三陸沿岸には、山間部が沿岸近くまで迫り出しているV字型地形が多く見られ、その近辺に居住する住民は津波来週時の非難において、急峻な避難路の登坂を余儀なくされる。しかし、津波被害にかかわらず避難者の登坂に伴う負担を明示的に考慮した避難計画については、まだ十分な知見が蓄積されているとはいえない。
本研究では、岩手県宮古市田老地区を対象に、避難者個人の避難行動に着目し、登坂が避難行動に与える影響やそのことを考慮した避難計画の立案の可能性について研究する者である。住民らとともに個人を対象とした避難訓練を実施し、避難場所に至る避難路の歩行や登坂が、避難時間や身体に与える影響を調べようとするものである。
具体的には、避難路の地形(標高と平面距離など)、避難訓練被験者の属性(性別、年齢など)を考慮し、避難所要時間や避難速度との関係等を把握することを通して、津波来週時の個人の避難場所や避難路の選択を支援するとともに、個人の身体状況を考慮した安心して実施できる避難計画の立案につなげることを目的としている。
また、地域における住民間のつながりに基づく共助が、避難の実効性を高めるとの観点から、津波避難におけるソーシャル・キャピタルの醸成の重要性を明らかにする。戸別訪問によるアンケート調査に基づき、ソーシャル・キャピタルが防災意識に与える影響について分析を試みる。 |