バリアフリー推進事業

平成28年度 成果報告

研究助成名

バリアフリーに配慮した交差点ハンプの構造検討及び開発

研究者名

埼玉大学大学院理工学研究科 久保田尚

キーワード

物理的デバイス、交差点ハンプ、交通静穏化、速度抑制、車椅子利用者

研究内容

(研究目的)
本研究は、バリアフリー基準を満たすための交差点ハンプの構造等の検討を行い、社会実験用の交差点ハンプの開発を行い、その有効性を検証する。すでに広く用いられている、ゴム製の1m×1mのハンプ用ユニットでは、交差点ハンプの場合隅切り部に段差が生じてしまう。本研究では、常温アスファルト合材を用いて段差を一時的に埋める手法を開発し、実際の社会実験に用いてその有効性を検証する。

(研究手順)

 以下の項目に沿って、研究を実施した。
1)バリアフリーを考慮した交差点ハンプの設計:隅切り部の勾配を数値的に検討
2)社会実験用交差点ハンプの開発:ゴム製ユニットとアスファルト合材による交差点ハンプの作成方法の検討
3)敷地内実験:埼玉大学敷地内でゴム製ユニットとアスファルト合材により隅切り部を作成
4)社会実験:さいたま市の生活道路で2週間の公道社会実験を実施し、交通調査、意識調査を実施

(研究成果)

  1.  幾何構造の検討と敷地内実験の結果、交差点ハンプの幾何学的形状と、その形状のハンプを単路部に設置するハンプに利用されている1m四方のユニットと、常温アスファルト合材を利用して作成する方法を提案することができた。敷地内において、隅切りに面する部分を含む交差点ハンプの一部を作成し、行った実験の調査結果から、ハンプの隅切り部を施工した常温アスファルト合材は、締め固め機器を使用して締固めを行うと、大型車が隅切り部上で通過や停止をしても変形がないことが確認できた。これから、常温アスファルト合材は、一時的な利用に関しては、車両の通行に十分な耐力を発揮することが確認できた。しかしながら、提案した形状の中には、交差点を曲がる歩行者の通行場所によっては、横断勾配がバリアフリーの基準の2%を超える場合が出てしまうことから、安全な通行位置の誘導が必要であることがわかった。横断勾配が2%以内になる通行位置についても、示すことができた。
     上記の検討結果を元に、さいたま市内の生活道路における社会実験を実施し、車両の挙動に関する観測調査、振動・騒音に関する調査、沿道住民へのヒアリング調査、および、被験者実験による歩行者等の通行性調査を行い、提案した交差点ハンプの評価を行った。
     社会実験中および事後調査で得られた交通調査結果を分析すると、交差点ハンプを設置した交差点において、車両の通過速度はハンプが設置されたことにより平均、最大、85%タイル値が減少していることが確認された。このことから、提案した形状の交差点ハンプを設置することで、対象交差点の車両の通過速度が抑制され、道路の安全性の向上に資する効果が確認された。騒音、振動に関しては、社会実験中、および交差点ハンプの撤去後にそれぞれ調査を実施した結果を比較することで、本実験においては周辺環境に影響を及ぼさないことが確認された。交差点付近での自動車の一時停止挙動については、実験中の停止線、すなわちもともとの停止線から後退した位置の停止線では、一時停止、および十分な減速の割合が少ない傾向が見られた。一方、もともとの停止線位置である、交差点ハンプのすりつけ部での挙動と、交差点ハンプ撤去後のもともとの停止線位置での一時停止挙動は大きな変化はない様子が見られた。このことから、交差点ハンプの設置により交差点での一時停止の挙動には、大きな変化はなかったと考えられる。実験中の停止線での挙動については、停止線位置の変更が原因であと考えられることから、より長期の観測により、行動の変化の有無を確認する必要があると考えられる。
     被験者実験からは、横断勾配のない経路を通行する場合には、車椅子で通行する場合であっても交差点ハンプが通行の障害とならないことが確認された。一方、横断勾配が2%以内になる場合であっても、そのような経路になる場合は通行に支障が感じられるという結果が見られた。これらのことから、交差点ハンプの設置にあたっては、歩行者に対する安全な経路の誘導方法や、交差点ハンプと隅切りの間の通行経路の確保など、設置場所に合わせた検討が必要であると考えられる。これらの検討のもとに、ハンプの普及を進めていくことで、より安全な生活道路の形成に寄与できるものと考えられる。

 

 

バリアフリー設備のご紹介

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