市民提案型バリアフリー基本構想の作成プロセス及び制度等の課題の基礎的研究 (237−社5)
東洋大学 神吉 優美
バリアフリー法 バリアフリー基本構想 市民参加 市民提案制度
(研究目的) 「バリアフリー法」において、バリアフリー基本構想(以下、基本構想)の市民提案制度が創設された。しかし、現在に至るまで数事例にとどまっているのが現状である。そこで本研究では、そのプロセスおよび制度等における課題を把握することから、市民提案が進まない要因を明らかにし、市民が提案しやすい手法を見出すことを目的としている。
(研究手順)
(研究成果)
1.市民提案制度の課題 市民提案制度の課題を<市民><行政><制度等>別にまとめる。 <市民> ・多大な時間・労力を出せる当事者の存在 ・多様な人々の意見を取り入れる仕組み ・障害種別をまたいだ当事者によるグループの形成 ・異なる種別の障害者間の相互理解 ・議論を統率して活動を推進できる力のあるリーダーの存在 ・当事者の思いをアウトプットできる事務処理能力 ・専門知識の獲得 ・情報保障(点字資料の作成、手話通訳の手配等) ・活動費 <行政> ・基本構想に取り組むマインド ・市民提案を積極的に活用しようという姿勢 ・担当部署の明確化 ・縦割り行政ではなく、福祉部局・都市計画部局等の横の連携が必要 ・住民提案を受けた際の手続きの規定がなく、受け入れ体制が不十分 ・市民提案から基本構想に至るまでのプロセスの明確化 ・財政難 <制度等> ・分かりやすい基本構想作成の手引きがない ・市民が相談できる窓口が自治体以外にない ・市民提案が出された時に審議する第三者機関がない 2. 市民提案を出しやすくするための手法 @アドバイザー派遣制度の創設 市民グループが基本構想を作成することは技術的に困難なことが予測される。市民グループに法律や基本構想等に関する知識や情報を与えたり、基本構想の作成を支援したりする実践的なコンサルタントを派遣するアドバイザー派遣制度を創設する。 A活動費の補助制度の創設 会議の開催、提案書のまとめ作業等の外部業者への委託、点字資料の作成、手話通訳の雇用等のための活動費を補助する制度を創設する。 B自治体の基本構想に対するマインドの醸成→受入体制の構築 近年、基本構想の策定件数が減少傾向にある。市民提案制度についても消極的な自治体が多い。市民提案に対する市町村の対応・体制についての意識啓発が必要である。市民、事業者、行政が参加するユニバーサルデザインに関する勉強会を開催したり、国が自治体に対して働きかけたりすること等が考えられる。そして、行政は市民提案がなされた時の受入態勢を整えておく必要がある。 C担当部署の明確化と継続協議会の設置 基本構想が策定された後も協議会を継続するとともに、担当部署を明確化する。 D市民提案から基本構想に至るプロセスの明確化
市民提案の枠組みのモデル