バリアフリー推進事業

2018年度 成果報告

研究助成名

「Happy Bus停」プロジェクト?バリアフリーで快適なバス利用環境を面的発想で実現する?

研究者名

呉工業高等専門学校 神田 佑亮

キーワード

バス待ち環境改善,地域連携,バリアフリー情報,動物園,集客施設

研究・活動内容

(研究・活動成果)
 1.はじめに

本研究・活動は、呉高専神田研究室に所属する学生が「広島県公共交通移動活発化検討会・地域住民による利用促進WG」に、利用促進のための心理的バリア解消策を提案したことに端を発する。利用促進のためには、郊外住宅地である広島市あさひが丘地区(高齢者比率50%以上)と、近隣の安佐動物公園との連携が必要と考え、住民を対象としたアンケート調査や現地でのフィールド調査を経て「公共交通で来たくなる動物園」をコンセプトとし、動物園の魅力発信,バスに不慣れな方や高齢者に配慮したバス待ち環境・情報提供の整備を2017年秋に学生が発案提案してきた。
高度経済成長期に整備された郊外ニュータウンの高齢化に伴う「オールドニュータウン問題」が全国各地で発生している。このような地域では、公共交通網の維持が大きな課題となっているが、利用促進のためには、利用環境改善と心理的なバリアの緩和が必要となる。本研究・活動では、潜在するバリアを学生の目線から顕在化し、その上で学生発意によるバリア改善策を関係者との連携の上、提案・実現し、交通環境の改善により利用促進、ひいてはサービス水準の向上を図ることを目的として活動を行なった

  1. 2.研究活動内容

(1)情報ニーズの把握
はじめに、利用者の公共交通情報ニーズを把握することを目的として、来場者を対象にアンケート調査を実施した.調査は平成30年11月27日(土)に聞き取り方式により実施した.当日は天候が不順であったこともあり、29名からの回答が得られた.

主要な回答について以下に示す.図1は来訪交通手段について尋ねた結果を示したものである.動物園の立地が郊外であることや客層が家族連れが多いことから、自動車が多数を占めているが、5名(17.2%)がバスで来訪していた.

図2は、公共交通についてあったら良いと思う情報について尋ねた結果を示している.バス走行位置情報、公共交通利用による優遇情報が優位を占めている.この地域の路線バスはほとんどがバリアフリー対応であり、情報としてのバリアフリー情報提供に対するニーズは限定的であった.

(2) 「Bus停in売店」の具体設計、環境整備
(1)のアンケート結果も踏まえつつ“「Bus停in売店」”の具体設計、環境整備を行なった.利用者に対して、バス情報をよりわかりやすく提供するとともに、快適な待ち環境を提供することで、心理的バリアを緩和して満足度を高め、公共交通の利用者増に貢献することを狙う.また、近年増加する外国人来訪者の増加や高齢者や乳幼児連れの方、障がいをお持ちの方もできるだけストレスを感じることがなく、動物園での観光や公共交通での来訪を楽しめる、バリアフリーのコンセプトに基づき、検討を行なった.
具体的には、安佐動物公園の入場ゲート付近の売店を情報のハブと待合施設と位置付け、情報発信施設があることを案内するバス停を模した案内看板である「Happy Bus待合所」(図3)、公共交通情報やバリアフリー情報等を案内する看板「ハッピーおでかけバスガイド」(図4)を製作した.また売店付近にニーズの高かったバス位置情報を案内する臨時バスロケサイネージ(図5)の設置設計を行った.

「Happy Bus待合所」(図3)のパネルは、売店が待合所と認識してもらえるように、バス停の形状を模した.また、このパネルには、バス停までのルート、広島方面へのバス時刻表(2社分を1つの時刻表にまとめて表示)、バスの主要経路,広島都市圏のバスロケサービス「BUSit」のリンクのためのQRコードをレイアウトしている.なお、形状はレッサーパンダをモチーフとしているが、(1)で実施したアンケートにて、回答者から得られた「安佐動物公園」を代表とする動物が、レッサーパンダであったためである.

「ハッピーお出かけバスガイド」(図4)では、バリアフリー情報として車椅子や乳幼児・お子様連れの方向けの情報に加え、近年増加している外国人訪問者へも対応するため,英語表記も行なっている.また、バス停までの経路情報には所要時間を記しているが、高齢者や車椅子の方の所要時間もあわせて表示している.その他、バスの経路情報や観光回遊を促進するためのスポット情報を掲載している.

 上記の一連の活動について、広島市安佐動物公園、国土交通省中国運輸局、あさひが丘連合自治会、地域の公共交通事業者である広島電鉄株式会社、株式会社フォーブル、広島高速交通株式会社の協力を得て推進した.なお当初の計画では助成期間内に設置予定であったが、平成30年7月豪雨の影響により夏季?秋季の期間において活動が困難な時期が発生した.関係機関との調整もあり、製作した一連のツール類は、平成31年3月13日に、地域の方々を招いて設置式を行い運用を開始する.
本研究・活動は、学生発案・主体のプロジェクトであるが、社会的ニーズに対し学生が提案し、産官との連携のもと、提案で済ませず実現まで持っていった.本研究活動を通じ、多様な主体が関わるバリアフリー緩和活動の新しいモデルになるものとして,今後も展開していく所存である.

 

来訪交通手段

図1:来訪交通手段

公共交通についてあったらいいと思う情報

図2:公共交通についてあったらいいと思う情報

「Happy Bus待合所」 のパネル

図3: 「Happy Bus待合所」 のパネル

「ハッピーお出かけバスガイド」

図4: 「ハッピーお出かけバスガイド」 

簡易バスロケサイネージ画面

図5: 簡易バスロケサイネージ画面

設置場所のイメージ

図6: 設置場所のイメージ

 

 

バリアフリー設備のご紹介

バリアフリー設備のご紹介

実績報告

成果報告会