等にも影響され、うまく発話できないなどの状況も考えられることから、コミュニケーション手段を複数用意しておくことは有効である。 130ページ 3 タクシー タクシーについては、平成12年に制定した交通バリアフリー法においては対象とされていなかったが、平成18年に制定したバリアフリー法においては、福祉タクシー車両が新たに適合義務の対象として含まれ、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、平成22年度末の整備目標を18,000台としたが、同年度末の実績は12,256台に留まっている。平成22年度末に改定された「移動等円滑化の促進に関する基本方針」においては、平成32年度末までの整備目標値が新たに28,000台まで引き上げられた。 平成19年に改正されたバリアフリー整備ガイドラインにおいて、多様な利用者の利便性向上のため、ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)の普及が望まれると記したところ、「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係るバリアフリー車両の検討会」における議論に基づき、UDタクシー車両や乗合タクシー車両が実車として登場することになった。 UDタクシーについては、上記検討会において標準仕様とともにガイドラインを定めたところであり、本整備ガイドラインでは、福祉タクシーの部分も含め整合性をとるような記述としてある。UDタクシーについては、平成23年度より「標準仕様ユニバーサルデザインタクシーの認定制度」が導入され、UDタクシーを表すマークも制定されたが、一般に販売されているのは現状1車型のみである。今後UDタクシーの市場投入を加速させ、さらなる普及を図るためには、ガイドラインや認定制度の細部について必要に応じ修正を行うなどの取り組みも必要となるものと考えられる。 乗合タクシー車両については、いわゆるジャンボタクシー車両の基本的な標準仕様を新たに記載している。 131ページ タクシーイメージ図 132ページ 注)「基準上の位置づけ」欄における「福祉」とは移動等円滑化基準において適合義務を定める「福祉タクシー車両」、「一般」とはそれ以外のタクシー車両(「一般タクシー車両」)を示す。 今後の高齢社会において、高齢者、障害者等が他の旅客と同じように、予約制に限らず必要な時にいつでも利用できるよう「ユニバーサルデザインタクシー」の普及が図られることが望まれる。ユニバーサルデザインタクシーの普及を図る上で、タクシーとして利用が可能なユニバーサルデザイン車両の開発をより一層促進することが望まれる。その上で、「ユニバーサルデザインタクシー」では利用が困難となる大型電動車椅子やストレッチャー等による利用時には「大型電動車椅子・ストレッチャー等乗車対応」によって対応が図られることが望まれる。 133ページ 3.1 車椅子等対応 (1)大型電動車椅子・ストレッチャー(寝台)等対応(バンタイプ/リフト車) ・乗車定員:8〜10名程度 ・全長:約4.5m〜約5.4m 参考4-3-1:大型電動車椅子・ストレッチャー(寝台)等対応車両の事例 (出典:トヨタwebカタログより) 134ページ @乗降口 ○:標準的な整備内容 乗降口の広さ ・後部乗降口には、車椅子使用者・ストレッチャー(寝台)等使用者の乗降を円滑にする乗降用リフト設備等を備える。 ・車椅子のまま及びストレッチャー(寝台)のままで乗車できる乗降口を1以上設け、その幅は800mm以上、高さは1,400mm以上とする。 車椅子対応の室内高 ・室内高は、1,500mm以上とする。 乗降口の端部 ・乗降口の端部は、その周囲の部分や路面との明度差が大きいこと等により、高齢者、障害者等が端部を容易に識別しやすいようにする。 床面の材質 ・乗降口付近の床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 足下照明灯 ・夜間においても足下が見やすいように、乗降口にはドア開口時に点灯する足下照明灯を設置する。 ◇:望ましい整備内容 乗降口の広さ ・乗降口の幅は900mm以上、高さは1,500mm以上が望ましい。 乗降口の高さ ・停車時の乗降口地上高は、300mm以下とすることが望ましい。 ・ただし、高齢者、松葉杖使用者等の乗降補助のために、1段の高さを200mm未満とするために補助ステップ等を設置する場合はこの限りではない。 姿図・寸法 参考4-3-2:乗降口の事例 (出典:右写真トヨタwebカタログより) 135ページ Aリフト 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車いす使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 リフトの設置 ・乗降口には、ストレッチャー(寝台)・担架・車椅子使用者の乗降を円滑にするスロープ板、リフト設備等その他の車椅子使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備を備える。 ○:標準的な整備内容 リフト面の広さ ・リフトは、使用できるリフト面(プラットフォーム)の広さが全長1,200mm以上、全幅750mm以上とし、ストレッチャー(寝台)(寝台面の全長1,900mm程度)が利用できる大きさとする。 リフト面の材質 ・リフト面(プラットフォーム)は滑りにくい素材とする。 リフトの耐荷重 ・リフトの耐荷重は、電動車椅子本体(80〜100kg程度)、車椅子使用者本人、介助者の重量を勘案し300kg以上とする。ただし、介助者が同時に利用しない場合は200kg以上とする。 リフトの格納場所 ・リフトは使用に便利で、乗客にとって安全な場所に備える。 リフト作動時の安全 ・リフトの左右両側に、リフト昇降中に車椅子使用者がつかまれるように手すりを設置するとともに、転落防止板(後退防止用ストッパ)を設置する。リフトの誤作動防止のため、安全装置(サイドブレーキを引いていないとリフトが動かない等)を必ず取り付ける。 ◇:望ましい整備内容 リフト面の広さ ・全幅800mm以上が望ましい。 136ページ 姿図・寸法 参考4-3-3:リフトの例 B床の材質、形状 ○:標準的な整備内容 床の材質 ・床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 床の形状 ・ストレッチャー(寝台)等が適正に定置でき、車椅子使用者が安楽で適正な座位姿勢を保てるように、固定スペースの床面は水平にする。 137ページ Cストレッチャー、車椅子スペース 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 車いす又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 ストレッチャー等または車椅子のスペースの設置 ・ストレッチャー(寝台)、担架スペース又は車椅子スペースを1以上設ける。 ○:標準的な整備内容 ストレッチャー等スペースの設置 ・ストレッチャー(寝台)等のスペースを設ける場合は、次に掲げる規格に適合するものを1以上設置する。 広さ ・ストレッチャー(寝台)等のスペースは、長さ2,000mm以上、幅750mm以上とする。(ストレッチャーの全長1,800〜1,900mm程度、全幅500〜650mm程度に一定の余裕幅を考慮) 車椅子スペースの設置 ・車椅子スペースを設ける場合は、次に掲げる規格に適合する車椅子スペースを1以上設置する。ただし、ストレッチャー専用車両の場合はこの限りではない。 位置 ・車椅子スペースは、車椅子の進入しやすい位置に設ける。 広さ ・車椅子を固定するスペースは、長さ1,300mm以上、幅750mm以上、高さ1,500mm以上とする。(注1) 車椅子使用者の視界の確保 ・車椅子使用者の外への視界を、座席利用者同様に確保する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子スペースを2以上設置することが望ましい。 ・車椅子使用者とストレッチャー等使用者がそれぞれ1以上同時に乗車できることが望ましい。 注1:障害の状況によっては、JIS最大値(1,200mm×700mm)を超える車椅子を使用している場合もあり、また体位によっては後部からつま先まで一定の長さを必要とする場合もあることから、可能な限り車椅子スペースを大きく確保することが望ましい。 138ページ 姿図・寸法 参考4-3-4:ストレッチャースペース及び車椅子スペースの例 139ページ Dストレッチャー等固定方法 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 車いす又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 ストレッチャー固定装置 ・ストレッチャー(寝台)や担架を固定することができる設備を備える。 ○:標準的な整備内容 ストレッチャー固定装置 ・固定装置は、固縛、開放に要する時間が短く、かつ確実に固定できるものとする。 E車椅子固定方法 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 車いす又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子固定装置 ・車椅子を固定することができる設備を備える。 ○:標準的な整備内容 車椅子固定装置 ・固定装置は、固縛、開放に要する時間が短く、かつ確実に固定できるものとする。 車椅子側の安全性、固定装置取り付け ・車椅子側にフック等の固定場所を明示する。 ヘッドレスト(頭部後傾抑止装置) ・車椅子使用者向けのヘッドレストを用意する(注1)。 前向き固定、後ろ向き固定を問わず、ヘッドレストの高さ、角度等の調整ができるようにする(注2)。 シートベルト ・車椅子使用者の安全を確保するために、シートベルトを設置する。 ・前向き固定:3点式とする。後向き固定:3点又は2点式とする。 ◇:望ましい整備内容 車椅子側の安全性、固定装置取り付け ・車椅子側の装置と車両側の装置がワンタッチで固定できる装置を開発することが望ましい。 注1:ヘッドレストは、車椅子、車両側のいずれかに用意されていること。 注2:車椅子使用者の後頭部が最も突出した部分の少し下から、頚の少し上を支えられるよう、位置調整ができるようにする。 140ページ 姿図・寸法 参考4-3-5:車椅子固定装置の例 <4点式車椅子固定ベルト、3点式シートベルトの例> 141ページ F車椅子、補装具収納場所 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 車椅子又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 ストレッチャー等収納スペース ・車椅子等対応車には、車椅子やストレッチャー(寝台)、担架を備えておくスペースを一以上確保する。 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保する。 ・収納スペースは、長さ1,050mm以上×幅350mm以上×高さ900mm以上とする(注1)。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを設置する。 注1:標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法に対応できる収納スペース。 G車椅子マーク表示 ○:標準的な整備内容 車椅子マークの表示による乗車案内 ・車外に、車椅子マークを表示し、移乗又は車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・乗車可能な車椅子の大きさ、形状等について車外等に明示する。 142ページ (2)車椅子対応(ミニバン・軽自動車タイプ/スロープ車・リフト車) ・乗車定員:3〜8名程度 ・全長:約3.4m〜約4.6m 参考4-3-6:車椅子対応車両の事例 (出典:左上からトヨタ、日産、三菱自動車各社ホームページより) なお、上記車両タイプにおいてストレッチャー等に対応する場合には、大型電動車椅子・ストレッチャー等対応の次の部位・設備に準ずる。 ・ストレッチャースペース ・ストレッチャー固定方法 143ページ @乗降口 ○:標準的な整備内容 乗降口の広さ ・乗降口のうち1カ所は、スロープ板、リフトその他の車椅子使用者等の乗降を円滑にする設備を備える。 ・車椅子のまま乗車できる乗降口を1以上設け、その幅は750mm以上、高さは1,300mm以上とする(注1)。 車椅子対応の室内高 ・車椅子のまま乗車できる車両の室内高は、1,350mm以上とする(注1)。 乗降口の高さ ・高齢者、障害者等の円滑な乗降、車椅子使用者が車椅子のまま乗車する際のスロープの勾配を緩やかにするため、停車時の乗降口地上高はできる限り低くする(停車時の乗降口地上高を低くするため、ニーリング機構を設けても良い。)。 スロープ板の勾配(詳細はAスロープ板を参照) ・横から乗車:スロープ板を設置する場合、スロープ板の勾配は、14度(約1/4)以下とする。 ・後部から乗車:同上 乗降口の端部 ・乗降口の端部は、その周囲の部分や路面との明度差が大きいこと等により、高齢者、障害者等が端部を容易に識別しやすいようにする。 床面の材質 ・乗降口付近の床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 足下照明灯 ・夜間においても足下が見やすいように、乗降口にはドア開口時に点灯する足下照明灯を設置する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子を使用したまま乗車できる乗降口の広さ ・幅は800mm以上、高さは1,350mm以上が望ましい。 乗降口の高さ ・高齢者、障害者等の乗降を円滑にするために、停車時の乗降口地上高は、200mm以下とすることが望ましい。 スロープ板の勾配(詳細はAスロープ板を参照) ・横から乗車:スロープ板の勾配は、電動車椅子の登坂性能等を考慮し10度(約1/6)以下が望ましい。 ・後部から乗車:同上。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づける。 144ページ 参考例 参考4-3-7:乗降口の事例 (出典:左から日産、トヨタ各社のwebカタログより) 145ページ Aスロープ板 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車いす使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 スロープ板の設置 ・スロープ板その他の車椅子使用者等の乗降を円滑にする設備を備える。 ○:標準的な整備内容 スロープ板の勾配 ・横から乗車:スロープの勾配は、14度(約1/4)以下とする。 ・後部から乗車:同上。 スロープ板の幅 ・スロープ板の幅は720mm以上とする(ただし、車両取付部(750mm以上)はこの限りではない。)(注1)。 ・車椅子のスロープ板からの脱輪防止のためエッジのある構造とする。エッジの高さは車椅子のハンドルリムと干渉しないように留意する。 スロープ板表面の材質 ・スロープ板の表面は滑りにくい素材とする。 スロープ板の耐荷重 ・スロープ板の耐荷重は、電動車椅子本体(80〜100kg程度)、車椅子使用者本人、介助者の重量を勘案し300kg以上とする。ただし、介助者が同時に利用しない場合は200kg以上とする。 スロープ板の設置方法 ・スロープ板は乗降口から脱落しない構造とする。 ・スロープ板と床面に段差ができないような構造とする。 スロープ板の格納方法 ・スロープ板は使用に便利で、乗客にとって安全な場所に備える。 ◇:望ましい整備内容 スロープ板の勾配 ・横から乗車:スロープ板の勾配は、電動車椅子の登坂性能、介助者による手動車椅子の介助を考慮すると10度(約1/6)以下が望ましい。 ・後部から乗車:同上。 スロープ板の幅 ・スロープ板の幅は800mm以上が望ましい。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づける。 146ページ 姿図・寸法 参考4-3-8:スロープ板の長さの例 147ページ Bリフト 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車いす使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 二 車いす又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 三 車いす又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 リフトの設置 ・乗降口のうち1カ所は、リフトその他の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備を備える。 ○:標準的な整備内容 リフト面の広さ ・使用できるリフト面(プラットフォーム)の広さは全長1,000mm以上、全幅720mm以上とする(ただし、車椅子スペースの全長は1,300mmとする。)(注1)。 リフト面の材質 ・リフト面(プラットフォーム)は滑りにくい素材とする。 リフトの耐荷重 ・リフトの耐荷重は、電動車椅子本体(80〜100kg程度)、車椅子使用者本人、介助者の重量を勘案し300kg以上とする。ただし、介助者が同時に利用しない場合は200kg以上とする。 リフトの格納場所 ・リフトは使用に便利で、乗客にとって安全な場所に備える。 リフト作動時の安全 ・リフトの左右両側に、リフト昇降中に車椅子使用者がつかまっていられるように手すりを設置するとともに、転落防止板(後退防止用ストッパー)を設置する。リフトの誤作動防止のため、安全装置(サイドブレーキを引いていないとリフトが動かない等)を必ず取り付ける。 ◇:望ましい整備内容 リフト面の広さ ・全長1,200mm以上、全幅800mm以上が望ましい。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づけることが望ましい。 148ページ 姿図・寸法 C床の材質、形状 ○:標準的な整備内容 床の材質 ・床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 床の形状 ・車椅子使用者が安楽で適正な座位姿勢を保てるように、車椅子スペースの床面は水平にする。 149ページ D車椅子スペース 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 車いす又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子スペースを1以上設ける。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置 ・次に掲げる規格に適合する車椅子スペースを1以上設置する。 位置 ・車椅子スペースは、車椅子の進入しやすい位置に設ける。 広さ ・車椅子を固定するスペースは、長さ1,300mm以上、幅750mm以上、高さ1,350mm以上とする(注1)。 車椅子使用者の視界の確保 ・車椅子使用者の外への視界を、座席利用者同様に確保する。 車椅子の方向転換に必要なスペース ・側方からの乗車の場合、車内には車椅子使用者が介助により転回できるスペースを確保する。ただし、回転盤を使用する場合や、軽自動車はこの限りでない。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づける。 姿図・寸法 参考4-3-10:車椅子スペースの例 *上図では実際の寸法の相対比は反映されていない。 (出典:三菱自動車各社webカタログより) 150ページ E車椅子固定方法 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 車いす又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子固定装置 ・車椅子を固定することができる設備を備える。 ○:標準的な整備内容 車椅子固定装置 ・固定装置は、固縛、解放に要する時間が短く、かつ確実に固定できるものとする。 ・車椅子使用者が走行中も車椅子に着座する場合には、前向き固定、後ろ向き固定を問わず、車両内の固定装置は20Gの衝撃に耐えられる強度とする。 車椅子側の安全性、固定装置取り付け ・車椅子使用者が走行中も車椅子に着座する場合には、前向き固定、後ろ向き固定を問わず、車椅子が20Gの衝撃に耐えられる強度とする。 ・車椅子側にフック等の固定場所を明示する。 ヘッドレスト(頭部後傾抑止装置) ・車椅子使用者向けのヘッドレストを用意する(注1)。 前向き固定、後ろ向き固定を問わず、ヘッドレストの高さ、角度等の調整ができるようにする(注2)。 シートベルト ・車椅子使用者の安全を確保するために、シートベルトを設置する。 ・前向き固定:3点式とする。後向き固定:3点又は2点式とする。 ◇:望ましい整備内容 車椅子側の安全性、固定装置取り付け ・車椅子側の装置と車両側の装置がワンタッチで固定できる装置を開発することが望ましい。 姿図・寸法 <4点式車椅子固定ベルト、3点式シートベルトの例> ※参考4-3-5 車椅子固定装置の例(140ページ)参照 注1:ヘッドレストは、車椅子、車両側のいずれかに用意されていること。 注2:車椅子使用者の後頭部が最も突出した部分の少し下から、頚の少し上を支えられるよう、位置調整ができるようにする。 151ページ F車椅子、補装具収納場所 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保する。 ・収納スペースは、長さ1,050mm以上×幅350mm以上×高さ900mm以上とする(注1)。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを設置する。 注1:標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法に対応できる収納スペース。 G車椅子マークの表示 ○:標準的な整備内容 車椅子マークの表示による乗車案内 ・車外に、車椅子マークを表示し、移乗又は車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・車外に車椅子マークステッカーを貼り、車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・乗車可能な車椅子の大きさ、形状等について車外等に明示する。 152ページ (3)ユニバーサルデザインタクシー ・車椅子使用者に限らずその他の高齢者、障害者等が他の旅客と同じように利用し、予約制の福祉限定による利用に限らず流しの運行による利用も想定する。 ・窓ガラス部分以外の車体の前面、左側面、及び後面にユニバーサルデザインタクシーマークを表示し、車体前面方向からユニバーサルデザインタクシーであることを視認できるようにする。 ・車椅子使用者が乗り込めるドア開口部の高さ、間口の広いドアを確保。 ・低床、フラットな床であり、スロープを備え、車椅子使用者以外の障害者、高齢者等も乗降しやすいものとする。 ・近年、ユニバーサルデザインタクシーの実車モデルの開発が進んでおり、それらの開発動向も踏まえ、具体例を示している。 ・今後、ユニバーサルデザインタクシーの普及を図る上で、タクシーとして利用可能なユニバーサルデザイン車両の開発をより一層促進することが望まれる。 参考例 参考4-3-11:ユニバーサルデザインタクシーの事例 ・日産NV200バネット (出典:日産Webカタログ) 153ページ @乗降口 ○:標準的な整備内容 乗降口の広さ ・乗降口のうち1カ所は、スロープ板その他の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備を備える。 ・車椅子のまま乗車できる乗降口を1以上設け、その有効幅は700mm以上、高さは1,300mm以上とする。 車椅子対応の室内高 ・車椅子のまま乗車できる車両の室内高は、1,350mm以上とする。 乗降口地上高 ・停車時の乗降口地上高は、350mm以下とする。ただし、350mmを超える地上高の場合であって、備付けまたは別体の補助ステップ等を備えるときは、この限りでない。なお、補助ステップ等を設置する場合は、高齢者、松葉杖使用者等の乗降補助のために、1段の高さが260mm以下、奥行150mm以上となるような補助ステップ等を設置すること。また、補助ステップ等は2段以内に限る。 スロープの勾配(詳細はAスロープを参照) ・横から乗車:スロープ板を設置する場合、スロープ板の勾配は、14度(約1/4)以下とする。 ・後部から乗車:同上。 乗降口の端部 ・乗降口の端部(補助ステップ、手すりを含む)は、その周囲の部分や路面との輝度コントラスト*が大きいこと等により、高齢者、障害者等が端部を容易に識別しやすいようにする。 