本研究は、子育て中の親が、外出活動を含めた日常生活活動を行う上で直面するバリアの内容の体系的な整理を行うことを目的とし、それらのバリアを緩和するために有効な具体的施策および都市・交通・福祉・教育等の多様な行政部局間および企業やNPOとの適切な連携・役割分担のあり方等について検討を行うことで、我が国の子育てバリアフリー政策の方向性を示すという意義がある。
本年度は、子育て経験の違いによる子育てに対する意識の違いを把握した。つくばと東京に居住する子育て従事者および非従事者を対象とした調査の結果、子育て従事者に関しては、公共交通機関のこども連れ利用が周囲の乗客にとって迷惑なものであり、周囲の乗客は見守ってくれていないと感じているほど公共交通機関のこども連れ利用意図は低いということが明らかになり、意識情報と公共交通機関に関する事実情報を提供することで、その「心理的バリア」を軽減させ、こども連れ利用意図を活性化させることが明らかになった。
また、保育所へ入所できない待機児童の解消にも貢献する、事業所内保育所の実態と利用意向を明らかにした。東京都心部を対象とした調査の結果、事業所内保育所利用者については、勤務先近辺に居住する人が多数を占めるが、鉄道通勤者は自宅近くの保育所への入所を希望していることがわかった。一方、自宅付近の保育所利用者の中でも、長時間勤務者、徒歩通勤者、短時間乗車の鉄道通勤者は、事業所内保育所が設置されれば利用を希望する人の比率が高いことが明らかとなった。
今後は、今年度の調査結果も踏まえた上で、我が国および福祉先進国における、法・制度や施策に関する資料・文献調査、および行政担当者に対するメールインタビュー調査を中心に研究を進める予定である。 |