バリアフリー推進事業

平成24年度 成果報告

研究助成名

多文化共生社会の災害情報に対するバリアフリーモデルの構築(3-一1)

研究者名

高知県立大学 神原咲子

キーワード

多文化共生社会、災害情報、モデル構築

研究内容

(研究目的)
 近年、日本では、旅行者や在住の外国人が災害時要援護者として配慮されるようになってきた。しかし、障害者、高齢者など他の要援護者と違い、理由となるバリアを取り除けば、支援者となりえ、自らで減災対応をとることができる。本研究では公共交通機関や公共機関において災害時、緊急時に必要な情報へのアクセスに対するバリアを探求することとした。
(研究手順T)
T.-1 高知県内の主要な駅や公共交通機関、観光地、大学等にある防災や緊急時の避難経路に関する現在の情報発信内容や方法をワークシートに整理した。
T-2 外国人相談会、日本語教室等においてTの結果を提示し、グループディスカッションやフォーカスグループインタビューにてコミュニケーション方法、スキル、知識、文化、使用言語などの基本情報を知り、様々な媒体に対する理解の仕方などをたずね、利用者の情報受信力を確認した。
(研究成果T)
発信者側のバリアとして看板などに英語表記しているが、その情報自体へのアクセスが悪いことがわかった。受信者は来日目的によって生活環境の特徴が違う事がわかった。インターネット、同郷のコミュニティーによる情報収集が多い。「やさしい日本語」であれば理解ができたり、日本人を含む英語がネイティブでない住民でも理解できる「わかりやすい英語」の活用が出来ることがわかった。
どこを一番初めの情報のアクセスポイントとするかの確定や、駅の避難経路を遠くから誰が見てもわかるよう英語や図を多く入れることによって可視化することが必要である。日頃アクセスしている情報源に生活情報や防災情報を加える事が有効と考えられるまた、他の地域活動と有機的に組み合わせて日頃から多文化共生の街づくりを推進し、地域住民に見えないバリアを意識してもらえるかについても考えていく必要があることがわかった。さらに、近年、人々の情報入手方法が多様化する中、様々な災害の教訓に基づいた情報が発信されているが、このような専用サイトへは目的がなければアクセスしない。また、災害時は地域の細かい情報は口コミ、メールのコミュニティレベルで得ていると同時に、これまでに多くあった紙媒体による情報発信では新たなコンテンツを追加できない、内容を更新できない、部数に限りがあるなどの限界が明らかとなった。(図1-2)
(研究手順U)
K市をモデルに「地図情報を中心とした日常生活情報サイト」を作成、運用を試みることを目的とし、日本に住む外国人が既に災害に関する情報をどのように得ているかを把握し、日常生活情報の他、災害の備えとしてどのような情報を必要としているかということを明らかにすることにした。
K県において、JETプログラムの外国語指導助手のうち研究主旨を説明し、同意を得られたもの63名に対し、インターネット質問票を配布収集し、日ごろ活用したい情報や、災害時に必要としている情報を自由記述形式でたずねた。
(研究成果U)
日常生活で既に活用している便利なサイトで最も多かったのは、Google 検索であった。次いで英語の乗り換え案内、Wiki travelなどの旅行に関する情報サイトであった。また、母国政府のサイトをよく使うという意見もあった。一方、必要な情報として、バスの時刻表、病院の情報が挙げられ、特に救急病院、開院時間、英語の通じるスタッフのいるところが必要であることがわかった。更に災害時に必要な安心につながる情報として、交番、病院、避難場所が挙げられた。(表1-2)

本研究より、日本に暮らす外国人が安心して暮らすためには、公共交通機関の情報や、低頻度大規模災害に関する情報提供を細やかに伝えることが示唆された。(図3-4)

(図表)図. 1  図.2 表1 表2 図.3 図.4

図1 図2(写真3点)

左写真 図. 1 日本語が読めない人には上のように見える。言語表記をしている看板は多い。読むには大きさが不十分である。
 右写真 図.2 重要な情報が日本語のみであったり、多言語表記の内容が直訳の長文で、内容を検討していない理解困難なものが多い

 

左 表1 よく使うサイト 右 表2 もっていると安心な情報

 

 

 

左 図.3 外国人が緊急時に役立つ生活地図情報案   

右 図.4 生活情報×防災情報/日常使用×緊急使用サイトのコンテンツ  

 

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