床面の材質 ・乗降口付近の床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 足下照明灯 ・夜間においても足下が見やすいように、乗降口にはドア開口時に点灯する足下照明灯を設置する。 ◇:望ましい整備内容 乗降口の広さ ・有効幅は800mm以上、高さは1,350mm以上が望ましい。 車椅子対応の室内高 ・車椅子のまま乗車できる車両の室内高は1,400mm以上が望ましい。 乗降口地上高 ・停車時の乗降口地上高は、300mm以下が望ましい。 ・備付けまたは別体の補助ステップ等を設置する場合は、1段の高さが200mm以下、奥行200mm以上となるように設置することが望ましい。 スロープ板の勾配(詳細はAスロープ板を参照)・横から乗車:スロープ板の勾配は、10度(約1/6)以下が望ましい。 ・後部から乗車:同上。 車椅子後退防止機能 ・車椅子固定スペースに傾斜がある場合は、車椅子乗車時に後退を防止する機構が設けられていることが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 154ページ 姿図・寸法 参考4-3-12:乗降口の例 <横から乗車の場合> 解説:歩道の幅が2メートル以上、スロープの長さ1メートル以下の場合、側面からの車椅子の乗降が可能。 歩道のない場合、道路幅員4メートル以上で、かつスロープの長さ1メートル以下の場合、車椅子の乗降が可能。 155ページ Aスロープ板 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車いす使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 スロープ板の設置 ・乗降口のうち1カ所は、スロープ板その他の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備を備える。 ○:標準的な整備内容 スロープ板の勾配 ・横から乗車:スロープ板の勾配は、14度(約1/4)以下とする。 ・後部から乗車:同上。 スロープ板の幅 ・スロープ板の幅は700mm以上とする。 ・車椅子のスロープ板からの脱輪防止のためエッジのある構造とする。エッジの高さは車椅子のハンドルリムと干渉しないように留意する。 スロープ板表面の材質 ・スロープ板の表面は滑りにくい素材とする。 スロープ板の耐荷重 ・スロープ板の耐荷重は、電動車椅子本体(80〜100kg程度)、車椅子使用者本人の重量を勘案し200kg以上とする。 スロープ板の設置方法 ・スロープ板は乗降口から脱落しない構造とする。 ・スロープ板と床面に段差ができないような構造とする。 スロープ板の格納方法 ・スロープ板は使用に便利で、乗客にとって安全な場所に備える。 ◇:望ましい整備内容 スロープ板の勾配 ・横から乗車:スロープ板の勾配は、10度(約1/6)以下が望ましい。 スロープ板の幅 ・スロープ板の幅は800mm以上が望ましい。 スロープ板の耐荷重 ・スロープ板の耐荷重は、300kg以上が望ましい。 156ページ 姿図・寸法 <スロープ板の勾配> ※参考4-3-8 スロープ板の長さの例(146ページ)参照 B乗降用手すり ○:標準的な整備内容 手すりの設置 ・高齢者、障害者等の乗降の円滑化、姿勢保持、立ち座り、安全確保のために、乗降口には手すり等を設置する。 手すりの色 ・夜間や薄暗い時、又は高齢者、ロービジョン者の安全のために、手すりは容易に識別できる配色とする。 ・手すりの色は朱色又は黄赤とする。 ・手すりとその周囲の部分との色の明度差をつける。 手すりの形状 ・高齢者、障害者等が握りやすい形状とする。 手すりの材質 ・高齢者、障害者等が握りやすいように、手すりの表面はすべ難い材質や仕上げとする。 C床の材質、形状 ○:標準的な整備内容 床の材質 ・床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 床の形状 ・車椅子使用者が安楽で適正な座位姿勢を保てるように、固定スペースの床面の傾斜を10度(約1/6)以下とする。 ◇:望ましい整備内容 床の形状 ・固定スペースの床面は水平とすることが望ましい。 157ページ D車椅子スペース 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 車いす又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子のスペースを1つ以上設ける。 ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置 ・次に掲げる規格に適合する車椅子スペースを1以上設置する。 位置 ・車椅子スペースは、車椅子の進入しやすい位置に設ける。 広さ ・車椅子を固定するスペースは、長さ1,300mm以上、幅750mm以上、高さ1,350mm以上とする。(注1) 車椅子使用者の視界の確保 ・車椅子使用者の外への視界を、座席利用者同様に確保する。 車椅子の方向転換に必要なスペース ・側方から乗車する場合、車内には車椅子使用者等が介助により転回できるスペースを確保する。ただし、回転盤を使用する場合はこの限りではない。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置 ・次に掲げる規格に適合する車椅子スペースを設けることが望ましい。 広さ ・車椅子を固定するスペースの高さは、1,400mm以上とする。 手すりの設置 ・車椅子使用者が乗車中に利用できる手すりなどを設置することが望ましい。 介助者用の座席の設置 ・車椅子使用者乗車時に、車椅子スペースの横に介助者(付添人)用の座席を設置することが望ましい。 注1:構造上の理由により「標準的な整備内容」に示された内容を確保できない場合には、可能な限り「標準的な整備内容」に近づける。 158ページ 姿図・寸法 参考4-3-13:車椅子スペースの例 <横から乗車の場合> <後ろから乗車の場合> E室内座席 ○:標準的な整備内容 乗車可能な人数 ・4名以上の乗客が乗車できることとする。車椅子使用者乗車時には、車椅子使用者以外の乗客1名以上が乗車できることとする。 ◇:望ましい整備内容 乗車可能な人数 ・車椅子使用者乗車時には、車椅子使用者以外の乗客2名以上が乗車できることが望ましい。 159ページ F車椅子固定方法 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三 車いす又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子固定装置 ・車椅子を固定することができる設備を備える。 ○:標準的な整備内容 車椅子固定装置 ・固定装置は、固縛、開放に要する時間が短く、かつ確実に固定できるものとする。 シートベルト ・車椅子使用者の安全を確保するために、3点式シートベルトを設置する。 姿図・寸法 参考4-3-14:<4点式車椅子固定ベルト、3点式シートベルトの例> ※参考4-3-5 車椅子固定装置の例(140ページ)参照 G車椅子、補装具収納場所 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保する。 ・収納スペースは、長さ1,050mm以上×幅350mm以上×高さ900mm以上とする(標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法に対応できる収納スペース。)。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを設置する。 160ページ Hユニバーサルデザインタクシーマークの表示 ○:標準的な整備内容ユニバーサルデザインタクシーマークの表示による乗車案内 ・窓ガラス部分以外の車体の前面、左側面及び後面に、ユニバーサルデザインタクシーマークを表示し、車椅子による乗車が可能であることを明示する。乗車可能な車椅子の大きさ、形状等について車外に明示する。ただし、福祉限定のタクシーでは、ユニバーサルデザインタクシーと同一の車両であっても車椅子マークを表示する。 参考例 参考4-3-15:ユニバーサルデザインタクシーマーク ・平成23年9月にユニバーサルデザインタクシーマークが決定された。 ・平成24年3月にユニバーサルデザインタクシーの認定車両に係る車体表示について、通達により義務化された。 ・標準仕様ユニバーサルデザインタクシーの認定レベルは、以下のとおり。 レベル2 レベル1と比して、より利用しやすさに配慮されている等より良い構造を有するユニバーサルデザインタクシー レベル1 車椅子使用者や高齢者をはじめとしたすべての利用者にとって利用しやすい構造として標準的な内容を満足するユニバーサルデザインタクシー その他のユニバーサルデザインタクシー 認定を受けていないものの車椅子用スロープ又はリフトを備えたユニバーサルデザインタクシー 161ページ  参考例 参考4-3-16:ユニバーサルデザインタクシーマークの表示例    Iその他の設備、表示 ○:標準的な整備内容 コミュニケーション設備 ・聴覚・言語障害者とのコミュニケーション円滑化のために、筆談用具を備える。(※詳細は乗合タクシーGコミュニケーション設備の項を参照のこと。) 162ページ  (4)乗合タクシー 今回、本整備ガイドラインに乗合タクシー車両の記載をするにあたり、いわゆるジャンボタクシー車両の基本的な標準仕様を新たに記載した。 乗合タクシー車両は、バリアフリー法の移動等円滑化基準上バス車両の分類となり、第36条から第43条までが適用となる。 一方で、道路運送車両法の保安基準において、乗車定員10人以下の乗合タクシー車両についてはバスの基準ではなく、乗用車の基準及び旅客運送事業用自動車に必要な基準が適用される。 今回、本整備ガイドラインに記載するにあたり、メーカーの開発者等が設計をする際に参考とすることが多いと思料されるため、タクシーの一部として乗合タクシーを記載することとした。 @シートレイアウト ○:標準的な整備内容 シートレイアウト ・最大10 人(乗務員を含む)が同時に乗車できることとする。 ・高齢者や障害者等が立ち座りがしやすいように、車内(運転席除く)に横向き座席を設置する。なお車椅子乗降時には後側の一部を跳ね上げとすること。また、横向きシートでは、立ち座りしやすいよう2 席ごとに縦手すりを1 本配置する。 ・郊外において長距離輸送する路線等で用いる場合には、乗車性に鑑み、シートを前向きに配置してもよい。 ◇:望ましい整備内容 シートレイアウト ・乗降ドア直後の座席について、立ち座りしやすいよう縦手すりを1 本配置することが望ましい。 参考例 参考4-3-17:シートレイアウトの事例 163ページ A乗降口 移動等円滑化基準 (乗降口) 第37条 乗降口の踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものでなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 乗降ステップ ・乗降口の踏み段(ステップ)の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいことにより踏み段(ステップ)を容易に識別できるものとする。 ○:標準的な整備内容 乗降ステップ ・踏み段(ステップ)の奥行きは200mm 以上とする。 ・補助ステップと通常ステップの2 段を設け、ステップ高さの差を300mm以内とする。 ◇:望ましい整備内容 乗降ステップ ・踏み段(ステップ)の奥行きは300mm 以上とすることが望ましい。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 B乗降口の手すり ○:標準的な整備内容 乗降口の手すり ・乗降口の左右に高齢者、障害者等が両手でつかめる間隔で手すりを設ける。また、横向きシートでは、立ち座りしやすいよう2席ごとに縦手すりを1本配置する。 164ページ Cリフト ○:標準的な整備内容 リフト ・乗降口のうち1カ所は、リフト等の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 ・リフトは、使用できるリフト面(プラットフォーム)の広さが、全長1200mm 以上、全幅750mm 以上とする。 ・乗降時に車椅子の落下を防止する装置の設置または同等の対応をする。 ・リフトの誤作動を防止するための安全装置(サイドブレーキを引いていないとリフトが作動しない、リフトの昇降時に障害物検知により自動停止など)を設置する。 ◇:望ましい整備内容 リフト ・車内に車椅子固定場所前方に横の手すりを設置することが望ましい。 ・使用できるリフト面の全幅は800mm 以上が望ましい。 D室内高さ ○:標準的な整備内容 室内高さ ・容易に移動できるように1500mm 以上とする。 E運賃箱 ◇:望ましい整備内容 運賃箱 ・運賃箱を設置できるようなスペースを確保することが望ましい。 F室内色彩 ○:標準的な整備内容 室内色彩 ・手すり、注意箇所等は高齢者、障害者等にも分かりやすい配色とする。 Gコミュニケーション設備 移動等円滑化基準 (意思疎通を図るための設備) 第42条 バス車両内には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該バス車両内に表示するものとする。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 コミュニケーション設備 ・聴覚・言語障害者とのコミュニケーションの円滑化のために、筆談用具を備える。 165ページ H車椅子スペース ○:標準的な整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子のスペースを一つ以上設ける。 ◇:望ましい整備内容 車椅子スペースの設置 ・車椅子のスペースを二つ以上設けることが望ましい。 I車椅子収納場所 ◇:望ましい整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保することが望ましい。 J自動ドア ◇:望ましい整備内容 自動ドア ・乗客の安全性確保のため、自動ドアの作動中にドアノブにふれると自動ドアが閉まる機能が解除されることが望ましい。 K降車ボタン等 ◇:望ましい整備内容 降車ボタン等 ・降車合図用ブザーを備え、床面1200mm の高さで旅客の手近な位置に備えることが望ましい。 ・車椅子使用者の降車合図用のブザーを車椅子使用者が利用できる位置に備えること。なお、押しボタンは手の不自由な乗客でも使用できるものとすることが望ましい。 L車内表示 ◇:望ましい整備内容 文字による次停留所案内 ・乗客が次停留所名等を容易に確認できるよう次停留所名を表示する装置を車内の見やすい位置に設置することが望ましい。 166ページ M車外表示 ◇:望ましい整備内容 車外表示 ・昼間夜間とも視認可能な行き先表示用車外表示装置を車両前面に設置することが望ましい。 N車内放送 ◇:望ましい整備内容 次停留所等の案内放送 ・視覚障害者等に配慮し、次停留所等の情報を音声で得られるようにすることが望ましい。 ・降車ボタンに反応し、停車することが分かるように音声が流れるようにすることが望ましい。 O乗合タクシーマークの表示 ◇:望ましい整備内容 乗合タクシーマークの表示による乗車案内 ・@シートレイアウト、A乗降口、B乗降口の手すり、Cリフト、D室内高さ、F室内色彩、Gコミュニケーション設備、H車椅子スペースにおいて、◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容及び○:標準的な整備内容に適合する乗合タクシー車両については、以下のマークを外部より見やすいように表示することが望ましい。 167ページ (5)肢体不自由者・高齢者等対応(セダンタイプ/回転シート車) ・乗車定員:4〜5名程度 ・車椅子使用者・杖使用者などの肢体不自由者、高齢者などが安全かつ円滑に座席に移乗できるよう回転シートを装備。 ・車椅子、杖、歩行器、歩行車等の補装具はトランクなどに収納。 参考4-3-18:セダンタイプ/回転シート車の例 168ページ @乗降口(セダン) ○:標準的な整備内容 乗降口の広さ ・高齢者、障害者等の乗降の円滑化を図るため、乗降口を可能な限り広くする。 ・乗降補助用ルーフハッチを設置しても良い。 乗降口下の段差 ・後部ドア開口部下部の、床面との段差を少なくする。 乗降口の端部 ・乗降口の端部は、その周囲の部分や路面との明度差が大きいこと等により、高齢者、障害者等が端部を容易に識別しやすいようにする。 床面の材質 ・乗降口付近の床の材質は、滑りにくい仕上げとする。 足下照明材 ・夜間においても足下が見やすいように、乗降口にはドア開口時に点灯する足下照明灯を設置する。 回転シート ・肢体不自由者の車椅子からの移乗、高齢者等の乗車がしやすいように、シートが回転して車外に出る装置を設置する。 ◇:望ましい整備内容 回転シート ・高齢者、障害者等の利用に配慮し、余裕を持ったレッグスペースを確保することが望ましい。 姿図・寸法 参考4-3-19:回転シートの例 169ページ A車椅子、補装具収納場所 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条  2 回転シート車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則第一条に規定する設備を備えたものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 折り畳んだ車いすを備えておくスペースが一以上設けられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを一以上確保する。 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子を収納するスペースは、折りたたんだ車椅子(標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法は、長さ1,050mm×幅350mm×高さ900mm)が収納できるスペースを確保する。ただし、構造上の理由により十分なスペースを確保できない場合には、折りたたんだ車椅子をトランクに収納した際にトランクの蓋を固定できる用具を設ける。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを確保する。 B車椅子表示 ○:標準的な整備内容 車椅子マークの表示による乗車案内 ・車外に、車椅子マークを表示し、移乗又は車椅子による乗車が可能であることを明示する。 ・乗車可能な車椅子の大きさ、形状等について車外に明示する。 170ページ (6)その他のタクシー車両における車椅子等対応(セダンタイプ) ・乗車定員:4〜5名程度 ・一般タクシー車両における固定シートに移乗することが可能な車椅子使用者や杖などを利用する肢体不自由者への利用に配慮し、車椅子、杖、歩行器、歩行車等の補装具をトランクなどに収納できるよう配慮する。 @車椅子、補装具収納場所 ○:標準的な整備内容 車椅子収納スペース ・車椅子使用者が座席に移乗した場合のために、折りたたんだ車椅子の収納スペースを確保する。 ・ 折りたたんだ車椅子を収納できるスペースが十分に確保できない場合は、折りたたんだ車椅子をトランクに収納した際にトランクの蓋を固定できる用具を設ける。 ◇:望ましい整備内容 車椅子収納スペース ・雨天時に車椅子が濡れないよう配慮することが望ましい。 ・車椅子を収納するスペースは、折りたたんだ車椅子(標準型自操用手動車椅子を折りたたんだ時の最大寸法は、長さ1,050mm×幅350mm×高さ900mm)が収納できるスペースを確保することが望ましい。 補装具収納スペース ・車内に杖、歩行器、歩行車等の補装具を収納するスペースを設置することが望ましい。 171ページ 3.2 視覚障害者への対応 ・視覚障害者は文字等の視覚情報の取得が困難であることから、タクシー会社、車両番号、運賃等のタクシー利用に必要な情報を点字・音声等により提供する。 ・弱視者、色覚障害者に配慮し、空車ランプ、タクシーメーター表示等は、見分けやすい色の組み合わせとし、表示要素毎の輝度コントラストを確保した大きな表示とする。 @点字表示・音声案内等 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車椅子等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車椅子その他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 四 事業者名、車両番号、運賃及び料金その他の情報を音又は点字により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 2  回転シート車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則第一条 に規定する設備を備えたものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 二 事業者名、車両番号、運賃及び料金その他の情報を音又は点字により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 運賃の点字表示等 ・視覚障害者に配慮し、運賃及び料金その他の情報を点字案内や音案内を行う。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 車両番号の表示等 ・視覚障害者に配慮し、事業者名、車両番号を知らせるため、これらの情報の点字案内や音案内を行う。 注:乗車した車両番号は、忘れ物の問い合わせ等の際に活用できる。 ○:標準的な整備内容 タクシーメーター表示 ・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した大きな表示とする。(※「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) 172ページ 空車表示 ・タクシーの空車ランプ表示は、夜間でも視認可能なものとする。 ・LED表示器の場合は直射日光のもとでも視認可能なものとする。 ・ロービジョン者・色覚異常者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素ごとの輝度コントラスト*を確保した大きな表示とする。(※巻末「参考:色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」を参照のこと) 運賃の音声案内 ・視覚障害者のために、音声によって運賃が確認できるような装置を設置する。 *:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(視認性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行うこととした。 173ページ 3.3 聴覚障害者への対応 ・聴覚障害者は音声・言語によるコミュニケーションが困難となることから、乗務員とのコミュニケーションに際しては筆談用具などを備える。 @その他の設備、表示 移動等円滑化基準 (福祉タクシー車両) 第45条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 五 聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。 2 回転シート車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則第一条 に規定する設備を備えたものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 三  聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 聴覚障害者コミュニケーション設備 ・聴覚障害者とのコミュニケーション円滑化のために、筆談用具など文字により意思疎通を図るための設備を備える。 ◇:望ましい整備内容 聴覚障害者コミュニケーション設備 ・使用頻度の高い手話は習得することが望ましい。例:「ありがとうございます」「お待ち下さい」等。 姿図・寸法 参考4-3-20:筆談器の例 ・筆談器は書いてすぐ消して使える特徴がある。 ・メモ用紙については書いて渡せる利点がある。 174ページ 3.4 知的障害者、発達障害者、精神障害者等への対応 ・知的障害者、発達障害者、精神障害者や日本語のわからない外国人など、利用者の中には文字や話し言葉での意思疎通が難しい人が含まれる。また、利用者のその時の体調等にも影響され、うまく発話できなどの状況も考えられることから、コミュニケーション手段を複数用意しておくことは有効である。 @その他の設備、表示 ◇:望ましい整備内容 コミュニケーション支援ボード ・言葉(文字と話し言葉)による人とのコミュニケーションが困難な障害者等に配慮し、JIS T0103で規定されているコミュニケーション支援用絵記号等によるコミュニケーション支援ボードを準備することが望ましい。 ※「筆談用具がある旨の表示例」、「JIS T0103 「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」に収載されている絵記号の例」、「コミュニケーション支援ボードの例」は、都市内路線バスのコミュニケーション設備の項(113〜116ページ)を参照。 175ページ 3.5 高齢者・障害者等その他配慮事項 ・高齢者、障害者等の利用に配慮し、座席は座りやすく、立ち上がりやすいものとする。 ・走行中の安全確保を図るため、車内に手すりを設置する。 ・タクシーメーターは見やすい位置に設置する。 @座席 ○:標準的な整備内容 座席の仕様 ・床面からの高さ、奥行き、背当ての角度、座面の角度等を配慮し、座りやすく、立ち上がりやすいものとする。 A車内の手すり ○:標準的な整備内容 手すりの設置 ・高齢者、障害者等の走行中の安全確保のために、車内に手すりを設置する。 手すりの色 ・夜間や薄暗い時、又は高齢者、ロービジョン者の安全のために、手すりは容易に識別できる配色であること。 ・手すりの色は朱色又は黄赤とする。手すりとその周囲の部分との色の明度差をつける。 手すりの形状 ・高齢者、障害者等が握りやすい形状とする。 ・手すりの径は20〜30mm程度とする。 手すりの材質 ・高齢者、障害者等が握りやすいように、手すりの表面はすべり難い材質や仕上げとする。 176ページ B運賃案内 ○:標準的な整備内容 タクシーメーターの位置 ・タクシーメーターは、後部座席からも見やすい位置に設置する。 ・肢体及び体幹機能障害者の利用者の着座位置からも特段の動作を要することなく視認できる位置にも料金表示を設置する。 姿図・寸法 参考4-3-21:タクシーメーターの位置の例 177ページ 4 航空機 平成12 年に制定された交通バリアフリー法により、客席数が30 以上の航空機における可動式ひじ掛けや運航情報提供設備の整備や、客席数が60 以上の航空機における機内用車椅子の設置、通路が2 以上の航空機における車椅子対応トイレの設置等の措置が義務付けられ、航空機の大きさに応じたバリアフリー化が図られた。 平成22年度末のバリアフリー法の基本方針に基づく整備目標65%に対し、実績は70%と、目標をクリアする整備が進んできているところである。 平成22年度末に改定された「移動等円滑化の促進に関する基本方針」においては、平成32年度末までに全航空機の90%を移動等円滑化するよう目標を定めた。 @可動式ひじ掛け 移動等円滑化基準 (可動式のひじ掛け) 第64条 客席数が三十以上の航空機には、通路に面する客席(構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものを除く。)の半数以上について、通路側に可動式のひじ掛けを設けなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 可動式ひじ掛け ・客席数が30以上の航空機には、通路に面する客席の半数以上について、通路側に可動式のひじ掛けを設ける。(構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものはこの限りではない。) ◇:望ましい整備内容 可動式ひじ掛け ・構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものを除き、通路に面する全ての客席について、可動式のひじ掛けを設けることが望ましい。 参考例 参考4-4-1:通路側に設置された可動式のひじ掛けの事例 178ページ    A機内用車椅子 移動等円滑化基準 (通路) 第63条 客席数が六十以上の航空機の通路は、第六十五条の規定により備え付けられる車いすを使用する者が円滑に通行することができる構造でなければならない。 (車いすの備付け) 第65条 客席数が六十以上の航空機には、当該航空機内において利用できる車いすを備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 機内用車椅子の設置 ・客席数が60以上の航空機には、当該航空機内において利用できる車椅子を備える。 参考例 参考4-4-2:航空機の通路を円滑に通行することができる構造の車椅子(アイルチェア)の事例   B運航情報提供設備 移動等円滑化基準 (運航情報提供設備) 第66条 客席数が三十以上の航空機には、当該航空機の運航に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 運航情報提供設備の設置 ・客席数が30以上の航空機には、当該航空機の運航に関する情報を離着陸時、緊急時等に文字等により表示するための設備及び音声により提供する機内放送設備を備える。 179ページ Cトイレ 移動等円滑化基準 (便所) 第67条 通路が二以上の航空機には、車いす使用者の円滑な利用に適した構造を有する便所を一以上設けなければならない。 ◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容 車椅子対応トイレの設置 ・通路が2以上の航空機には、車椅子対応トイレを1以上設ける。 ○:標準的な整備内容 ドアの幅 ・ドア幅は、航空機に設置している車椅子の通行を考慮したものとする。 トイレ内部の仕様 ・車椅子対応トイレは、航空機に設置している車椅子のまま出入りすることができ、車椅子から便座(腰掛け式=洋式)への移動を考慮する。 ・車椅子から便座への移動が可能なスペースを確保する。 非常通報装置 ・手の届く範囲に設置する。 ◇:望ましい整備内容 車椅子使用者が利用可能なトイレの設置 ・通路が1、かつ客席数60以上の航空機には、車椅子使用者が利用可能なトイレを設けることが望ましい。 ドアの幅 ・ドア幅は、航空機に設置している車椅子の通行を考慮したものとする。 トイレ内部の仕様 ・車椅子使用者が利用可能なトイレは、車椅子使用者が(独力又は介助者の介助により)車椅子から便座(腰掛け式=洋式)へ移動できるよう考慮する。 非常通報装置 ・手の届く範囲に設置する。 参考例 参考4-4-3:車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のトイレの事例 180ページ   5 旅客船 旅客船の各部位の構造及び設備に係るガイドラインは、本書と別に「旅客船バリアフリーガイドライン」が策定されているので参考とされたい。 181ページ 参考 色覚異常者の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ 〜大多数を占める赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)の特徴 ・赤〜緑の波長域において、明度が類似した色の見分けが困難になっている。次図の、黒い実線から右(長波長)側の「赤〜緑の領域」で、色の差が小さくなっている。この範囲では点線を中心に左右の色がほぼ対称に見えていて、「赤と緑」「黄緑と黄色」の差が特に小さくなっている。 ・さらに1型色覚では、最も長波長側の視物質に変異があるため、赤が暗く感じられる。そのため「濃い赤」はほとんど「黒」に見える(ロービジョン者も同じ傾向がある。)。黒背景に赤い文字の電光掲示はほとんど読み取れず、また注意標示や時刻表などの赤が黒と同じに見えてしまう(交通信号機ではこの問題を避けるため、赤信号にはオレンジに近い色を使用している。)。 注)この図版は最も程度の強い人の見え方をシミュレートしたもので、全員がこのように見えるわけではありません。 ・ある色と、それにRGBの赤成分または緑成分を足した色が区別しにくくなる。「紫と青」「緑と茶色」「赤と茶色」などそれぞれの色が同じようにみえてしまう。 ・彩度の低い色どうしも識別が難しく、「水色とピンク」「灰色と淡い水色、淡いピンク、薄緑」などがそれぞれ同じように見える。 ・鮮やかな蛍光色どうしの見分けも苦手で、黄色と黄緑の蛍光ペンや、ピンクと水色の蛍光ペンは、それぞれほとんど同じ色に見える。 ・赤と緑の一方の視物質がない分、色の識別において青視物質に依存する度合いが高いため、青色への感度はむしろ高い面がある。「赤と緑」や「黄色と黄緑」はほとんど同じ色に見えるが、「緑と青緑」は全然違う色に見える(交通信号機ではこれを利用して、緑の信号には青味の強い色を使用している。)。 ・色相(色あい)の見分けが苦手な分、明度や彩度の差にはむしろ敏感であり、同系色の明暗の識別には支障は少ない。 ・ある程度の色は区別できるため、区別できないところにさらに色分けがあるとは考えない傾向がある。そのため色分けがされていること自体に気付かないことがある。 ・一般の人の色覚に合わせて作られた「色名」(色のカテゴリー)に、色覚異常の人はうまく対応できない。そのため、色名が明記されていないと、たとえ色が違うことが分かってもそれぞれの色名が分からず、色名を使ったコミュニケーションが困難になる(これに対応して、近年の国産文房具ではペン軸に色名を明記しているものが増えている。)。 出典:神奈川県「カラーバリアフリー『色づかいのガイドライン』」平成20年(一部加筆) 182ページ ・色覚異常の人が見分けづらい色の組み合わせは、xy色度図の上でほぼ一直線に並ぶ。この線を混同線という。路線図など多くの色を使用する場合も、それぞれの色の範囲内で混同線に乗らないように色合いを微調整し、明度にも差をつけることによって、色覚異常の人にも区別がしやすくなる(色覚シミュレーションソフトを使うと、同じ混同線に乗る色が1つの色に表示されるので、見分けづらい組み合わせを確認できる。)。 出典:秀潤社「細胞工学」誌「色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション」平成14年及び金芳堂「脳21」誌「色覚のタイプによって色はどのように見えるか」平成15年10月(一部加筆) 183ページ 高齢者・障害者等の主な特性 (1)高齢者 「平成24年版高齢社会白書」によると、昭和45年(1970年)には、7.1%であった高齢化率(65歳以上の高齢者の比率)は、平成23年(2011年)には23.3%に達しており、平成47年(2035年)には国民の3人に1人が65歳以上の高齢者となると予測されている。 高齢者は、身体機能が全般的に低下しているため、明らかに特定の障害がある場合以外は、外見上顕著な特徴が見られないこともある。しかし、程度は軽くても様々な障害が重複している可能性があり、移動全般において身体的・心理的負担を感じていることが多い。 機能低下の内容や程度は様々であり、本人が気づいていないうちに進行していることもある。身体的な機能低下はそれぞれの障害と関連して対応を考えることができる。例えば、耳が遠くなるということは聴覚障害の一部と考えることができ、白内障で視力が低下することは、視覚障害の一部ということができる。 心理面では、体力全体が低下している高齢者は、機敏な動きや、連続した歩行等に自信がなくなり(また、実際に困難になり)、心理的にも気力が低下してくることがある。 ■移動上の困難さ ・人混み、大規模な旅客施設、普段利用しない場所では不安を感じやすい。 ・若い人のように長い距離を歩いたり、素早く行動することが困難な傾向にある。 ・転倒したり、つまずきやすくなり、大きなけがにつながる可能性がある。 ・路線図、運賃表、時刻表などの小さな文字が見えにくい。 ・新しい券売機等の操作がわかりにくい。 ・階段の上り下り、車両の乗降などは、身体的負担が大きい。 ・階段の利用については、上るとき以上に下るときの身体的負担が大きく、不安に感じる。 ・トイレに頻繁に行きたくなる。 ・長時間の立位が困難であり、ベンチなどに座る必要がある。 ・屋外や空調下などでは、水分摂取が適宜行えない等から体温調整が難しい。 等 (1)認知症  認知症は加齢に伴い著しく出現率が高まる疾病である。認知症の基本的な症状は単なる「もの忘れ」ではなく、脳の萎縮や血管の病変によって起こる認知・記憶機能の障害である。認知症にはいくつかの原因があり、アルツハイマー病や脳血管性認知症が代表的である。 ■移動上の困難さ ・体験の全部や少し前のことを忘れたり、忘れたことの自覚を伴わない記憶機能の障害がある。 ・自分のいる場所や行き先、時間がわからなくなる見当識の障害がある。 ・徘徊行動をとり旅客施設などに迷い込む場合がある。こうした行動は制止が困難な場合が多い。 等 184ページ (2)肢体不自由者(車いすを使用している場合)  車いす使用者は、下肢等の切断、脳血管障害、脊髄損傷、脳性麻痺、進行性筋萎縮、リウマチ性疾患等により下肢の機能が失われる(又は低下するなど)こと等により、障害に適した車いす(手動車いす、簡易式折りたたみ式電動車いす、電動車いす、ハンドル形電動車いす、(身体支持部のティルト機構やリクライニング機構等を有する)座位変換形車いす等)を使用している。また、一時的なけがによる車いすの使用も考えられる。  脳血管障害により車いすを使用している人は、左右いずれかの片麻痺の状態であることが多く、片方の手足で車いすをコントロールしている場合がある。  脊髄損傷により車いすを使用している人は、障害の状況により下半身、四肢等の麻痺が生じ、歩行が困難又は不可能になっている。また、便意を感じない、体温調整が困難、床ずれになる等、生活上多くの2次障害を抱えている場合が多い。床ずれを予防するため車いすのシートにクッションを敷いていることが多い。  脳性麻痺により車いすを使用している人は、不随意の動きをしたり、手足に硬直が生じていることがあり、細かい作業(切符の購入等)に困難をきたす場合がある。また、言語障害を伴う場合も多くあり、知的障害と重複している場合もある。  進行性筋萎縮症は進行性で筋肉が萎縮する疾患である。進行性のため、徐々に歩行が困難となり車いすを使用するに至る。首の座りや姿勢を維持するのが難しい場合もあり、筋肉が弱っていることから身体に触れる介助は十分な配慮が必要となる。  リウマチは慢性的に進行する病気で、多くは関節を動かした時に痛みを伴う。関節が破壊されていくため、特に脚などの力のかかる部分は、大きな負担に耐えられなくなる。そのため、症状が重くなると車いすを使う場合がある。 ■移動上の困難さ ・車いす使用者は、段差や坂道が移動の大きな妨げとなる。 ・移動が円滑に行えない、トイレが使用できない等の問題があることから、外出時の負担が大きい。 ・階段、段差だけでなく、極端な人混み、狭い通路、急なスロープ、長い距離のスロープ、通路の傾斜などの通過も困難となる。 ・券売機の設置位置が高かったり、車いすのフットサポートが入るスペースが十分でないなど券売機での切符の購入が困難な場合がある。 ・頭の位置が低いために人混みでは周囲の人のバッグなどが顔にあたることがある。 ・視点が常に低い位置にあり、高い位置にあるものが見えにくかったり、手が届かないことがある。 ・上肢に障害がある場合、手腕による巧緻な操作や作業が難しく、エレベーターやトイレ、券売機等の操作ボタン等の操作が困難な場合がある。 ・車いす(手動車いす、簡易式折りたたみ式電動車いす、電動車いす、ハンドル形電動車いす、座位変換形車いす等)が安定的に位置取りかつ動作できるスペースが必要なことがある。 等 185ページ (3)肢体不自由者(車いす使用以外) 杖歩行の場合、スロープでは滑りやすく、また、膝上からの義肢を装着している場合には、膝がないため下肢をまっすぐに踏ん張ることができず、勾配により歩くことが困難となる。加えて、車内では直立時の安定性が低く転倒の危険性があるため、多くの場合、座席が必要となる。 杖歩行以外でも、障害の部位や程度は様々で、その部位によって歩行機能のレベルや求められるニーズが異なる。 ■移動上の困難さ ・階段、段差だけでなく、極端な人混み、狭い通路、スロープ、通路の傾斜などの通過も困難となる。 ・肢体不自由のため杖歩行をしている人は、短距離の移動でも疲労を感じる。ベンチなど休憩する場所を必要とする。 ・松葉杖などを使用している人は、両手がふさがるため、切符の購入や料金の支払いが困難になる場合がある。 等 (4)内部障害者 「平成24年版障害者白書」によると、内部障害者は約107万人で、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の約31%を占めている。 内部障害は、普段、外見上わかりにくい障害である。全体の半数以上が1級の障害で、心臓疾患がもっとも多く、ついで腎臓疾患である。他の障害に比べ年々増加しているのが大きな特徴である。 1)心臓機能障害  不整脈、狭心症、心筋症等のために心臓機能が低下した障害で、ペースメーカー等を使用している人がいる。 2)呼吸器機能障害  呼吸器系の病気により呼吸機能が低下した障害で、酸素ボンベを携行したり、人工呼吸器(ベンチレーター)を使用している人がいる。 3)腎臓機能障害  腎機能が低下した障害で、定期的な人工透析に通院している人がいる。 4)膀胱・直腸機能障害  膀胱疾患や腸管の通過障害で、腹壁に新たな排泄口(ストーマ)を造設している人がいる。オストメイト(人工肛門や人口膀胱を持つ人)は、トイレの中に補装具(パウチ=排泄物を溜めておく袋)を洗浄できる水洗装置、温水設備等を必要とする。 5)小腸機能障害  小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている人がいる。 186ページ 6)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害  HIVによって免疫機能が低下した障害で、抗ウィルス剤を服薬している。  上記の内部障害の他にも膠原病や、パーキンソン病、ペーチェット病等の難病も、病気の進行によって、平衡を維持できない場合がある等、日常生活に著しく制約を受ける。 ■移動上の困難さ ・長時間の立位が困難な場合がある。 ・心肺機能の低下等により長い距離を連続して歩くことや階段の昇降が困難な場合がある。 ・携帯電話等の電波によるペースメーカーへの影響が懸念される。 ・障害の部位により、空気の汚染されている場所に近づけないことや、酸素ボンベの携行が必要な場合がある。 ・膀胱・直腸等の機能障害による排泄の問題がある。 ・オストメイトの人のパウチ洗浄設備など、トイレに特別の設備を必要とする場合がある。 等 (5)視覚障害者(全盲・ロービジョン・色覚異常) 「平成24年版障害者白書」によると、視覚障害者は約31万人、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の約9%を占めている。疾病等により後天的に障害となった人が80%と圧倒的に多く、年齢が高くなるほど増加している。 また、色覚異常の人は、日本人の男性の20人に1人、女性は500人に1人の割合で、全国で約320万人程度いると言われている。 視覚障害者には、主として音声による情報案内が必要となる。たとえば、運賃や乗り換え経路の案内、駅構内の案内等である。また、ホーム上での適切な誘導による安全確保等、移動の安全を確保することが重要となる。 視覚障害者は、まったく見えない全盲の人だけでなく、光を感じたり物の輪郭等を判断でき、視覚障害者誘導用ブロックや壁面・床面のラインと背景色の色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)を目印に外出できるようなロービジョン(弱視とも呼ばれる)と言われる人も少なくない。全盲は視覚に障害のある方の2割程度といわれ、その他はロービジョンとなる。ロービジョンは周囲の明るさや対象物の輝度コントラスト等の状況によって、同じ物でも見え方が異なる場合がある。 ほかに、視野の一部に欠損があり、周囲の情報を十分に視覚的に捉えることができない障害や視力低下、ぼやけて見えにくい、視野狭窄により見えにくい、視野の中心の暗点により見えにくい、明暗の順応に時間がかかる、まぶしく感じて見えにくい等、様々な障害がある。 色覚異常の人は、明度や彩度の似た色の判別が困難となる。また、加齢により色覚機能が低下する人もいることから、今後、高齢化の進展により何らかの色覚異常を有する人が増えるものと見込まれる。 色覚異常の人は、一見異なった色でも同じ明度や彩度の場合見分けることが困難となることがある。例えば、「赤と緑とグレー」、「オレンジと黄緑」は明度が同じであるため、区別することが困難となる場合がある。 逆に、「緑と青緑」の2色は見分けることができる場合がある。このため、旅客施設における案内表示等について、色覚異常の人に対する配慮が必要となる。 187ページ 視覚障害者が、公共交通機関を利用して外出する時は、目的地への道順、目標物等を事前に学習してから出かけることが一般的である。しかし、日によって屋外空間の状況は変化することから、天候、人の流れ、不意な工事の実施等、いつもと違う環境に遭遇することも少なくない。また、急に初めての場所に出かける必要に迫られることもある。単独歩行に慣れている視覚障害者でも、こうした状況の変化は緊張を強いられ、ともすれば思わぬ危険に遭遇することもある。駅周辺の放置自転車や、コンコースに出店している売店等も注意しなければぶつかるため、周囲の配慮が必要となる。 ■移動上の困難さ ・経路の案内、施設設備の案内、運行情報等、主として音声・音響による情報案内が必要である。 ・視覚障害者はホーム上を歩行する際に転落の危険・不安を感じている。 ・ロービジョン者は、色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)がないと階段のステップや表示などが認識できない場合がある。また、文字表示は大きくはっきりと表示し、近づいて読めることが必要である。 ・色覚異常の人は、線路の案内図や時刻表、路線情報の表示などにおいて、明度や彩度の似た色など、色の組み合わせによりその識別が困難になる場合がある。 等 (6)聴覚・言語障害者 「平成24年版障害者白書」によると、聴覚・言語障害者は約34万人、身体障害者(知的障害、精神障害を除く)全体の約10%を占めている。 聴覚・言語障害者は、コミュニケーションをとる段階になって、初めてその障害に気がつくことが多く、普段は見かけ上わかりにくい。聴覚の障害も個人差が大きく、障害の程度が異なる。特に乳幼児期に失聴するなど、その時期によっては言葉の習得が困難になるため、コミュニケーションが十分に行えない場合もある。聞こえるレベルにより、補聴器でも会話が可能な人もいるが、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時等、うまく聞き取れないこともある。また、重度の聴覚障害の場合には補聴器をつけても人の声を聞き取ることができない場合がある。聞こえないことにより、言葉をうまく発音できない障害を伴うことがある。また、聴覚障害という認識がなくても、高齢になり耳が聞こえにくくなっている場合もある。 聴覚障害者は、公共交通機関を利用するときに、駅の案内放送、発車ベル、車内放送等が聞こえず困難を感じている。電光掲示装置や何らかの視覚的な表示機器を必要としている。アナウンスが聞き取れない、車内に電光掲示装置がない等の状況では、外を見たり、駅名、停留所名表示に常に注意しなければならない。列車の接近音、発車合図が聞こえないことにより、列車に接触しそうになったり、ドアに挟まれそうになったり、危険な思いをすることが少なくない。 聴覚・言語障害者にとって、窓口や案内時におけるコミュニケーションの取り方を習得した職員による、短く簡潔な文章による筆談、できれば簡単な手話等での対応が望まれる。 188ページ ■移動上の困難さ ・旅客施設内、ホーム、車内での案内放送が聞こえない場合がある。 ・ホーム等では列車の接近や発車合図に気がつかない場合がある。 ・事故や故障で停止・運休している時の情報が音声放送だけではすぐに得られない。 ・駅の案内放送、発車ベル、車内放送等が聞こえず困難を感じることがある。 ・可変式情報表示装置や何らかの視覚的な表示機器がない駅や車内では不便を感じる。 ・外見で判断することが難しく、周囲が気づきにくいため障害を理解されないことがある。 ・聴こえるレベルにより、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時等、うまく聞き取れないことある。 ・カウンター窓口越しの対応などで相手の表情が見えないとコミュニケーションが取りにくいことがある。 等 (7)知的障害者 「平成24年版障害者白書」によると、わが国の知的障害児・者数は、54万7千人であり、年々増加の傾向にある。在宅生活をしている知的障害者は41万9千人、施設で生活している知的障害者は12万8千人である。 知的障害とは、概ね18歳頃までの発達期に脳に何らかの障害が生じたために、「考えたり、理解したり、感情をコントロールしたり、話したり」する等の知的な能力やコミュニケーションに障害が生じ、社会生活への適応能力が同年齢の子供と比べて低いなどの課題を持つ障害である。主な原因として、ダウン症候群など染色体異常によるもの、脳性マヒやてんかんなどの脳の障害がある。また、発達障害を併せもつことが少なくない。 知的障害者は都道府県等より療育手帳(知的障害者福祉手帳)が交付されている。 1)ダウン症 ダウン症は染色体異常を伴う障害である。身体的な特性としては、成長に少し時間がかかるため、出生時から体重、身長とも平均より少なくその後も同年齢の平均に比べ小さい等の特徴がある。 ■移動上の困難さ ・利用上のルールや常識が理解できにくいことがある。 ・一度にたくさんのことを言われると混乱することがある。 ・困ったことが起きても、自分から人に助けを求めることができない人もいる。 ・コミュニケーションに際しては、ゆっくり、ていねいに、わかりやすく説明することが必要となる。 等 (8)精神障害者 「平成24年版障害者白書」によると、わが国の精神障害者は302万8千人であり、年々増加の傾向にある。在宅生活をしている精神障害者は267万5千人、施設に入所している精神障害者は35万3千人である。 189ページ 1)統合失調症 約1%の発病率で身近な病気である。日本では約67万人が治療を受け、20万人以上が入院生活を送っている。 不眠やあせりの気持ちがひどくなり、つらい気持ちになるが、治療を受け十分な休養とって規則正しい生活のリズムを作ると、回復へ向かう。 2)うつ病 うつ病は、ストレスにさらされれば誰でもなる可能性がある。大きな悲しみ、失敗等が原因で、食欲の低下や不眠を招くことがあるが、うつ病はこれが重症化し、そのまま治らなくなったり、治りにくくなった状態である。 まれに高揚状態(そう)があらわれる人もいる。 3)てんかん 脳内に正常よりも強い電気的変化が突発的に生ずることにより、意識障害やけいれんの発作が起きる病気で、規則的に服薬を続けると大部分は発作を防げるようになる。また、手術で根治する場合もある。一部に発作をコントロールできず、発作が繰り返されることがあるが、発作は通常2〜3分でおさまる。まれに発作が強くなったり、弱くなったりしながら長時間つづく「発作重積」と呼ばれる状態がある。 ■移動上の困難さ ・ひとりで外出する時や、新しいことを経験するときは、緊張し、不安を感じやすい。 ・腹痛や吐き気を催すときがあるので、トイレの近くに座るようにしている人や、喫煙によりストレスの解消を図ろうとする人がいる。 ・関係念慮(本来自分とは関係のないことを自分に関係づけて考えたり感じたりする。)が強く外出することが困難な人もいる。 ・のどの渇き、服薬のため水飲み場を必要とする人もいる。 等 (9)発達障害者 発達障害は、人口に占める割合は高い(「平成19年版障害者白書」によると、小中学校の通常学級において、全児童生徒の約6%の割合で存在することが指摘されている。)にもかかわらず、法制度もなく、十分な対応がなされていない状況であったが、平成17年4月に「発達障害者支援法」が施行され、公的支援の対象となった。同法では発達障害とは広汎性発達障害(自閉症等)、学習障害、注意欠陥多動性障害等、通常低年齢で発現する脳機能の障害とされている。 1)自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群 自閉症は、人との関わりが苦手、コミュニケーションが上手にとれない、興味や関心の範囲が狭く特定の物や行為へこだわりを示すなどの特徴がある。高機能自閉症やアスペルガー症候群は、自閉症の特徴をもちながらも知的発達の遅れを伴わないので、障害に気づくことが更に遅れやすいと言われている。これらの障害を総称して広汎性発達障害又は自閉症スペクトラムともいう。 190ページ 2)学習障害(LD) 学習能力(読み・書き・計算等)の一領域のみが他に比べて著しく発達が遅れている場合、学習障害と診断される。 3)注意欠陥・多動性障害(AD/HD) 注意欠陥・多動性障害は、適切に注意や関心を持続することが困難、外からの刺激に衝動的に反応しやすい、自分の感情や行動をうまくコントロールできないといった行動がみられる。 ■移動上の困難さ ・外見で判断することが難しく、周囲が気づきにくいため障害を理解されないことがある。 ・利用上のルールや常識が理解できにくいことがある。 ・車内で座席にずっと座っていることができないことがある。 ・大声をだしたり騒いだりする人もいる。 ・環境の変化を理解し対応することが困難なので、ごくわずかな変化にも対応できないことがあり、例えば行き先の変更や時間の遅れが合った場合に困惑する。 ・場面にあった会話や行動ができず、周囲から浮いてしまうことがある。 ・気持ちをうまく伝えられないために、コミュニケーションがとれないことがある。 ・流れる文字や情報表示の転換が早いときには情報取得が困難となる。 ・匂い、光、音、温度等に対して感覚過敏や感覚鈍麻がある場合がある。 ・聴いても理解できなかったり、時刻表が読めない人もいる。 ・「不注意」「多動性」「衝動性」の行動特徴があり、車内で座席にずっと座っていることができない人もいる。 等 (10)妊娠中・乳幼児連れ(ベビーカー使用者など)の人 妊娠中の人やベビーカーを使用している人、子どもを抱いている人は、円滑な移動のためには、さまざまな配慮が必要となる。 特に、妊娠初期の人は、赤ちゃんの成長やお母さんの健康を維持するための大切な時期であるものの、外見からはわかりにくいため特段の配慮が必要となる。また、他の人に迷惑をかけてしまうことを恐れたり、公共交通機関の利用を躊躇してしまうといった心理的なバリアが存在している場合がある。 ■移動上の困難さ ・妊娠初期は外見からはわかりにくいため、体調が優れない場合でも優先座席の利用がしにくい。 ・長時間立っているのが困難な場合がある。 ・長い距離を連続して歩くことや階段の昇降が困難な場合がある。 ・妊娠中でお腹が大きくなった人は足元が見えにくくなるため、階段を下りることが非常に困難となる。 ・人ごみの中で移動しにくい。 ・ベビーカーを畳んで子どもを抱えなくては行けない場合、特にバランスを崩しやすく危険である。 191ページ ・ベビーカーや大きな荷物を持っている場合、また子どもが不意な行動をとる場合などに他の人の迷惑になったり、危険な場合があるため、公共交通機関の利用に心理的なバリアを感じている。 等 (11)外国人 日本語による情報を理解することが困難である。日本語によるコミュニケーションが困難である。英語表記やその他の外国語による表記、言語の違いによらない図記号(ピクトグラム)や数字・アルファベットなどを用いた表示が有効である。 (12)一時的な怪我をした人や大きな荷物を持った人 海外旅行用トランクやカートなどの大きな荷物を持ったまま、あるいは怪我をして公共交通機関を利用する場合に、階段や段差の移動、長距離の移動が困難となることがある。 (13)病気の人 病気の人は、病気の種類や状況によって身体機能が全般的に低下し、階段や段差の移動、長距離の移動が困難となることがある。また、移動中において服薬や注射などを必要とする場合がある。 (参考)上記の「高齢者・障害者の主な特性」を参照のうえ、個々の障害に対応したニーズを的確に把握し、障害の特性に応じた適切な対応が求められる。一方でWHO(世界保健機関)では、ICF(国際機能分類)という考え方が採択されている。これは、人間の生活機能と障害について「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つの次元及び影響を及ぼす「環境因子」等の因子で構成されるもので、例えばバリアフリー整備による環境評価も含めた機能分類を行うことができる。今後の新たなバリアフリー化のための技術開発など、障害の理解並びにバリアフリー促進の視点から、ICFの適切な活用方策の検討が望まれる。 (詳しくは厚生労働省資料等を参照されたい) (高齢者・障害者等の主な特性を記載するにあたって参考とした主な文献) ・内閣府編「平成24年版 障害者白書」、2012年 ・内閣府編「平成24年版 高齢社会白書」、2012年 ・シルバーサービス振興会編「ケア輸送サービス従事者研修用テキスト 平成17年7月改訂」中央法規出版、2005年 ・国土交通省「ゆっくり「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」 −知的障害、精神障害のあるお客様への応対−」、2004年 ・全国視覚障害者情報提供施設協議会編「視覚障害者介護技術シリーズ3 初めてのガイド」、1999年 ・直居鉄監修「新版 視覚障害者の介護技術 −介護福祉士のために−」YNT企画、1999年 ・大倉元宏編著、村上琢磨「目の不自由な方にあなたの腕を貸してください −オリエンテーションとモビリティの理解−」財団法人労働科学研究所、2000年 ・E&Cプロジェクト編「“音”を見たことありますか?」小学館、1996年 ・厚生省大臣官房傷害保険福祉部企画課監修「障害者ケアマネジャー養成テキスト 身体障害編」中央法規出版、1999年 ・山縣文治、柏女霊峰編集委員代表「社会福祉用語辞典 第6版 −福祉新時代の新しいスタンダード」ミネルヴァ書房、2007年 ・『21世紀のろう者像』編集委員会編「21世紀のろう者像」財団法人全日本ろうあ連盟出版局、2005年 ・介護予防に関するテキスト等調査研究委員会編、厚生労働省老健局計画課監修、「介護予防研修テキスト」株式会社社会保険研究所、2001年 192ページ おわりに 〜移動等円滑化整備の基本的な考え方に基づく整備に向けて〜 本整備ガイドラインは、多様な利用者ニーズに対応するため、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方にも配慮し、公共交通機関の望ましいバリアフリー整備の内容を示したものである。 今回のガイドライン見直しでは、本整備ガイドラインに沿った公共交通機関のバリアフリー整備に取り組むにあたっての基本的な考え方を、第1部「公共交通機関の旅客施設・車両等に関する移動等円滑化整備ガイドラインの活用と整備の基本的な考え方」に記載した。これは、従来のガイドラインの記載の範囲では設備ごとの整備内容を示すことができても、個々の整備内容を連携させた連続的な整備、多様な利用者の特性に配慮した対応は難しいことから、種々の整備を行うにあたって念頭に置くべき横断的な考え方として記載したものである。 旅客施設同士や隣接する施設との一体的、連続的な整備にあたっては、関係する他の公共交通事業者や施設設置管理者との調整を図り、バリアフリー化を行うべき区域の面的整備を目指す観点から、所管行政庁とも連携して、バリアフリー法に規定されている基本構想の策定によって、公共交通機関利用者、周辺地域生活者の利便性向上を企図することも重要である。 また、ガイドラインの前提となる移動等円滑化基準(省令)のスパイラルアップについて、平成24年8月に国土交通省において取りまとめられたバリアフリー法施行状況検討会の検討結果において、中長期的に取り組むべき課題にあげられている。 今回のガイドライン見直しでは、「◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容」の項目を立てて整備内容の明確化を図ったところであり、ガイドライン改訂に続いて継続的に、バリアフリー化の進展やその技術水準、利用者ニーズ、地域の実情等の把握を行ったうえで、現行の移動等円滑化基準についても見直しを検討する必要がある。 残された課題について 【全体】 高齢社会への対応 ・加齢や生活習慣が原因で足腰の機能が衰えるなど高齢者特有の課題について、高齢者の増加、超高齢社会を迎える情勢に対応した移動等円滑化を進める必要がある。 知的障害、発達障害、精神障害者への対応 ・知的障害者、精神障害者、発達障害者への対応は症状がさまざまであり、ガイドラインでは最大公約数的な対応の記述に留まっている。こうした障害を持つ利用者への対応には、施設整備のみによらず接遇、介助との連携が重要であり、今後の記述方法について検討すべきである。 ロービジョン(弱視)者、色覚異常者への対応 ・サインや照明計画において、ロービジョン者、色覚異常者への配慮は、未だ十分とは言えず、調査研究や学究的知見に基づく科学的、医学的な根拠をもとにして現状を見直し、必要な課題について対応案を拡充する必要がある。 193ページ 車椅子、補装具等への対応 ・車椅子の派生形としてのハンドル型車椅子だけではなく、さまざまな補装具が出てきており、単にJISの規定を考慮して施設や車両の仕様を決めるだけでは公共交通機関側での対応が難しい状況が生じている。一方で利用の引き受けや接遇の運用上の問題点も現時点では明確な指針を示すに至っていないことから、これら用具を使用する障害当事者が乗車できないという状況が生じており、改善に向けた取り組みが必要である。 【旅客施設編】 <鉄道> @サイン等視覚表示設備の見え方については旅客施設構内という空間特性、多くの旅客がいること、広告等の他の掲出物との関係等さまざまな条件を考慮しなければならず課題が多い。このため必要とする情報の優先順位を明確にして機能を確保する必要がある。 A旅客施設の照明の明るさ(照度)は、JISで乗降客数により規模別に3区分され大まかな照度が規定されているのみである。現状では視力に障害がある利用者の移動円滑化の観点から十分な対応ができていないことも考えられ、ガイドラインにおいて照度以外の評価方法を示すなど、照明計画手法のあり方や、節電など通常時以外の配慮事項など、再検討の必要がある。 B視覚障害者誘導用ブロックによる視覚障害者のエスカレーターへの誘導は視覚障害者のニーズが高く、現実にはすでに利用している視覚障害者も多いことを踏まえて、音声案内との組み合わせでどのような誘導方法が安全上、利便上適切か、そのあり方を検討する必要がある。 C1日あたりの乗降客数が3,000人〜5,000人未満の旅客施設における対応をどうするか、特にこの規模の駅では無人駅が多数あることを想定し、そうした状況での接遇等の対応のあり方、5,000人以上の駅と同程度の設備が必要かどうか等、新たな整備の考え方を検討する必要がある。 Dバリアフリー法では、移動等円滑化基準への適合義務は旅客施設を新設、大改良した時に限られており、既存施設における基準適合については努力義務に留まっている。旧基準のまま残っている旅客施設が多くある中で、既存不適格の状況をどのように解消していくか議論が必要である。 【車両等編】 <鉄軌道> ・車両内の車椅子スペースについて、多くの日本の都市間鉄道の車両は車体断面が小さいため、他の車椅子使用者や車内販売のワゴン等が通過できる通路幅を確保しながら、車椅子スペースを確保することが課題となっている。 ・通勤型車両では車椅子スペースの数、設置位置について、車椅子使用者が任意の乗車位置を選択できること、ベビーカー利用者との共用化の対応など増設の必要性が指摘されたが、座席数の減少、相互直通運転等で異なる事業者の車両が乗り入れる場合の位置の不統一、渡り板による乗降介助時に場所の間違いが生じるなどの課題も残されている。 <バス> @ノンステップバスの普及が進んでいるが、低床部が狭く十分な旅客キャパシティが確保できない。車両全体へ低床部を広げる必要があり、開発中の改善型のノンステップバスのみならずインホイールモーター式のEVバスなどの活用も視野に入れ、車両の改善を進める必要がある。 194ページ Aリムジンバス、高速バス等の都市間バスについての車椅子利用、ステップ段差の最小化など、都市間バスの移動等円滑化を促進するための方策として、リフトを設置する場合の技術課題と対応方策について検討し、必要な部分はガイドラインへ取り入れる必要がある。 Bバス車両おける車椅子固定装置は多様な車椅子に容易に対応できるものがないため、装置が十分活用されていない。衝突による二次的な被害を減らすうえでも他の乗客にとっても安全上大きな課題であり、どのような車椅子にも装着できる固定装置の開発、車椅子側の固定部の明確化、強度確保等の課題を解決する必要がある。 Cベビーカーは、折りたたまない状態でのバス車両内への乗車が進んでいるが、ベビーカーの固定はガイドラインでも触れられておらず具体的な検討が必要である。 <タクシー> ・ユニバーサルデザインタクシーを新たに記載したが、高齢者などの乗降性についてはまだ課題がある。また、乗合タクシーについては、ベースとなる車両がこれまでのワゴン車両の概念を出ないもので、革新的な仕様に基づく車両の開発を促すガイドラインの検討など、今後の改善が期待される。 <航空機> 航空サービスは機材、施設、オペレーション(接遇)が相互に連携することで有効な移動等円滑化が実現されるものであり、十分な移動等円滑化が達成されるよう全体を見て議論すべき領域である。 @通路が1つしかない航空機における車椅子対応トイレは、通常のトイレ2室を連結して使用できるタイプのトイレを備えた機種が登場間近であり、今後はこれらの動向を見つつガイドラインへの取り込みを考慮すべきである。 A小型コンテナしか搭載できない機材では電動車椅子が収納できない場合があるので、この場合の対応について考える必要がある。 【旅客施設と車両等の双方に係る課題】 <鉄道> @車両とホームの段差と隙間の解決策としてホームの部分かさ上げの要望もあるが、車両の低床化等の動向も踏まえた解決策を検討する必要がある Aホームドア、ホーム柵の整備では、これまで課題とされていた車両の扉位置に依存しない、開口部を可変できるホーム柵が試験供用される段階になり、今後の動向を見極め、整備内容の記述について検討を図るべきである。 <バス> ・バス停留所の整備主体に対して、歩道とバスの間の段差解消、バスの正着ができるような構造、ガードパイプがバス出入口に支障しない等、ガイドラインでも整備促進のための記述の検討を行う必要がある。 <航空> @搭乗時のPBB(パッセンジャーボーディングブリッジ)以外の対応可能性と仕様について、ガイドライン本文への記述の必要性を検討する必要性がある。 195ページ Aランプバスの移動円滑化(ノンステップバスの導入)を進める必要がある。 この「おわりに」は、秋山哲男公共交通機関の移動等円滑化整備ガイドライン検討委員会委員長/公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン小委員会委員長、鎌田実公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン小委員会委員長から、ガイドライン検討過程において頂いたコメントを事務局がとりまとめて記載したものである。 資料編 関係法令集 目  次 移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令 1 移動等円滑化の促進に関する基本方針 24 資料編1ページ 移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令 平成18年12月15日  国土交通省令第111号  目 次 第一章 総則(第一条・第二条) 第二章 旅客施設 第一節 総則(第三条) 第二節 共通事項 第一款 移動等円滑化された経路(第四条) 第二款 通路等(第五条―第九条) 第三款 案内設備(第十条―第十二条) 第四款 便所(第十三条―第十五条)   第五款 その他の旅客用設備(第十六条―第十八条) 第三節 鉄道駅(第十九条―第二十一条) 第四節 軌道停留場(第二十二条) 第五節 バスターミナル(第二十三条) 第六節 旅客船ターミナル(第二十四条―第二十六条) 第七節 航空旅客ターミナル施設(第二十七条― 第二十九条) 第三章 車両等 第一節 鉄道車両(第三十条―第三十三条) 第二節 軌道車両(第三十四条・第三十五条) 第三節 バス車両(第三十六条―第四十三条) 第四節 福祉タクシー車両(第四十四条・第四十五条) 第五節 船舶(第四十六条―第六十一条) 第六節 航空機(第六十二条―第六十七条) 附則 第一章 総則 (定義) 第一条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 視覚障害者誘導用ブロック 線状ブロック及び点状ブロックを適切に組み合わせて床面に敷設したものをいう。 二 線状ブロック 床面に敷設されるブロックであって、線状の突起が設けられており、かつ、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものをいう。 三 点状ブロック 床面に敷設されるブロックであって、点状の突起が設けられており、かつ、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものをいう。 資料編2ページ  四 車いすスペース 車いすを使用している者(以下「車いす使用者」という。)の用に供するため車両等に設けられる場所をいう。 五 鉄道駅 鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)による鉄道施設であって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 六 軌道停留場 軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道施設であって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 七 バスターミナル 自動車ターミナル法(昭和三十四年法律第百三十六号)によるバスターミナルであって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 八 旅客船ターミナル 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)による輸送施設(船舶を除き、同法による一般旅客定期航路事業の用に供するものに限る。)であって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 九 航空旅客ターミナル施設 航空旅客ターミナル施設であって、旅客の乗降、待合いその他の用に供するものをいう。 十 鉄道車両 鉄道事業法による鉄道事業者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両をいう。 十一 軌道車両 軌道法による軌道経営者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両をいう。 十二 バス車両 道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による一般乗合旅客自動車運送事業者(路線を定めて定期に運行する自動車により乗合旅客の運送を行うものに限る。)が旅客の運送を行うためその事業の用に供する自動車(同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行の用に供するものに限る。)をいう。 十三 福祉タクシー車両 道路運送法による一般乗用旅客自動車運送事業者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する自動車(高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車内に乗り込むことが可能なもの及び高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則(平成十八年国土交通省令第   号)第一条に規定するものに限る。)をいう。 十四 船舶 海上運送法による一般旅客定期航路事業(日本の国籍を有する者及び日本の法令により設立された法人その他の団体以外の者が営む同法による対外旅客定期航路事業を除く。)を営む者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する船舶をいう。 十五 航空機 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)による本邦航空運送事業者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する航空機をいう。 2 前項に規定するもののほか、この省令において使用する用語は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(以下「法」という。)において使用する用語の例による。 (一時使用目的の旅客施設又は車両等) 第二条 災害等のため一時使用する旅客施設又は車両等の構造及び設備については、この省令の規定によらないことができる。 資料編3ページ 第二章 旅客施設 第一節 総則 (適用範囲) 第三条 旅客施設の構造及び設備については、この章の定めるところによる。 第二節 共通事項 第一款 移動等円滑化された経路 (移動等円滑化された経路) 第四条 公共用通路(旅客施設の営業時間内において常時一般交通の用に供されている一般交通用施設であって、旅客施設の外部にあるものをいう。以下同じ。)と車両等の乗降口との間の経路であって、高齢者、障害者等の円滑な通行に適するもの(以下「移動等円滑化された経路」という。)を、乗降場ごとに一以上設けなければならない。 2 移動等円滑化された経路において床面に高低差がある場合は、傾斜路又はエレベーターを設けなければならない。ただし、構造上の理由により傾斜路又はエレベーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター(構造上の理由によりエスカレーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター以外の昇降機であって車いす使用者の円滑な利用に適した構造のもの)をもってこれに代えることができる。 3 旅客施設に隣接しており、かつ、旅客施設と一体的に利用される他の施設の傾斜路(第六項の基準に適合するものに限る。)又はエレベーター(第七項の基準に適合するものに限る。)