バリアフリー推進事業

平成28年度 成果報告

研究助成名

大阪・なんばエリアにおける分かりやすいエレベーター表示の実証研究

研究者名

特定非営利活動法人 大阪障害者自立生活協会 石田 義典

キーワード

案内サイン 車椅子 エレベーター 車椅子トイレ

研究内容

1.背景・目的 

大阪の「難波」エリアは、鉄道4社6線(JR・大阪市営交通局3線・南海・近鉄)の駅を有する地区であり、その乗り換えのほとんどが地下街ルートで移動が可能(平成30年度には全てのルートが可能)。地下街と地上階をつなぐエレベーターを所有しているビルも多く(今回の対象エリアでは11ビル)、車椅子トイレを有するビルや飲食店等も多い(50ヵ所)。本事業では、案内サインの問題に直面している障害者団体が中心になり、案内サイン改善に向けて取り組んだ。

2.交通事業者・学識経験者を招いた学習会(5月29日、6月12日)
 なんばエリアの実地検証に協力頂く障害者・支援者、鉄道事業者、行政、地域商店街等を招いて学習会を行った。学習会参加の障害者のうち、車椅子で無い障害者は5名(視覚・盲ろう・知的)、他は全て車椅子利用者。(参加障害者5月20名・6月21名、支援者5月17名、6月16名)。学習会では、各事業者から案内サインリニューアル等で自助努力されている報告や学識経験者講師による海外事例等をお聞きした。  

鉄道では、色覚障害者に配慮した配色の工夫や、海外旅行者に対応した多言語サイン化も大きなポイントとなっていた。大阪市交通局(5月)では、順次実施しているサインリニューアル後は、これまで案内していなかった局所有以外の一部エレベーターも「周辺地図」に記載する方針との報告も頂いた。参加障害者・支援者からは「リニューアルされてわかりやすくなった部分もあるがピクトグラムが小さくなった場所がある」という意見が多かった(障害者10名、支援者14名)。一方、6月学識講師からご紹介頂いた「大きいピクトグラム」「階段やエスカレーターとわけない・一体的なエレベーター配置」という海外事例について、「非常にわかりやすい・日本にも反映して欲しい」という声が多かった(障害者17名、支援者16名)。エレベーターの多くが後付け設置である為に、階段やエスカレーターと異なる場所に設置されていることが多い。その結果、バリアフリールート用の案内サインが必要となっている。階段・エスカレーター・エレベーターを統一設置していくことが、案内サインの観点からも重要だと思われる。

3.学習会参加者(障害者)に対するアンケート
 実地検証に向けて、学習会参加の障害者(4.実証実験参加者)に対してアンケートを実施した。質問項目は「障害状況」「外出頻度・場所」「外出時介護者同行の有無」「介護者同行外出時の移動経路選択方法」について。(障害者延べ41名中37名回答)
(参加障害者5月18+2名・6月18+3名、支援者5月17名、6月16名)
 「障害状況」・・・肢体不自由32名、視覚障害2名、盲ろう障害3名
 「外出頻度」・・・毎日外出37名
 「外出場所」・・・通勤・通所37名
 「外出頻度」・・・毎日30名、週に数日7名
 「外出時介護者同行の有無」・・・毎回介護者同行18名、毎回単独外出8名、介護者同奥・単独外出混合11名
 「介護者同行外出時の移動経路選択」・・・介護者誘導16名、障害者誘導15名、介護者・障害者誘導混合10名
 質問の「外出時の介護者同行の有無」で「単独外出混合」と回答頂いた方に理由をお聞きした。「介護時間の制限(依頼時間が足りない)」という回答が最も多かった(11名中4名)。
 また、質問の「介護者同行外出時の移動経路選択」で「介護者・障害者誘導混合」では、「基本は障害者が先導するが、慣れていない場所は異なる」という回答が多かった(10名中9名)。

 

