バリアフリー推進事業

平成21年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 中間報告

研究助成名

活動機会の確保水準に着目した広義のバリアフリー評価指標の開発と地域公共交通計画への利用法(344-8)

研究者名

神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻 教授 喜多 秀行

 

研究内容

交通は,多くの場合本源需要ではなく派生需要である.すなわち,交通サービス自体に価値があるというよりはむしろ交通サービスによりさまざまな活動機会を得ることに価値があると考えるべきである.したがって,活動機会にアクセスする際の空間的・物理的バリアを軽減する手段としての交通サービス,とりわけ公共交通サービスの評価を行うためには,それによりどれだけの活動機会が確保し得たかを評価することが必要となる.
 このような観点から,本研究では,まずアクセシビリティ研究に関する文献レビューを行い,既往のアクセシビリティ指標が公共交通に特有の時間的・空間的制約を適切に考慮し得ないことを指摘した.次いで,あるダイヤの下で選択しうる移動パターンの多様性の大きさ(移動の組合せパターンの数)に着目することにより,活動機会の獲得水準を評価しうるという考え方に基づき,公共交通が有する時間的・空間的制約を明示的に考慮しうるアクセシビリティ指標の基本モデルを開発した,
 さらに,1日あるいはある一定期間の中で活動機会が時間的に偏在することや,待ち時間やバス停等へのアクセス距離といったバリアの程度が個人属性(年齢等による移動能力や時間価値等の差異)により異なることなどを適切に反映しうるよう,モデルの改良を行うとともに,人々の活動機会の獲得実態に関する調査や種々のバリアに対する認識に関する調査に基づく分析など,実証的な検討をも並行して行った.また,提案したアクセシビリティ指標を用いて,所与の便数の下で活動機会の確保水準を最大化するダイヤを選定するための手法の開発にも着手し,すでに一部成果が得られている.
 これらの成果は,土木学会や交通工学研究会等で発表するとともに論文として公表しており,現在発表の準備を進めているものもある.このように,研究は当初の予定どおり概ね順調に進んでおり,次年度においても引き続き研究を進めることにより有意義な成果が得られるものと考えている.

 今後は,アクセシビリティ指標の改良など活動機会の確保に関わるバリアの評価方法をさらに拡張するとともに,地域公共交通計画への利用を図るため計画指標の開発を進め,ひとつの計画方法論としてとりまとめを行いたいと考えている.

 

バリアフリー設備のご紹介

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