を利用することにより高齢者、障害者等が旅客施設の営業時間内において常時公共用通路と車両等の乗降口との間の移動を円滑に行うことができる場合は、前項の規定によらないことができる。管理上の理由により昇降機を設置することが困難である場合も、また同様とする。 4 移動等円滑化された経路と公共用通路の出入口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 二 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 5 移動等円滑化された経路を構成する通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、百四十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、通路の末端の付近の広さを車いすの転回に支障のないものとし、かつ、五十メートル以内ごとに車いすが転回することができる広さの場所を設けた上で、幅を百二十センチメートル以上とすることができる。 資料編4ページ  二 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、九十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、八十センチメートル以上とすることができる。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 三 次号に掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 四 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 五 照明設備が設けられていること。 6 移動等円滑化された経路を構成する傾斜路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 幅は、百二十センチメートル以上であること。ただし、段に併設する場合は、九十センチメートル以上とすることができる。 二 勾配は、十二分の一以下であること。ただし、傾斜路の高さが十六センチメートル以下の場合は、八分の一以下とすることができる。 三 高さが七十五センチメートルを超える傾斜路にあっては、高さ七十五センチメートル以内ごとに踏幅百五十センチメートル以上の踊り場が設けられていること。 7 移動等円滑化された経路を構成するエレベーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 かご及び昇降路の出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 二 かごの内法幅は百四十センチメートル以上であり、内法奥行きは百三十五センチメートル以上であること。ただし、かごの出入口が複数あるエレベーターであって、車いす使用者が円滑に乗降できる構造のもの(開閉するかごの出入口を音声により知らせる設備が設けられているものに限る。)については、この限りでない。 三 かご内に、車いす使用者が乗降する際にかご及び昇降路の出入口を確認するための鏡が設けられていること。ただし、前号ただし書に規定する場合は、この限りでない。 四 かご及び昇降路の出入口の戸にガラスその他これに類するものがはめ込まれていること又はかご外及びかご内に画像を表示する設備が設置されていることにより、かご外にいる者とかご内にいる者が互いに視覚的に確認できる構造であること。 五 かご内に手すり(握り手その他これに類する設備を含む。以下同じ。)が設けられていること。 六 かご及び昇降路の出入口の戸の開扉時間を延長する機能を有したものであること。 七 かご内に、かごが停止する予定の階及びかごの現在位置を表示する設備が設けられていること。 八 かご内に、かごが到着する階並びにかご及び昇降路の出入口の戸の閉鎖を音声により知らせる設備が設けられていること。 九 かご内及び乗降ロビーには、車いす使用者が円滑に操作できる位置に操作盤が設けられていること。 資料編5ページ  十 かご内に設ける操作盤及び乗降ロビーに設ける操作盤のうちそれぞれ一以上は、点字がはり付けられていること等により視覚障害者が容易に操作できる構造となっていること。 十一 乗降ロビーの幅は百五十センチメートル以上であり、奥行きは百五十センチメートル以上であること。 十二 乗降ロビーには、到着するかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられていること。ただし、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた時にかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられている場合又は当該エレベーターの停止する階が二のみである場合は、この限りでない。 8 移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、第七号及び第八号については、複数のエスカレーターが隣接した位置に設けられる場合は、そのうち一のみが適合していれば足りるものとする。 一 上り専用のものと下り専用のものをそれぞれ設置すること。ただし、旅客が同時に双方向に移動することがない場合については、この限りでない。 二 踏み段の表面及びくし板は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 昇降口において、三枚以上の踏み段が同一平面上にあること。 四 踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段相互の境界を容易に識別できるものであること。 五 くし板の端部と踏み段の色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりくし板と踏み段との境界を容易に識別できるものであること。 六 エスカレーターの上端及び下端に近接する通路の床面等において、当該エスカレーターへの進入の可否が示されていること。ただし、上り専用又は下り専用でないエスカレーターについては、この限りでない。 七 幅は、八十センチメートル以上であること。 八 踏み段の面を車いす使用者が円滑に昇降するために必要な広さとすることができる構造であり、かつ、車止めが設けられていること。 第二款 通路等 (通路) 第五条 通路は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 二 段を設ける場合は、当該段は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものであること。 ロ 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものであること。 (傾斜路) 第六条 傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。以下この条において同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 手すりが両側に設けられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 資料編6ページ  二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 傾斜路の勾配部分は、その接続する通路との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりその存在を容易に識別できるものであること。 四 傾斜路の両側には、立ち上がり部が設けられていること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 (エスカレーター) 第七条 エスカレーターには、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を音声により知らせる設備を設けなければならない。 (階段) 第八条 階段(踊り場を含む。以下同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 手すりが両側に設けられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 二 手すりの端部の付近には、階段の通ずる場所を示す点字をはり付けること。 三 回り段がないこと。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 踏面の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 踏面の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものであること。 六 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものが設けられていない構造のものであること。 七 階段の両側には、立ち上がり部が設けられていること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 八 照明設備が設けられていること。 (視覚障害者誘導用ブロック等) 第九条 通路その他これに類するもの(以下「通路等」という。)であって公共用通路と車両等の乗降口との間の経路を構成するものには、視覚障害者誘導用ブロックを敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けなければならない。ただし、視覚障害者の誘導を行う者が常駐する二以上の設備がある場合であって、当該二以上の設備間の誘導が適切に実施されるときは、当該二以上の設備間の経路を構成する通路等については、この限りでない。 2 前項の規定により視覚障害者誘導用ブロックが敷設された通路等と第四条第七項第十号の基準に適合する乗降ロビーに設ける操作盤、第十二条第二項の規定により設けられる設備(音によるものを除く。)、便所の出入口及び第十六条の基準に適合する乗車券等販売所との間の経路を構成する通路等には、それぞれ視覚障害者誘導用ブロックを敷設しなければならない。ただし、前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。 3 階段、傾斜路及びエスカレーターの上端及び下端に近接する通路等には、点状ブロックを敷設しなければならない。 資料編7ページ 第三款 案内設備 (運行情報提供設備) 第十条 車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (標識) 第十一条 エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備(以下「移動等円滑化のための主要な設備」という。)又は次条第一項に規定する案内板その他の設備の付近には、これらの設備があることを表示する標識を設けなければならない。 2 前項の標識は、日本工業規格Z八二一〇に適合するものでなければならない。 (移動等円滑化のための主要な設備の配置等の案内) 第十二条 公共用通路に直接通ずる出入口(鉄道駅及び軌道停留場にあっては、当該出入口又は改札口。次項において同じ。)の付近には、移動等円滑化のための主要な設備(第四条第三項前段の規定により昇降機を設けない場合にあっては、同項前段に規定する他の施設のエレベーターを含む。以下この条において同じ。)の配置を表示した案内板その他の設備を備えなければならない。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、この限りでない。 2 公共用通路に直接通ずる出入口の付近その他の適切な場所に、旅客施設の構造及び主要な設備の配置を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備を設けなければならない。 第四款 便所 (便所)  第十三条 便所を設ける場合は、当該便所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 便所の出入口付近に、男子用及び女子用の区別(当該区別がある場合に限る。)並びに便所の構造を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。 二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 三 男子用小便器を設ける場合は、一以上の床置式小便器、壁掛式小便器(受け口の高さが三十五センチメートル以下のものに限る。)その他これらに類する小便器が設けられていること。 四 前号の規定により設けられる小便器には、手すりが設けられていること。 2 便所を設ける場合は、そのうち一以上は、前項に掲げる基準のほか、次に掲げる基準のいずれかに適合するものでなければならない。 一 便所(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれの便所)内に高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便房が設けられていること。 二 高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便所であること。 資料編8ページ 第十四条 前条第二項第一号の便房が設けられた便所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 移動等円滑化された経路と便所との間の経路における通路のうち一以上は、第四条第五項各号に掲げる基準に適合するものであること。 二 出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 三 出入口には、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。ただし、傾斜路を設ける場合は、この限りでない。 四 出入口には、高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する便房が設けられていることを表示する標識が設けられていること。 五 出入口に戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。 ロ 高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 六 車いす使用者の円滑な利用に適した広さが確保されていること。 2 前条第二項第一号の便房は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 出入口には、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 二 出入口には、当該便房が高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものであることを表示する標識が設けられていること。 三 腰掛便座及び手すりが設けられていること。 四 高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造を有する水洗器具が設けられていること。 3 第一項第二号、第五号及び第六号の規定は、前項の便房について準用する。 第十五条 前条第一項第一号から第三号まで、第五号及び第六号並びに同条第二項第二号から第四号までの規定は、第十三条第二項第二号の便所について準用する。この場合において、前条第二項第二号中「当該便房」とあるのは、「当該便所」と読み替えるものとする。 第五款 その他の旅客用設備 (乗車券等販売所、待合所及び案内所) 第十六条 乗車券等販売所を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 移動等円滑化された経路と乗車券等販売所との間の経路における通路のうち一以上は、第四条第五項各号に掲げる基準に適合するものであること。 二 出入口を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。 ロ 戸を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 (1) 幅は、八十センチメートル以上であること。 (2) 高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 ハ ニに掲げる場合を除き、車いす使用者が通過する際に支障となる段がないこと。 ニ 構造上の理由によりやむを得ず段を設ける場合は、傾斜路を併設すること。 資料編9ページ  三 カウンターを設ける場合は、そのうち一以上は、車いす使用者の円滑な利用に適した構造のものであること。ただし、常時勤務する者が容易にカウンターの前に出て対応できる構造である場合は、この限りでない。 2 前項の規定は、待合所及び案内所を設ける場合について準用する。 3 乗車券等販売所又は案内所(勤務する者を置かないものを除く。)は、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該乗車券等販売所又は案内所に表示するものとする。 (券売機) 第十七条 乗車券等販売所に券売機を設ける場合は、そのうち一以上は、高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、乗車券等の販売を行う者が常時対応する窓口が設置されている場合は、この限りでない。 (休憩設備) 第十八条 高齢者、障害者等の休憩の用に供する設備を一以上設けなければならない。ただし、旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれのある場合は、この限りでない。 第三節 鉄道駅  (改札口) 第十九条 鉄道駅において移動等円滑化された経路に改札口を設ける場合は、そのうち一以上は、幅が八十センチメートル以上でなければならない。 2 鉄道駅において自動改札機を設ける場合は、当該自動改札機又はその付近に、当該自動改札機への進入の可否を、容易に識別することができる方法で表示しなければならない。 (プラットホーム) 第二十条 鉄道駅のプラットホームは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 プラットホームの縁端と鉄道車両の旅客用乗降口の床面の縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。この場合において、構造上の理由により当該間隔が大きいときは、旅客に対しこれを警告するための設備を設けること。 二 プラットホームと鉄道車両の旅客用乗降口の床面とは、できる限り平らであること。 三 プラットホームの縁端と鉄道車両の旅客用乗降口の床面との隙間又は段差により車いす使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車いす使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備が一以上備えられていること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 排水のための横断勾配は、一パーセントが標準であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 五 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 資料編10ページ  六 発着するすべての鉄道車両の旅客用乗降口の位置が一定しており、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができるプラットホーム(鋼索鉄道に係るものを除く。)にあっては、ホームドア又は可動式ホームさく(旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれがある場合にあっては、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備)が設けられていること。 七 前号に掲げるプラットホーム以外のプラットホームにあっては、ホームドア、可動式ホームさく、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備が設けられていること。 八 プラットホームの線路側以外の端部には、旅客の転落を防止するためのさくが設けられていること。ただし、当該端部に階段が設置されている場合その他旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 九 列車の接近を文字等により警告するための設備及び音声により警告するための設備が設けられていること。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 十 照明設備が設けられていること。 2 前項第四号及び第九号の規定は、ホームドア又は可動式ホームさくが設けられたプラットホームについては適用しない。 (車いす使用者用乗降口の案内) 第二十一条 鉄道駅の適切な場所において、第三十二条第一項の規定により列車に設けられる車いすスペースに通ずる第三十一条第三号の基準に適合した旅客用乗降口が停止するプラットホーム上の位置を表示しなければならない。ただし、当該プラットホーム上の位置が一定していない場合は、この限りでない。 第四節 軌道停留場 (準用)  第二十二条 前節の規定は、軌道停留場について準用する。 第五節 バスターミナル (乗降場) 第二十三条 バスターミナルの乗降場は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 二 乗降場の縁端のうち、誘導車路その他のバス車両の通行、停留又は駐車の用に供する場所(以下「バス車両用場所」という。)に接する部分には、さく、点状ブロックその他の視覚障害者のバス車両用場所への進入を防止するための設備が設けられていること。 三 当該乗降場に接して停留するバス車両に車いす使用者が円滑に乗降できる構造のものであること。 第六節 旅客船ターミナル (乗降用設備) 第二十四条 旅客船ターミナルにおいて船舶に乗降するためのタラップその他の設備(以下この節において「乗降用設備」という。)を設置する場合は、当該乗降用設備は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 資料編11ページ  一 車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合には、この限りでない。 二 幅は、九十センチメートル以上であること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 (視覚障害者誘導用ブロックの設置の例外) 第二十五条 旅客船ターミナルにおいては、乗降用設備その他波浪による影響により旅客が転倒するおそれがある場所については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 (転落防止設備) 第二十六条 視覚障害者が水面に転落するおそれのある場所には、さく、点状ブロックその他の視覚障害者の水面への転落を防止するための設備を設けなければならない。 第七節 航空旅客ターミナル施設 (保安検査場の通路) 第二十七条 航空旅客ターミナル施設の保安検査場(航空機の客室内への銃砲刀剣類等の持込みを防止するため、旅客の身体及びその手荷物の検査を行う場所をいう。以下同じ。)において門型の金属探知機を設置して検査を行う場合は、当該保安検査場内に、車いす使用者その他の門型の金属探知機による検査を受けることのできない者が通行するための通路を別に設けなければならない。 2 前項の通路の幅は、九十センチメートル以上でなければならない。 3 保安検査場の通路に設けられる戸については、第四条第五項第二号ロの規定は適用しない。 4 保安検査場には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該保安検査場に表示するものとする。 (旅客搭乗橋) 第二十八条 航空旅客ターミナル施設の旅客搭乗橋(航空旅客ターミナル施設と航空機の乗降口との間に設けられる設備であって、当該乗降口に接続して旅客を航空旅客ターミナル施設から直接航空機に乗降させるためのものをいう。以下この条において同じ。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、第三号及び第四号については、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 幅は、九十センチメートル以上であること。 