バリアフリー推進事業

平成27年度 成果報告

研究助成名

旅客施設のない町での市民提案型バリアフリー基本構想策定の実践とその課題の検討

研究者名

NPO法人楽しいまちづくりの会 副理事長 藤村 安則

キーワード

バリアフリー、基本構想、住民協働

研究内容

(研究目的)
国土交通省の調査によると平成26年3月末現在、基本構想を作成した市町村は280市町村であり、全国市町村数(1,741市町村、平成26年3月末現在)に占める割合は依然として低く、今後も積極的に基本構想の作成に取り組んでいく必要がある。さらに、利用者が3000人/日以上の旅客施設をもたない市町村の策定率は、1.3%、旅客施設のない市町村では0.6%であり、人口規模の小さな市町村ではほとんど策定されていない状況にある。そこで、本研究では、旅客施設のない町を対象に、市民提案型バリアフリー基本構想策定の手法について検討することを目的とする。
 本年度は上記の計画に基づいて,これまでに開発した検出技術を手軽に使用できるようにするための,「汎用転倒シーン検出エンジン制御ソフトウェア」を開発し,当該ソフトウェアを用いた検証実験を実施した.

(研究手順)

@申請者らによるまち歩き
A町民に対するバリアフリー化のニーズ等に関するアンケート調査
Bそれらの結果をもとに、行政職員も参加したシンポジウムの開催
C町民の詳しい意見を聞くためのワークショップの開催(研究実施機関終了後実施予定)

(研究成果)

  1. 1.対象地区の概要
    上牧町について
    人口23,126人 (H27)
    高齢化率29% (H27)
    面積 6.14?
    公共交通機関: 奈良交通バス・上牧町営バス(公共施設巡回バス)

    2.アンケート調査

    施設利用ランキングは表-1に示す通りで、最も利用者数の多い施設は上牧町役場であり、続いて多いのは2000年会館、アピタ西大和という結果となった。上牧町役場では、段差やトイレの改善を求める声が多く、自由記述では施設内の照明の暗さを指摘する声も挙がった。
    道路に関しては、主要道路を結ぶ経路を8つに分別し,よく利用する経路とバリアフリー化を希望する経路を尋ねた.その結果は表-2に示す通りで,経路1が最もバリアフリー化希望が多いことが分かった.

    (3.まとめ)

    本研究では、上牧町における市民提案型のバリアフリー基本構想策定を目指し、@まち歩きを実施し、まちの状況や現況を把握、A町民へのバリアフリーアンケートを実施し、町民のバリアフリー化に関するニーズ等を把握、Bそれらの結果を踏まえ、行政職員・町長を交えたシンポジウムを開催し、行政や市民と課題の共有を図った。その結果、主要施設を結ぶ幹線道路・施設において,段差・凸凹・歩道の幅に不満を感じている人が多く,バリア調査でも多くの課題が見つかった。これらの結果をもとに、シンポジウムを実施し、町民や行政・町長と課題を共有することができた。さらに今後は町民ワークショップ等を開催し、具体的な意見を共有することが必要である。
     また特に今回のシンポジウムでは、バリアフリーだけでなく、交通安全や地域の助け合い活動など様々なまちづくりの課題について話し合うことができた。従来、都市部におけるバリアフリー化の推進は、障害者団体等を中心に進められて地区が多いが、一般市民の理解不足により協力を得られないことや、その必要性を訴えなければならないという課題も存在している。しかし、このような小さな町では、高齢化率も高く、旧来の自治会などの地縁組織が活発な地区などもあり、まちづくりの一つの方策として、バリアフリー化を進めることへの必要性やその活動に対する理解はされやすい。そこで、今後は、行政と協働して、住民が住みやすい町をどのようにして作り上げていくかというプロセスの中で、その一つとして、バリアフリーを位置づけ、それを進めていける仕組みを構築していくことで、客施設のない町での市民提案型バリアフリー基本構想策定が実現できるのではないかと考える。

 

表-1 アンケート調査の概要

表-1 アンケート調査の概要

表-2 アンケート調査結果〈回答者の属性)

表-2 アンケート調査結果〈回答者の属性)

表-3 よく利用する施設

表-3 よく利用する施設

表-4 バリアフリー化を希望する経路

表-4 バリアフリー化を希望する経路

写真-1 縦断勾配           写真-2 約10%の縦断勾配

写真-1 縦断勾配 写真-2 約10%の縦断勾配

図-1 経路1におけるバリアフリー化を希望する理由

図-1 経路1におけるバリアフリー化を希望する理由

バリアフリー設備のご紹介

バリアフリー設備のご紹介

実績報告

成果報告会