バリアフリー推進事業

2019年度 一般部門 成果報告

研究助成名

多感覚統合を利用した聴覚失認者にも分かりやすい緊急災害情報の放送法

研究者名

兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 三谷 雅純

キーワード

高次脳機能障害、聴覚失認、情報アクセス、災害情報、多感覚統合

研究内容

(研究目的)
 これまで公共放送の高次脳機能障害者への情報保障が問題になることはあまりなかった。注意を促すチャイムや言語音で知らされる災害情報は聴覚失認者には十分理解されていないように思えるが、その実態が明らかではなかった。本研究では聴覚失認者のチャイムと言語音を使った災害情報理解の実態を調べる。

(研究手順)

 聴覚失認者と非障害者に対して、マルチメディアDAISY形式で提示した有名な小説の一節を視聴してもらい、それが理解できるかどうかを、チャイム音(NHK緊急地震速報の報知音、エリアメール緊急地震速報の警報音、半鐘の音、全国瞬時警報システム(Jアラート)、au 災害・避難情報 緊急速報報知音、緊急地震速報 REIC、踏切の警報音、学校のチャイム、チベット・ベルなど)を流した上で調べた。

(研究成果)

  1. 緊急災害情報は、通常、注意喚起のためのチャイムに続いて、言語音で読み上げる災害情報を受け取ることで成り立つ。その時、チャイムの把握とともに言語音の苦手な聴覚失認者は災害情報を理解することができるのだろうか。この疑問に答えるために、聴覚失認のある障害者のべ74名、非障害者のべ42名とともに、マルチメディアDAISY形式で作成した言語音課題に答えてもらう視聴覚実験を行った。

  2. 結果は被験者が聴覚失認者であるにも関わらず、実験前半は正しい回答が得られた。しかし、表に示した後半は,特に中・重度障害者に間違いが目立った。これは言語音を用いない視聴覚実験の、最初は間違いが目立ったが、やがて正解が多くなるという結果とは正反対のものであった。聴覚失認者は多感覚統合を活用すれば、通常の言語音でも情報を把握することができる。ただしチャイムによる注意喚起力に差はあるのか、チャイムの注意喚起力は言語音が聴覚失認者に及ぼす影響に比べて小さなものなのかという疑問が浮かぶ。この検討は今後の課題である。

 

 

表1 言語音の課題を解いた時のMann-Whitneyによる多重検定の結果、Bongerrioni correctionで確立を修正した

言語音の課題を解いた時のMann-Whitneyによる多重検定の結果、Bongerrioni correctionで確立を修正した

 

 

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