二 旅客搭乗橋の縁端と航空機の乗降口の床面との隙間又は段差により車いす使用者の円滑な乗降に支障がある場合は、車いす使用者の円滑な乗降のために十分な長さ、幅及び強度を有する設備が一以上備えられていること。 資料編12ページ  三 勾配は、十二分の一以下であること。 四 手すりが設けられていること。 五 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 2 旅客搭乗橋については、第九条の規定にかかわらず、視覚障害者誘導用ブロックを敷設しないことができる。 (改札口) 第二十九条 各航空機の乗降口に通ずる改札口のうち一以上は、幅が八十センチメートル以上でなければならない。 第三章 車両等 第一節 鉄道車両 (適用範囲) 第三十条 鉄道車両の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (旅客用乗降口) 第三十一条 旅客用乗降口は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 旅客用乗降口の床面の縁端とプラットホームの縁端との間隔は、鉄道車両の走行に支障を及ぼすおそれのない範囲において、できる限り小さいものであること。 二 旅客用乗降口の床面とプラットホームとは、できる限り平らであること。 三 旅客用乗降口のうち一列車ごとに一以上は、幅が八十センチメートル以上であること。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 四 旅客用乗降口の床面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 旅客用乗降口の戸の開閉する側を音声により知らせる設備が設けられていること。 六 車内の段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより、車内の段を容易に識別できるものであること。 (客室)  第三十二条 客室には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一列車ごとに一以上設けなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 一 車いす使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 五 車いすスペースである旨が表示されていること。 2 通路及び客室内には、手すりを設けなければならない。 3 便所を設ける場合は、そのうち一列車ごとに一以上は、車いす使用者の円滑な利用に適した構造のものでなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 資料編13ページ 4 前条第三号の基準に適合する旅客用乗降口と第一項の規定により設けられる車いすスペースとの間の通路のうち一以上及び当該車いすスペースと前項の基準に適合する便所との間の通路のうち一以上の幅は、それぞれ八十センチメートル以上でなければならない。ただし、構造上の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 5 客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 6 客室内の旅客用乗降口の戸又はその付近には、当該列車における当該鉄道車両の位置その他の位置に関する情報を文字及び点字により表示しなければならない。ただし、鉄道車両の編成が一定していない等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。 (車体)  第三十三条 鉄道車両の連結部(常時連結している部分に限る。)には、プラットホーム上の旅客の転落を防止するための設備を設けなければならない。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。 2 車体の側面に、鉄道車両の行き先及び種別を見やすいように表示しなければならない。ただし、行き先又は種別が明らかな場合は、この限りでない。 第二節 軌道車両 (準用) 第三十四条 前節の規定は、軌道車両(次条に規定する低床式軌道車両を除く。)について準用する。 (低床式軌道車両) 第三十五条 前節(第三十一条第三号ただし書並びに第三十二条第一項ただし書、第三項ただし書及び第四項ただし書を除く。)の規定は、低床式軌道車両(旅客用乗降口の床面の軌条面からの高さが四十センチメートル以下の軌道車両であって、旅客用乗降口から客室の主要部分までの通路の床面に段がないものをいう。)について準用する。 第三節 バス車両 (適用範囲) 第三十六条 バス車両の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (乗降口) 第三十七条 乗降口の踏み段の端部の全体がその周囲の部分と色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより踏み段を容易に識別できるものでなければならない。 2 乗降口のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 資料編14ページ  一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 スロープ板その他の車いす使用者の乗降を円滑にする設備(国土交通大臣の定める基準に適合しているものに限る。)が備えられていること。 (床面)  第三十八条 国土交通大臣の定める方法により測定した床面の地上面からの高さは、六十五センチメートル以下でなければならない。 2 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものでなければならない。 (車いすスペース) 第三十九条 バス車両には、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを一以上設けなければならない。 一 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 二 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 三 車いすを固定することができる設備が備えられていること。 四 車いすスペースに座席を設ける場合は、当該座席は容易に折り畳むことができるものであること。 五 他の法令の規定により旅客が降車しようとするときに容易にその旨を運転者に通報するためのブザーその他の装置を備えることとされているバス車両である場合は、車いす使用者が利用できる位置に、当該ブザーその他の装置が備えられていること。 六 車いすスペースである旨が表示されていること。 七 前各号に掲げるもののほか、長さ、幅等について国土交通大臣の定める基準に適合するものであること。 (通路)  第四十条 第三十七条第二項の基準に適合する乗降口と車いすスペースとの間の通路の幅(容易に折り畳むことができる座席が設けられている場合は、当該座席を折り畳んだときの幅)は、八十センチメートル以上でなければならない。 2 通路には、国土交通大臣が定める間隔で手すりを設けなければならない。 (運行情報提供設備等) 第四十一条 バス車両内には、次に停車する停留所の名称その他の当該バス車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 2 バス車両には、車外用放送設備を設けなければならない。 3 バス車両の前面、左側面及び後面に、バス車両の行き先を見やすいように表示しなければならない。 資料編15ページ (意思疎通を図るための設備) 第四十二条 バス車両内には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該バス車両内に表示するものとする。 (基準の適用除外) 第四十三条 地方運輸局長が、その構造により又はその運行の態様によりこの省令の規定により難い特別の事由があると認定したバス車両については、第三十七条から前条まで(第三十七条第一項、第三十八条第二項及び前条を除く。)に掲げる規定のうちから当該地方運輸局長が当該バス車両ごとに指定したものは、適用しない。 2 前項の認定は、条件又は期限を付して行うことができる。 3 第一項の認定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を地方運輸局長に提出しなければならない。 一 氏名又は名称及び住所 二 車名及び型式 三 車台番号 四 使用の本拠の位置 五 認定により適用を除外する規定 六 認定を必要とする理由 4 地方運輸局長は、次の各号のいずれかに該当する場合には、第一項の認定を取り消すことができる。 一 認定の取消しを求める申請があったとき。 二 第二項の規定による条件に違反したとき。 第四節 福祉タクシー車両 (適用範囲) 第四十四条 福祉タクシー車両の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (福祉タクシー車両) 第四十五条 車いす等対応車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等が移動のための車いすその他の用具を使用したまま車両に乗り込むことが可能なものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 スロープ板若しくはリフト、寝台若しくは担架(以下この項において「寝台等」という。)又はその他の車いす使用者若しくは寝台等を使用している者の乗降を円滑にする設備が備えられていること。 二 車いす又は寝台等の用具を備えておくスペースが一以上設けられていること。 三 車いす又は寝台等の用具を固定することができる設備が備えられていること。 資料編16ページ  四 事業者名、車両番号、運賃及び料金その他の情報を音又は点字により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 五 聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。 2 回転シート車(福祉タクシー車両のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則第一条に規定する設備を備えたものをいう。)は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 折り畳んだ車いすを備えておくスペースが一以上設けられていること。 二 事業者名、車両番号、運賃及び料金その他の情報を音又は点字により視覚障害者に示すための設備が設けられていること。ただし、これらの情報を提供できる者が乗務している場合は、この限りでない。 三 聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。 第五節 船舶 (適用範囲) 第四十六条 船舶の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (乗降用設備) 第四十七条 船舶に乗降するためのタラップその他の設備を備える場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造のものであること。 二 幅は、八十センチメートル以上であること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 (出入口) 第四十八条 旅客が乗降するための出入口(舷門又は甲板室の出入口をいう。)のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 スロープ板その他の車いす使用者が円滑に通過できるための設備が備えられていること。 2 車両区域の出入口のうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 スロープ板その他の車いす使用者が円滑に通過できるための設備が備えられていること。 三 高齢者、障害者等が車両から乗降するための場所であって、次に掲げる基準に適合するもの(以下「乗降場所」という。)が設けられていること。 イ 幅は、三百五十センチメートル以上であること。 ロ 車両区域の出入口に隣接して設けられていること。ただし、乗降場所と車両区域の出入口との間に幅が八十センチメートル以上である通路を一以上設ける場合は、この限りでない。 ハ 乗降場所であることを示す表示が設けられていること。 資料編17ページ (客席)  第四十九条 航行予定時間が八時間未満の船舶の客席のうち旅客定員二十五人ごとに一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 いす席、座席又は寝台であること。 二 高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものであること。 三 手すりが設けられていること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 2 航行予定時間が八時間以上の船舶の客席のうち旅客定員二十五人ごとに一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 いす席、座席又は寝台であること。 二 いす席が設けられる場合は、その収容数二十五人ごとに一以上は、前項第二号から第四号までに掲げる基準に適合するものであること。 三 座席又は寝台が設けられる場合は、その収容数二十五人ごとに一以上は、前項第二号から第四号までに掲げる基準に適合するものであること。 (車いすスペース) 第五十条 旅客定員百人ごとに一以上の割合で、次に掲げる基準に適合する車いすスペースを車いす使用者が円滑に利用できる場所に設けなければならない。ただし、航行予定時間が八時間以上であり、かつ、客席として座席又は寝台のみが設けられている船舶については、この限りでない。 一 車いす使用者が円滑に利用するために十分な広さが確保されていること。 二 車いす使用者が円滑に利用できる位置に手すりが設けられていること。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 車いす使用者が利用する際に支障となる段がないこと。 五 車いすを固定することができる設備が設けられていること。 六 車いすスペースである旨が表示されていること。 (通路)  第五十一条 第四十八条第一項の基準に適合する出入口及び同条第二項の基準に適合する車両区域の出入口と第四十九条第一項又は第二項の基準に適合する客席(以下「基準適合客席」という。)及び前条の規定により設けられた車いすスペース(以下「船内車いすスペース」という。)との間の通路のうちそれぞれ一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 手すりが設けられていること。 三 手すりの端部の付近には、通路の通ずる場所を示す点字をはり付けること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 スロープ板その他の車いす使用者が円滑に通過できるための設備が備えられていること。 六 通路の末端の付近の広さは、車いすの転回に支障のないものであること。 資料編18ページ 2 前項の規定は、基準適合客席及び船内車いすスペースと船内旅客用設備(便所(第五十四条第三項の規定により準用される第十三条第二項の基準に適合する便所に限る。)、第五十五条の基準に適合する食堂、第五十六条の基準に適合する売店及び総トン数二十トン以上の船舶の遊歩甲板(通常の航行時において旅客が使用する暴露甲板(通路と兼用のものは除く。)であって、基準適合客席と同一の甲板上にあるものをいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)との間の通路のうちそれぞれ一以上について準用する。この場合において、前項第一号中「八十センチメートル」とあるのは「百二十センチメートル」と、同項第六号中「支障のないものであること」とあるのは「支障のないものであり、かつ、五十メートル以内ごとに車いすが転回し及び車いす使用者同士がすれ違うことができる広さの場所が設けられていること」と読み替えるものとする。 3 前二項の通路に戸(暴露されたものを除く。)を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 一 幅は、八十センチメートル以上であること。 二 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 (階段)  第五十二条 第八条(同条第一号ただし書、第三号ただし書及び第八号を除く。)の規定は、前条第一項及び第二項の通路に設置される階段について準用する。この場合において、第八条第一号中「手すりが両側に」とあるのは、「手すりが」と読み替えるものとする。 (昇降機) 第五十三条 第四十八条第一項の基準に適合する出入口及び同条第二項の基準に適合する車両区域の出入口と基準適合客席又は船内車いすスペースが別甲板にある場合には、第五十一条第一項の基準に適合する通路に、エレベーター、エスカレーターその他の昇降機であって高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造のものを一以上設けなければならない。 2 前項の規定により設けられるエレベーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 かごの広さは、車いす使用者が乗り込むのに十分なものであること。 二 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 3 第四条第七項第一号、第五号、第七号及び第十一号の規定は、第一項の規定により設けられるエレベーターについて準用する。この場合において、同号中「幅は百五十センチメートル以上」とあるのは「幅は百四十センチメートル以上」と、「奥行きは百五十センチメートル以上」とあるのは「奥行きは百三十五センチメートル以上」と読み替えるものとする。 4 第一項の規定により設けられるエスカレーターは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 エスカレーターが一のみ設けられる場合にあっては、昇降切換装置が設けられていること。 二 勤務する者を呼び出すための装置が設けられていること。 資料編19ページ 5 第四条第八項(同項第一号及び第六号を除く。)の規定は、第一項の規定により設けられるエスカレーターについて準用する。 6 基準適合客席又は船内車いすスペースと船内旅客用設備が別甲板にある場合には、第五十一条第二項の基準に適合する通路にエレベーターを一以上設けなければならない。 7 第四条第七項(同項第四号を除く。)及び第二項第二号の規定は、前項の規定により設けられるエレベーターについて準用する。 (便所)  第五十四条 便所を設ける場合は、腰掛便座及び手すりが設けられた便房を一以上設けなければならない。 2 第十三条第一項の規定は、船舶に便所を設ける場合について準用する。 3 第十三条第二項、第十四条(同条第一項第一号及び第三号ただし書並びに第二項第三号を除く。)及び第十五条の規定は、他の法令の規定により便所を設けることとされている船舶の便所について準用する。この場合において、第十四条第二項第四号中「水洗器具」とあるのは「手を洗うための水洗器具」と、第十五条中「前条第一項第一号から第三号まで」とあるのは「前条第一項第二号、第三号(ただし書を除く。)」と、「同条第二項第二号から第四号まで」とあるのは「同条第二項第二号及び第四号」と読み替えるものとする。 (食堂)  第五十五条 もっぱら旅客の食事の用に供する食堂を設ける場合は、そのうち一以上は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 二 出入口には段がないこと。 三 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 四 いすの収容数百人ごとに一以上の割合で、車いす使用者の円滑な利用に適した構造を有するテーブルを配置すること。 五 聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備が備えられていること。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該食堂に表示すること。 (売店) 第五十六条 一以上の売店(もっぱら人手により物品の販売を行うための設備に限る。)には、聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならない。この場合においては、当該設備を保有している旨を当該売店に表示するものとする。 (遊歩甲板) 第五十七条 総トン数二十トン以上の船舶の遊歩甲板は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 資料編20ページ  一 出入口の幅は、八十センチメートル以上であること。 二 段を設ける場合は、スロープ板その他の車いす使用者が円滑に通過できるための設備が備えられていること。 三 戸(遊歩甲板の出入口の戸を除く。)を設ける場合は、当該戸は、次に掲げる基準に適合するものであること。 イ 幅は、八十センチメートル以上であること。 ロ 自動的に開閉する構造又は高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のものであること。 四 床の表面は、滑りにくい仕上げがなされたものであること。 五 手すりが設けられていること。 (点状ブロック) 第五十八条 階段及びエスカレーターの上端及び下端並びにエレベーターの操作盤に近接する通路には、点状ブロックを敷設しなければならない。 (運航情報提供設備) 第五十九条 目的港の港名その他の当該船舶の運航に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 (基準適合客席、船内車いすスペース、昇降機、船内旅客用設備及び非常口の配置の案内) 第六十条 基準適合客席、船内車いすスペース、昇降機、船内旅客用設備及び非常口の配置を表示した案内板その他の設備を設けなければならない。 2 基準適合客席、船内車いすスペース、昇降機、船内旅客用設備及び非常口の配置を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備を設けなければならない。 (基準の適用除外) 第六十一条 総トン数五トン未満の船舶については、この省令の規定によらないことができる。 2 地方運輸局長(運輸監理部長を含む。以下この条において同じ。)が、その構造又は航行の態様によりこの省令の規定により難い特別の事由があると認定した船舶については、第四十七条から前条までに掲げる規定のうちから当該地方運輸局長が当該船舶ごとに指定したものは、適用しない。 3 第四十三条第二項から第四項まで(同条第三項第二号を除く。)の規定は、前項の認定について準用する。この場合において、同条第三項第三号中「車台番号」とあるのは「船名及び船舶番号又は船舶検査済票の番号」と、同項第四号中「使用の本拠の位置」とあるのは「就航航路」と読み替えるものとする。 資料編21ページ 4 前項の規定により準用される第四十三条第三項の申請書は、運輸支局長又は海事事務所長を経由して提出することができる。 第六節 航空機 (適用範囲) 第六十二条 航空機の構造及び設備については、この節の定めるところによる。 (通路)  第六十三条 客席数が六十以上の航空機の通路は、第六十五条の規定により備え付けられる車いすを使用する者が円滑に通行することができる構造でなければならない。 (可動式のひじ掛け) 第六十四条 客席数が三十以上の航空機には、通路に面する客席(構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものを除く。)の半数以上について、通路側に可動式のひじ掛けを設けなければならない。 (車いすの備付け) 第六十五条 客席数が六十以上の航空機には、当該航空機内において利用できる車いすを備えなければならない。 (運航情報提供設備) 第六十六条 客席数が三十以上の航空機には、当該航空機の運航に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない。 (便所)  第六十七条 通路が二以上の航空機には、車いす使用者の円滑な利用に適した構造を有する便所を一以上設けなければならない。 附 則 (施行期日) 第一条 この省令は、法の施行の日(平成十八年十二月二十日)から施行する。 (移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準の廃止) 第二条 移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準(平成十二年運輸省建設省令第十号)は、廃止する。 