バリアフリー推進事業

平成20年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 完了報告

研究助成名

安全安心な歩行路面の確保に関する基礎的研究(248-7)

研究者名

中部大学工学部 磯部 友彦

研究内容

(研究目的)

バリアフリー新法の施行とそれに基づく各種の基準・ガイドラインの整備や、自治体における条例等を再整理により、行政、実務者、当事者などが協力して福祉のまちづくりを推進していくための基礎的情報は充実した。しかし、バリアフリー整備の実態を詳細に検討すると、未検討の内容や未整備の基準が存在している。そこで、本研究は安全・安心・快適な歩行路面の確保に寄与するために、「すべり」「凹凸」「振動」「衝撃」などの残されている検討課題に取り組むものである。国内外の基準等を整理し、歩行路面にどのような性能を要求すべきかを検討する。

 

(研究手順)

・事例調査(国内外の路面性能に関する基準について、「振動」、「衝撃」の暴露状況について)
 ・ヒアリング調査(路面舗装、建設材料、歩行補助具などのエンジニアに対して)
 ・計測(モデル対象路線での「すべり」、「凹凸」の実測の試み)
 ・アンケート(モデル対象路線での歩行者、車いす使用者に対して)
 ・試験路面による歩行実験(すべりやすい路面の作成とその評価)

 

(研究成果)

1.歩行空間のバリアフリーへの課題
a)歩行路面の持つ課題
歩道などの歩行空間の通行幅の確保、段差の解消など、連続した通行の可否に関する検討は進んでいる。一方、同一平面での転倒事故による死亡者数が特に高齢者に多い。転倒防止対策の検討要因として、靴などの履物、杖などの福祉用具、車いすなどの使用する機器・道具類の性能といった「個別要因」と、天候、明るさ、路面の状態といった「環境要因」がある。環境要因の整備として、安全な歩行路面の性能確保が必要であり、そのために歩行路面の状況の測定と評価方法の確立が必要である。
b)歩行空間の性能基準
「バリアフリー新法」に基づく「道路の移動円滑化基準」や「道路の移動円滑化整備ガイドライン」では、歩道の横断・縦断こう配を所定の数値以下にするよう定めている。しかし、歩道の舗装指標は厳密には設定されておらず、社団法人日本道路協会発行の「舗装性能評価法 別冊 ?必要に応じ定める性能指標の評価法編-」(2008年3月)で、「すべり抵抗値」、「平たん性」、「段差」、「衝撃吸収性」、「弾力性」、「透水性」、「景観性」、「周辺環境との調和」などが指標とされている。

2.歩行空間の「すべり」の性能実測とその考察
a)視認による路面状況のすべりやすさ判断と実際のすべり抵抗値との関係
車いす使用者による路面状況の評価(対象路面は、アスファルト舗装、透水性舗装、コンクリート舗装、インターロッキング舗装、タイル舗装。)をすべり摩擦抵抗値の計測と車いす使用者に対するアンケートにより実施した。タイル舗装は計測値とアンケート結果から、かなり滑りやすいことが確認された。
b)歩行路面性状の大きな変化の危険性
路面のすべり抵抗の連続的実測を実施した。材質の異なる物(例えばタイルやマンホール)が路面に存在するような歩行空間では、それらの材質間ですべり摩擦抵抗値が大きく変化し、とくに湿潤時ではその差が大きい。
3.試験路面による歩行実験
実験的にすべりに対する評価を行うために、すべり摩擦抵抗値の異なる5種類の試験路面(アルミ板にアクリル樹脂を異なる方法で塗布。色による差異をなくすためにすべて同色。)を作成した。被験者間の評価の差が大きい路面と、乾燥時と湿潤時との間で性能の大きく変化する路面が問題となる路面として指摘できる。
4.今後の課題
高齢者の転倒事故の主要因が「すべり」や「つまずき」といわれているが、転倒のメカニズムの解明には、1)歩行者そのものの歩行特性、2)歩行のために使用する道具類の特性、3)路面の特性、などの要因間の関係を考察する必要がある。路面性能の評価のためには、すべり摩擦抵抗値や路面プロファイルの連続的計測などの物理的指標と、歩行者による危険性の認知度の把握が必要である。これらの評価から、安全性を確保できる望ましい歩行路面の条件を整理し、その実現性の検討が必要である。

 
 

すべり摩擦抵抗値の計測事例

路面の材質がタイルとコンクリートブロックが交互に連続している場所でのすべり摩擦抵抗値の計測事例

乾いている状態(左図)と濡れている状態(右図)では、各材質間のすべり摩擦抵抗値の差が大きくなっていることがわかる。とくに、濡れている状態では、摩擦が小さいことと、路面状態の変化が大きいことから、滑り店頭の危険性を指摘できる。

 

バリアフリー設備のご紹介

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