交通バリアフリーにかかる福祉教育授業モデル動画コンテンツの作成
国立大学法人鳴門教育大学 大学院学校教育研究科 高橋 眞琴
バリアフリー,肢体不自由,発達障害,内部障害,福祉教育,本人の声
1.はじめに 本DVDにおいては,電動車いすを街の中で操作する肢体不自由のある生徒さんの声(Chapter 1),発達障がいのあるお子さんの送迎車両の乗車場面(Chapter 2), 内部障がいのある学生さんの声(Chapter 3), 鳴門教育大学学生によるロールプレイイングと模擬授業(Chapter 4)が障がいのある子どもたち,保護者,関係団体,鳴門教育大学に在籍する学生の協力により,収録されている。学校教育での福祉教育での導入場面の検討や地域での児童発達支援,放課後等ディサービスセンターでの支援において,活用することが期待できる。 2.Chapter 1 電動車いすを街の中で操作する肢体不自由のある生徒さんの声 駅の券売機での乗車券購入場面では,電動車いすを操作する肢体不自由のある生徒さんが乗車券売機を見ており,手助けしようとしている人が同じ目線に座って,手伝いを申し出ている。一般的に,駅において車いすに乗っている人が券売機を見ていると,乗車券購入に際して,何か困ったことがあり,手助けが必要であることが想定されるが,実は,電動車いすユーザーの多くが「福祉乗車証」を保持しているため,今回の動画コンテンツパーツの収録では,その乗車証を探していることがわかった。本人から申し出がなければ,気が付きにくい点である。 (2) 電動車椅子の後方キャスター 電動車椅子で移動している際に,駐車場から公道に出ようとしている車両に遭遇することがある。車両運転手は,少し車を前方に出した状態で,電動車いすユーザーが優先的に通過するのを待ってくれる場合がある。しかし,電動車椅子ユーザーは,車両を避けて,歩道と公道のスペースの間を通過しようとするため,電動車いすが少し斜めに傾く場合もあり,走行中のバランスを崩し,脱輪という状況も否定できないことも明らかとなった。脱輪だけではなく,ほんの少しの段差であっても,片方の車輪が落ちてしまい,電動車いすが転倒するケースもあり得る。また,前向き駐車がバックして,公道へ出ようとする際に,車種によっては,電動車いすがバックミラーの視界に入らないことがあるために,危険な思いをした経験が肢体不自由のある生徒さんから語られている。 3.Chapter 2 発達障がいのあるお子さんの送迎車両の乗車場面 また,荷物の受け渡しによるスタッフとのコミュニケーションの芽生えや円滑なシートベルト装着に向けた取り組みについて,大学教員による概説を加えている。 4.Chapter 3 内部障がい(心臓疾患)のある学生さんの声 公共交通機関のバスに関するエピソードとして,病院への定期健診時に,優先座席に座っていたところ,近くに座っていた人から叱責された経験や電車では,JRの場合には,100km以上の移動でないと運賃は通常料金になり,病院への定期健診時に,運賃はかなりの負担にならないことや介助者がいないと割引がされないこと,タクシーで身体障害者手帳を提示したところ,手帳の色が違うため,「使えない」といわれた経験も語られた。内部障がいのある人は,一見するとわからないため,理解が得られにくいことが示唆されている。 5.Chapter 5 鳴門教育大学学生によるロールプレイイングと模擬授業 誘導音のない信号において,視覚障がいのある方が感じていることを知ることによって,声かけの仕方や配慮について,理解を促すロールプレイング及び視覚障がいのあるロールプレイイング企画者と大学教員との対談場面,車椅子での飲食店への入店場面でのスタッフによる支援,筆談場面のロールプレイング,福祉授業の模擬授業として電子黒板を用いた画像,パワーポイント,バリアフリー画像の提示も収録されている。 6.まとめ 学校の福祉教育において,導入部分などで今回収録されたコンテンツを活用いただくことで,地域の中の交通バリアフリーについて,児童・生徒が考えるきっかけになれば幸いである。また,地域での児童発達支援,放課後等ディサービスセンターでの支援などでも活用していただくことも期待している。 <関連する研究業績> (論文) 高橋 眞琴,小澤 稜一郎,小澤 訓代,吉田 健一,横山 由紀,原田 茉耶,吉見 ふみか,伊東 なゆみ,村川 和生,桑原 遥,田中 淳一「交通バリアフリーに係る福祉教育授業モデル動画コンテンツの作成 −本人の参画を中心として−」 |
図1 DVDジャケット
図2 DVD同封資料