バリアフリー推進事業

平成22年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 成果報告

研究助成名

階段踊り場における視覚障害者誘導用ブロックの効果的敷設方法の研究(252-3)

研究者名

財団法人鉄道総合技術研究所 大野央人

キーワード

視覚障害者誘導用ブロック、ホーム縁端警告ブロック、交差点横断、方向定位

研究内容

研究目的

階段は視覚障害者が歩行する際に最も注意を要する箇所のひとつであるが、踊り場における視覚障害者誘導用ブロック(以下、ブロック)の敷設方法はガイドライン類に明示されていない。先行研究1)は踊り場の長さが2.5m以上の場合にブロックを敷設することが望ましいと報告しているが、視覚障害者の歩行能力等に個人差があることを考慮すると、踊り場の長さがこれより短い場合でもブロックの敷設が望ましい可能性がある。そこで本研究は、長さが2.5mより短い踊り場におけるブロックの敷設方法を、敷設の必要の有無も含めて検証し、その結果を先行研究1)の知見と総合して、踊り場の長さに応じたブロック敷設方法を提案することを目的とした。

 
研究手順

41名の視覚障害者を被験者として、4種類の実験(検討T〜W)と2種類のヒアリング(検討T〜W)を行った(表1)。実際はいずれも踏み外しの危険がある降り歩行について検討した。検討Vにおいては、「踊り場に降りた所」と「踊り場から降り始める所」(定義は図1を参照)に表2に示す各パターンでブロックを敷設して検討した。

研究成果

1.ブロックの敷設が必要になる踊り場の長さ(図2)
踊り場が長くなるほどブロックの敷設に肯定的な意見が増加する傾向が見られた。肯定的な意見の割合が否定的な意見の割合を上回る踊り場の長さは、「踊り場に降りた所」で約2.3m、「踊り場から降り始める所」で約1.3mであり、両者の間に約1mの開きがあった。これは2つの場所におけるブロックの必要度の相違を反映していると考えられる。
2.2列のブロック間に確保すべき最低間隔
2列に敷設したブロックに直交して歩く場合、ブロック同士の間隔が広くなるほど「2列あることがはっきりわかる」という回答の割合は増加し、その割合は間隔が60pの場合に約95%に達した。このことから「踊り場に降りた所」と「踊り場から降り始める所」にブロックを敷設する際(表2にパターン1とパターン3)には、ブロック間に最低60pの間隔を確保する必要があると考えられる。
3.踊り場の長さと好ましいブロック敷設パターンの関係(図3)
安全上の好ましさの観点で表2に示した敷設パターンを比較したところ、踊り場の長さによらず一貫して評価が高かったのはパターン4(降り始めるところのみ30pの奥行きで敷設)であった。パターン5(非敷設)は踊り場の長さが1.2mの時は評価が高かったが、踊り場が長くなるにつれて急速に評価が悪化した。パターン3(降り始めるところのみ60pの奥行きで敷設)は踊り場が短いときは物理的に敷設できないが、敷設可能な場合には評価が高かった。パターン2(降り始める所のみ60pの奥行きで敷設)とパターン1(降りた所と降り始める所に60pの奥行きで敷設)は終始評価が低かった。
4.視覚障害者が階段の終了と感じる平坦部の長さ
平坦部の長さが約3mを超えると、「同じ階段の中にある踊り場」と感じる視覚障害者より「2つの階段をつなぐ通路」と感じる視覚障害者の割合が多くなる傾向が見られた。つまり、長さが3mを超える踊り場では「踊り場に降りた所」は「階段の下端部」と感じられ、「踊り場から降り始める所」は「階段の上端部」と感じられる。先行研究1)では階段の上下反歩のブロック敷設方法を「60pの奥行きかつ30pのセットバック」と提案しており、「踊り場に降りた所」と「踊り場から降り始める所」にこの敷設方法を適用すると、それは表2のパターン1に相当する。
5.視覚障害者が使いこなせる場合分けの上限
踊り場の長さに応じてブロックの敷設方法を何段階かに違える場合を想定し、混乱なく使いこなせる場合分けの上限数について視覚障害者に質問したところ、「2〜3段階以上」との回答が過半数を占めたが「2段階が上限」との回答も4割程度見られた。このことから踊り場の長さに応じた場合分けは2〜3段階に留める必要があると考えられる。
6.視覚障害者が踊り場で経験した不安全事例
視覚障害者が踊り場で経験した不安全事例を分析したところ、踊り場で踏み外したり踏み外しそうになった事例には「踊り場に降りた所」のブロックを階段の下端部と誤認したケースが多く見られた。特に踊り場が短い場合にこの種の誤認が起こるリスクを排除する必要があると考えられる。
7.以上の結果を総合した結果、踊り場の長さに応じて3段階に区分する敷設方法(表3)が適当と考えられる。
引用文献1)国土交通省:視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究報告書、2010

 

用語の定義

図1 用語の定義

 

表1 検討した項目

検討した項目

 

表2 検討Vで比較した敷設パターン

検討3で比較した敷設パターン

 

踊り場の長さとブロックの必要性に関する回答割合

図2 踊り場の長さとブロックの必要性に関する回答割合

 

踊り場の長さとブロック敷設パターンの評価

図3 踊り場の長さとブロック敷設パターンの評価

 

表3 踊り場のなさに応じたブロックの敷設方法

踊り場の長さに応じたブロックの敷設方法

 

バリアフリー設備のご紹介

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