バリアフリー推進事業

平成23年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 成果報告

研究助成名

首都圏鉄道駅における乗換利便性の経年変化分析と計画停電がバリアフリー喪失に与える影響 (237−社6)

研究者名

東京理科大学土木工学科 寺部慎太郎

キーワード

駅構造調査,歩行空間ネットワークデータ,乗換利便性,鉄道乗換時のバリアフリー

研究内容

(研究目的)

    首都圏の乗換主要駅256駅を対象とし,路線間の最短乗換経路の所要時間,移動距離(水平・垂直),エスカレーターの設置状況,段差・手すり・スロープ設置状況等を調査する「駅構造調査」を実施し,2005年度に行った同種調査と比較することで,過去6年間にどれほど乗換利便性が改善されたか明らかにすること.

    同時に乗換輸送人員の統計を用いることで,震災後の計画停電や節電によりエスカレーターが停止した際に影響を受けた乗客数や,階段利用により余計にかかった所要時間等を推計すること.

    (研究手順)

    1.「駅構造調査」の企画・実施

    • 「駅構造調査」を企画し実施した.対象は,東京駅から半径40km以内に位置する主要な乗換駅を256駅である.
    • 調査項目は「歩行空間ネットワークデータ整備仕様案(平成22年9月国土交通省)」を参考にし,経路の種類,経路長,方向性,通行条件,有効幅員,路面状況,段差,階段段数,手すり,屋根の有無,視覚障害者誘導用ブロック,扉の有無とする.これらは,鉄道事業者の許可を得ることなく調査員が乗客の邪魔にならないように歩測や目測で調査できる項目とした.
    • 44名の学生調査員が,2011年7月11日(月)〜2012年1月27日(金)にかけて,対象駅の降車ホームから乗車ホームまでの乗換経路を,歩測・目視により実測した.

    2.乗換利便性の変化に関する分析

    • 路線間の乗換経路の所要時間,移動距離(水平・垂直),エスカレーターの設置状況について,2005年度の調査結果と比較することで,乗換利便性がどう変化したか分析した.

    3.計画停電や節電がバリアフリーに与える影響の試算

    「駅構造調査」で得られたエスカレーターのリンクが,計画停電や節電により途絶したと想定し,代わりに階段を利用することにより余計にかかった所要時間等を推計した.それに加えて,大都市交通センサスの乗換輸送人員表から,各乗換経路の利用人数を算出したものを用いて影響を被ったであろう乗客数を推定した.

    (研究成果)
    駅構内地図や一次データシートより,リンクデータとノードデータとして整理することで,対象駅の乗換所要時間やバリアフリーの程度を分析できるデータベースを構築することができた.

    総リンク数7149個のうち,通路は5038個,階段のリンクは1816個,上りエスカレーターは908個,下りエスカレーターは533個,スロープは62個,動く歩道は8個となっていた.

    階段の段数別に集計したところ,30段〜35段未満の階段が最も多く最短乗換経路内に数多く存在していることがわかった.また,階段とエスカレーターが併設されている数についても同様だった.しかし,この両者の数を比較すると,階段のみであるリンクの方が2倍以上多いことがわかった.さらに,段数別に見ると,段数の多いところすなわち高低差が大きいところほど,エスカレーターの割合は多いことがわかった.

    段数別に集計した階段リンクの度数分布

    図 段数別に集計した階段リンクの度数分布

      階段のリンク1816個のうち,右手すりは1707個,左手すりは1711個,中手すりは393個となっていた.右,左の手すりは共に併設されていることが多い.また,手すりが皆無である階段のリンクは,1816個中92個存在していた.
      • 過去6年間で駅構内の構造が変化していない駅から無作為抽出して,乗換時間の差の平均二乗誤差を求めたところ,49.494(s)となった.すなわち,現時点では2005年度に行われた「駅構造調査」の結果と比較することで,過去6年間にどれほど乗換利便性が改善されたか明らかにすることができないこととなった.この誤差は,発着ノードの定義を「ホーム中心」から「停車車両の中心」へと変更したことに起因すると考えられるので,今後補正値を算出する必要がある.
      • 震災後の計画停電や節電によりエスカレーターが停止した際に影響を受けた乗客が,階段利用により余計にかかった所要時間を推計したところ,震災後75日間調査対象の284駅内で全てのエスカレーターが停止したと仮定した場合の乗換所要時間が余分にかかることによる経済損失は,約2481億円と見積もられた.また階段利用による消費カロリーの増分は,約11.5万kcalと推計された.

      1.  

 

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