バリアフリー推進事業

平成24年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 中間報告

研究助成名

多文化共生社会の災害情報に対するバリアフリーモデルの構築(3-一1)

研究者名

高知県立大学 神原咲子

 

研究内容

I初年度は、駅や公共交通機関、観光地、病院、大学、等にある防災や緊急時の避難経路に関する現在の情報発信内容や方法を整理した。(分析中)

II先行研究の3つの情報弱者パターンのうち、言語バリアがあると考えられる日本に住む外国人に焦点を絞り、情報受信力を確認するため、2011年3月11日に発生した東日本大震災及び9月に被害の大きかった台風12号の体験も踏まえ、災害を例に現在の在日外国人の生活の実態及び、医療の実態、災害に関する考えについてインタビューを行ったものの内容を整理した。
某市内に住む外国人39人をと対象とした。内訳は女性26人、男性13人であった。出身国別では、ベトナム15人、中国15人、バングラディッシュ2人、アメリカ2人、ウクライナ1人、インドネシア1人、ブラジル1人、ペルー1人、マレーシア1人であった。来日理由は、国際結婚5人、出稼ぎ家族12人、出稼ぎ本人5人、研修生6人、仕事7人、インドシナ難民2人、留学生1人であった。
内容分析の結果、情報受信力には言語バリアや属性により特徴を持つことがわかった。
(1)国際結婚
国際結婚で来日する外国人は長期間日本で生活する覚悟をしている。したがって必然的に日本語を話せるよう努力する傾向にあり、日本に来てからの期間が長い人ほど日本語が話せるようになっていた。国際結婚者には核家族が多いが、日本人の家族が日常的に見るテレビの内容を伝えてもらい、解らないことを聞くことができ、日本人の感覚と似た情報を手に入れることができる。日本語がすこし話せるようになると、地域の自治会や地域の日本人と交流して、日本の事や情報を聞いたりしている。
(2)出稼ぎ本人
会社での労働など日常的に日本語を話さないといけないため、年数が長いほど日本語の力がある。コミュニケーションや仕事を覚えていく中で日本語も次第に上達していくことができる。本人や周囲の意識があれば会社でのコミュニケーションによって繋がる機会がある。会社での友人や頼れる日本人や同じ母国の友人などは少ない。
情報はパソコンのインターネットやテレビなど自身で得ていた。昼間は働きに出ているため、会社内の緊急情報は得られる。
(3)出稼ぎ者の家族
来日年数によっての言語レベルの差がある。2年が一つの境となっているようである。2年以上の人はやさしい日本語であると理解できる人もいる。2年未満の人中にはほとんど話すことも聞くこともできない人もいた。長年住んでいる人の中には住んでいる地域の生活にある程度なじんで地域の行事に参加している人もいた。テレビから情報を収集していた。普段から地域の避難訓練等に参加し、避難場所も避難経路も理解している人もいた。
(4)研修生
言語レベルは年数が長いほど高い。仕事を覚える時や仕事場で日本語を使う機会が多い。会社の中では務内容の会話はあっても社内での日本人との日常会話は少なく、生活範囲は会社と寮のみである。生活範囲は会社と寮のみである。寮では同じ国の人々数人から十数人の団体で住んでおり、ほとんど地域との関わりはない。困ったことがあった場合は一緒に住んでいる者同士で問題解決する。情報収集もテレビかパソコン、会社から日本のことや母国のことなどでの情報収集をした。台風時、働いていて台風情報を入手できなかった人もいた。若くてリテラシーレベルをある程度持っている人が多いが、会社の中で日本人とはほとんど話さず、母国が同じ者同士や同じ境遇の者同士での問題解決などを行っている。
(5)転勤等(正規雇用)
周囲に日本人が多くいて、会話する機会が多いため、日本語のレベルは来日年数が少ない時から高い傾向にあり、日本の大学や大学院の学歴を持つ人々もいた。困った状況においては、知り合いや知り合いの日本人に助けてもらったりとサポートをしてくれる人や頼れる日本人が存在し、自身が外国人のサポートする存在になったりという人もいる。
(6)インドシナ難民
対象の地域には多く、インドシナ難民が住んでいる。対象の地域にはインドシナ難民が多く住んでいる。この難民1世の人々は来日して約30年近くになる。日常会話についてはやさしい日本語が話せる人がほとんどであった。テレビから情報を収集していた。日本語が十分に話せることから、来日して困っている人々に対しての医療通訳を行ったり、在日外国人の多い学校の先生などへの外国語教室なども行っている人もいた。
(7)留学生
留学生は日本に来る前から日本語の勉強をしていたり、日本語で授業を受けることができる言語レベルである。情報収集については、テレビ、学校の友人から情報を収集していた。日本での生活の中では学校などでサポートをしてくれる人いる。 

