バリアフリー推進事業

平成23年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 成果報告

研究助成名

バリアフリー基本構想における住民参加と住民意識の調査 (237−社3)

研究者名

ウエストナウ企画 今西 正義

キーワード

市町村基本構想、住民参加

研究内容

(研究目的)
バリアフリー基本構想は全国各地で様々な方法で作成・実施されている。基本構想の策定では様々な段階で住民参加、利用者参加が原則である。しかし、国土交通省の調査によると住民等の意見を反映するための措置としてワークショップ実施が7割にも達していない。このことから東京都他の基本構想における住民参加の実態を調査し現状を取りまとめると共に地域住民の意識調査をすることで問題点の抽出を行い、今後の住民参加、住民提案の課題、その手法を明確にする。

(研究手順)

2011年度計画(調査対象:東京都)
・プレ調査(7〜8月):基本構想の作成や実施など過去の文献を分析、ヒアリング調査を行い本調査のためのプレ調査を行う。
・区市の住民参加調査(8月〜9月):各段階での住民参加や住民提案について区市の考え方や住民参加の実施状況について東京都64区市町村にアンケート調査を行う。
・区市のヒアリング調査(9月〜12月):アンケート調査を元に10区市を選定し、住民代表委員がどのように選ばれ、どのような役割を担ったか、住民参加や住民提案、作業内容、今後の可能性等についてヒアリング調査を行う。
・参加住民への住民意識調査(9月〜12月):基本構想策定時や特定事業計画の協議会の住民委員がどのようにして選考されたか、その経過、住民委員の役割、意義等のアンケート調査とヒアリング調査を新宿区、北区、荒川区、調布市、三鷹市、八王子市で実施する。
・中間とりまとめ(12月〜2月)

2012年度計画(調査対象:全国)
・全国住民参加調査(4月〜7月)各段階での住民参加や住民提案について全国の区市の考え方や住民参加の実施状況についてアンケート調査を行う。
・全国先進自治体の調査(6月〜9月):全国3か所で、参加住民への住民意識調査と市町村のヒアリング調査を実施する。
・研究取りまとめ(9月〜2月)

全国住民参加の調査分析および東京都住民参加調査との比較検討を行うにあたって、共同研究者に加え外部より障害当事者・住民の立場からの広い見地を得るため委員会を設置する。委員会は外部委員3名程度と共同研究者との5〜6名で構成し、計3回の委員会を開催し検討を行うものとする。

 

(研究成果)