アンケート結果から、車椅子利用者と健常者(介護者)両方にとってわかりやすい案内サインが必要であることが推測された。

4.実証実験
 実証実験協力者(障害者)には、2つの条件を提示の上、協力呼びかけをしていた。ひとつは学習会の参加、もうひとつは「なんばエリアの外出経験が少ないこと」。但し、介護者によっては、なんばエリアの外出経験が豊富な方もおられたので、障害者同意の上で「移動経路の助言はしない」協力を頂いた。
●実証実験は2日間、3回(各2時間)実施した。
(@7月22日10-12時、A7月25日13-15時、B7月25日16-18時)
●参加数は延べ98名(@34名、A49名、B15名)
●行程:なんば地下街イベントブースで集合の上、チーム別け。12に設定した移動ルートを「案内サインだけで移動」し、ゴール(難波市民学習センター)で報告会。移動ルート伸スタート地点は、集合場所のパターンと駅ホームスタートのパターン2種とした。(近鉄「難波」駅、大阪市交通局「なんば」駅)。また、途中「寄り道」として難波エリアの観光地(なんばグランド花月・法善寺横町)の経由をルート上設定したチームも設定した。

●12ルートは、事前に健常者が徒歩移動で所要時間を計測(15分から30分)。ある程度の迂回も考慮し、ゴール地点までの所要時間を60分と見込んでいたが、3分の1のチームが「時間切れでルート途中離脱」となり、残りのチームの平均所要時間は80分だった。
●実地検証後、ゴール地点の会場では、感想等意見交換と「見やすい案内サインの高さ」聞き取り調査も行った。(エレベーターピクトグラムを高さ70p、1.5m、2m 3パターン高さに掲示。どの高さが良いか?を聞き取った)「2m」回答が最も多かった(98名中84名)理由の多くは「車椅子の目線に合わせた高さだと、雑踏の中では視認できない」だっった。
●また、「時間切れでルート途中離脱」チーム多くが「近鉄難波駅」ルート。原因は「案内サイン」だった。(後日、改善して頂けました)

5.改善提案
 4,実証実験の結果を踏まえ、なんばエリアの地下街・地上連絡ビルに対して案内が必要だという項目を4つに設定して「案内サイン改善提案」を作成した。設定した4項目は、@地上部での案内、A地下街部での案内、Bエレベーターかご内・連絡ビル各フロア案内、C車椅子トイレ案内。
 地下街は、現地の案内サインは少ないものの、地下街マップ等にはエレベーターの有無がピクト表示されている。最大の問題(実地検証参加者から「全くわからない」「わからない」意見多数)は、地上部で、地下街と連絡しているビルの案内表示がほぼない、ということ。その他、「B1・B2どちらの階が地下街(鉄道)連絡階かがわからない」や「地下街(鉄道駅)と地上を連絡するエレベーターを所有しているビルにある車椅子トイレの場所はわかりやすかったか?(実は連絡ビルの多くは車椅子トイレ設置)」には「わからなかった(あったのか?)」という回答も多かった。(以下、改善提案内容抜粋)。連絡ビル管理者への申し入れは現在も継続中。成果としてはまだ少ないが、近鉄「難波駅」のように、障害者からのニーズに応じて改善して頂けた事例は今後も重ねていきたいと思います。

 

 

近鉄「難波」駅改札階(B2階)

地下街(B1)への エレベーターは西出口だけだが、案内サインがない。道頓堀や他鉄道乗り換え場所に近い「東出口」は人の流れも多く「東出口」に向かうチームが続出。

近鉄「難波」駅改札階(B2階)

●改善後:近鉄「難波」駅改札階(B2階)

●改善後:近鉄「難波」駅改札階(B2階)

地上部での案内提案例 現在

地上部での案内提案例 現在

地上部での案内提案例

地上部での案内提案例 改善提案

地下街部での案内 現在

地下街部での案内 現在

地下街部での案内 改善提案

地下街部での案内 改善提案

エレベーターかご内・連絡ビル各フロア案内 改善提案

エレベーターかご内・連絡ビル各フロア案内 改善提案

バリアフリー設備のご紹介

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