バリアフリー推進事業

平成26年度 成果報告

研究助成名

過疎高齢地域におけるICTを用いた津波避難経路バリアフリー化の調査研究(51-6)

研究者名

大島商船高等専門学校情報工学科 准教授 浦上 美佐子

キーワード

DIG、ICT-DIG、津波避難経路、情報共有、ソフト的なバリアフリー化

研究内容

(研究目的)
災害対応の重要な考え方として「自助・共助・公助」が広く受け入れられている。特に、減災のためには、第一のサバイバル(自助)が重要であり、地域コミュニティ主体のボトムアップ型の地区防災計画が必要である。一方、過去に実施したアンケート結果やヒヤリングによると、自治体主催の津波防災訓練に参加したくても、体調が不安で参加できず、津波避難経路を歩き避難体験ができない高齢者が多いことが分かった。 本研究では、災害弱者となりえる高齢者が、ICT技術を用いて、津波避難経路のソフト的なバリアフリー化に向けた具体的な取組みを行うことを目的とする。この取組みは、実際に高齢者自らが、ICT機器を用いて津波避難経路バリアフリー化に関わる情報をオープンデータ化し、地区防災計画に取り組む津波避難経路を定量的に決定するための手法を提案する。

(研究手順)

研究のフローチャートを下図に示す。まず、Step1で高齢者自身が、強い自助の意識を持ち、利用する交通路をオープンデータとして投稿・収集できるICT技術を習得する。そのためのICT教室運営ノウハウも蓄積する。次に、Step2で、各高齢者が日常利用する交通路等の諸情報をオープンデータとして投稿し、収集する。同時に、過疎地における組織(学校、会社、団体等)では遠方通勤者や通学者が多い(本校の場合、学生(600名)や学校職員(100名)の多くが、地元住民でない)ため、先のオープンデータに通勤・通学者からみた交通路の諸情報をオープンデータとして投稿し収集する。これにより、過疎地域においては、帰宅困難者も災害弱者となりうるため、高齢者とともに地域コミュニティの一員として本取組に参加する。Step3では、安心安全な避難経路バリアフリー化を視覚化するためのモデル手法を提案し、システムの試作を行う。

(研究成果)

  1. ●平成26年度成果報告
     Step1、Step2:高齢者ICT教室の開催とアンケート調査・分析
     平成26年度高齢者ICT教室(パソコンカフェ)を6月(6月19日、26日、7月3日、計3回)と1月(1月14日、20日、計2回)に実施した。高専学生が講師役となり、高齢者が携帯情報端末(タブレット)の使い方、津波災害や津波避難に関する知識、ネット接続したタブレットを用いた避難経路選定のための情報収集、そして避難経路のデータ入力等を学習し、実施した。参加された高齢者に対して、津波避難バリアフリー化に必要な情報を調査し、その調査結果の検討を行った。ここで、津波避難経路のバリアフリー化の目標は、体調に不安のある高齢者でも、建築物や公共施設などの「津波発生のおそれが生じたとき」にいた場所から、危険を察知して、「避難する経路」を経て、「避難する場所」に到達する(安全が確認される)までの時間・場所ごとに、バリアフリー環境を整えることである。まず、「避難する経路」に着目し、アンケート調査より得られた情報から、津波避難経路の重み係数を選定した。そして、避難経路の収集・視覚化を行うシステムの試作を行った。

    ●平成27年度成果報告
     Step3:ICTを用いた避難経路の視覚化(オープンデータの投稿、収集システムの試作)
     事前に危険箇所や避難ルートを予測する手段の一つである、DIG(Disaster Imagination Game)に着目した。このDIGは、参加者がDIGを行っている会場に集まることで情報を精査・共有する手法である。普段は健康不安で地域で実施する避難訓練やDIG訓練へ参加したことが無い方たちを対象に、紙媒体のDIGを実施したところ、情報共有や避難ルートを決めていく中で、貴重な仮想体験であったというコメントが多かったこと、避難経路のバリアフリー環境に関する考え方は、健康状況により、様々であることが分かった。また、この調査において高齢者は簡単なタブレット操作が可能であることも分かった。そこで、本研究で構築するシステムの目標を、タブレットを用いて、仮想的に各家庭からDIGへ参加し、個人が考えるバリアフリーである津波避難経路を提案し、収集・共有することで、疑似的な避難訓練を可能にする、ICT-DIG(Information Communication Technology - DIG)システムの試作に決定した。実際に試作した、システムの概要図を以下に示す。 図より、(1)のICT-DIGのメイン画面QGIS(Quantum Geographic Information System)では、地図表示やポイント、ライン等を入力する。このとき(2)地理データにOSM(Open Street Map)や国土地理院を用いる。国土地理院の地図情報(Shape形式)は、(4)データベース(DB)のPostgreSQLとその拡張であるPostGISに一度、格納し、QGISに表示する。OSMの地図情報(OSM形式)は、直接QGISに表示する。また、詳細な道路情報を得るために(3)に示す携帯端末にGPXファイルを吐き出すアプリを用いて、GPSによるトラックデータの取得も行う。このデータは、QGIS上でShape形式に変換しDBに格納する。すべてライセンスフリーの地図データやシステムを利用する。さらに、推薦する避難経路をSW法で推奨する試みについても実施し、評価を行うことができた。

 

事業の流れ

 

システム

 

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