資料編22ページ (経過措置) 第三条 この省令の施行前に法附則第二条第二号による廃止前の高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成十二年法律第六十八号)第五条第二項の規定による届出をした旅客施設の建設又は改良については、第四条第五項第五号、第六条第三号、第七条、第八条第八号、第十一条、第十九条第二項並びに第二十条第一項第六号及び第十号の規定は適用せず、なお従前の例による。 2 この省令の施行の日から起算して六月を経過する日までの間に公共交通事業者等が新たにその事業の用に供する鉄道車両又は軌道車両については、第三十二条第六項(第三十四条及び第三十五条において準用する場合を含む。)の規定は適用せず、なお従前の例による。 3 平成十四年五月十五日前に製造された鉄道車両であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するもののうち、地方運輸局長が認定したものについては、この省令の規定のうちから当該地方運輸局長が当該鉄道車両ごとに指定したものは、適用しない。 4 前項の認定は、条件又は期限を付して行うことができる。 5 第三項の認定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を地方運輸局長に提出しなければならない。 一 氏名又は名称及び住所 二 車種及び記号番号 三 車両番号 四 使用区間 五 製造年月日 六 認定により適用を除外する規定 七 認定を必要とする理由 6 地方運輸局長は、次の各号のいずれかに該当する場合には、第三項の認定を取り消すことができる。 一 認定の取消しを求める申請があったとき。 二 第四項の規定による条件に違反したとき。 7 第三項から前項までの規定は、平成十四年五月十五日前に製造された軌道車両であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するものについて準用する。この場合において、第三項、第五項及び前項中「地方運輸局長」とあるのは、「国土交通大臣」と読み替えるものとする。 8 第三項から第六項までの規定は、平成十二年十一月十五日前に道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第五十八条第一項に規定する自動車検査証の交付を受けたバス車両であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するものについて準用する。この場合において、第五項第二号中「車種及び記号番号」とあるのは「車名及び型式」と、同項第三号中「車両番号」とあるのは「車台番号」と、同項第四号中「使用区間」とあるのは「使用の本拠の位置」と、同項第五号中「製造年月日」とあるのは「自動車検査証の交付を受けた年月日」と読み替えるものとする。 資料編23ページ 9 第三項から第六項まで(第五項第二号を除く。)の規定は、平成十四年五月十五日前に船舶安全法(昭和八年法律第十一号)第九条第一項に規定する船舶検査証書の交付を受けた船舶であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するものについて準用する。この場合において、第三項及び第五項各号列記以外の部分中「地方運輸局長」とあるのは「地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)」と、同項第三号中「車両番号」とあるのは「船名及び船舶番号又は船舶検査済票の番号」と、同項第四号中「使用区間」とあるのは「就航航路」と、同項第五号中「製造年月日」とあるのは「船舶検査証書の交付を受けた年月日」と、第六項中「地方運輸局長」とあるのは「地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)」と読み替えるものとする。 10 前項の規定により準用される第五項の申請書は、運輸支局長又は海事事務所長を経由して提出することができる。 11 第三項から第六項まで(第五項第四号を除く。)の規定は、平成十四年五月十五日前に航空法第十条第一項に規定する耐空証明又は国際民間航空条約の締約国たる外国による耐空証明を受けた航空機その他これに準ずるものとして国土交通大臣が認める航空機であって、公共交通事業者等がこの省令の施行後に新たにその事業の用に供するものについて準用する。この場合において、第三項及び第五項各号列記以外の部分中「地方運輸局長」とあるのは「国土交通大臣」と、同項第二号中「車種及び記号番号」とあるのは「種類及び型式」と、同項第三号中「車両番号」とあるのは「国籍記号及び登録記号」と、同項第五号中「製造年月日」とあるのは「耐空証明を受けた年月日(これに準ずるものとして国土交通大臣が認める航空機にあっては、その準ずる事由及び当該準ずる事由が生じた年月日)」と、第六項中「地方運輸局長」とあるのは「国土交通大臣」と読み替えるものとする。 資料編24ページ 移動等円滑化の促進に関する基本方針 平成18年12月15日 国家公安委員会、 総務省  国土交通省 告示第1号 改正 平成23年3月31日 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号。以下「法」という。)第三条第一項の規定に基づき、高齢者、障害者等の移動又は施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動上又は施設の利用上の利便性及び安全性を向上すること(以下「移動等円滑化」という。)の促進に関する基本方針について、国、地方公共団体、高齢者、障害者等、施設設置管理者その他の関係者が互いに連携協力しつつ移動等円滑化を総合的かつ計画的に推進していくため、以下のとおり定める。 一 移動等円滑化の意義及び目標に関する事項 1 移動等円滑化の意義 我が国においては、世界のどの国もこれまで経験したことのない本格的な高齢社会を迎え、今後更なる高齢化が進展すると見込まれており、高齢者の自立と社会参加による、健全で活力ある社会の実現が求められている。また、今日、障害者が障害のない者と同等に生活し活動する社会を目指す、ノーマライゼーションの理念の社会への浸透が進み、自立と共生の理念の下、障害の有無にかかわらず国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現が求められている。 このような社会の実現のためには、高齢者、障害者等が自立した日常生活及び社会生活を営むことができる社会を構築することが重要であり、そのための環境の整備を一刻も早く推進していくことが求められている。移動及び施設の利用は、高齢者、障害者等が社会参加をするための重要な手段であることから、移動等円滑化を促進することは、このような社会の実現のために大きな意義を持つものである。 また、移動等円滑化の促進は、高齢者、障害者等の社会参加を促進するのみでなく、「どこでも、誰でも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づき、全ての利用者に利用しやすい施設及び車両等の整備を通じて、国民が生き生きと安全に暮らせる活力ある社会の維持に寄与するものである。  なお、法にいう障害者には、身体障害者のみならず、知的障害者、精神障害者及び発達障害者を含む全ての障害者で身体の機能上の制限を受ける者は全て含まれること並びに身体の機能上の制限には、知的障害者、精神障害者及び発達障害者等の知覚面又は心理面の働きが原因で発現する疲れやすさ、喉の渇き、照明への反応、表示の分かりにくさ等の負担の原因となる様々な制約が含まれることから、法が促進することとしている移動等円滑化には、このような負担を軽減することによる移動上又は施設の利用上の利便性及び安全性を向上することも含まれることに留意する必要がある。  また、移動等円滑化を進めるに当たっては、高齢者、障害者等の意見を十分に聴き、それを反映させることが重要である。 資料編25ページ 2 移動等円滑化の目標  移動等円滑化を実現するためには、高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する施設について移動等円滑化のための措置が講じられることが重要である。  したがって、法では、これらの施設を設置し、又は管理する者に対して移動等円滑化のために必要な措置を講ずるよう努める一般的な責務を課すとともに、これらの施設の中で、特に日常生活及び社会生活において通常移動手段として用いられ、又は通常利用される旅客施設及び車両等、一定の道路、路外駐車場、公園施設並びに建築物の各々について、新設等に際し各々に対応した移動等円滑化基準への適合を義務付けることとしている。  また、市町村が定める重点整備地区において、移動等円滑化に係る特定事業その他の事業が法第二十五条第一項の移動等円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想(以下「基本構想」という。)に即して重点的かつ一体的に実施されることとしている。 移動等円滑化の促進に当たっては、国、地方公共団体、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者が必要に応じて緊密に連携しながら、法に基づく枠組みの活用等により、次に掲げる事項を達成することを目標とする。 (1) 旅客施設 @ 鉄道駅及び軌道停留場  一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上である鉄道駅及び軌道停留場(以下「鉄軌道駅」という。)については、平成三十二年度までに、原則として全てについて、エレベーター又はスロープを設置することを始めとした段差の解消、ホームドア、可動式ホーム柵、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備の整備、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施する。この場合、地域の要請及び支援の下、鉄軌道駅の構造等の制約条件を踏まえ可能な限りの整備を行うこととする。また、これ以外の鉄軌道駅についても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、移動等円滑化を可能な限り実施する。 ホームドア又は可動式ホーム柵については、視覚障害者の転落を防止するための設備として非常に効果が高く、その整備を進めていくことが重要である。そのため、車両扉の統一等の技術的困難さ、停車時分の増大等のサービス低下、膨大な投資費用等の課題について総合的に勘案した上で、優先的に整備すべき駅を検討し、地域の支援の下、可能な限り設置を促進する。 A バスターミナル 一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上であるバスターミナルについては、平成三十二年度までに、原則として全てについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施する。また、これ以外のバスターミナルについても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、移動等円滑化を可能な限り実施する。 B 旅客船ターミナル 一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上である旅客船ターミナルについては、平成三十二年度までに、原則として全てについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施する。また、高齢化の進む離島との間の航路等に利用する公共旅客船ターミナルについては、地域の実情を踏まえて順次、移動等円滑化を実施する。また、これ以外の旅客船ターミナルについても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、移動等円滑化を可能な限り実施する。 資料編26ページ C 航空旅客ターミナル施設 一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上である航空旅客ターミナル施設については、平成三十二年度までに、原則として全てについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施する。また、これ以外の航空旅客ターミナル施設についても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、移動等円滑化を可能な限り実施する。 (2) 車両等 @ 鉄道車両及び軌道車両  総車両数約五万二千両のうち約七十パーセントに当たる約三万六千四百両について、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 A バス車両  総車両数約六万台からバス車両の構造及び設備に関する移動等円滑化基準の適用除外認定車両(以下「適用除外認定車両」という。)約一万台を除いた約五万台のうち、約七十パーセントに当たる約三万五千台について、平成三十二年度までに、ノンステップバスとする。適用除外認定車両については、平成三十二年度までに、その約二十五パーセントに当たる約二千五百台をリフト付きバス又はスロープ付きバスとする等、高齢者、障害者等の利用の実態を踏まえて、可能な限りの移動等円滑化を実施する。 B タクシー車両  平成三十二年度までに、約二万八千台の福祉タクシー(ユニバーサルデザインタクシー(流し営業にも活用されることを想定し、身体障害者のほか、高齢者や妊産婦、子供連れの人等、様々な人が利用できる構造となっている福祉タクシー車両をいう。)を含む。)を導入する。 C 船舶  総隻数約八百隻のうち約五十パーセントに当たる約四百隻について、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。また、一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上である旅客船ターミナルに就航する船舶については、平成三十二年度までに、原則として全て移動等円滑化を実施する。  さらに、これ以外の船舶についても、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、可能な限りの移動等円滑化を実施する。 D 航空機  総機数約五百三十機のうち約九十パーセントに当たる約四百八十機について、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 (3) 道路  原則として重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する全ての道路について、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 資料編27ページ (4) 都市公園 @ 園路及び広場    園路及び広場(特定公園施設であるものに限る。以下同じ。)の設置された都市公園の約六十パーセントについて、平成三十二年度までに、園路及び広場の移動等円滑化を実施する。 A 駐車場   駐車場の設置された都市公園の約六十パーセントについて、平成三十二年度までに、駐車場の移動等円滑化を実施する。 B 便所   便所の設置された都市公園の約四十五パーセントについて、平成三十二年度までに、便所の移動等円滑化を実施する。 (5) 路外駐車場  特定路外駐車場の約七十パーセントについて、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 (6) 建築物 二千平方メートル以上の特別特定建築物の総ストックの約六十パーセントについて、平成三十二年度までに、移動等円滑化を実施する。 (7) 信号機等  重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路に設置されている信号機等については、平成三十二年度までに、原則として全ての当該道路において、音響信号機、高齢者等感応信号機等の信号機の設置、歩行者用道路であることを表示する道路標識の設置、横断歩道であることを表示する道路標示の設置等の移動等円滑化を実施する。 二 移動等円滑化のために施設設置管理者が講ずべき措置に関する基本的な事項 施設設置管理者は、利用者の利便性及び安全性の向上を図る観点から、施設及び車両等の整備、適切な情報の提供並びに職員等関係者に対する適切な教育訓練について関係者と連携しながら、1から3までに掲げる各々の措置を適切に講ずることにより、移動等円滑化を進めることが必要である。 施設設置管理者がこれらの措置を実施するに当たっては、その措置が効果的に実施されるよう、地域の実情を把握している市町村等の関係者と連携することにより、可能な限り利便性の高い動線の確保等他の施設との連続性に配慮した措置を実施し、かつ、自らが設置し、又は管理する施設に設置される設備について、施設の特性に応じて可能な限り時間的な制約がなく利用できる等移動等円滑化のために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、公共交通事業者等にあっては、複数の事業者間又は鉄道及びバス等複数の交通機関間を乗り継ぐ際の旅客施設内の移動等円滑化にも十分配慮することが重要である。 また、施設設置管理者は、施設及び車両等の整備に当たっては、移動等円滑化のために講ずる措置について具体的な実施計画を策定すること等により順次計画的に移動等円滑化を進めていくこと、高齢者、障害者等が障害のない者と共に利用できる形での施設整備を図るユニバーサルデザインの考え方に十分留意すること、高齢者、障害者等の意見を反映させるために可能な限り計画策定等への参画を得ること等必要な措置を講ずるよう努めることが重要である。 資料編28ページ 1 施設及び車両等の整備  移動等円滑化を図るためには、まず、施設及び車両等についてのハード面の整備が必要である。したがって、法では、施設設置管理者が、自らが設置し、又は管理する旅客施設及び車両等、一定の道路、路外駐車場、公園施設並びに建築物を新設等するときは、当該施設及び車両等の移動等円滑化基準への適合が義務付けられており、また、既存の施設及び車両等については、施設設置管理者は、当該施設及び車両等を移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めることとされている。  施設設置管理者が、施設及び車両等について移動等円滑化のために必要な措置を講ずる際には、次に掲げる観点が重要である。 イ 高齢者、障害者等が施設内外の移動及び施設の利用を円滑に行うために必要な施設及び設備を整備し、連続した移動経路を一以上確保すること。また、経路確保に当たっては、高齢者、障害者等の移動上の利便性及び安全性の確保に配慮すること。 ロ 便所等附属する設備を設置する場合は、一以上は障害者対応型にするなど、高齢者、障害者等の利用に配慮したものにすること。 ハ 車両等にあっては、高齢者、障害者等の乗降及び車内での移動が容易にできるように必要な措置を講ずること。 ニ 旅客施設及び車両等にあっては、運行情報等公共交通機関を利用する上で必要な情報を提供するために必要な設備を整備すること。  なお、移動等円滑化基準に定められていない内容であっても、上記の観点等から移動等円滑化に資すると考えられる措置については、施設設置管理者はこれを積極的に実施していくよう努力することが望ましい。  特に、建築物の移動等円滑化に関しては、移動等円滑化が義務化されていない特定建築物の移動等円滑化にも積極的に取り組むことが望ましい。特定建築物の新築時等における移動等円滑化に当たっては、ユニバーサルデザインの考え方に配慮した整備が求められているとともに、建築物ストックの長寿命化等その有効活用が求められていることから、誘導的な建築物移動等円滑化基準に適合する特定建築物について容積率の特例及び表示制度等を措置している認定特定建築物制度を積極的に活用することが望ましい。 2 適切な情報の提供  移動等円滑化を図るためには、施設及び車両等についてのハード面の整備のみならず、施設設置管理者が利用者に対して必要な情報を適切に提供することが必要である。  その際には、利用する高齢者、障害者等のニーズ、施設及び設備の用途等に応じて、例えば、路線案内、運賃案内及び運行情報等利用に当たって必要となる情報並びに緊急時の情報について、視覚情報として大きな文字又は適切な色の組合せを用いて見やすく表示すること、また、聴覚情報としてはっきりした音声により聞き取りやすく放送すること、その他図記号又は平仮名による表示の併記等を行うこと等、分かりやすく提供することに留意する必要がある。さらに、必要な情報について事前に把握できるよう、施設及び設備等に関する情報についてインターネットやパンフレット等により提供することが望ましい。  資料編29ページ 3 職員等関係者に対する適切な教育訓練  移動等円滑化を図るためには、施設及び車両等についてのハード面の整備のみならず、職員等関係者による適切な対応が必要であることに鑑み、施設設置管理者は、その職員等関係者が高齢者、障害者等の多様なニーズ及び特性を理解した上で、正当な理由なくこれらの者による施設及び車両等の利用を拒むことなく、円滑なコミュニケーションを確保する等適切な対応を行うよう継続的な教育訓練を実施する必要がある。 そのため、施設設置管理者は、高齢者、障害者等の意見を反映した対応マニュアルの整備及び計画的な研修の実施等をPDCAサイクルとして実施することにより、職員等関係者の教育訓練を更に充実させるよう努めるべきである。なお、その過程において、高齢者、障害者等の参画を得ることが望ましい。 三 基本構想の指針となるべき事項  市町村は、基本構想を作成する場合には、次に掲げる事項に基づいて作成する必要があり、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者は、これらの事項に留意する必要がある。 1 重点整備地区における移動等円滑化の意義に関する事項 (1) 重点整備地区における移動等円滑化の意義 地域における高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するためには、高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する旅客施設、建築物等の生活関連施設及びこれらの間の経路を構成する道路、駅前広場、通路その他の施設について、一体的に移動等円滑化が図られていることが重要である。そのため、基本構想において、生活関連施設が集積し、その間の移動が通常徒歩で行われる地区を重点整備地区として定め、生活関連施設及び生活関連経路の移動等円滑化に係る各種事業を重点的かつ一体的に推進することが必要である。 (2) 基本構想に即した各種事業の重点的かつ一体的な推進のための基本的視点 基本構想に即した各種事業の推進については、次に掲げる基本的視点が重要である。 @ 市町村の基本構想作成による事業の効果的な推進 重点整備地区における移動等円滑化に対する取組は、当該地区に最も身近な行政主体でありその地区における特性を十分に把握している市町村が、施設設置管理者、都道府県公安委員会等事業を実施すべき主体はもとより、高齢者、障害者等の関係者と協議等を行いながら基本構想を作成することにより、これらの事業の効果的な推進が図られることが重要である。 A 基本構想作成への関係者の積極的な協力による事業の一体的な推進  移動等円滑化に係る事業の実施主体となる施設設置管理者、都道府県公安委員会等及び高齢者、障害者等の関係者は基本構想の作成に積極的に協力し、各種事業を一体的に推進していくことが必要である。 B 地域住民等の理解及び協力 重点整備地区における移動等円滑化を図るに当たり、基本構想に位置付けられた各種事業が円滑に実施されるためには、地域住民等の理解及び協力が重要である。 資料編30ページ (3) 基本構想作成に当たっての留意事項  市町村は、効果的に移動等円滑化を推進するため、次に掲げる事項に留意して基本構想を作成する必要がある。 @ 目標の明確化 各種事業の実施に当たっては、当該重点整備地区における移動等円滑化について、市町村を始め、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者の施策を総合的に講ずる必要があることから、各者間で共通認識が醸成されることが重要である。したがって、基本構想には、地域の実情に応じ、可能な限り具体的かつ明確な目標を設定する。 A 都市計画との調和 基本構想の作成に当たっては、都市計画及び都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第十八条の二第一項に規定する市町村の都市計画に関する基本的な方針(以下「市町村マスタープラン」という。)との調和が保たれている必要がある。 B 地方自治法に規定する基本構想との整合性 市町村は、その事務を処理するに当たっては、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第四項に規定する基本構想に即して行う必要があるため、基本構想もこの基本構想に即していなければならない。 