バリアフリー推進事業

2018年度 成果報告

研究助成名

聴覚失認のある高次脳機能障がい者に適した災害チャイム

研究者名

兵庫県立大学自然・環境科学研究所 三谷 雅純

キーワード

情報アクセス、高次脳機能障がい者、聴覚失認、災害情報、緊急避難放送

研究内容

(研究目的)
 これまで公共放送の高次脳機能障がい者への情報保障が問題になることはあまりなかった。注意を促す警戒チャイムは健常者には有効であるが、聴覚失認のある高次脳機能障がい者には注意喚起機能が不十分であった。本研究では現行の災害情報に使われている警報チャイムの高次脳機能障がい者に対する注意喚起力を調べる。

(研究手順)

 聴覚失認者(軽度:女9名、男13名)(中・重度:女3名、男12名)と非障がい者に対して、簡単な記号の暗記と一桁の暗算を行ってもらい、チャイム音(NHK緊急地震速報の報知音、エリアメール緊急地震速報の警報音、半鐘の音、全国瞬時警報システム(Jアラート)、au 災害・避難情報 緊急速報報知音、緊急地震速報 REIC、踏切の警報音、学校のチャイム)の注意喚起の有無を調べた。

(研究成果)

  1.  聴覚失認のある高次脳機能障がい者は、現在、日本で広く用いられる、緊急放送の注意喚起のためのチャイムを正しく認知できているのだろうか。その実態を確かめるために障がい者と対照として非障がい者に集まってもらい、視聴覚実験を試みた。被験者への課題としては記号としてのアルファベット(AからEまで)とトランプ記号を憶えること、さらに一桁の足し算・引き算の暗算を加え、各チャイムの注意喚起力を比べた。
  2. 実験では有意差が表れ、中・重度障がい者と非障がい者の差が顕著であった。ただし、実験を重ねる内に有意差は少なくなった。

     今回の実験から聴覚失認者の注意喚起には回数を重ねることが有効であると言えた。ただ現実のテレビやラジオの緊急警報放送では、災害情報は言語音で届けられる。今後は言語音による視聴覚実験でチャイムの有効性を調べてみる必要がある。

 

左上:NHK緊急地震速報の報知音、右上:エリアメール緊急地震速報の警報音、左下:半鐘の音、右下:全国瞬時警報システム(JAアラート)

図 左上:NHK緊急地震速報の報知音、右上:エリアメール緊急地震速報の警報音、左下:半鐘の音、右下:全国瞬時警報システム(JAアラート)

左上:au災害・避難情報緊急速報報知音、右上:緊急地震速報REIC、真ん中左:踏切の警報音、真ん中右:学校のチャイム、左下:チベット・ベルの音

図 左上:au災害・避難情報緊急速報報知音、右上:緊急地震速報REIC、真ん中左:踏切の警報音、真ん中右:学校のチャイム、左下:チベット・ベルの音

 

表1 Ryan's methodで確率を修正したMann-Whitney testによる多重検定の結果

Ryan's methodで確率を修正したMann-Whitney testによる多重検定の結果

 

バリアフリー設備のご紹介

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