以上のようなインタビューも踏まえ災害情報提供のあり方について言語・文化・社会的な視点から議論した。
(1)言語的バリア
ほとんどのものは、家の中での決まった方法や相手からしか、情報が得られず、公共施設に行った場合に頼るものが少ないことがわかった。言語的な問題として、やさしい日本語は理解できるが新聞やテレビ等の日本語は難しく理解が出来ない、聞き取れないものが多いことがわかった。また、自身の日本語能力への不安から日本人とのコミュニケーションが少ないことがわかった。地域ローカルの放送が聞き取れないという意見があった。同じ地域の住民なのに同じ情報が得られないのは権利が損なわれていることにつながる。
日本の公共施設で働くものの多くが英語やその他の言語コミュニケーション能力が低い。観光以外の非常時の専門知識を持った通訳はその場にいることは少ない。
減災では多言語インターフェイスのホームページなどが普及してきた。更にはやさしい日本語であったり、ルビをふった形でのシンプルな表記は、情報収集から翻訳までの時間が短縮され、正確に直訳が出来ることにもつながる。一方日本の政府が出した文書は読み難く、母国語のインターネットに限られる。近年本人同士でも近隣の人とのやり取りが難しい中、日本人同士近くにいるものにちょっと尋ねることが難しい中、外国人が地域コミュニティーに入っていく事さらには難しいと考えられる。研究対象者の情報受信の場所(方法?)はインターネット上に偏っていたため、得られる情報にも偏りが生じる恐れがある。情報提供の場所が、インターネット上に偏っており、それによって情報を得る外国人も偏りが出てくるかもしれない。
(2)地域住民の文化的バリア
次に、国によってこれまでに受けきた防災教育や公共サービスが違う中で、宗教の違いから時間の感覚、災害の対処方法、様々な事に関して捉え方が異なり、情報に関しても考え方や捉え方が違う。異文化理解を深めるために公共サービスでは市民など在日外国人の住む地域住民の理解や意識変容が重要であり、そのためには市民間での意見交換の場を設けたり、お互いの意見を自由に主張し合える場で、ニーズを充足することでお互いの考えている事や価値観、習慣の違いなどが理解でき、より安心して過ごせる場となっていくことが出来るのではないかと考えられる。日本政府・総務省は「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認めあい、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きてゆくこと」地方自治体の多文化共生への取り組みは、教育や医療など切実な問題を現実に抱えている地方自治体のほうが、政府より早い対応をしており、その過程のなかで多文化共生への取り組みを続けてきていおり、その理念には大きな違いはない。学校や駅など外国人が日常的に通る場所などに情報提供場所を提供することは、今までコミュニティー間での情報交換から地域全体の中からの情報提供としてとらえることの近道になると考えられる。
大学生や市民のボランティアの繋がりを増やしていく事や、通訳として人員の問題やコストの問題に対してもサポートが必要ではないかと考えられる。 対象者から、「ここは危ないから逃げて!」等やさしい日本語で教えてもらえるとわかりやすいという具体的な意見もあった。まずは各公共施設の意識のグローバル化を促進していくことが必要かもしれない。
次年度は、場所の違いによる災害情報のニーズとバリアを打破するユニバーサルデザイン化を検討するため、現在、専用ホームページ(以下HP)及び施設にて調査員が紙面にて質問し調査を行っている。質問紙で用いる言語は、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、韓国語、やさしい日本語である。 合計約500名の研究協力者を得ることを予測している。

図1知的障がい者の交通コミュニケーションを起因とする課題が単独行動可否と活動頻度に与える行動モデル(仮説)図1知的障がい者の交通コミュニケーションを起因とする課題が単独行動可否と活動頻度に与える行動モデル(仮説)

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