  1. 「バリアフリー基本構想実施のおける住民参加と住民意識調査」の2年目として、基本構想策定済みの全国の市町村を対象にアンケート調査を行った。また、豊中市、名古屋市、土浦市の3市で担当者、住民より住民の参画についてヒヤリング調査を行った。
    1)アンケート調査
    ・「市町村バリアフリー基本構想住民参加アンケート調査」
     全国のバリアフリー基本構想策定公表済み243市町村(2011年10月現在 )を対象に市町村担当者に対し、協議会、パブコメ、まち歩き、ワークショップ、計画等の各段階での住民参加や住民提案について市町村の考え方や住民参加の実施状況について、アンケート調査を実施した。そのうち147市町村から187基本構想から回答があり回収率は60.49%であった。
    2)ヒヤリング調査
    ・豊中市、名古屋市、土浦市の3市で担当者、住民より協議会、推進委員会等へどのような住民がどのようにして選考され、関わり方など、また、どのような役割を担ったか、住民参加や住民提案についてヒアリングを行った。  
     今回の調査より見えてきたことは、旧交通バリアフリー法とバリアフリー新法の下で、9割近くの基本構想で協議会や委員会が設置され市町村の基本構想策定報告書が作成されていること、また、担当窓口を土木やまちづくり以外のいわゆる福祉系の部署が1割弱あった。報告書の作成にあたっては、協議会や、アンケート調査、ヒアリング調査、まち歩き、ワークショップ、パブリックコメントなどさまざま参加の機会が設けられた。協議会への住民参加では、障害者や高齢者、町会関係者等による参加形態多くのところで参加した、しかし、一般公募や子育ての人たちでは1割にも満たなく、外国人にいたっては4協議会でしかなかった。なお、住民抜きに協議会が設置されたところが1割にもおよんでいることも明らかになった。
    ・障害者の参加のなかでは、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害の各団体から1名づつで平均3名〜4名が3割程度であった。各団体からはおおむね会長や代表等が委員となっているが、地域の現状や課題を把握していなかったり、まったく発言をしなかったりと、単に団体の会長や代表ということによる推薦であった。
    ・協議会の在り方では、規模に関わらず多くの協議会が形骸化しており、しっかりした議論がされていないところが多く、事務局からの提案に対し住民からの意見も少なくそのまま何事もなく承認がされたり、住民からの事業者への質問があっても直ぐに的確な回答が得られなく持ち帰りになったり、単なる報告会で終わっている協議会は珍しくない。
    ・協議会以外の参加手法としてのアンケート調査、ヒアリング調査、まち歩き、ワークショップ、パブリックコメントなどでは、まち歩き155件(28.86%)、アンケート調査107件(19.93%)、パブリックコメント102件(18.99%)、ワークショップ102件(18.99%)、ヒアリング調査52件(9.68%)の順であった。そのなかで意外にもワークショップの順位は低い、現場で多様な住民とさまざまな立場の人たちとの地域の現状、整備や配慮等の気づきの発見をするなど、課題を共有することができるワークショップついて十分に理解が進んでいない。また、住民参加がない基本構想で行政・事業者等の関係者メンバーで実施するワークショップに、どのような意味を持つのか疑問である。なお、パブリックコメントについても集る意見が少数しかなく、告知の方法を含めてあり方を検討する時期となっている。
    ・基本構想は、報告書を作成することが目的ではない、基本構想を作成のために設けられた協議会は、一旦は解散したとしても報告書に書かれた計画は実行しなければならない。そのため多くの基本構想で、事業計画の進捗報告や評価を行う場として名称はさまざまだが、「推進協議会等」が設けられ、特定事業計画にそって住民が参加して実施されたものや進行中のものは、116件(53.70%)であった。しかし、協議会を解散したままのもの、どの過程にも住民による検証や評価がされていないもの73件(33.80%)、不明27件(12.50%)と、3割以上が住民不在の基本構想であった。
    ・基本構想では、報告書づくりから、特定事業計画、施工実施、事業完了およびその後の評価、検証まで、その全ての過程において住民参加が果たされなければならない。しかし、
    総じて運営側の基本構想の取組への考え方で、「住民参加の必要性を感じなかった」「各管理者により計画・実施されており、事業について市が管理しているわけではないため」など無理解や、また、担当する市町村事務局担当者の力量の弱さは否めない。この長期間におよぶ事業のなかで、数回にわたり担当者が代わり最初の思いや問題や課題、ノウハウ、住民との繋がりなど、引き継ぎがきちっと出来てなく、担当者により大きく進め方が左右されてしまう。
     市町村による基本構想策定への協議会等の設置は9割近くと高い割合で実施されており、協議会等の設置の可否について基本構想策定では無条件で設置させるべきと考える。また、協議会等の在り方として、実質的な議論ができる形態に変えてる必要があり、全体の規模の見直しと住民の位置づけを明確にすることが重要とされる。協議会等の委員構成では、住民を必ず半数以上を入れると共に、委員の代表制については事業者および住民共に地域の現状や問題をきちっと把握していることや、適切な意見・提案をその場で発言できる人材で構成すること。また、住民の人選についても高齢者や障害者、町会関係者に加え子育ての人を多く入れたり、広く人材を募る意味でも見地のある公募や他住民を活用するなど柔軟な姿勢による活性化が求められる。なお、協議会等の活性化では、住民の意識のレベルアップ、事務局の担当者のスキルアップのための職員研修や、座長についても知名度だけではなく地域に密着した実情をよく把握した学識経験者等を積極的に登用するなど市町村の意識の変革が欠かせない。

      実りある基本構想を完了させるためには、協議会等を形骸化させないための工夫が必要とされる。半数近くの市町村では基本構想策定後に協議会を解散したままとなり、特定事業計画への進捗管理や評価がされていない。そのためにも継続した新たな委員会を設置し計画、施工、評価等の各プロセスへ住民の積極的な関与を果たせるよう緊張感のある仕組みづくりと住民の役割の明確化が重要かつ必要とされる。

 

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