C 地方公共団体の移動等円滑化に関する条例、計画、構想等との調和 地方公共団体において、移動等円滑化に関する条例、計画、構想等を有している場合は、基本構想はこれらとの調和が保たれている必要がある。特に、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第九条第三項に規定する市町村障害者計画、障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第八十八条第一項に規定する市町村障害福祉計画、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十条の八第一項に規定する市町村老人福祉計画等の市町村が定める高齢者、障害者等の福祉に関する計画及び中心市街地の活性化に関する法律(平成十年法律第九十二号)第九条に規定する基本計画等都市機能の増進に関する計画との調和が保たれていることに留意する必要がある。 D 各種事業の連携と集中実施 移動等円滑化に係る各種の事業が相互に連携して相乗効果を生み、連続的な移動経路の確保が行われるように、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者間で必要に応じて十分な調整を図って整合性を確保するとともに、事業の集中的かつ効果的な実施を確保する。  また、複数の事業者間又は鉄道及びバス等複数の交通機関間を乗り継ぐ際の旅客施設内の移動等円滑化並びに当該市町村においてタクシー事業者、自家用有償旅客運送者等が行っているスペシャル・トランスポート・サービス(要介護者等であって単独では公共交通機関を利用することが困難な移動制約者を対象に、必要な介護などと連続して、又は一体として行われる個別的な輸送サービスをいう。)の在り方にも十分配慮する。  さらに、特定事業に係る費用の負担については、当該事業の性格を踏まえた適切な役割分担に応じた関係者間の負担の在り方について十分な調整を図って関係者間の共通認識を確保する。 E 高齢者、障害者等の提案及び意見の反映 施設及び車両等の利用者である高齢者、障害者等を始め関係者の参画により、関係者の意見が基本構想に十分に反映されるよう努める。このため、基本構想の作成に当たっては、法第二十六条に規定する協議会(以下「協議会」という。)を積極的に活用し、高齢者、障害者等の参画を得ることが求められる。この際、既に同条第二項各号に掲げる構成員からなる協議体制度を運用している場合、又は、他の法令に基づいて同項各号に掲げる構成員からなる協議体制度を運用しようとする場合は、当該協議体制度を協議会と位置付けることも可能である。なお、意見を求めるべき障害者には、視覚、聴覚、内部障害等の身体障害者のみならず、知的障害者、精神障害者及び発達障害者も含まれることに留意する必要がある。 また、法第二十七条に規定する基本構想の作成等に係る提案制度が積極的に活用されるよう環境の整備に努めるとともに、当該提案を受けた際には、その内容について十分な検討を加えることが求められる。 資料編31ページ F 段階的かつ継続的な発展(スパイラルアップ) 移動等円滑化の内容については、基本構想作成に係る事前の検討段階から事後の評価の段階に至るまで、高齢者、障害者等の利用者及び住民が積極的に参加し、この参加プロセスを経て得られた知見を共有化し、スパイラルアップを図ることが望まれる。 そのため、市町村は、基本構想が作成された後も、施設を利用する高齢者、障害者等の利用の状況並びに重点整備地区における移動等円滑化のための施設及び車両等の整備状況等を把握するとともに、協議会の活用等により基本構想に基づき実施された事業の成果について評価を行い、それに基づき、必要に応じ、基本構想の見直し及び新たな基本構想の作成を行うことが望ましい。 また、法附則第二条第二号の規定による廃止前の高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成十二年法律第六十八号)第六条第一項の規定により作成された基本構想については、法の趣旨を踏まえ、見直しを行うことが重要であることに留意する必要がある。 2 重点整備地区の位置及び区域に関する基本的な事項 (1) 重点整備地区の要件  法では、市町村は、法第二条第二十一号イからハまでに掲げる要件に該当するものを、移動等円滑化に係る事業を重点的かつ一体的に推進すべき重点整備地区として設定することができることとされている。また、重点整備地区の区域を定めるに当たっては、次に掲げる要件に照らし、市町村がそれぞれの地域の実情に応じて行うことが必要である。 @ 「生活関連施設(高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する旅客施設、官公庁施設、福祉施設その他の施設をいう。以下同じ。)の所在地を含み、かつ、生活関連施設相互間の移動が通常徒歩で行われる地区であること。」(法第二条第二十一号イ)  生活関連施設に該当する施設としては、相当数の高齢者、障害者等が利用する旅客施設、官公庁施設、福祉施設、病院、文化施設、商業施設、学校等多岐にわたる施設が想定されるが、具体的にどの施設を含めるかは施設の利用の状況等地域の実情を勘案して選定することが必要である。  また、生活関連施設相互間の移動が通常徒歩で行われる地区とは、生活関連施設が徒歩圏内に集積している地区をいい、地区全体の面積がおおむね四百ヘクタール未満の地区であって、原則として、生活関連施設のうち特定旅客施設又は官公庁施設、福祉施設等の特別特定建築物に該当するものがおおむね三以上所在し、かつ、当該施設を利用する相当数の高齢者、障害者等により、当該施設相互間の移動が徒歩で行われる地区であると見込まれることが必要である。  なお、重点整備地区を設定する際の要件として、特定旅客施設が所在することは必ずしも必須とはならないが、連続的な移動に係る移動等円滑化の確保の重要性に鑑み、特定旅客施設を含む重点整備地区を設定することが引き続き特に求められること、及び特定旅客施設の所在地を含む重点整備地区を設定する場合には、法第二十五条第三項の規定に基づき当該特定旅客施設を生活関連施設として定めなければならないとされていることに留意する必要がある。 資料編32ページ A 「生活関連施設及び生活関連経路(生活関連施設相互間の経路をいう。以下同じ。)を構成する一般交通用施設(道路、駅前広場、通路その他の一般交通の用に供する施設をいう。以下同じ。)について移動等円滑化のための事業が実施されることが特に必要であると認められる地区であること。」(法第二条第二十一号ロ)  重点整備地区は、重点的かつ一体的に移動等円滑化のための事業を実施する必要がある地区であることが必要である。  このため、高齢者、障害者等の徒歩若しくは車椅子による移動又は施設の利用の状況、土地利用及び諸機能の集積の実態並びに将来の方向性、想定される事業の実施範囲、実現可能性等の観点から総合的に判断して、当該地区における移動等円滑化のための事業に一体性があり、当該事業の実施が特に必要であると認められることが必要である。 B 「当該地区において移動等円滑化のための事業を重点的かつ一体的に実施することが、総合的な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切であると認められる地区であること。」(法第二条第二十一号ハ)  高齢者、障害者等に交流と社会参加の機会を提供する機能、消費生活の場を提供する機能、勤労の場を提供する機能など都市が有する様々な機能の増進を図る上で、移動等円滑化のための事業が重点的に、かつ、各事業の整合性を確保して実施されることについて、実現可能性及び集中的かつ効果的な事業実施の可能性等の観点から判断して、有効かつ適切であると認められることが必要である。 (2) 留意事項  市町村は、重点整備地区を定めるに当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。 @ 重点整備地区の数 市町村内に特定旅客施設が複数ある場合等、生活関連施設の集積の在り方によっては、複数の重点整備地区を設定することも可能であるが、当該生活関連施設相互間の距離、移動の状況等地域の実情から適当と判断される場合には、一つの重点整備地区として設定することも可能である。 A 複数の市町村及び都道府県の協力 生活関連施設の利用者が複数の市町村にまたがって移動しており、重点整備地区の範囲が複数の市町村にまたがる場合など、当該市町村が利用者の移動の実態に鑑み適当であると認めるときは、共同して基本構想を作成し、一体的に推進していくことが重要である。  また、これらの施設が大規模であり、利用者が広域にわたり、かつ、関係者間の調整が複雑となるような場合には、協議会への参加を求める等により都道府県の適切な助言及び協力を求めることが重要である。 B 重点整備地区の境界  重点整備地区の境界は、可能な限り市町村の区域内の町境・字境、道路、河川、鉄道等の施設、都市計画道路等によって、明確に表示して定めることが必要である。 3 生活関連施設及び生活関連経路並びにこれらにおける移動等円滑化に関する事項   重点整備地区において長期的に実現されるべき移動等円滑化の姿を明らかとする観点から、生活関連施設、生活関連経路等については次に掲げるとおり記載することが望ましい。 資料編33ページ (1) 生活関連施設  生活関連施設を選定するに当たっては、2(1)に留意するほか、既に移動等円滑化されている施設については、当該施設内の経路について、生活関連経路として移動等円滑化を図る場合等、一体的な移動等円滑化を図る上で対象と位置付けることが必要な施設につき記載するものとする。また、当面移動等円滑化のための事業を実施する見込みがない施設については、当該施設相互間の経路について、生活関連経路として移動等円滑化を図る場合等、一体的な移動等円滑化を図る上で対象と位置付けることが必要な施設につき、生活関連施設として、長期的展望を示す上で必要な範囲で記載することにも配慮する。 (2) 生活関連経路  生活関連経路についても(1)同様、既に移動等円滑化されている経路については、一体的な移動等円滑化を図る上で対象として位置付けることが必要な経路につき記載するものとする。また、当面移動等円滑化のための事業実施の見込みがない経路については、長期的展望を示す上で必要な範囲で記載することにも配慮する。 (3) 移動等円滑化に関する事項  基本構想の対象となる施設及び車両等において実施される移動等円滑化の内容について記載するものとする。当面具体的な事業実施に見込みがないものについては、事業実施の見込みが明らかになった段階で記載内容を追加又は変更する等基本構想を見直し、移動等円滑化の促進を図るものとする。 4 生活関連施設、特定車両及び生活関連経路を構成する一般交通用施設について移動等円滑化のために実施すべき特定事業その他の事業に関する基本的な事項 (1) 特定事業  特定事業としては、公共交通特定事業、道路特定事業に加え、路外駐車場特定事業、都市公園特定事業、建築物特定事業、交通安全特定事業があり、各々の事業の特性を踏まえ、必要となる事業について基本構想に記載するものとする。  なお、法第二十五条第二項第四号括弧書に規定されているとおり、旅客施設の所在地を含まない重点整備地区にあっては、当該重点整備地区と同一の市町村の区域内に所在する特定旅客施設との間の円滑な移動を確保するために、当該特定旅客施設の移動等円滑化を図る事業及び当該重点整備地区と当該特定旅客施設を結ぶ特定車両の移動等円滑化を図る事業についても、公共交通特定事業として記載することが可能である。  一般的には、建築物特定事業の対象となり得る生活関連施設である建築物が多数存在することから、基本構想作成時の協議及び事業実施を確実かつ円滑に行うためには、対象となる生活関連施設の規模及び利用状況等、他の特定事業との関連等について、当該地域の実情に照らして判断し、必要性等の高いものから基本構想に順次位置付けていくことが望ましい。  また、事業の着手予定時期、実施予定期間について可能な限り具体的かつ明確に記載することとし、当面事業の実施の見込みがない場合にあっては、事業の具体化に向けた検討の方向性等について記載し、事業が具体化した段階で、基本構想を適宜変更して事業の内容について記載を追加するものとする。 資料編34ページ (2) その他の事業  その他の事業としては、特定旅客施設以外の旅客施設、生活関連経路を構成する駅前広場、通路等(河川施設、港湾施設、下水道施設等が生活関連経路を構成する場合にあっては、これらの施設を含む。)の整備があり、おおむねの事業内容を基本構想に記載するものとする。 (3) 留意事項  市町村は、基本構想を作成しようとするときは、これに定めようとする特定事業その他の事業に関する事項について、関係する施設設置管理者、都道府県公安委員会等と十分に協議することが必要であり、事業の記載に当たっては、高齢者、障害者等の移動又は施設の利用の状況、都市計画及び市町村マスタープランの位置付け、事業を実施することとなる者の意向等を踏まえることが重要である。  また、特定事業を記載するに当たっては、事業を実施することとなる者の意向等を踏まえること並びに関連する特定事業間の連携及び調整を図ることが必要不可欠であることから、協議会制度を有効に活用し、基本構想の作成及び事業実施の円滑化を図ることが求められる。なお、協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員はその協議の結果を尊重しなければならないこととされていることに留意する必要がある。 特定事業その他の事業については、合理的かつ効率的な施設及び車両等の整備及び管理を行うことを念頭に、生活関連施設及び生活関連経路の利用者、利用状況及び移動手段並びに生活関連経路周辺の道路交通環境及び居住環境を勘案して記載することが必要である。この際、特定事業その他の事業の実施に当たっては、交通の安全及び円滑の確保並びに生活環境の保全についても配慮する必要があることに留意する必要がある。また、交通安全特定事業のうち違法駐車行為の防止のための事業に関しては、歩道及び視覚障害者誘導用ブロック上等の自動二輪車等の違法駐車、横断歩道及びバス停留所付近の違法駐車等、移動等円滑化を特に阻害する違法駐車行為の防止に資する事業が重点的に推進されるとの内容が基本構想に反映されるよう留意する必要がある。 5 4に規定する事業と併せて実施する土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業に関し移動等円滑化のために考慮すべき基本的な事項、自転車その他の車両の駐車のための施設の整備に関する事項その他の重点整備地区における移動等円滑化に資する市街地の整備改善に関する基本的な事項その他重点整備地区における移動等円滑化のために必要な事項 (1) 土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業に関する基本的な事項  重点整備地区における重点的かつ一体的な移動等円滑化を図るために実施される4に規定する事業を実施する場合、重点整備地区における市街地の状況並びに生活関連施設及び生活関連経路の配置の状況によっては、これらの事業を単独で行うのではなく、土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業と併せて行うことが効果的な場合がある。 @ 具体的事業の内容  4に規定する事業と併せて行う事業の選択に当たっては、高齢者、障害者等の移動又は施設の利用の状況、都市計画及び市町村マスタープランの位置付け等を踏まえて判断することが重要である。 A 記載事項  基本構想には、事業の種類、おおむねの位置又は区域等をそれぞれ記載するものとする。  なお、土地区画整理事業の換地計画において定める保留地の特例を活用し、土地区画整理事業と併せて生活関連施設又は一般交通用施設(土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)第二条第五項に規定する公共施設を除く。)であって基本構想において定められた施設を整備しようとする場合には、それぞれの施設の主な用途、おおむねの位置等についても記載する必要がある。 資料編35ページ (2) 自転車その他の車両の駐車のための施設の整備に関する事項その他の重点整備地区における移動等円滑化に資する市街地の整備改善に関する基本的な事項   移動等円滑化の妨げとなっている自転車その他の車両の放置及び違法駐車を防止するための抜本的な施策として、駐輪場等自転車その他の車両の駐車のための施設を特定事業その他の事業と一体的に整備することは極めて有効であることから、具体的な位置等これらの整備に関するおおむねの内容を記載するほか、その他の重点整備地区における移動等円滑化に資する市街地の整備改善に関する事項について記載することとする。 (3) その他重点整備地区における移動等円滑化のために必要な事項 @ 推進体制の整備 基本構想に位置付けられた各種の事業を円滑かつ効果的に実施していくためには、基本構想の作成段階又は基本構想に基づく各種の事業の準備段階から、関係者が十分な情報交換を行いつつ連携を図ることが必要であり、協議会を有効に活用することが求められる。 A 事業推進上の留意点 イ 地域特性等の尊重及び創意工夫 各種の事業の実施に当たっては、事業効果を高めるため、地域特性等を尊重して、様々な創意工夫に努めることが重要である。 ロ 積雪及び凍結に対する配慮  積雪及び凍結により移動の利便性及び安全性が損なわれる可能性がある場合は、積雪時及び路面凍結時の安全かつ円滑な移動のための措置を講ずるよう努めることが必要である。 ハ 特定事業に関する公的な支援措置の内容 基本構想に即して特定事業を円滑に実施するため公的な支援措置が講じられる場合には、その内容を明確にすることが重要である。 ニ 基本構想に即した特定事業計画の作成上の留意事項 施設設置管理者及び都道府県公安委員会が基本構想に即して特定事業計画を作成するに当たっては、早期作成の重要性を十分認識するとともに、協議会を活用することによって当事者である高齢者、障害者等を始め関係者の参画を図ること等により、関係者の意見が特定事業計画に十分に反映されるよう努めることが重要である。 ホ 基本構想作成後の特定事業その他の事業の実施状況の把握等   基本構想作成後、特定事業その他の事業が早期に、かつ、当該基本構想で明記された目標に沿って順調に進展するよう、市町村は、事業の実施状況の把握、これに係る情報提供、協議会の活用等による事業を実施すべき者との連絡調整の適切な実施等事業の進展に努めることが必要である。 ヘ 高齢者、障害者等への適切な情報提供 施設設置管理者及び都道府県公安委員会は、高齢者、障害者等に対して、重点整備地区における移動等円滑化のために必要な情報を適切に提供するよう努めることが重要である。 資料編36ページ B その他基本構想の作成及び事業の実施に当たっての留意事項  基本構想は、市町村の発意及び主体性に基づき自由な発想で作成されるものであるので、この基本方針の三に定めのない事項についても基本構想に記載することが望ましい。 四 移動等円滑化の促進のための施策に関する基本的な事項その他移動等円滑化の促進に関する事項 1 国の責務及び講ずべき措置   (1) 国の責務(スパイラルアップ及び心のバリアフリー) 国は、高齢者、障害者等、地方公共団体、施設設置管理者その他の者と協力して、基本方針及びこれに基づく施設設置管理者の講ずべき措置の内容その他の移動等円滑化の促進のための施策の内容について、移動等円滑化の進展の状況等を勘案しつつ、これらの者の意見を反映させるために必要な措置を講じた上で、適時に、かつ、適切な方法により検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めることにより、スパイラルアップを図るものとする。  また、移動等円滑化を進めるためには、施設及び車両等の整備のみならず、国民の高齢者、障害者等に対する理解及び協力、すなわち国民の「心のバリアフリー」が不可欠であることを踏まえ、国は広報活動、啓発活動、教育活動等を通じて、移動等円滑化の促進に関する関係者の連携及び国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努める。 (2) 設備投資等に対する支援、情報提供の確保及び研究開発等 施設設置管理者等による移動等円滑化のための措置を促進するため、設備投資等に対する必要な支援措置を講ずる。 また、高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を確保するためには、施設設置管理者等による移動等円滑化のための事業の実施状況に関する情報が利用しやすい形で提供される必要があることから、国は、施設設置管理者等による移動等円滑化のための事業の実施状況に関する情報が確実に収集され、利用しやすいよう加工された上で、利用者に提供されるような環境の確保に努めることとする。 さらに、国は、移動等円滑化を目的とした施設及び車両等に係る新たな設備等(情報を提供する手法に係るものを含む。以下同じ。)の実用化及び標準化、既存の設備等の利便性及び安全性の向上、新たな設備等の導入に係るコストの低減化等のための調査及び情報通信技術等の研究開発の促進を図るとともに、それらの成果が幅広く活用されるよう、施設設置管理者等に提供するほか、地方公共団体による移動等円滑化のための施設の整備に対する主体的な取組を尊重しつつ、地方公共団体が選択可能な各種支援措置の整備を行う。 2 地方公共団体の責務及び講ずべき措置  地方公共団体は、地域住民の福祉の増進を図る観点から、国の施策に準じ、1に掲げる責務を果たすとともに、措置を講ずることが必要である。特に、地域の実情に即して、移動等円滑化のための事業に対する支援措置、移動等円滑化に関する地域住民の理解を深めるための広報活動等移動等円滑化を促進するために必要な措置を総合的かつ計画的に講ずるよう努めることが必要である。 資料編37ページ   なお、建築物の移動等円滑化に関しては、地方公共団体が所要の事項を条例に定めることにより、地域の実情に応じた建築物の移動等円滑化を図ることが可能な仕組みとなっているので、積極的な活用に努めることが必要である。また、建築物の部分のうち駅等に設けられる一定の要件を満たす通路等については、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第五十二条第十四項第一号の規定による容積率制限の特例を受けることが可能であるので、同法に規定する特定行政庁は、当該規定の適切な運用に努めることが重要である。 3 施設設置管理者以外の高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する施設を設置又は管理する者の責務   高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を実現するために、地下街、自由通路、駅前広場その他の高齢者、障害者等が日常生活及び社会生活において移動手段として利用し得る施設を設置し、又は管理する者においても、移動等円滑化のために必要な措置を講ずるよう努めることが必要である。 4 国民の責務(心のバリアフリー) 国民は、高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性並びにそのために高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を実現することの必要性について理解を深めるよう努めなければならない。その際、外見上分かりづらい聴覚障害、内部障害、精神障害、発達障害など、障害には多様な特性があることに留意する必要がある。  また、視覚障害者誘導用ブロック上への駐輪、車椅子使用者用駐車施設への駐車等による高齢者、障害者等の施設の利用等を妨げないことのみならず、必要に応じ高齢者、障害者等の移動及び施設の利用を手助けすること等、高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を確保することに積極的に協力することが求められる。 附 則 この告示は、公布の日から施行する。 公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン (バリアフリー整備ガイドライン―車両等編―) 平成25年10月(October,2013) 監修 国土交通省総合政策局安心生活政策課 編集発行人 岩村 敬  発行 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 〒102-0076 東京都千代田区五番町10 五番町KUビル3階 電話 03-3221-6673(バリアフリー推進部) ファクシミリ 03-3221-6674 URL http://www.ecomo.or.jp/ The ECOMO Foundation 公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 車両等偏 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団